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明細書 :窒素化合物の製造方法及び製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6590420号 (P6590420)
登録日 令和元年9月27日(2019.9.27)
発行日 令和元年10月16日(2019.10.16)
発明の名称または考案の名称 窒素化合物の製造方法及び製造装置
国際特許分類 C23C   8/36        (2006.01)
C23C  16/34        (2006.01)
C23C  16/511       (2006.01)
H01L  33/32        (2010.01)
H05H   1/46        (2006.01)
FI C23C 8/36
C23C 16/34
C23C 16/511
H01L 33/32
H05H 1/46 B
請求項の数または発明の数 11
全頁数 17
出願番号 特願2017-548816 (P2017-548816)
出願日 平成28年11月2日(2016.11.2)
国際出願番号 PCT/JP2016/082629
国際公開番号 WO2017/078082
国際公開日 平成29年5月11日(2017.5.11)
優先権出願番号 2015216552
優先日 平成27年11月4日(2015.11.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成30年5月16日(2018.5.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】板垣 宏知
【氏名】▲榊▼田 創
【氏名】金 載浩
【氏名】小倉 睦郎
【氏名】王 学論
【氏名】廣瀬 伸吾
個別代理人の代理人 【識別番号】100107515、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 浩一
【識別番号】100107733、【弁理士】、【氏名又は名称】流 良広
【識別番号】100115347、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 奈緒子
審査官 【審査官】國方 康伸
参考文献・文献 特表2008-515175(JP,A)
特開平05-033120(JP,A)
国際公開第2015/030191(WO,A1)
特開2006-100246(JP,A)
特表2015-510263(JP,A)
特開2008-004540(JP,A)
調査した分野 C23C 8/00-12/02
C23C 16/00-16/56
特許請求の範囲 【請求項1】
容器の内部における前記容器の一部に接触するように設けられ、ノズルを有するマイクロ波プラズマ生成装置を用いてマイクロ波プラズマを生成して窒素化合物を製造する窒素化合物の製造方法であって、
前記ノズルから窒素系ガスを含む原料ガスを基材の表面に流量を制御して吹き出しながら、前記原料ガスにマイクロ波を印加することにより、前記原料ガスから生成される窒素系活性種を含むプラズマを前記基材の表面に向かって照射する工程において、圧力を前記プラズマにおけるイオンの平均自由行程がデバイ長より小さくなる圧力より高く設定することを特徴とする窒素化合物の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロ波プラズマ生成装置が、マイクロ波伝送線路を有し、
前記マイクロ波伝送線路が、マイクロストリップ線路又はストリップ線路であることを特徴とする請求項1に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ノズルをライン状に配置することにより、前記プラズマを前記基材に向かってライン状に照射して、前記基材表面に窒素化合物をライン状に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項4】
前記ノズルから前記原料ガスを吹き出す際に、吹き出し角度を前記基材に垂直な面に対してプラス及びマイナス45度の角度の範囲内で吹き出すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項5】
前記工程が行われる圧力を1kPa以上に設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項6】
前記マイクロ波の投入エネルギーが500ワット以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項7】
前記ノズルを2個以上重ねて並べて、各ノズルから窒素系ガスを含む原料ガスを前記基材の表面に流量を制御して吹き出しながら、前記原料ガスにマイクロ波を印加することにより、前記原料ガスから窒素系活性種を含むプラズマを生成して、前記プラズマを前記基材の表面に向かって照射する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項8】
前記基材がTiであり、前記窒素化合物がTiNであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項9】
Ga、In、あるいはAlを有機金属蒸気として輸送し、前記原料ガスから生成される窒素系活性種を含むプラズマと、気相あるいは基板上で反応させることにより、GaN、InGaN、InN、あるいはAlN、及びこれらの混合組成のいずれかからなる窒素化合物の薄膜結晶を、700℃以下の低温にて前記基材上にエピタキシャル成長させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項10】
窒素系活性種計測部及び制御部を設け、窒素系活性種の量の計測に基づき制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の窒素化合物の製造方法。
【請求項11】
マイクロ波プラズマを生成して窒素化合物を製造する装置であって、
容器と、前記容器の内部における前記容器の一部接触するように設けられ、ノズルを有するマイクロ波プラズマ生成装置と、窒素系活性種計測部と、制御部とを備え、
前記制御部は、前記ノズルから窒素系ガスを含む原料ガスを基材の表面に流量を制御して吹き出しながら、前記原料ガスにマイクロ波を印加することにより、前記原料ガスから生成される窒素系活性種を含むプラズマを前記基材の表面に向かって照射する工程において、容器内の圧力が、前記プラズマにおけるイオンの平均自由行程がデバイ長より小さくなる圧力より高くなるように、前記窒素系活性種の量の計測に基づき制御することを特徴とする製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマ源を用いた窒素化合物の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窒素化合物の薄膜を製造する方法には、基材表面を窒化処理する方法や、窒素化合物を薄膜製造技術により基材表面に形成する方法等が知られている。
【0003】
窒化処理法は、表面改質処理法の一つであり、鉄鋼やチタンなどの表面を窒化する表面改質法として広く利用されている。窒化表面処理した製品は、スピンドルやギア等の工作機械部品や、タービンや燃料噴射ノズル等の内燃機関部品、パワーショベル等の減速機ギアや、航空機や自動車部品などに使用されている。また、近年、医療用部品への窒化処理等、様々な分野での開発がなされている。窒化処理法は、高硬度化、耐食性付与、耐摩耗性付与などの表面機能を付与する場合において、高密度窒素系活性種供給法として利用可能である。
【0004】
窒化処理法は、その高密度窒素系活性種供給法の技術を、Metal Organic Chemical Vapor Deposition(以下、MOCVDという。)等の基材表面での材料生成に適用することができる。
【0005】
半導体技術分野において、GaN系化合物半導体を材料とする青・緑色発光ダイオード(LED)は、白熱電球や蛍光灯などの既存の照明デバイスに取って代わる省エネルギー・長寿命の照明・表示用光源として普及しつつある。LED照明では、青色LEDで黄色蛍光体を励起する白色光合成方式が主流である。その場合のLED単体の発光効率の理論限界は270lm/W程度である。更に発光エネルギー効率を向上するためには(理論効率>400lm/W)、多色LEDを同時に発光させる蛍光体フリー白色LEDを開発する必要がある。課題は、In組成が30%程度のInGaNを発光材料として使用する緑色LEDの外部量子効率の向上である。現在、緑色LEDの発光効率は、高性能な製品でも約20%と青色や赤色LEDの発光効率に比べて、半分以下である。その理由は、その構成元素であるInの蒸気圧が高く600℃程度の低温成長が望ましい一方、窒素(N)は、800℃以上望ましくは1000℃以上でアンモニアを高温分解して活性状態の窒素を供給する必要があるため、最適な結晶成長条件が得られにくい。そのため、800℃以下で窒素系活性種を高密度で供給可能な手法が求められている。
【0006】
窒化法として、例えば、ガス窒化炉にアンモニアガスのみを実質的に供給し、アンモニアガスとアンモニア分解ガス中で部材表面に窒化層を形成させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0007】
また、金属部材の表面に金属窒化物の化合物層を効率的に形成するとともに、化合物層と窒素原子の拡散層との相乗効果により硬度を高めることができる、グロー放電によるイオン窒化方法が知られている(特許文献2参照)。特許文献2では、金属部材を-700V、0.95A(665W)でイオン窒化動作ガスとして水素2slm、アンモニア0.5slmを用いて、雰囲気圧1Torrで1時間イオン窒化処理を行っている。その際、金属部材の温度を300-650℃の温度に保持し、金属部材の表面に0.001-2mA/cm^2の電流密度のグロー放電を用い、NHラジカルと窒素ラジカルの発光強度比が0.2-0.1となるプラズマ状態でイオン窒化を行っている。
【0008】
大気圧プラズマによるチタン合金の窒化薄膜合成技術は、従来の窒化法と比較してより簡便な窒化処理方法として知られている(非特許文献1参照)。大気圧プラズマを用いることにより、処理装置の簡易化、高密度ラジカル生成、金属表面粗化の抑制が可能である。非特許文献1では、高周波電源(5kV、1.2A、21kHz)で実効電力4キロワット、動作ガスとして窒素99%、水素ガス1%を用いている。
【0009】
最近、低圧から中間圧および高圧において、プラズマを安定に生成・維持できるマイクロ波プラズマ処理装置が開発されている(非特許文献2、特許文献3参照)。通常、プラズマCVD処理用等のプラズマの特性は、プラズマを生成する圧力に強く依存するため、プラズマを圧力に対して次の三つの種類に分けられる。(1)低圧プラズマ:圧力領域0.01Torr~1.0Torr、(2)中間圧プラズマ:圧力領域1.0Torr~100Torr、(3)高圧プラズマ:圧力領域100Torr~760Torr(大気圧)。なお、以下、圧力はPaの単位で示す(1Torr=133Pa)。
【0010】
本発明者らは、導波管の代わりにマイクロストリップ線路をマイクロ波伝送線路として用いたマイクロ波プラズマ処理装置を既に提案した(非特許文献2、特許文献3参照)。該装置は、従来の導波管を用いたマイクロ波プラズマ処理装置より、単純な構造、安価な製作、低電力運転等のメリットを有し、これからの様々な産業的応用が期待される。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2013-249524号公報
【特許文献2】特開平08-035053号公報
【特許文献3】国際公開第2015/030191号
【0012】

【非特許文献1】吉光祐樹他、「大気圧プラズマを用いたチタン合金Ti-6Al-4Vの窒化薄膜合成」、電気学会プラズマ研究会 PST-14-057(2014)1-4.
【非特許文献2】Jaeho Kim et.al、Jpn.J.Appl.Phys.54、01AA02(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、窒素化合物の製造方法や基材の窒化処理方法において、次のような問題があった。
特許文献1のような技術では、ガスを加熱して窒化を行うため、消費ガス量が多く、約7.5m3以上が必要となる。また、例えば、基板直径30mmに対して、幅760mm×長さ1200mm×高さ800mmの大型な容器も必要となる。
特許文献2のようなグロー放電を用いた窒化法では、真空下でプラズマ処理を行う必要があり、被窒化物の大型化に伴う装置の大型化と高コスト化が問題となる。空間でプラズマを生成するため、消費電力が多くなり効率が悪いという問題がある。また、被窒化物を電極として利用しているため、アーク点(スポット上の放電痕)の形成や、細い穴を有している場合にホローカソード放電への移行といった点が問題となる。
非特許文献1の技術は、基板の照射中心温度が約970℃、φ4の範囲のみ窒化が可能であり、窒化面積が非常に小さいという問題がある。また、円筒構造でありφ4のオリフィスからプラズマを照射しているため、部分的な窒化となるので、大面積化が困難である。また、大きな電力を必要とするという問題もある。
【0014】
従来、基材へのイオン衝撃を減らすために、基材をプラズマ領域から遠く離れたところに置いて処理を行う通常のリモートタイプのプラズマ処理方法がある。しかし、通常のリモートタイプ法では、窒素化合物の合成速度が遅く、長時間が必要であるという問題があった。
【0015】
窒素化合物の製造方法において、マイクロ波プラズマを使用することの提案は特許文献3で示された。特許文献3のプラズマ処理装置は、低電力で安定した窒素プラズマを発生することができた。窒素プラズマは、銅等の金属表面の窒化処理や窒化物半導体の製作等のプラズマ窒化処理への応用が期待されるものである。しかしながら、発明者らが、窒素化合物について研究開発する過程で次のような問題が生じた。従来の特許文献3の装置では、ヒーターを用いた基材の加熱をする窒素化合物の製造においては、輻射熱が強く、該熱からプラズマ源を保護することが難しいという問題であった。
【0016】
また、緑色LEDにおいては、Inの組成割合を30%程度添加したInGaNを結晶成長させる必要がある。しかし、Inの再蒸発や組成分離(セグリゲーション)を防止し、結晶品質を向上するためには、600以上700℃以下の成長温度が望ましい。一方、アンモニアを分解するするためには、高温(約800℃)が必要であり、アンモニアを分解しつつ両者を最適に制御する手法が見出されていない状況にある。
【0017】
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、窒素系ガス(窒素ガスやアンモニアガス等)をプラズマ状態とし、高密度の窒素系活性種(以下「窒素系ラジカル」ともいう。)を基材に照射する、窒素化合物を製造する方法及び装置を提供することを目的とする。また、従来より低温で形成可能な窒素化合物の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。また、より高圧プロセスで消費電力の少ない、窒素化合物の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有する。
【0019】
本発明の方法は、マイクロ波プラズマを生成して窒素化合物を製造する窒素化合物の製造方法であって、ノズルから窒素系ガスを含む原料ガスを基材の表面に流量を制御して吹き出しながら、前記原料ガスにマイクロ波を印加することにより、前記原料ガスから生成される窒素系活性種を含むプラズマを前記基材の表面に向かって照射する工程において、圧力を前記プラズマにおけるイオンの平均自由行程がデバイ長より小さくなる圧力より高く設定することを特徴とする。
本発明の方法において、前記マイクロ波を印加するために、マイクロ波伝送線路としてマイクロストリップ線路又はストリップ線路を用いることが望ましい。
本発明の方法において、前記ノズルをライン状に配置することにより、前記プラズマを前記基材に向かってライン状に照射して、前記基材表面に窒素化合物をライン状に形成することができる。
本発明の方法において、前記ノズルから前記原料ガスを吹き出す際に、吹き出し角度を前記基材に垂直な面に対してプラス及びマイナス45度の角度の範囲内で吹き出すようにしてもよい。
本発明の方法において、前記工程が行われる圧力を1kPa以上に設定することが好ましい。
本発明の方法は、前記マイクロ波の投入エネルギーが500ワット以下である。
本発明の方法は、前記ノズルを2個以上重ねて並べて、各ノズルから窒素系ガスを含む原料ガスを前記基材の表面に流量を制御して吹き出しながら、前記原料ガスにマイクロ波を印加することにより、前記原料ガスから窒素系活性種を含むプラズマを生成して、前記プラズマを前記基材の表面に向かって照射する工程を含むことを特徴とする。
本発明の方法は、例えば、前記基材がTiであり、前記窒素化合物がTiNである。
本発明の方法は、例えば、Ga、In、あるいはAlを有機金属蒸気として輸送し、前記原料ガスから生成される窒素系活性種を含むプラズマと、気相あるいは基板上で反応させることにより、GaN、InGaN、InN、あるいはAlN、及びこれらの混合組成のいずれかからなる窒素化合物の薄膜結晶を、700℃以下の低温にて前記基材上にエピタキシャル成長させる。
本発明の方法は、窒素系活性種計測部及び制御部を設け、窒素系活性種の量の計測に基づき制御することを特徴とする。
本発明の装置は、マイクロ波プラズマを生成して窒素化合物を製造する装置であって、容器と、容器内に設けられ、ノズルを有するマイクロ波プラズマ生成装置と、窒素系活性種計測部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記ノズルから窒素系ガスを含む原料ガスを基材の表面に流量を制御して吹き出しながら、前記原料ガスにマイクロ波を印加することにより、前記原料ガスから生成される窒素系活性種を含むプラズマを前記基材の表面に向かって照射する工程において、容器内の圧力が、前記プラズマにおけるイオンの平均自由行程がデバイ長より小さくなる圧力より高くなるように、前記窒素系活性種の量の計測に基づき制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法は、窒化プラズマ生成のために、マイクロ波はノズルの例えば先端近傍に強電界を印加し、窒素系ガス(窒素ガスやアンモニアガス等)をプラズマ状態とし、高密度の窒素系活性種を基材に照射するリモートタイプの手法である。窒素系ガスに、水素、ヘリウム、アルゴン等のガスを混合して流しても良い。リモートタイプの手法であるため、被窒化物に直接に電圧を印加する必要はなく、アーキングなどによるスポット状の放電痕の発生は根本的に解決可能である。また、本発明では、窒化装置や窒素化合物の製造装置の小型化や軽量化が可能である。また、本発明では、マイクロ波の投入エネルギーが500ワット以下、さらに200ワット以下でも、可能であることから、従来技術に比べて大幅な消費電力の低減ができる。また、本発明の方法によれば、窒化処理や窒素化合物の製造を基材温度800℃以下の温度で実施することが可能である。
本発明の方法の、基材を窒化処理することにより生成された窒化膜は、硬度特性等の優れた特性を示した。
従来製作が困難であった窒素化合物膜の製造であっても、本発明の窒素系活性種の高密度供給法により窒素系活性種を供給すれば、MOCVD等による結晶成長法において、800℃未満、より好ましくは600以上700℃以下という低温の成長温度で膜形成を実現することができる。
本発明の方法では、ライン状に高密度の窒素系活性種を基材に供給することが可能となり、プラズマ源を複数並列に配置だけで、大面積化に対応をすることが可能となる。また、基材を前後左右又は回転等により適宜移動させることが容易にでき、これにより、基材表面の窒化一様性が可能となる。
MOCVD結晶成長において一般的な10kPa程度での圧力において、本発明のプラズマ源は安定なプラズマ源である。本発明では、この安定なプラズマ源を用いて、アンモニアを分解し、キャリアガスとともに窒素系活性種を基板近傍まで輸送するとともに、In、GaなどIII族元素を、TEIn(トリエチルインジウム)やTMGa(トリメチルガリウム)などの有機金属として供給することにより、低温で、緑色LED等に必要な窒化InGaN等を低温で成長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態で用いるマイクロ波プラズマ窒化装置の模式図。
【図2】プラズマと基材表面との間における無衝突シースと衝突シースを示す模式図で、(a)は無衝突シースにおけるプラズマから基板表面へのイオン衝撃の様子、(b)は衝突シースにおけるプラズマから基板表面へのイオン衝撃の様子、をそれぞれ模式的に示す図であり、(c)は、本発明の実施の形態における方法を模式的に示す図。
【図3】本発明の実施の形態の、ノズルと基材との間に生成した高密度窒素系活性種の発光を説明する図。
【図4】本発明の実施の形態の、窒化処理前のチタン基材表面(a)と窒化処理後のチタン基材表面(b)の写真を示す図。
【図5】本発明の実施の形態の、窒化処理前後のチタン基材表面のラマン分光スペクトルを示す図。
【図6】本発明の実施の形態の、窒化処理前後のチタン基材表面のX-Ray diffraction(XRD)解析を示す図。
【図7】本発明の実施の形態の、基材に対してノズルを傾けた処理法の模式図。
【図8】本発明の実施の形態の、多ノズル方式の大面積窒化処理法、または窒素化合物膜の成膜方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について以下説明する。

【0023】
本発明は、窒化プラズマ生成のために、マイクロ波によりノズル先端近傍に強電界を印加し、窒素系ガス(窒素ガスやアンモニアガス等)をプラズマ状態とし、高密度の窒素系活性種を基材に照射するリモートタイプの手法である。

【0024】
図1は本発明の実施の形態のマイクロ波プラズマ窒化方法のために使用する装置の一例の模式図である。図1のマイクロ波プラズマ窒化装置は、容器(10)と、容器(10)内に設けられたマイクロ波プラズマ生成装置とで構成される。マイクロ波プラズマ生成装置は、内部にガス流路と裏面に導体面を設けた誘電体基板(4)、誘電体基板(4)の表面に設けられたマイクロストリップ線路(3)、誘電体基板(4)の一方の端の端面に設けたノズル(7)、マイクロ波プラズマ生成装置にマイクロ波を供給するためのマイクロ波導入用フランジ(11)と同軸ケーブル(2)、及びマイクロ波プラズマ生成装置にガスを供給するためのガス導入用フランジ(12)とガス導入管(9)、とから構成されている。前記マイクロ波導入用フランジ(11)及び前記ガス導入用フランジ(12)は、容器(10)に取り付けられている。
ノズル(7)は、原料ガスとともにマイクロ波の印加により生成されたプラズマが幅広に一様に吹き出るように、例えば、スリット形状を有している。容器(10)の内部に、基材(5)をマイクロ波プラズマ装置のノズル(7)の真下に、ノズルの幅が基材の長手方向と一致するように設置し、プラズマCVD処理を行った。ノズル(7)と基材(5)との距離が所定の距離になるように調整して使用する。容器(10)は、排気管(8)を備える。図1の(1)の領域は、ノズル(7)と基材(5)との間の空間であり、詳しく後述する高密度窒素系活性種領域(1)である。ノズル(7)と基材(5)との間の空間である高密度窒素系活性種領域(1)における窒素系活性種に関する情報を取得するために、容器(10)に当該領域を計測するための活性種計測部が取り付けられていてもよい。

【0025】
マイクロ波プラズマ窒化装置の容器内圧力が増加することによって、窒素原子、NH分子などの窒素系活性種の平均自由行程が短くなり、ノズル直下の基材付近において窒素系活性種が増加するため、ノズル直下の窒化の均一性が向上する。このとき、マイクロ波電力の増加、及び処理時間を伸ばすことのいずれか一方又は両方により、ノズル直下に加えて、より広い範囲において、均一なリモートプラズマによる窒化を行うことが可能となる。
しかし、従来のリモートプラズマ法では、窒素化合物の合成速度が遅く、長時間が必要であるという問題があった。

【0026】
本発明では、容器内の圧力を、イオンの平均自由行程がデバイ長より小さくなるように圧力を十分高く設定する。一般的に、プラズマとそれを囲む壁との間に形成するシースの長さはデバイ長程度である。
これにより、プラズマと基材との間に、衝突状態のシースを形成することができ、プラズマからのイオンは、シース内で他の粒子とぶつかり合い、その運動エネルギーを失う。その結果、基材表面において、イオンを減らし、ノズルからのガスの流れと共に、高密度の窒素系活性種が基材表面に供給される。
そこで、本発明で用いるプラズマ窒化処理及びプラズマCVDによる窒素化合物製造の圧力条件としては、プラズマにおけるイオンの平均自由行程(λM)がデバイ長(λDe)より小さくなる圧力より高い圧力であることが好ましい。具体的には、プラズマCVD処理の圧力条件としては、1kPa以上が望ましい。

【0027】
従来知られている、プラズマにおけるイオンの平均自由行程(λM)について説明する。
イオンの平均自由行程とは、他の粒子との衝突から次の衝突までの間にイオンが進む距離の平均である。すなわち、イオンが衝突せずに進む平均距離である。平均自由行程(λM)は下記の式(1)と式(2)、および式(3)から求められる。

【0028】
【数1】
JP0006590420B2_000002t.gif

【0029】
ここで、nは粒子の密度(m-3)、σは衝突断面積(m2)である。
衝突断面積は、
σ=πD2 (2)
である。ここで、Dは粒子の直径である。
また、下記の気体の状態方程式は
P=nKT (3)
である。Pは圧力(Torr)、kはボルツマン定数(1.381×10-23J/K)、Tは温度(K)である。
式(1)に式(2)と式(3)を適用すると、粒子の平均自由行程は次のようになる。

【0030】
【数2】
JP0006590420B2_000003t.gif

【0031】
式(4)から、イオンの平均自由行程は圧力に反比例関係であることがわかる。圧力が高くなるとイオンの平均自由行程が小さくなる。

【0032】
一方、デバイ長(λDe)は次の式から求められる。

【0033】
【数3】
JP0006590420B2_000004t.gif

【0034】
ここで、ε0は自由空間中誘電率、Teは電子温度(eV)、neは電子密度(m-3)、eは電子の電荷である。従って、デバイ長は電子密度と電子温度により決まる。

【0035】
本発明の窒素化合物の製造方法では、製造時の圧力条件を、イオンの平均自由行程がデバイ長より小さくなる圧力より高い圧力に設定するとともに、窒素系ガスを含む原料ガスをノズルからプラズマ領域を通って基材表面に吹き出すことにより、ガスの流れが基材表面に直接当たるようにすることが望ましい。
以下、図面を用いて、詳しく説明する。

【0036】
図2(a)と(b)に、それぞれ無衝突シースと衝突シースにおけるプラズマから基材表面へのイオン衝突の様子を模式的に示す。また、図2(c)に、本発明の方法において基材表面に当たるガス流れの効果を模式的に示す。図中、プラズマ領域を斜線で示す。図中模式的にプラズマ状態を電子(三角)、イオン(丸)、窒素系活性種(七角形など)で示す。図中矢印は粒子の移動を示す。
まず、無衝突シースと衝突シースにおける基材表面へのイオン衝突について下記に簡単に説明する。
(1)無衝突シースにおける基材へのイオン衝突(図2(a)参照)
通常の低圧プラズマでは、プラズマと基材表面との間に無衝突シースを形成する。プラズマで生成したイオンは、プラズマからシースの方に入ると、シース電位より基材表面に向かって加速する。低圧の場合は、空間に粒子が少ないので、加速したイオンは高いエネルギーを持ったまま基材表面に衝突する。そのため、低圧プラズマを用いたCVD処理では、基材表面へのイオン衝突が生じる。
(2)衝突シースにおける基材へのイオン衝突(図2(b)参照)
通常、中間圧以上の高い圧力(厳密には、イオンの平均自由行程がデバイ長より小さくなる圧力より高い圧力)のプラズマでは、衝突シースを形成する。プラズマで生成したイオンは、プラズマからシースの方に入ると、シース電位より基材表面に向かって加速される。ところが、高い圧力では、シース内における中性粒子などの密度が高いため、加速中のイオンはそれらの粒子と衝突を繰り返して起こす。イオンは加速しにくくなり、基材表面に達するイオンの運動エネルギーは低い。そのため、中間圧以上のプラズマを用いたCVD処理では、基材表面へのイオン衝突は劇的に減る。
この衝突シースと無衝突シースについては、既に知られている。

【0037】
図2(c)に示した、本発明の方法における基材表面に当たるガス流れの効果を簡単に説明する。
本発明の窒素化合物の作製方法では、図2(c)に示すように、原料ガスを前記基材の表面に吹き出すことで、原料ガスの流れがプラズマ領域を通って強制的に送り出され、基板表面に直接当たるようにする。これにより、放電により生成される活性種は、この原料ガスの流れと共に基材表面に輸送される。さらに、基材表面に当たるガスは基材表面を沿って流れるので、基材表面に輸送された活性種はガスの流れと共に基材表面を沿ってさらに輸送され、その結果、基板表面に活性種が強制拡散される。
プラズマCVD処理中の基材表面に当たるガスの流速は、供給するガスの流量や、容器内の圧力や、ノズルから基材表面までの距離や、ノズルの断面積などを変えることにより制御することが可能である。
また、本発明の方法に適する窒素化合物の製造装置として、図1に示すように活性種計測部を設けることで、図2(c)の領域における窒素系活性種を計測することが可能である。例えば、窒素系活性種の発光を分光計測をし、その量を定性的ないしは定量的に評価する。更に、その窒素系活性種の量に基準値を設け、その基準値の値よりも小ないしは大に制御することで、より目的のプロセスに適した窒素系活性種の量を基材表面に提供することが可能となる。

【0038】
原料ガスは、窒素系ガスを含むガスを用いる。
また、プラズマの生成する条件に応じて、不活性ガス(アルゴン、ヘリウム等)を混合して用いる。不活性ガスを混合することにより、高い圧力においてもプラズマを安定に維持することができる。
また、プラズマCVDを行う条件に応じて、水素ガスを適量に混合して用いることがある。

【0039】
ガスは、容器内に設けられているノズルを通って基材表面に吹き出す。ノズルは、基材表面の上部に設け、原料ガスの流れが基材表面に直接当たるようにする。上記ノズルの内部及び/又はノズルの端又は周辺にマイクロ波を印加し、プラズマを生成する。
本発明では、基材をプラズマ生成領域から離れたところに置いても、ノズルから吹き出て基材表面に当たる原料ガスの流れを適当な強さにすることにより、窒素化合物の作製に必要な活性種を基材表面に十分に供給することができる。これにより、プラズマ生成領域から離れたところにおいても、欠陥が少ない窒素化合物を高速で成膜することができる。
また、原料ガスの流速と基材表面に当たるガスの流れの向きを適切にすることにより、成膜の一様性を向上することができる。

【0040】
本発明の窒化処理方法は、後述するTiNの例の他に、ステンレス等の基材でも実施できる。

【0041】
また、窒化処理法における高密度窒素系活性種供給法の技術を、MOCVD等の基材表面での窒素化合物膜の生成に適用することができる。本発明の窒素化合物の製造方法は、GaN、InGaN、InN、あるいはAlN、及びその混合組成のいずれかからなる窒素化合物の薄膜の製造に特に有用である。即ち、Ga、In、あるいはAlを有機金属蒸気として輸送し、前記原料ガスから生成される窒素系活性種を多く含むプラズマと、気相あるいは基板上で反応させることにより、GaN、InGaN、InN、あるいはAlN、及びその混合組成のいずれかからなる窒素化合物の薄膜を、700℃以下の低温にて前記基材上にエピタキシャル成長させることができる。

【0042】
本発明のマイクロ波プラズマ窒化方法及び該方法で使用する装置について、以下に具体的に説明する。

【0043】
ノズルの形状は、矩形、円形、または矩形と円形の中間の形でも良いし、様々な形状にすることができる。細長いスリット形状が望ましい。
高い圧力におけるマイクロ波プラズマ装置では、ノズルの断面面積が大きいと、マイクロ波電界とプラズマとのエネルギー結合が強くなり、プラズマが高温になる。高い圧力においても、安定した低温プラズマを得るためには、マイクロプラズマの生成が望ましい。マイクロプラズマとは、放電ギャップの距離が1mm以下である空間で生成するプラズマをいう。
本発明では、マイクロ波を用いてマイクロプラズマを生成するために、マイクロ波の伝播方向に対して垂直な面にノズルを設けて、マイクロ波の電界がかかる方向(ベクトル方向)のノズルの開口を1mm以下にすることが好ましい。
したがって、本発明では、マイクロ波を用いてマイクロプラズマを安定に生成させると共に、かつ大面積プロセス領域を実現するため、ノズルの形状として1mm以下の隙間を持つ、細長いスリット形状が望ましい。

【0044】
プラズマを生成するマイクロ波としては、900MHzから5GHzまでの間の周波数を持つ電源が包含される。マイクロ波の波形は連続波でも良いし、パルスでも良い。

【0045】
本発明では、マイクロ波をノズルに印加するためのマイクロ波の伝送線路として、マイクロストリップ線路、または、ストリップ線路を用いる。マイクロ波の伝送線路として、マイクロストリップ線路、または、ストリップ線路を用いることにより、ノズルのところに局所的にマイクロ波の電界を集中させることが可能となり、高い圧力においても低温のプラズマを生成することができる。
また、板状の誘電体基板に、マイクロストリップ線路又はストリップ線路と、ノズルとを設けるので、これらを複数にアレイすることができる。これにより、プラズマCVD処理面積を大規模化することができる。
ここで、マイクロストリップ線路とは、裏面に導体面を形成した誘電体基板の表面に導体線路を形成した構造を持ち、電磁波を伝搬する伝送線路の一種である。ストリップ線路とは、誘電体の表面と裏面に導体箔を形成し、誘電体の内部に導体線路を形成した構造を持ち、電磁波を伝搬する伝送線路の一種である。

【0046】
本発明では、マイクロ波の伝送線路として、通常の導波管を用いることもできる。導波管を用いる場合は、構造上、プラズマCVD処理領域がスポットとなり、狭い領域にスポット状にプラズマCVD処理を行うことが可能であるが、プラズマCVD処理面積の大規模化が難しく、工業用量産技術としては限界がある。
例として、矩形導波管を用いた吹き出し形のマイクロ波プラズマ生成することができる。導波管を垂直に貫通する石英等のガス管を設け、ガス管内またはノズルに、マイクロ波の電界を集中させることにより、プラズマを生成する。使えるノズルの直径は、導波管におけるマイクロ波の波長により決まり、2.45GHzを用いる場合は10mm以下である。それ以上の直径では、プラズマ生成が難しくなる。また、この例では、構造上、ノズルをアレイ化して設けることが困難であるため、プラズマ窒化処理面積を大規模化することが難しい。

【0047】
本実施の形態では、前述の輻射熱からプラズマ源を保護するために、プラズマ源の過熱や熱損傷を防止する手段を講じている。例えば、冷却手法として、ヒーターからの輻射熱によって得られたプラズマ源の熱を、容器を通して容器の外部へ逃がす構造をとるとよい。具体的には、プラズマ源を容器の一部に接触させる。プラズマ源は、より具体的には、誘電体基板、マイクロストリップ線路、ノズル等を含むマイクロ波プラズマ生成装置である。

【0048】
本発明の実施の形態は、その基材温度、ガス流量、処理時間などは特に限定されないが、低温(基材温度800℃以下)で窒化処理や窒素化合物の製造が可能である。また、本発明の実施の形態は、雰囲気圧力1kPa以上に設定する工程である。また、本発明の実施の形態では、例えば、窒素系ガスの流量が1-5L/minであり、基材へのプラズマ照射が2時間以下とすることができる。

【0049】
本発明の実施の形態では、基材を、連続的又は逐次的に、前後に移動させながら、もしくは回転移動をさせながら、高密度の窒素系活性種を照射処理することにより、窒化層の大面積及び連続的作製をすることができる。

【0050】
(実施の形態1)
本実施の形態においては、チタン金属を基材とし、吹き出し形のプラズマを生成することができるマイクロ波プラズマ生成装置を、容器内に設置して、1kPa以上の圧力において基材表面の窒化を行った。以下に本実施の形態で用いた窒化方法の詳細を述べる。

【0051】
本実施の形態では、図1に示した装置を用いる。金属製の容器(10)内にマイクロ波プラズマ生成装置を配置する。ノズル(7)は、誘電体基板(4)の一方の端の端面に設けた線状の矩形ノズルである。ノズル(7)は、原料ガスとともにマイクロ波の印加により生成されたプラズマが幅広に一様に吹き出るように、スリット形状を有している。

【0052】
本実施の形態では、前述の輻射熱からプラズマ源を保護する方法を採用している。本実施の形態では、冷却手法として、図1に示すように、プラズマ源を容器の一部に接触させることにより、ヒーターからの輻射熱によって得られたプラズマ源の熱を、容器を通して容器の外部へ逃がすことで、プラズマ源の過熱及び熱損傷を防止している。

【0053】
(実施例1)
本実施の形態の一実施例として、スリット形状を有し、断面のサイズが幅50mm×隙間0.5mmのノズルを用いて実施した。容器(10)の内部に、厚さ1mmで大きさが25mm×25mmのチタン基材(5)をマイクロ波プラズマ生成装置のノズル(7)の真下に、ノズルの幅が基材の長手方向と一致するように設置し、プラズマCVD処理を行った。処理手順は以下の通りである。
容器(10)内に設けられた基材台(6)にチタン基材(5)を設置した。ノズル(7)とチタン基材(5)との距離が3mmになるように基材台(6)の高さを調整した。次に、排気管(8)を通して容器(10)の排気を行った。
次に、容器(10)内に、ガス導入用フランジ(12)、ガス導入管(9)、誘電体基板(4)内のガス流路(表示せず)、及びノズル(7)を通して、窒素ガスを2L/minで導入した。容器(10)内の圧力を、排気管(8)に接続した圧力調整バルブを用いて2.66kPaに保持した。
次に、マイクロ波導入用フランジ(11)と同軸ケーブル(2)から、マイクロ波(パワー60W)を導入した。マイクロ波は、マイクロストリップ線路(3)が設けられている誘電体基板(4)内を伝搬し、誘電体基板(4)の端部のノズル(7)の内部及び/又はノズル(7)の端に印加されて、プラズマを生成した。
原料ガス(窒素ガス)を基にプラズマが生成され、原料ガスの流れと共に、チタン基材(5)に向かって高密度窒素系活性種が拡散した。この拡散した領域が、ノズル(7)とチタン基材(5)との間の空間に位置する、図1に示している高密度窒素系活性種領域(1)である。処理時間を1時間、基材を設置している基材台温度を800℃とした。
ノズルのスリット方向においては、プラズマ生成領域はほぼ50mmであった。また、ノズル(7)から吹き出た発光部は基材表面まで到達している。
図3に、本実施例1の条件でプラズマ生成した際の写真を示す。図中、基材台に配置された基材と、プラズマ源のノズルとの間の空間に、発光が見られる。分光計測結果から、窒素原子と窒素系活性種が生成されていることが確認された。このことから、高密度窒素系活性種領域(1)の生成を確認することができた。

【0054】
よって、ガス圧を中間圧力以上(1kPa以上)で、基材に直接に電圧を印加する必要もなく、かつ、マイクロ波の投入エネルギーが500ワット以下(本実施例ではさらに少ない60ワット以下で実現)で、一様な高密度窒素系活性種領域をプラズマ源から基材表面まで生成し、該生成された窒素系活性種を基材に照射する本発明の方法により、短時間のプラズマ処理で均一な窒素化合物の生成が確認できた。

【0055】
(実施例2)
本実施の形態の一実施例として、実施例1と同様の装置により、チタン基材の窒化処理を実施した。
図4に、窒化処理を行う前(a)と後(b)のチタン表面の写真を示す。窒化処理後は、金色となり均一に処理されていることがわかる。ここで、黄金色となるのは、窒化がなされていることを意味する。本実施例の生成条件は、マイクロ波パワー100ワット、ガス圧力2.66kPa、窒素ガス流量1L/min、処理時間を1時間、基材を設置している基材台温度を800℃、ノズル(7)とチタン基材(5)との距離が3mmである。
図5に、顕微ラマン分光装置(RENISHAW)を用いて計測された、本実施例で得られた窒化層のラマン分光スペクトルの測定結果を示す。図中、(1)はプラズマ窒化処理後、(2)はプラズマ窒化処理前を示す。図から、200cm-1、330cm-1、550cm-1にTiNの代表的なピークが確認される。
図6に、本実施例で得られた窒化層のX-Ray diffraction (XRD)の測定結果を示す。測定結果から、TiNのピークが確認された。

【0056】
(実施例3)
本実施の形態の一実施例として、実施例1と同様の装置により、チタン基材の窒化処理を実施した。本実施例では、2.66kPa、60ワットで、窒化処理を行った。窒化処理後のチタン表面の硬度を、nano indentation tester (ElIONIX ENT1100a(装置名)を用いてナノインデンテーション法により硬さ計測した結果、16GPaのマルテン硬度であり、従来の窒化方法と同程度の硬度であった。従って、従来技術より10分の1以下の大幅な低消費電力での同等の硬度を示す窒化処理方法を提供することができた。

【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態では、ノズルの角度以外は実施の形態1と同様の装置で、チタン基材の窒化処理を実施した。本実施例では、ノズルの角度を基材に対して斜めに射出する。
図7に、本実施例の窒化方法の模式図を示す。図では、基材の法線に対して45度傾斜したノズルを配置して、ノズルから、45度の入射角度で基材に対して窒素系活性種を照射する場合である。ノズルを傾斜させることにより、生成された窒素系活性種の照射領域を変化させること、またGa、In、あるいはAlを有機金属の蒸気ガス流による窒素系活性種の拡散抑制の点で効果がある。なお傾斜角度は±45度の範囲が好ましい。

【0058】
(実施の形態3)
本実施の形態は、大面積処理に対応可能な窒素化合物の製造方法である。図8に、多ノズル方式の大面積用の装置を示す。実施の形態1と同様の装置のノズルを多数ライン状に並べて配置する。図8に示すように、マイクロストリップ線路とガス流路とをアレイ状にし、長さ200mmのスロット形状のノズルにプラズマが生成するプラズマ源(106)を複数設けることにより、プラズマ処理面積を大面積にしている。複数のプラズマ源は、金属製の大面積用容器の上部面に並列設置されている。基材(55)は、大面積用容器(104)内の前後移動ないしは回転が可能な基材を設置するための温度調節が可能な基材台(54)上に設置される。容器は、排気部(53)を備える。図の上段に、プラズマ源(106)の1個の構造を示す。ガス1(51)及びマイクロ波(50)をプラズマ源上部に供給する。プラズマ源を容器の一部に接触させることにより、ヒーターからの輻射熱によって得られたプラズマ源の熱を、容器を通して容器の外部へ逃がすことで、プラズマ源の過熱及び熱損傷を防止している。
それぞれのプラズマ源に、原料ガス(ガス1(51))として窒素系ガスをガス導入部から供給する。ガス2(52)(TEInやTMGaなどの有機金属ガス)を必要に応じ容器の他の位置から供給する。大面積用容器(104)内の圧力は、圧力調整バルブを制御し、1kPa以上に保持する。それぞれのプラズマ源にマイクロ波パワーを印加し、ノズルから射出される窒素系活性種領域(105)により処理を行う。

【0059】
MOCVD結晶成長において一般的な10kPa程度のガス圧力領域にてInGaNの結晶成長を行うためには、当該ガス圧力領域において窒素系活性種を結晶成長部に供給する必要がある。図8に示した装置により、MOCVDによる基材上へのエピタキシャル結晶成長を実施できる。本実施の形態では、図8に示したガス1(51)を供給するとともに、ガス2(52)を供給し、ガス1(51)から生成される窒素系活性種と、ガス2(52)を、化学反応させて、基材(55)上に気相成長させる。例えば、気圧10kPa程度で安定なプラズマ源を用い、アンモニア(ガス1(51))を供給して分解し、キャリアガス(ガス1(51))とともに窒素系活性種を基板近傍まで輸送するとともに、In、GaなどIII族元素を、TEIn(トリエチルインジウム)やTMGa(トリメチルガリウム)などの有機金属(ガス2(52))として供給することにより、低温で、緑色LED等に必要な窒化InGaNを低温で成長させる。本発明のMOCVDによれば、長時間安定性、耐温度、活性種生成特性に優れ、更に面一様性にすぐれた窒素系プラズマの発生により、低温で成膜できる。

【0060】
(実施の形態4)
本実施の形態は、図1に示すように、活性種計測部(13)を設ける場合に関する装置及び方法に関する。前記活性種計測部を設けることで、図2(c)の領域における窒素系活性種の量を計測することを可能とさせ、更にその窒素系活性種の量に基準値を設け、その基準値の値よりも小ないしは大に制御することで、より目的のプロセスに適した窒素系活性種の量を基材表面に提供することが可能となる。

【0061】
上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、鉄鋼やチタンなどの表面を窒化することによる表面改質法として利用可能である。例えば、スピンドルやギア等の工作機械部品や、タービンや燃料噴射ノズル等の内燃機関部品、パワーショベル等の減速機ギアや、航空機や自動車部品、医療用部品への窒化処理等、様々な分野への応用が可能である。また、MOCVDなどの高密度窒素系活性種供給法としても産業上有用である。
【符号の説明】
【0063】
1、105 窒素系活性種領域
2 マイクロ波伝送用同軸ケーブル
3 マイクロストリップ線路
4 誘電体基板
5、55 基材
6、54 基材台
7 ノズル
8 排気管
9 ガス導入管
10 容器
11 マイクロ波導入用フランジ
12 ガス導入用フランジ
13 活性種計測部
50 マイクロ波
51 ガス1
52 ガス2
53 排気部
104 大面積用容器
106 プラズマ源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7