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明細書 :活性構造のREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識して結合する抗体、及び該抗REIC/Dkk-3抗体を用いた癌治療のモニタリング

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年7月19日(2018.7.19)
発明の名称または考案の名称 活性構造のREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識して結合する抗体、及び該抗REIC/Dkk-3抗体を用いた癌治療のモニタリング
国際特許分類 G01N  33/574       (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
C12N   5/16        (2006.01)
FI G01N 33/574 A
C07K 16/18 ZNA
C12N 5/16
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2017-543279 (P2017-543279)
国際出願番号 PCT/JP2016/078339
国際公開番号 WO2017/057308
国際出願日 平成28年9月27日(2016.9.27)
国際公開日 平成29年4月6日(2017.4.6)
優先権出願番号 2015190401
優先日 平成27年9月28日(2015.9.28)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA
発明者または考案者 【氏名】公文 裕巳
【氏名】木下 理恵
【氏名】二見 淳一郎
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】507365318
【氏名又は名称】桃太郎源株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4H045
Fターム 4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB04
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA51
4H045FA72
4H045FA74
要約 癌関連タンパク質REIC/Dkk-3を特異認識し、REIC/Dkk-3遺伝子あるいはREIC/Dkk-3タンパク質を医薬として用いる癌治療効果のモニタリングが可能な抗REIC抗体の提供、及び該抗体を用いた診断方法の提供。
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体又はその機能的断片を用いて、被験体から採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、被験体の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度が正常人の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度よりも低い場合に、該被験体が前癌又は腫瘍性疾患に罹患していると判断する、癌の検出方法。
特許請求の範囲 【請求項1】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体又はその機能的断片を用いて、被験体から採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、被験体の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度が正常人の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度よりも低い場合に、該被験体が前癌又は腫瘍性疾患に罹患していると判断する、癌の検出方法。
【請求項2】
さらに、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体又はその機能的断片を用いて、被験体から採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、第2の抗体又はその機能的断片を用いて得られた測定値に対する第1の抗体又はその機能的断片を用いて得られた測定値の比を算出し、該比が正常人の生体試料を用いて得られた比よりも低い場合に、該被験体が前癌又は腫瘍性疾患に罹患していると判断する、請求項1記載の癌の検出方法。
【請求項3】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを特異的に認識する抗体である、請求項1又は2に記載の癌の検出方法。
【請求項4】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体である、請求項2又は3に記載の癌の検出方法。
【請求項5】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体が受託番号NITE BP-02103で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識するモノクローナル抗体であるN-1抗体であり、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体が受託番号NITE BP-02104で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識するモノクローナル抗体であるCys-3抗体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の癌の検出方法。
【請求項6】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体又はその機能的断片を用いて、癌治療を受けている癌患者から経時的に採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、REIC/Dkk-3タンパク質の濃度が上昇した場合に、癌治療作用又は効果があったと判定する、癌治療のモニタリング方法。
【請求項7】
さらに、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体又はその機能的断片を用いて、被験体から経時的に採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、第2の抗体を用いて得られた測定値に対する第1の抗体を用いて得られた測定値の比を算出し、該比が上昇した場合に、癌治療作用又は効果があったと判定する、請求項6記載のモニタリング方法。
【請求項8】
経時的に採取した生体試料が、癌治療前、癌治療中及び癌治療後に採取した生体試料を含む、請求項6又は7に記載のモニタリング方法。
【請求項9】
癌治療がREIC/Dkk-3遺伝子、REIC/Dkk-3断片遺伝子、REIC/Dkk-3タンパク質又はREIC/Dkk-3断片ペプチドを用いた治療である、請求項6~8のいずれか1項に記載のモニタリング方法。
【請求項10】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを特異的に認識する抗体である、請求項6~9のいずれか1項に記載のモニタリング方法。
【請求項11】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体である、請求項7~10のいずれか1項に記載のモニタリング方法。
【請求項12】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体が受託番号NITE BP-02103で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識するモノクローナル抗体であるN-1抗体であり、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体が受託番号NITE BP-02104で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識するモノクローナル抗体であるCys-3抗体である、請求項6~11のいずれか1項に記載のモニタリング方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載の癌の検出方法、又は請求項6~12のいずれか1項に記載のモニタリング方法に使用する、REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体、REIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体、若しくはREIC/Dkk-3タンパク質のC末端ドメインを認識する抗体、又はそれらの機能的断片。
【請求項14】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低いN-1抗体を産生する、受託番号NITE BP-02103で国際寄託されているハイブリドーマ。
【請求項15】
請求項14に記載のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であるN-1抗体又はその機能的断片。
【請求項16】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するCys-3抗体を産生する、受託番号NITE BP-02104で国際寄託されているハイブリドーマ。
【請求項17】
請求項16に記載のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であるCys-3抗体又はその機能的断片。
【請求項18】
請求項13に記載のREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体とREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体若しくはREIC/Dkk-3タンパク質のC末端ドメインを認識する抗体を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の癌の検出方法、又は請求項7~12のいずれか1項に記載のモニタリング方法に使用するための検査キット。
【請求項19】
請求項15に記載のN-1抗体及び請求項17に記載のCys-3抗体を含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の癌の検出方法、又は請求項7~12のいずれか1項に記載のモニタリング方法に使用するための検査キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、REIC/Dkk-3遺伝子及びREIC/Dkk-3タンパク質を用いた癌治療効果のモニタリングとコンパニオン診断に関する。本発明は、さらにREIC/Dkk-3タンパク質を腫瘍マーカーとした癌の予測及び予後の診断を可能とする抗REIC/Dkk-3特異的抗体、及びそれらを用いる検査方法に関する。具体的には、REIC/Dkk-3の活性構造を特異認識できる抗REIC/Dkk-3抗体と、それらを利用した診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の不死化に関連した遺伝子として、REIC/Dkk-3遺伝子が知られており、癌細胞ではこの遺伝子の発現が抑制されていることが報告されている(特許文献1及び非特許文献1から4を参照)。
【0003】
REIC/Dkk-3遺伝子はDkkファミリーのメンバーであり、Wnt受容体を介してWntシグナル伝達を阻害することが示唆されているが(非特許文献5及び6を参照)、Wnt遺伝子は、細胞の成長、分化、癌化などの重要な生物学的状況に多面的な役割を果たすことが報告されている(非特許文献5及び7を参照)。
【0004】
全長REIC/Dkk-3タンパク質を10μg/mLの濃度で末梢血単核球(単球)を培養している培養液中に添加すると、同細胞が樹状細胞様細胞に分化することが報告されている(特許文献2を参照)。
【0005】
また動物実験では、全長REIC/Dkk-3タンパク質及びそのフラグメントペプチドが、マウス腫瘍モデルへの投与により著明な腫瘍縮小効果を示すことが報告されている(特許文献3を参照)。
【0006】
さらにヒトへの適応では、アデノウイルスを用いたREIC/Dkk-3遺伝子治療が、転移性去勢抵抗性前立腺癌で著効(完全寛解)を示した症例が報告されている(非特許文献8を参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開第WO2001/038523号
【特許文献2】国際公開第WO2009/119874号
【特許文献3】国際公開第WO2012/002582号
【0008】

【非特許文献1】Tsuji, T. et al., BiochemBiophys Res Commun 268, 20-4 (2000)
【非特許文献2】Tsuji, T. et al., BiochemBiophys Res Commun 289, 257-63 (2001)
【非特許文献3】Nozaki, I. et al., Int J Oncol 19, 117-21 (2001)
【非特許文献4】Kurose, K. et al., J Urol 171, 1314-8 (2004)
【非特許文献5】Bafico, A. et al., Nat Cell Biol 3, 683-6 (2001)
【非特許文献6】Hoang, B.H. et al., Cancer Res 64, 2734-9 (2004)
【非特許文献7】Moon, R.T. et al., Science 296, 1644-6 (2002)
【非特許文献8】Kumon, H. et al., Clin Med Insights Oncol. 23;9, 31-38 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、REIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識できる抗REIC/Dkk-3抗体を利用した診断方法により、REIC/Dkk-3遺伝子及びREIC/Dkk-3タンパク質医薬を用いた癌治療効果のモニタリング方法の提供を目的とし、さらにREIC/Dkk-3タンパク質を腫瘍マーカーとした癌の予測及び予後の診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、REIC/Dkk-3遺伝子を用いた癌の遺伝子治療について検討を重ね、REIC/Dkk-3遺伝子を発現ベクターに組み込み生体内に投与することにより、癌治療に顕著な効果を示すことを見出している。
【0011】
本発明者らはまた、生体内における幅広い免疫・炎症疾患分野において全長REIC/Dkk-3タンパク質の役割を明確にし、その治療における有用性・優位性を明らかにしてきた(国際公開第WO2009/119874号)。
【0012】
本発明者らはさらに、REIC/Dkk-3タンパク質のフラグメントペプチドについて検討し、特定の部分領域が単球から樹状細胞様細胞への分化を誘導する強い生理活性を有すること、その生理活性が全長REIC/Dkk-3タンパク質と同等以上であることを見出した。このことは、REIC/Dkk-3タンパク質の特定の部分領域が単球から樹状細胞様細胞への分化誘導能を担い、癌免疫を活性化し、癌の治療・予防に利用されうることを示している(国際公開第WO2012/002582号)。
【0013】
本発明者は別途、各種の抗REIC/Dkk-3モノクローナル抗体を取得し、血中REIC/Dkk-3タンパク質測定法の開発を試み、その方法により、前記、癌治療のモニタリング、及び癌の予測及び予後の診断のためのバイオマーカーとしての利用を検討した。
【0014】
その結果、新たに取得した抗REIC/Dkk-3モノクローナル抗体の利用により、血中の特定のREIC/Dkk-3タンパク質分子種を特異的に検出することができ、該特定のREIC/Dkk-3タンパク質分子種を検出することにより、癌治療のモニタリング、及び癌の予測及び予後の診断ができること、前記の特定のREIC/Dkk-3タンパク質分子種を癌治療のモニタリング、及び癌の予測及び予後の診断のためのバイオマーカーとして利用できることを見出した。
【0015】
すなわち、新たに取得した抗REIC/Dkk-3モノクローナル抗体の中から、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質分子種に極めて反応性が低く、かつREIC/Dkk-3治療あるいは外科的治療後に出現する特定のREIC/Dkk-3タンパク質分子種に特異的な結合性を有する抗体を選択、それらを利用するサンドイッチELISA法が、前記、癌治療のモニタリング、並びに癌の予測及び予後診断のためのアッセイ系として利用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体又はその機能的断片を用いて、被験体から採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、被験体の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度が正常人の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度よりも低い場合に、該被験体が前癌又は腫瘍性疾患に罹患していると判断する、癌の検出方法。
[2] さらに、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体又はその機能的断片を用いて、被験体から採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、第2の抗体又はその機能的断片を用いて得られた測定値に対する第1の抗体又はその機能的断片を用いて得られた測定値の比を算出し、該比が正常人の生体試料を用いて得られた比よりも低い場合に、該被験体が前癌又は腫瘍性疾患に罹患していると判断する、[1]の癌の検出方法。
[3] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを特異的に認識する抗体である、[1]又は[2]の癌の検出方法。
[4] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体である、[2]又は[3]の癌の検出方法。
[5] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体が受託番号NITE BP-02103で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識するモノクローナル抗体であるN-1抗体であり、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体が受託番号NITE BP-02104で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識するモノクローナル抗体であるCys-3抗体である、[1]~[4]のいずれかの癌の検出方法。
[6] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体又はその機能的断片を用いて、癌治療を受けている癌患者から経時的に採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、REIC/Dkk-3タンパク質の濃度が上昇した場合に、癌治療作用又は効果があったと判定する、癌治療のモニタリング方法。
[7] さらに、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体又はその機能的断片を用いて、被験体から経時的に採取した生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定し、第2の抗体を用いて得られた測定値に対する第1の抗体を用いて得られた測定値の比を算出し、該比が上昇した場合に、癌治療作用又は効果があったと判定する、[6]のモニタリング方法。
[8] 経時的に採取した生体試料が、癌治療前、癌治療中及び癌治療後に採取した生体試料を含む、[6]又は[7]のモニタリング方法。
[9] 癌治療がREIC/Dkk-3遺伝子、REIC/Dkk-3断片遺伝子、REIC/Dkk-3タンパク質又はREIC/Dkk-3断片ペプチドを用いた治療である、[6]~[8]のいずれかのモニタリング方法。
[10] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを特異的に認識する抗体である、[6]~[9]のいずれかのモニタリング方法。
[11] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体がREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体である、[7]~[10]のいずれかのモニタリング方法。
[12] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い第1の抗体が受託番号NITE BP-02103で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識するモノクローナル抗体であるN-1抗体であり、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する第2の抗体が受託番号NITE BP-02104で国際寄託されているハイブリドーマが産生するREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識するモノクローナル抗体であるCys-3抗体である、[6]~[11]のいずれかのモニタリング方法。
[13] [1]~[5]のいずれかの癌の検出方法、又は[6]~[12]のいずれかのモニタリング方法に使用する、REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体、REIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体、若しくはREIC/Dkk-3タンパク質のC末端ドメインを認識する抗体、又はそれらの機能的断片。
[14] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、又は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低いN-1抗体を産生する、受託番号NITE BP-02103で国際寄託されているハイブリドーマ。
[15] [14]のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であるN-1抗体又はその機能的断片。
[16] 正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するCys-3抗体を産生する、受託番号NITE BP-02104で国際寄託されているハイブリドーマ。
[17] [16]のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体であるCys-3抗体又はその機能的断片。
[18] [13]のREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体とREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体若しくはREIC/Dkk-3タンパク質のC末端ドメインを認識する抗体を含む、[2]~[5]のいずれかの癌の検出方法、又は[7]~[12]のいずれかのモニタリング方法に使用するための検査キット。
[19] [15]のN-1抗体及び[17]のCys-3抗体を含む、[2]~[5]のいずれかの癌の検出方法、又は[7]~[12]のいずれかのモニタリング方法に使用するための検査キット。
【0017】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2015-190401号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の抗REIC/Dkk-3タンパク質抗体を用いたREIC/Dkk-3タンパク質濃度測定法により、REIC/Dkk-3遺伝子あるいはREIC/Dkk-3タンパク質を医薬として用いる癌治療効果のモニタリングが可能であり、該方法により検出されるREIC/Dkk-3タンパク質は、癌の予測及び予後の診断に有用なバイオマーカーであり、コンパニオン診断法としても活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1-1】全長REIC/Dkk-3タンパク質 [Ala22-Ile350]又はCysteine-rich ドメインを含むREIC部分領域3 [Ser135-Phe288](特許文献3を参照)を抗原とし、腸骨リンパ節法により作製され、全長REIC/Dkk-3タンパク質、REIC部分領域3、及びREIC部分領域1[Arg142-Ile350] (特許文献3を参照)との反応性により選抜され、認識領域を決定した12種類の抗REIC/Dkk-3モノクローナル抗体の抗原との反応パターンをタンパク質の種類及び認識する領域として示す図である。
【図1-2】REIC/Dkk-3タンパク質の構造模式図を示す図である。
【図2】REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識するN-1抗体を捕捉抗体とし、ビオチン標識した抗REIC/Dkk-3ポリクローナル抗体を検出抗体として用いたサンドイッチELISA法において、0、31.3、62.5、125、250、500、1000、2000 pg/mLの8種類の濃度のREIC/Dkk-3タンパク質標準(組換え型REIC/Dkk-3タンパク質)を用いて作成した標準曲線を示す図である。
【図3-1】前立腺癌患者からの血清中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度をサンドイッチELISA法により測定し、REIC/Dkk-3遺伝子治療のモニタリングを行った結果を示す図である。測定は、基準(治療前)、1回目治療後1、2、7、14日目(2回目の治療直前)、15、17、21、28日目、56日目(手術直前)、84日目における血清試料について実施した。患者A(図3-1A)及び患者B(図3-1B)について、REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識するN-1抗体を捕捉抗体として測定したデータを示す。
【図3-2】前立腺癌患者からの血清中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度をサンドイッチELISA法により測定し、REIC/Dkk-3遺伝子治療のモニタリングを行った結果を示す図である。測定は、基準(治療前)、1回目治療後1、2、7、14日目(2回目の治療直前)、15、17、21、28日目、56日目(手術直前)、84日目における血清試料について実施した。患者A(図3-2A)及び患者B(図3-2B)について、Cysteine-rich ドメインを認識する抗体Cys-3を捕捉抗体として測定したデータを示す。
【図3-3】N-1抗体及びCys-3抗体を捕捉抗体として測定したREIC/Dkk-3タンパク質濃度の比率(%)(N-1抗体/Cys-3抗体の測定値)を、患者A(図3-3A)及び患者B(図3-3B)について示す図である。図より判断されるように、この2種類の抗体により測定した濃度の比を指標に治療のモニタリングを行うことも可能である。
【図3-4】5人の治療前の患者の血清中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度の測定結果を示す図である。
【図4-1】捕捉抗体としてN末端ドメインを認識するN-1抗体、又はCysteine-rich ドメインを認識するCys-3抗体、検出抗体としてビオチン標識した抗REIC/Dkk-3ポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、前立腺癌患者、正常人、外科手術後、それぞれ5人分の血清中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度についてサンドイッチELISA法を用いて測定した結果を示す図である。図は、2種類の捕捉抗体で測定したREIC/Dkk-3タンパク質の濃度の比が、癌の予測、予後の診断として活用可能であることを示す。
【図4-2】血清中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定した5人の前立腺癌患者のプロファイルを示す図である。
【図5】N末端ドメインを認識するN-1抗体、又はCysteine-richドメインを認識するCys-3抗体を検出抗体として、サンドイッチELISA系で組み合わせ可能な抗体の検討を行った結果を示す図である。捕捉抗体は検出抗体と異なる抗体を用いて、精製したREIC/Dkk-3タンパク質を100 ng/mL, 10 ng/mLの濃度で添加し、検出抗体と反応する作用性の複合体としてアビジン-HRPを用いた。REIC/Dkk-3タンパク質と各種抗体の結合量の指標となるHRP活性を吸光度450 nmの測定値として示した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0021】
本発明においては、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いる。

【0022】
REIC/Dkk-3遺伝子(REIC遺伝子)の全長塩基配列及び該遺伝子のコードするタンパク質のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号2に表される。配列番号2に表すアミノ酸配列中、1番から21番のアミノ酸からなる配列がシグナル配列である。

【0023】
REIC/Dkk-3タンパク質は、図1-2に示すように、N末端ドメイン(配列番号2に表されるアミノ酸配列における22番目のアミノ酸から134番目のアミノ酸からなる領域)、Cysteine-richドメイン(配列番号2に表されるアミノ酸配列における142番目のアミノ酸から288番目のアミノ酸からなる領域)及びC末端ドメイン(配列番号2に表されるアミノ酸配列における289番目のアミノ酸から350番目のアミノ酸からなる領域)を有する。

【0024】
活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質とは、癌に罹患していない正常人の正常細胞が産生するREIC/Dkk-3タンパク質をいう。

【0025】
癌細胞自体はREIC/Dkk-3タンパク質を産生分泌せず、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質は、正常細胞が産生分泌するREIC/Dkk-3タンパク質が、癌細胞が産生分泌する他のタンパク質(プロテアーゼやREIC/Dkk-3タンパク質に結合するタンパク質等)によるN末端ドメインの分解、N末端ドメインへの他の物質の結合等、あるいはN末端ドメインの糖鎖付加パターンの変化等の修飾を受け、N末端ドメインの構造に異常を有していると考えられる。すなわち、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質は、癌に罹患することにより、正常細胞が産生分泌するREIC/Dkk-3タンパク質とは異なる構造を有するようになったREIC/Dkk-3タンパク質である。また、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質は、癌細胞が存在する場合に、正常細胞が産生分泌するREIC/Dkk-3タンパク質とは異なる構造を有するようになったREIC/Dkk-3タンパク質ということもできる。一方、正常人の正常細胞が産生するREIC/Dkk-3タンパク質はN末端ドメインの構造に異常を有していない。本発明においては、正常人の正常細胞が産生するN末端ドメインの構造に異常を有していないREIC/Dkk-3タンパク質を、活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質という。従って、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体は、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体である。すなわち、正常細胞が産生する活性構造のREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体は、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質分子種に対し反応性が低く、かつ血中の活性構造を有する特定のREIC/Dkk-3タンパク質分子種を認識できる抗体であり、癌患者血清に特有のREIC/Dkk-3タンパク質分子の構造と、正常人血清のREIC/Dkk-3タンパク質分子の構造の違いを認識することができる抗体である。後述のように抗REIC/Dkk-3タンパク質モノクローナル抗体であるN-1抗体は、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い。従って、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質をN-1抗体との反応性が低下したREIC/Dkk-3タンパク質ともいう。

【0026】
本発明においては、活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質と癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を区別して検出するために、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体と、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する抗体を、適宜組合せて用いることができる。正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体は、REIC/Dkk-3のN末端ドメインを認識する抗体であり、第1の抗体ということもある。また、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する抗体はCysteine-richドメインを認識する抗体又はC末端ドメインを認識する抗体であり、第2の抗体ということもある。

【0027】
配列番号2に表されるアミノ酸配列の22番目のAlaから350番目のIleからなるアミノ酸配列からなるタンパク質を全長REIC/Dkk-3タンパク質[Ala22-Ile350]と呼び、135番目のSerから288番目のPheからなるアミノ酸配列からなる、Cysteine-richドメインを含む部分領域をREIC部分領域3[Ser135-Phe288]と呼び、142番目のArgから350番目のIleからなる、アミノ酸配列からなる部分領域をREIC部分領域1[Arg142-Ile350]と呼ぶ(国際公開第WO2012/002582号)。

【0028】
本発明の抗REIC/Dkk-3抗体の作製には、全長REIC/Dkk-3タンパク質を免疫原として用いてもよく、また、上記のREIC部分領域1[Arg142-Ile350]やREIC部分領域3[Ser135-Phe288]等のREIC/Dkk-3タンパク質の断片を免疫原として用いてもよい。免疫原としての全長REIC/Dkk-3タンパク質としては、活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質、すなわち、組換え型(リコンビナント)REIC/Dkk-3タンパク質又は正常細胞が産生したREIC/Dkk-3タンパク質を用いればよい。得られた抗体は全長REIC/Dkk-3タンパク質、REIC部分領域3[Ser135-Phe288]、及びREIC部分領域1[Arg142-Ile350]との反応性により、認識領域を決定することができる。N末端ドメインを認識する抗体とは、全長REIC/Dkk-3タンパク質とは反応するが、REIC部分領域3、及びREIC部分領域1とは反応しない抗体であり、C末端ドメインを認識する抗体とは、全長REIC/Dkk-3タンパク質、及びREIC部分領域1とは反応するが、REIC部分領域3とは反応しない抗体であり、Cysteine-rich ドメインを認識する抗体とは、N末端ドメインを認識する抗体、及びC末端ドメインを認識する抗体以外の抗体で、全長REIC/Dkk-3タンパク質、REIC部分領域1、及びREIC部分領域3と反応する抗体である。すなわち、N末端ドメインを認識する抗体とは、[Ala22-Thr134]の部分領域を認識する抗体であり、C末端ドメインを認識する抗体とは、[Val289-Ile350]の部分領域を認識する抗体であり、Cysteine-richドメインを認識する抗体とは、[Ser142-Phe288]の部分領域を認識する抗体である。

【0029】
本明細書において「抗体」という用語は広義に用いられ、具体的には、モノクローナル抗体(全長(完全体)モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体の機能的断片が含まれる。好ましくは、本発明においては、モノクローナル抗体を用いる。本発明の方法に従った有用な抗体は、従来手法及び/又は遺伝子工学によって作製してもよい。

【0030】
「抗体の機能的断片」は、全長抗体の一部、一般には抗原結合領域又は抗体可変領域を含む断片であり、抗原に対する結合活性を有する断片である。その例として、Fab、Fab’、F (ab’) 2 及びFv断片、ダイアボディ、単鎖抗体分子及び抗体断片から形成される多重特異性抗体等が挙げられる。また、これら抗体断片の多量体も、本発明の抗体の機能的断片に含まれる。Fabは、抗体をタンパク質分解酵素であるパパインで処理して得られる断片であって、H鎖のアミノ末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原に対する結合活性を有する抗体断片である。F(ab’)2は、IgGをタンパク質分解酵素であるペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合した、分子量約10万の抗体断片である。Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗体断片である。Fv断片の1つであるscFvは、1個の重鎖可変領域(VH)と1個の軽鎖可変領域(VL)をペプチドリンカーを介して連結した抗体断片である。ダイアボディは、scFvを2量体化させた抗体断片であって、2価の抗原結合活性を有する抗体断片である。

【0031】
上記の抗体の機能的断片は、本発明の抗REIC/Dkk-3抗体のアミノ酸配列情報や抗REIC/Dkk-3抗体をコードする遺伝子の塩基配列情報に基づいて、合成や遺伝子工学的手法によっても製造することができる。

【0032】
本明細書中の「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体、すなわち、微量に存在する可能性のある天然に生じ得る突然変異体を除いては、同一である個々の抗体で構成される集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を結合対象とする。さらには、典型的に異なる抗原決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体はその抗原上の単一の決定基を対象とする。本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法や組換えDNA法により調製されるが、さらに例えば、ファージ抗体ライブラリーからも単離調製される。

【0033】
本明細書におけるモノクローナル抗体には、「キメラ抗体」(重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同であり、一方、その鎖の残りの部分は、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一又は相同である)も含まれ、さらにそれらが所望の生物活性を示す限り、上記の抗体の機能的断片も含まれる。

【0034】
本発明の代表的なモノクローナル抗体としては、REIC/Dkk-3タンパク質濃度の測定系開発のために腸骨リンパ節法(日本国特許第4098796号公報)により作製された抗REIC/Dkk-3タンパク質モノクローナル抗体が挙げられ、例えば臨床試料など、様々な臨床試験において採取される検体中のREIC/Dkk-3タンパク質の同定・定量に利用される。

【0035】
REIC/Dkk-3タンパク質の同定・定量のため、本発明で利用される抗体は、酵素標識、蛍光標識、発光標識、放射性同位元素(RI)標識されていてもよく、いずれの従来的手法で標識されてもよい。標識に用いる酵素の例としては、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼなどがあげられ、またビオチン標識などが挙げられる。

【0036】
正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低いモノクローナル抗体である、REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識するモノクローナル抗体として、N-1抗体及びN-2抗体が例示される。また、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体である、REIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識するモノクローナル抗体として、Cys-1抗体、Cys-2抗体、Cys-3抗体、Cys-4抗体、Cys-5抗体、Cys-6抗体、Cys-7抗体及びCys-8抗体が例示される。さらに、REIC/Dkk-3タンパク質のC末端ドメインを認識するモノクローナル抗体として、C-1抗体及びC-2抗体が例示される。

【0037】
このうち、N-1抗体を産生するハイブリドーマは、2015年8月19日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NITE Patent Microorganisms Depository)(日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE BP-02103(「識別の表示」は、「REIC-N-1」)で国際寄託され、Cys-3抗体を産生するハイブリドーマは、2015年8月19日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) 特許微生物寄託センター(NITE Patent Microorganisms Depository)(日本国 〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に受託番号NITE BP-02104(「識別の表示」は、「REIC-Cys-3」)で国際寄託されている。

【0038】
上記の本発明の抗体12種類は、いずれもREIC/Dkk-3タンパク質に高度に特異的であり、かつ親和性が極めて高く、すべての抗体がサンドイッチELISA法に適用可能である。

【0039】
12種類の抗体はそれぞれが認識するREIC/Dkk-3タンパク質分子上のドメインが同定されており、特にそのCysteine-richドメインを認識する抗体は、REIC/Dkk-3タンパク質分子全鎖長のみならず、抗癌免疫活性を担うフラグメントペプチドによるREIC/Dkk-3治療のモニタリングにも対応する診断方法の提供が可能である。

【0040】
N末端ドメインを認識する抗体は、癌患者血清特有のREIC/Dkk-3タンパク質分子の構造と、正常人血清のREIC/Dkk-3タンパク質分子の構造の違いを認識でき、Cysteine-richドメイン、又はC末端ドメインを認識する抗体と組み合わせてREIC/Dkk-3タンパク質を測定し、その測定値の比率を指標として診断を行うことにより、個人差の生じる濃度を指標とした診断における誤診断を排除した診断方法を提供することが可能である。

【0041】
さらに、本発明において、抗体は、抗体分子に加え、抗体様分子、抗体様物質も含まれる。

【0042】
前記抗体様分子、抗体様物質とは、新たに取得した抗体が認識する特定の活性部分構造を認識する結合分子であれば、タンパク質、化合物、フラグメントなどいずれでもよい。

【0043】
本発明のREIC/Dkk-3タンパク質を認識する抗体を用いて、被験体由来の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質を測定することができる。被験体由来の生体試料は限定されないが、血液、血清、血漿、尿、唾液、精液、胸部滲出液、脳脊髄液、腹水、胸水、羊水、膀胱洗浄液、及び気管支肺胞洗浄液などが挙げられる。この中でも、血液、血清及び血漿が好ましい。被験体由来の試料は、生又は冷凍であってもよく、ヘパリン、クエン酸、又はEDTAで処理しても構わない。

【0044】
被験体由来の試料中のREIC/Dkk-3タンパク質の検出はイムノブロット法、酵素免疫測定法(EIA(Enzyme Immunoassay)、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay))、放射線免疫測定法(RIA)、二重抗体サンドイッチ法、凝集反応法、蛍光免疫測定法、イムノクロマトグラフィー法等の当業者に知られた定量的免疫測定方法により行うことができる。好ましくはサンドイッチELISA等の捕捉抗体及び標識された検出抗体を用いたサンドイッチ測定法で行う。

【0045】
これらの免疫測定法において、酵素標識抗体に加え、蛍光標識、発光標識又は放射性同位元素(RI)標識抗体等を利用できる。

【0046】
サンドイッチ測定法においては、担体の表面に捕捉抗体を固定し、REIC/Dkk-3タンパク質の検出又は定量を行う。

【0047】
サンドイッチ測定法で用いる適切な担体としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリアクリルアミド、及びポリ塩化ビニルなどの高分子担体が好ましく利用され、さらにガラスビーズ、アガロース、及びニトロセルロースなども挙げられる。

【0048】
サンドイッチELISA免疫測定法の一例では、捕捉抗体としてマウス抗ヒトREIC/Dkk-3タンパク質モノクローナル抗体が、また検出抗体としてビオチン標識ウサギ抗ヒトREIC/Dkk-3タンパク質ポリクローナル抗体が用いられる。捕捉モノクローナル抗体は、マイクロプレートウェル上に固定される。希釈されたヒト血清/血漿試料中のREIC/Dkk-3タンパク質、又はREIC/Dkk-3標準抗原(組換え野生型REIC/Dkk-3タンパク質)をウェル内でインキュベートし、捕捉モノクローナル抗体によってREIC/Dkk-3抗原を結合させる。ウェルを洗浄後、捕捉抗体を介して固定化されたREIC/Dkk-3抗原にビオチン標識した検出抗体を添加し、その後、再びウェルを洗浄する。次に、アビジン-ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ複合体を加える。最終洗浄後、TMB基質剤(TMB substrate)をウェルに加え、結合したペルオキシダーゼ活性を検出する。2N硫酸を加えて反応を停止し、450 nmで吸収を測定する。REIC/Dkk-3タンパク質含有試料の吸収値の相関性により、血清や血漿など試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度が決定できる。捕捉抗体としては、REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを特異的に認識するモノクローナル抗体、好ましくはN-1抗体、あるいはREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識するモノクローナル抗体、好ましくはCys-3抗体を用いることができる。検出抗体としては、REIC/Dkk-3タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いることも、組換え型REIC/Dkk-3タンパク質又は正常細胞が産生したREIC/Dkk-3タンパク質を免疫原として作製したポリクローナル抗体を用いることもできる。ロット間の反応性の差が生じないという点で、モノクローナル抗体が好ましい。

【0049】
REIC/Dkk-3タンパク質を定量する際には、予め既知の量のREIC/Dkk-3タンパク質が含まれる試料を用いて、検量線を作成しておくことが好ましい。あるいは、検出を行う際に、複数の既知の量のREIC/Dkk-3タンパク質を含む対照試料を準備しておき、該対照試料についても同時に測定を行い検量線を作成してもよい。測定された測定値と検量線から被験試料中のREIC/Dkk-3タンパク質の量を定量することができる。

【0050】
被験体由来の試料中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度は、REIC/Dkk-3治療の恩恵を受けるために、REIC/Dkk-3遺伝子製剤又はREIC/Dkk-3タンパク質製剤の治療効果を評価する指標となり得る。REIC/Dkk-3を用いた治療をREIC/Dkk-3治療と呼ぶ。

【0051】
具体的には、本発明の抗体を用いて被験体由来の生体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質を測定することにより、被験体における癌の検出を行うことができる。また、被験体が癌に罹患しており癌治療を受けている場合に、被験体における経時的な血中REIC/Dkk-3タンパク質の動態の変化、すなわち活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質と癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質の濃度の変化を捉えることができる。血中の経時的なREIC/Dkk-3タンパク質の動態の変化は、癌患者における癌の状態の変化を反映しており、癌の状態のモニタリングを行うことができる。また、例えば、REIC/Dkk-3遺伝子製剤を用いる治療において、REIC/Dkk-3タンパク質の濃度の上昇は治療有効成分としてのREIC/Dkk-3タンパク質が癌細胞で発現していることを示しており、REIC/Dkk-3タンパク質の癌細胞での発現は治療作用があることを示す。すなわち、REIC/Dkk-3タンパク質の動態の変化のモニタリングにより、癌治療のモニタリングを行うことができる。さらに、被験体が癌に罹患している場合に予後の予測を行うことができる。ここで、癌の検出とは、癌(前癌状態を含む)に罹患しているか否かの判定、癌に罹患するリスクがあるか否かの予測、癌の悪性度(進行度、強度)の判定等を含む。癌治療のモニタリングとは、癌患者に対して癌治療を行ったときの、癌治療作用や癌治療効果のモニタリングをいう。

【0052】
これらの判定、予測、判断は通常、医師が行うことであり、本発明の抗体は、その判定、予測、判断のための補助的データを取得することに用いることができる。

【0053】
本発明において、癌とは前癌及び腫瘍性疾患を含み、脳・神経腫瘍、皮膚癌、胃癌、肺癌、肝癌、リンパ腫・白血病、結腸癌、膵癌、肛門・直腸癌、食道癌、子宮癌、乳癌、副腎癌、腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、骨・骨肉腫、平滑筋腫、横紋筋腫、中皮腫、及び前述の癌を引き起こす前癌を含む。

【0054】
本発明における癌治療モニタリングを行うときの対象となる癌治療は限定されないが、REIC/Dkk-3遺伝子やREIC/Dkk-3遺伝子断片を用いた遺伝子治療、REIC/Dkk-3タンパク質やREIC/Dkk-3断片ペプチドを用いた治療が含まれる。

【0055】
上記のように、癌に罹患していない正常人の正常細胞は活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を産生し、癌に罹患している癌患者の血中には構造異常を有するREIC/Dkk-3タンパク質が存在する。

【0056】
本発明においては、被験体由来の試料中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度を測定し、あるいは被験体由来の試料中に存在する正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質と識別して測定する。

【0057】
例えば、REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを特異的に認識し、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いて被験体由来の試料中のREIC/Dkk-3タンパク質を測定する。被験体が癌に罹患している場合、試料中に活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質が少なくなる。N末端ドメインを特異的に認識し、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体は、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識することはできない、あるいは反応性が低いので、REIC/Dkk-3タンパク質の測定値は低下する。一方、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質のいずれをも特異的に認識する、例えば、Cysteine-richドメインを認識する抗体は、癌患者の血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を同様に認識することができるので、REIC/Dkk-3タンパク質の測定値は顕著に低下しない。

【0058】
被験体由来の試料中の癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質の濃度を単独で測定し、濃度を指標にして被験体における癌の検出を行うことができ、癌治療のモニタリングを行うことができ、さらに、被験体が癌に罹患している場合に予後の予測を行うことができる。例えば、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いて測定したときの、被験体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度が50 ng/mL、好ましくは30ng/mL、さらに好ましくは20ng/mLよりも低いと認められる場合、該被験体が前癌/腫瘍性疾患を有する可能性があると判定することができる。また、正常人の試料を対照試料とし、対照試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度と比較し、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いて測定したときの、被験体試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度が対照試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度よりも低い場合に、該被験体が前癌/腫瘍性疾患を有する可能性があると判定することができる。

【0059】
また、被験体由来の試料中の、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質の濃度と正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質の全REIC/Dkk-3タンパク質の濃度の比により、被験体における癌の検出を行うことができる。さらに、被験体が癌に罹患している場合に、癌治療のモニタリングを行うことができ、予後の予測を行うことができる。全REIC/Dkk-3タンパク質の濃度に対する正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質の濃度の比は、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて測定したときの濃度に対する正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識し結合するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いて測定したときの濃度の比をとればよい。例えば、REIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体を用いて測定したときの濃度に対するREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体を用いて測定したときの濃度の比をとればよい。REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識することができないか、あるいは反応性が低く、REIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体は癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質も正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質も認識することができる。REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体を用いた測定は、例えば、捕捉抗体としてREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体を用い、検出抗体として全長REIC/Dkk-3を免疫原として作製したポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により行うことができ、ポリクローナル抗体の代りにREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメイン又はC末端ドメインを認識するモノクローナル抗体を検出抗体として用いることもできる。REIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体を用いた測定は、例えば、捕捉抗体としてREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体を用い、検出抗体として全長REIC/Dkk-3を免疫原として作製したポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により行うことができ、ポリクローナル抗体の代りにREIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメイン又はC末端ドメインを認識するモノクローナル抗体を検出抗体として用いることもできる。REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体として、N-1抗体を例示することができ、REIC/Dkk-3タンパク質のCysteine-richドメインを認識する抗体として、Cys-3抗体を例示することができる。

【0060】
例えば、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて測定したREIC/Dkk-3タンパク質の濃度に対する正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いて測定した濃度の比が、正常人の生体試料を用いて得られた比よりも低い場合、該被験体が前癌/腫瘍性疾患を有する可能性があると判定することができる。

【0061】
癌治療のモニタリングは、癌治療を受けている患者から、定期的に、例えば、癌治療の治療前、治療中、又は治療後に経時的に試料を採取し、上記の抗体を用いて試料中のREIC/Dkk-3タンパク質を測定することにより行うことができる。定期的に採取した試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度の変化を指標に癌治療のモニタリングを行うことができる。

【0062】
癌治療のモニタリングにおいて、癌治療を受けている癌患者から定期的に採取した試料中において正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質濃度が上昇した場合、例えば、N-1抗体等のREIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体である、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を認識せず結合しないか、あるいは癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いて測定したREIC/Dkk-3タンパク質の濃度が上昇した場合、REIC/Dkk-3が癌細胞中で発現したことを意味し、REIC/Dkk-3の癌細胞中での発現はREIC/Dkk-3による治療作用又は治療効果があることを示す。従って、疾患の寛解又は癌治療に対して肯定応答があり、癌治療の効果が認められたと判断することができる。一方、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質濃度が低下した場合、癌治療の効果が認められないか、癌が進行したと判断することができる。

【0063】
また、例えば、正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質及び癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識する抗体を用いて測定したREIC/Dkk-3タンパク質の濃度に対する正常細胞が産生する活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質を特異的に認識するが、癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質に対する反応性が低い抗体を用いて測定した濃度の比が上昇した場合、疾患の寛解又は癌治療に対して肯定応答があり、癌治療の効果が認められたと判断することができる。一方、該比が低下した場合、癌治療の効果が認められないか、癌が進行したと判断することができる。

【0064】
本発明の方法により癌治療のモニタリングを行うことにより、癌患者における最適な治療法の決定やREIC/Dkk-3癌治療を受ける患者の選択の補助的情報として利用することができる。すなわち、本発明の方法はコンパニオン診断にも有用である。ここで、コンパニオン診断とは、医薬品の効果や副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査をいう。

【0065】
治療の選択方法は、対照群のそれぞれから採取された試料中の活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質の平均濃度を免疫学的に検出及び定量し、一方で、経時的に患者から採取した同等の患者試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度の逐次変化を免疫学的に検出及び定量し、患者試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を対照試料中のそれと比較する各工程を含み、患者試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度と対照試料中のそれの平均濃度との差異、及び患者試料中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度の逐次変化に基づいて、従来の治療及び/またはREIC/Dkk-3治療を患者に用いるか否かが決定されることを特徴とする。

【0066】
本発明は、REIC/Dkk-3タンパク質に特異的な抗体を含む、癌の検出を行うための検査キット、又は患者の治療の有効性をモニタリングするための検査キットを包含する。該検査キットが含むREIC/Dkk-3タンパク質を認識する抗体として、N-1抗体等のN末端ドメインを認識する抗体及びCys-3抗体等のCysteine-richドメインを認識する抗体若しくはC末端ドメインを認識する抗体が挙げられる。該キットは使用説明書、検出可能なタグ又は標識、抗体との結合を促進する溶液などを含んでいてもよい。
【実施例】
【0067】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1.抗REIC/Dkk-3タンパク質モノクローナル抗体の調製と認識領域の決定
抗REIC/Dkk-3タンパク質モノクローナル抗体は、全長REIC/Dkk-3タンパク質[Ala22-Ile350]若しくはCysteine-rich ドメインを含むREIC部分領域3[Ser135-Phe288](特許文献3を参照)を抗原とし、腸骨リンパ節法により作製され、全長REIC/Dkk-3タンパク質、REIC部分領域3、及びREIC部分領域1[Arg142-Ile350](特許文献3を参照)との反応性により選抜され、認識領域を決定した抗体である。N末端ドメインを認識する抗体とは、全長REIC/Dkk-3タンパク質とは反応するが、REIC部分領域3、及びREIC部分領域1とは反応しない抗体であり、C末端ドメインを認識する抗体とは、全長REIC/Dkk-3タンパク質、及びREIC部分領域1とは反応するが、REIC部分領域3とは反応しない抗体であり、Cysteine-richドメインを認識する抗体とは、前記、N末端ドメインを認識する抗体、及びC末端ドメインを認識する抗体以外の抗体で、全長REIC/Dkk-3タンパク質、REIC部分領域1、及びREIC部分領域3と反応する抗体である。つまりN末端ドメインを認識する抗体とは、[Ala22-Thr134]の部分領域を認識する抗体であり、C末端ドメインを認識する抗体とは、[Val289-Ile350]の部分領域を認識する抗体であり、Cysteine-richドメインを認識する抗体とは、[Ser142-Phe288]の部分領域を認識する抗体である。前記方法により選抜した12種類の抗体(N-1、N-2、C-1、C-2、Cys-1、Cys-2、Cys-3、Cys-4、Cys-5、Cys-6、Cys-7及びCys-8抗体)の抗原との反応パターンをタンパク質の種類及び認識する領域を図1-1に示す。図1-2には、REIC/Dkk-3タンパク質の構造模式図を示す。
実施例2.ヒト血清及び血漿試料を測定対象とするサンドイッチELISA法
抗REIC/Dkk-3タンパク質抗体を用いたELISA法の適切な測定試料として、ヘパリン、クエン酸塩、又はEDTAで処理されたヒト血漿、及びヒト血清が挙げられる。血中に含まれる可能性のある干渉因子による測定妨害を避けるため、ヒトの血清と血漿の調製と測定には特別の配慮をしなければならない。検体採取時に混在が想定される凝集体は、希釈前にマイクロ遠心分離により試料から除去し、さらに、検査されるべき血清又は血漿試料の最初の濃度は、約2%以下となるべきである。
アッセイ法
以下の手順でサンドイッチELISA法により、ヒト血漿又は血清中のヒトREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定した。
【実施例】
【0068】
1. マイクロプレートのウェル中に捕捉抗体として、REIC/Dkk-3タンパク質のN末端ドメインを認識する抗体N-1を50μL加える。プレートを室温で1時間、又は4℃で一晩反応させる。
【実施例】
【0069】
2. プレートウオッシュの使用溶液を調製する。
【実施例】
【0070】
3. 200μL/wellのプレートウオッシュ液を用いて4回、ウェルを洗浄する。
【実施例】
【0071】
4. マイクロプレートのウェル中にBlocking試薬(例えば、スキムミルク・市販Blocking剤)を200μL加える。プレートを室温で1時間反応させる。
【実施例】
【0072】
5. 200μL/wellのプレートウオッシュ液を用いて4回、ウェルを洗浄する。
【実施例】
【0073】
6. マイクロプレートのウェル中にあらかじめ希釈した試料と対照、及び8つのREIC/Dkk-3タンパク質標準(0~2000 pg/mL)のそれぞれを、50μL加える。プレートを室温で3時間、又は4℃で一晩反応させる。
【実施例】
【0074】
7. 200μL/wellのプレートウオッシュ液を用いて4回、ウェルを洗浄する。
【実施例】
【0075】
8. マイクロプレートのウェル中に検出抗体(例えば、ビオチン標識した抗REIC/Dkk-3タンパク質ポリクローナル抗体)を50μL加える。プレートを室温で1時間反応させる。
【実施例】
【0076】
9. 200μL/wellのプレートウオッシュ液を用いて4回、ウェルを洗浄する。
【実施例】
【0077】
10. マイクロプレートのウェル中に検出抗体と反応する作用性の複合体(例えば、HRP標識したアビジン)を50μL加える。プレートを室温で1時間反応させる。
【実施例】
【0078】
11. 200μL/wellのプレートウオッシュ液を用いて4回、ウェルを洗浄する。
【実施例】
【0079】
12. 作用性の基質(例えばTMB基質)を調製し、マイクロプレートのウェル中に50μL加える。
【実施例】
【0080】
13. 反応が十分に進んだ時点でマイクロプレートのウェル中に100μLの停止液を加える。
【実施例】
【0081】
14. 450 nmの波長の分光学的プレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度を測定する。
標準曲線
0、31.3、62.5、125、250、500、1000、2000 pg/mLの8種類の濃度のREIC/Dkk-3タンパク質標準(組換え型ヒトREIC/Dkk-3タンパク質)を用いて標準曲線を作成することにより、定量分析を行った。標準曲線を図2に示す。
ヒト血清及び血漿試料
REIC/Dkk-3遺伝子治療前、治療中、治療後の患者から血清あるいは血漿を採取、測定時まで凍結保存した。
実施例3.前立腺癌患者からの血清を測定対象とするサンドイッチELISA法による治療のモニタリング
前立腺癌患者からの血清中のREIC/Dkk-3タンパク質の濃度をサンドイッチELISA法により測定した。捕捉抗体としてN末端ドメインを認識するN-1抗体又はCysteine-richドメインを認識するCys-3抗体を用いて、REIC/Dkk-3遺伝子治療を2回(0日目、14日目)行った患者について11種の検体、すなわち、基準(治療前)、1回目治療後1、2、7、14日目(2回目の治療直前)、15、17、21、28日目、56日目(手術直前)、84日目における血清中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定した。検出抗体としては、ビオチン標識した抗REIC/Dkk-3タンパク質ポリクローナル抗体を用いた。該ポリクローナル抗体は、HEK293細胞から分泌されたREIC/Dkk-3タンパク質を免疫原として作製した。この測定データにより、捕捉抗体としてN末端ドメインを認識するN-1抗体を用いた場合において、治療のモニタリングが可能であることを図3-1A及び図3-1Bに患者2人(患者A、患者B)の測定データを示す。さらに捕捉抗体としてCysteine-richドメインを認識するCys-3抗体を用いて、前記血清サンプル中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度を測定した結果を図3-2A(患者A)及び図3-2B(患者B)に示す。図3-1に示すように、捕捉抗体としてN-1抗体を用いた場合、REIC/Dkk-3遺伝子治療又は外科的治療を行った後の血清中のREIC/Dkk-3タンパク質測定値が有意に上昇した。一方、捕捉抗体としてCys-3抗体を用いた場合、REIC/Dkk-3遺伝子治療又は外科的治療を行った後の血清中のREIC/Dkk-3タンパク質測定値は上昇しなかった。これら捕捉抗体が異なる2種類の測定データを比較することにより、N-1抗体は癌患者血清中のREIC/Dkk-3タンパク質に対して著しく反応性が低下すると判断される。図3-3としてN-1抗体及びCys-3抗体を捕捉抗体として測定したREIC/Dkk-3タンパク質濃度の比率(%)(N-1抗体/Cys-3抗体の測定値)を示す。この結果は、REIC/Dkk-3タンパク質濃度の比率(%)として、N-1抗体/Cys-3抗体の測定値の比が血中のREIC/Dkk-3タンパク質の動態を的確に反映していることを示している。また、図3-4に患者A及びBに他の患者3人(計5人)の治療前の血清中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度の測定結果を示す。図3-4には、捕捉抗体として、N末端ドメインを認識するN-1抗体又はCysteine-richドメインを認識するCys-3抗体を用いた場合の測定結果を示す。図3-4に示すように、N-1抗体を用いた場合の血清中濃度は約10~50ng/mLであり、Cys-3抗体を用いた場合の血清中濃度は、約55~110ng/mLであった。図3-3及び図3-4より判断されるように、REIC/Dkk-3タンパク質の血清中濃度及び前記2種類の抗体により測定した濃度の比を指標に、治療を受けた患者の血中の経時的なREIC/Dkk-3タンパク質の動態の変化、すなわち活性構造を有するREIC/Dkk-3タンパク質と癌患者血中に多く存在するREIC/Dkk-3タンパク質の濃度の変化を捉えることができる。血中の経時的なREIC/Dkk-3タンパク質の動態の変化は、癌患者における癌の状態の変化を反映しており、治療のモニタリングを行うことも可能であり、従来の腫瘍マーカーによる診断が、がん患者の血中濃度の絶対値により評価するため個人差を包括した診断法となるのに対して、この診断方法は、REIC/Dkk-3タンパク質のがん患者血清中の構造変化を2種類の抗体で捉えることにより、患者個人に最適な治療方法を提供するためのオーダーメード医療を可能にする新規の腫瘍診断法となる。
実施例4.前立腺癌患者からの血清、外科手術後の血清、正常ヒト血清の比較による疾患の予測
捕捉抗体としてN末端を認識するN-1抗体又はCysteine-richドメインを認識するCys-3抗体を用い、検出抗体として、実施例3で用いたビオチン標識した抗REIC/Dkk-3タンパク質ポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法により、前立腺癌患者、外科手術後、正常人、それぞれ5人分の血清中のREIC/Dkk-3タンパク質濃度の測定を行った。N-1抗体及びCys-3抗体を捕捉抗体として測定したREIC/Dkk-3タンパク質濃度の比率(%)(N-1抗体/Cys-3抗体の測定値)を図4-1に示す。5人の前立腺患者のプロファイルを図4-2に示す。図4-1に示すように、前立腺癌患者の血清において、N-1抗体/Cys-3抗体の測定値が低く、治療後の前立腺がん患者の血清及び正常人血清においては、N-1抗体/Cys-3抗体の測定値は高かった。この結果は、2種類の捕捉抗体で測定したREIC/Dkk-3タンパク質の濃度の比が、癌の予測、予後の診断として活用可能であることを示す。
実施例5.抗REIC/Dkk-3タンパク質モノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA系における捕捉抗体と検出抗体の組み合わせの検討
抗REIC/Dkk-3タンパク質モノクローナル抗体(N-1, N-2, C-1, C-2, Cys-1, Cys-2, Cys-3, Cys-4, Cys-5, Cys-6)のサンドイッチELISA系において、検出抗体としてビオチン標識したN末端を認識するN-1抗体、又はビオチン標識したCysteine-richドメインを認識するCys-3抗体を用いた場合の、組み合わせ可能な捕捉抗体について検討を行った。捕捉抗体は検出抗体と異なる抗体を使用し、精製した組換え型REIC/Dkk-3タンパク質を100 ng/mL, 10 ng/mLの濃度で添加し、検出抗体と反応する作用性の複合体としてアビジン-HRPを用いた。REIC/Dkk-3タンパク質と各種抗体の結合量の指標となるHRP活性を吸光度450 nmの測定値として図5に示す。図5に示すように、確認したすべての捕捉抗体と検出抗体を組合せてREIC/Dkk-3タンパク質を測定することができた。また、捕捉抗体として、N-2抗体よりもN-1抗体が優れていること、Cysteine-richドメインを認識する抗体の中でもCys-3抗体が優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の抗REIC/Dkk-3抗体は、REIC/Dkk-3遺伝子及びREIC/Dkk-3タンパク質医薬を用いた癌治療効果のモニタリングが可能な抗体であり、抗REIC/Dkk-3抗体を用いた免疫測定法による診断は、癌の予測及び予後の診断方法及びコンパニオン診断法として活用でき、その診断方法は検査キットとして提供される。
【受託番号】
【0083】
NITE BP-02103
NITE BP-02104
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図面
【図1-1】
0
【図1-2】
1
【図2】
2
【図3-1】
3
【図3-2】
4
【図3-3】
5
【図3-4】
6
【図4-1】
7
【図4-2】
8
【図5】
9