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明細書 :反応性置換基を有するシルセスキオキサンの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-090502 (P2018-090502A)
公開日 平成30年6月14日(2018.6.14)
発明の名称または考案の名称 反応性置換基を有するシルセスキオキサンの製造方法
国際特許分類 C07F   7/02        (2006.01)
C07F   7/08        (2006.01)
FI C07F 7/02 E
C07F 7/08 X
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2016-232998 (P2016-232998)
出願日 平成28年11月30日(2016.11.30)
発明者または考案者 【氏名】海野 雅史
【氏名】江川 泰暢
【氏名】島田 茂
【氏名】佐藤 一彦
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
個別代理人の代理人 【識別番号】100113608、【弁理士】、【氏名又は名称】平川 明
【識別番号】100183601、【弁理士】、【氏名又は名称】石丸 竜平
審査請求 未請求
テーマコード 4H049
Fターム 4H049VN01
4H049VP04
4H049VP08
4H049VQ02
4H049VQ12
4H049VQ79
4H049VQ87
4H049VQ88
4H049VR11
4H049VR21
4H049VR32
4H049VR41
4H049VR43
4H049VS02
4H049VS12
4H049VS16
4H049VS79
4H049VS87
4H049VT32
4H049VT47
4H049VU12
4H049VU22
4H049VV06
4H049VV07
4H049VW02
4H049VW08
要約 【課題】反応性置換基を有するシルセスキオキサン、特に片面に反応性置換基を有するヤヌスキューブを製造することができるシルセスキオキサンの製造方法の提供。
【解決手段】式(B)で表される環状シロキサンを加水分解して分子内脱水縮合を進めることにより、反応性置換基としてSi-Hを有するシルセスキオキサン式(C)を効率良く製造する方法。
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(Rは夫々独立にC1~20の炭化水素基;Xは夫々独立にCl、Br又はI)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
水の存在下、下記式(B)で表される環状シロキサンから下記式(C)で表されるシルセスキオキサンを生成する反応工程を含む、シルセスキオキサンの製造方法。
【化1】
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(式(B)及び(C)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【請求項2】
下記式(A)で表される環状シロキサンとトリハロシランを反応させて下記式(B)で表される環状シロキサンを生成する準備工程を含む、請求項1に記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【化2】
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(式(A)及び(B)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【請求項3】
下記式(B)で表される環状シロキサン。
【化3】
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(式(B)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【請求項4】
下記式(C)で表されるシルセスキオキサン。
【化4】
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(式(C)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサンの製造方法に関し、より詳しくは反応性置換基を有するシルセスキオキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造が規制されたケイ素化合物は、高い物性が要求される材料への応用が期待されており、近年、その合成が盛んに研究されている。特にかご型のシルセスキオキサンは、その特異的な構造から高い耐熱性、耐酸化性、耐候性が見込まれており、様々な機能性材料、特に有機-無機ハイブリット材料の基幹化合物として注目を浴びている。
かご型のシルセスキオキサンの合成については、数多くの報告があり、環状シラノールからの合成も可能で(例えば、非特許文献1~5参照)、これまでに様々な有機基が導入されたかご型シルセスキオキサンが報告されている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】M. Unno et al., Chem. Lett. 1998, 489.
【非特許文献2】M. Unno et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 2000, 73, 215.
【非特許文献3】S. Tateyama et al., J. Organomet. Chem. 2010, 695, 898.
【非特許文献4】H. Seki et al., J. Organomet. Chem. 2010, 695, 1363.
【非特許文献5】Laine et al. C. R. Chimie, 2010, 13, 270.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かご型シルセスキオキサンの中でも異なる置換基を対面に4つずつ有するものは、ヤヌスキューブと呼ばれ、両親媒材料やシランカップリング剤への応用が特に期待されているが、反応性置換基を有したヤヌスキューブを合成した例は報告されていないのが現状である。
本発明は、反応性置換基を有するシルセスキオキサン、特に片面に反応性置換基を有するヤヌスキューブを製造することができるシルセスキオキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のシロキシ基(-O-SiHX)を有する環状シロキサンを準備し、これを加水分解して分子内脱水縮合を進めることにより、反応性置換基であるSi-Hを有するシルセスキオキサンを効率良く製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 水の存在下、下記式(B)で表される環状シロキサンから下記式(C)で表されるシルセスキオキサンを生成する反応工程を含む、シルセスキオキサンの製造方法。
【化1】
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(式(B)及び(C)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
<2> 下記式(A)で表される環状シロキサンとトリハロシランを反応させて下記式(B)で表される環状シロキサンを生成する準備工程を含む、<1>に記載のシルセスキオキサンの製造方法。
【化2】
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(式(A)及び(B)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
<3> 下記式(B)で表される環状シロキサン。
【化3】
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(式(B)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
<4> 下記式(C)で表されるシルセスキオキサン。
【化4】
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(式(C)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、反応性置換基を有するシルセスキオキサンを製造することができる。特に片面に反応性置換基を有するヤヌスキューブを製造するために有効である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。

【0009】
<シルセスキオキサンの製造方法>
本発明の一態様であるシルセスキオキサンの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、水の存在下、下記式(B)で表される環状シロキサンから下記式(C)で表されるシルセスキオキサンを生成する反応工程(以下、「反応工程」と略す場合がある。)を含むことを特徴とする。
【化5】
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(式(B)及び(C)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
本発明者らは、反応性置換基を有するシルセスキオキサンを合成すべく検討を重ねた結果、特定のシロキシ基(-O-SiHX)を有する環状シロキサン(式(B)で表される環状シロキサン)を準備し、これを加水分解して分子内脱水縮合を進めることにより、反応性置換基としてSi-Hを有するシルセスキオキサンを効率良く製造することができることを見出したのである。
以下、「式(B)で表される環状シロキサン」、反応工程の条件等について、詳細に説明する。

【0010】
式(B)で表される環状シロキサンのRは、それぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を表しているが、「炭化水素基」は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、分岐構造、環状構造、炭素-炭素不飽和結合のそれぞれを有していてもよいものとする(分岐構造、環状構造、及び炭素-炭素不飽和結合からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。)。
の炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、好ましくは8以下である。
としては、メチル基(-CH)、エチル基(-C)、ビニル基(-CH=CH)、エチニル基(-C≡CH)、n-プロピル基(-)、i-プロピル基(-)、n-ブチル基(-)、i-ブチル基(-)、t-ブチル基(-)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13)、c-ヘキシル基(-11)、フェニル基(-C)、ナフチル基(-C10)等が挙げられる。
式(B)で表される環状シロキサンのXは、それぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表しているが、塩素原子が特に好ましい。

【0011】
反応工程は、水の存在下、式(B)で表される環状シロキサンから式(C)で表されるシルセスキオキサンを生成する工程であるが、水の使用量(仕込量)は、式(B)で表される環状シロキサンに対して物質量換算で、通常10倍以上、好ましくは100倍以上、より好ましくは200倍以上であり、通常500倍以下、好ましくは400倍以下、より好ましくは300倍以下である。上記範囲内であれば、反応性置換基を有したシルセスキオキサンをより効率良く製造することができる。

【0012】
反応工程の具体的な操作手順、反応条件等は特に限定されないが、溶媒で希釈した式(B)で表される環状シロキサンを、溶媒で希釈した水に低温下で滴下し、それを加熱して行うことが好ましい。
式(B)で表される環状シロキサンを希釈する溶媒としては、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒が挙げられる。
水を希釈する溶媒としては、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
滴下温度は、通常34℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。
加熱温度は、通常25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは34℃以上であり、通常100℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは56℃以下である。
加熱時間は、通常12時間以上、好ましくは1日以上、通常7日以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下である。
反応工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
なお、上記条件等であれば、反応性置換基を有したシルセスキオキサンをより効率良く製造することができる。

【0013】
本発明の製造方法は、前述の反応工程を含むものであれば、その他は特に限定されないが、下記式(A)で表される環状シロキサンとトリハロシラン(SiHX)を反応させて下記式(B)で表される環状シロキサンを生成する準備工程(以下、「準備工程」と略す場合がある。)を含み、生成した式(B)で表される環状シロキサンを反応工程に利用することが好ましい。
【化6】
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(式(A)及び(B)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
以下、「式(A)で表される環状シロキサン」、準備工程の条件等について、詳細に説明する。なお、式(A)で表される環状シロキサンのRとトリハロシランのハロゲン原子は、式(B)で表される環状シロキサンと同一のものになる。

【0014】
式(A)で表される環状シロキサンは、例えば下記式(i)又は(ii)で表されるようなトリクロロ(アルキル)シランやトリアルコキシ(アルキル)シラン等の縮合反応によって製造することができる。
【化7】
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【化8】
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なお、式(i)で表される反応の詳細については、J. F. Brown et al., J. Am. Chem.
Soc., 1965, 87, 4317、J. F. Brown, Jr. et al., J. Am. Chem. Soc., 1965, 87, 4313、F. J. Feher et al., Main Group Chem., 1997, 2, 123、M. Unno et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 2000, 73, 215等を参照することができ、式(ii)で表される反応の詳細については、O. I. Shchegolikhina et al., Inorg. Chem., 2002, 41, 6892、R. Ito et al., Chem. Lett., 2009, 38, 364、Y. A. Pozdnyakova et al., Inorg. Chem., 2010, 49, 572等を参照することができる。

【0015】
準備工程におけるトリハロシランの使用量(仕込量)は、式(A)で表される環状シロキサンに対して物質量換算で、通常4倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは8倍以上であり、通常20倍以下、好ましくは15倍以下、より好ましくは10倍以下である。上記範囲内であれば、式(B)で表される環状シロキサンをより効率良く生成することができる。

【0016】
準備工程の具体的な操作手順、反応条件等は特に限定されないが、溶媒で希釈した式(A)で表される環状シロキサンを、溶媒で希釈したトリハロシランに低温下で滴下し、それを加熱して行うことが好ましい。
式(A)で表される環状シロキサンを希釈する溶媒としては、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒が挙げられる。
トリハロシランを希釈する溶媒としては、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒が挙げられる。
滴下温度は、通常34℃以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下である。
加熱温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、通常34℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下である。
加熱時間は、通常1時間以上、好ましくは1日以上であり、通常7日以下、好ましくは5日以下、より好ましくは3日以下である。
準備工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
なお、上記条件等であれば、式(A)で表される環状シロキサンをより効率良く生成することができる。

【0017】
<環状シロキサン・シルセスキオキサン>
本発明の製造方法によって、式(B)で表される環状シロキサンから式(C)で表されるシルセスキオキサンを生成することができることを前述したが、式(B)で表される環状シロキサン及び式(C)で表されるシルセスキオキサンもそれぞれ本発明の一態様である。
【化9】
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(式(B)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を、Xはそれぞれ独立して塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。)
【化10】
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(式(C)中、Rはそれぞれ独立して炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。)
【実施例】
【0018】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0019】
<実施例1>
【化11】
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アルゴン雰囲気において、i-Bu置換環状シラノール(5.0g,0.010mol)ジエチルエーテル(200ml)溶液をトリクロロシラン(17mL,0.094mol)、トリエチルアミン(13ml)のジエチルエーテル(200ml)溶液に氷浴下、滴下した。その後室温にて1日撹拌し、減圧下にて溶媒を留去した。続いて、ヘキサン(200ml)を加え、アルゴン下にて濾過操作を行い、塩を取り除いた。その後、ヘキサンを除き、環状シラノールのジクロロシロキシ体を得た。
環状シラノールのジクロロシロキシ体にジエチルエーテル(200ml)を加え、その溶液をアセトン(400ml)、水(50ml)混合溶媒中に氷浴下、滴下した。滴下終了後、2日室温にて撹拌した後、還流条件で1日撹拌した。ロータリーエバポレーターにて溶媒を除いたのち、ジエチルエーテルと飽和食塩水で分液操作を行った。粗生成物をサイズ排除クロマトグラフィー、湿式シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分離し、目的物である水素原子を置換基として有するヤヌスキューブを得た(598mg,収率:9%)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3, δ in ppm) 0.63(d, 8H), 0.96(d, 24H), 1.85(nonet, 4H), 4.13(s, 4H); 29Si-NMR (59 MHz, CDCl3, δ in ppm) -66.9, -84.2
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の製造方法によって得られるシルセスキオキサンは、シランカップリング剤、シリコーン製品に利用することができる。