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明細書 :低分子化合物による癌と線維化の抑制と再生促進の効果

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6785487号 (P6785487)
登録日 令和2年10月29日(2020.10.29)
発行日 令和2年11月18日(2020.11.18)
発明の名称または考案の名称 低分子化合物による癌と線維化の抑制と再生促進の効果
国際特許分類 C07D 487/04        (2006.01)
A61K  31/519       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P   3/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI C07D 487/04 147
C07D 487/04 CSP
A61K 31/519
A61P 35/00
A61P 3/00
A61P 43/00 111
請求項の数または発明の数 7
全頁数 46
出願番号 特願2017-540011 (P2017-540011)
出願日 平成28年9月16日(2016.9.16)
国際出願番号 PCT/JP2016/077475
国際公開番号 WO2017/047762
国際公開日 平成29年3月23日(2017.3.23)
優先権出願番号 2015185988
優先日 平成27年9月18日(2015.9.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和元年8月9日(2019.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
【識別番号】517060247
【氏名又は名称】カノンキュア株式会社
発明者または考案者 【氏名】汐田 剛史
【氏名】板場 則子
【氏名】森本 稔
【氏名】岡 博之
【氏名】阿部 健一郎
【氏名】清水 寛基
【氏名】河野 洋平
【氏名】横木 智
個別代理人の代理人 【識別番号】110001139、【氏名又は名称】SK特許業務法人
【識別番号】100130328、【弁理士】、【氏名又は名称】奥野 彰彦
【識別番号】100130672、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 寛之
審査官 【審査官】三上 晶子
参考文献・文献 国際公開第2012/141038(WO,A1)
米国特許第07671054(US,B1)
特表2011-522037(JP,A)
調査した分野 C07D201/00-519/00
A61K 31/33- 33/44
A61P 1/00- 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物:
【化1】
JP0006785487B2_000004t.gif
(式中、置換基R1及びR2は下記(a)又は(b)を意味する。
(a)R1は、置換されていてもよいフェニル;
R2は、H、-C(O)NHR3、置換されていてもよいフェニル; 及び
前記R3は、H、C1~C6アルキル、置換されていてもよいベンジル; 又は
(b)R1は、置換されていてもよいナフチル、又は置換されていてもよいフェニル;
R2は、-C(O)NHR4、置換されていてもよいフェニル; 及び
前記R4は、H、C1~C6アルキル、置換されていてもよいシロキシベンジル。)
【請求項2】
前記(a)のR1は、置換基R5を有するフェニルであり、
前記R5は、H、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、及びC1~C6アルコキシアミノからなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、
前記(a)のR2は、H、-C(O)NHR3、又は置換基R5を有するフェニルであり、
前記R3は、置換基R6を有するベンジルであり、
前記R6は、H、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシアミノ、C1~C6アルコキシで置換されているC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシフェニルで置換されているC1~C6アルコキシ、トリC1~C6アルキルシロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルジフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリC1~C6アルキルシロキシ、C1~C6アルキルジフェニルシロキシ、及びトリフェニルシロキシからなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、
前記(b)のR1は、置換基R5を有するフェニル、又はナフチルであり、
前記(b)のR2は、-C(O)NHR4、又は置換基R5を有するフェニルであり、且つ
前記R4は、H、C1~C6アルキル、置換基R5を有するシロキシベンジルである、
請求項1に記載の化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項3】
前記(a)のR2は、-C(O)NH(CH2C6H5)であり、
前記(b)のR1は、ナフチルであり、
前記(b)のR2は、-C(O)NHR4、又はニトロフェニルであり、且つ
前記R4は、H、又は置換基R5を有するシロキシベンジルである、
請求項2に記載の化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項4】
前記(a)のR1は、F、Cl、ニトロ、OH、及びメトキシからなる群から選ばれる1種以上の置換基を有するフェニルであり、
前記(a)のR2は、-C(O)NH(CH2C6H5)であり、
前記(b)のR1は、ナフチルであり、且つ
前記(b)のR2は、-C(O)NH2、ニトロフェニル、又はtert-ブチルジメチルシロキシベンジルである、
請求項1~3いずれかに記載の化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、悪性腫瘍の治療薬。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、線維症の治療薬。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、悪性腫瘍又は線維症の治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの死亡原因として、悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患などの疾患が上位に挙げられる。この中でも悪性腫瘍は、発生機序が複雑であるため、特に予防及び治療の難しい疾患といえる。
【0003】
悪性腫瘍の原因となる症状として、組織の線維化が挙げられる。例えば、肝臓の線維化が進むと、肝硬変、肝癌になる。その他、線維化は肺、腎臓、心臓、皮膚などにも生じる。非特許文献1には、線維化治療に関するものとして、ピルフェニドンの臨床試験の結果が記載されている。
【0004】
本願発明者らは、低分子化合物に関して、3つの報告をしている(非特許文献2、3、特許文献1)。非特許文献2、3には、肝癌細胞増殖抑制効果及びWnt/β-カテニンシグナル抑制効果を示す低分子化合物が記載されている。文献2、3には、どのような構造及び機能を有する化合物が肝癌細胞に対して増殖抑制効果を示すかは記載されていない。
【0005】
特許文献1には、PN-1-2、PN-3-4、PN-3-13、HC-1、及びIC-2が、間葉系幹細胞のWnt/β-カテニンシグナルを抑制し、間葉系幹細胞を肝細胞に分化誘導させたことが記載されている。この文献には、癌細胞の増殖抑制に関する記載はない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】WO2012/141038
【0007】

【非特許文献1】Noble et al., Lancet. 2011 May 21;377(9779):1760-9.
【非特許文献2】Sakabe et al., 肝臓, 53巻, Supplement 1, 2012, A226, WS-54
【非特許文献3】Seto et al., 肝臓, 54巻, Supplement 1, 2013, P-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
悪性腫瘍は、ヒトの死因の上位に位置しており、従来の治療戦略だけでは十分ではなかった。悪性腫瘍の治療分野では、個々の骨格の持つ特性によって、投与する低分子化合物の有する薬理作用が大きく変わることが知られている。また、この分野は不確実性の高い分野であり、新規の治療方法を開発する際、所望の薬理作用が得られるかどうかは予想が困難といえる。そのため、悪性腫瘍に対する治療効果をもった低分子化合物を新たに同定することは容易なことではなかった。
【0009】
また、上記のように、線維化治療に関する研究成果が徐々に報告されてきている。しかしながら、線維化の治療に有効な治療薬は少なく、また患者によっては副作用が問題となることもある。そのため、従来の抗線維化剤だけでは十分ではなかった。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、悪性腫瘍、又は線維症に対する新規の治療薬を提供すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究の結果、下記式(1)に示す低分子化合物が、抗悪性腫瘍効果を有することを発見した。また、下記式(1)に示す低分子化合物が、線維化の抑制効果をも有することを発見した。そして、これらの知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明の一態様によれば、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物が提供される:
【化1】
JP0006785487B2_000002t.gif
(式中、置換基R1及びR2は下記(a)又は(b)を意味する。
(a)R1は、置換されていてもよいフェニル;
R2は、H、-C(O)NHR3、置換されていてもよいフェニル; 及び
前記R3は、H、C1~C6アルキル、置換されていてもよいベンジル; 又は
(b)R1は、置換されていてもよいナフチル、又は置換されていてもよいフェニル;
R2は、-C(O)NHR4、置換されていてもよいフェニル; 及び
前記R4は、H、C1~C6アルキル、置換されていてもよいシロキシベンジル。)
【0013】
この化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物によれば、悪性腫瘍、又は線維症の治療をすることができる。
【0014】
また本発明の一態様によれば、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、悪性腫瘍、又は線維症の治療薬が提供される。
【0015】
また本発明の一態様によれば、下記式(2)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、下記式(2)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物と5-FUとの併用療法において用いられる悪性腫瘍の治療薬が提供される:
【化2】
JP0006785487B2_000003t.gif
(式中、
R7、及びR8は、同一又は異なって、置換されていてもよいC1~C6アルキル、又は置換されていてもよいC2~C6アルケニルである。)
【0016】
また本発明の一態様によれば、5-FUを含む、5-FUと式(2)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物との併用療法において用いられる悪性腫瘍の治療薬が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、悪性腫瘍、又は線維症の治療をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1-9】図1~9は、実施例1の低分子化合物の合成スキームを表した図である。
【図10-14】図10~14は、実施例1の低分子化合物の構造式とスペクトルデータを表した図である。
【図15-31】図15~31は、低分子化合物の抗腫瘍効果を調べた結果を表した図である。
【図32】図32は、低分子化合物の癌幹細胞抑制効果を調べた結果を表した図である。
【図33-34】図33~34は、低分子化合物の抗線維化効果を調べた結果を表した図である。
【図35-39】図35~39は、低分子化合物の肝細胞分化誘導効果を調べた結果を表した図である。
【図40-42】図40~42は、低分子化合物のWnt/β-カテニンシグナル抑制効果を調べた結果を表した図である。
【図43】図43は、低分子化合物の抗腫瘍効果を調べた結果を表した図である。
【図44】図44は、低分子化合物の癌幹細胞抑制効果を調べた結果を表した図である。
【図45】図45は、低分子化合物を投与後の、肝癌モデルマウスの体重変化を調べた結果を表した図である。
【図46-48】図46~48は、低分子化合物の抗腫瘍効果を調べた結果を表した図である。
【図49】図49は、低分子化合物の癌幹細胞抑制効果を調べた結果を表した図である。
【図50-51】図50~51は、低分子化合物の抗線維化効果を調べた結果を表した図である。
【図52】図52は、低分子化合物の抗腫瘍効果を調べた結果を表した図である。
【図53-55】図53~55は、HC-1と5-FUを併用したときの、抗腫瘍効果を調べた結果を表した図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
【0020】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物である。この化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を用いれば、悪性腫瘍、又は線維症を治療することができる。又は、この化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を用いれば、間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導をすることができる。
【0021】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、悪性腫瘍の治療薬である。この治療薬を用いれば、悪性腫瘍を治療することができる。
【0022】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、癌幹細胞の治療薬である。この治療薬を用いれば、癌幹細胞を治療することができる。
【0023】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、悪性腫瘍細胞又は癌幹細胞の増殖抑制剤である。この治療薬を用いれば、悪性腫瘍細胞又は癌幹細胞の増殖を抑制することができる。
【0024】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、悪性腫瘍の再発抑制薬である。この抑制薬を用いれば、悪性腫瘍の再発を抑制することができる。
【0025】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、線維症の治療薬である。この治療薬を用いれば、線維症を治療することができる。
【0026】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、線維化に伴う疾患の治療薬である。この治療薬を用いれば、線維化に伴う疾患を治療することができる。
【0027】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、間葉系幹細胞の肝細胞への分化誘導剤である。この誘導剤を用いれば、効率的に間葉系幹細胞を肝細胞へ分化誘導できる。
【0028】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を細胞に接触させる工程を含む、肝細胞の生産方法である。この方法を用いれば、効率的に肝細胞を生産できる。この方法は、さらに、肝細胞を回収する工程、又は肝細胞マーカーを検出する工程、を含んでいてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、式(1)の置換基R1及びR2は下記(a)又は(b)を意味する。
(a)R1は、置換されていてもよいフェニル;
R2は、H、-C(O)NHR3、置換されていてもよいフェニル; 及び
上記R3は、H、C1~C6アルキル、置換されていてもよいベンジル; 又は
(b)R1は、置換されていてもよいナフチル、又は置換されていてもよいフェニル;
R2は、-C(O)NHR4、置換されていてもよいフェニル; 及び
上記R4は、H、C1~C6アルキル、置換されていてもよいシロキシベンジル。
【0030】
本発明の一実施形態において、より優れた抗腫瘍効果、抗線維化、又は肝細胞分化誘導効果を実現する観点からは、上記置換基R1及びR2は、好ましくは以下の通りである。
上記(a)のR1は、置換基R5を有するフェニルであり、
上記R5は、H、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、及びC1~C6アルコキシアミノからなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、
上記(a)のR2は、H、-C(O)NHR3、又は置換基R5を有するフェニルであり、
上記R3は、置換基R6を有するベンジルであり、
上記R6は、H、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシアミノ、C1~C6アルコキシで置換されているC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシフェニルで置換されているC1~C6アルコキシ、トリC1~C6アルキルシロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルジフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリC1~C6アルキルシロキシ、C1~C6アルキルジフェニルシロキシ、及びトリフェニルシロキシからなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、
上記(b)のR1は、置換基R5を有するフェニル、又はナフチルであり、
上記(b)のR2は、-C(O)NHR4、又は置換基R5を有するフェニルであり、且つ
上記R4は、H、C1~C6アルキル、置換基R5を有するシロキシベンジル。
【0031】
本発明の一実施形態において、より優れた抗腫瘍効果、抗線維化、又は肝細胞分化誘導効果を実現する観点からは、上記置換基R1及びR2は、好ましくは以下の通りである。
上記(a)のR1は、置換基R5を有するフェニルであり、
上記R5は、H、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、及びC1~C6アルコキシアミノからなる群から選ばれる1種以上の置換基であり、
上記(a)のR2は、-C(O)NH(CH2C6H5)であり、
上記(b)のR1は、ナフチルであり、
上記(b)のR2は、-C(O)NHR4、又はニトロフェニルであり、且つ
上記R4は、H、又は置換基R5を有するシロキシベンジル。
【0032】
本発明の一実施形態において、さらに優れた抗腫瘍効果、抗線維化、又は肝細胞分化誘導効果を実現する観点からは、上記置換基R1及びR2は、好ましくは以下の通りである。
上記(a)のR1は、F、Cl、ニトロ、OH、及びメトキシからなる群から選ばれる1種以上の置換基を有するフェニルであり、
上記(a)のR2は、-C(O)NH(CH2C6H5)であり、
上記(b)のR1は、ナフチルであり、且つ
上記(b)のR2は、-C(O)NH2、ニトロフェニル、又はtert-ブチルジメチルシロキシベンジル。
【0033】
本発明の一実施形態において、IC-2に比べて低濃度でより強力な抗腫瘍効果を発揮する観点からは、(i)上記R1が、2,3位にClを有するフェニルであり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であるか、又は(ii)上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にtert-ブチルジメチルシロキシを有するベンジル、又は4位にClを有するベンジルであることが好ましい。後述の実施例では、IC-2-506-1、IC-2-OTBS、及びIC-2-Clが、IC-2に比べて低濃度でより強力な抗腫瘍効果を発揮している。
【0034】
本発明の一実施形態において、IC-2よりIC50が低い観点からは、(i)上記R1が、2,3位にClを有するフェニル、2,4位にClを有するフェニル、もしくは3,4位にClを有するフェニルであり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であるか、又は(ii)上記R1が、ナフチルであり、上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にtert-ブチルジメチルシロキシを有するベンジル、4位にFを有するベンジル、4位にClを有するベンジル、又は4位にメトキシメトキシを有するベンジルであることが好ましい。後述の実施例では、IC-2-506-1、IC-2-506-2、IC-2-506-3、IC-2-OTBS、IC-2-F、IC-2-Cl、及びIC-2-OMOMのIC50が、IC-2のIC50より低くなっている。
【0035】
本発明の一実施形態において、IC-2より強力な癌幹細胞の抑制効果を発揮する観点からは、上記R1が、ナフチルであり、上記R2が、4位にNO2を有するベンジル、4位に(4-メトキシフェニル)メトキシを有するベンジル、又は4位にFを有するベンジルであることが好ましい。後述の実施例では、IC-2-NO2、IC-2-OPMB、及びIC-2-Fが、IC-2より強力な癌幹細胞の抑制効果を発揮している。
【0036】
本発明の一実施形態において、IC-2に比べて低濃度で癌幹細胞の抑制効果を発揮する観点からは、(i)上記R1が、ナフチルであり、上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にtert-ブチルジメチルシロキシを有するベンジルであることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-OTBSが、IC-2に比べて低濃度で癌幹細胞の抑制効果を発揮したことを確認している。
【0037】
本発明の一実施形態において、IC-2に比べて低濃度でより強力な抗線維化効果を発揮する観点からは、(i)上記R1が、3,4位にClを有するフェニルであり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であるか、又は(ii)上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にtert-ブチルジメチルシロキシを有するベンジル、又は4位にFを有するベンジルあることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-506-3、IC-2-OTBS、及びIC-2-Fが、IC-2に比べて低濃度でより強力な抗線維化効果を発揮したことを確認している。
【0038】
本発明の一実施形態において、IC-2に比べて低濃度で抗線維化効果を発揮する観点からは、上記R1が、ナフチルであり、上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にClを有するベンジルであることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-Clが、IC-2に比べて低濃度で抗線維化効果を発揮したことを確認している。
【0039】
本発明の一実施形態において、IC-2に比べて同濃度、又は高濃度でより強力な抗線維化効果を発揮する観点からは、(i)上記R1が、4位にClを有するフェニル、2,3位にClを有するフェニル、又は3,4位にClを有するフェニル、であり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であるか、又は(ii)上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にOHを有するベンジルであることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-Ar-Cl、IC-2-506-1、IC-2-506-2、及びIC-2-OHが、IC-2に比べて同濃度、又は高濃度でより強力な抗線維化効果を発揮したことを確認している。
【0040】
本発明の一実施形態において、低濃度で肝細胞誘導効果を発揮する観点からは、上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にtert-ブチルジメチルシロキシを有するベンジル、4位にClを有するベンジル、4位にFを有するベンジル、又は4位に(4-メトキシフェニル)メトキシを有するベンジルであることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-OTBS、IC-2-Cl、IC-2-F、及びIC-2-OPMBが、低濃度で肝細胞誘導効果を発揮したことを確認している。
【0041】
本発明の一実施形態において、IC-2に比べて高濃度でより強力な肝細胞誘導効果を発揮する観点からは、上記R1が、2,4位にClを有するフェニルであり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-506-2が、IC-2に比べて高濃度でより強力な肝細胞誘導効果を発揮したことを確認している。
【0042】
本発明の一実施形態において、肝癌細胞においてIC-2に比べて低濃度又は同濃度でより強力なWnt/βカテニンシグナル経路を抑制する観点からは、(i)上記R1が、4位にClを有するフェニル、又は2,3位にClを有するフェニルであり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であるか、又は(ii)上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にClを有するベンジル、4位にOMeを有するベンジル、4位にFを有するベンジル、4位にOHを有するベンジル、4位にNO2を有するベンジル、4位に(4-メトキシフェニル)メトキシを有するベンジル、又は4位にメトキシメトキシを有するベンジルあることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-Ar-Cl、IC-2-506-1、IC-2-Cl、IC-2-OMe、IC-2-F、IC-2-OH、IC-2-NO2、IC-2-OPMB、及びIC-2-OMOMが、肝癌細胞においてIC-2に比べて低濃度又は同濃度でより強力なWnt/βカテニンシグナル経路抑制効果を発揮したことを確認している。
【0043】
本発明の一実施形態において、肝星細胞においてIC-2に比べて低濃度又は同濃度でより強力なWnt/βカテニンシグナル経路を抑制する観点からは、(i)上記R1が、2,3位にClを有するフェニル、2,4位にClを有するフェニル、又は3,4位にClを有するフェニルであり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であるか、(ii)上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にClを有するベンジルであるか、又は(iii)上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、2位にNO2を有するフェニルであることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-506-1、IC-2-506-2、IC-2-506-3、IC-2-Cl、及び7c-NTが、肝星細胞においてIC-2に比べて低濃度又は同濃度でより強力なWnt/βカテニンシグナル経路抑制効果を発揮したことを確認している。
【0044】
本発明の一実施形態において、間葉系幹細胞においてIC-2に比べて低濃度又は同濃度でより強力なWnt/βカテニンシグナル経路を抑制する観点からは、(i)上記R1が、4位にClを有するフェニル、又は4位にNO2を有するフェニル、であり、且つ上記R2が、-C(O)NH(CH2C6H5)であるか、又は(ii)上記R1が、ナフチルであり、且つ上記R2が、-C(O)NHR4であり、且つ上記R4が、4位にNO2を有するベンジル、又は4位に(4-メトキシフェニル)メトキシを有するベンジルあることが好ましい。本願発明者らは、後述の実施例のIC-2-Ar-Cl、IC-2-Ar-NO2、IC-2-NO2、及びIC-2-OPMBが、間葉系幹細胞においてIC-2に比べて低濃度又は同濃度でより強力なWnt/βカテニンシグナル経路抑制効果を発揮したことを確認している。
【0045】
本発明の一実施形態において、式(1)のR1はナフチル、R2は-C(O)NHR4、R4は置換基R6を有するベンジル、及びR6はH、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシアミノ、C1~C6アルコキシで置換されているC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシフェニルで置換されているC1~C6アルコキシ、トリC1~C6アルキルシロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルジフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリC1~C6アルキルシロキシ、C1~C6アルキルジフェニルシロキシ、及びトリフェニルシロキシからなる群から選ばれる1種以上の置換基であってもよい。
【0046】
本発明の一実施形態において「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、又はIを含む。
【0047】
本発明の一実施形態において「アルキル」及び「アルケニル」とは、特に断らない限り、直鎖又は分枝状の炭化水素鎖を意味する。
【0048】
本発明の一実施形態において「C1~C6」は、炭素数が1、2、3、4、5、又は6の炭化水素である。即ち、「C1~C6アルキル」は、炭素数が1、2、3、4、5、又は6のアルキルである。C1~C6アルキルとしては、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等を含む。本発明の一実施形態において「トリC1~C6」は、例えば、モノC1~C6ジC1~C6、ジC1~C6モノC1~C6、又はモノC1~C6モノC1~C6モノC1~C6を含む。
【0049】
本発明の一実施形態において「アルケニル」は、例えば、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、又は5-ヘキセニル等を含む。
【0050】
本発明の一実施形態において「アルコキシ」は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、ヘキソキシ等を含む。
【0051】
本発明の一実施形態において「置換されていてもよい」とは、無置換、又は置換可能な位置に置換基を1、2、3、4、又は5個有していることを意味する。また、本発明の一実施形態において「置換基を有する」は、置換可能な位置に置換基(例えば、R1~R6を含む)を、例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は13個有していてもよく、それらいずれか2つの値の範囲内で有していてもよい。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また本発明の一実施形態に係る化合物において、置換基の置換位置が特定されていない場合、又は「置換基を有する」と明記されている場合、置換位置は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9位であってもよい。ここで、置換基としては、例えばH、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、OH、C1~C6アルキル、ハロゲノC1~C6アルキル、ヒドロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルアミノ、C3~C6シクロアルキル、C2~C6アルケニル、ハロゲノC2~C6アルケニル、ヒドロキシC2~C6アルケニル、C2~C6アルケニルアミノ、C3~C6シクロアルケニル、C2~C6アルキニル、ハロゲノC2~C6アルキニル、ヒドロキシC2~C6アルキニル、C2~C6アルキニルアミノ、C1~C6アルコキシ、ハロゲノC1~C6アルコキシ、ヒドロキシC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシアミノ、C1~C6アルコキシフェニル、トリアルキルシロキシ、アルキルジフェニルシロキシ、アリール、ヘテロアリール、C1~C6アルコキシで置換されているC1~C6アルコキシ、C1~C6アルコキシフェニルで置換されているC1~C6アルコキシ、トリC1~C6アルキルシロキシC1~C6アルキル、C1~C6アルキルジフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリフェニルシロキシC1~C6アルキル、トリC1~C6アルキルシロキシ、C1~C6アルキルジフェニルシロキシ、又はトリフェニルシロキシ等が挙げられる。
【0052】
本発明の一実施形態において「ハロゲノC1~C6アルキル」とは、1個以上のハロゲンで置換されたC1~C6アルキルである。このハロゲンの数は、例えば1、2、3、4、5、6又は13個であってもよく、ここで例示したいずれか2つの値の範囲内であってもよい。又はロゲンが2個以上である場合の各ハロゲンの種類は、同一又は異なっていてもよい。ハロゲノC1~C6アルキルは、例えば、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、クロロエチル、ジクロロエチル、トリクロロエチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、トリフルオロエチル等を含む。
【0053】
本発明の一実施形態において「ヒドロキシC1~C6アルキル」とは、1個以上のヒドロキシで置換されたC1~C6アルキルである。このヒドロキシンの数は、例えば1、2、3、4、5、6又は13個であってもよく、ここで例示したいずれか2つの値の範囲内であってもよい。ヒドロキシC1~C6アルキルは、例えば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、又は2,3-ジヒドロキシ-n-プロピル等を含む。
【0054】
本発明の一実施形態において「C1~C6アルキルアミノ」とは、1個以上のアミノで置換されたC1~C6アルキルである。このアミノの数は、例えば1、2、3、4、5、6又は13個であってもよく、ここで例示したいずれか2つの値の範囲内であってもよい。C1~C6アルキルアミノは、例えば、メチルアミノ、又はエチルアミノ等を含む。
【0055】
本発明の一実施形態において「ハロゲノC1~C6アルコキシ」とは、ハロゲノC1~C6アルキルのアルキルをアルコキシに置き換えたものと等価である。ハロゲノC1~C6アルコキシは、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、1-フルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2-ブロモエトキシ、(1,1-ジフルオロ)エトキシ、(1,2-ジフルオロ)エトキシ、(2,2,2-トリフルオロ)エトキシ、(1,1,2,2-テトラフルオロ)エトキシ、(1,1,2,2,2-ペンタフルオロ)エトキシ、1-フルオロ-n-プロポキシ、1,1-ジフルオロ-n-プロポキシ、2,2-ジフルオロ-n-プロポキシ、3-フルオロ-n-プロポキシ、(3,3,3-トリフルオロ)-n-プロポキシ、(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ)-n-プロポキシ、4-フルオロ-n-ブトキシ、(4,4,4-トリフルオロ)-n-ブトキシ、5-フルオロ-n-ペンチルオキシ、(5,5,5-トリフルオロ)-n-ペンチルオキシ、6-フルオロ-n-ヘキシルオキシ、(6,6,6-トリフルオロ)-n-ヘキシルオキシ、2-フルオロシクロプロポキシ、2-フルオロシクロブトキシ等を含む。
【0056】
本発明の一実施形態において「ヒドロキシC1~C6アルコキシ」とは、ヒドロキシC1~C6アルキルのアルキルをアルコキシに置き換えたものと等価である。ヒドロキシC1~C6アルコキシは、例えば、2-ヒドロキシエトキシ、2-ヒドロキシ-n-プロポキシ、3-ヒドロキシ-n-プロポキシ、2,3-ジヒドロキシ-n-プロポキシ、2-ヒドロキシシクロプロピル等を含む。
【0057】
本発明の一実施形態において「C1~C6アルコキシアミノ」とは、C1~C6アルキルアミノのアルキルをアルコキシに置き換えたものと等価である。C1~C6アルコキシアミノは、例えば、メトキシアミノ、エトキシアミノを含む。
【0058】
本発明の一実施形態において「アリール」とは、C6~14の単環、二環、又は三環式芳香族炭化水素環基である。アリールは、例えばフェニル、ナフチル(1-ナフチル、2-ナフチル)、ベンジル、テトラヒドロナフタレニル、インデニル、又はフルオレニル等が挙げられる。特に、優れた抗腫瘍効果、抗線維化、肝細胞分化誘導効果を実現する観点からは、ナフチル、フェニル、又はベンジルが好ましい。またアリールは、例えばC5~8シクロアルケンとその二重結合部位で縮合した環基を含む。
【0059】
本発明の一実施形態において「ヘテロアリール」とは、環内に5から14個の環原子、および共有π電子系を有し、N、S、及びOよりなる群から選択されたヘテロ原子を1~4個含有する基を挙げることができる。ヘテロアリールは、例えば、チエニル、ベンゾチエニル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、テトラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、又はイソオキサゾリル等を含む。
【0060】
本発明の一実施形態において「塩」は、特に限定されないが、例えば任意の酸性(例えばカルボキシル)基で形成されるアニオン塩、又は任意の塩基性(例えばアミノ)基で形成されるカチオン塩を含む。塩類には無機塩および有機塩を含み、[Berge,BighleyおよびMonkhouse, J.Pharm.Sci., 1977, 66, 1-19]に記載されている塩が含まれる。例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。金属塩は、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩は、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩は、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
【0061】
本発明の一実施形態において「溶媒和物」は、溶質および溶媒によって形成される化合物である。溶媒和物については例えば、[J.Honig et al., The Van Nostrand Chemist's Dictionary P650 (1953)]を参照できる。溶媒が水であれば形成される溶媒和物は水和物である。この溶媒は、溶質の生物活性を妨げないものが好ましい。そのような好ましい溶媒の例として、限定するものではないが、水、エタノール、および酢酸が挙げられる。最も好ましい溶媒は、水である。本発明に係る化合物又はその塩は、大気に触れるか又は再結晶するときに水分を吸収し、場合によっては吸湿水を有するか又は水和物となりうる。本発明の一実施形態において「異性体」は、分子式は同一だが構造が異なる分子を含む。鏡像異性体(エナンチオマー)、幾何(シス/トランス)異性体、又は相互に鏡像ではない不斉中心を1個以上有する異性体(ジアステレオマー)を含む。本発明の一実施形態において「プロドラッグ」は、前駆体である化合物であって、その化合物を被験体へ投与した際に、代謝過程又は種々化学反応によって化学的変化を起こし、本発明に係る化合物又はその塩もしくはその溶媒和物をもたらす化合物を含む。プロドラッグについては、例えば[T. Higuchi and V. Stella, "Pro-Drugs as Novel Delivery Systems", A.C.S . Symposium Series, Volume 14]を参照できる。
【0062】
本発明の一実施形態において「悪性腫瘍」は、例えば、正常な細胞が突然変異を起こして発生する腫瘍を含む。悪性腫瘍は全身のあらゆる臓器や組織から生じ得る。この悪性腫瘍は、例えば、肺癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、副腎癌、胆道癌、乳癌、大腸癌、小腸癌、卵巣癌、子宮癌、膀胱癌、前立腺癌、尿管癌、腎盂癌、尿管癌、陰茎癌、精巣癌、脳腫瘍、中枢神経系の癌、末梢神経系の癌、頭頸部癌、グリオーマ、多形性膠芽腫、皮膚癌、メラノーマ、甲状腺癌、唾液腺癌、悪性リンパ腫、癌腫、肉腫、及び血液悪性腫瘍からなる群から選ばれる1種以上を含む。上記肝臓癌は、例えば、上皮性腫瘍、又は非上皮性腫瘍であってもよく、肝細胞癌、胆管細胞癌であってもよい。上記皮膚癌は、例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、又は悪性黒色腫を含む。
【0063】
悪性腫瘍の研究分野において、近年、癌幹細胞の存在が見いだされている。癌幹細胞は、分化して癌細胞になると考えられている。癌患者では、癌細胞の除去後一定期間を経た後に再発が起きることがあるが、これは極少数生き残った癌幹細胞に起因するものだとも言われている。この癌幹細胞の特徴的なことは、従来の多くの抗癌剤が効きにくいということである。この点に関して、九州大学の中山教授らは、モデルマウスにおいてFbxw7を欠損させると、癌幹細胞がイマチニブ(抗癌剤)で死滅するという研究結果を報告している(Takeishi et al., Cancer Cell. 2013 Mar 18;23(3):347-61.)。但し、癌幹細胞の増殖を直接抑制する化合物は得られていない。
【0064】
本発明の一実施形態において「癌幹細胞」は、癌細胞の起源となる細胞を含む。この癌幹細胞は、癌幹細胞マーカーを発現している細胞を含む。癌幹細胞マーカーは、例えば、CD44、CD90、CD133、又はEpCAMを含む。
【0065】
線維化は、典型的には、コラーゲンなどを構成要素とする結合組織が増生し正常組織に置きかわることによって、組織が硬化し正常な機能が失われることによって生じる症状として知られている。例えば、肝臓、肺、腎臓、心臓、皮膚などの各組織に生じる。また例えば、肝組織に多量の線維化が生じた場合には、肝硬変になり、さらには肝癌になることがある。また肝組織以外にも、線維化の進行に伴い、各組織に悪性腫瘍が生じることがある。線維症は、線維化に伴う疾患を含む。線維化に伴う疾患は、例えば、線維化に伴う、上記各組織の線維症、硬変、悪性腫瘍等を含む。
【0066】
本発明の一実施形態において「治療」は、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果、抑制効果、又は予防効果を発揮しうることを含む。本発明の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体又は液体(例えば、緩衝液)であってもよい。なお悪性腫瘍の治療薬は、例えば、悪性腫瘍の予防のために用いられる薬物(予防薬)、悪性腫瘍の再発抑制薬、又は悪性腫瘍細胞の増殖抑制剤を含む。癌幹細胞の治療薬は、例えば、癌幹細胞を標的とした治療薬、癌幹細胞に起因する悪性腫瘍の治療薬、又は癌幹細胞の抑制剤を含む。
【0067】
治療薬の投与経路は、治療に際して効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、又は経口投与等であってもよい。投与形態としては、例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等であってもよい。注射用の水溶液は、例えば生理食塩水、糖(例えばトレハロース)、NaCl、又はNaOH等を配合してもよい。また治療薬は、例えば、緩衝剤(例えばリン酸塩緩衝液)、安定剤等を配合してもよい。
【0068】
投与量は特に限定されないが、例えば、1回あたり0.001、0.01、0.1、1、4、5、10、15、20、50、100、又は1000mg/kg体重であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。投与間隔は特に限定されないが、例えば、1、7、14、21、又は28日あたりに1又は2回投与してもよく、それらいずれか2つの値の範囲あたりに1又は2回投与してもよい。投与量、投与間隔、投与方法は、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択してもよい。また治療薬は、治療有効量、又は所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。
【0069】
悪性腫瘍の治療効果は、画像検査、内視鏡検査、生研、又は悪性腫瘍マーカーの検出により評価してもよい。また、癌幹細胞の治療効果は、画像検査、内視鏡検査、生研、又は癌幹細胞マーカーの検出により評価してもよい。また、線維症の治療効果は、画像検査、内視鏡検査、生研、又は線維化マーカーの検出により評価してもよい。各治療効果は、患者又は患者由来サンプル(例えば、組織、細胞、細胞集団、又は血液)中のマーカー量が、治療薬投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。このとき、治療薬投与後のマーカー量は、投与前(又はコントロール)に比べて、0.7、0.5、0.3、又は0.1倍以下に減少していてもよい。又は、患者由来サンプル中のマーカー陽性細胞数が、治療薬投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。このとき、治療薬投与後のマーカー陽性細胞数は、投与前(又はコントロール)に比べて、0.7、0.5、0.3、又は0.1倍以下に減少していてもよい。なお、後述する実施例6では、CD44陽性HuH-7細胞を皮下に移植したマウスを用いて治療効果を評価したが、本願発明者らは、上記CD44陽性HuH-7細胞に代えて、通常のHuH-7細胞を用いた場合にも、IC-2が悪性腫瘍の治療効果を示したことを実験で確認している。
【0070】
また悪性腫瘍の治療効果は、患者由来の被験細胞の増殖速度が、治療薬投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。このとき、治療薬投与後の被験細胞の増殖速度は、投与前(又はコントロール)に比べて、0.7、0.5、0.3、又は0.1倍以下に減少していてもよい。なお、本発明の一実施形態において「有意に」は、例えば、統計学的有意差をスチューデントのt検定(片側又は両側)を使用して評価し、p<0.05又はp<0.01である状態であってもよい。又は、実質的に差異が生じている状態であってもよい。
【0071】
本発明の一実施形態において「患者」は、ヒト、又はヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、又はチンパンジー等の1種以上)を含む。また患者は、悪性腫瘍又は線維症を発症していると判断又は診断された患者であってもよい。又は、患者は、悪性腫瘍又は線維症の治療を必要としている患者であってもよい。又は、患者は、健常人に比べて組織中の癌幹細胞数が有意に多いと判断又は診断された患者であってもよい。なお、判断又は診断は、画像検査、内視鏡検査、生研、又は各種マーカーを検出することにより行ってもよい。
【0072】
本発明の一実施形態において「細胞の増殖が抑制されている状態」は、被験細胞の増殖速度が、薬剤処理前に比べて有意に減少している状態を含む。増殖速度は、一定期間の細胞の増殖量を測定することで評価できる。増殖量の測定は、例えば、吸光度を指標にして測定しても良く、目視で行ってもよい。又は、増殖量の測定は、患者又は患者由来サンプル中の悪性腫瘍マーカーの量を指標にして測定してもよい。本発明の一実施形態において「癌幹細胞の抑制」は、例えば、癌幹細胞の増殖抑制、機能抑制(例えば、スフェア形成抑制、マーカー発現抑制)を含む。
【0073】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、悪性腫瘍、癌幹細胞、又は線維化のマーカー抑制剤である。本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含む、悪性腫瘍又は癌幹細胞のスフェア形成阻害剤である。このスフェア形成阻害剤は、悪性腫瘍又は癌幹細胞の治療に使用できる。
【0074】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を患者に投与する工程を含む、治療方法である。本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物の、治療薬の製造のための使用である。本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を患者に投与する工程を含む、悪性腫瘍細胞、又は癌幹細胞の増殖抑制方法である。本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物の、悪性腫瘍細胞、又は癌幹細胞の増殖抑制剤の製造のための使用である。
【0075】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を患者に投与する工程を含む、悪性腫瘍の再発抑制方法である。本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物の、悪性腫瘍の再発抑制薬の製造のための使用である。
【0076】
本発明の一実施形態は、式(1)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物を含むWnt/β-カテニンシグナル経路抑制剤である。この抑制剤を用いれば、Wnt/β-カテニンシグナル経路を抑制することができる。この抑制剤は、例えば、Wnt/β-カテニンシグナル経路抑制効果によって改善される疾患の治療に使用できる。
【0077】
本発明の一実施形態は、式(2)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物(以下、「式(2)に示す化合物等」と称することもある)を含む、式(2)に示す化合物等と5-FU(5-フルオロウラシル)との併用療法において用いられる悪性腫瘍の治療薬である。また本発明の一実施形態は、5-FUを含む、5-FUと式(2)に示す化合物、その塩、又はそれらの溶媒和物との併用療法において用いられる悪性腫瘍の治療薬である。
【0078】
このとき、「併用療法において用いられる」は、式(2)に示す化合物等と、5-FUとが同時に又は別々に投与されてもよい。また「併用療法において用いられる」は、式(2)に示す化合物等と、5-FUとが合剤として投与される形態を含む。また、投与の順番は、式(2)に示す化合物等を先に投与してもよく、5-FUを先に投与してもよい。また本発明の一実施形態は、式(2)に示す化合物等と、5-FUとを含む、悪性腫瘍治療用の合剤である。また本発明の一実施形態は、式(2)に示す化合物等と、5-FUとを患者に投与する工程を含む、悪性腫瘍の治療方法である。このとき、患者は、式(2)に示す化合物等、又は5-FU投与後の患者であってもよい。また本発明の一実施形態は、式(2)に示す化合物等の、式(2)に示す化合物等と5-FUとの併用療法において用いられるための悪性腫瘍治療薬の製造のための使用である。これらの治療薬、合剤、又は治療方法によれば、例えば、式(2)に示す化合物等と、5-FUとによる、相乗的な抗腫瘍効果が得られる。例えば、単独では有意な治療効果を示さない低濃度の式(2)に示す化合物等を使用した場合でも、5-FUと併用投与することによって、5-FUを単独で用いたときに比べて、高い治療効果が得られる。又は、例えば、単独では有意な治療効果を示さない低濃度の式(2)に示す化合物等と、単独では有意な治療効果を示さない低濃度の5-FUとを併用投与した場合に、治療効果が得られる。なお、本発明の一実施形態において「低濃度」は、例えば、1回あたり0.001、0.01、0.1、1、2、3、4、5、10、15、又は20mg/kg体重であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
【0079】
本発明の一実施形態において、式(2)の置換基R7、及びR8は同一又は異なって、置換されていてもよいC1~C6アルキル、又は置換されていてもよいC2~C6アルケニルである。本発明の一実施形態において、優れた抗腫瘍効果を実現する観点からは、好ましくは、上記置換基R7及びR8は、同一又は異なって、C1~C6アルキルである。また、より優れた抗腫瘍効果を実現する観点からは、より好ましくは、上記置換基R7及びR8は、同一又は異なって、C1~C3アルキルである。また、さらに優れた抗腫瘍効果を実現する観点からは、さらに好ましくは、上記置換基R7及びR8は、メチルである。
【0080】
上記いずれかの方法は、さらに、悪性腫瘍マーカー、癌幹細胞マーカー、繊維化マーカー、又は肝細胞マーカーを検出する工程を含んでいてもよい。上記いずれかの剤、又は方法は、in vitro又はin vivoの用途に使用できる。
【0081】
本明細書において引用しているあらゆる刊行物、公報類(特許、又は特許出願)は、その全体を参照により援用する。
【0082】
本明細書において「又は」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。本明細書において「A~B」は、A以上B以下を意味するものとする。
【0083】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、上記実施形態に記載の構成を組み合わせて採用することもできる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
<実施例1>化合物の合成
化合物の合成を図1~9に示すスキームにしたがって行った。合成の詳細については以下に示す。合成した化合物の構造式とスペクトルデータを図10~14に示す。
【0086】
化合物1
1-naphtaldehyde(1.6 g, 10 mmol)と2,2-dietoxyethanamine(1.3 g, 10 mmol)を混合し、100 oCで30 min~1 hr撹拌した。放冷後、反応混合物にEtOH(25 mL)を加え、撹拌して均一にした後、NaBH4(0.38 g, 10 mmol)を少量ずつ加え、その後は室温で1 hr~一晩撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりEtOHを留去し、得られた残渣に水(適量)を加え、生成物をAcOEtで抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った後、ろ過および減圧濃縮を行った。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 5/1)で精製することで1(2.3 g, 8.5 mmol, 85 %)を無色透明液体で得た。
【0087】
化合物2b
Fmoc-L-Phe-OH(0.54 g, 2.0 mmol)のdry-DMF(7 mL)溶液にHATU(0.76 g, 2.0 mmol)とdiisopropylethylamine(DIEA)(0.26 g, 2.0 mmol)を加え、室温で30 min撹拌後、その反応混合物に1(0.54 g, 2.0 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、水(20 mL)を加え、生成物をAcOEtで抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で2回洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った後、ろ過および減圧濃縮を行った。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 1/2)で精製することで2b(1.2 g, 1.9 mmol, 95 %)を無色固体で得た。
【0088】
化合物3b
2b(1.1 g, 1.7 mmol)のCH2Cl2(20 mL)溶液にdiethylamine(DEA)(10 mL)を加え、室温で3 hr撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりCH2Cl2および過剰のDEAを留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 5/1)で精製することで3b(0.55 g, 1.3 mmol, 76 %)を無色透明の粘性液体で得た。
【0089】
化合物4b
Fmoc-β-Ala-OH(2.5 g, 8.0 mmol)のdry-DMF(15 mL)溶液にHATU(3.3 g, 8.7 mmol)とDIEA(1.1 g, 8.5 mmol)を加え、室温で30 min撹拌後、その反応混合物に3b(3.3 g, 7.8 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、水(30 mL)を加え、生成物をAcOEtで抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で2回洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った後、ろ過および減圧濃縮を行った。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 3/1)で精製することで4b(5.1 g, 7.1 mmol, 91 %)を無色固体で得た。
【0090】
化合物6b
4b(2.8 g, 3.9 mmol)のCH2Cl2(10 mL)溶液にDEA(6 mL)を加え、室温で3~4 hr撹拌した。減圧濃縮によりCH2Cl2および過剰のDEAを留去し、得られた残渣にCH2Cl2(適量)を加え、均一溶液にした後、再度、減圧濃縮を行った。この操作を2回行った後、得られた残渣にCH2Cl2(10 mL)を加え、撹拌して均一にした後、benzyl isocyanate(0.78 g, 5.9 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりCH2Cl2を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 30/1)で精製することで6b(1.5 g, 2.4 mmol, 62 %)を無色固体で得た。
【0091】
化合物8b
4b(1.6 g, 2.3 mmol)にギ酸(10 mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりギ酸を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 4/1)で精製することで8b(1.3 g, 2.1 mmol, 91 %)を無色固体で得た。
【0092】
化合物9b
8b(1.1 g, 1.8 mmol)のCH2Cl2(5.5 mL)溶液にdiethylamine(1.3 g, 18 mmol, 1.8 mL)を加え、室温で3 hr撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりCH2Cl2を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 7/1)で精製することで9b(0.57 g, 1.4 mmol, 78 %)を無色固体で得た。
【0093】
化合物IC-2(6bからの合成)
6b(1.3 g, 2.1 mmol)にギ酸(8 mL, 0.21 mol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりギ酸を留去し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 30/1)で精製することでIC-2 (1.0 g, 1.9 mmol, 90 %)を無色固体で得た。
【0094】
化合物IC-2 (9bからの合成)
9b(3.3 g, 8.3 mmol)のCH2Cl2(10 mL)溶液にbenzyl isocyanate(1.4 g, 11 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりCH2Cl2を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 30/1)で精製することでIC-2(3.7 g, 6.9 mmol, 83 %)を無色固体で得た。
【0095】
化合物1-Ar-R(R = 4-OMe, 4-Cl, 4-F, 4-NO2, 2,3-Cl2, 2,4-Cl2, 又は3,4-Cl2
化合物1の場合と同様の合成手順において、1-naphtaldehydeに変えて4置換benzaldehyde(置換基R = OMe, Cl, F, NO2)、2,3置換benzaldehyde(置換基R = Cl)、2,4置換benzaldehyde(置換基R = Cl)、又は3,4置換benzaldehyde(置換基R = Cl)を用いて操作を行った。
【0096】
化合物1-Ar-OBoc
4-hydroxybenzaldehyde(1.9 g, 16 mmol)と2,2-dietoxyethanamine(2.0 g, 15 mmol)を混合し、100 oCで1 hr撹拌した。放冷後、反応混合物にTHF(30 mL)を加え、撹拌して均一にした後、4-(dimethylamino)pyridine(DMAP)(0.55 g, 4.5 mmol)とdi-tert-butyl dicarbonate(Boc2O)(3.9 g, 18 mmol)を加え、室温で30 min撹拌した。反応混合物にAcOEt(適量)を加え、有機層を飽和NH4Cl水溶液(適量)で2回、飽和食塩水(適量)で1回洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った。ろ過および減圧濃縮を行った後、得られた残渣にEtOH(30 mL)を加え、撹拌して均一にした後、NaBH4(0.43 g, 11 mmol)を少量ずつ加え、その後、室温で1 hr撹拌した。反応終了後、減圧濃縮によりEtOHを留去し、得られた残渣に水(適量)を加え、生成物をAcOEtで抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った後、ろ過および減圧濃縮を行った。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 3/1)で精製することで1-Ar-OBoc(2.7 g, 8.0 mmol, 53 %)を無色透明液体で得た。
【0097】
化合物2b-Ar-R及び2b-Ar-OBoc
化合物2bの場合と同様の合成手順において、化合物1に変えて化合物1-Ar-R(R = 4-OMe, 4-Cl, 4-F, 4-NO2, 2,3-Cl2, 2,4-Cl2, 又は3,4-Cl2)又は化合物1-Ar-OBocを用いて操作を行った。
【0098】
化合物3b-Ar-R及び3b-Ar-OBoc
化合物3bの場合と同様の合成手順において、化合物2bに変えて化合物2b-Ar-R又は化合物2b-Ar-OBocを用いて操作を行った。
【0099】
化合物4b-Ar-R及び4b-Ar-OBoc
化合物4bの場合と同様の合成手順において、化合物3bに変えて化合物3b-Ar-R化合物3b-Ar-OBocを用いて操作を行った。
【0100】
化合物8b-Ar-R
化合物8bの場合と同様の合成手順において、化合物4bに変えて化合物4b-Ar-Rを用いて操作を行った。
【0101】
化合物9b-Ar-R
化合物9bの場合と同様の合成手順において、化合物8bに変えて化合物8b-Ar-Rを用いて操作を行った。
【0102】
化合物IC-2-Ar-R及びIC-2-506-1~-3
化合物IC-2 (9bからの合成)の場合と同様の合成手順において、化合物9bに変えて化合物9b-Ar-Rを用いて操作を行った。
【0103】
化合物6b-Ar-OBoc
化合物6bの場合と同様の合成手順において、化合物4bに変えて化合物4b-Ar-OBocを用いて操作を行った。
【0104】
化合物IC-2-Ar-OH
化合物IC-2(6bからの合成)の場合と同様の合成手順において、化合物6bに変えて化合物6b-Ar-OBocを用いて操作を行った。
【0105】
化合物6b-R(R = OMe, Cl, F)
化合物6bと同様の合成手順において、benzyl isocyanateに代えて4置換benzyl isocyanate(置換基R = OMe, Cl, 又はF)を用いて操作を行った。
【0106】
化合物IC-2-R
IC-2(6bからの合成)と同様の合成手順において、6bに代えて6b-R(R = OMe, Cl, F)を用いて操作を行った。
【0107】
IC-2-R(R = NO2
IC-2(9bからの合成)と同様の合成手順において、benzyl isocyanateに代えて4置換benzyl isocyanate(置換基R = NO2)を用いて操作を行った。
【0108】
4-(4-Methoxybenzyloxy)phenylacetic acid
methyl 4-hydroxyphenylacetate (2.7 g, 16 mmol)のdry-DMF (20 mL)溶液にK2CO3 (4.4 g, 32 mmol)と4-methoxybenzyl chloride (1.3 g, 8 mmol)を加え、室温で24 hr撹拌した。反応混合物を氷水(30 mL)に投入し、生成物をEtOAcで抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った後、ろ過および減圧濃縮を行った。得られた残渣にMeOH (24 mL)とTHF (8 mL)を加え、撹拌して均一にした後、NaOH水溶液 (0.96 g, 24 mmol, 6 mL)をゆっくり加え、室温で2 hr撹拌した。減圧濃縮により有機溶媒を留去した後、水 (50 mL)を加え、1M-硫酸で酸性にし、酢酸エチルとTHFで生成物を抽出した。有機層を飽和食塩水で2回洗浄した後、Na2SO4で乾燥を行い、ろ過および減圧濃縮を行った。得られた残渣を再結晶(EtOAc-THF)することで純粋な4-(4-Methoxybenxyloxy)phenylacetic acid (1.8 g, 6.8 mmol, 85 %)を得た。
【0109】
4-Methoxymethoxyphenylacetic acid
Methyl 4-hydroxyphenylacetate (2.5 g, 15 mmol)のCH2Cl2 (15 mL)溶液にDIEA (3.9 g, 30 mmol)を加え、氷水浴での冷却下、Chloromethyl Methyl Ether (1.8 g, 23 mmol)を加え、10 min間その温度で撹拌後、室温に戻し、さらに一晩撹拌した。減圧濃縮によりCH2Cl2および過剰のChloromethyl Methyl Etherを除去した後、MeOH (25 mL)を加え、撹拌して均一にしたところにKOH水溶液 (3.0 g, 45 mmol, 5 mL)を加え、室温で1.5 hr撹拌した。反応混合物に水 (20 mL)を加え、水層を分離後、飽和NH4Cl水溶液 (20 mL)を加え、希硫酸でpHを約4まで調整した。そこへEtOAcを加え、有機層を分離後、飽和食塩水による洗浄およびNa2SO4による乾燥を行った。ろ過、減圧濃縮および減圧乾燥により、4-methoxymethoxyphenylacetic acid (2.2 g, 11 mmol, 76 %)を得た。
【0110】
Benzyl 4-hydroxyphenylacetate
Ar下、氷水浴によって冷却された4-hydroxyphenylacetic acid (3.0 g, 20 mmol)のdry-DMF (20 mL)溶液にNaH (60 % in oil, 0.88 g, 22 mmol)を加え、その温度で30 min間撹拌後、benzyl bromide (6.8 g, 40 mmol)を何回かに分けて、30 minかけて加えた。氷水浴冷却下で3 hr撹拌後、室温で一晩撹拌した。反応混合物に水 (20 mL)とEtOAc (20 mL)を加え、よく撹拌した後、有機層を分離し、5 %-NaHCO3水溶液および飽和食塩水による洗浄、そしてNa2SO4による乾燥を行った。ろ過および減圧濃縮後、得られた固体にhexaneを加え、吸引ろ過を行い、得られた固体を減圧乾燥することでbenzyl 4-hydroxyphenylacetate (3.4 g, 14 mmol, 70 %)を得た。
【0111】
4-(tert-Butyldimethylsiloxy)phenylacetic acid
Benzyl 4-hydroxyphenylacetate (1.7 g, 7 mmol)のdry-DMF (10 mL)溶液にtert-butyldimethylsilyl chloride (1.5 g, 9.8 mmol)とimidazole (1.1 g, 16.8 mmol)を加え、室温で2 hr撹拌した。反応混合物に水 (15 mL)とEtOAc (15 mL)を加え、有機層を分離した後、飽和食塩水による洗浄およびNa2SO4による乾燥を行い、ろ過および減圧濃縮を行った。得られた残渣にEtOH (15 mL)を加え、撹拌して均一にした溶液に、5%-Pd/C (0.75 g)を加え、系内をH2置換した。室温で4 hr撹拌した後、ろ紙を二枚重ねたろ過でPd/Cを除去し、ろ液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 1/2)に通すことで4-(tert-butyldimethylsiloxy)phenylacetic acid (0.78 g, 2.9 mmol, 42 %)を得た。
【0112】
4-(tert-Butyldimethylsiloxymethyl)phenylacetic acid
4-Hydroxymethylphenylacetic acidを出発原料とし、CO2H基へのベンジル化およびOH基へのtert-ブチルジメチルシリル化をそれぞれBenzyl 4-hydroxyphenylacetateおよび4-(tert-Butyl- dimethylsiloxy)phenylacetic acidと同様の手順で操作を行った。ただし、ベンジル化した化合物は単離せずに行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー:AcOEt/hexane = 1/2。4-hydroxymethyl- phenylacetic acidからの収率:34 %。
【0113】
化合物IC-2-OMOM
4-Methoxymethoxyphenylacetic acid (0.59 g, 3 mmol)のtoluene (10 mL)溶液にdiphenylphosphoryl azide (0.83 g, 3 mmol)とEt3N (0.36 g, 3.6 mmol)を加え、80℃で2 hr撹拌した。放冷後、hexane (15 mL)を加え、しばらく撹拌した後、上澄み液をデカンテーションで採取した。残渣に再度、hexane (7 mL)を加え、しばらく撹拌後、デカンテーションによる上澄み液の採取を行い、さらにもう一度同じ操作を行った。採取した上澄み液を減圧濃縮し、残渣にCH2Cl2 (8 mL)を加えて均一にしたところに9b (0.40 g, 1 mmol)を加えた。室温で混合物を一晩撹拌した後、減圧濃縮で有機溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt)に通すことでIC-2-OMOM (0.50 g, 0.85 mmol, 84 %)を得た。
【0114】
化合物IC-2-NO2
IC-2-OMOMと同様の手順で、4-nitrophenylacetic acidを用いて、操作を行った。ただし、途中、hexaneを加えて上澄み液を採取する操作は省略し、放冷後、反応混合物へ直接、CH2Cl2および9bを加えて行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー:AcOEt/EtOH = 8/1。収率:24 %。
【0115】
化合物IC-2-OPMB
IC-2-OMOMと同様の手順で、4-(4-Methoxybenzyloxy)phenylacetic acidを用いて、操作を行った。ただし、4-(4-methoxybenzyloxy)phenylacetic acidはtolueneのみでは均一溶液とならず、dry-THF (5 mL)も加えて行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー:AcOEt/EtOH = 30/1。収率:93 %。
【0116】
化合物IC-2-OTBS
IC-2-OMOMと同様の手順で、4-(tert-butyldimethylsiloxy)phenylacetic acidを用いて、操作を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー:AcOEt。収率:76 %。
【0117】
化合物IC-2-MOTBS
IC-2-OMOMと同様の手順で、4-(tert-butyldimethylsiloxymethyl)phenylacetic acidを用いて、操作を行った。シリカゲルカラムクロマトグラフィー:AcOEt。収率:66 %。
【0118】
化合物9b-CONH2
IC-2-OPMB(0.27 g, 0.40 mmol)のCH2Cl2(8 mL) - 水(0.4 mL)溶液に2,3-Dichloro-5,6-dicyano-1,4-benzoquinone(DDQ)(0.19 g, 0.84 mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合物に5 %-NaHCO3水溶液(10 mL)を加え、しばらく撹拌後、CH2Cl2で生成物を抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った。ろ過および減圧濃縮を行った後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 10/1)で精製することで9b-CONH2(0.11 g, 0.25 mmol, 63 %)を得た。
【0119】
化合物IC-2-OH
IC-2-OTBS(0.46 g, 0.69 mmol)のdry-THF(8 mL)溶液に氷水冷却化でTBAFのTHF溶液(1 M, 1.4 mL, 1.4 mmol)を加え、その温度で30 min撹拌した。反応混合物に水(10 mL)を加えた後、生成物をAcOEtで抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った。ろ過および減圧濃縮を行った後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/EtOH = 30/1)で精製することでIC-2-OH(0.35 g, 0.64 mmol, 93 %)を得た。
【0120】
化合物IC-2-MOH
IC-2-OHと同様の手順で、IC-2-MOTBSを用いて、操作を行った。ただし、TBAFのTHF溶液を加えた後、氷水浴をはずして室温まで昇温させ、それから1.5 hr撹拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー:AcOEt/EtOH = 10/1。収率:71 %。
【0121】
化合物6c-NT
5b(0.85 g, 1.7 mmol)のDMSO(8 mL)溶液にDIEA(0.50g, 3.9 mmol)と2-fluoronitrobenzene(0.37 g, 2.6 mmol)を加え、室温で2晩撹拌した。反応混合物に水(20 mL)を加え、しばらく撹拌後、生成物をAcOEtで抽出した。分離した有機層は飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥を行った。ろ過および減圧濃縮を行った後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 1/1)で精製することで6c-NT(0.68 g, 1.1 mmol, 65 %)を黄色固体で得た。
【0122】
化合物7c-NT
6c-NT(0.74 g, 1.2 mmol)にギ酸(4.5 mL, 120 mmol)を加え、室温で1 hr撹拌した。反応終了後、減圧濃縮でギ酸を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(AcOEt/hexane = 2/1)で精製し、さらに再結晶(AcOEt - hexane)を行うことで7c-NT(87 mg, 0.17 mmol, 14 %)を黄色針状結晶で得た。
【0123】
<実施例2>抗腫瘍効果
2.1 使用した試薬例
・DMEM: ダルベッコ変法イーグル培地2(日水製薬株式会社, 東京)、2 mM L-glutamine 0.2% NaHCO3、3500 mg/L D-glucose、100U/mL penicillin、100 μg/mL streptomycin(ナカライテスク株式会社, 京都)、10% ウシ胎児血清(FBS) (Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)
・PBS(-): 8000 mg/L NaCl、2900 mg/L Na2HPO4・12H2O、200 mg/L KCl、200 mg/L KH2PO4(ナカライテスク)
・0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution:(ナカライテスク)
【0124】
2.2 細胞培養
ヒト肝癌細胞株HuH-7細胞は、φ10 cm細胞培養皿(TPP Techno Plastic Products AG, Trasadingen, Switzerland)上にて、DMEMを用いて、5% CO2、37℃、100%湿度下において培養した。70~90%コンフルエントになった状態で、PBS(-)で10倍希釈した0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution 200 μLを加えて細胞を剥がし、1000 rpmで3分間、室温で遠心し細胞を回収、1枚分を4枚に分けて継代した。
【0125】
pGL4.20 (Promega Corp., Fitchburg, WI)のマルチクローニングサイトに、CMVプロモーターと、その上流にTCF4モチーフ(CCT TTG ATC)を3コピー持つpTCF4-CMVpro-GL4.20プラスミドベクターを線状化し、安定導入したHuH-7細胞(HuH7-TCF4細胞)は、HuH-7細胞と同様にして培養した。
【0126】
2.3 癌細胞の増殖抑制効果(WSTアッセイ)
70~90%コンフルエントになったHuH-7細胞を回収し、96穴プレート(TPP)の各ウェルに5×10^3個ずつn=3で播種した。24時間後に各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。各化合物の濃度は0、10、20、30、40、50 μMである。ただし、IC-2-506-1は0、10、20、25、30、40、50 μMを使用した。コントロール(0 μM)には、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0127】
化合物処理0、24、48、96時間後にDMEMで希釈した10% Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所, 熊本)100 μLを加え、37℃、60分間インキュベートし、サンライズレインボーRC (Tecan Group Ltd., Mannedorf, Switzerland)を用いて吸光度(測定波長450 nm/対照波長600 nm)を測定した。測定結果は、10% Cell Counting Kit-8のみの吸光度との差をとることで、細胞のみの吸光度とした。
【0128】
また、各化合物のIC50は、IC50=10^{LOG(A/B)×(50-C)/(D-C)+LOG(B)}により求めた。Aは抑制率50%を挟む高い濃度、Bは50%を挟む低い濃度、CはBでの抑制率、DはAでの抑制率を表す。なお、有意差はスチューデントのt検定(両側)で評価し、図中の*は0.1% DMSOに対してp<0.05で有意差あり、**はp<0.01で有意差ありを意味する(実施例中の全図に共通)。
【0129】
以上の結果、すべての化合物でコントロールに対して有意な増殖抑制効果がみられた(図15~31)。各化合物のIC50はIC-2-Ar-Cl: 45.07 μM、IC-2-506-1: 14.10 μM、IC-2-506-2: 25.63 μM、IC-2-506-3: 18.32 μM、IC-2-OTBS: 11.76 μM、7c-NT: 36.11 μM、IC-2-OMe: 34.89 μM、IC-2-F: 22.20 μM、IC-2-Cl: 14.37 μM、IC-2-NO2: 28.07 μM、IC-2-OPMB: 50 μM、IC-2-OMOM: 20.28 μM、IC-2-OH: 33.47 μMであった。
【0130】
2.4 癌幹細胞の抑制効果(FCM解析)
癌幹細胞マーカーであるCD44を指標として、化合物による癌幹細胞の抑制効果を調べた。各化合物の濃度は図32に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。図中、‡はp<0.01で有意差ありを意味する。
【0131】
70~90%コンフルエントになったHuH-7細胞を回収し、φ10 cm細胞培養皿に1.5×10^6個ずつ播種した。24 時間後に各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。薬剤処理48時間後に細胞を培養皿から回収し、1000 rpm、4℃で3分間遠心を行い、上清を取り除き、1 mLの0.5% FBS/2 mM EDTA/PBSで2回洗浄を行った。5% BSA/0.5% FBS/2 mM EDTA/PBS 500 μLに懸濁し、4℃で15分間ブロッキングを行った。マウス抗ヒトCD44モノクローナル抗体(156-3C11, Cell Signaling Technology Inc., Danvers, MA) を500 μLの細胞懸濁液に対して5 μL加えた後、再び懸濁し、4℃、暗所で30分間一次抗体反応を行った。その後、1 mLの0.5% FBS/2 mM EDTA/PBSで3回洗浄を行った。5% BSA/0.5% FBS/2 mM EDTA/PBSで200倍に希釈したAlexa Fluor 488標識ヤギ抗マウスIgG (H+L) (ab150113, Abcam Ltd., Cambridge, UK) 100 μLで細胞を懸濁し、4℃、暗所で30分間二次抗体反応を行った。その後、1 mLの0.5%FBS/2 mM EDTA/PBSで3回洗浄を行った。そして、500 μL の0.5% FBS/2 mM EDTA/PBSに懸濁し、40 μmメッシュカラム(Becton, Dickinson and Company, Franklin Lakes, NJ) に通した。Beckman Coulter-Moflo XDP (Beckman Coulter Inc., Fullerton, CA)を用いて解析を行った。解析後、0.25 mg/mL Propidium Iodide (PI)を2 μL加えてさらに解析した。同様の実験を4回繰り返し行った。
【0132】
以上の結果、すべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して癌幹細胞の割合が有意に減少していた(図32)。癌幹細胞は悪性腫瘍の再発や転移の原因となり得ることが知られているため、癌幹細胞の増殖を抑制できる新規化合物は、悪性腫瘍の治療薬の有効成分として優れた化合物といえる。
【0133】
<実施例3>抗線維化効果
3.1 使用した試薬例
・DMEM: ダルベッコ変法イーグル培地2(日水製薬株式会社, 東京)、2 mM L-glutamine 0.2% NaHCO3、3500 mg/L D-glucose(ナカライテスク株式会社, 京都)
・FBS: ウシ胎児血清 (Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)
・PBS(-): 8000 mg/L NaCl、2900 mg/L Na2HPO4・12H2O、200 mg/L KCl、200 mg/L KH2PO4(ナカライテスク)
・0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution:(ナカライテスク)
【0134】
3.2 細胞培養
ヒト肝星細胞株LX-2細胞は、φ10 cm細胞培養皿(TPP Techno Plastic Products AG, Trasadingen, Switzerland)上にて、10% FBS/DMEMを用いて、5% CO2、37℃、100%湿度下において維持培養した。70~80%コンフルエントになった状態で、PBS(-)で10倍希釈した0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution 200 μLを加えて細胞を剥がし、1000 rpmで3分間、室温で遠心し細胞を回収、1枚分を2枚に分けて継代した。
【0135】
3.3 遺伝子発現解析(リアルタイムRT-PCR)
線維化マーカーであるα-smooth muscle actin(α-SMA)を指標として、低分子化合物で処理したLX-2細胞からRNAを回収し、リアルタイムRT-PCRで線維化の抑制効果を調べた。
【0136】
使用した化合物の濃度は図33に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0137】
10% FBS/DMEMを用いて維持培養しているLX-2細胞を回収し、1% FBS/DMEMを用いて6穴プレート(TPP)の各ウェルに2.0×10^5個ずつn=3で播種した。24時間後、TGF-β 2.5 ng/mLと各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。化合物添加24時間後に培地交換を行った。
化合物処理0、48時間後に培地を捨て、TRIzol (ambion, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA) 1 mLを用いてRNAを回収した。
【0138】
RNA 1 μgに対し、10 mM Oligo (dT)18プライマー0.5 μL、10 mM dNTP Mix (PCR Grade, invitrogen, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA) 0.5 μLを加え、MilliQ水で全量を6.5 μLとなるように調製し65℃5分間インキュベート後、直ちに氷中で冷却した。その後5×First-Strand Buffer 2 μL、DTT 1 μL、200U/μL SuperScript II Reverse Transcriptase 0.5 μL (invitrogen)を加え、42℃60分間、72℃10分間逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
【0139】
MilliQ水で10倍希釈したcDNA 2 μLに対し、10 μMプライマー各0.5 μL、25 mM MgCl2 stock solution 0.8 μL、PCR grade H2O 2.7 μL、LightCycler FastStart DNA Master SYBER Green I (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany) 1.0 μLを加えた。GAPDHのプライマーとして、5'-AGC CAC ATC GCT CAG ACA C-3'と5'-GCC CAA TAC GAC CAA ATC C-3'を用いた。α-SMAのプライマーとして、5'-CTG TTC CAG CCA TCC TTC AT-3'と5'-CCG TGA TCT CCT TCT GCA TT-3'を用いた。
【0140】
0.1% DMSOで処理した細胞のcDNA 3サンプルを等量ずつ混合したものを5倍ずつ6250倍まで段階希釈し、スタンダードとした。7900HT (applied biosystems, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA)を用いて、95℃20秒間を1サイクル、95℃10秒間-アニーリング条件-72℃10秒間を40サイクル行った。各遺伝子のアニーリング条件は以下の通りである。GAPDH: 60℃10秒間、α-SMA: 56℃5秒間。測定結果は、α-SMA遺伝子の計算値をGAPDH遺伝子の計算値で除算した値を用いた。なお、有意差はスチューデントのt検定(両側)で評価し、図中の*は0.1% DMSOに対してp<0.05で有意差あり、**はp<0.01で有意差ありを意味する(実施例中の全図に共通)。
【0141】
以上の結果、すべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して有意なα-SMAの抑制効果を示した(図33)。
【0142】
また、α-SMAに代えて、線維化マーカーであるcollagen, type I, alpha 1 (COL1A1)を指標にして同様の操作を行った。このとき、使用した化合物の濃度は図34に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。また、COL1A1のプライマーとして、5'-CCT CCA GGG CTC CAA CGA G-3'と5'-TCA ATC ACT GTC TTG CCC CA-3'を用いた。アニーリング条件は58℃5秒間で行った。測定結果は、COL1A1遺伝子の計算値をGAPDH遺伝子の計算値で除算した値を用いた。
【0143】
その結果、すべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して有意なCOL1A1の抑制効果を示した(図34)
【0144】
<実施例4>肝細胞への分化誘導効果
4.1 使用した試薬例
・DMEM: ダルベッコ変法イーグル培地2(日水製薬株式会社, 東京)、2 mM L-glutamine 0.2% NaHCO3、3500 mg/L D-glucose、100U/mL penicillin、100 μg/mL streptomycin(ナカライテスク株式会社, 京都)
・FBS: ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)
・分化誘導用FBS: ウシ胎児血清(Biowest SAS, Nuaille, France)
・PBS(-): 8000 mg/L NaCl、2900 mg/L Na2HPO4・12H2O、200 mg/L KCl、200 mg/L KH2PO4(ナカライテスク)
・PBST: 0.2% Tween-20(ナカライテスク)/PBS(-)
・0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution:(ナカライテスク)
・0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8): 0.1Mリン酸二水素ナトリウム水溶液に0.1Mリン酸水素二ナトリウム(ナカライテスク)水溶液を加えてpH6.8に調製したもの
・亜硫酸水: 10%亜硫酸水素ナトリウム(ナカライテスク)水溶液6 mLと1N塩酸(和光純薬工業株式会社, 大阪)5 mLをMilliQ水100 mLに加えて調製したもの
【0145】
4.2 細胞培養
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞株UE7T-13細胞は、φ10 cm細胞培養皿(TPP Techno Plastic Products AG, Trasadingen, Switzerland)上にて、10% FBS/DMEMを用いて、5% CO2、37℃、100%湿度下において維持培養した。70~90%コンフルエントになった状態で、PBS(-)で10倍希釈した0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution 200 μLを加えて細胞を剥がし、1000 rpmで3分間、室温で遠心し細胞を回収、1枚分を4枚に分けて継代した。
【0146】
pGL4.20 (Promega Corp., Fitchburg, WI)のマルチクローニングサイトに、CMVプロモーターと、その上流にTCF4モチーフ(CCT TTG ATC)を3コピー持つpTCF4-CMVpro-GL4.20プラスミドベクターを線状化し、安定導入したUE7T-13細胞(E7-TCF4細胞)およびpGL4.20のマルチクローニングサイトにCMVプロモーターを持つpCMVpro-GL4.20プラスミドベクターを線状化し、安定導入したUE7T-13細胞(E7-CMV細胞)は、0.25 μg/mL puromycinを含む10% FBS/DMEMでUE7T-13細胞と同様にして培養した。
【0147】
4.3 遺伝子発現解析(リアルタイムRT-PCR)
肝細胞マーカーであるアルブミンを指標として、各化合物で処理した細胞からRNAを回収し、リアルタイムRT-PCRで肝細胞分化誘導効果を調べた。各化合物の濃度は図35に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0148】
70~90%コンフルエントになったUE7T-13細胞を回収し、6穴プレート(TPP) の各ウェルに8.064×10^4個ずつ10% FBSを含むDMEMを用いて播種した(9.0×10^3個/cm^2)。1日後に10% 分化誘導用FBSを含むDMEMを用いて各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。化合物添加4日後に培地交換を行った。化合物処理0、7日後に培地を捨て、RNeasy Mini (Qiagen GmbH, Hilden, Germany)を用いてRNAを回収し、カラム上でDNase分解を行った。
【0149】
RNA 1 μgに対し、10 mM Oligo (dT)18プライマー0.5 μL、10 mM dNTP Mix (PCR Grade, invitrogen, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA) 0.5 μLを加え、MilliQ水で全量を6.5 μLとなるように調製し65℃5分間インキュベート後、直ちに氷中で冷却した。その後5×First-Strand Buffer 2 μL、DTT 1 μL、200U/μL SuperScript II Reverse Transcriptase 0.5 μL (invitrogen)を加え、42℃60分間、72℃10分間逆転写反応を行い、cDNAを合成した。
【0150】
MilliQ水で10倍希釈したcDNA 2 μLに対し、10 μMプライマー各0.9 μL、各プローブ 1.2 μL、EXPRESS qPCR SuperMix with Premixed ROX (invitrogen) 5.0 μLを加えた。GAPDHのプライマーとして、5'-AGC CAC ATC GCT CAG ACA C-3'と5'-GCC CAA TAC GAC CAA ATC C-3'を用いた。また、GAPDHを検出するプローブとしてUniversal Probe Library (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)のProbe #60を使用した。アルブミンのプライマーとして、5'-CAA AGA TGA CAA CCC AAA CCT C-3'と5'-GGA TGT CTT CTG GCA ATT TCA-3'を用いた。また、アルブミンを検出するプローブとしてUniversal Probe LibraryのProbe #54を使用した。
【0151】
HuH-7細胞のcDNAを5倍ずつ段階希釈し、スタンダードとした。7900HT (applied biosystems, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA)を用いて、50℃2分間-95℃20秒間を1サイクル、95℃1秒間-60℃20秒間を45サイクル行った。測定結果は、アルブミン遺伝子の計算値をGAPDH遺伝子の計算値で除算した値を用いた。なお、有意差はスチューデントのt検定(両側)で評価し、図中の*は0.1% DMSOに対してp<0.05で有意差あり、**はp<0.01で有意差ありを意味する(実施例中の全図に共通)。
【0152】
以上の結果、すべての化合物で処理した場合に、コントロールの0.1% DMSOに対して有意なアルブミン遺伝子発現を示した(図35)。
【0153】
4.4 肝細胞機能解析(尿素アッセイ)
肝細胞の機能である尿素合成能を指標として、各化合物の肝細胞分化誘導効果を調べた。
各化合物の濃度は図36に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0154】
70~90%コンフルエントになったUE7T-13細胞を回収し、24穴プレート(TPP)の各ウェルに1.6758×10^4個ずつ10% FBS/DMEMを用いてn=6で播種した(9.0×10^3個/cm^2)。1日後に10%分化誘導用FBS/DMEMを用いて各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。化合物添加4日後に培地交換を行った。
【0155】
化合物処理7日後に培地を捨て、5 mMの塩化アンモニウム(ナカライテスク)と各化合物を含む10%分化誘導用FBS DMEMでさらに4日間培養後、培地中の尿素をQuantiChrom Urea Assay Kit (BioAssay Systems LLC, Hayward, CA) を使用し、サンライズレインボーRC (Tecan Group Ltd., Mannedorf, Switzerland)を用いて吸光度(測定波長430 nm)を測定した。測定結果は、10%分化誘導用FBS/DMEMにキット試薬を加えた吸光度との差をとった。各細胞をPBS(-)で10倍希釈した0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution 50 μLを加えて細胞を剥がし、細胞数を計数した。各ウェルの尿素量を細胞数で除算して測定結果とした。
【0156】
以上の結果、すべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して有意な尿素合成能が誘導されていることが示された(図36)。
【0157】
4.5 肝細胞機能解析(免疫蛍光染色)
各化合物で処理した細胞を肝細胞マーカーであるアルブミンの免疫蛍光染色を行い、肝細胞分化誘導効果を調べた。各化合物の濃度は図37に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0158】
70~90%コンフルエントになったUE7T-13細胞を回収し、Lab-Tek IIチェンバースライド(Nunc, Thermo Fisher Scientific Inc., Madison, MA)の各ウェルに1.53×10^4個ずつ10% FBS/DMEMを用いてn=3で播種した(9.0×10^3個/cm^2)。1日後に10% 分化誘導用FBS/DMEMを用いて各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。化合物添加4日後に培地交換を行った。
【0159】
化合物処理0、7日後に培地を捨て、PBS(-) 800 μLで1回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド(ナカライテスク)、8% sucrose(和光純薬)を含むPBS(-) 500 μLで20分間固定した。PBS(-) 1 mLで2回洗浄した後、0.2% Triton X-100(和光純薬)で10分間透過処理をした。PBS(-) 1 mLで1回洗浄した後、3% BSA(ナカライテスク)を含むPBS(-) 500 μLで、30分間ブロッキングを行った。余分なブロッキング液を除去し、マウス抗ヒトアルブミンモノクローナル抗体(HAS-11、Sigma-Aldrich)を0.1% BSA/PBS(-)で1000倍希釈して75 μLずつ添加し、4℃で一晩一次抗体反応を行った。0.1% BSA/PBS(-)で5回洗浄した後、Alexa Fluor 488標識ヤギ抗マウスIgG (H+L) (ab150113, Abcam Ltd., Cambridge, UK)を1% BSA/PBSTで1000倍希釈して100 μLずつ添加し、室温で1時間二次抗体反応を行った。核染色には2 mg/mL DAPI (Cell Signaling Technology Inc., Danvers, MA) を1000倍希釈して用いた。反応終了後、PBST 1 mLで5回洗浄し、さらにMilliQ水1 mLで1回洗浄し、退職防止剤入りの封入剤とマニキュアで封入後、FV1000D IX81(オリンパス株式会社, 東京)で観察した。陽性対照として2.5×10^4個/cm^2で播種したHuH-7細胞を用いた。取得した画像データは画像解析ソフトウェアinForm 2.0.4 (PerkinElmer, Waltham, MA)を用いて解析し、陽性細胞率を求めた。
【0160】
以上の結果、すべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して有意なアルブミンタンパク質発現が誘導されていることが示された(図37、38)。
【0161】
4.6 肝細胞機能解析(PAS染色)
肝細胞の機能であるグリコーゲン合成能を指標として、各化合物の肝細胞分化誘導効果を調べた。
各化合物の濃度は図39に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0162】
70~90 %コンフルエントになったUE7T-13細胞を回収し、Lab-Tek IIチェンバースライドの各ウェルに1.53×10^4個ずつ10% FBS/DMEMを用いてn=3+陰性対照の計4ウェルずつ播種した(9.0×10^3個/cm^2)。1日後に10% 分化誘導用FBS/DMEMを用いて各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。化合物添加4日後に培地交換を行った。
【0163】
化合物処理0、7日後に培地を捨て、PBS(-) 1 mLで2回洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド/PBS(-) 500 μLで30分間固定した。PBS(-) 1 mLで2回洗浄した後、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8) 450 μLを加え、陰性対照には10 mg/mL α-アミラーゼ(ナカライテスク)を50 μL加えて37℃で1時間インキュベートし、グリコーゲンを消化した。MilliQ水1 mLで3回洗浄し、1%過ヨウ素酸水溶液(ナカライテスク)500 μLで10分間処理し、糖質を酸化した。MilliQ水1 mLで3回洗浄し、冷却したSchiff's Reagent Solution(ナカライテスク)500 μLで15分間処理してグリコーゲンを染色し、亜硫酸水1 mLで3回、MilliQ水1 mLで3回洗浄した。Mayer's Hematoxylin(武藤化学株式会社, 東京)で1分間核染色した後、MilliQ水1 mLで3回洗浄し、エンテランニュー(Merck Millipore Corporation, Darmstadt, Germany)で封入後、BZ-9000(株式会社キーエンス, 大阪)で観察した。陽性対照として2.5×10^4個/cm^2で播種したHuH-7細胞を用いた。
【0164】
以上の結果、すべての化合物でグリコーゲン合成能が誘導されていることが示された(図39)。
【0165】
<実施例5>Wnt/β-カテニンシグナル抑制効果
5.1 肝癌細胞のWnt/β-カテニンシグナル抑制効果
HuH-7細胞の増殖を50%程度以下に抑制する化合物の濃度でWnt/β-カテニンシグナルの活性を測定した。各化合物の濃度は図40に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOと、0.5 μM 5-FUを用いた。70~90%コンフルエントになったHuH7-TCF4細胞を回収し、24穴プレート(TPP)の各ウェルに5.0×10^4 個ずつn=3で播種した。24時間後に各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。
【0166】
化合物処理48時間後に培地を捨て、室温に戻した5×Passive Lysis Buffer (PLB) (Promega Corp., Fitchburg, WI)をMilliQ水で5倍希釈したものを各ウェルに100 μLずつに加えて、室温で15分間震盪し、-30℃で一晩凍結した。室温に戻したLuciferase Assay Buffer II 10 mLでLuciferase Assay Substrateを希釈しLuciferase Assay Reagent II (LARII)を調製した(Promega)。凍結したPLB溶解サンプルを解凍し、15分間浸透してから96穴ホワイトプレート(Corning Inc., Corning, NY)に10 μLずつ加えていき、1420マルチラベルカウンターARVO MX (PerkinElmer Singapore Pte Ltd., Singapore)を用いてLARIIを50 μLずつ加えながら発色を定量してホタルルシフェラーゼ活性を測定した。なお、有意差はスチューデントのt検定(両側)で評価し、図中の*は0.1% DMSOに対してp<0.05で有意差あり、**はp<0.01で有意差ありを意味する(実施例中の全図に共通)。
【0167】
以上の結果、すべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して有意なWnt/β-カテニンシグナルの抑制効果を示した(図40)。
【0168】
5.2 肝星細胞のWnt/β-カテニンシグナル抑制効果
線維化の元凶となる肝星細胞LX-2の細胞増殖を50~80%程度に抑制する化合物の濃度でWnt/β-カテニンシグナルの活性を測定した。9b、9b-CONH2は100 μMでLX-2細胞の増殖抑制効果を示さなかった。各化合物の濃度は図41に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0169】
10% FBS/DMEMを用いて維持培養しているLX-2細胞を回収し、1% FBS/DMEMを用いて24穴プレートの各ウェルに4.0×10^4 個ずつn=3で播種した。pGL4.20 (Promega)のマルチクローニングサイトに、CMVプロモーターと、その上流にTCF4モチーフ(CCT TTG ATC)を3コピー持つpTCF4-CMVpro-GL4.20プラスミドベクター 50 ngと、pRL-CMV Vector (Promega) 5 ngをOpti-MEM (gibco, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA) 25 μL中で混合したものとLipofectamine 2000 (invitrogen, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA) 0.4 μLをOpti-MEM 25 μLに添加したものを混合して室温で20分間インキュベートし、細胞播種から20時間後に各ウェルに添加して両レポータープラスミドを細胞に一過性導入する。さらに4時間後、TGF-β 2.5 ng/mLと各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。
【0170】
化合物処理24、48時間後に培地を捨て、室温に戻した5×Passive Lysis Buffer (PLB)をMilliQ水で5倍希釈したものを各ウェルに100 μLずつに加えて、室温で15分間震盪し、-30℃で一晩凍結した。室温に戻したLuciferase Assay Buffer II 10 mLでLuciferase Assay Substrateを希釈しLuciferase Assay Reagent II (LARII)を調製した。室温に戻したStop&Glo Buffer 49 μLでStop&Glo Substrate 1 μLを希釈しStop&Glo (Promega)をサンプル数分調製した。
【0171】
凍結したPLB溶解サンプルを解凍し、15分間浸透した。3.5 mL テストチューブ (Sarstedt, AG & Co., Numbrecht, Germany) にLARIIを50μlずつ分注し、解凍したPLB溶解サンプルを10 μL添加してよく混合し、MiniLumat LB 9506 (Berthold Technologies GmbH & Co, Bad Wildbad, Germany)で発色を定量してホタルルシフェラーゼ活性を測定した。測定後、Stop&Gloを50 μL添加してよく混合しMiniLumat LB 9506で発色を定量してウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定した。測定結果は、ホタルルシフェラーゼ活性をウミシイタケルシフェラーゼ活性で除算した値を用いた。
【0172】
以上の結果、すべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して有意なWnt/β-カテニンシグナルの抑制効果を示した(図41)。
【0173】
5.3 間葉系幹細胞のWnt/β-カテニンシグナル抑制効果
UE7T-13細胞を用いてWnt/β-カテニンシグナルの活性を測定した。各化合物の濃度は図42に記載の通りである。コントロールには、各化合物の溶媒とした0.1% DMSOを用いた。
【0174】
70~90%コンフルエントになったE7-TCF4細胞およびE7-CMV細胞を回収し、24穴プレートの各ウェルに1.6758×10^4 個ずつn=3で播種した(9.0×10^3個/cm^2)。1日後に各化合物を細胞に添加し、37℃で培養した。化合物添加4日後に培地交換を行った。
【0175】
化合物処理1、4、8日後に培地を捨て、室温に戻した5×Passive Lysis Buffer (PLB)をMilliQ水で5倍希釈したものを各ウェルに100 μLずつに加えて、室温で15分間震盪し、-30℃で一晩凍結した。室温に戻したLuciferase Assay Buffer II 10 mLでLuciferase Assay Substrateを希釈しLuciferase Assay Reagent II (LARII)を調製した。凍結したPLB溶解サンプルを解凍し、15分間浸透してから96穴ホワイトプレートに10 μLずつ加えていき、1420マルチラベルカウンターARVO MXを用いてLARIIを50 μLずつ加えながら発色を定量してホタルルシフェラーゼ活性を測定した。
【0176】
以上の結果、化合物添加8日後においてIC-2-Ar-OMe、9b、7c-NTを除くすべての化合物でコントロールの0.1% DMSOに対して有意なWnt/β-カテニンシグナルの抑制効果を示した(図42)。
【0177】
<実施例6>肝癌における抗腫瘍効果
6.1 使用した試薬例
・DMEM: ダルベッコ変法イーグル培地2(日水製薬株式会社, 東京)、2 mM L-glutamine 0.2% NaHCO3、3500 mg/L D-glucose(ナカライテスク株式会社, 京都)、10% ウシ胎児血清(FBS) (Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)
・PBS(-): 8000 mg/L NaCl、2900 mg/L Na2HPO4・12H2O、200 mg/L KCl、200 mg/L KH2PO4(ナカライテスク)
・0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution:(ナカライテスク)
・IC-2: WO2012/141038に記載の方法に従って合成した。
【0178】
6.2 細胞培養
ヒト肝癌細胞株HuH-7細胞は、φ10 cm細胞培養皿(TPP Techno Plastic Products AG, Trasadingen, Switzerland)上にて、DMEMを用いて、5% CO2、37℃、100%湿度下において培養した。70~90%コンフルエントになった状態で、PBS(-)で10倍希釈した0.25% Trypsin/1 mM EDTA solution 200 μLを加えて細胞を剥がし、1000 rpmで3分間、室温で遠心し細胞を回収、1枚分を4枚に分けて継代した。
【0179】
pGL4.20 (Promega Corp., Fitchburg, WI)のマルチクローニングサイトに、CMVプロモーターと、その上流にTCF4モチーフ(CCT TTG ATC)を3コピー持つpTCF4-CMVpro-GL4.20プラスミドベクターを線状化し、安定導入したHuH-7細胞(HuH7-TCF4細胞)は、HuH-7細胞と同様にして培養した。
【0180】
6.3 癌細胞の増殖抑制効果(WSTアッセイ)
70~90%コンフルエントになったHuH-7細胞を回収し、96穴プレート(TPP)の各ウェルに1×10^4個ずつn=3で播種した。24時間後にIC-2を細胞に添加し、37℃で培養した。コントロール(0 μM)には、各化合物の溶媒とした1% DMSOを用いた。使用したIC-2の濃度は0、1、5、10、25、50 μMである。
【0181】
IC-2処理4日後にDMEMで希釈した10% Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所, 熊本)100 μLを加え、37℃、60分間インキュベートし、サンライズレインボーRC (Tecan Group Ltd., Mannedorf, Switzerland)を用いて吸光度(測定波長450 nm/対照波長600 nm)を測定した。測定結果は、10% Cell Counting Kit-8のみの吸光度との差をとることで、細胞のみの吸光度とした。
【0182】
また、各化合物のIC50は、IC50=10^{LOG(A/B)×(50-C)/(D-C)+LOG(B)}により求めた。Aは抑制率50%を挟む高い濃度、Bは50%を挟む低い濃度、CはBでの抑制率、DはAでの抑制率を表す。なお、有意差はスチューデントのt検定(両側)で評価し、図中の*は0.1% DMSOに対してp<0.05で有意差あり、**はp<0.01で有意差ありを意味する(実験例中の全図に共通)。
【0183】
以上の結果、IC-2で処理することによって、HuH-7細胞の増殖が抑制された(図43)。IC-2のIC50は、25.95μMであった。
【0184】
6.4 癌幹細胞の抑制効果(FCM解析)
癌幹細胞マーカーであるCD44を指標として、IC-2による癌幹細胞の抑制効果を調べた。70~90%コンフルエントになったHuH-7細胞を回収し、φ10 cm細胞培養皿に1.5×10^6個ずつ播種した。15時間後にhexachlorophene (15 μM)、ICG-001 (15 μM)、PKF118-310 (5 μM)、IC-2 (50 μM)、又は5-FU (0.5 μM)でそれぞれ処理し、37℃で培養した。コントロールには、各化合物、抗癌剤の溶媒とした1% DMSOを用いた。薬剤処理2日後に細胞を培養皿から回収し、1000 rpm、4℃で5分間遠心を行い、上清を取り除き、1 mLの0.5% FBS/2 mM EDTA/PBSで2回洗浄を行った。5% BSA/0.5% FBS/2 mM EDTA/PBS 500 μLに懸濁し、4℃で15分間ブロッキングを行った。
【0185】
マウス抗ヒトCD44モノクローナル抗体(156-3C11, Cell Signaling Technology Inc., Danvers, MA) を500 μLの細胞懸濁液に対して5 μL加えた後、再び懸濁し、4℃、暗所で10分間一次抗体反応を行った。その後、1 mLのPBSで3回洗浄を行った。Alexa Fluor 488標識ヤギ抗マウスIgG (H+L) (Life Technologies Corp., Carlsbad, CA) を1.0 μg加えた後、懸濁し、4℃、暗所で10分間二次抗体反応を行った。その後、1 mLのPBSで3回洗浄を行った後、0.5%FBS/2 mM EDTA/PBSで1回洗浄を行った。そして、500 μL の0.5% FBS/2 mM EDTA/PBSに懸濁し、40 μmメッシュカラム(Becton, Dickinson and Company, Franklin Lakes, NJ) に通した。Beckman Coulter-Moflo XDP (Beckman Coulter Inc., Fullerton, CA)を用いて解析を行った。解析後、0.25 mg/mL Propidium Iodide (PI)を2 μL加えてさらに解析した。同様の実験を5回繰り返し行った。
【0186】
以上の結果、IC-2を用いた場合に、癌幹細胞の細胞数が、コントロールの1% DMSOに比べて有意に減少していた(図44)。代表的な抗癌剤である5-FUを用いた場合には、むしろ癌幹細胞の細胞数が増加していた。
【0187】
6.5 肝癌モデルマウスを用いた悪性腫瘍治療効果
CD44陽性HuH-7細胞を皮下に移植し、生着したマウスを3群(DMSO群: 5匹、5-FU群: 4匹、IC-2群: 4匹)に分け、30 mg/kg 5-FU、50 mg/kg IC-2となるようにDMSOを加えて液量を100 μLに調製し、各薬剤の溶媒である100% DMSOをコントロールとして、3日毎に腹腔内に投与した。各マウスの体重、腫瘍の長径、短径を3日毎に測定し、腫瘍体積は下記の計算式によって算出した。腫瘍体積 = 長径×(短径)^2×0.5。腫瘍体積は、Day 0の体積で標準化してグラフを作成した。5-FUの投与量は、5-FUの効果を十分に評価するため、論文で一般的に採用されている15 mg/kgの2倍量に設定した。IC-2の投与量は、in vitroでWnt/β-カテニンシグナル抑制効果を示した濃度から対応する濃度を算出し、その2倍量に設定した。
【0188】
以上の結果、IC-2及び5-FUのいずれを投与した場合も、体重の変化は見られなかった(図45)。このことは、IC-2及び5-FUがいずれも安全に投与可能であることを意味している。さらに、IC-2は5-FUよりも顕著に高い悪性腫瘍の治療効果を示した(図46)。
【0189】
<実施例7>扁平上皮癌における抗腫瘍効果
HSC2(扁平上皮癌細胞)を96穴プレート(TPP Techno Plastic Products AG, Trasadingen, Switzerland)に2.5×10^3個ずつ播種した。24時間後にIC-2を図47に記載の濃度で加え、それから0、24、72、96時間後に10% Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所, 熊本)100 μLを加え、37℃でインキュベートし、サンライズレインボーRC (Tecan Group Ltd., Mannedorf, Switzerland)を用いて吸光度(測定波長450 nm/対照波長600 nm)を測定した。
【0190】
以上の結果、IC-2は、扁平上皮癌細胞の増殖抑制効果を示した(図47)。
【0191】
また、HSC2をφ10 cm細胞培養皿(TPP)に5×10^5個播種した。24時間後、5-FU: 0.5 μM、又はIC-2: 25 μMで処理を行った。また、低分子化合物で処理しない細胞も調製した(0 μM)。さらに、48時間後、各細胞を回収した。1次抗体としてマウス抗ヒトCD44抗体(Abcam Ltd., Cambridge, UK)を使用し、さらにAlexa Fluor 488標識ヤギ抗マウスIgG (H+L) (Life Technologies Corp., Carlsbad, CA)を使用した。その後、BD bioscience FACS Ariaセルソーター(Becton, Dickinson and Company, Franklin Lakes, NJ)によって解析を行った。なお、各低分子化合物の濃度は、WSTアッセイ48時間におけるIC50の濃度に基づいて設定した。
【0192】
以上の結果、CD44発現細胞の割合は、低分子化合物で処理しない場合が83.9%であったのに対し、IC-2では71.4%に減少した。即ち、IC-2は、癌幹細胞の抑制効果を示した。一方で、5-FUでは83.3%であり、変化は見られなかった。
【0193】
<実施例8>大腸癌における抗腫瘍効果
DLD-1(大腸癌細胞)を、φ10 cm細胞培養皿(TPP Techno Plastic Products AG, Trasadingen, Switzerland)上にて、DMEMを用いて5% CO2、37℃、100%湿度下で培養した。継代は、70~90%コンフルエント時に、PBS(-)で洗浄後、PBS(-) 2 mLに対し、0.25% Trypsin/1 mM EDTAを300 μL添加し、37℃で5分インキュベートし細胞を剥離後、DMEM 5 mLを用いて、細胞を回収した。回収した細胞は、1000 rpmで3分間遠心を行い、上清を除去し、DMEMに懸濁後、1:4で継代した。
【0194】
DLD-1を96穴プレート(TPP)に5×10^5 個ずつ播種した。24時間後、0、10、又は50 μM IC-2で処理した。処理後48時間後に、10% Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所, 熊本)100 μLを加え、37℃でインキュベートし、サンライズレインボーRC (Tecan Group Ltd., Mannedorf, Switzerland)を用いて吸光度(測定波長450 nm/対照波長600 nm)を測定した。
【0195】
以上の結果、IC-2は、大腸癌細胞の増殖抑制効果を示した(図48)。
【0196】
また、DLD-1をφ10 cm細胞培養皿に1×10^6個播種した。24時間後、5-FU:0.5、5 μM、又はIC-2:50 μMで処理を行った。さらに48時間後、細胞を回収した。1次抗体は、マウス抗ヒトCD44抗体(Abcam Ltd., Cambridge, UK)を使用しAlexa Fluor 488標識ヤギ抗マウスIgG (H+L) (Life Technologies Corp., Carlsbad, CA)を使用した。その後、MoFlo XDP (Beckman Coulter Inc., Fullerton, CA)によって解析を行った。
【0197】
以上の結果、IC-2の処理によって、コントロールに対してCD44high 細胞(CD44を強く発現する細胞)の割合が有意に減少していた(図49)。即ち、IC-2は癌幹細胞の抑制効果を示した。一方で、5-FUではむしろ増加していた。
【0198】
<実施例9>肝障害モデルマウスを用いた線維化の抑制効果
9.1 評価方法
9.1.1 肝臓の摘出
マウスに対して、27G注射針を装着した1 mLのディスポーサブルシリンジを用いて1 gあたり1 μLの全身麻酔薬ソムノペンチル(共立製薬株式会社, 東京)を腹腔内に投与し、麻酔導入した。麻酔導入後、27G注射針ならびに1 mLシリンジを用いて下大静脈より全採血を実施したのち、全肝臓を摘出した。
【0199】
9.1.2 Sirius red染色
上記の方法により摘出した肝組織片は4%パラホルムアルデヒド(ナカライテスク株式会社, 京都)により室温にて16時間固定し、パラフィン包埋後ミクロトームにて組織切片を作製し、Picosirius Red Stain Kit (Polysciences Inc., Warrington, PA)を用いて添付の操作方法に従い染色した。その後BZ-9000(キーエンス株式会社, 大阪)を用いて明視野にて100倍拡大像を各組織切片につき10枚撮影し、各撮影画像中の組織面積に対する赤く染色される線維の面積を定量して線維化陽性面積率を算出した。
【0200】
9.1.3 Azan染色
上記の方法により摘出した肝組織片は4%パラホルムアルデヒドにより室温にて16時間固定した。パラフィン包埋後ミクロトームにて組織切片を作製し、キシレン(ナカライテスク)による脱パラフィン、そしてエタノール(ナカライテスク)による水和反応後、5%重クロム酸カリウム・トリクロロ酢酸水溶液(和光純薬工業株式会社, 大阪)中にて20分間静置した。流水による5分間の洗浄後、アゾカルミンG液 (和光純薬)にて60℃、1時間染色し、水洗した後5%アニリン(ナカライテスク)含有のエタノール溶液にて3分間脱色した。その後5%酢酸(ナカライテスク)含有のエタノール溶液にて脱色反応を停止し、水洗後に5%リンタングステン酸水溶液(Alfa Aesar, Ward Hill, MA)にて1時間静置した。水洗した後、1%オレンジG・0.25%アニリンブルー(和光純薬)・4%酢酸水溶液にて30分間染色した後、エタノール中にて赤色と青色が区別できるようになるまで脱色した。その後キシレンに置換し、カバーガラスを被せて封入した後、作製した染色切片をBZ-9000を用いて明視野にて100倍拡大像を各組織片につき10枚撮影し、各撮影画像中の組織面積に対する青く染色される線維の面積を定量して線維化陽性面積率を算出した。
【0201】
9.2 四塩化炭素投与線維化モデルマウスを用いた線維症治療効果の評価
9.2.1 動物実験及び飼育条件
7週齢のC57BL/6雄マウス(日本エスエルシー株式会社, 静岡)を1週間予備飼育し健康なものを用いた。予備飼育および実験期間を通じて室温22±1℃、湿度50±5%の動物室内で飼育し、飼料および水は自由に摂取させた。
【0202】
9.2.2 四塩化炭素投与方法及び薬剤の投与方法
四塩化炭素(CCl4:和光純薬)を0.2 ml/kg、週3回、4、6、および8週間、マイクロシリンジ(株式会社伊藤製作所, 静岡)にて腹腔内に投与した。四塩化炭素はコーン油(和光純薬)に溶解した濃度10%の溶液を使用した。この四塩化炭素溶液を4週間投与後、マウスをVehicle投与群、グリチルリチン投与群、ICG-001投与群、及びIC-2投与群の計4群に分割し、四塩化炭素と同時に下記の方法により調製した薬液を週3回、4週間、マイクロシリンジを用いて腹腔内に投与した。なお四塩化炭素と薬液は1日毎に交互に投与した。
【0203】
グリチルリチン(東京化成工業株式会社, 東京)は生理食塩水中に溶解し、4M NaOH液にてpH7.0に合わせて30 mg/mLの濃度に調製した。IC-2およびICG-001 (AdooQ BioScience, Irvine, CA)はそれぞれ40 mg/mLおよび10 mg/mLの濃度になるようにウェルソルブ(株式会社セレステ, 東京)中に溶解し, さらに60℃の湯浴にて10分間加熱し, 完全に溶解した。これらの薬剤が溶解したウェルソルブ溶液に9倍量の生理食塩水を加えた。次にグリチルリチンは150 mg/kgとなるように薬液を必要量とり、生理食塩水を加えて液量を200 μLに調製した。IC-2は10.6 mg/kg、ICG-001は5 mg/kgとなるように薬液を必要量とり、ウェルソルブと生理食塩水を1:9の割合で混合した溶液を加えて液量を200 μLに調製した。またウェルソルブと生理食塩水を1:9の割合で混合した溶液をVehicleとして用意した。
【0204】
9.2.3 結果
図50は、四塩化炭素投与8週間後におけるSirius red染色の染色像と線維化領域の定量結果を示す図である。赤く染色されている領域が線維化領域を示す。四塩化炭素を8週間投与中、薬剤を後半の4週間投与したところ、Vehicle群と比較してIC-2投与群で線維化領域の減少を認めた。
【0205】
9.3 非アルコール性脂肪性肝炎モデルマウスを用いた線維症治療効果の評価
9.3.1 動物実験及び飼育条件
7週齢のC57BL/6JHamSlc-ob/ob雄マウス(日本チャールス・リバー, 神奈川)を1週間予備飼育した後、2群に分けてそれぞれの群に高脂肪食D09100301およびコントロール食D09100304(Research Diets Inc., New Brunswick, NJ)を飼料として与えた。予備飼育および実験期間を通じて室温22±1℃、湿度50±5%の動物室内で飼育し、飼料および水は自由に摂取させた。
【0206】
9.3.2 非アルコール性脂肪性肝炎誘導方法及び薬剤の投与方法
高脂肪食を6週間投与後、マウスをVehicle投与群、ウルソデオキシコール酸ナトリウム投与群、ICG-001投与群、およびIC-2投与群の計4群に分割し、下記の方法により調製したVehicle、ICG-001およびIC-2の薬液を週3回、3および6週間、マイクロシリンジを用いて腹腔内に投与した。またウルソデオキシコール酸ナトリウムはゾンデを装着した1 mLのディスポーサブルシリンジを用いて1日1回経口投与した。
【0207】
ウルソデオキシコール酸ナトリウム(田辺三菱製薬株式会社, 大阪)は1M NaOH水溶液中に溶解し、HCl水溶液にてpH8.3に合わせて60 mg/mLの濃度に調製した。IC-2およびICG-001はそれぞれ40 mg/mLおよび10 mg/mLの濃度になるようにウェルソルブ中に溶解し, さらに60℃の湯浴にて10分間加熱し, 完全に溶解した。これらの薬剤が溶解したウェルソルブ溶液に4倍量の生理食塩水を加えた。次にウルソデオキシコール酸ナトリウムは150 mg/kgとなるように薬液を必要量とり、滅菌水を加えて液量を200 μLに調製した。IC-2は21.2 mg/kg、ICG-001は5 mg/kgとなるように薬液を必要量とり、ウェルソルブと生理食塩水を1:9の割合で混合した溶液を加えて液量を200 μLに調製した。またVehicleとしてウェルソルブと生理食塩水を1:9の割合で混合した溶液を用意した。
【0208】
9.3.3 結果
図51は、高脂肪食12週間給餌後におけるAzan染色の染色像と線維化領域の定量結果を示す図である。青く染色されている領域が線維化領域を示す。高脂肪食を12週間給餌中、薬剤を後半の6週間投与したところ、Vehicle群と比較してIC-2投与群で線維化領域の減少を認めた。
【0209】
<実施例10>HC-1と5-FUの併用効果
HC-1 (hexachlorophene methyl ether bis(2,3,5-trichloro-6-methoxyphenyl)methane)をWO2012/141038に記載の方法に従って合成した。HSC2を96穴プレート(TPP Techno Plastic Products AG, Trasadingen, Switzerland)に2.5×10^3個ずつ播種した。24時間後、HC-1、又は5-FUを図52に示す濃度及び時間で処理した。その後に、10% Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所, 熊本)100μLを加え、37℃でインキュベートし、サンライズレインボーRC (Tecan Group Ltd., Mannedorf, Switzerland)を用いて吸光度(測定波長450 nm/対照波長600 nm)を測定した。その結果を図52に示す。
【0210】
HSC2を96穴プレートに2.5×10^3個ずつ播種した。24時間後、50 μM HC-1及び5-FUを図53に示す濃度で48時間処理した。その後に、10% Cell Counting Kit-8 100 μLを加え、37℃でインキュベートし、サンライズレインボーRCを用いて吸光度(測定波長450 nm/対照波長600 nm)を測定した。
【0211】
その結果を図53に示す。HC-1は、5-FUと併用で用いることによって、相乗的な抗腫瘍効果を示した。
【0212】
HSC2を6穴プレート(TPP)に1×10^5個ずつ播種した。24時間後、5-FU、HC-1、5-FU及びHC-1図54に示す濃度でそれぞれ48時間処理した。その後、Annexin-V-FLUOS Staining Kit (Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)で処理し、Annexin-V及びPIで染色された細胞をIX71(オリンパス株式会社, 東京)で観察し、それぞれ10視野を画像解析ソフトウェアinForm 2.0.4 (PerkinElmer, Waltham, MA)で解析し、アポトーシス細胞率及び死細胞率を算出した。
【0213】
その結果を図54~55に示す。HC-1は、5-FUと併用で用いることによって、細胞死を誘導した。
【0214】
<考察>
上述の通り、新規化合物を用いることにより、癌細胞の増殖が抑制されることが示された。また新規化合物は、癌幹細胞の増殖抑制効果を有していた。また新規化合物は、癌の発生原因となりえる線維化の抑制効果を有していた。また新規化合物は、間葉系幹細胞を肝細胞へ分化誘導する効果を有していた。さらに、HC-1と5-FUは相乗的な抗腫瘍効果を示した。
【0215】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29
【図31】
30
【図32】
31
【図33】
32
【図34】
33
【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
38
【図40】
39
【図41】
40
【図42】
41
【図43】
42
【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
49
【図51】
50
【図52】
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【図53】
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【図54】
53
【図55】
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