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Specification :(In Japanese)金属シリコン製造用アーク炉

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2018-111637A
Date of publication of application Jul 19, 2018
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)金属シリコン製造用アーク炉
IPC (International Patent Classification) C01B  33/025       (2006.01)
F27B   3/18        (2006.01)
F27B   3/19        (2006.01)
F27D  11/08        (2006.01)
FI (File Index) C01B 33/025
F27B 3/18
F27B 3/19
F27D 11/08 A
Number of claims or invention 8
Filing form OL
Total pages 14
Application Number P2017-003946
Date of filing Jan 13, 2017
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】本間 敬之
【氏名】國本 雅宏
【氏名】福中 康博
Applicant (In Japanese)【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4G072
4K045
4K063
F-term 4G072AA01
4G072BB01
4G072GG03
4G072GG04
4G072HH14
4G072HH20
4G072JJ02
4G072RR04
4G072RR22
4K045AA04
4K045BA05
4K045RB02
4K045RC06
4K045RC12
4K063AA02
4K063AA12
4K063BA04
4K063CA01
4K063FA52
4K063FA53
Abstract (In Japanese)【課題】
従来からのサブマージドアーク炉で製造される金属シリコン製造における長時間の反応時間、それに伴う多大な電力消費、及び、黒鉛電極に含まれる不純物の金属シリコンへの混入による高純度シリコン製造の非効率化の問題の解決を課題とする。
【解決手段】
金属シリコン製造用のアーク炉であって、アーク炉外より密閉されたアーク炉内に挿入された黒鉛電極、及び、金属シリコン(Si(l))を排出するための排出口を備え、前記黒鉛電極は、炉外より炉内電極先端部まで貫通孔を有し、金属シリコンを製造するための原料及び還元剤が前記貫通孔を介して炉内電極先端部よりアーク内に供給されるアーク炉、及び、前記アーク炉を用いる金属シリコンの製造方法を提供する。
【選択図】図5A
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
金属シリコン製造用のアーク炉であって、
アーク炉外より密閉されたアーク炉内に挿入された黒鉛電極、及び、金属シリコン(Si(l))を排出するための排出口を備え、
前記黒鉛電極は、炉外より炉内電極先端部まで貫通孔を有し、
金属シリコンを製造するための原料及び還元剤が前記貫通孔を介して炉内電極先端部よりアーク内に供給される、
ことを特徴とするアーク炉。
【請求項2】
金属シリコン製造用のアーク炉であって、
反応ガスを排気するための排気手段をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のアーク炉。
【請求項3】
金属シリコンの製造方法であって、
炉外より炉内電極先端部の貫通孔を介して金属シリコンを製造するための原料及び還元剤をアーク内に供給する工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項4】
金属シリコンの製造方法であって、
前記原料及び還元剤よりアーク先端を含むアーク内で(炭素熱還元反応によって)金属シリコンが製造される工程、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
さらに、金属シリコンの製造における反応ガスを、製造される金属シリコンとの混合状態で炉外に排出する工程を含む、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
金属シリコンの製造方法であって、
前記原料及び還元剤が、キャリアガスと共にアーク炉内に供給される、
ことを特徴とする、請求項3~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
金属シリコンの製造方法であって、
前記金属シリコンの製造方法であって、
反応ガスとして生成するSiO(g)を排気する工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
金属シリコンの製造方法であって、
前記原料が二酸化ケイ素を主成分として含む原料であって、白珪石、石英、珪砂及び珪岩から選択され、
前記還元剤が炭素系還元剤であって、石炭、コークス、黒鉛、木炭、ウッドチップ及び炭素系煤塵から選択され、及び/又は、
前記原料及び還元剤が、前記原料と前記還元剤との混合物である
ことを特徴とする、請求項3~7のいずれか1項に記載の製造方法。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シリコンを製造するための高い効率性を有するアーク炉、及び金属シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から再生可能エネルギーの重要性が益々高まっている。
【0003】
現在工業的に広く実施されている金属シリコンの製造方法は、シリカ(SiO2)を原料としてアーク炉にて、炭素を還元剤に還元処理を行い、金属シリコン(MG-Si)を製造し、金属シリコン(MG-Si)を更に種々の方法にて不純物を除去し、太陽光発電に使用可能な高純度シリコン(SOG-Si)を製造している(非特許文献1~4)。金属Siから太陽光発電用の高純度シリコンを製造する方法として、不純物を気相に揮発、精留、精製するため、さらに膨大なエネルギーを消費するシーメンス法(非特許文献5)が広く用いられている。
【0004】
しかし、これらの方法には、多くの問題点がある。特にエネルギー消費量が莫大であることが最も重要な問題点である。エネルギー消費が大きいことにはいくつかの原因がある。
【0005】
最も大きな原因は、SiO2のアーク炉による熱還元による金属シリコンの製造プロセスにおいては、反応温度が極めて高いことや、還元反応の結果、生成したSiOガスが低温部で再酸化され、炉内を循環し続ける複雑な反応に基づき原料の炉内での滞留時間が長くなり、結果的に大きなエネルギーが必要となる。さらに、この長時間の反応時間によって、黒鉛電極中に含まれるホウ素やリン等の不純物が製造物である金属シリコンに不純物として混入することにより、シーメンス法等によって金属シリコンから高純度シリコンを製造する工程の効率を低下させているものと考えられる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】M. Hakamadaら、Metallurgical and Materials Transactions B, 41B, 350-358 (2010)
【非特許文献2】Eli Ringdalen: Changes in Quartz During Heating and the Possible Effects on Si ProductionJ. Metals, 67, 484-492 (2015)
【非特許文献3】E. Dal Martelloら、Metallurgical and Materials Transactions B, 42B, 939-950 (2011)
【非特許文献4】Y. Sakaguchiら、ISIJ International, 32, 643-649 (1992)
【非特許文献5】Muhlbauer, V. Diersら、J. CrystalGrowth; 108, 1-52 (1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気炉を新規設備投資することなく、単に既存の工業電気炉への原料挿入方式を変更し、還元されたSiOガスの再酸化を抑制することにより、原料の炉内、再循環を防止し、極めて大きな省エネルギー化の達成を目的に、従来からのアーク炉で製造される金属シリコン製造における長時間の反応時間、それに伴う多大な電力消費、及び、黒鉛電極に含まれる不純物の金属シリコンへの混入による高純度シリコン製造の非効率化の問題の解決を本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、二酸化ケイ素(SiO2)と炭化ケイ素(SiC)との混合ペレットを、レーザー光照射により高温に数秒間曝露することにより、一酸化ケイ素(SiO(g))のフュームの発生と、レーザー照射部位の外側に金属シリコン(Si)が直ちに析出生成することを見出した。このように短時間で熱還元反応を行い、副反応である再酸化反応の惹起を抑制することにより、高い効率で金属シリコンの製造が可能との知見を基に、本発明を完成させた。
【0009】
具体的には、本発明は、金属シリコン製造用のアーク炉であって、アーク炉外より密閉されたアーク炉内に挿入された黒鉛電極、及び、金属シリコン(Si(l))を排出するための排出口を備え、前記黒鉛電極は、炉外より炉内電極先端部まで貫通孔を有し、金属シリコンを製造するための原料及び還元剤が前記貫通孔を介して炉内電極先端部よりアーク内に供給されるアーク炉、又は、固気噴流を随伴したアークが溶融Si浴中に吹き込まれるサブマージドアークジェット炉を提供する。
【0010】
本発明の前記アーク炉は、前記中空型黒鉛電極が、前記密閉されたアーク炉上部よりアーク炉内部に挿入され、前記排出口がアーク炉の側面下部に配置される場合がある。
【0011】
本発明の前記アーク炉は、金属シリコン製造用のアーク炉であって、反応ガスを排気するための排気口と排気手段とをさらに備えるアーク炉である場合がある。
【0012】
本発明の前記アーク炉において、前記排気口は、前記アーク炉の側面部又は側面下部である場合がある。
【0013】
本発明の前記アーク炉において、前記原料が二酸化ケイ素を主成分として含む原料であって、白珪石、石英、珪砂及び珪岩からなる原料群から選択される少なくとも1種である場合がある。
【0014】
本発明の前記アーク炉において、前記還元剤が炭素系還元剤であって、石炭、コークス、黒鉛、木炭、ウッドチップ及び炭素系煤塵からなる群から選択される少なくとも1種である場合がある。
【0015】
本発明の前記アーク炉において、前記原料及び還元剤が、前記原料と前記還元剤との混合物である場合がある。
【0016】
本発明の前記アーク炉において、前記原料及び還元剤の形状が、微粉末、粉末、ペレット及び塊状からなる群から選択される少なくとも1種である場合がある。
【0017】
本発明の前記アーク炉において、前記原料及び還元剤が、キャリアガスと共に前記アーク炉に供給される場合がある。
【0018】
本発明の前記アーク炉において、前記キャリアガスが、Ar、N2、CO、H2及びCH4からなる群から選択される少なくとも1種である場合がある。
【0019】
また、本発明は、金属シリコンの製造方法であって、炉外より炉内電極先端部の貫通孔を介して金属シリコンを製造するための原料及び還元剤をアーク内に供給する工程を含む製造方法を提供する。
【0020】
本発明の前記製造方法において、前記原料及び還元剤よりアーク先端で金属シリコンが製造される工程を含む場合がある。
【0021】
本発明の前記製造方法において、さらに、金属シリコンの製造における反応ガスを、製造される金属シリコンとの混合状態で炉外に排出する工程を含む場合がある。
【0022】
本発明の前記製造方法において、前記原料及び還元剤が、キャリアガスと共にアーク炉内に供給される場合がある。
【0023】
本発明の前記製造方法において、前記キャリアガスが、Ar、N2、CO、H2及びCH4からなる群から選択される少なくとも1種である場合がある。
【0024】
本発明の前記製造方法において、前記炭素熱還元反応の反応ガスとして生成するSiO(g)を排気する工程をさらに含む場合がある。
【0025】
本発明の前記製造方法において、前記原料が二酸化ケイ素を主成分として含む原料であって、白珪石、石英、珪砂及び珪岩からからなる群から選択される少なくとも1種である場合がある。
【0026】
本発明の前記製造方法において、前記還元剤が炭素系還元剤であって、石炭、コークス、黒鉛、木炭、ウッドチップ及び炭素系煤塵からなる群から選択される少なくとも1種である場合がある。
【0027】
本発明の前記製造方法において、前記原料及び還元剤が、前記原料と前記還元剤との混合物である場合がある。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、従来からのアーク炉で製造される金属シリコン製造における長時間の反応時間、それに伴う多大な電力消費、及び、黒鉛電極に含まれる不純物の金属シリコンへの混入による高純度シリコン製造の非効率化の問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】従来より使用されている酸化ケイ素より金属シリコンを製造する方法、及びそのためのアーク炉を表す参考図。
【図1B】従来より使用されている2本の電極を有するサブマージドアーク炉において、酸化ケイ素より金属シリコンを製造した場合の空洞の形成、炉頂及び炉壁における金属シリコン(Si)の産生を表す参考図(Ringdalen E.ら、“Carbothermic Production of Silicon Selected Reactions”NTNU, 2012 TMS Annual Meeting & Exhibition(March 11-15, 2012)における配布資料より抜粋した図を和訳した図)。
【図2A】二酸化ケイ素と炭化ケイ素との混合ペレットに炭酸ガスレーザー光を照射中の写真図。
【図2B】:炭酸ガスレーザー光照射後のペレットの写真図。
【図3】レーザー光照射後のペレットの照射部、照射周辺部、末端部のラマン分光スペクトル図。
【図4】図1A及び図1Bの金属シリコン生成のメカニズムを説明する図。
【図5A】本発明のアーク炉を表す図。原料及び還元剤を炉内に供給するための貫通孔を有する筒状の黒鉛電極を備えるアーク炉を表す図。
【図5B】本発明のアーク炉を表す図。原料及び還元剤を炉内に供給するため、炉外電極側面より炉内電極先端部まで貫通孔を有する黒鉛電極を備えるアーク炉を表す図。
【図5C】本発明のアーク炉を表す図。炉外電極側面より略水平方向より略垂直方向の中空を介して炉内電極先端部に、原料及び還元剤を炉内に供給するアーク炉を表す図。
【図6】反応ガスを排気するための排気手段を有するアーク炉を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.アーク炉
本発明の1つの実施態様は、アーク炉外より密閉されたアーク炉内に挿入された黒鉛電極、及び、金属シリコン(Si(l))を排出するための排出口を備え、前記黒鉛電極は、炉外より炉内電極先端部まで貫通孔を有し、金属シリコンを製造するための原料及び還元剤が前記貫通孔を介して炉内電極先端部よりアーク内に供給されるアーク炉である。該アーク炉は、固気噴流を随伴したアークが溶融Si浴中に吹き込まれるサブマージドアークジェット炉であってもよい。

【0031】
金属シリコンを製造するために使用される熱還元法は、従来よりアーク炉とよばれる炭素を電極とした電気炉が使用されている。原料はシリカ(SiO2)や一酸化ケイ素(SiO)を含有するケイ素含有原料が用いられ、還元剤としてはコークス等のカーボン(C)を使用する。通常、原料であるシリカ及び、還元剤であるカーボンは炉天井または炉頂の上部より炉内に装入される。原料であるSiO2及びSiO、並びに、還元剤であるカーボンは炉内を徐々に炉底部分に向かって炉内を降下し、黒鉛電極近傍の溶融反応ゾーンにおいて熱還元反応が起こり金属シリコン(Si)が生成すると考えられる。このアーク炉での金属シリコンの工業的な製造は、約1900℃で10~24時間の滞留時間を伴う。

【0032】
一方、シリカ(SiO2)と炭化ケイ素(SiC)との混合ペレットに数秒間レーザー光を照射し、高温にすると、レーザー光照射部位の外側に金属シリコンの析出生成が認められ、シリカ等から炭素熱還元反応によって金属シリコンが生じる反応自体は、極めて短時間で進行することを認めた。

【0033】
これらの知見を基に、上記の従来からのアーク炉で製造される金属シリコン製造におけるSiOガスの再酸化に伴う炉内循環流形成と長時間に亘る炉内滞留時間、それに伴う多大な電力消費、及び、黒鉛電極に含まれる不純物の金属シリコンへの混入による高純度シリコン製造の非効率化による膨大なエネルギーの消費等の問題点に対して、本発明は、温度分布を変更することによる空間的反応の相違、及び、反応中間体の存在比を変更することによる反応操作の合理化及び最適化を目的として、原料装入方式を変更し、消費熱量を削減し、かつ、工業的に利用されている既存設備を活用しその改造等により軽微な設備投資で実施可能な解決法を提供する。

【0034】
なお、本明細書において、「黒鉛電極」とは、「カーボン電極」、「グラファイト電極」又は「カーボングラファイト電極」と呼ばれる場合があり、従来よりアーク炉等でアーク放電に使用される電極であって一般的に人工黒鉛で製造される電極をいう。

【0035】
以下に詳細に説明する。
(1) SiOガスの効率的な反応容器外への除去
金属シリコン製造で工業的に使用されているアーク炉では、金属シリコン製造工程で生成するSiOガスは、非密封の天蓋より炉外放出され、収率低下を招く。それを防止するために、むしろ再酸化させ、SiO2(s)を形成させ、炉底部で再還元させる。工業規模のアーク炉と、レーザー照射による短時間でのSi(s)の生成との反応時間の差はSiO(g)の複雑な反応の繰り返し、SiO(g)循環流によるものと理解される。以上の問題点を解決するために、本法では生成したSiOガスを溶融した金属シリカと共に、又は、排気手段を使用して、速やかに系外に排出することにより、複雑な逆反応等を防止し、結果的にアーク炉での滞留時間を大幅に短縮することが可能となる。

【0036】
(2) 中空型電極による、原料及び還元剤の反応炉への吹込み
アーク炉の電極は通常は、棒状の黒鉛電極(カーボン電極)が使用されている。本法では、この黒鉛電極の中心部に空洞を設け、この空洞より原料となるSiO2及び還元剤をキャリアガスを使用して吹き込むことにより、炉に装入されてから実際に反応が起こるアーク内へ到達する時間が飛躍的に短縮される。キャリアガスを吹き込むことにより、炉内の圧力が上昇し、上記(1)のSiOガスを系外に抜き出す際に効率的に働く。

【0037】
(3) 黒鉛電極が含有するホウ素(B)やリン(P)等の金属シリコンへの不純物混入の防止
黒鉛電極は、一般に、石炭や石油を原料として製造されるコークスにバインダーピッチを混合し、練り込み、分散させ、ペーストを作成し、その後、このペーストを射出成型し、焼成する工程を経て製造され、アーク炉で金属シリコンを製造する工程で消耗する消耗品である。すなわち、黒鉛電極に含有されるホウ素(B)やリン(P)等の不純物は、金属シリコンに取り込まれれるので、金属シリコンをシーメンス法等によりさらに高純度の金属シリコンを製造する場合、それら不純物の揮発物が混入し、SiHCl3又はSiCl4ガス成分への精留プロセス効率を大幅に低下させている。

【0038】
したがって、短時間で黒鉛電極の消耗を抑えて金属シリコンを製造することにより、製造される金属シリコン中の不純物を低下させることができ、金属シリコンのシーメンス法等による精製工程を効率化可能である。

【0039】
以下に、上記本発明の特性の根拠を説明する。

【0040】
従来からのアーク炉では極めて複雑な多数の反応が起こっておれ、シリカ(SiO2)のカーボンによる炭素熱還元反応の全反応は以下に示す反応式によるものと報告されている(非特許文献1)。

【0041】
SiO2 + 2C → Si(l) + 2CO(g) (1)

【0042】
しかしながら、実際の反応は以下の複雑な反応によりSiO2がSiに還元されていると報告されている。
SiO2+ C → SiO(g) + CO(g) (2)
SiO(g) + 2C → SiC + CO(g) (3)
SiO2+ 2SiC → 3Si(l) +2CO(g) (4)

【0043】
即ち、SiO2のカーボンによる熱還元反応は、総括反応式は(1)式で示されるが、現実には単純な反応ではなく、(2)式の如く原料であるSiO2が還元剤であるカーボンと反応しSiOガスとCOガスが発生する。これらSiO及びCOガスが炉内を上昇するにつれ、低温部で逆反応によりSiO2(s)が形成され、炉頂部から挿入された珪石原料とともに、底部へと下降し、アーク部で再還元される可能性がある。本発明はこの低温部での酸化、循環流に基づく下降、再還元、炉頂部への上昇、低温部での再度の酸化、そして下降する循環流割合を極力低下させる事を目的とする。次に(3)式に示す通り、このSiOがカーボンと反応しSiC及びCOガスが発生する。そして(4)式に示す反応により金属シリコン(Si)が液体状で生成されると考えられる。

【0044】
さらに、これらの反応とは別に、種々の反応が起こっていると報告され、初期のSiの生成は以下に示したように複雑な反応によりSiが生成されていると考えられる。
2SiO2+ SiC → 3SiO(g) + CO(g) (5)

【0045】
さらに以下の反応も起こっていると報告されている。
SiO2+ CO(g) → SiO(g) + CO2(g) (6)
2CO2(g) + SiC → SiO(g) + 3CO(g) (7)

【0046】
そしてSiは以下の反応により生成していると考えられる。
SiO(g) + SiC → 2Si(l) + CO(g) (8)

【0047】
以上の(5)~(8)の反応式によっても、Siが生成すると述べられている。

【0048】
一方、生成したSi中にシリカ(SiO2)が存在した場合は、以下の反応が起こる。
Si(l) + SiO2(l) → 2SiO(g) (9)
即ち、生成したSiが再びSiO2と反応しSiOガスを生成する。
そして、高温部で生成したSiO(g)は低温部において凝縮し以下の反応を起こす。
2SiO(g) → Si + SiO2 (10)

【0049】
即ち、反応(9)の逆反応が起こる。

【0050】
このように、実際の炉内では非常に複雑な反応が起こっており、その結果、Siの生成には膨大な滞留時間が必要になるものと考えられ、結果的に反応効率を著しく低下させ、消費エネルギー量も増加する。

【0051】
また、従来のアーク炉での金属シリコンの製造は、原料SiO2及び還元剤は炉上部から反応炉に供給される(図1A、図1B参照)。供給された原料及び還元剤は、炉内を徐々に下降し、反応サイトであるアーク先端に達して、高温状態でSiO(g)が生成し、SiO(g)が軽いために、高温部から炉頂上部へと上昇し、炉内に空洞を形成する。その過程で炉頂部から装入された比較的低温状態にあるSiO2やC等の原料及び還元剤と接触し、いわば逆反応に相当する反応により、SiO(g)がSiC(s)やSiO2(s)を生成しつつ、アーク炉下部へと移行し、高温部で再度、炭素熱還元反応を経て、SiO(g)が生成し、それが再度、上昇する。このSiO(g)の炉内空洞における循環流れが見かけ上、SiO2の極めて長い滞留時間をもたらす要因である。また、滞留時間が長くなればなるほど、Si(l)およびSiO(g)がグラファイト電極と接触する時間が長くなり、グラファイト電極中に含有されているバインダーなどに起因する不純物、特に、リン(P)、ホウ素(B)を吸収する可能性が極めて大きくなる。その際にこの降下に要する時間が長ければ長いほど、炉内の滞留時間が長くなり結果的に反応効率の低下、エネルギー消費の増大となる。

【0052】
更に大きな問題点は、生成するSiに含有する不純物である。特に、BやPについては、単純な方法では除去できないため、シーメンス法における粗Siの流動層塩化反応による各種塩化物ガスの多段蒸留精製プロセスによる不純物の除去が必要不可欠となる。

【0053】
実際に金属シリコンの工業的製造に使用されるアーク炉においては、上記のSiO(g)の生成と、その上昇に伴い、アーク炉内における空洞の形成及びアーク炉壁面においてSiCとSiとの混合物の形成を伴うことが知られている(図1B)。

【0054】
現在のアーク炉による太陽電池用シリコンの原料となる金属シリコンの製造法には以上のような問題点がある。

【0055】
しかし、上記、及び実施例で示されるとおり、実際の小規模試験によればSiの生成の反応は5~30秒という極めて短時間で起こることを認めた。そこで、上記の(1) SiOガスの効率的な反応容器外への除去、(2) 中空型電極による、原料及び還元剤の反応炉への吹込み、及び、(3) 黒鉛電極が含有するホウ素(B)やリン(P)等の金属シリコンへの不純物混入の防止により、本発明は、エネルギー消費量の大きな低下による効率化、及び高純度シリコン製造の効率化等をもたらすことが可能である。

【0056】
したがって、本発明のアーク炉の例としては、密閉されたアーク炉であって、黒鉛電極は炉外より炉内に挿入され、該黒鉛電極はアーク先端部と炉外とを結ぶ貫通孔を有し、この貫通孔を介してアーク内に原料及び還元剤が供給される。

【0057】
本発明の前記アーク炉の例としては、前記中空型黒鉛電極が、前記密閉されたアーク炉上部よりアーク炉内部に挿入され、前記排出口がアーク炉の側面下部に配置されるアーク炉である。

【0058】
本発明のアーク炉は、従来より工業的に使用されているアーク炉を密閉型に改造することにより製造できる。

【0059】
また、黒鉛電極は、従来よりコークス等の電極原料をバインダーピッチと混合し、ペースト状とし、このペーストを成型することにより製造されている。したがって、金属シリコンの製造のための原料及び還元剤を供給するための貫通孔を有する黒鉛電極は、前記ペーストを貫通孔を有するよう成型することにより製造できる。また、黒鉛電極の両端間を結ぶ貫通孔を有する筒型状の黒鉛電極は商業的に利用可能であり、これを入手して使用することもできる。

【0060】
本発明の前記アーク炉のもう1つの例としては、金属シリコン製造用のアーク炉であって、反応ガスを排気するための排気手段をさらに備えるアーク炉である。

【0061】
前記アーク炉の例において、前記原料の例は、二酸化ケイ素を主成分として含む原料であって、白珪石等の珪石、石英、珪砂及び珪岩等から選択される。珪岩として、砂岩質珪岩、膠結性珪岩、再結晶珪岩(三河珪石、大連珪石)、複合珪岩(赤白珪石、青白珪石)等が挙げられる。

【0062】
本発明の前記アーク炉において、前記還元剤の例は、炭素(C)を主として含む炭素系還元剤であって、石炭、コークス、仮焼コークス、黒鉛(天然黒鉛又は人造黒鉛)、ピッチ、タール、焙焼無煙炭、木炭、ウッドチップ及び炭素系煤塵から選択することができる。また、前記原料及び還元剤が、前記原料と前記還元剤との混合物であってもよい。

【0063】
前記原料及び還元剤(以下「原料等」と記載する)の形状の例は、本発明のアーク炉で、速やかに炭素熱還元反応によって消費される限り、微粉末、粉末、ペレット状や塊状の形状のものを使用できる。

【0064】
前記原料等を炉内に供給する場合に、キャリアガスと共に炉内に供給することができる。前記キャリアガスの例として、Ar、N2、CO、H2及びCH4からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。

【0065】
そして、この炉外の供給口より炉内電極先端を介してアーク内に原料等が供給されるが、アーク内に挿入された原料等は、電極先端より炉床上の液体金属シリコン表面に固気噴流として吹きつけられ、アーク先端を含むアーク内で炭素熱還元反応によって液体状の金属シリコンとなる。この液体状の金属シリコンは、排出口より炉外に排出される。

【0066】
本発明のアーク炉において、原料等の供給口及び金属シリコンの排出口以外は密閉され、原料等はキャリアガスと共に炉内に吹き込まれるため、金属シリコンの製造工程で産生される反応ガスは、排出口より金属シリコンと共に排出される。

【0067】
また、この反応ガスをより積極的に排気するために、減圧ポンプ等を用いた排気手段をさらに備えることも可能である。反応ガスを排気するための排気手段の配置位置は特に限定されないが、例えば、本発明の炉内側面下部に排気口を配置することができる。

【0068】
2.金属シリコンの製造方法
本発明のもう1つの実施態様は、アーク炉を用い、炉外より炉内電極先端部の貫通孔を介して金属シリコンを製造するための原料等をアーク内に供給する工程を含む金属シリコンの製造方法である。

【0069】
本発明の前記製造方法は、前記原料等をキャリアガスと共に黒鉛電極の貫通孔を介してアーク内に吹き込むことにより供給することができる。前記キャリアガスの例として、Ar、N2、CO、H2及びCH4からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。

【0070】
本発明の前記製造方法は、金属シリコンの製造における反応ガスを、製造される金属シリコンとの混合状態で炉外に排出する工程を含むことができる。

【0071】
また、本発明の前記製造方法の例として、前記炭素熱還元反応の反応ガスとして生成するSiO(g)を排気する工程をさらに含むことができる。この反応ガスの排気には、例えば、真空ポンプにより、アーク炉の側面下部より排気することができる。

【0072】
さらに、前記原料の例として、二酸化ケイ素を主成分として含む原料である、白珪石、石英、珪砂及び珪岩等を挙げることができる。

【0073】
前記還元剤の例として、炭素系還元剤であって、石炭、コークス、黒鉛、ピッチ、タール、木炭、ウッドチップ及び炭素系煤塵等を挙げることができる。また、前記原料等の例として、前記原料と前記還元剤との混合物を挙げることができる。

【0074】
前記原料等の形状としては、本発明の製造方法で速やかに炭素熱還元反応によって消費される限り、微粉末、粉末、ペレット状及び塊状のものを使用することができる。

【0075】
以上詳細に説明したように、本発明により、アーク炉での滞留時間が大幅に短縮され、結果的に大幅な省エネルギーを実現すると共に、生成されるSi品位も向上し、太陽電池用Siに精製するための方法も従来より実施されているシーメンス法に比較して大幅にエネルギー消費量が減少する。

【0076】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。ここに記述される実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0077】
シリカと炭化ケイ素との混合ペレットへの炭酸ガスレーザーの照射による金属シリコンの形成
市販のシリカと炭化ケイ素粉末とで作製した混合ペレットに対して、炭酸ガスレーザー照射装置(JAXA筑波宇宙センター所有)を用いレーザー光を5秒間照射することにより、シリカが極めて短時間で炭素熱還元された(図2A)。その結果、レーザー光照射後のペレットは、照射部、照射周辺部、さらにその外側の末端部でそれぞれ灰色、淡灰色及び茶色を示した(図2B)。
【実施例1】
【0078】
そこで、これらの部位毎の試料をレーザーラマン分光法で解析したところ、レーザー光照射部で金属シリコン(Si)の析出生成を表すピークを認め、一方、照射周辺部では、Siの生成を示すピーク強度は比較的小さかった。しかし、照射周辺部のさらに外側の茶色部分において、もっとも強い金属シリコンの析出精製を示す強いピークを認めた(図3)。
【実施例1】
【0079】
これらの結果は、SiC-SiO2ペレットにレーザー光を照射し、高温とすることにより下記式(11)及び(12)の反応が誘起されることにより、ガス状のSiO(g)が生成され、ペレット周辺の雰囲気中の急激な温度勾配中で所謂Enhanced Vaporizationを引き起こしつつ、冷却され、過飽和状態になり、相変態によりSiO(l又はs)となり、凝集し、これが試料末端部に落下堆積し、SiO2がSiOによって還元されることにより、下記式(13)の反応によって試料末端部でSiが生成したものと考えられる(図4)。あるいはまた、式(10)によりSiが析出したと考えられる。この試料末端部における茶色味を帯びたSiの生成現象は、極めて異なる実験手法を用いているにも関わらず、従来からのアーク炉内部で、空洞の形成と炉頂及び炉壁に茶色のSi領域が出現される巨視的な炭素熱還元操作と定性的に一致する(図1B)。
SiO2(s) + 1/2SiC(s) → 3/2SiO(g) + 1/2CO(g) (11)
SiO2(s) + SiC(s) → Si(l) + SiO(g) + CO(g) (12)
SiO(g) → 1/2Si(s) + 1/2 SiO2(s) (13)
【実施例2】
【0080】
本発明のアーク炉及び該アーク炉を使用した金属シリコンの製造法
本発明のアーク炉の概要図を図5A~図5Bに例示した。アーク炉(1)は密閉され、原料及び還元剤を供給するための貫通孔(4)を有する黒鉛電極(2)がアーク炉上部を介してアーク炉外よりアーク炉内(6)に挿入される。アークは、前記電極(2)より炉床上の溶解した金属シリコン(Si(l))に放電する。黒鉛電極(2)のアーク炉内電極先端部までつながる貫通孔(4)を介して、白珪石等の原料及びコークス等の還元剤が、Ar等のキャリアガスを使用してアーク内に供給される。貫通孔(4)は、炉内電極先端部よりアーク内に原料等を供給できればよく、したがって、貫通孔(4)の黒鉛電極(2)の炉外原料等供給口は、黒鉛電極(2)の炉外先端に配置されてもよく(図5A)、又は、黒鉛電極の炉外側面に配置されてもよい(図5B,図5C)。
【実施例2】
【0081】
主にアーク内で炭素熱還元反応が進行し、短時間で金属シリコンが製造される。アークは、炉床上の液体状の金属シリコンまで続くため、供給される原料等が、例えば、炉床まで落下したとしても、炭素熱還元反応によって金属シリコンが製造される。
【実施例2】
【0082】
製造される液体状の金属シリコンは、排出口(5)を通り炉外に排出される。一方、炭素熱還元反応で生成するSiO(g)等の反応ガスは、アーク炉自体が密閉され、原料等はキャリアガスを介して陽圧で吹き込むことによりアーク炉内に供給されるため、排出口(5)より液体状の金属シリコンと共に炉外に排出される。SiO(g)等の反応ガスを速やかに炉外に排出することにより、従来のサブマージドアーク炉で認められる空洞の形成や炉壁における副生物の生成を防止することができる。
【実施例2】
【0083】
また、より積極的に反応ガスを炉外に排出するため、例えば、炉壁下部に排気口を備えて、この排気口より真空ポンプ等の排気装置を用いて反応ガスを炉外に排出することもできる(図6)。
【実施例2】
【0084】
炉外に排出された液体状の金属シリコン(Si(l))を冷却することにより、固体状の金属シリコン(Si(s))が製造される。この製造された金属シリコン(Si(s))は、適宜、シーメンス法等でホウ素(B)及びリン(P)等の不純物を除去、精製され、太陽電池やシリコンウェハー等の材料として使用される。
【実施例2】
【0085】
以上の結果より、従来からのアーク炉で製造される金属シリコン製造における長時間の反応時間、それに伴う多大な電力消費、及び、黒鉛電極に含まれる不純物の金属シリコンへの混入による高純度シリコン製造の非効率化の問題を本発明は解決できる。そして、本発明は、電気炉を新規設備するための巨額投資することなく、単に既存の工業電気炉への原料挿入方式を変更することにより、還元されたSiOガスの再酸化を抑制することにより、原料の炉内、再循環を防止し、極めて大きな省エネルギー化を達成可能である。
【符号の説明】
【0086】
1. アーク炉
2. 黒鉛電極
3. アーク
4. 原料等供給用貫通孔
5. 排出口
6. アーク炉内
7. 排気口
Drawing
(In Japanese)【図1A】
0
(In Japanese)【図1B】
1
(In Japanese)【図2A】
2
(In Japanese)【図2B】
3
(In Japanese)【図3】
4
(In Japanese)【図4】
5
(In Japanese)【図5A】
6
(In Japanese)【図5B】
7
(In Japanese)【図5C】
8
(In Japanese)【図6】
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