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明細書 :劣化検知センサ付き軸受

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3834612号 (P3834612)
公開番号 特開2003-065329 (P2003-065329A)
登録日 平成18年8月4日(2006.8.4)
発行日 平成18年10月18日(2006.10.18)
公開日 平成15年3月5日(2003.3.5)
発明の名称または考案の名称 劣化検知センサ付き軸受
国際特許分類 F16C  19/52        (2006.01)
F16C  33/62        (2006.01)
F16C  33/64        (2006.01)
C23C  14/06        (2006.01)
FI F16C 19/52
F16C 33/62
F16C 33/64
C23C 14/06 P
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2001-256865 (P2001-256865)
出願日 平成13年8月27日(2001.8.27)
審査請求日 平成15年3月24日(2003.3.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】廣瀬 伸吾
【氏名】碓井 雄一
【氏名】是永 敦
【氏名】間野 大樹
【氏名】森 和男
審査官 【審査官】冨岡 和人
参考文献・文献 特開平11-148803(JP,A)
特開平06-193637(JP,A)
特開平07-127644(JP,A)
特開2001-311427(JP,A)
調査した分野 F16C 19/52
F16C 33/62
F16C 33/64
特許請求の範囲 【請求項1】
軸受の転動体が接触する軌道面上に、非導電性材料と導電性材料を積層して形成したセンサ薄膜を設けたことを特徴とする劣化検知センサ付き軸受。
【請求項2】
センサ薄膜の導電性材料に付随して設けた複数の電極に電気抵抗測定器を接続したことを特徴とする請求項1記載の劣化検知センサ付き軸受。
【請求項3】
センサ薄膜をスパッタリングにより形成したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の劣化検知センサ付き軸受。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、ロボット、工作機械、電気機器、半導体製造分野等、軸受を用いたすべての分野に利用可能な摩耗及びはく離等による劣化を検知する劣化検知センサ付き軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の軸受は、高炭素鋼が主に使われており、一部、窒化物Si3N4を母材として使用している。また、あまり実用化されていないが、薄膜を軸受にコーティングさせることにより軸受本来の機能を付加させることが試みられている。例えば、一部の製品において、メッキや物理気相堆積法(PVD)、化学気相堆積法(CVD)等の薄膜堆積法を用いて、摩耗に対する強度を増すためにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜の硬質材料を堆積させたり、錆止めとしてスズをメッキさせたりしている。
【0003】
また、電車の主電動機用軸受のように電食の発生を防ぐために絶縁樹脂やセラミックを軸受外部にコーティングさせたもの、あるいは半導体製造装置などの真空中での軸受からの出ガスを防ぐために転動体に銀コーティングを施しているものがある。
【0004】
さらに、振動、音・アコースティックエミッションなどの間接的な手法を適用して軸受の損耗状況を計測しようとする試みはあるが、軸受の動作中において軸受軌道面を直接に観察して損耗度合いなどの情報を得ることは大変困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このため、機械の分野で大きな需要があるベアリング等の機械要素部品は、摩耗、疲労、発熱、長期使用による形状の損耗・欠損が生じ、その性能劣化を引き起こすため、予め交換のために同一形状の部品を多数用意しなければならなかった。 本発明は、センサ機能を軸受に付加させて軸受動作中に軸受自身が劣化状況を提示できるようにすることにより、劣化現象を正確に把握することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の劣化検知センサ付き軸受は、軸受の転動体が接触する転動面上に、非導電性材料と導電性材料を積層して形成したセンサ薄膜を設けたことを特徴とする。
また、本発明の劣化検知センサ付き軸受は、センサ薄膜の導電性材料に付随して設けた複数の電極に電気抵抗測定器を接続したことを特徴とする。
また、本発明の劣化検知センサ付き軸受は、センサ薄膜をスパッタリングにより形成したことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、スラスト玉軸受に本発明を適用した例を示したものであり、(a)は断面図、(b)は斜視図、(c)は分解図である。
スラスト玉軸受1は、内輪2,外輪3、転動体4及び保持器5を有している。このスラスト玉軸受1において、摩耗、疲労、発熱、損耗、はく離等が生じるのは、転動体4及び内輪2、外輪3における軌道面8、8であるが、本発明においては、軌道面8、8に着目して、その劣化現象を正確に把握することを意図している。
【0008】
そのため、まず、絶縁層であるAl2O3をスパッタリングにより内輪2、外輪3における軌道面8、8上に形成する。スラスト玉軸受1が絶縁性のセラミックスであれば、有機洗浄を施した後、Al2O3をスパッタリングにより形成する。また、スラスト玉軸受1に導電性の高炭素綱を用いる場合も、有機洗浄を施した後、Al2O3をスパッタリングにより形成するが、スパッタリングだけでは絶縁性が不十分な場合には溶射によりAl2O3を堆積させた後、研磨し、平坦化する。その上でAl2O3をスパッタリングにより堆積させるとより高い絶縁性が得られる。
【0009】
次に、導電層で硬質な膜であるTiNをAl2O3膜上に堆積させる。導電層TiNをレーザを用いて一部除去させたり、あるいは、マスクを使って導電層TiN堆積を部分的に防ぐことによりパターニングを形成する。その際、電極7、7を軌道面8の内径および外径上に位置するようにいくつか設けておく。転動体4が直接接触する部分には電極7、7を形成しないようにして、軸受の回転精度に影響を与えないようにする。このようにして、図2(a)に示すように、非導電性センサ薄膜6-2および導電性センサ薄膜6-1からなるセンサ薄膜6が形成される。
【0010】
スラスト軸受の場合において、図1に示すように軸受の軌道溝があるものとないものとを併用した場合、軌道溝がないものの方から摩耗や欠損が発生するため、センサ薄膜6は平板形状の軌道溝がない方(図1においては外輪3)に作成すれば良い。また、内輪2,外輪3ともに軌道溝があるものを用いた場合、両方にセンサ薄膜6を設けることでどちらから損耗や欠損が発生してもわかるようにする。
堆積させる非導電膜のAl2O3は、0.1μmから5.5μmでの使用が絶縁性を保ちつつ、耐摩耗性に優れた特性が得られ、また、導電膜のTiNは、0.1μmから3.4μmの膜厚において良好な導電性と耐摩耗性に優れた特性が得られることから、センサ膜としてこの範囲での使用が望ましいといえる。
【0011】
また、転動体4に絶縁材料のSi3N4球を用い、かつ潤滑油も絶縁性の液体を使用すれば、軌道面8から転動体4への電流漏れを防ぐことができる。さらに、上記したように軸受1とセンサ構造との間にAl2O3絶縁層を形成しておくことにより、下地の軸受部分への電流漏れを防ぐ空間的構造としている。
【0012】
図2は、センサ付きスラスト玉軸受1の動作状況を示したもので、10は電気抵抗測定器、11、11は電極7,7と電気抵抗測定器10とを接続する導線である。
軸受を回転動作させ続けると、転動体4の軌道面8に堆積させたセンサ薄膜6においても摩耗やはく離などの劣化現象が起こる。したがって、軸受が正常にハウジングされていて、適切な潤滑油の選択を行っていた場合、軸受の劣化は、センサ薄膜6の両端での電気抵抗を測定することにより把握することができる。
いま、図2(a)のように、軸受の回転動作をさせながら、電極7、7間の電気抵抗を電気抵抗測定器10により測定するようにすると、摩耗現象により徐々にTiN層が薄くなってきたりして、電極7、7間での電気抵抗が増加することを検知することができる。
この状況を示したのが、図3である。図中、矢印左側がセンサ薄膜もしくは軌道面損耗開始時を、また、矢印右側が軌道面全域にわたる損耗時を示している。
こうした軌道面8上の膜構造、線幅、膜厚、電極位置は事前に設定して堆積させたものであり、初期状態の電気抵抗を把握しておくことにより、軸受の使用状態における電気抵抗の変化を通じてセンサ膜6の摩耗量等を定量的に評価することができる。
【0013】
また、図2(b)に示したように複数の測定電極7、7位置にまたがって複数の電気抵抗を測定できるように複数の並列回路を設定しておき、スイッチの切り替えを行うことにより、所定の場所における電気抵抗が測定できるから、測定対象の軌道面8内における摩耗、はく離等の起きている位置や摩耗量、はく離量等を定量的に評価することができる。
さらに、図2(c)に示したようにセンサ薄膜を複数層形成し、各層6、6′における電気抵抗の変化を測定することにより、摩耗やはく離の膜の堆積厚さ方向への進行状態を定量的に評価することができる。
また、図2(d)に示したように軌道面8をまたいで接続した場合は、電気抵抗が無限大となったときに、センサ薄膜6の摩耗が軌道面8全域にわたって断線したことが検知できる。
【0014】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)軸受などの回転動作を有する構造体の正常動作状態下において、摩擦、摩耗、はく離などの劣化過程をインプロセスで定量的に検知することができるので、機械要素部品の寿命や交換時期を把握することができる。
(2)軸受の劣化は使用条件に応じて異なるものであるが、本発明のように、軸受側から劣化信号を送出させることにより、軸受使用時の最適条件を軸受自身が提示できる。
(3)通常、転動体と内輪あるいは外輪との軌道面における接触圧力は非常に大きいが、このような接触面の情報を直接検知することにより、このような状況における物理現象の解明に役立てることができる。
(4)センサ薄膜として機械的強度の大きい材料を用いることにより、軸受軌道面の保護、強化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラスト玉軸受に本発明を適用した例を示したものであり、(a)は断面図、(b)は斜視図、(c)は分解図である。
【図2】センサ付きスラスト玉軸受の動作状況を示したもので、(a)は電気抵抗測定個所を軌道面の円周方向に1個所設けた場合、(b)は電気抵抗測定個所が2個所の場合、(c)は複数のセンサ薄膜を設け、それぞれのセンサ薄膜の電気抵抗を測定する場合、(d)は電気測定個所を軌道面をまたいで1個所設けた場合、を示したものである。
【図3】図2(a)についての電気抵抗の経時的変化を示した図である。
【符号の説明】
1 スラスト玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 センサ薄膜
6-1 導電性センサ薄膜
6-2 非導電性センサ薄膜
7 電極
8 軌道面
10 電気抵抗測定器
11 導線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2