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明細書 :伝送装置、及び伝送方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年5月31日(2018.5.31)
発明の名称または考案の名称 伝送装置、及び伝送方法
国際特許分類 H04B  10/516       (2013.01)
H04B  10/61        (2013.01)
H04J  14/04        (2006.01)
FI H04B 10/516
H04B 10/61
H04J 14/04
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 24
出願番号 特願2017-535544 (P2017-535544)
国際出願番号 PCT/JP2016/073965
国際公開番号 WO2017/030137
国際出願日 平成28年8月17日(2016.8.17)
国際公開日 平成29年2月23日(2017.2.23)
優先権出願番号 2015162724
優先日 平成27年8月20日(2015.8.20)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】國分 泰雄
【氏名】渡邉 達彦
出願人 【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100103894、【弁理士】、【氏名又は名称】家入 健
審査請求 未請求
テーマコード 5K102
Fターム 5K102AA02
5K102AA61
5K102AD15
5K102AH14
5K102AH24
5K102AH31
5K102PA11
5K102PH01
5K102PH22
5K102PH49
要約 モード空間多次元変調において、受信信号の同時性を確保し、モード間の群速度差による受信信号の遅延差を処理するデジタル信号処理の負荷を大幅に低減する。多次元変調において、変調空間内でシンボル間の間隔を大幅に狭めることなく1シンボル当たりのビット数を増加させ、信号強度に対する雑音の比率(S/N比)を向上させる。変調を行う多次元の変調空間として、従来用いていなかったモード間の位相、及び偏光間の位相を用いることによって変調空間の次元を高めるものであり、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの複数の振幅及び位相を多次元の変調空間として用いる。モード間の位相、及び偏光間の位相を変調空間として用いて、多次元変調の変調の次元数を高め、1シンボル当たりの伝送情報量を高める。
特許請求の範囲 【請求項1】
数モードファイバを伝送路とし、前記数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送を行う伝送装置において、
送信部のモード変調、伝送路のモード伝搬、及び受信部のモード復調において、多値の伝送情報を、前記数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの複数の振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、当該多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けし、多次元多値モード変調による伝送を行うことを特徴とする、伝送装置。
【請求項2】
前記数モードファイバの高次モードにおいて縮退モードのLPモードと直交偏光成分とを用い、前記各縮退モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、多値の伝送情報を前記多次元の変調空間の各座標に対応付ける多次元多値モード変調を行った信号光を送信する送信部と、
前記信号光を受信し、前記多次元多値モード変調された多次元の変調空間の各座標に対応する干渉光をコヒーレント検出によって検出し、
前記検出した干渉光から偏波分離によって直交偏光成分を分離し、
前記縮退直交偏光成分から縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復調する多次元多値モード復調を行って前記伝送情報を出力する受信部とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の伝送装置。
【請求項3】
数モードファイバを伝送路とし、前記数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送を行う伝送方法において、
モード変調、モード伝搬、及びモード復調において、多値の伝送情報を、前記数モードファイバの高次モードの複数の縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、当該多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けし、多次元多値モード変調による伝送を行うことを特徴とする、伝送方法。
【請求項4】
送信側において、前記数モードファイバの高次モードにおいて縮退モードのLPモードと直交偏光成分とを用い、前記各縮退モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、多値の伝送情報を前記多次元の変調空間の各座標に対応付ける多次元多値モード変調を行い、多次元多値モード変調で得られた信号光を送信し、
受信側において、前記信号光を受信し、前記多次元多値モード変調された多次元の変調空間の各座標に対応する干渉光をコヒーレント検出によって検出し、
前記検出した干渉光から偏波分離によって直交偏光成分を分離し、
前記直交偏光成分から縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復調する多次元多値モード復調を行って前記伝送情報を出力することを特徴とする、請求項3に記載の伝送方法。
【請求項5】
数モードファイバを伝送路とし、前記数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送情報を送信する送信機において、
搬送光の光源、前記搬送光を複数の分岐光に分岐する光分岐器、及び、前記複数の分岐光に多次元多値モード変調を施す多次元多値モード変調器を備え、
前記多次元多値モード変調器は、複数の多値変調器及びモード合波器を備え、
前記多値変調器は、前記伝送情報に基づいて、前記搬送光について前記数モードファイバの高次モードの各縮退直交偏光モードの振幅及び位相を変調し、
前記モード合波器は、前記各多値変調器で変調した複数の縮退直交偏光モードの成分を合波し、
送信機のモード変調において、多値の伝送情報を、前記数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、当該多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けし、多次元多値モード変調による伝送を行うことを特徴とする、送信機。
【請求項6】
前記多値変調器は、縮退直交偏光モードのx偏光成分及びy偏光成分について、x偏光成分の振幅を変調するX側振幅変調器、及びx偏光成分の位相を変調するX側位相変調器と、y偏光成分の振幅を変調するY側振幅変調器、及びy偏光成分の位相を変調するY側位相変調器と、
x偏光成分を変調したx偏波とy偏光成分を変調したy偏波とを偏波合波する偏光ビームスプリッタとを備えることを特徴とする、請求項5に記載の送信機。
【請求項7】
数モードファイバを伝送路とし、前記数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送情報を受信する受信機において、
多次元多値モード復調によって、前記縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復調し伝送情報を出力する多次元多値モード復調器を備え、
前記多次元多値モード復調器は、
前記伝送路の出射端の信号光と局部発振光とを混合して干渉光を生成して、前記多次元多値モード変調された多次元の変調空間の各座標に対応する干渉光を出力する混合器と、
前記干渉光を偏波分離して、直交偏光成分のx偏光成分及びy偏光成分を分離する偏波分離器と、
各偏光成分に分離した干渉光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出した交流成分の加減算によって、前記直交偏光成分から各縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を得る演算器を備え、
受信機のモード復調において、多値の伝送情報を、前記数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、当該多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けし、多次元多値モード変調による伝送を行うことを特徴とする、受信機。
【請求項8】
前記混合器は、局部発振光を発する局部発振器と半透明鏡とを備え、
前記半透明鏡の一方の入射端に前記伝送路の出射端の信号光を入射させ、前記半透明鏡の他方の入射端に前記局部発振器が発する局部発振光を入射させ、出射端から信号光と局部発振光とを混合して得られる干渉光を出射し、
前記光検出器は、前記偏波分離器が分離したx偏光成分の出射光を入射させるX側4象限分割光検出器と、前記偏波分離器が分離したy偏光成分の出射光を入射させるY側4象限分割光検出器とを備え、X側4象限分割光検出器及びY側4象限分割光検出器はそれぞれ4つの各象限から位相を異にする出力信号を出力し、
前記演算器は、X側4象限分割光検出器の4つの出力信号を入力し、各出力信号を加減算してx偏光成分の振幅及び位相を演算するX偏光成分演算器と、Y側4象限分割光検出器の4つの出力信号を入力し、各出力信号を加減算してy偏光成分の振幅及び位相を演算するY偏光成分演算器とを備えることを特徴とする、請求項7に記載の受信機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、光ファイバ通信による伝送技術に関し、多次元多値モード変調による伝送装置、及び伝送方法、並びに伝送装置を構成する送信機並びに受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量光通信技術において、伝送媒体として単一モードファイバの他、より大きな通信容量を有したモード多重用数モードファイバが用いられようとしている。複数モードの伝送を可能とするファイバとして、コア径が太いマルチモードファイバや、コア径を単一モードファイバと多モードファイバとの中間とする数モードファイバがある。数モードファイバでは10個程度以下の複数の伝搬モードに異なる情報を載せてモード多重伝送を行う。モード多重伝送では、伝送時に複数の単一モード信号をモード多重信号に合波して多モード伝送路で送信し、受信側において受信したモード多重信号を複数の単一モード信号に分波した後に復号する。
【0003】
光ファイバ通信では大容量化のために多値変調技術に加えて多次元変調技術が提案されている。多次元変調空間としてストークス空間内での偏波変調を用いる3次元多値変調(非特許文献1)や、高次モードを変調空間に用いる多次元変調(非特許文献2,3)が提案されている。
【0004】
なお、ここで、モード多重は複数の信号光を光ファイバの複数の異なる伝搬モードで伝送する多重伝送であり、多値変調は複数の光の状態に複数の伝送情報を対応付ける変調であり、変調空間は多次元変調を行う符号空間の数学的な次元をもつ空間である。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】K. Kikuchi. And S.Kawakami. Optics Express. Vol.22. no.7 pp.7374-7387. Apr.2014
【非特許文献2】L.B.Djordjevic, T. Liu,I..Xu. and T. Wang, Photonics J., vol.4.no.5. pp.1325-1332, Oct.2012
【非特許文献3】S.O.Arik, D.S. Millar, T. Koike-Akino, K. Kojima, and K. Parsons, OFC2014, San Francisco. W4J.I.March 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した非特許文献1に記載の偏波変調は,単一モードファイバにおいて基本モードのx偏光とy偏光の振幅のほかに、x偏光とy偏光間の位相差を変調の次元に用いる3次元変調空間における多値変調であるが、高次モードを用いるモード変調ではない。また,上記した非特許文献2と非特許文献3の多値変調技術は、モード空間多次元変調において、多値変調を行う変調次元として全てのモード空間を平等に扱っている。同時に伝送される複数の伝搬モードは、モード間で群速度に差異があるため、全てのモード空間を用いて伝送を行うと、モード間の群速度差によって受信信号に遅延差が生じる。そのため、受信端において到達時間が異なる複数の受信信号を処理するために、MIMO処理等のデジタル信号処理が必要となる。このMIMO処理は受信信号の遅延差が大きいとデジタル信号処理の大きな処理量が必要であるため、受信端側の負荷が大きくなるという問題がある。
【0007】
また、多値変調において、IQ面上の信号点を増やすQAM変調によって1シンボル当たりのビット数を増やすことができる。例えば16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調によれば、1シンボルで4ビットを伝送できる。しかしながら、IQ面上の2次元の面内で信号点を増やすことでビット数を増やすことができるが、IQ面内でのシンボル間の間隔(符号間距離)が狭くなり、信号強度に対する雑音の比率であるS/N比が犠牲になるという問題がある。したがって,長距離伝送して雑音が累積しているような場合には、多値変調信号は符号誤りを起こし易くなるという問題がある。
【0008】
そこで、本願発明は、前記した従来の問題点を解決し、モード空間多次元変調において、受信信号の同時性を確保し、モード間の群速度差による受信信号の遅延差を処理するデジタル信号処理の負荷を大幅に低減することを目的とする。
【0009】
また、多次元変調において、変調空間内でシンボル間の符号間隔を大幅に狭めることなく1シンボル当たりのビット数を増加させ、信号強度に対する雑音の比率(S/N比)を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の伝送装置及び伝送方法は、多次元多値モード変調によって情報伝送を行うものである。多次元多値モード変調において、「多次元」は変調を加える変数(あるいはパラメータ)の数が3つ以上の複数あることを表し、「多値」はその変調に用いる変数に0または1のみではなく多段階の変調を加えることを表し、「モード変調」は光ファイバ内を伝播する複数の固有モードの振幅と位相を多次元変調の変数に利用することを表している。
【0011】
本願発明は、空間変調を行う多次元の変調空間として、従来用いていなかったモード間の位相、及び偏光間の位相を用いることによって変調空間の次元を高めるものであり、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの複数の振幅及び位相を多次元の変調空間として用いる。
【0012】
送信側においてモード間の変調を行う変調器や、受信側においてモード間の復調を行う復調器は、通常、モード合分波器で構成されており、モード間の位相については考慮されていない。また、複数の伝搬モードはモード間に群速度差があるため、各モードの信号伝搬時間に同時性がなく、偏光間の位相についても考慮されていない。従来の多次元変調では、モード間の位相、及び偏光間の位相を変調空間として用いられていない。
【0013】
本願発明は、モード間の位相、及び偏光間の位相を変調空間として用いて、多次元変調の変調の次元数を高め、1シンボル当たりの伝送情報量を高めることができる。
【0014】
本願発明の伝送装置及び伝送方法は、数モードファイバを伝送路とし、この数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送を行う。
【0015】
送信側ではモード変調を行い、伝送路ではモード伝搬を行い、受信側ではモード復調を行う。モード変調、モード伝搬、及びモード復調は、多次元多値モード変調による時間領域の変調を用いた伝送である。多次元多値モード変調では、多値の伝送情報を、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの複数の振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付ける。
【0016】
(多次元多値モード変調)
光ファイバを伝搬する導波モードにおいて、伝搬定数がほぼ等しく、重ね合わせによって直線偏波を構成できるモード群はLPモードと呼ばれる。LPモードは基本モード(LP01モード)及び高次モードを備える。単一モードファイバはLP01モードのみが伝搬し、数モードファイバはLP01モードに加えてLP11モード等の高次モードが伝搬する。
【0017】
LP11モードには、電磁界強度分布において、x方向にモード関数の節を持つLP11evenモードと、y方向にモード関数の節を持つLP11oddモードがあり、LP11evenモードとLP11oddモードは伝搬定数が等しく縮退している。LP11evenモードとLP11oddモードは、それぞれ偏光方向を90度異にする2つの電磁界分布が存在するため、x偏光及びy偏光を合わせて同じ伝搬定数を持つ4つの異なる電磁界分布によって4重縮退の状態となっている。
【0018】
したがって、LPμm(μ>0)モードのモード群は、モード関数において回転対称な2つのモード電磁界分布を有すると共に、偏光方向が直交する2つのモードの全4つの電磁界分布が4重縮退している。なお、LP0mモードは電磁界分布が中心軸対称なので、直交する偏光の2つのモードが縮退している。
【0019】
LPモードの各電磁界分布は以下の式で表すことができる。
光角周波数をωとし振幅をAとすると、LP01モードのx偏光成分の電界分布(電界ベクトル)をE01(x)(x,y,z;t)は、
【数1】
JP2017030137A1_000003t.gif
で表され、LP01モードのy偏光成分E01(y)(x,y,z;t)は、
【数2】
JP2017030137A1_000004t.gif
で表される。ここで f01(x,y)は電界振幅関数であり、この関数はx偏光でもy偏光でも同じである。
【0020】
LP11モードの場合も同様であり、LP11モードは偏光方向がx偏光とy偏光の2種類に加えて、さらにモード関数がx方向に節をもつか(evenモード(偶モード))、y方向に節をもつか(oddモード(奇モード))の区別があるため、全部で4通りの縮退したモードが存在する。縮退モードでは、伝搬定数は同じで電界分布が異なる。これら4通りの縮退したモードは以下の式で表される。
【数3】
JP2017030137A1_000005t.gif
JP2017030137A1_000006t.gifJP2017030137A1_000007t.gifJP2017030137A1_000008t.gif
【0021】
なお、ここでは、θ1234を全てLP01モードのx偏光成分を基準とした相対位相で表している。
【0022】
図1は、LP01モード、LP11evenモード、及びLP11oddモードの電磁界分布と振幅及び位相を表している。図1において、モード電磁界分布は,強度分布と電界の向きを同時に表現している。また、LP11モードにおいて,節の上下(あるいは左右)で電界振幅の符号が逆であり、図では逆方向の電界ベクトルで表している。
【0023】
LP01モードとLP11モードの伝搬定数が異なっているため、入射端においてこれらのLPモードを全て含めた変調空間(モード空間)で多次元変調を行うと、信号が到達する時間がモードごとに大幅に異なるため、受信端でのデジタル信号処理に多大な負荷がかかるという問題が発生する。
【0024】
これに対して、本願発明の多次元多値モード変調では、LP11evenモードとLP11oddモードのx偏光およびy偏光の各成分B,B,B,Bと、これらの間の位相差θ-θ,θ-θ,θ-θ のみを多次元変調のパラメータ(変数)として用い、これによって信号伝搬速度の相違による問題を解消する。なお、各位相θ~θは伝搬に伴って変化するが、位相差は一定であるため、位相差を用いることで伝搬に伴う変調符号の変化を防いでいる。
【0025】
振幅B,B,B,Bと、位相差θ-θ,θ-θ,θ-θの7つのパラメータ(変数)を用いることによって、7次元の多次元モード変調が可能となり、1シンボルで7ビットの伝送が可能となる。さらに、信号振幅および位相差に対する変調で多値化を行うことで1シンボル当たりのビット数を増加させることができる。
【0026】
伝搬に伴って座標軸そのものが回転座標変換を受け、また、偏光の基準となる座標軸の回転や偏光間位相差の変化も発生するが、これらは座標変換であるため、逆変換して戻すことが可能である。
【0027】
多値変調における送信側での振幅と位相は多次元の変調空間で1つの点に対応するが、伝搬中に座標軸の方向などが変化するため、受信側では同じ変調空間の点とならない。しかしながら、変調空間における送信側の点(座標)と受信側の点(座標)は1対1に対応するため、その対応関係をあらかじめパイロット信号によって把握することによって、座標変換を逆変換することで信号を複号することができる。
【0028】
本願発明による多次元多値モード変調による伝送は、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードが備える複数の振幅及び位相を多次元の変調空間におけるパラメータとし、このパラメータで定まる各座標に対して伝送情報を対応付ける。
【0029】
図2は本願発明による多次元多値モード変調を説明するための図である。
本願発明の伝送装置は、モード変調を行う送信部A、モード搬送を行う伝送部B、及びモード復調を行う受信部Cを備える。送信部Aは、数モードファイバの高次モードにおいて縮退モードのLPモードと直交偏光成分とを用い、各縮退モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間A1に対して、多値の伝送情報を多次元の変調空間の各座標に対応付ける多次元多値モード変調を行い、得られた信号光を送信する。
【0030】
受信部Cは、信号光を受信し、多次元多値モード変調された多次元の変調空間の各座標に対応する干渉光をコヒーレント検出光学系C1によって局部発振光と合波させ、合波された干渉光から偏波分離C2によって直交偏光成分を分離し、直交偏光成分から縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復調する多次元多値モード復調を行って伝送情報を出力する。
【0031】
伝送部Bの入射端で多次元多値モード変調を加えた信号を入射したとき、LP11evenモードやLP11oddモードの電磁界分布の基準になる座標軸(x軸、y軸)が伝搬に伴って回転するため、出射端ではその基準になる座標軸が回転する。
【0032】
また、x軸方向の偏光やy軸方向の偏光に合わせて入射させた場合であっても、出射端ではその偏光の座標軸も回転する。したがって、入射端で多次元多値モード変調を加えたときの符号は出射端では座標変換を受けているため、座標逆変換を加える必要がある。
【0033】
受信部Cでは、X側偏光成分差分演算器からのx偏光成分とY側偏光成分差分演算器からのy偏光成分を後段の復号器で座標逆変換を行い、座標変換された符号を戻す。
【0034】
また、本願発明の伝送方法は、送信部A側において、数モードファイバの高次モードにおいて縮退モードのLPモードと直交偏光成分とを用い、各縮退モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間A1に対して、多値の伝送情報を多次元の変調空間の各座標に対応付ける多次元多値モード変調を行い、多次元多値モード変調で得られた信号光を送信し、受信部C側において信号光を受信し、多次元多値モード変調された多次元の変調空間の各座標に対応する干渉光をコヒーレント検出光学系C1によって局部発振光と合波させ、合波された干渉光から偏波分離器C2によって直交偏光成分を分離し、直交偏光成分から縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復調する多次元多値モード復調を行って伝送情報を出力する。
【0035】
(送信機)
本願発明の送信部を構成する送信機は、伝送路の数モードファイバの高次モードの振幅と位相差を変調空間の変数に用いて伝送情報を送信する送信機であり、図4に示すように、搬送光の光源、搬送光を複数の分岐光に分岐する光分岐器、及び、複数の分岐光に多次元多値モード変調を施す多次元多値モード変調器を備える。
【0036】
多次元多値モード変調器は、複数の多値変調器及びモード合波器を備える。多値変調器は、伝送情報に基づいて、搬送光について数モードファイバの高次モードの各縮退直交偏光モードの振幅及び位相を変調する。
【0037】
多値変調器は、図5に示すように、縮退直交偏光モードのx偏光成分及びy偏光成分について、x偏光成分の振幅を変調するX側振幅変調器、及びx偏光成分の位相を変調するX側位相変調器と、y偏光成分の振幅を変調するY側振幅変調器、及びy偏光成分の位相を変調するY側位相変調器と、x偏光成分を変調したx偏波とy偏光成分を変調したy偏波とを偏波合波する偏光ビームスプリッタとを備える。
【0038】
モード合波器は、各多値変調器で変調した複数の縮退直交偏光モードを合波し、送信機のモード変調において、多値の伝送情報を、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けし、多次元多値モード変調による伝送を行う。
【0039】
(受信機)
本願発明の受信部を構成する受信機は、数モードファイバを伝送路とし、前記数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送情報を受信する受信機であり、多次元多値モード復調によって、縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復調し伝送情報を出力する多次元多値モード復調器を備える。
【0040】
受信機の多次元多値モード復調器は2つの形態とすることができる。第1の形態は、偏波分離器と領域分割光検出器でコヒーレント検出して得た偏光成分を差分演算することによって位相及び振幅を求め、第2の形態は、モード分波器を用いることによって位相及び振幅を求める。
【0041】
(第1の形態)
第1の形態の多次元多値モード復調器は、混合器と偏波分離器と光検出器と演算器を備える。混合器は、伝送路の出射端の信号光と局部発振光とを混合して干渉光を生成して、多次元多値モード変調された多次元の変調空間の各座標に対応する干渉光を出射する。
【0042】
混合器は、図6に示す様に、局部発振光を発する局部発振器と半透明鏡とを備える構成とすることができる。
【0043】
半透明鏡の一方の入射端に伝送路の出射端の信号光を入射させ、半透明鏡の他方の入射端に局部発振器が発する局部発振光を入射させ、出射端から信号光と局部発振光とを混合して得られる干渉光を出射する。
【0044】
偏波分離器は、干渉光を偏波分離して、縮退直交偏光モードのx偏光成分及びy偏光成分を分離する。
【0045】
光検出器は、各偏光成分に分離した干渉光を検出する。光検出器は、偏波分離器が分離したx偏光成分の出射光を入射させるX側4象限分割光検出器と、偏波分離器が分離したy偏光成分の出射光を入射させるY側4象限分割光検出器とを備え、X側4象限分割光検出器及びY側4象限分割光検出器はそれぞれ4つの各象限から位相を異にする交流出力信号を出力する。
【0046】
演算器は、光検出器で検出した交流成分の加減算によって、縮退直交偏光成分から各縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を得る。演算器は、X側4象限分割光検出器の4つの出力信号を入力し、各出力信号を加減算してx偏光成分の振幅及び位相を演算するX偏光成分演算器と、Y側4象限分割光検出器の4つの出力信号を入力し、各出力信号を加減算してy偏光成分の振幅及び位相を演算するY偏光成分演算器とを備える。
【0047】
受信機のモード復調において、多値の伝送情報は、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、当該多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けし、多次元多値モード変調による伝送を行う。
【0048】
コヒーレント検出はヘテロダイン検出回路で構成することができる。コヒーレント検出では、信号光の光角周波数ωと局部発振器が発する局部発振光の角周波数ωとの差の角周波数Δωが電気信号の角周波数として検出される。なお、位相は周期2π/Δωの数サイクル分の検出時間内の交流信号に基づいて検出される。
【0049】
(第2の形態)
第2の形態の多次元多値モード復調器はモード分波器を用いる形態であり、モード分波器で分波したモード成分を偏波分離器で分離した後、光検出器でコヒーレント検出を行う形態である。
【0050】
第2の形態では、モード分波器で分波したモード成分を混合器で局部発振光と混合した後、偏波分離器でx偏光とy偏光に分離する第1の構成と、混合器で局部発振光と混合した後にモード分波器でモード成分に分波する第2の構成とすることができる。
【0051】
(多次元変調による効果)
本願発明の多次元多値モード変調は、変調空間を多次元とすることによって、シンボル間の距離(符号間距離)を大きくすることができるため、S/N比を大きくすることができる。したがって、多値度を上げて1シンボルで多くのビット数を送ることができる。
【0052】
例えば、従来の2次元変調空間で3ビット(8値QAM)変調をする場合において、電力一定(P∝|E|)の条件では、符号間距離は約0.765E(=(2-√2)・E)となる。一方、図3に示すように3次元変調空間での3ビット変調(8値の偏波変調)では符号間距離は1.1547E(=(2・E)/√3))となり,2次元変調に比べて符号間距離を約1.5倍大きくすることができる。
【0053】
なお、図3は3次元変調空間による多値偏波変調の例を示し、図3(a)はQPSK変調を、図3(b)は4値偏波変調を示している。図3(b)の4値偏波変調の信号点間距離は、図3(a)のQPSK変調の信号点間距離よりも大きい。図3(c)は8値偏波変調を示している。
【発明の効果】
【0054】
以上説明したように、本願発明によれば、モード空間多次元変調において、受信信号の同時性を確保し、モード間の群速度差による受信信号の遅延差を処理するデジタル信号処理の負荷を大幅に低減することができる。
【0055】
本願発明によれば、多次元変調において、変調空間内でシンボル間の間隔を大幅に狭めることなく1シンボル当たりのビット数を増加させ、信号強度に対する雑音の比率(S/N比)を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】LP01モード、LP11evenモード、及びLP11oddモードの電磁界分布と振幅及び位相を表す図である。
【図2】本願発明による多次元多値モード変調を説明するための図である。
【図3】3次元変調空間による多値偏波変調の例を示す図である。
【図4】本願発明の伝送装置を説明するための図である。
【図5】本願発明の送信器を説明するための図である。
【図6】本願発明の受信器を説明するための図である。
【図7】X偏光成分演算器とY偏光成分演算器の構成例を説明するための図である。
【図8】本願発明の受信機が備える多次元多値モード復調器の他の構成例を説明するための図である。
【図9】本願発明の受信機の第1の構成において、LP01モード、LP11evenモード、及びLP11oddモードの各モードの構成例を説明するための図であ。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本願発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下、図4を用いて本願発明の伝送装置を説明し、図5を用いて本願発明の送信器を説明し、図6~9を用いて本願発明の受信器を説明する。

【0058】
(伝送装置)
図4において、本願発明の伝送装置10は、送信部として送信機20、伝送路として数モードファイバ30、及び受信部として受信機40を備える。

【0059】
送信部を構成する送信機20は、数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送情報を送信する送信機であり、搬送光の光源21、搬送光を複数の分岐光に分岐する光分岐器22、複数の分岐光に対して多次元多値モード変調を施す多次元多値モード変調器23を備える。

【0060】
多次元多値モード変調器23は、複数の多値変調器23A~23Dと、多値変調器23A~23Dで多値変調された複数のモード信号を合波するモード合波器23Iを備える。なお、多値変調器23B,23C,23Dは図5に示されている。多値変調器23Aは、伝送情報に基づいて、搬送光を分岐した分岐光について数モードファイバの高次モードの各縮退直交偏光モードの振幅及び位相を変調する。多値変調器23Aにおいて、縮退直交偏光モードの振幅及び位相を変調する変調信号は伝送情報に基づいて符号器24で得ることができる。符号器24における伝送情報と変調信号との関係は、変調によって得られる振幅及び位相との対応関係を予め求めておくことで取得することができる。

【0061】
モード合波器23Iは、各多値変調器23A~23Dで変調した複数の縮退直交偏光モードを合波する。これによって、送信機20のモード変調において、多値の伝送情報を、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けする。

【0062】
数モードファイバ30は、多次元多値モード変調された光信号を伝送する。受信部を構成する受信機40は、数モードファイバ30で伝送された光信号を受信し、数モードファイバの高次モードを変調空間に用いて伝送情報を取得する受信機であり、多次元多値モード復調器41と、縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復号して伝送情報を求める復号器42を備える。

【0063】
多次元多値モード復調器41は、混合器41Aと偏波分離器41Bと光検出器41Cと演算器41Dを備え、多次元多値モード変調された光信号を多次元多値モード復調し、復調した縮退直交偏光モードの振幅及び位相差の電気信号を出力する。

【0064】
混合器41Aは、伝送路の出射端の信号光と局部発振光とを混合して干渉光を出力する。偏波分離器41Bは、混合器41Aから出力された干渉光を偏波分離して、x偏光成分及びy偏光成分を分離する。光検出器41Cは、各偏光成分に分離した干渉光を検出して電気信号を出力する。演算器41Dは、光検出器41Cで検出した交流成分を加減算することによって、各縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を演算によって取得する。

【0065】
復号器42は、縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復号して伝送情報を求める。振幅及び位相差と伝送情報との対応関係は、符号器24において求めておいた伝送情報と変調信号との対応関係から得ることができる。

【0066】
(送信機の多次元多値モード変調器)
図5は本願発明の送信機が備える多次元多値モード変調器の一構成例を説明するための図である。

【0067】
多次元多値モード変調器23は、縮退直交偏光モードに応じて複数の多値変調器23A~23D、及びモード合波器23Iを備える。図5では、LP11evenモード、LP11oddモード、LP01モードの各変調モードを多値変調する多値変調器23A、23B、及び23Cを示している。多値変調器23Dは他のLPμmモードを多値変調する多値変調器を表している。

【0068】
以下では、LP11モードの内のLP11evenモードにおいて多値変調を行う多値変調器23Aについて説明するが、LP01モード、LP11oddモード、LPμmモードにおいて多値変調を行う多値変調器についても同様の構成とすることができる。

【0069】
符号器24は伝送情報を変換して制御器25を駆動する制御信号を生成する。制御器25は多値変調器23Aが備えるX側駆動回路23Aa及びY側駆動回路23Abを駆動する。

【0070】
X側駆動回路23Aaは、分岐光の縮退直交偏光モードのx偏光成分について、X側振幅変調器23Acを駆動してx偏光成分の振幅を振幅Bに変調し、X側位相変調器23Aeを駆動してx偏光成分の位相を位相θに変調する。

【0071】
一方、Y側駆動回路23Abは、分岐光の縮退直交偏光モードのy偏光成分について、Y側振幅変調器23Adを駆動してy偏光成分の振幅を振幅Bに変調し、Y側位相変調器23Afを駆動してy偏光成分の位相を位相θに変調する。

【0072】
多値変調器23Aは、x偏光成分の振幅と位相を多値変調したX偏波と、y偏光成分の振幅と位相を多値変調したY偏波とを偏波合成する偏波合成器を備える。偏波合成器は偏光ビームスプリッタ23Agで構成することができる。

【0073】
制御器25は、複数の多値変調器23A~23Dの中から多値変調を行う多値変調器を選択する。

【0074】
数モードファイバの伝搬光の群速度は異なるモード間で差異があるため、群速度差によって受信側に到達する時間差を避けるには、群速度差を有するモードを多次元多値モード変調の変数(変調空間)に使用しないことが必要である。このことから、制御器25は、複数のモードの内、伝搬定数がほぼ等しい縮退している高次モードを選択し、選択した高次モードで多値変調を行う。例えば、LP11モードのみを多値変調する。ここで、LP11evenモードとLP11oddモードとはモード電磁界分布が相互に90度回転対称であって伝搬定数が等しく群速度が同じであるため、x偏波及びy偏波について多値変調した後、偏波合成する。

【0075】
上記構成によって、多値変調器23Aからは、振幅及び位相を変調したx偏波及びy偏波が偏波合成された光信号が出力される。

【0076】
各多値変調器23A~23Dの光信号は数モードファイバ23E~23Hを介してモード合成器23Iに送られる。単一モードファイバ23E~23Hは、各多値変調器23A~23Dで変調した信号光を伝送する。

【0077】
モード合波器23Iは、各多値変調器23A~23Dで変調した複数の縮退直交偏光モード成分の内、制御器25で選択され多値変調された、伝搬定数がほぼ等しい高次モードをモード合波する。

【0078】
上記した送信機の構成によって、送信機のモード変調において、多値の伝送情報を、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けし、多次元多値モード変調による伝送を行う。

【0079】
(受信機の多次元多値モード復調器)
受信機の多次元多値モード復調器は2つの形態とすることができる。第1の形態は、偏波分離器と領域分割光検出器でコヒーレント検出して得た偏光成分を差分演算することによって位相及び振幅を求める。また、第2の形態は、モード分波器を用いることによって差分演算を行うこと無く位相及び振幅を求める。

【0080】
(多次元多値モード復調器の第1の形態)
図6は本願発明の受信機が備える多次元多値モード復調器の一構成例を説明するための図であり、光検出器で検出して得た偏光成分を差分演算することによって位相及び振幅を求める第1の形態の構成例である。

【0081】
多次元多値モード復調器41は、混合器41Aと偏波分離器41Bと光検出器41Cと演算器41Dを備える。

【0082】
混合器41Aは、信号光の光角周波数ωと局部発振器が発する局部発振光の角周波数ωとの差の角周波数Δωの成分を含む干渉光を生成する機構であり、局部発振光を発する局部発振器41Aaと、λ/4波長板41Abと、半透明鏡41Acとを備える。

【0083】
局部発振器41Aaから発せられた局部発振光は、偏波面保持ファイバ45を介してレンズ46及びλ/4波長板41Abに導かれる。なお、通常の単一モードファイバでは出射端での偏光状態が楕円偏光でありその偏光状態は不安定であるため、ここでは、局部発振光の偏光状態を保持したままλ/4波長板41Abに導くために偏波面保持ファイバ45を用いている。また、レンズ46は、局部発振光を平行光にしてλ/4波長板4Abに入射させるレンズである。

【0084】
λ/4波長板41Abの主軸を局部発振光の直線偏光の偏光方向に対して45°回転させた状態で設置して、局部発振光を円偏光として混合器41Aに入射させて、信号光の如何なる偏光成分にも干渉させる。なお、λ/4波長板に代えて、λ/2波長板を,その主軸が局部発振光の直線偏光の偏光方向とモード分析装置の座標系におけるx軸との中間の角度をなすように回転させた状態で設置して,局部発振光の偏光方向がモード分析装置の座標系のx軸に対して45°傾いた角度で混合器41Aに入射させても良い。さらには、局部発振光からの光をレンズに導く偏波面保持ファイバ45の偏光主軸をモード分析装置の座標系のx軸に対して45°傾けて配置して、局部発振光の偏光方向がモード分析装置の座標系のx軸に対して45°傾いた角度で混合器41Aに入射させても良い。

【0085】
半透明鏡41Acの一方の入射端に伝送路(数モードファイバ30)の出射端の信号光をレンズ44を介して入射させ、半透明鏡41Acの他方の入射端に局部発振器41Aaが発する局部発振光を入射させ、出射端から信号光と局部発振光とを混合して得られる干渉光を出射する。

【0086】
なお、数モードファイバ30と半透明鏡41Acの一方の入射端との間に設けるレンズ44は平行光を生成するためである。

【0087】
偏波分離器41Bは偏光ビームスプリッタで構成することができ、混合器41Aで生成した干渉光を偏波分離して、縮退直交偏光モードのx偏光成分及びy偏光成分を分離する。

【0088】
光検出器41Cは、偏波分離器41Bで各偏光成分に分離した干渉光を検出する。光検出器41Cは、偏波分離器41Bが分離したx偏光成分の干渉光を入射させるX側4象限分割光検出器41Cxと、偏波分離器41Bが分離したy偏光成分の干渉光を入射させるY側4象限分割光検出器41Cyとを備え、X側4象限分割光検出器41Cx及びY側4象限分割光検出器41Cyはそれぞれ4つの各象限から位相を異にする出力信号Ix1,Ix2,Ix3,Ix4、出力信号Iy1,Iy2,Iy3,Iy4を出力する。

【0089】
演算器41Dは、光検出器41Cで検出した交流成分の電気信号の加減算によって、縮退直交偏光成分から各縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を得る。演算器41Dは、X側4象限分割光検出器41Cxの4つの出力信号を入力し、各出力信号を加減算してx偏光成分の振幅及び位相を演算するX偏光成分演算器41Dxと、Y側4象限分割光検出器41Cyの4つの出力信号を入力し、各出力信号を加減算してy偏光成分の振幅及び位相を演算するY偏光成分演算器41Dyとを備える。

【0090】
モード分離について、LP01、LP11even、LP11oddの3つのモードを例にして説明する。

【0091】
数モードファイバの出射端での信号光のLP01、LP11even、LP11oddの3つのモードのx偏光とy偏光成分をすべて含む混合状態の電界振幅(Ax,Ay,Bx,By,Bx,By)と、LP01モードのx偏光を基準とする各モードの位相差(θ0-4)を以下の式(7)で定義する。
【数4】
JP2017030137A1_000009t.gif

【0092】
局部発振光(電界をELOとする)と干渉し、偏光ビームスプリッタ(通過する偏光方向の単位ベクトルをepolとする)を通過した後の信号光の光電力は式(8)で表される。
【数5】
JP2017030137A1_000010t.gif

【0093】
ここで、干渉光の交流成分について、4象限分割光検出器の第ν象限で生じる電流IνACは以下の式(9)で表される。
【数6】
JP2017030137A1_000011t.gif
ただし,係数ξとηは
【数7】
JP2017030137A1_000012t.gif
で表され、wは基本モードのLP01モード電磁界分布をガウス関数で近似した場合のスポットサイズであり、Dは局部発振光を平面波近似した場合の電界振幅、NとNはそれぞれLP01モードとLP11モードの電磁界分布関数の規格化定数である。

【0094】
また、縮退直交偏光モードの振幅及び位相差は、以下の表1で表されるように各象限の交流電流の加減算で求めることができる。
【表1】
JP2017030137A1_000013t.gif

【0095】
図7はX偏光成分演算器とY偏光成分演算器の構成例を説明するための図である。
表1で示したように、縮退直交偏光モードの振幅及び位相差は、各象限の交流電流IνACの加減算で求めることができる。ここで、νは象限1~4に対応している。

【0096】
図7(a)は、縮退直交偏光モードのx偏光成分の振幅A,B,B、及びx偏光成分の位相θ、θを演算する構成例を示している。

【0097】
LP01モードのx偏光成分の振幅A及びx偏光成分の位相は、X側4象限分割光検出器41Cxの出力信号Ix1,Ix2,Ix3,Ix4を帯域透過フィルタで各周波数Δωの交流成分のみを取り出した後に加算器で加算し、振幅及び位相検波器を通すことで得ることができる。なお、ここでは、LP01モードのx偏光成分の位相を位相基準とするために“0”としている。

【0098】
LP11evenモードのx偏光成分の振幅B及びx偏光成分の位相θは、X側4象限分割光検出器41Cxの出力信号Ix1,Ix2,Ix3,Ix4を帯域透過フィルタで各周波数Δωの交流成分のみを取り出した後、減算器で求めた出力信号Ix1とIx2との差分(Ix1-Ix2)と、減算器で求めた出力信号Ix4とIx3との差分(Ix4-Ix3)とを加算器で加算し、振幅及び位相検波器を通すことで得ることができる。

【0099】
LP11oddモードのx偏光成分の振幅B及びx偏光成分の位相θは、X側4象限分割光検出器41Cxの出力信号Ix1,Ix2,Ix3,Ix4を帯域透過フィルタで各周波数Δωの交流成分のみを取り出した後、減算器で求めた出力信号Ix1とIx4の差分(Ix1-Ix4)と、減算器で求めた出力信号Ix2とIx3との差分(Ix2-Ix3)とを加算器で加算し、振幅及び位相検波器を通すことで得ることができる。

【0100】
図7(b)は、縮退直交偏光モードのy偏光成分の振幅A,B,B、及びy偏光成分の位相θ、θ、θを演算する構成例を示している。

【0101】
LP01モードのy偏光成分の振幅A及びy偏光成分の位相θは、X側4象限分割光検出器41Cyの出力信号Iy1,Iy2,Iy3,Iy4を帯域透過フィルタで各周波数Δωの交流成分のみを取り出した後に加算器で加算し、振幅及び位相検波器を通すことで得ることができる。なお、ここでは、LP01モードのy偏光成分の位相をx偏光成分の位相基準に対してθとしている。

【0102】
LP11evenモードのy偏光成分の振幅B及びy偏光成分の位相θは、X側4象限分割光検出器41Cyの出力信号Iy1,Iy2,Iy3,Iy4を帯域透過フィルタで各周波数Δωの交流成分のみを取り出した後、減算器で求めた出力信号Iy1とIy2との差分(Iy1-Iy2)と、減算器で求めた出力信号Iy4とIy3との差分(Iy4-Iy3)とを加算器で加算し、位相検波器を通すことで得ることができる。

【0103】
LP11oddモードのy偏光成分の振幅B及びy偏光成分の位相θは、X側4象限分割光検出器41Cyの出力信号Iy1,Iy2,Iy3,Iy4を帯域透過フィルタで各周波数Δωの交流成分のみを取り出した後、減算器で求めた出力信号Iy1とIy4の差分(Iy1-Iy4)と、減算器で求めた出力信号Iy2とIy3との差分(Iy2-Iy3)とを加算器で加算し、位相検波器を通すことで得ることができる。

【0104】
受信機のモード復調において、多値の伝送情報は、数モードファイバの高次モードの縮退直交偏光モードの振幅及び位相をパラメータとする多次元の変調空間に対して、当該多次元の変調空間のパラメータで定まる各座標に対応付けしており、数モードファイバを伝送中に、座標軸が回転座標変換した場合であっても変調空間における送信側の点(座標)と受信側の点(座標)は1対1に対応するため、その対応関係をあらかじめパイロット信号によって把握することによって、座標変換を逆変換することで信号を複号することができ、復号器42は、縮退直交偏光モードの振幅及び位相差を復号して伝送情報を求める。振幅及び位相差と伝送情報との対応関係は、符号器24において求めておいた伝送情報と変調信号との対応関係から得ることができる。

【0105】
なお、送信機20側において、多値変調器23A~23Dの出力端、あるいはモード合波器23Iの出力端に,出力光の一部を分岐させた後に受信機40と同様の構成を設け、各出力光を検出するモニタ(図5には示していない)を設ける構成としてもよい。

【0106】
(多次元多値モード復調器の第2の形態)
図8は本願発明の受信機が備える多次元多値モード復調器の他の構成例を説明するための図であり、モード分波器を用いることによって位相及び振幅を求める第2の形態であり、モード分波器で分波したモード成分を偏波分離器で分離した後、光検出器でコヒーレント検出を行う。第2の形態は、コヒーレント受信する際に2つの構成で実現することができる。

【0107】
(第1の構成)
第1の構成は、モード分波器で分波したモード成分を混合器で局部発振光と混合した後、偏波分離器でx偏光とy偏光に分離する。 図8(a)は第1の構成を説明するための図である。

【0108】
モード分波器を使いる第1の構成は、複数のモードをモード分波器41Eで、一旦モード分波して単一モード導波路または単一モードファイバに入射させてから、混合器41Aでそれぞれのモード成分に局部発振光を混合させ、さらに偏波分離器41Bを通してx偏光とy偏光成分に分離した後、光検出器41Cで検出する構成であり、光検出器41Cでコヒーレント検出を行って振幅と位相を求める。

【0109】
偏光分離器41Bは導波路型の方向性結合器を用いると90度ハイブリッドを構成でき、また入射ポートと出射ポートが2つあるため、混合器41Aと偏光分離器41Bを共用する構成とすることもできる。

【0110】
図9は、第1の構成において、LP01モード、LP11モードの各モードの直交偏光成分を受信して復号する構成例を示している。LP11モードはLP11evenモードとLP11oddモードとを含む。

【0111】
各モードの構成は、例えばLP11モードでは、モード分波器41Eでモード分波したモード成分を混合器41A(41A,41A)で局部発振光と混合させ、偏波分離器41B(41B,41B)でx偏光成分とy偏光成分に分離し、x偏光側光検出器41C(41C,41C)でx偏光成分を検出し、y偏光側光検出器41C(41Cy,41Cy)でy偏光成分の振幅及び位相を検出する。復号器42(42,42)は検出したx偏光成分とy偏光成分の振幅及び位相から復号した受信信号を出力する。(evenとoddについては光検出器41C(41C,41Cy,41C,41C)の出力で区別できる。)LP01モードについても同様とすることができるため、ここでの説明を省略する。

【0112】
(第2の構成)
第2の構成は、混合器で局部発振光と混合した後にモード分波器でモード成分に分波し、偏波分離器でx偏光とy偏光に分離する。図8(b)は第2の構成を説明するための図である。

【0113】
モード分波器を使いる第2の構成は、モード分波器41Eに入射させる前に信号光と局部発振光を混合器41Aで混合させ、その後、モード分波器41Eでそれぞれのモードに分波した後に、偏光分離器41Bでx偏光成分とy偏光成分に分離してから光検出器41Cでコヒーレント検出する。

【0114】
第2の構成は、モード分波器の前に行う局部発振光との混合は空間光学系で行うことができる。空間光学系の一構成例は、レンズを用いた空間光学系であり、混合器41Aの後にレンズで集光して導波路型モード分波器に入射させる。また、空間光学系の他の構成例は、レンズを用いて導波路型モード分波器に入射させない空間光学系であり、混合器41Aの後、空間ビームのままで空間ビーム型モード分波器に入射させる。

【0115】
なお、本願発明は前記各実施の形態に限定されるものではない。本願発明の趣旨に基づいて種々変形することが可能であり、これらを本願発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本願発明の伝送装置及び伝送方法は、光ファイバ通信の高次モードを利用した多次元多値伝送に適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
10 伝送装置
20 送信機
21 光源
22 光分岐器
23 多次元多値モード変調器
23A~23D 多値変調器
23Aa X側駆動回路
23Ab Y側駆動回路
23Ac X側振幅変調器
23Ad Y側振幅変調器
23Ae X側位相変調器
23Af Y側位相変調器
23Ag 偏波ビームスプリッタ
23E-23H 単一モードモードファイバ
23I モード合成器
24 符号器
25 制御器
30 数モードファイバ
40 受信機
41 多次元多値モード復調器
41A 混合器
41Aa 局部発振器
41Ab 波長板
41Ac 半透明鏡
41B 偏波分離器
41C 光検出器
41Cx 4象限分割光検出器
41Cy 4象限分割光検出器
41D 演算器
41Dx X偏光成分演算器
41Dy Y偏光成分演算器
41E モード分波器
42 復号器
44 レンズ
45 偏波面保持ファイバ
46 レンズ
A1 変調空間
B 数モードファイバ
C 受信部
C1 コヒーレント検出光学系
C2 偏波分離
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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