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明細書 :紫外線反射剤組成物及び撥水剤組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-193352 (P2018-193352A)
公開日 平成30年12月6日(2018.12.6)
発明の名称または考案の名称 紫外線反射剤組成物及び撥水剤組成物
国際特許分類 A61K   8/35        (2006.01)
A61Q  17/04        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
A61K  35/64        (2015.01)
C09K   3/18        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI A61K 8/35 ZNA
A61Q 17/04
A61Q 19/00
A61K 35/64
C09K 3/18 101
C09K 3/00 U
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2017-100693 (P2017-100693)
出願日 平成29年5月22日(2017.5.22)
発明者または考案者 【氏名】二橋 亮
【氏名】川口 研
【氏名】針山 孝彦
【氏名】山濱 由美
【氏名】石井 大佑
【氏名】矢嶋 俊介
【氏名】三木 玲香
【氏名】森 直樹
出願人 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087871、【弁理士】、【氏名又は名称】福本 積
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100117019、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 陽一
【識別番号】100150810、【弁理士】、【氏名又は名称】武居 良太郎
【識別番号】100164563、【弁理士】、【氏名又は名称】佐々木 貴英
審査請求 未請求
テーマコード 4C083
4C087
4H020
Fターム 4C083AC211
4C083BB60
4C083CC03
4C083CC19
4C083EE17
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB21
4C087CA06
4C087CA19
4C087CA37
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4H020BA05
要約 【課題】紫外線反射作用及び撥水作用を有する組成物の提供。
【解決手段】2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つを含む、紫外線反射剤組成物又は撥水剤組成物。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を含む、紫外線反射剤組成物。
【請求項2】
対象に適用された場合における、波長が400nm以下の紫外線に対する分光反射率が30%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を含む、撥水剤組成物。
【請求項4】
対象に適用された場合における水接触角が150°以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
2-ペンタコサノンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
皮膚外用組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
対象を紫外線から保護するための方法であって、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を対象に適用することを含む、方法。
【請求項8】
対象を撥水処理するための方法であって、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を対象に適用することを含む、方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線反射剤組成物及び撥水剤組成物に関する。また本発明は、対象を紫外線から保護するための方法、及び対象を撥水処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光中の紫外線は、過度に浴びると皮膚に紅斑や水疱を形成し、色素沈着を生ずるなどの悪影響をもたらす。また、長期にわたって紫外線を浴びることにより、皮膚の老化が促進され、しみ、そばかす、しわ、更には皮膚癌の一因となることが知られている。紫外線による肌への悪影響を防ぐために、抗紫外線作用を有する薬剤が求められている。例えば、酸化チタンや酸化亜鉛のような紫外線反射作用を有する金属酸化物を含む組成物が日焼け止め用の化粧料に使用され得ることが報告されている(特許文献1)。しかし、酸化チタンや酸化亜鉛の使用によって毒性が観察されることが報告されている(非特許文献1及び2)。
【0003】
また、化粧品分野において対象に撥水性を付与することができる薬剤が求められている。例えば、皮膚化粧料としてのクリーム、乳液や、メーキャップ化粧料としての乳化ファンデーション、化粧下地や、毛髪化粧料としてのヘアクリーム、ヘアトリートメントなどに用いることができる、シリコーン油を含む撥水性化粧料が報告されている(特許文献2)。
【0004】
シオカラトンボは、日本で最も普通に見られるトンボの一種である。かつては漢方薬として使用されていたことが知られている(非特許文献3)。したがって、当該シオカラトンボの成分には毒性が無く、安全であると考えらえる。
【0005】
未成熟のシオカラトンボは、オス及びメスともに麦わら色をしているが、オスは成熟すると全身が明るい水色へと変化し、日差しの強い水辺で縄張りを作る。メスは成熟しても体色があまり変化しないが、腹部腹側が白くなる。また老熟個体では、オス及びメスともに全体的に白味が強くなることが知られている。このような色の変化は、体表面のナノ構造の違いによって引き起こされる(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2011-236182号公報
【特許文献2】特開平6-145023号公報
【0007】

【非特許文献1】Wang et al., 2007. Acute toxicity and biodistribution of different sized titanium dioxide particles in mice after oral administration. Toxicology Letters, 168(2): 176-185
【非特許文献2】Wang et al., 2008. Acute toxicological impact of nano- and submicro-scaled zinc oxide powder on healthy adult mice. Journal of Nanoparticle Research, 10(2): 263-276
【非特許文献3】Corbet, P.S.,「Dragonflies, Behavior and Ecology of Odonata」, 1999, Cornell University Press, p. 560
【非特許文献4】二橋 亮、「Molecular mechanisms underlying color pattern diversity in dragonflies」、[online]、2016年3月30日、産総研-理研 合同セミナー[2017年4月1日検索]、インターネット[URL: http://biodata.aist.riken.jp/seminar]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、紫外線反射作用及び/又は撥水作用を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは驚くべきことに、オス成熟シオカラトンボがワックスに覆われており、構造色で白くなっていること、そして当該ワックスが紫外線を反射することを見出した。さらに、オス成熟トンボ表面上に存在するワックスの構成成分である特定の長鎖脂肪族アルデヒド及びケトンが強い紫外線反射能及び高い撥水性を有することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の[1]~[10]を含む。
[1]
2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を含む、紫外線反射剤組成物。
[2]
対象に適用された場合における、波長が400nm以下の紫外線に対する分光反射率が30%以上である、[1]に記載の組成物。
[3]
2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を含む、撥水剤組成物。
[4]
対象に適用された場合における水接触角が150°以上である、[3]に記載の組成物。
[5]
2-ペンタコサノンを含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[6]
皮膚外用組成物である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の組成物。
[7]
対象を紫外線から保護するための方法であって、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を対象に適用することを含む、方法。
[8]
対象を撥水処理するための方法であって、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を対象に適用することを含む、方法。
[9]
前記化合物は、前記化合物の溶液を基板上へ繰り返し滴下することによって形成される構造を有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載の組成物。
[10]
前記化合物は、前記化合物を融解後、冷却することによって形成される構造を有する、[1]~[6]のいずれか1つに記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本発明の組成物の適用対象に紫外線反射性を付与することができるため、当該適用対象を紫外線から保護することができる。また、当該適用対象に撥水性を付与することもできる。本発明の組成物は、例えば化粧品や塗料などの分野で使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、オス及びメスのシオカラトンボの腹部第五節の背側(D5)及び腹側(V5)の分光分布(平均値±SD(%))を示す。
【図2】図2は、シオカラトンボの腹部第五節の背側又は腹部の接触角測定の結果を示す。
【図3】図3は、オスのシオカラトンボの腹部第五節断面の背側のSEM画像を示す。
【図4】図4は、オスのシオカラトンボの腹部第五節の背側をクロロホルム又はヘキサンで抽出した抽出物の、GC-MSによるトータルイオンクロマトグラム(TIC)を示す。
【図5】図5は、オスのシオカラトンボの腹部第五節の背側及び腹側をクロロホルムで抽出した抽出物の、GC-MSによるTICを示す。
【図6】図6は、オスのシオカラトンボの腹部第五節の背側及びメスのシオカラトンボの腹部第五節の腹側をクロロホルムで抽出した抽出物の、GC-MSによるTICを示す。
【図7】図7は、オスのシオカラトンボの腹部第五節の背側をクロロホルムで抽出した抽出物、及び実施例5で合成された2-ペンタコサノンの、GC-MSによるTICを示す。
【図8】図8は、実施例5(4)で合成された2-ペンタコサノンの結晶2~4の分光分布を示す。
【図9】図9は、実施例5(4)で合成された2-ペンタコサノンの結晶2~4の接触角測定の結果を示す。
【図10】図10は、実施例5(4)で合成された2-ペンタコサノンの結晶2~4のSEM画像(上側の画像は倍率500倍、下側の画像は倍率5000倍)を示す。比較のため、オスのシオカラトンボの腹部第五節の背側の表面のSEM画像を示す。
【図11】図11は、シオカラトンボの遺伝子発現解析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様は、2-ペンタコサノン(C2550O)、2-ヘプタコサノン(C2754O)、2-ノナコサノン(C2958O)、テトラコサナール(C2448O)、ヘキサコサナール(C2650O)、オクタコサナール(C2854O)及びトリアコタナール(C3060O)から選択される少なくとも1つの化合物(以下で「本発明の組成物の有効成分」とも呼ぶ)含む、紫外線反射剤組成物である。以下で「本発明の紫外線反射剤組成物」とも呼ぶ。

【0014】
本明細書において「紫外線反射剤組成物」とは、紫外線反射剤として機能する物質を含み、当該組成物の適用対象に紫外線反射性を付与するために使用される組成物であって、当該適用対象を紫外線から保護するために使用される組成物のことである。

【0015】
また本発明の一態様は、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を含む、撥水剤組成物である。以下で「本発明の撥水剤組成物」とも呼ぶ。

【0016】
本明細書において「撥水剤組成物」とは、撥水剤として機能する物質を含み、当該組成物の適用対象に撥水性を付与するために使用される組成物のことである。

【0017】
「本発明の紫外線反射剤組成物」及び「本発明の撥水剤組成物」を合わせて、「本発明の組成物」とも呼ぶ。

【0018】
一実施形態において、本発明の紫外線反射剤組成物は、当該組成物の適用対象に撥水性を付与するために使用されてもよい。また別の実施形態において、本発明の撥水剤組成物は、当該組成物の適用対象に紫外線反射性を付与するために使用されてもよい。

【0019】
本明細書において「紫外線」とは、波長100~400nmの電磁波であり、波長の長さに基づいて、長波長域紫外線(400~315nm、UVAとも呼ばれる)、中波長域紫外線(315~280nm、UVBとも呼ばれる)、および短波長域紫外線(280~100nm、UVCとも呼ばれる)に分類される。紫外線は、波長が短いほど生体に対する傷害作用、例えば過酸化反応や遺伝子傷害による細胞傷害性が高く、波長が長いほど皮膚の深部に影響することが知られている。一方、中波長域紫外線UVBの一部と短波長域紫外線UVCは大気圏上のオゾン層で吸収され、地表に届く紫外線は長波長域紫外線UVAと少量のUVBである。

【0020】
本発明の紫外線反射剤組成物を対象へ適用した場合における分光反射率は、好ましくは、波長が400nm以下の紫外線に対して、10%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、50%以上又は60%以上である。本明細書における分光反射率は、分光測定器(例えば、HR2000+, Ocean Optics, Inc., USA)や顕微分光測定器(例えば、CRAIC Technologies, Inc., USA)を用いて測定される。

【0021】
本発明の撥水剤組成物を対象へ適用した場合における水接触角は、好ましくは、100°以上、110°以上、120°以上、130°以上、140°以上又は150°以上である。本明細書において「水接触角」は、固体表面と当該固体表面に形成された水滴との接触部分がなす角度をいう。本明細書における水接触角は、接触角計(例えば、MCA-3:Kyowa Interface Science、Japan)を用いて測定される。

【0022】
本発明の組成物は、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を含み、好ましくは2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン及び2-ノナコサノンから選択される少なくとも1つを含み、より好ましくは2-ペンタコサノンを含む。

【0023】
本発明の組成物に含まれ得る長鎖脂肪族アルデヒド及びケトンは、天然物からの抽出物であってもよいし、既知の方法を組み合わせて人工的に合成された物であってもよい。

【0024】
一実施形態において、本発明の組成物は、成熟シオカラトンボの有機溶媒抽出物を含み、好ましくはオスの成熟シオカラトンボの有機溶媒抽出物を含む。使用される有機溶媒としては、例えば、ヘキサン及びクロロホルムが挙げられる。

【0025】
本発明の組成物は、有効成分である長鎖脂肪族アルデヒド及びケトンに加えて、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、製剤分野で通常使用される添加剤(例えば酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、保存剤、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、香料、油分、水、アルコール類、シリコーン類、保湿剤)を、一種類以上含んでもよい。

【0026】
本発明の組成物は、好ましくは皮膚外用組成物又は塗料組成物であり、より好ましくは皮膚外用組成物である。一実施形態において、前記皮膚外用組成物は化粧用組成物である。また、一実施形態において、前記皮膚外用組成物は日焼け止め組成物である。

【0027】
本発明の組成物の形態は特に限定されない。例えば、液状、乳液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状がある。本発明の組成物が化粧用組成物である場合、その形態としては、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め用化粧料、パック、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ボディーシャンプーのような洗浄用化粧料;ファンデーション、化粧下地、リップクリーム、口紅、チークカラーのようなメークアップ化粧料が挙げられる。

【0028】
本発明の組成物の有効成分は、当該組成物の適用対象に紫外線反射性を付与することができ、かつ/又は当該組成物の適用対象に撥水性を付与することができる限り、その形態に特に限定はない。また当該有効成分は、結晶であっても良いし、非晶質であってもよいし、又はそれらの混合物であってもよい。

【0029】
一実施形態において、本発明の組成物の有効成分は、前記有効成分の溶液を基板上へ繰り返し滴下することによって形成される構造を有する。溶媒としては特に限定されないが、例えばヘキサン及びクロロホルムが挙げられる。溶液の濃度としては、特に限定されないが、例えば0.1~100mM、0.2~50mM、又は0.5~10mMである。滴下間隔は結晶が析出する限り特に限定されないが、例えば60秒~180秒である。前記有効成分の微結晶に前記溶液を滴下した際に、当該微結晶が溶解する前に結晶成長させることが好ましい。使用される基板としては特に限定されないが、例えば金属(鉄、銅、アルミ、ニッケル、亜鉛、ステンレスなど)、ガラス又はプラスチック製のプレートなどが挙げられる。滴下時の温度としては、例えば0℃~50℃、又は5℃~40℃である。

【0030】
別の実施形態において、本発明の組成物の有効成分は、前記有効成分を融解後、冷却することによって形成される構造を有する。冷却温度は特に限定されないが、例えば、-10℃以上~有効成分の融点未満の温度である。融解温度から冷却温度に至るまでに時間は特に限定されないが、例えば1秒~1時間、1秒~30分又は1秒~10分である。

【0031】
本発明の一態様は、対象を紫外線から保護するための方法であって、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を対象に適用することを含む、方法である。また本発明の別の一態様は、対象を撥水処理するための方法であって、2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン、2-ノナコサノン、テトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールから選択される少なくとも1つの化合物を対象に適用することを含む、方法である。両者を合わせて、「本発明の方法」とも呼ぶ。

【0032】
本明細書において「適用する」は、適用対象の所定箇所に適用物質を付着できるような方法であれば、いずれの方法をも含む。例えば、適用すべき物質を適用対象に塗布したり、噴霧したりなどすることにより行われる。

【0033】
本発明の組成物が適用される対象、及び本発明の方法における対象としては、特に限定されないが、例えば各種材料(例えば紙、金属、木、ガラス、プラスチック、コンクリート、セラミックス)、及び動物対象(例えばヒト)が挙げられる。好ましくはヒトであり、より好ましくはヒトの皮膚である。

【0034】
以下に示す実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
【実施例】
【0035】
実施例1
シオカラトンボの腹部第五節の背側及び腹側の分光反射測定
外科的に分割されたシオカラトンボの腹部第5節の腹側部及び背側部を、分光反射測定のために使用した。小領域からの分光反射を、分光測定器(HR2000+, Ocean Optics, Inc., USA)を用いて測定した。反射された分光放射を、白色反射標準(Spectoralon USRS-99-010, Labsphere Inc., USA)を用いて正規化することによって、相対的分光反射率へと変換した。結果を図1に示す。成熟シオカラトンボの背側部において、特に高い分光反射率を示した。
【実施例】
【0036】
実施例2
シオカラトンボの腹部第五節の背側及び腹側における水接触角の測定
サンプルの表面上の水の微小液滴の接触角に基づいて、撥水性を評価した。各試料をガラス基板上に固定した後に、サンプルの表面に蒸留水の水微小液滴(約1.0nL)を置いた。顕微鏡の接触角計(MCA-3:Kyowa Interface Science、Japan)を用いて、高速カメラHAS-220(Ditect、Japan)を用いて直ちに液滴の形状を記録した。結果を図2に示す。
【実施例】
【0037】
成熟オスの背側及び成熟メスの腹側において高い接触角を示した。成熟オスの背側部に対して有機溶媒処理をした場合、接触角が低下した。特にクロロホルムで処理された部位は、当該部位表面に存在するワックスが全て溶出するため、接触角が特に低下した。
【実施例】
【0038】
実施例3
オスのシオカラトンボの腹部第五節断面の背側の走査型電子顕微鏡(SEM)観察
シオカラトンボからS5断片を切除し、さらに腹側部及び背側部へと分離した。当該表面のワックスを維持するために、溶液処理を行わずに、アルミニウム試料テーブル上に接着されたカーボンテープ上に背側部を置き、ホローカソードプラズマCVD(HPC-1SW, Vacuum Device Inc., Japan)を用いて2~3nmのオスミウムの薄層でコーティングした。加速電圧5kVにて、Hitachi H-4800走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った。結果を図3に示す。図3においてWax1層はヘキサンに可溶な層である。Wax2層はヘキサンに難溶だが、クロロホルムに可溶な層である。
【実施例】
【0039】
実施例4
シオカラトンボの腹部第五節の有機溶媒抽出物のGC-MS分析
Agilent Technologies(Palo Alto、CA)の6890N GCおよび5973inert MSを用いて、シオカラトンボの腹部第五節の有機溶媒抽出物のGC-MS分析を行った。 注入温度を250℃に設定した。 注射をスプリットレスモードで行った。 DB-5MS溶融シリカカラム(30μm×0.25mm内径、0.25μm膜厚、Agilent Technologies)で分離を行った。 オーブンの温度を、15℃/分で80℃(1分間保持)から320℃(3分間保持)に上昇するようにプログラムした。 ヘリウムを1.0ml /分の流速でキャリアガスとして使用した。 質量分析計は、電子イオン化(EI)を伴う走査モードで操作された。 イオン化電圧を70eVに設定した。 走査モードについては、イオン半径をm/z 20から600に設定した。結果を図4~6に示す。
【実施例】
【0040】
高い分光反射率を示すシオカラトンボのオス背側には、長鎖脂肪族ケトンである2-ペンタコサノン、2-ヘプタコサノン及び2-ノナコサノンと、長鎖脂肪族アルデヒドであるテトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールが含まれることが分かった(図4)。シオカラトンボのオス腹側においても上記ケトン及びアルデヒド成分が検出されたが、抽出物全量に占めるケトン成分の割合が、背側の場合と比較して低かった(図5)。シオカラトンボのメス腹側では上記のケトン成分はほとんど検出されず、長鎖脂肪族アルデヒドであるテトラコサナール、ヘキサコサナール、オクタコサナール及びトリアコタナールが主に検出された(図6)。シオカラトンボのメス背側では、上記長鎖脂肪族ケトン及び長鎖脂肪族アルデヒドのいずれも検出されなかった。
【実施例】
【0041】
実施例5
2-ペンタコサノンの合成及びその物性
(1)1-テトラコサナールの合成
乾燥CH2Cl2 (35 mL)中の1-テトラコサノール(395 mg, 1.11 mmol)及び粉末化されたモレキュラーシーブス4A(2.5 g)の懸濁液へ、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)(1.29 g, 5.97 mmol)を添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌した。当該混合物をセライトろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。フロリジル(florisil)(15 g)を通じてろ液と洗浄液をろ過し、ジエチルエーテル(200 mL)で洗浄し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル15g)にかけ、減圧濃縮し、目的物を白色固体として得た(290 mg, 0.82 mmol, 74%)。
GC tR = 23.7 分, MS m/z (%): 352 (M+, 2), 334 (18), 96 (78), 82 (100), 57 (93), 43(72).
【実施例】
【0042】
(2)2-ペンタコサノールの合成
(1)で得られた1-テトラコサナール((176 mg, 0.50 mmol)の乾燥THF(10mL)溶液を氷浴中で冷却した。温度が0℃に達した後、1.4 M CH3MgBrのTHF及びトルエン(1:3)混合溶液(1 mL, 1.4 mmol)を滴下した。溶液を0℃にて1.5時間撹拌した。飽和NH4Cl(5 mL)溶液を用いて反応をクエンチした。生成物をヘキサンで抽出した(3 × 20 mL)。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(シリカゲル15g、酢酸エチル:ヘキサン=1:5)にかけ、目的物を白色固体として得た(106 mg, 0.29 mmol, 58%)。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 3.79 (1H, sex, J=6.0 Hz, H-2), δ 1.18 (3H, d, J=6.0 Hz, H-1), δ 0.88 (3H, t, J=6.0 Hz, H-25).
【実施例】
【0043】
(3)2-ペンタコサノンの合成
乾燥CH2Cl2(20mL)中の、(2)で得られた2-ペンタコサノール(257 mg, 0.70 mmol)及び粉末化されたモレキュラーシーブス4A(1.0 g)の懸濁液へ、PCC(335 mg, 1.56 mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。当該混合物をセライトろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。フロリジル(florisil)(15 g)を通じてろ液と洗浄液をろ過し、ジエチルエーテル(200 mL)で洗浄し、減圧濃縮した。残渣をヘキサンから再結晶化して目的物を白色固体(「結晶1」とも呼ぶ)として得た(202 mg, 0.55 mmol, 76%)。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 2.41 (2H, d, J=7.6 Hz, H-3), δ 2.13 (3H, s, H-1), δ 0.88 (3H, t, J=6.4 Hz, H-25). GC tR = 24.3 min, MS m/z (%): 366 (M+, 21), 351 (8), 306 (7), 207 (8), 71 (55), 59 (100), 43 (66).
融点:約77℃。
【実施例】
【0044】
GC-MSによる2-ペンタコサノンの結晶1のTICを図7に示す。
【実施例】
【0045】
(4)異なる表面構造を有する2-ペンタコサノン結晶を用いた検討
実施例5(3)で得た2-ペンタコサノンの1mM/Lヘキサン溶液(1μL)をガラス基板に滴下した。乾燥後に再度1μL滴下した。この操作を5回繰り返すことで(滴下してから次の滴下までの時間間隔:120秒)、結晶を得た。得られた結晶を「結晶2」とする。
【実施例】
【0046】
また、実施例5(3)で得た2-ペンタコサノン(1mg)をガラス基板上にとり、80度に加熱して融解させた後、0度の冷却板にガラス基板ごと乗せて冷却した。瞬時に結晶が成長した。得られた結晶を「結晶3」とする。
【実施例】
【0047】
また、実施例5(3)で得た2-ペンタコサノン(1mg)をガラス基板上にとり、80度に加熱して融解させた。その後、76度のホットプレートに乗せて約3分かけて徐々に冷却して結晶を成長させた。得られた結晶を「結晶4」とする。
【実施例】
【0048】
結晶2~4の分光反射を、正立顕微鏡(Nikon Eclipse E-400, Nikon Co. Ltd., Japan)を備えた顕微分光測定機(CRAIC Technologies, Inc., USA)を用いて測定した。75 Wキセノンアークランプ (Nikon Co. Ltd., Japan) を用いて試料を照射して測定結果を得た。反射された分光放射を、白色反射標準(Spectoralon USRS-99-010, Labsphere Inc., USA)を用いて正規化することによって、相対的分光反射率へと変換した。結晶2~4の分光分布の結果を図8に示す。結晶2は、特に高い紫外線反射性を示した。また、結晶2~4の接触角測定の結果を図9に示す。結晶2は、特に高い撥水性を示した。
【実施例】
【0049】
結晶2~4の表面構造のSEM画像を図10に示す。比較のため、成熟シオカラトンボのオスの背側の表面構造のSEM画像を合わせて示す。結晶2の表面構造は、成熟シオカラトンボのオスの背側の表面構造と類似していた。
【実施例】
【0050】
実施例6
遺伝子解析
切除された新鮮なシオカラトンボの腹部から、RNeasy mini キット(Qiagen) 又はMaxwell 16 LEV Simply RNA Tissue キット (Promega)を用いて、全RNA試料を抽出した。TruSeq RNA Sample Preparation Kits v2(Illumina)を使用して、1試料当たり1 μgの全RNAを使用してcDNAライブラリーを構築し、HiSeq2000, Hiseq2500, 又はMiSeq (Illumina)によってシーケンシングを行った。MASER パイプライン(http://cell-innovation.nig.ac.jp/)中で実行されるTrinity プログラム(Grabherr, M. G. et al., “Full-length transcriptome assembly from RNA-Seq data without a reference genome”, Nat. Biotechnol. 29, pp.644-52 (2011))を使用することによって、生リードをde novo アセンブリングにかけた。自動アセンブリングの後、Integrative Genomics Viewer(Thorvaldsdottir H, Robinson JT, Mesirov JP (2013), “Integrative Genomics Viewer (IGV): high-performance genomics data visualization and exploration”, Brief Bioinform. 14: pp. 178-192)を用いて成熟オス中で高発現している配列を確認し、手動で修正した。配列の修正後、MASER パイプライン中で実行されるBWA-MEM プログラム(Li, H., (2013) “Aligning sequence reads, clone sequences and assembly contigs with BWA-MEM”, arXiv:1303. 3997 [q-bio.GN])を使用することによってリードマッピングを行い、それにより転写産物の発現レベルをfragments per kilobase per million reads (FPKM)値で推定した。結果を図11に示す。解析の結果、オス背側で通常メス背側(老熟個体を除く)よりも335倍、オス型メス背側で通常メス背側よりも145倍多く発現している遺伝子を見出した(図11のc147539R)。当該遺伝子(配列番号1)は、オス背側で特異的な長鎖脂肪族ケトンの合成に関与すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の組成物は紫外線反射作用及び撥水作用を有し、化粧品や塗料などの分野で好適に使用され得る。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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