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明細書 :ポリ乳酸誘導体及びその製造方法、並びにポリ乳酸系ステレオコンプレックス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年6月7日(2018.6.7)
発明の名称または考案の名称 ポリ乳酸誘導体及びその製造方法、並びにポリ乳酸系ステレオコンプレックス
国際特許分類 C08G  63/08        (2006.01)
FI C08G 63/08
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 43
出願番号 特願2017-536677 (P2017-536677)
国際出願番号 PCT/JP2016/070916
国際公開番号 WO2017/033613
国際出願日 平成28年7月14日(2016.7.14)
国際公開日 平成29年3月2日(2017.3.2)
優先権出願番号 2015164121
優先日 平成27年8月21日(2015.8.21)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】網代 広治
【氏名】▲カン▼ 凱
【氏名】明石 満
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4J029
Fターム 4J029AA02
4J029AB02
4J029AB04
4J029AC01
4J029EH03
4J029JB152
4J029JB192
4J029JB202
4J029JB232
要約 本発明に係るポリ乳酸誘導体は、下記の一般式(1)、又は一般式(2)で表される。
【化1】
JP2017033613A1_000050t.gif
一般式(1)中、X1~X5のうちの一つがアルデヒド基、残り4個のうちの一つがアルコキシ基であり、残り3個が水素原子である。
下記の一般式(2)で表されるポリ乳酸誘導体。
【化2】
JP2017033613A1_000051t.gif
一般式(2)中、R1~R3のうち一つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステルのいずれかであり、残り二つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル、水素原子のいずれかである。
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるポリ乳酸誘導体。
【化1】
JP2017033613A1_000036t.gif
一般式(1)中、X1~X5のうちの一つがアルデヒド基、残り4個のうちの一つがアルコキシ基であり、残り3個が水素原子である。
【請求項2】
下記の一般式(2)で表されるポリ乳酸誘導体。
【化2】
JP2017033613A1_000037t.gif
一般式(2)中、R1~R3のうち一つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステルのいずれかであり、残り二つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル、水素原子のいずれかである。
【請求項3】
R1~R3の少なくとも一つがアルデヒド基である請求項2に記載のポリ乳酸誘導体。
【請求項4】
R1がアルコキシ基であり、R3がアルデヒド基である、請求項2に記載のポリ乳酸誘導体。
【請求項5】
下記の式(3)で表される、請求項1又は2に記載のポリ乳酸誘導体。
【化3】
JP2017033613A1_000038t.gif

【請求項6】
下記の式(4)で表される、ポリ乳酸誘導体。
【化4】
JP2017033613A1_000039t.gif

【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のポリ乳酸誘導体のL体及びD体を含むポリ乳酸系ステレオコンプレックス。
【請求項8】
ポリ乳酸誘導体のL体及びD体を1:1の割合で含む請求項7に記載のポリ乳酸系ステレオコンプレックス。
【請求項9】
下記の式(5)で表されるポリD-乳酸誘導体と、下記の式(6)で表されるポリL-乳酸誘導体を1:1の割合で含むポリ乳酸系ステレオコンプレックス。
【化5】
JP2017033613A1_000040t.gif
【化6】
JP2017033613A1_000041t.gif

【請求項10】
下記の一般式(7)で表される化合物を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合してポリ乳酸誘導体を製造する、ポリ乳酸誘導体の製造方法。
【化7】
JP2017033613A1_000042t.gif
式(7)中、X1~X5のうちの一つがアルデヒド基、残り4個のうちの一つがアルコキシ基であり、残り3個が水素原子である。
【請求項11】
下記の一般式(8)で表される化合物を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合してポリ乳酸誘導体を製造する、ポリ乳酸誘導体の製造方法。
【化8】
JP2017033613A1_000043t.gif

式(8)中、R1~R3のうち少なくとも一つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステルのいずれかである。
【請求項12】
下記の式(9)で表される化合物を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合してポリ乳酸誘導体を製造する、ポリ乳酸誘導体の製造方法。
【化9】
JP2017033613A1_000044t.gif

【請求項13】
ラクチドと開始剤としての化合物を20:1~10:1のモル比で重合してポリ乳酸誘導体を製造することを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の、ポリ乳酸誘導体の製造方法。
【請求項14】
下記の式(10)で表されるヒドロキシメチルフルフラールを開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合してポリ乳酸誘導体を製造する、ポリ乳酸誘導体の製造方法。
【化10】
JP2017033613A1_000045t.gif

【請求項15】
下記の一般式(11)で示される化合物に塩酸を加えることにより、下記の一般式(12)で示されるポリ乳酸誘導体を製造する、ポリ乳酸誘導体の製造方法。
【化11】
JP2017033613A1_000046t.gif
【化12】
JP2017033613A1_000047t.gif
式(11)及び式(12)中、Z1及びZ2の一方はアルコキシ基、他方はアルコキシ基又は水素原子である。
【請求項16】
下記の式(13)で示される化合物に塩酸を加えることにより、下記の式(4)で示されるポリ乳酸誘導体を製造する、ポリ乳酸誘導体の製造方法。
【化13】
JP2017033613A1_000048t.gif
【化14】
JP2017033613A1_000049t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸誘導体及びその製造方法、並びにポリ乳酸誘導体のL体とD体から成るポリ乳酸系ステレオコンプレックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸は、植物由来の原料から得られる乳酸あるいはその誘導体がエステル結合により重合した高分子化合物であり、物理的及び化学的性質が優れている上に、生体親和性、生分解性を有することから、安全性に優れ、生体や環境への負荷が小さい高分子材料として注目されている。特に、ポリ乳酸は、生体内で分解吸収されることからドラッグデリバリーシステム(DDS)の担体や医療用接着剤等の医用材料への利用が期待されている。
【0003】
ポリ乳酸は石油化学系高分子材料に比べると耐熱性や機械的強度が低い。そこで、ポリ乳酸の耐熱性や機械的強度を改変するための研究が従来より行われている。
【0004】
その一つに、ポリ乳酸のステレオコンプレックス化がある。ステレオコンプレックスとは、鏡像異性体であるL体とD体を混合することにより形成される、L体とD体が交互に並んだ規則的な結晶構造、又はそのような結晶構造を有する物質をいう。一般に、ステレオコンプレックスは、該ステレオコンプレックスを構成するホモ結晶(L体、D体)よりも融点が高いことから、耐熱性に優れた高分子材料となり得る。そこで、ポリ乳酸についても、その鏡像異性体であるポリL乳酸とポリD乳酸を混合することによりステレオコンプレックス結晶を形成し、これを高分子材料として利用することが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0005】
また、ポリ乳酸の性質改変の別の方法として、ポリ乳酸の末端に置換基を導入する方法がある。例えば、非特許文献1及び2には、ポリL乳酸の片方の末端及びポリD乳酸の片方の末端のそれぞれにカフェ酸誘導体を化学的に結合させたポリL乳酸誘導体及びポリD乳酸誘導体が開示されている。これらポリL乳酸誘導体及びポリD乳酸誘導体から成るステレオコンプレックスはホモ結晶よりも熱分解温度(T10(10wt%の重量減少が見られる温度)及びTm(融点))が高くなり、耐熱性が向上した。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】再公表特許W2013/108884号公報
【特許文献2】特開2008-248176号公報
【0007】

【非特許文献1】H. Ajiro, et al., Chem. Commun. 2012, 48, 8478-8480
【非特許文献2】H. Ajiro, et al., Macromolecules 2013, 46, 5150-5156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、ポリ乳酸の医用材料への利用が期待されている。医用材料には、生体内の種々の物質に対して可逆的に結合したり、選択的に反応したりするといった機能性や、生体内での分解速度や薬物との親和性の調整容易性といった性質が要求される。しかしながら、ステレオコンプレックス化をはじめとするポリ乳酸の機械的強度や耐熱性の向上を目的とする様々な研究が成されているものの、それ以外の性質については十分な検討が成されていないのが実状である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ポリ乳酸の機械的強度及び耐熱性はもちろん、それ以外の物理的、化学的性質を改変することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ポリ乳酸は反応性に富む官能基を有しておらず、そのことがポリ乳酸の物理的性質や化学的性質等の改変を困難にしていることに着目し、本発明者は、反応性置換基をポリ乳酸に導入することを考えた。
この場合、ポリ乳酸のような高分子化合物においては、その末端に反応性置換基が存在すると、その反応性置換基が様々な物質と反応し易いことから、反応性置換基となる化合物を開始剤としてポリ乳酸誘導体を生成することにより該反応性置換基をポリ乳酸の末端に導入することを考えた。
その際、ポリ乳酸と同じように、植物由来の原料から得られる物質の中から、反応性置換基となりうる化合物を探索したところ、反応性に優れたアルデヒド基を有する化合物であるバニリン、あるいはヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を見出した。これらを開始剤としてポリ乳酸誘導体を生成することにより、アルデヒド基を有する反応性置換基をポリ乳酸の片末端に導入できる。アルデヒド基は生体内物質であるタンパク質やアミノ酸、多糖類等との反応性に優れた官能基として知られている。また、バニリンはラン科の植物であるバニラに含まれる化合物である。HMFは糖や炭水化物を熱分解することにより生成される。つまり、バニリン及びHMFはいずれも植物由来の原料から得られる。
【0011】
さらに本発明者はバニリン及びHMFの構造を参考に、開始剤となり得る化合物の探索を続けた結果、以下に示すポリ乳酸誘導体を得た。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するために成された本発明に係るポリ乳酸誘導体は、
下記の一般式(1)で表されることを特徴とする。
【化1】
JP2017033613A1_000003t.gif
上記式(1)中、X1~X5のうちの一つがアルデヒド基、残り4個のうちの一つがアルコキシ基であり、残り3個が水素原子である。
【0013】
また、本発明に係るポリ乳酸誘導体は、下記の一般式(2)で表されることを特徴とする。
【化2】
JP2017033613A1_000004t.gif
上記一般式(2)中、R1~R3のうち一つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステルのいずれかであり、残り二つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル、水素原子のいずれかである。
【0014】
上記一般式(1)で示されるポリ乳酸誘導体は、以下の一般式(7)で示される化合物を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合することにより得られ、反応性官能基であるアルデヒド基を有する。
【化3】
JP2017033613A1_000005t.gif

【0015】
また、上記一般式(2)で示されるポリ乳酸誘導体は、以下の一般式(8)で示される化合物を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合することにより得られる。この化合物は、反応性に優れた官能基もしくは特性基として、塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル等を有する。
【化4】
JP2017033613A1_000006t.gif

【0016】
一般式(2)で示されるポリ乳酸誘導体のうちR1がメトキシ基、R2が水素原子、R3がアルデヒド基であるポリ乳酸誘導体は下記の式(3)で表され、これは、バニリンを開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合することにより得られる。
【化5】
JP2017033613A1_000007t.gif

【0017】
さらに、本発明に係るポリ乳酸誘導体は下記の式(4)で示されることを特徴とする。
【化6】
JP2017033613A1_000008t.gif
式(4)で示されるポリ乳酸誘導体は、下記の式(10)で表される化合物(HMF)を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合することにより得られる。
【化7】
JP2017033613A1_000009t.gif

【0018】
なお、上記一般式(1)及び一般式(2)で表されるポリ乳酸誘導体を得るための開始剤の全てが必ずしも天然物由来の原料から得られるわけではないが、高分子材料として使用する目的によっては天然物由来の原料から得られるものではなくても(つまり、石油由来の原料から得られるものであっても)問題ない。
【0019】
また、上記課題を解決するために成された本発明は、別の態様として、ポリ乳酸系ステレオコンプレックスを提供する。
すなわち、本発明に係るポリ乳酸系ステレオコンプレックスは、上述の一般式(1)で示されるポリ乳酸誘導体のL体及びD体を含む。
また、本発明に係るポリ乳酸系ステレオコンプレックスは、上述の一般式(2)で示されるポリ乳酸誘導体のL体及びD体を含む。
さらに、本発明に係るポリ乳酸系ステレオコンプレックスは、上述の式(3)で示されるポリ乳酸誘導体のL体及びD体を含むもの、又は、式(4)で示されるポリ乳酸誘導体のL体及びD体を含むものである。
【0020】
本発明に係るポリ乳酸系ステレオコンプレックスは、これを構成するポリ乳酸のL体及びD体がいずれも反応性置換基が片末端に導入されているため、ポリ乳酸に比べて機械的強度、耐熱性が向上し、しかも、物理的及び化学的性質をも改変することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るポリ乳酸誘導体は、ポリ乳酸の片末端に反応性置換基を導入したため、ポリ乳酸の物理的、化学的性質を改変することができる。また、このようなポリ乳酸誘導体のD体及びL体から成るポリ乳酸系ステレオコンプレックスにおいては、融点や熱分解温度が高く、耐熱性に優れるという性質を有する。
特に、アルデヒド基を有する反応性置換基を導入したポリ乳酸誘導体、あるいはこのようなポリ乳酸誘導体のD体及びL体から成るポリ乳酸系ステレオコンプレックスにおいては、タンパク質やアミノ酸、細胞壁を構成する多糖類に対して選択的に反応したり可逆的に結合したりすることができるため、機能性や生体適合性に優れた医用材料として有用である。さらに、ポリ乳酸の片末端に導入するアルデヒド基を有する反応性置換基として植物由来の原料から得られるバニリンやHMFを用いることにより、安全性に優れた生分解性材料としてのポリ乳酸誘導体、あるいはポリ乳酸系ステレオコンプレックスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の製造例1に係るポリ乳酸誘導体のH NMRスペクトル。
【図2】実施例1の製造例2に係るポリ乳酸誘導体のH NMRスペクトル。
【図3】実施例1の製造例3に係るポリ乳酸誘導体のH NMRスペクトル。
【図4】実施例1の製造例4に係るポリ乳酸誘導体のH NMRスペクトル。
【図5A】バニリンとアミノ基が1:1の条件で行った、実施例1の製造例1に係るポリ乳酸誘導体(バニリン-ポリ乳酸)の末端のアルデヒド基と一級アミンの反応性の実験結果を示すH NMRスペクトル。
【図5B】図5Aの拡大図。
【図6A】バニリンとアミノ基が1:10の条件で行った、実施例1の製造例1に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの反応性の実験結果を示すH NMRスペクトル。
【図6B】図6Aの拡大図。
【図7】バニリンと2-(2-アミノエトキシ)エタノールの混合物(イミン化合物1)のH NMRスペクトル(a)、イミン化合物1に塩酸を加えて得られた化合物(バニリン)のH NMRスペクトル(b)。
【図8】バニリンとアミノ基が1:1の条件で行った、実施例1の製造例2に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの反応性の実験結果を示すH NMRスペクトル。
【図9】バニリンとアミノ基が1:10の条件で行った、実施例1の製造例2に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの反応性の実験結果を示すH NMRスペクトル。
【図10】実施例1の製造例2に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの可逆反応性を示すH NMRスペクトル。
【図11】バニリンとアミノ基が1:10の条件で行った、実施例1の製造例6に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの反応性の実験結果を示すH NMRスペクトル。
【図12】実施例1の製造例6に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの可逆反応性を示すH NMRスペクトル。
【図13】本発明の実施例1に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの可逆反応に伴う形態変化に関する実験手順の説明図。
【図14】本発明の実施例1に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの可逆反応に伴う形態変化に関する実験結果を示し、(a)は可逆反応式、(b)はチンダル現象の有無を調べる実験、(c)は動的光散乱法(Dynamic Light Scattering:DLS)を用いた粒子径測定結果、(d)は接触角の違いを示す写真。
【図15】Imine 1とPLLA-vanillin(2)のSEM写真。
【図16】Imine 1とPLLA-vanillin(2)のTEM写真。
【図17】本発明の実施例1に係るバニリン-ポリ乳酸の末端のアルデヒド基と一級アミンの可逆反応に伴う形態変化の推測図。
【図18】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(1)、(2)のH NMRスペクトル。
【図19】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(3)、(4)のH NMRスペクトル。
【図20】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(5)、(6)のH NMRスペクトル。
【図21】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(7)、(8)のH NMRスペクトル。
【図22】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(9)、(10)のH NMRスペクトル。
【図23】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(11)、(12)のH NMRスペクトル。
【図24】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(13)、(14)のH NMRスペクトル。
【図25】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(15)、(16)のH NMRスペクトル。
【図26】(a)、(b)は、表7に示す実施例2に係るポリ乳酸誘導体(17)、(18)のH NMRスペクトル。
【図27】実施例3の製造例1~4で得られたポリ乳酸誘導体のH NMRスペクトル。
【図28】HMFとアミノ基が1:1の条件で行った、実施例3の製造例3で得られたポリ乳酸誘導体(PLLA-HMF)のアルデヒド基と一級アミンの反応性の実験結果を示すH NMRスペクトル。
【図29】HMFとアミノ基が1:10の条件で行った、実施例3の製造例3で得られたポリ乳酸誘導体(PLLA-HMF)のアルデヒド基と一級アミンの反応性の実験結果を示すH NMRスペクトル。
【図30】実施例3の製造例3に係るポリ乳酸誘導体(PLLA-HMF)の末端のアルデヒド基と一級アミンの可逆反応性を示すH NMRスペクトル。
【図31】本発明の実施例1の製造例1及び製造例2、並びに製造例1と製造例2を混合して得られたステレオコンプレックスのFT-IRの結果を示す図。
【図32】製造例1及び製造例2、並びに製造例1と製造例2を混合して得られたステレオコンプレックスのXRDの結果を示す図。
【図33】製造例1及び製造例2、並びに製造例1と製造例2を混合して得られたステレオコンプレックスの熱分解測定(TGA)の結果を示す図。
【図34】製造例1及び製造例2、並びに製造例1と製造例2を混合して得られたステレオコンプレックスの示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す図。
【図35】本発明の実施例3の製造例3及び製造例4、並びに製造例3と製造例4を混合して得られたステレオコンプレックスのFT-IRの結果を示す図。
【図36】製造例3及び製造例4、並びに製造例3と製造例4を混合して得られたステレオコンプレックスのXRDの結果を示す図。
【図37】製造例3及び製造例4、並びに製造例3と製造例4を混合して得られたステレオコンプレックスの熱分解測定(TGA)の結果を示す図。
【図38】製造例3及び製造例4、並びに製造例3と製造例4を混合して得られたステレオコンプレックスの示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、製造例と実験例により、本発明に係るポリ乳酸誘導体及びポリ乳酸系ステレオコンプレックスを具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の製造例、実験例に限定されるものではない。

【0024】
[実施例1:ポリ乳酸誘導体]
本発明の第1態様に係るポリ乳酸誘導体は、以下の一般式(1)若しくは一般式(2)で表される。
【化8】
JP2017033613A1_000010t.gif
一般式(1)中、X1~X5のうちの一つがアルデヒド基、残り4個のうちの一つがアルコキシ基であり、残り3個が水素原子である。
【化9】
JP2017033613A1_000011t.gif
一般式(2)中、R1~R3のうち一つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステルのいずれかであり、残り二つは塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステル、水素原子のいずれかである。特に、少なくともR3が塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基、エステルのいずれかであることが好ましい。

【0025】
一般式(1)で表されるポリ乳酸誘導体のうち、X1がメトキシ基、X4がアルデヒド基、X2、X3、及びX5が水素原子であるもの、もしくは一般式(2)で表されるポリ乳酸誘導体のうちR1がメトキシ基、R2が水素原子、R3がアルデヒド基であるものは、以下の式(3)で表される。このポリ乳酸誘導体(以下、「バニリン-ポリ乳酸」ともいう)の具体的な製造例を以下に示す。
【化10】
JP2017033613A1_000012t.gif

【0026】
<1.バニリン-ポリ乳酸の合成>
バニリンはラン科の植物であるバニラに含まれる化合物として知られており、下記式(9)で表される。
【化11】
JP2017033613A1_000013t.gif

【0027】
一方、ポリ乳酸は下記式(14)で表されるL-乳酸またはD-乳酸、あるいはそれらの誘導体がエステル結合により重合した高分子化合物である。
【化12】
JP2017033613A1_000014t.gif
後述するポリ乳酸ステレオコンプレックスは、L-乳酸のみが重合したポリL-乳酸とD-乳酸のみが重合したポリD-乳酸から形成される。

【0028】
[製造例1]
(D,D)-ラクチドをモノマー(M)として、バニリンを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が20/1となるように、0.5gの(D,D)-ラクチドと、所定量のバニリン(I)をアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製した2-エチルヘキ酸すず(II)((Tin(II) 2-ethylhexanoate、又はTin(II) octoate(以下、「Sn(Oct)」と略す)のトルエン溶液1.1mLを加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより、(D,D)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れ、再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は85%であった。なお、製造例1で得られたメタノール不溶部を「PDLA-vanillin 1」ともいう。

【0029】
[製造例2]
(L,L)-ラクチドをモノマー(M)として、バニリンを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が20/1となるように、0.5gの(L,L)-ラクチドと、所定量のバニリンをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液を1.1mL加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(L,L)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は88%であった。なお、製造例2で得られたメタノール不溶部を「PLLA-vanillin 2」ともいう。

【0030】
[製造例3]
(D,D)-ラクチドをモノマー(M)として、バニリンを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が10/1となるように、1gの(D,D)-ラクチドと所定量のバニリンをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液4.4mLを加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより、(D,D)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は85%であった。なお、製造例3で得られたメタノール不溶部を「PDLA-vanillin 3」ともいう。

【0031】
[製造例4]
(L,L)-ラクチドをモノマー(M)として、バニリンを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が10/1となるように、1gの(L,L)-ラクチドと所定量のバニリンをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液4.4mLを加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(L,L)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は85%であった。なお、製造例4で得られたメタノール不溶部を「PLLA-vanillin 4」ともいう。

【0032】
[製造例5]
製造例5として、L-乳酸とD-乳酸の両方を含むポリ乳酸を合成し、その末端にバニリンを導入した。即ち、(L,L)-ラクチド及び(D,D)-ラクチドをモノマー(M1、M2)として用い、バニリンを開始剤(I)として用い、これらモノマー(M1、M2)と開始剤(I)のモル比(M1/M2/I)が10/10/1となるように、0.5gの(L,L)-ラクチド及び0.5gの(D,D)-ラクチドと、所定量のバニリンをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液2.2mLを加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(L,L)-ラクチドの重合、(D,D)-ラクチドの重合を進行させた。反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は87%であった。なお、製造例5で得られたメタノール不溶部を「PDLLA-vanillin 5」ともいう。

【0033】
[製造例6]
上述した製造例1と同じ条件で、且つ同じ手順を経てメタノール不溶部を回収した。収率は88%であった。この製造例6で得られたメタノール不溶部を「PLLA-vanillin 6」ともいう。

【0034】
[製造例7]
上述した製造例2と同じ条件で、且つ同じ手順を経てメタノール不溶部を回収した。収率は89%であった。この製造例7で得られたメタノール不溶部を「PDLA-vanillin 7」ともいう。

【0035】
<2.バニリン-ポリ乳酸の分析>
製造例1~7で得られたメタノール不溶部の分子量分析を行った。数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)並びに分子量分布(PDI=Mw/Mn)は、ポリスチレンテトラヒドロフラン標準溶液を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の結果から求めた。その結果を表1に示す。なお、表1において、「a」を付した分子量及びPDIは、UVモードで解析した結果、「b」を付した分子量及びPDIはRIモードで解析した結果を示す。
【表1】
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【0036】
また、製造例1~4で得られたメタノール不溶部について、プロトンNMRスペクトルにより構造解析を行った。その結果を図1~図4に示す。上述の表1及び図1~図4に示す結果から、製造例1~4のいずれにおいても、下記に示す反応によってポリ乳酸が形成され、且つ該ポリ乳酸の末端にバニリンが導入されていることが確認された。以下、各製造例で得られたポリ乳酸を「バニリン-ポリ乳酸」と呼ぶ。
【化13】
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【0037】
<3.ポリ乳酸の末端と一級アミンの可逆的な反応>
[実験例1]
ポリ乳酸の末端に導入したバニリンのアルデヒド基の反応性を確認するために、製造例1のバニリン-ポリ乳酸(PDLA-vanillin 1)30mgを 0.647mLの重クロロホルムに溶かし、その上に「2-(2-アミノエトキシ)エタノール0.04mLをクロロホルム100mLに希釈して調製した溶液」0.153mLを滴下した。これは末端のバニリンとアミノ基の比が1:1となる条件である。混合直後から24時間経過するまでのプロトンNMRスペクトルを測定した結果を図5Aおよび図5B、並びに表2に示す。
【表2】
JP2017033613A1_000017t.gif

【0038】
同様に、バニリン-ポリ乳酸(PDLA-vanillin 1)30mgを0.647mLの重クロロホルムに溶かし、その上に「2-(2-アミノエトキシ)エタノール0.4mLをクロロホルム100mLに希釈して調製した溶液」0.153mLを滴下した。これは末端のバニリンとアミノ基の比が1:10となる条件である。混合直後から24時間経過するまでのプロトンNMRスペクトルを測定した結果を図6A及び図6B並びに表3に示す。
【表3】
JP2017033613A1_000018t.gif

【0039】
図5Aおよび図5B、並びに表2に示すように、バニリン/アミノ基が1/1の条件では、2-(2-アミノエトキシ)エタノール(アミノ基)の濃度が薄すぎたためか、混合後、長時間経っても変化は観測されなかった。一方、図6A及び図6B並びに表3に示すように、バニリン/アミノ基が1/10の条件では、混合後、時間の経過とともにイミンが形成されることが確認された。以下に、バニリン-ポリ乳酸と2-(2-アミノエトキシ)エタノールとの反応式を示す。
【化14】
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【0040】
[実験例2]
クロロホルムを溶媒としてバニリンと2-(2-アミノエトキシ)エタノールを混合し、その混合物の構造解析(H NMR)を行ったところ、図7のa)に示す結果が得られた。この結果より、バニリンのアルデヒド基と2-(2-アミノエトキシ)エタノールのアミノ基が反応してイミン化合物1が形成されたことが推測された。続いて、バニリンと2-(2-アミノエトキシ)エタノールの混合物に塩酸を加えたものについて構造解析(H NMR)を行ったところ、図7のb)に示す結果が得られた。この結果より、バニリン(のアルデヒド基)と2-(2-アミノエトキシ)エタノール(のアミノ基)の反応は、下記反応式に示すように可逆的であることが推測された。
【化15】
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即ち、クロロホルムの存在下ではバニリンと2-(2-アミノエトキシ)エタノールが反応してイミン化合物1が形成され、該イミン化合物1に塩酸を加えると、バニリンと2-(2-アミノエトキシ)エタノールに分解される。従って、上記の結果から、バニリン-ポリ乳酸の末端に導入したアルデヒド基は、アミノ基を含有する化合物と反応してイミンを形成し、この反応は可逆的であることが示唆される。

【0041】
[実験例3]
製造例2のバニリン-ポリ乳酸(PLLA-vanillin 2)30mgを、0.692mLの重クロロホルムに溶かし、その上に「2-(2-アミノエトキシ)エタノール0.02mLをクロロホルム20mLに希釈して調製した溶液」0.108mLを滴下した。これは末端のバニリンとアミノ基の比が1:1となる条件である。混合直後から24時間経過するまでのプロトンNMRスペクトルを測定した結果を図8及び表4に示す。
【表4】
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図8及び表4から明らかなように、混合開始から1時間が経過した時点でイミンのピークがかすかに見られるものの、その後、24時間が経過するまでの間、イミンのピークに変化は見られなかった。

【0042】
同様に、製造例2のバニリン-ポリ乳酸(PLLA-vanillin 2)30mgを0.692mLの重クロロホルムに溶かし、その上に「2-(2-アミノエトキシ)エタノール0.2mLをクロロホルム20mLに希釈して調製した溶液」0.108mLを滴下した。これは末端のバニリンとアミノ基の比が1:10となる条件である。混合直後から24時間経過するまでのプロトンNMRスペクトルを測定した結果を図9及び表5に示す。
【表5】
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図9及び表5から明らかなように、混合開始から時間が経過するにつれてイミンのピークは徐々に大きくなり、一方、アルデヒドのピークが小さくなった。そして、最終的には98%のアルデヒドがイミンに変化したことを確認した。

【0043】
次に、末端のバニリンとアミノ基の比が1:10となる条件でバニリン-ポリ乳酸(PLLA-vanillin 2)と2-(2-アミノエトキシ)エタノールを混合し、24時間経過後に得られた混合物に、5mol/Lの塩酸(HCl)を100μL加えた後、クロロホルム及び水で3回抽出した。そして、エバポレーターで有機相を除去した後、重水素化クロロホルム(CDCl)を加え、構造解析(H NMR)を行った。その結果を図10に示す。図10(a)、(b)は、図9の「0h」及び「24h」のH NMRスペクトルを、図10(c)は24時間経過後の混合物に塩酸を加えたもののH NMRスペクトルを示す。図10(a)~(c)の比較から分かるように、(b)で見られたイミンのピークは塩酸を加えることにより消失し、アルデヒドのピークが出現した。このことから、バニリン-ポリ乳酸(PLLA-vanillin 2)と2-(2-アミノエトキシ)エタノールの反応は以下の反応式に示すように、可逆的であることが推測された。
【化16】
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【0044】
[実験例4]
製造例6のバニリン-ポリ乳酸(PDLA-vanillin 6)30mgを0.608mLの重クロロホルムに溶かし、その上に「2-(2-アミノエトキシ)エタノール0.1mLをクロロホルム20mLに希釈して調製した溶液」0.192mLを滴下した。これは末端のバニリンとアミノ基の比が1:10となる条件である。混合直後から24時間経過するまでのプロトンNMRスペクトルを測定した結果を図11及び表6に示す。
【表6】
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【0045】
図11及び表6から明らかなように、混合開始から時間が経過するにつれてイミンのピークは徐々に大きくなり、一方、アルデヒドのピークは徐々に小さくなった。そして、最終的には98%のアルデヒドがイミンに変化したことを確認した。

【0046】
次に、末端のバニリンとアミノ基の比が1:10となる条件でバニリン-ポリ乳酸(PDLA-vanillin 6)と2-(2-アミノエトキシ)エタノールを混合し、24時間経過後に得られた混合物に、5mol/Lの塩酸(HCl)を100μL加えた後、クロロホルム及び水で3回抽出し、エバポレーターで有機相を除去した後、重水素化クロロホルム(CDCl)を加え、構造解析(H NMR)を行った。その結果を図12に示す。図12(a)、(b)は、図11の「0h」及び「24h」のNMRスペクトルを、図12(c)は24時間経過後の混合物に塩酸を加えたもののNMRスペクトルを示す。図12(a)~(c)の比較から分かるように、(b)で見られたイミンのピークは塩酸を加えることにより消失し、アルデヒドのピークが出現した。このことから、バニリン-ポリ乳酸(PDLA-vanillin 6)と2-(2-アミノエトキシ)エタノールの反応は以下の反応式に示すように、可逆的であることが推測された。
【化17】
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【0047】
[実験例5]
以下のサンプルa~dを用いて、バニリン-ポリ乳酸の末端にあるアルデヒドと一級アミンの可逆的な反応に伴う形態変化を調べる実験を行った。
サンプルa~dは以下の手順で調製した。

【0048】
<1.サンプルa、bの調製>
製造例2で得られたバニリン-ポリ乳酸(PLLA-vanillin 2)30mgを、末端のバニリンとアミノ基の比が1:10となる条件で0.692mLの重クロロホルムに溶かし、その上に「2-(2-アミノエトキシ)エタノール0.2mLをクロロホルム20mLに希釈して調製した溶液」0.108mLを滴下した溶液で、24時間経過後に混合物(以下、「ポリマー1」という)を得た。ポリマー1は、上述した実験例3及び実験例4の結果から、バニリン-ポリ乳酸のアルデヒドがイミンに変化したものと推測される。

【0049】
続いて、ポリマー1をクロロホルム重溶媒に溶かした溶液 0.8mLを 40mLのメタノールに滴下してサンプルaを得た。
また、サンプルaを4℃、3500rpm、20分の条件で遠心分離し、上澄みをエバポレーション処理し、再度0.8mLのクロロホルムに溶かした後、16mLのメタノールに滴下(再沈殿)してサンプルbを得た。

【0050】
<2.サンプルc、dの調製>
上述したポリマー1に塩酸(HCl)を100μL加えた後、5mol/Lの塩酸(HCl)を100μL加えた後、クロロホルム及び水で3回抽出し、エバポレーターで有機相を除去し、ポリマーを得た。このポリマーは、上述した実験例3及び実験例4の結果から、バニリン-ポリ乳酸であると推測されることから、以下、「PLLA-vanillin(2)」という。
続いて、PLLA-vanillin(2)を、ポリマー1と同様に、クロロホルム重溶媒に溶かした溶液0.8mLを40mLのメタノールに滴下してサンプルcを得た。
また、サンプルcを4℃、3500rpm、20分の条件で遠心分離し、上澄みをエバポレーション処理し、再度0.8mLのクロロホルムに溶かした後、16mLのメタノールに滴下(再沈殿)してサンプルdを得た。
図13にポリマー1とPLLA-vanillin(2)の可逆反応、ポリマー1及びPLLA-vanillin(2)からサンプルa~dを得る手順の概略図を示す。

【0051】
<3.形態変化の確認>
図14(b)は、サンプルb及びサンプルdに赤色レーザを照射したときの様子を示す。図中、符号1、2はそれぞれ図14(a)の符号1及び2に対応する。図14(b)から分かるように、符号1のサンプルbではチンダル現象が観察されたことから、メタノール中には微小な粒子(ナノ粒子)が多数含まれ、これらナノ粒子がブラウン運動しているものと推測された。一方、符号2のサンプルdでは赤色レーザが透過したことから、粒子が凝集して沈澱していること、つまり、粒子の径が大きいことが推測された。

【0052】
図14(c)は、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering:DLS)を用いたサンプルbの粒子径測定結果を示す。この図より、サンプルbに含まれる粒子の平均粒径は158.1nmであることが分かる。
図14(d)及び図14(e)は、サンプルa及びサンプルcをそれぞれガラス基板上にスピンコートし、その上に水を滴下したときの様子を示している。符号1で示すサンプルaの接触角は72.0°±1.5°であったのに対して、符号2で示すサンプルcの接触角は85.5℃±1.2°であった。これらの値を有意差検定したところ、有意差(n=5, p<0.01)が認められた。すなわち、ポリマー1は親水基であるのに対し、末端が親水基でないサンプルc(PLLA-vanillin(2))は疎水的であることが分かった。これより、ポリマー1では、ガラス基板表面に親水性官能基である水酸基が出ていることが定性的に確認された。

【0053】
図15及び図16は、それぞれサンプルb及びサンプルdのSEM(走査型電子顕微鏡)画像、TEM(透過型電子顕微鏡)画像である。図16のスケールバーは、いずれも0.2μmである。これらの図から、ポリマー1はメタノール中で粒子状の形態をとり、PLLA-vanillin(2)はメタノール中で網目状の形態をとることが分かる。

【0054】
図14~図16の結果から、バニリン-ポリ乳酸は疎水性であるが、ポリマー1に変化することにより疎水性と親水性の両方を持つ分子となることが分かる。また、バニリン-ポリ乳酸(サンプルd)とポリマー1(サンプルb)は、極性の違いだけでなく、形態にも違いがあることが分かる。
つまり、ポリマー1から構成されるナノ粒子は、疎水性部分を内側、親水性部分を外側とするミセル構造を形成し、このナノ粒子は酸条件下で加水分解され、網目状の構造体であるバニリンーポリ乳酸に変化する(図17参照)。
バニリン及びポリ乳酸は、いずれも植物由来の原料から得られる物質であり、生体適合性に優れる。このように生体適合性を有するミセル構造体は、疎水性コア内に薬剤を内包させ、外側の親水性基の作用により血中への分散性を向上させるため、従来よりDDS材料として用いられている。

【0055】
ポリマー1は、希塩酸で酸処理することで加水分解されることから、疎水性コア内に薬剤を内包したミセル構造体は胃酸の存在下でバニリン-ポリ乳酸に変化して、薬剤とともに体内に吸収される。従って、本実施例に係るバニリン-ポリ乳酸は、DDS材料への応用が見込まれ、例えば胃に到達した後で体内に吸収される経口薬の担体としても有用であると思われる。

【0056】
[実施例2:ポリ乳酸誘導体]
実施例1に示した以外の本発明の第1態様に係るポリ乳酸誘導体の製造例を表7に示す。表7の分子量分析は、ポリスチレンテトラヒドロフラン標準溶液を使用したGPCの結果から求めた。また、表7において、分子量及びPDIは、RIモードで解析した結果を示す。
【表7】
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【0057】
表7に示すポリ乳酸誘導体は、以下の一般式(8)で示される化合物(R1~R3のうち少なくとも一つが塩素原子、フッ素原子、アルデヒド基、アルコキシ基、アルキル基のいずれか)を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合することにより得られたものである。
【化18】
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【0058】
また、表7に示す1~18のポリ乳酸誘導体について、プロトンNMRスペクトルにより構造解析を行った。その結果を、図18~図26に示す。
図18(a)、(b)はバニリンを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-vanillin(1)、PDLA-vanillin(2)のH NMRスペクトルである。
図19(a)、(b)はguiacolを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-guiacol(3)、PDLA-guiacol(4)のH NMRスペクトルである。
図20(a)、(b)はethyl vanilateを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-ethyl vanilate(5)、PDLA-ethyl vanilate(6)のH NMRスペクトルである。
図21(a)、(b)はethyl vanillinを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-ethylvanillin(7)、PDLA-ethylvanillin(8)のH NMRスペクトルである。
図22(a)、(b)はsyringaldehydeを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-syringaldehyde(9)、PDLA-syringaldehyde(10)のH NMRスペクトルである。
図23(a)、(b)は4-tert-butylphenolを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-4-tert-butylphenol(11)、PDLA-4-tert-butylphenol(12)のH NMRスペクトルである。
図24(a)、(b)は4-amylphenolを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-4-amylphenol(13)、PDLA-4-amylphenol(14)のH NMRスペクトルである。
図25(a)、(b)は4-chlorophenolを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-4-chlorophenol(15)、PDLA-4-chlorophenol(16)のH NMRスペクトルである。
図26(a)、(b)は4-fluorophenolを開始剤として、モノマーであるラクチド(L体,D体)をラクチドと開環重合することにより得られたPLLA-4-fluorophenol(17)、PDLA-4-fluorophenol(18)のH NMRスペクトルである。

【0059】
[実施例3:ポリ乳酸誘導体]
本発明の第2態様に係るポリ乳酸誘導体は、以下の式(4)で表される。
【化19】
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このポリ乳酸誘導体は、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を開始剤として、モノマーであるラクチドを開環重合することにより製造される。このときの反応式は以下の通りである。
【化20】
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【0060】
以下、このポリ乳酸誘導体(以下、「HMF-ポリ乳酸」という)の具体的な製造例について説明する。
<1.HMF-ポリ乳酸の合成>

【0061】
[製造例1]
(L,L)-ラクチドをモノマー(M)として、HMFを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が80/1となるように、1.0gの(L,L)-ラクチドと、所定量のHMFをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液を0.55mL加え、110℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(L,L)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は95%であった。なお、製造例1で得られたメタノール不溶部を「PLLA-HMF(1)」ともいう。

【0062】
[製造例2]
(D,D)-ラクチドをモノマー(M)として、HMFを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が80/1となるように、1.0gの(D,D)-ラクチドと、所定量のHMFをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液を0.55mL加え、110℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(D,D)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は87%であった。なお、製造例2で得られたメタノール不溶部を「PDLA-HMF(2)」ともいう。

【0063】
[製造例3]
(L,L)-ラクチドをモノマー(M)として、HMFを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が20/1となるように、1.0gの(L,L)-ラクチドと、所定量のHMFをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液を2.2mL加え、110℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(L,L)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は96%であった。なお、製造例3で得られたメタノール不溶部を「PLLA-HMF(3)」ともいう。

【0064】
[製造例4]
(D,D)-ラクチドをモノマー(M)として、HMFを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が20/1となるように、1.0gの(D,D)-ラクチドと、所定量のHMFをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液を2.2mL加え、110℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(D,D)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は95%であった。なお、製造例4で得られたメタノール不溶部を「PDLA-HMF(4)」ともいう。

【0065】
<2.HMF-ポリ乳酸の分析>
製造例1~4で得られたメタノール不溶部の分子量分析を行った。その結果を表8に示す。なお、表8には、製造例1~4の比較のために製造した例5、6の結果も示す。比較製造例5、6の合成反応式を以下に示す。
【表8】
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【化21】
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【0066】
[比較製造例5]
(L,L)-ラクチドをモノマー(M)として、ベンジルアルコールを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が20/1となるように、1.0gの(L,L)-ラクチドと、所定量のベンジルアルコールをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液を2.2mL加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(L,L)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は83%であった。なお、比較製造例5で得られたメタノール不溶部を「PLLA-benzylalchol(5)」ともいう。

【0067】
[比較製造例6]
(D,D)-ラクチドをモノマー(M)として、ベンジルアルコールを開始剤(I)として用い、モノマー(M)と開始剤(I)のモル比(M/I)が20/1となるように、1.0gの(D,D)-ラクチドと、所定量のベンジルアルコールをアンプル管に導入し、内部を窒素置換した。ここに、1mol%に調製したSn(Oct)のトルエン溶液を2.2mL加え、120℃に設定したオイルバスで2時間加熱することにより(D,D)-ラクチドの重合を進行させた。得られた反応混合物をクロロホルム10mLに溶解させ、これを200mLのメタノールに入れて再沈澱したメタノール不溶部を回収した。収率は84%であった。なお、比較製造例6で得られたメタノール不溶部を「PDLA-benzylalchol(6)」ともいう。

【0068】
表8において「a」を付した分子量(Mn)は理論分子量である。また、「b」を付した分子量(Mn)は、数平均分子量(Mn)である。数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)並びに分子量分布(PDI=Mw/Mn)は、ポリスチレンテトラヒドロフラン標準溶液を使用したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)の結果から求めた。なお「c」を付した分子量及びPDIはUVモードで解析した結果、「d」を付した分子量及びPDIはRIモードで解析した結果を示す。

【0069】
製造例1~4で得られたメタノール不溶部について、プロトンNMRスペクトルにより構造解析を行った。その結果を図27に示す。表8及び図27に示す結果から、製造例1~4のいずれにおいても、上述した式(13)に示す反応によってポリ乳酸が形成され、且つ該ポリ乳酸の末端にHMFが導入されていることが確認された。

【0070】
<3.ポリ乳酸の末端と一級アミンの可逆的な反応>
[実験例1]
ポリ乳酸の末端に導入したHMFのアルデヒド基の反応性を確認するために、製造例3のHMF-ポリ乳酸(PLLA-HMF(3))を用いて、上述した実施例1の実験1と同様の実験を行った。その結果を、表9及び図28、並びに表10及び図29に示す。
【表9】
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【表10】
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【0071】
表9及び図28は、PLLA-HMF(3)の末端のバニリンとアミノ基の比が1:1となる条件で行った実験結果を、表10及び図29はPLLA-HMF(3)の末端のバニリンとアミノ基の比が1:10となる条件で行った実験結果を、それぞれ示す。

【0072】
図28及び表9、図29及び表10に示すように、HMF/アミノ基が1/1の条件、1/10の条件のいずれにおいても、混合後、時間の経過とともにイミンが形成されることが確認できた。このうち、HMF/アミノ基が1/1の条件では、混合してから24時間経過後は、63%のアルデヒド基がアミノ基と反応してイミンを形成し、HMF/アミノ基が1/10の条件では混合してから24時間経過後は、100%のアルデヒド基がアミノ基と反応してイミンを形成した。以下に、HMF-ポリ乳酸と2-(2-アミノエトキシ)エタノールとの反応式を示す。
【化22】
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【0073】
次に、末端のHMFのアルデヒド基とアミノ基の比が1:10となる条件でHFM-ポリ乳酸(PLLA-HMF(3))と2-(2-アミノエトキシ)エタノールを混合し、24時間経過後に得られた混合物に、5mol/Lの塩酸(HCl)を1mL加えた後、クロロホルム及び水で3回抽出した。そして、エバポレーターで有機相を除去した後、重水素化クロロホルム(CDCl3)を加え、構造解析(H NMR)を行った。その結果を図30に示す。図30(a)、(b)は、図29の「0h」及び「24h」のH NMRスペクトルを、図30(c)は24時間経過後の混合物に塩酸を加えたもののH NMRスペクトルを示す。図30(a)~(c)の比較から分かるように、(b)で見られたイミンのピークは塩酸を加えることにより消失し、アルデヒドのピークが出現した。このことから、HMF-ポリ乳酸と2-(2-アミノエトキシ)エタノールの反応は以下の反応式に示すように、可逆的であることが推測された。
【化23】
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【0074】
[実施例4:ポリ乳酸ステレオコンプレックス]
<1.ポリ乳酸ステレオコンプレックスの製造方法及び熱解析結果>
実施例1の製造例1で得られたバニリン-ポリDー乳酸と、実施例1の製造例2で得られたバニリン-ポリL-乳酸をそれぞれアセトニトリルに5mg/mLの濃度で溶解させた後、室温で混合し、静置した状態で24時間加熱した。その後、ステレオコンプレックスである不溶部を回収し、熱分析を行った。その結果を図31~図34に示す。

【0075】
具体的には、図31(a)~(c)は、製造例1のバニリンーポリDー乳酸、製造例2のバニリン-ポリL-乳酸、不溶部(バニリン-ポリ乳酸ステレオコンプレックス(以下、「バニリン-ポリ乳酸SC」ともいう。))のフーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)の結果を示す。図32(a)~(c)は、製造例1のバニリン-ポリD-乳酸、製造例2のバニリン-ポリL-乳酸、バニリン-ポリ乳酸SCのX線構造解析(XRD)の結果を示す。図33は、製造例1のバニリン-ポリD-乳酸、製造例2のバニリン-ポリL-乳酸、バニリン-ポリ乳酸SCの熱分解測定(TGA)の結果を示す。図34(a)~(c)は、製造例1のバニリン-ポリD-乳酸、製造例2のバニリン-ポリL-乳酸、バニリン-ポリ乳酸SCの示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す。

【0076】
これら図31~図34の結果から、製造例1のバニリン-ポリD-乳酸及び製造例2のバニリン-ポリL-乳酸よりもバニリン-ポリ乳酸SCの方が融点や熱分解温度が向上したことが分かった。このような結果は、ポリ乳酸のステレオコンプレックス化で見られる現象(高性能化)であり、ポリ乳酸の末端へのバニリン導入がステレオコンプレックス化による高性能化を阻害しないことが分かった。

【0077】
特に、図32のバニリン-ポリ乳酸SCのXRDに、2θ=11.6°、20.5°、および23.7°に強いピークが観測され、バニリン-ポリD-乳酸及びバニリン-ポリL-乳酸の単独結晶に由来する2θ=15°、16.4°、18.7°、および22.1°にはピークが観測されなかったことから、バニリン-ポリ乳酸SCがステレオコンプレックス構造を有していることが確認された。

【0078】
また、図33より、バニリン-ポリL-乳酸及びバニリン-ポリD-乳酸のT10は、それぞれ232℃および241℃付近であったのに対して、これらのステレオコンプレックス(バニリン-ポリ乳酸SC)のT10はさらにバニリン-ポリL-乳酸より20℃程度向上し、256℃付近であった。この結果から、ステレオコンプレックス化によって、ポリ乳酸のT10が向上したことが示唆された。
さらに、図34に示すように、DSCの結果では、製造例1、2のバニリン-ポリL-乳酸、バニリン-ポリD-乳酸の融点(Tm)は 156℃付近であったのに対して、バニリン-ポリ乳酸SCの融点(Tm)は 235℃付近であり、79℃以上向上した。

【0079】
医用器具は通常、200℃付近まで加熱して滅菌処理、殺菌処理が行われる。上記したバニリン-ポリ乳酸SCの融点が200℃以上であることから、該バニリン-ポリ乳酸SCは滅菌処理や殺菌処理に耐えうる、耐熱性に優れた高分子材料として有用であることが分かる。また、ポリ乳酸SCを構成するポリ乳酸の末端に導入したバニリンは、植物由来の物質であることから、上記のバニリン-ポリ乳酸SCは安全性に優れる点でも医用材料として有用である。

【0080】
<2.別のポリ乳酸ステレオコンプレックスの製造方法及び熱解析結果>
実施例3の製造例3で得られたPDLA-HMFと、実施例3の製造例4で得られたPLLA-HMFをそれぞれアセトニトリルに5mg/mLの濃度で溶解させた後、室温で混合し、24時間静置した。その後、ステレオコンプレックスである不溶部を回収し、熱分析を行った。その結果を図35~図38に示す。

【0081】
具体的には、図35(a)~(c)は、製造例3のPDLA-HMF、製造例4のPLLA-HMF、不溶部(HMF-ポリ乳酸ステレオコンプレックス(以下、「HMF-ポリ乳酸SC」ともいう。))のフーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)の結果を示す。図36(a)~(c)は、製造例3のPDLA-HMF、製造例4のPLLA-HMF、HMF-ポリ乳酸SCのX線構造解析(XRD)の結果を示す。図37は、製造例3のPDLA-HMF、製造例4のPLLA-HMF、HMF-ポリ乳酸SCの熱分解測定(TGA)の結果を示す。図38(a)~(c)は、製造例3のPDLA-HMF、製造例4のPLLA-HMF、HMF-ポリ乳酸SCの示差走査熱量測定(DSC)の結果を示す。

【0082】
図36のHFM-ポリ乳酸SCの、XRDに、2θ=11.9°、20.7°、および23.9°に強いピークが観測され、PLLA-HMF及びPDLA-HMFの単独結晶に由来する2θ=14.7°、16.6°、18.9°、および22.3°にはピークが観測されなかったことから、HMF-ポリ乳酸SCがステレオコンプレックス構造を有していることが確認された。

【0083】
また、図37より、PLLA-HMF及びPDLA-HMFのT10は、それぞれ234℃および231℃付近であったのに対して、これらのステレオコンプレックス(HMF-ポリ乳酸SC)のT10は255℃付近であった。この結果から、ステレオコンプレックス化によって、ポリ乳酸のT10が向上したことが示唆された。
さらに、図38に示すように、DSCの結果では、PLLA-HMF及びPDLA-HMFの融点(Tm)は それぞれ約140℃、約143℃であったのに対して、HMF-ポリ乳酸SCの融点(Tm)は 約210℃であり、約70℃向上した。

【0084】
これら図35~図38の結果から、実施例3の製造例3のPDLA-HMF、製造例4のPLLA-HMFよりもHMF-ポリ乳酸SCの方が融点や熱分解温度が向上したことが分かった。以上より、バニリンと同様に、ポリ乳酸の末端へのHMFの導入が、ポリ乳酸のステレオコンプレックス化による高性能化を阻害しないことが分かった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5A】
4
【図5B】
5
【図6A】
6
【図6B】
7
【図7】
8
【図8】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図13】
14
【図14】
15
【図15】
16
【図16】
17
【図17】
18
【図18】
19
【図19】
20
【図20】
21
【図21】
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【図22】
23
【図23】
24
【図24】
25
【図25】
26
【図26】
27
【図27】
28
【図28】
29
【図29】
30
【図30】
31
【図31】
32
【図32】
33
【図33】
34
【図34】
35
【図35】
36
【図36】
37
【図37】
38
【図38】
39