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明細書 :把持方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-209441 (P2019-209441A)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 把持方法及び装置
国際特許分類 B25J  15/00        (2006.01)
FI B25J 15/00 Z
請求項の数または発明の数 22
出願形態 OL
全頁数 52
出願番号 特願2018-108624 (P2018-108624)
出願日 平成30年6月6日(2018.6.6)
発明者または考案者 【氏名】岩附 信行
【氏名】近藤 尚登
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100078776、【弁理士】、【氏名又は名称】安形 雄三
【識別番号】100121887、【弁理士】、【氏名又は名称】菅野 好章
【識別番号】100200333、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 真二
【識別番号】100204205、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 富雄
審査請求 未請求
テーマコード 3C707
Fターム 3C707DS01
3C707EU04
3C707EW01
3C707KS33
3C707MT04
3C707MT10
要約 【課題】多関節のような複雑な把持機構を用いずに、弾性索を多方向からオブジェクトに巻き付けて拘束することによって、オブジェクト(不定形のオブジェクトを含む)を損なうことなく、確実にかつ安定して把持(拘束)ができる把持方法及び装置を提供することにある。
【解決手段】
把持対象物を把持する把持方法であって、弾性索は3本以上であり、第1の支持部は、弾性索の一端を固定されたと、第2の支持部は、弾性索の他端を固定し、弾性索の集合体によって囲まれた空間の内側に、把持対象物を配置し、制御部は、第1の支持部と第2の支持部とを相対的に変位させることによって、空間の形状を制御し、形状が前記把持対象物の表面に沿って変形し、変形によって生じる把持力により把持対象物を把持する。
【選択図】図12
特許請求の範囲 【請求項1】
把持対象物を把持する把持方法であって、
弾性索は3本以上であり、
第1の支持部は、前記弾性索の一端を固定し、
第2の支持部は、前記弾性索の他端を固定し、
前記弾性索の集合体によって囲まれた空間の内側に、前記把持対象物を配置し、
制御部は、前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に変位させることによって、前記空間の形状を制御し、
前記形状が前記把持対象物の表面に沿って変形し、該変形によって生じる把持力により前記把持対象物を把持することを特徴とする把持方法。
【請求項2】
前記制御部によって、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点の位置を制御し、
前記空間が前記把持対象物を幾何学的に包み込むように、前記把持対象物を拘束する請求項1に記載の把持方法。
【請求項3】
前記制御部によって、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点に加える力を制御し、前記弾性索の張力ベクトルの接平面に射影したベクトル成分と、前記把持対象物との間に作用する摩擦力とが釣り合うように、前記把持対象物を拘束する請求項1に記載の把持方法。
【請求項4】
前記形状によって、前記把持対象物の位置及び/又は方位を制御する請求項1乃至3のいずれかに記載の把持方法。
【請求項5】
前記第1の支持部及び前記第2の支持部が環状である請求項1乃至4のいずれかに記載の把持方法。
【請求項6】
前記弾性索の個数をNとし、
前記第1の支持部が第1の半径を有する、第1の円を内包する円環状で、
前記第2の支持部が第2の半径を有する、第2の円を内包する円環状で、
前記各一端が、前記第1の円の円周を前記N等分するように、前記第1の支持部上に等間隔に配置され、
前記各他端が、前記第2の円の円周を前記N等分するように、前記第2の支持部上に等間隔に配置され、
前記制御部によって、
前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に回転させて、前記空間の形状を制御する請求項5に記載の把持方法。
【請求項7】
前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略正多角柱状となる請求項6に記載の把持方法。
【請求項8】
前記Nを10以上とし、
前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略円筒状となる請求項6に記載の把持方法。
【請求項9】
前記制御部によって、
前記一端における第1の張力及び前記他端における第2の張力に基づいて、算出した最大静止摩擦力に基づいて、前記変形の程度を決定する請求項1乃至8のいずれかに記載の把持方法。
【請求項10】
前記第1の張力、前記第2の張力をそれぞれTs、Ttとし、
前記弾性索と前記把持対象物の表面との接触角をθとし、
前記Ts、前記Tt及び前記θに基づいて、前記最大静止摩擦力を推定する請求項9に記載の把持方法。
【請求項11】
前記制御部によって、
前記把持対象物を表すポリゴンの形状データを取得し、
前記ポリゴンと前記弾性索とが接触する角部における、前記角部と前記弾性索との位置関係に基づいて、前記把持対象物と前記弾性索との間に作用する前記把持力を算出する請求項1乃至10のいずれかに記載の把持方法。
【請求項12】
把持対象物を把持する把持装置であって、
3本以上の弾性索と、
前記弾性索の一端が固定された第1の支持部と、
前記弾性索の他端が固定された第2の支持部と、
前記弾性索の集合体によって囲まれた空間の内側に、前記把持対象物を配置し、
前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に変位させることによって、前記空間の形状を制御する制御部と、を備え、
前記形状が前記把持対象物の表面に沿って変形し、該変形によって生じる把持力により前記把持対象物を把持することを特徴とする把持装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点の位置を制御し、
前記空間が前記把持対象物を幾何学的に包み込むように、前記把持対象物を拘束する請求項12に記載の把持装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点に加える力を制御し、前記弾性索の張力ベクトルの接平面に射影したベクトル成分と、前記把持対象物との間に作用する摩擦力とが釣り合うように、前記把持対象物を拘束する請求項12に記載の把持装置。
【請求項15】
前記形状によって、前記把持対象物の位置及び/又は方位を制御する請求項12乃至14のいずれかに記載の把持装置。
【請求項16】
前記第1の支持部及び前記第2の支持部が環状である請求項12乃至15のいずれかに記載の把持装置。
【請求項17】
前記弾性索の個数をNとし、
前記第1の支持部が第1の半径を有する、第1の円を内包する円環状で、
前記第2の支持部が第2の半径を有する、第2の円を内包する円環状で、
前記各一端が、前記第1の円の円周を前記N等分するように、前記第1の支持部上に等間隔に配置され、
前記各他端が、前記第2の円の円周を前記N等分するように、前記第2の支持部上に等間隔に配置され、
前記制御部は、
前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に回転させることによって、前記空間の形状を制御する請求項16に記載の把持装置。
【請求項18】
前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略正多角柱状となっている請求項17に記載の把持装置。
【請求項19】
前記Nを10以上とし、
前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略円筒状となっている請求項17に記載の把持装置。
【請求項20】
前記制御部は、
前記一端における第1の張力及び前記他端における第2の張力に基づいて、算出した最大静止摩擦力に基づいて、前記変形の程度を決定する請求項12乃至19のいずれかに記載の把持装置。
【請求項21】
前記第1の張力、前記第2の張力をそれぞれTs、Ttとし、
前記弾性索と前記把持対象物の表面との接触角をθとし、
前記Ts、前記Tt及び前記θに基づいて、前記最大静止摩擦力を推定する請求項20に記載の把持装置。
【請求項22】
前記制御部は、
前記把持対象物を表すポリゴンの形状データを取得し、
前記ポリゴンと前記弾性索とが接触する角部における、前記角部と前記弾性索との位置関係に基づいて、前記把持対象物と前記弾性索との間に作用する前記把持力を算出する請求項12乃至21のいずれかに記載の把持装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性索を利用してオブジェクトを把持するための把持方法及び把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビジョンセンサや双腕ロボット等の普及に伴って、多品種少量生産に関して、セル生産方式の自動化が試みられている。
【0003】
しかしながら、把持対象となる製品が、変形やばらつきの多い物の場合には、未だに人手による作業が必要とされる場合が多くある。また、ロボットハンドで把持する対象は、硬い機械部品等に限定されることが多いが、今日では、柔らかく傷つき易い把持対象(例えば、農作物、惣菜等)、或いは不定形(例えば、果物、海産物、揚げ物、廃棄物等)の把持対象物(以下、「オブジェクト」と称する)に拡大している。特に、食品分野等では扱う対象物のばらつきが大きく、様々な柔軟物体が含まれているため、同じ種類の物であっても、形状や内容、量等が異なる場合がある。
【0004】
そのため、ばらつきの大きいオブジェクトに対しては、従来のロボットハンドで対応することが困難であった。
【0005】
例えば、S. Hirose, Y. Umetani, “The development of soft gripper for the versatile robot hand”, Mech. Mach. Theory, vol.13, pp. 351-359, 1978.(非特許文献1)及びN. Fukaya, S. Toyama, T. Asfour,R. Dillmann, “Design of the TUAT/Karlsruhe humanoid hand”, Proc. IEEE/RSJ Int. Conf. Intell. Rpbots Syst.,vol.3pp. 1754-1759, Oct./Nov. 2000.(非特許文献2)においては、剛体から構成される多関節の把持機構によって、形状適応性を実現することを開示している。
【0006】
また、K. Suzumori, S. Iokura and H. Tanaka, “Development of flexible micro actuator and its applications to robotics mechanisms,” in Proc. IEEE Intl. Conf. on Robotics and Automation, pp. 2969-2974, 1991. (非特許文献3)において、鈴森らは、内部に3つのチャンバを有する柔軟素材を用いた柔軟把持機構を開示している。さらに、非特許文献3では、各チャンバ内の圧力を制御することによって、その柔軟素材を変形させるフレキシブル・マイクロ・アクチュエータ(Flexible Micro Actuator (以下、FMAと称する)を開示している。そのFMAを指として構成した柔軟把持機構は、空圧又は油圧制御を要するものの、オブジェクトからの反力を受けて変形することによって、形状適応することができるものである。
【0007】
また、Eric Brown, and et. al., “Universal robotic gripper based on the jamming of granular material”, Proceeding of the National Academy of Sciences 107.44 pp.18809-18814,2000.(非特許文献4)及びJ. R. Amend, E. Brown, N. Rodenberg, H. M. Jaeger, H. Lipson, “A positive pressure universal gripper based on the jamming of granular material”, IEEE Trans. Robotics, vol.28, no 2, pp. 341-350, Apr. 2012.(非特許文献5)においては、柔軟素材の硬さを制御することによって形状適応性を実現するジャミングハンドを開示している。
【0008】
B. Donald, L. Gariepy, D. Rus, “Distributed manipulation of multiple objects using ropes”, Proc. IEEE Int. Conf. Robotics and Automation, vol. 1, pp. 450-457, Apr. 2000.(非特許文献6)においては、ロープの両端位置を2台の移動ロボットで制御した輪を生成することによって、複数のオブジェクトを上記ロープで操作する手法を開示している。このような手法では、ロボットによって生成された輪が存在するため、ロボット自身がその輪を跨がなければならない。そのため、オブジェクトを拘束することが容易ではないという問題がある。
【0009】
また、T.-H. Kwok, and et. al., “Rope casing and grasping”, Proc. IEEE Int. Conf. Robot. Autom., pp. 1980-1986, May 2016.(非特許文献7)においては、ロープの輪でオブジェクトを拘束する際、オブジェクトのくびれた位置を検出する方法を開示している。この方法では、オブジェクトの形状を位相幾何学的に解析する必要がある。また、その解析結果に基づいて、オブジェクトの表面に輪の軌跡を描くことによって、周長が最小である輪を発見しなければならない問題があるにもかかわらず、この方法を実施できる具体的な機構は、未だ開示されていない。
【0010】
B. Walker, and R. Vandersluis, “Design testing and evalution of Latching end effector. ”, NASA. Lyndon B. Johnson Space Center, The 29th Aerospace Mechanism Symposium, pp1-16, 1995.(非特許文献8)においては、宇宙ステーションへ接近した宇宙船をロボットアームで捕捉する際、複数の索を用いて、宇宙船(オブジェクト)を拘束する手段を採用している。具体的には、B.Walkerらは、索を3方向から押し付けることによって、位置合わせを行なっている。
【0011】
H. Iwamasa, S. Hirai, “Binding of food materials with a tension-sensitive elastic thread”, Hirai, Proc. IEEE International Conference on Robotics and Automation, vol.28, no. 2, pp. 4298-303, 2015(非特許文献9)においては、1本の弾性紐で構成された輪を4箇所のプーリで支持したバインディングハンドを開示している。そのバインディングハンドは、輪の大きさ(周長)を変化させることによって、把持の強度を制御することができる。
【先行技術文献】
【0012】

【非特許文献1】S. Hirose, Y. Umetani, “The development of soft gripper for the versatile robot hand”, Mech. Mach. Theory, vol.13, pp. 351-359, 1978.
【非特許文献2】N. Fukaya, S. Toyama, T. Asfour,R. Dillmann, “Design of the TUAT/Karlsruhe humanoid hand”, Proc. IEEE/RSJ Int. Conf. Intell. Rpbots Syst.,vol.3pp. 1754-1759, Oct./Nov. 2000.
【非特許文献3】K. Suzumori, S. Iokura and H. Tanaka, “Development of flexible micro actuator and its applications to robotics mechanisms, ” in Proc. IEEE Intl. Conf. on Robotics and Automation, pp. 2969-2974, 1991.
【非特許文献4】Eric Brown, and et. al., “Universal robotic gripper based on the jamming of granular material”, Proceeding of the National Academy of Sciences 107.44 pp.18809-18814,2000.
【非特許文献5】J. R. Amend, E. Brown, N. Rodenberg, H. M. Jaeger, H. Lipson, “A positive pressure universal gripper based on the jamming of granular material”, IEEE Trans. Robotics, vol.28, no 2, pp. 341-350, Apr. 2012.
【非特許文献6】B. Donald, L. Gariepy, D. Rus, “Distributed manipulation of multiple objects using ropes”, Proc. IEEE Int. Conf. Robotics and Automation, vol. 1, pp. 450-457, Apr. 2000.
【非特許文献7】T.-H. Kwok, and et. al., “Rope casing and grasping”, Proc. IEEE Int. Conf. Robot. Autom., pp. 1980-1986, May 2016.
【非特許文献8】B. Walker, and R. Vandersluis, “Design testing and evaluation of Latching end effector.”, NASA. Lyndon B. Johnson Space Center, The 29th Aerospace Mechanism Symposium, pp1-16, 1995.
【非特許文献9】H. Iwamasa, S. Hirai, “Binding of food materials with a tension-sensitive elastic thread”, Hirai, Proc. IEEE International Conference on Robotics and Automation, vol.28, no. 2, pp. 4298-303, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
非特許文献1~3に開示された把持機構は、単純な構造を用いて形状適応性を実現しているものの、把持機構が柔軟であるため、把持状態が十分に保持されない可能性がある。
【0014】
また、非特許文献4~5に開示されたジャミングハンドの動作機構は、単純であるものの、柔軟材料の形状及び硬さを十分に制御して、袋がオブジェクトを拘束できるように変形するか否かが不確定である。
【0015】
次に、非特許文献6~9のような索を用いてオブジェクトを拘束する手法は、運動範囲を制限するまでに止まるものである。
【0016】
以上挙げたような従来の手法では、種々のオブジェクトを3次元空間で完全に拘束することは困難である。
【0017】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、多関節のような複雑な把持機構を用いずに、弾性索を多方向からオブジェクトに巻き付けて拘束することによって、種々のオブジェクト(不定形のオブジェクトを含む)を損ねることなく、確実にかつ安定して、把持(拘束)できる把持方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る把持方法の上記目的は、把持対象物を把持する把持方法であって、弾性索は3本以上であり、第1の支持部は、前記弾性索の一端を固定し、第2の支持部は、前記弾性索の他端を固定し、前記弾性索の集合体によって囲まれた空間の内側に、前記把持対象物を配置し、制御部は、前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に変位させることによって、前記空間の形状を制御し、前記形状が前記把持対象物の表面に沿って変形し、該変形によって生じる把持力により前記把持対象物を把持することを特徴とすることにより達成される。
【0019】
また、本発明に係る把持方法の上記目的は、前記制御部によって、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点の位置を制御し、前記空間が前記把持対象物を幾何学的に包み込むように、前記把持対象物を拘束することにより、或いは前記制御部によって、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点に加える力を制御し、前記弾性索の張力ベクトルの接平面に射影したベクトル成分と、前記把持対象物との間に作用する摩擦力とが釣り合うように、前記把持対象物を拘束することにより、或いは前記形状によって、前記把持対象物の位置及び/又は方位を制御することにより、或いは前記第1の支持部及び前記第2の支持部が環状であることにより、或いは前記弾性索の個数をNとし、前記第1の支持部が第1の半径を有する、第1の円を内包する円環状で、前記第2の支持部が第2の半径を有する、第2の円を内包する円環状で、前記各一端が、前記第1の円の円周を前記N等分するように、前記第1の支持部上に等間隔に配置され、前記各他端が、前記第2の円の円周を前記N等分するように、前記第2の支持部上に等間隔に配置され、前記制御部によって、前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に回転させて、前記空間の形状を制御することにより、或いは前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略正多角柱状となることにより、或いは前記Nを10以上とし、前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略円筒状となることにより、或いは前記制御部によって、前記一端における第1の張力及び前記他端における第2の張力に基づいて、算出した最大静止摩擦力に基づいて、前記変形の程度を決定することにより、或いは前記第1の張力、前記第2の張力をそれぞれTs、Ttとし、前記弾性索と前記把持対象物の表面との接触角をθとし、前記Ts、前記Tt及び前記θに基づいて、前記最大静止摩擦力を推定することにより、或いは前記制御部によって、前記把持対象物を表すポリゴンの形状データを取得し、前記ポリゴンと前記弾性索とが接触する角部における、前記角部と前記弾性索との位置関係に基づいて、前記把持対象物と前記弾性索との間に作用する前記把持力を算出することにより、より効果的に達成される。
【0020】
また、本発明に係る把持装置の上記目的は、把持対象物を把持する把持装置であって、3本以上の弾性索と、前記弾性索の一端が固定された第1の支持部と、前記弾性索の他端が固定された第2の支持部と、前記弾性索の集合体によって囲まれた空間の内側に、前記把持対象物を配置し、前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に変位させることによって、前記空間の形状を制御する制御部と、を備え、前記形状が前記把持対象物の表面に沿って変形し、該変形によって生じる把持力により前記把持対象物を把持することにより達成される。
【0021】
また、本発明に係る把持装置の上記目的は、前記制御部は、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点の位置を制御し、前記空間が前記把持対象物を幾何学的に包み込むように、前記把持対象物を拘束することにより、或いは前記制御部は、前記形状と前記把持対象物とが接触する接触点に加える力を制御し、前記弾性索の張力ベクトルの接平面に射影したベクトル成分と、前記把持対象物との間に作用する摩擦力とが釣り合うように、前記把持対象物を拘束することにより、或いは前記形状によって、前記把持対象物の位置及び/又は方位を制御することにより、或いは前記第1の支持部及び前記第2の支持部が環状であることにより、或いは前記弾性索の個数をNとし、前記第1の支持部が第1の半径を有する、第1の円を内包する円環状で、前記第2の支持部が第2の半径を有する、第2の円を内包する円環状で、前記各一端が、前記第1の円の円周を前記N等分するように、前記第1の支持部上に等間隔に配置され、前記各他端が、前記第2の円の円周を前記N等分するように、前記第2の支持部上に等間隔に配置され、前記制御部は、前記第1の支持部と前記第2の支持部とを相対的に回転させることによって、前記空間の形状を制御することにより、或いは前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略正多角柱状となっていることにより、或いは前記Nを10以上とし、前記第1の半径と前記第2の半径とが略同一で、前記空間が略円筒状となっていることにより、或いは前記制御部は、前記一端における第1の張力及び前記他端における第2の張力に基づいて、算出した最大静止摩擦力に基づいて、前記変形の程度を決定することにより、或いは前記第1の張力、前記第2の張力をそれぞれTs、Ttとし、前記弾性索と前記把持対象物の表面との接触角をθとし、前記Ts、前記Tt及び前記θに基づいて、前記最大静止摩擦力を推定することにより、或いは前記制御部は、前記把持対象物を表すポリゴンの形状データを取得し、前記ポリゴンと前記弾性索とが接触する角部における、前記角部と前記弾性索との位置関係に基づいて、前記把持対象物と前記弾性索との間に作用する前記把持力を算出することにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る把持方法及び装置によれば、弾性索を多方向からオブジェクトに巻き付けて拘束することによって、オブジェクトを損ねることなく、確実にかつ安定して把持(拘束)ができる。また、オブジェクトが不定形であっても、把持することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る把持方法及び装置によれば、オブジェクトの硬さによる影響を考慮する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】変形した把持空間の平面図である。
【図2】変形した把持空間の正面図である。
【図3】変形した把持空間の斜視図である。
【図4】支持部の間の角度を回転していない初期状態の把持空間の平面図である。
【図5】支持部を相対的に回転した際の把持空間の平面図である。
【図6】支持部を、図5に示す回転角度よりも更に回転して、変形した把持空間の平面図である。
【図7】支持部の間の角度を、図6に示す回転角度よりも更に回転して、変形した把持空間の平面図である。
【図8】上側の支持部の半径を下側の支持部の半径より小さくした場合、くびれ部の位置が、上側に移動する様子を示す図である。
【図9】2つの円筒型の把持空間を重ね合わせることによって、2つのくびれ部を有する把持空間を形成することを示す図である。
【図10】本発明の把持装置が、オブジェクトとしてボールを把持する様子を示す図である。
【図11】本発明の把持装置が、オブジェクトとして紙コップを把持する様子を示す図である。
【図12】第1の実施形態に係る把持装置の一例を示す斜視図である。
【図13】回転部の一例を示す平面図である。
【図14】図13におけるA-A’線断面図の一例である。
【図15】図13におけるA-A’線断面図の別の例である。
【図16】回転部の要部の一部省略の拡大図である。
【図17】回転部の要部の一部省略の拡大図である。
【図18】第1の実施形態に係る把持装置における支持部及び回転部の別の例を示す斜視図である。
【図19】図18における回転部の減速電動部の構成を示す斜視図である。
【図20】第2の実施形態に係る把持装置を示す斜視図である。
【図21】センサの構成の一例を示す断面図である。
【図22】張力センサの断面図である。
【図23】第2の実施形態に係る把持装置の動作例を示すフローチャートである。
【図24】第3の実施形態の把持装置の一例を示す斜視図である。
【図25】第3の実施形態に係る把持装置の動作例を示すフローチャートである。
【図26】第4の実施形態の把持装置のブロック図である。
【図27】第4の実施形態に係る把持装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図28】オイラーの摩擦ベルト理論を説明するために、プーリに巻き付いたベルトの両端に作用する張力の関係を示す図である。
【図29】プーリと、プーリに巻き付くベルトとが、微小角dθ内において、ベルトの両端に作用する張力が釣り合った状態を示す図である。
【図30】拡張ベルト理論の基本であるポリゴン形状のオブジェクトの角部における力の微小要素を示す図である。
【図31】ポリゴン形状のオブジェクトの接触角θを、n個の角部として、外角(θ/n)ずつ屈曲するように分割した様子を示す図である。
【図32】拡張ベルト理論における角部に奥行きをもたせた概念図である。
【図33】ハーフエッジ構造と各要素のリンク関係を示す図である。
【図34】オブジェクト辺上に設けられた各ノードの端から端に順に線分で結ぶことによって、弾性索の形状を表現する様子を示す図である。
【図35】ノードiの仮想的な移動をベクトルΔδ^(ハット)iで表した図である。
【図36】弾性索の伸縮(自然長方向に沿った伸張)に関する概念図である。
【図37】弾性索の滑りを判定し、弾性索が辺上を移動する動きをシミュレートする動作例を示すフローチャートである。
【図38】弾性索の集合が並列して形成された把持空間に、ポリゴン形状のオブジェクトは配置された初期状態の様子を示す図である。
【図39】弾性索の集合が、下側の支持部が回転させることによって、オブジェクトを包み込む様子を示す図である。
【図40】弾性索の集合が、下側の支持部が図39に示す回転角よりも回転させることによって、オブジェクトを包み込む様子を示す図である。
【図41】弾性索の集合が、図40に示す状態から上方へ変位し、オブジェクトを持ち上げようとする図である。
【図42】把持装置の把持部の外観を示す図である。
【図43】2つの支持部が相対的に回転することによって、把持空間のくびれ部の内径は小さくなる様子を示す図である。
【図44】2つの支持部が、図43における相対的な角度より多く回転することによって、把持空間のくびれ部の内径は、さらに小さくなる様子を示す図である。
【図45】2つの支持部が、図44における相対的な角度より、さらに多く回転することによって、把持空間のくびれ部の内径は、さらに小さくなる様子を示す図である。
【図46】シャープペンシルの芯のようなオブジェクトを容易に把持する様子を示す図である。
【図47】支持軸を配してポリゴン化した球体のオブジェクトを示す図である。
【図48】本発明の実施形態に係る把持装置を用いて、オブジェクトを把持する際の様子を示す図である。
【図49】第6の実施形態に係る把持装置における支持部、パラレルマニピュレータ及び回転ステージの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明を実施するための形態について説明する。なお、使用可能文字の関係上、以下に示す数式においてハット記号が付されているもの(英文字記号又はギリシャ文字で表された変数)については、本明細書の文章において、「(英文字記号又はギリシャ文字)^(ハット)」と記載する。また、変数がベクトルである場合、「ベクトル(英文字又はギリシャ文字)」と記載し、同様に、変数がマトリクス又は行列である場合、「マトリクス又は行列(英文字又はギリシャ文字)」と記載する。

【0026】
本発明の実施形態に係る把持方法及び装置は、共通の中心軸を有する2つの支持部(円環)の内側に、略平行に配置された複数の弾性索(弾性索集合)が形成し、2つの支持部(円環)の相対変位を制御し、且つ弾性索集合の把持空間に配置されたオブジェクトに、弾性索集合が巻き付くないし包み込むことによって、オブジェクトを把持(拘束)し、さらにオブジェクトの位置又は方向を制御することができる。

【0027】
以下、本発明に係る把持方法及び装置において、弾性索の集合で形成された把持空間を変形させることによって、把持空間内に配置されたオブジェクトを損なうことなく、弾性索で包み込んで確実かつ安定に拘束する原理について説明する。

【0028】
ここで先ず、オブジェクトを把持することができる把持索の集合の配置の一例として、円筒型を示す。円筒型の把持空間を形成するために、弾性索は、並列に(略等間隔に)円筒状に配置される。弾性索は、上下に配置された2つの円環状の支持部に接続される。

【0029】
本発明の実施形態に係る把持装置は、初期状態では、弾性索は略円筒面を形成している。すなわち、弾性索の集合は、円筒形の把持空間を形成する。そして、2つの支持部を相対的に回転させる又は変位させるに従って、円筒面の中央部分がくびれて変形していく。ここで、初期状態の円筒形から変形していく把持空間の様子を、図1~3に示す。図1は、変形した把持空間の平面図である。図2は、変形した把持空間の正面図である。図2に示すような、くびれた状態における曲面は、一葉双曲線と呼ばれる形状である。図3は、変形してくびれた状態の把持空間の斜視図である。

【0030】
さらに、支持部の間の相対的回転角度に応じて、くびれ部の内径が小さくなる様子を、図4~7に示す。図4~7には、初期状態では、把持空間は円筒型であり、中央部にくびれ部は生じていないが、支持部の間の相対的回転角度が大きくなるにつれて、くびれ部の直径は小さくなり、最終的には、略0となる様子が示されている。このような変形が起こるにつれて、把持空間に配置されたオブジェクトは、弾性索の集合によって、包み込まれるようにして把持される。

【0031】
また、弾性索の集合によって形成される把持空間の変形例に関して、図8に示すように、上側の支持部の半径を下側の支持部の半径より小さく設定した場合、くびれ部の位置を、上側に移動することができる。さらに、このようにくびれ部が一方の支持部側に移動した円筒型配置を、それぞれ上下反転したものを重ね合わせることによって、図9に示すような2つのくびれ部を有する把持空間を形成することができる。そして、2つのくびれ部の内径が0になった場合、弾性索線織面によって閉じた把持空間を形成することができる。なお、本発明において、上下の支持部を相対的に回転させる場合、上下支持部の間に配設されている複数本の弾性索同士が交差しないことは、実証されている。なお、弾性索線織面弾性索の集合で表現される離散的な曲面で構成されるものである。そして、弾性索線織面は、弾性索端点の配置を変えることによって、変形させることができる。つまり、弾性索の集合によって、「弾性があり、かつ形状を制御可能な曲線」を実現することができる。

【0032】
ここで、本発明に係る把持装置によって、オブジェクトを把持することができた例を図10及び図11に示す。図10は、本発明に係る把持装置が、オブジェクトとしてボールを把持する様子を示す。図11は、本発明に係る把持装置が、オブジェクトとして紙コップを把持する様子を示す。

【0033】
次に、本発明の実施形態に係る把持装置1について、図面を参照しつつ説明する。

【0034】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る把持装置の一例の斜視図を図12に示す。把持装置1は、例えば、食品等のレオロジー物体であるオブジェクト(把持対象物)に対しても、好適に把持することができるものであって、所定の位置に移動できるようにロボット(図示せず)等に取り付けられて用いられても良い。把持装置1は、図12に示すように、複数の弾性索2と、弾性索2によって形成された把持空間の形状を保持し、且つ変形動作させるための2つの円環状の支持部3a(上側)、3b(下側)と、各弾性索2を掛け渡すために支持部3a、3bに設けられている固定部4と、支持部3aと支持部3bとを相対的に回転させるための回転部5と、回転部5の回転を制御するための制御部(制御手段)6とを備えている。固定部4は、例えばボルトとして、弾性索2の両端をそれぞれ支持部3a及び3bに固定しても良いし、ボルトやナットを用いて、弾性索2の両端をそれぞれ支持部3a及び3bに固定しても良い。

【0035】
なお、把持装置1が把持するオブジェクトは、特に食品等のレオロジー物体に限定されるものではなく、他の剛体からなるオブジェクト等に対しても当然に把持することができる。

【0036】
また、オブジェクトの形状、大きさ、又は重さは常に一定しているとは限らない。本発明の実施形態ではオブジェクトの形状に関しては、不定形である場合も想定している。弾性索2は、図12に示すように、両端を支持部3a及び3bに固定された弾性を有する紐である。弾性索2は、オブジェクトを包み込む(覆う)ような把持空間を形成するため、少なくとも3本は必要である。

【0037】
支持部3aと3bとの間の相対的変位によって、初期状態では、弾性索2は、平行に配置されている。回転部5を駆動する前では、弾性索2は、互いに交差することなく、平行に配置されているため、円筒状空間を形成している。

【0038】
弾性索2の両端は、固定部4によって支持部3aと3bとに跨って固定される代わりに、支持部3a及び3bに設けられた開口部(孔)3c及び3dを通して結び目を形成して、固定しても良い。また、弾性索2の材料は、例えば天然ゴム製のラバーバンドで、いわゆる輪ゴムの大きなサイズのものが挙げられる。また、他の弾性索2の材料としては、天然ゴムを芯ゴムとして周囲をポリエステル繊維で編んだコールゴム(例えば、6本の芯ゴムを有する「6コール」が挙げられる)なるものを挙げることができ、いわゆるアンダーウェアに使用されるゴム紐や、帽子のあご紐等が相当する。コールゴムは、ラバーバンドに対して、品質の経時変化が少なく、耐久性が高いものであるが、コールゴムは表面に編み模様があるため、摩擦係数に異方性があり、解析を複雑にする。一方、ラバーバンドは異方性が無いため、解析が容易である。

【0039】
また、支持部3a及び3bにより形成される形状を円環状としているが、特に支持部3aと3bとが相対的な回転運動のみを与えられるような場合に、好適である。その際、支持部3a及び3bの中心軸の位置及び方位がずれないように、回転方向のみに運動の自由度を有する回転部5が、支持部3aと3bとの間に配置されることが好適である。回転部5の一例を図13に示す。

【0040】
そして、図13に示すように、回転部5は、例えば、外側円環部5a、及び外側円環部5aの半径より小さい半径の内側円環部5bで構成されており、外側円環部5aに対して、内側円環部5bは回転自在である。内側円環部5bには、外側円環部5aに回転運動のみが許されるように、外側円環部5aと嵌合した構造を有する。

【0041】
そして、支持部3aと支持部3bを相対的に回転させるため、複数の各連結部7aの一方は、外側円環部5aに固定され、それぞれ各連結部7aの他方は、支持部3aに固定される。同様に、複数の各連結部7bの一方は、外側円環部5bに固定され、それぞれ各連結部7bの他方は、支持部3bに固定される。

【0042】
このような構造のため、外側円環部5aの回転運動、及び内側円環部5bの回転運動は、それぞれ結合部7a及び7bを介して、それぞれ支持部3a及び支持部3bに伝達される。更に、回転部5は、回転駆動部5cからの駆動力によって、駆動される。

【0043】
図12に示すように、回転駆動部5cは、外側円環部5a又は内側円環部5bのいずれか一方に設けられた回転駆動固定部5c’に取り付けられるようにしても良い。

【0044】
第1の実施形態に係る把持装置において、把持索の集合で囲まれた把持空間を変形して、オブジェクトを把持する動作について説明する。

【0045】
まず、制御部6から出力された制御信号が、回転駆動部5cに入力される。次に、制御信号の指示に従って、電源(図示せず)等から電力が回転駆動部5cに供給される。さらに、回転駆動部5cが駆動されて、回転部5の外側円環部5aと内側円環部5bとが互いに逆向きに回転する。

【0046】
その結果、支持部3aと3bとが、互いに逆向きに回転して、弾性索2の集合によって形成された把持空間は、変形する。そして、支持部3aと3bとが、互いに逆向きの回転するにつれて、円筒状の空間の中央付近が狭くなり、くびれた形状となる。

【0047】
その結果、空間内に配置されたオブジェクトの形状に沿って、オブジェクトを包み込むように把持空間が変形する。その変形によって、オブジェクトと各弾性索2との間に摩擦力が生成される。把持装置1は、このプロセスで生じた摩擦力の総量に応じた、把持力を生成することができる。

【0048】
ここで、回転部5の機械的構造の一例として、図13に回転部5の平面図を示す。また、図13におけるA-A’線断面図の例を図14及び図15に示す。図14及び図15が示すように、外側円環部5aと内側円環部5bとの間には、ベアリング5cが配置されている。そして、外側円環部5aと内側円環部5bとが、ベアリング5cを介して回転自在に支持されている。外側円環部5aと内側円環部5bとで囲まれ、ベアリング5cが配置される空間に関しては、図14に示すように、その空間の断面が、ベアリング形状に沿った曲面形状でも良いし、また、図15に示すように、その空間の断面が方形であっても良い。

【0049】
そして、回転部5の要部を拡大した正面図を図16に示す。また、外側円環部5aと内側円環部5bとの隙間を拡大した構造を図17に示す。

【0050】
図16及び図17に示すように、外側円環部5aと内側円環部5bとが向き合った空間に歯車5dを配置し、外側円環部5aには、歯車5dと噛み合い円周状に形成された内歯5a’を形成し、内側円環部5bには、歯車5dと噛み合い円周状に形成された外歯5b’を形成し、歯車5dを回転駆動部5c(例えばモータ)の回転軸と接合するように構成する。

【0051】
このように構成された回転部5に配置された回転駆動部5cを駆動することによって、外側円環部5aと内側円環部5bを相対的に回転することができる。

【0052】
本発明の実施形態に係る把持装置における支持部及び回転部について、回転部5とは別の構造のラック付き回転部51を有する例を、図18に示す。

【0053】
図18が示すように、ラック付き回転部51は、二重のリングで構成されており、内側円環部51a(内側のリング)で固定した場合、外側円環部51b(外側のリング)が回転するように動く。また、天地を逆にすると内側円環部51a(内側のリング)が回転する。

【0054】
まず、第1の実施形態に係る把持装置における回転部5と異なり、回転部51の外側円環部51b(回転リング)の外側には、ラック51b’が形成されている。そして、減速電動部51cの構造について、外側円環部51bを回転させるため、回転駆動部5cとは構造が異なる減速電動部51cを用いる。

【0055】
また、ラック付き回転部51を回転させるため、制御部16(図示しない)の指令に基づいて、回転駆動モータ51dは回転するよう制御される。

【0056】
続いて、減速電動部51cの構成及び動作について、図19を用いて説明する。まず、減速部51eが、回転駆動モータ51dの回転を、例えば1/50倍に減速する。

【0057】
そして、減速電動部51cの駆動軸51fにピニオンギア(歯車)51gが係合している。ここで、ラック51b’とピニオンギア51gとは噛み合っているため、減速電動部51cから駆動トルクが、ラック51b’を介して、外側円環部51bに伝達される。

【0058】
この駆動トルクにより、減速電動部51cは、ピニオンギア51gを介して、外側円環部51bを駆動する。

【0059】
この結果、回転駆動モータ51dの回転が、さらに略1/500倍の速度に減速して、ラック付き回転部51に伝達される。

【0060】
そして、エンコーダ51hは、エンコーダ51h自身の分解能に基づいて、外側円環部51bと内側円環部51aとの回転角度を計測することができる。エンコーダ51hによって計測された回転角度は、制御部16に出力される。

【0061】
なお、外側円環部51bの外周面にラック51b’を形成している例を示したが、外側円環部51bにラック51b’を形成することに代えて、例えば、回転リング状に形成した外側円環部51bの外周面に、成形フレキラック51b’’を、円周方向に貼り付けることによって簡単に形成することができる。

【0062】
また、フレキラック51b’は、樹脂製で、直線状に延びた状態ではその軸線方向の力に対しては撓まず(曲がらず)、かつ軸線方向に直交する力が加えられると容易に曲がるものである。

【0063】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る把持装置20を図20に示して説明する。第2の実施形態に係る把持装置20は、第1の実施形態に係る把持装置1に対して、センサ8及び80(張力検出手段)を備えている点が異なっているが、その他の構成は略同じである。よって、第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。

【0064】
第2の実施形態に係る把持装置20は、第1の実施形態に係る把持装置1と同様に、複数の弾性索2(弾性索2の集合)と、一対の支持部3a及び3bと、各弾性索2と、支持部3a及び3bとを固定する固定部4と、支持部3aと3bとを回転運動させる回転部5と、回転部の駆動制御を行なう制御部26と、回転部5及び支持部3aと3bとをそれぞれ結合する結合部7a及び7bとを備えている。

【0065】
したがって、把持装置20では、把持装置1と同様の効果が得られる。

【0066】
また、第2の実施形態に係る把持装置20は、図20に示すように、把持装置20の把持力によりオブジェクトに作用する張力を、外圧として検出するセンサ8及び80を備えている。なお、センサ8は支持部3aの側に、センサ80は支持部3bの側に設けられている。

【0067】
そして、制御部26は、センサ8及び80の検出結果に基づいて、オブジェクトを把持できるように、支持部3aと3bとを相対的に回転させるための制御信号を生成する。この制御信号に基づいて、回転駆動部5cを駆動することによって、外側円環部5aと内側円環部5bを適切な相対角度まで回転することができる。

【0068】
センサ8及び80の取付位置について説明する。例えば、センサ8は支持部3aに開けられた開口部3cの上に設けられても良く、同様に、センサ80も支持部3bに開けられた開口部3dの上に設けられても良い。そして、弾性索2の端部とセンサ8の可動部8bとが機械的に接続され、同様に弾性索2の反対側(もう一方)の端部とセンサ80が機械的に接続されている。このため、弾性索2の張力に応じた、センサ8及び80のそれぞれの可動部8bの相対的移動距離(量)が、制御部26に出力される。相対的移動距離に基づいて、制御部26は、弾性索2の張力を算出する。

【0069】
センサ8又は80の構成の一例を図21に示す。図21に示すように、センサ8のハウジング8aに可動部8bが設けられており、ハウジング8aと可動部8bとの間には弾性体8cが設けられている。可動部8bに張力が作用していないとき、弾性体8cが可動部8bをハウジング8aに押し付けている。可動部8bの端部に設けられた磁石8dとホール素子8eの相対的位置関係は、初期状態を維持している。

【0070】
そして、弾性索2の伸張に応じた張力Tが可動部8bに作用し、可動部8bが引っ張られると、張力Tに応じて弾性部8cが縮む。すると、可動部8bの端部に設けられた磁石8dとホール素子8eの相対的位置関係は変化する。

【0071】
その変化に伴って磁束密度が変化し、ホール素子8eからの出力電圧が変化する。制御部26は、その出力電圧の変化に基づいて、ハウジング8aと可動部8bとの相対移動量Δsを算出し、相対移動量Δs及び弾性部8cの弾性定数に基づいて、弾性索2の張力を算出する。

【0072】
また、本発明の第2の実施形態に係る把持装置20は、センサ8を使用するものに限定されるものではなく、センサ8と動作原理及び構成の異なる張力センサ9を採用しても良い。ここで、張力センサ9の構成例を図22に示す。

【0073】
まず、張力センサ9の構造及び材質を説明する。図22に示すように、張力センサ9は、中心に配される弾性紐9aの周囲に感圧導電性紐9b及び9cが2重に巻かれて(ダブルカバリングされて)構成される。例えば、感圧導電性カバリング紐(繊維)を好適に用いることができる。なお、ハウジング9dに弾性紐9aは固定され、ハウジング9dは支持部3aに固定される。

【0074】
弾性紐9aとしては、例えばポリウレタン製のもの等を好適に用いることができる。感圧導電性紐9b及び9cは、例えばポリエステル等の非導電性繊維にステンレス等の導電性繊維を混紡して撚り合わせることにより形成されていても良い。

【0075】
次に、張力センサ9の動作原理を説明する。感圧導電性紐9b及び9cは、それぞれに印加される張力(圧力)が大きくなると、感圧導電性紐9b及び9cの接触点数(接触面積)が増加(変化)することによって、電気抵抗値が変化するという特性を有している。そして、感圧導電性紐9b及び9cの伸びと抵抗値との間には、線形近似可能な関係が存在する。

【0076】
上述のような構造を有する張力センサ9は、感圧導電性紐9b及び9cの間の抵抗値変化の特性を安定にしている。特に、張力センサ9は、張力と抵抗との関係のヒステリシス特性を有効に軽減することができる。

【0077】
また、張力センサ9は、弾性及び伸縮性に優れた特性を有しているので、大きな変形にも対応することができる。さらに、張力センサ9は、自身に張力が作用すると、感圧導電性紐9b及び9cの間の抵抗値が低くなるという特性を有している。

【0078】
尚、張力センサ9は、上述のような感圧導電性カバリング紐(繊維)に限定されるものではない。オブジェクトを締め付ける(巻き付ける)弾性索2と結合することができるような部材であれば良く、弾性を有する他の紐状部材や若干の幅を有する布状の部材であっても良い。また、その場合には、弾性索2に作用する張力を検出するために、感圧導電性紐9bと9cとの間の抵抗を測定することができるように、信号線を張力センサ9に設ける。そして、制御部26は、張力センサ9から入力される信号に基づいて、弾性索2の張力を測定するように構成すれば良い。

【0079】
<把持装置の動作フロー>
制御部26は、把持装置20に所定の動作をさせる際に、センサ8の検出結果(出力)に基づいて、回転駆動部5dを制御する。

【0080】
図23は、第2の実施形態に係る把持装置20の動作の概略を説明するフローチャートである。

【0081】
まず、制御部26は、把持装置20の制御パラメータ等を初期化する(ステップS1)。具体的には、支持部3aと支持部3bとのなす角度が、所定の初期角度となるように、回転駆動部5dに指令を出すこと、オブジェクトに関するデータ、及び把持装置20の回転駆動部5dを制御する制御パラメータを読み出すことである。制御パラメータとしては、回転部5を駆動する際の外側円環部5aと内側円環部5bとの相対的角速度(角度ステップ、駆動角度の幅Δψ)、回転角度の上限値、回転角度の下限値、回転駆動部5dに与えられる回転トルクが挙げられる。オブジェクトに関するデータとしては、把持動作の対象物となるオブジェクトを特定するデータ、該オブジェクトの標準的な重量、サイズ(不定形な場合であっても、寸法の最大値~最小値、横幅、縦幅、奥行き)が挙げられる。

【0082】
次に、オブジェクトを弾性索2の集合で形成された把持空間内に設置する(ステップS2)。続いて、オブジェクトが把持空間内に適切に設置されたか否か判断を行なう(ステップS3)。ステップS3の判断がNoであるならば、ステップS2に戻り、オブジェクトを設置し直す。ステップS3の判断がYesであるならば、制御部26は、制御パラメータ(角度ステップ、駆動角度の幅Δψ)に基づいて、回転駆動部5dに指令を出力して、回転部5を駆動する(ステップS4)。

【0083】
制御部26は、センサ8及び/又は80の出力に基づいて各センサの各張力を推定する(ステップS5)。具体的には、測定されたセンサ8、80の可動部8bの変位量と弾性体8cの弾性定数に基づいて、弾性索2の一端及び他端の各張力を推定する。

【0084】
次に、把持装置20が、オブジェクトを把持できているか判断する(ステップS6)。例えば、各センサの各張力に基づいてオブジェクトを把持できるか否かを判断(比較)する。そして、その判断がNoであるならば、ステップS4に戻る。また、その判断がYesであるならば、オブジェクトを把持することができると判断して、後述する把持後の処理を行う(ステップS7)。具体的な把持後の処理の例としては、把持装置20が、図示しないロボットアームの一部として機能させ、オブジェクトを把持したまま、オブジェクトを移動させるようなことが挙げられる。

【0085】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る把持装置30を図24に示して説明する。第2の実施形態に係る把持装置20がセンサ(張力検出手段)を備えているのに対し、第3の実施形態に係る把持装置30は、撮像部31(例えば、ビデオカメラ、CCDカメラ)を備えている点が異なっているが、その他の構成は第1の実施形態と略同じである。よって、第1の実施形態に係る把持装置と共通する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。

【0086】
第3の実施形態に係る把持装置30では、撮像部31を用いて、オブジェクトの画像を撮影する。制御部36は、撮像部31から送信されたオブジェクトの画像の特徴(データ)を抽出する。そして、その特徴(データ)の変化に基づいて、回転部5の駆動制御を行なうことによって、オブジェクトを把持する制御を行うことができる。

【0087】
第2の実施形態に係る把持装置20では、オブジェクトとの接触点から加える力(把持力)を制御することによって、オブジェクトと弾性索との間に作用する力を均衡させる(釣り合わせる)ことで力学的に拘束するものである。これに対して、第3の実施形態に係る把持装置30では、オブジェクトと弾性索2との接触点の位置を制御することによって、オブジェクトを幾何学的に拘束する(固定する又は包み込む)ものである。

【0088】
<把持装置の動作フロー>
図25は、第3の実施形態に係る把持装置30の動作例を示すフローチャートである。

【0089】
まず、第3の実施形態に係る把持装置30の動作であるステップS31~S34及びステップS38に関して、第2の実施形態に係る把持装置30の動作であるステップS1~S4及びS7と同様であるので説明を省略し、本例ではステップS35から説明する。

【0090】
回転部5を回転させた後(ステップ34)、制御部36は、撮像部31を用いてオブジェクトを撮影する(ステップS35)。

【0091】
次に、制御部36は、撮像部31から送信されたオブジェクトの画像(データ)に基づいて、画像の特徴を抽出する(ステップS36)。その特徴に基づいて、オブジェクトを幾何学的に拘束できたか否かを判断する。例を挙げると、オブジェクトの画像の現在の中心位置の変化を推定することが挙げられる。

【0092】
次に、把持装置30が、オブジェクトを把持できているか判断する(ステップS37)。例を挙げると、過去の中心位置との差分が所定の距離以下であるか否か判断するのが好適である。そして、ステップS37の判断がNoであるならば、ステップS34に戻る。また、ステップS37の判断がYesであるならば、オブジェクトを把持することができると判断して、後述する把持後の処理を行う(ステップS38)。

【0093】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る把持装置40を説明する。第4の実施形態に係る把持装置40は、第1の実施形態に係る把持装置10に対して、回転角度決定部49を備えている点が異なっているが、その他の構成は略同じである。

【0094】
第4の実施形態の把持装置40のブロック構成図を図26に示す。図26に示すように、把持装置40は、弾性索42の集合で形成された把持空間を変形することによって、オブジェクトを拘束する把持部48と、オブジェクトを把持するにように、回転部45の回転角θを決定する回転角度決定部49と、回転角θに基づいて、回転部45を駆動する制御部46とを有している。

【0095】
また、オブジェクトを拘束する把持部48については、第1の実施形態に係る把持装置と同様に弾性索42、支持部43a及び43b、固定部44、回転部45及び連結部47を有している。なお、図26においては、弾性索42及び固定部44は図示していない。

【0096】
次に、回転角度決定部49の構成及び機能(動作)を説明する。まず、回転角度決定部49は、オブジェクトを選択する信号を入力する入力部49aと、選択されたオブジェクトの形状のデータ(以下、単に「ポリゴンデータ」又は「PD」と称する)を記憶し、後述する算出部49cに出力するオブジェクト形状記憶部49bと、回転部45の回転角θ及びポリゴンデータの角部における外角に基づいて、オブジェクトと弾性索42との間に作用する把持力F^(ハット)及び摩擦力μを算出する算出部49cと、算出部49cが算出したデータ(各回転角θ毎の把持力F^(ハット)及び摩擦力μ)を記憶する算出データ記憶部49dと、選択されたオブジェクトを画面表示する表示部49eと、を備えている。なお、把持部48の構成は、第1の実施形態の把持装置1と同様であるので、その詳細は省略する。

【0097】
また、オブジェクト形状記憶部49bには、予め、オブジェクトの外形形状を表すポリゴンデータが記憶されている。さらに、算出データ記憶部49cは、各オブジェクトに対応した回転角θ毎の摩擦力F^(ハット)、最大静止摩擦力(μ|N^(ハット)|)を記憶する。そして、それらの中から所定の基準に基づいて、オブジェクトを把持するに適した回転角θを提供する。所定の基準は、摩擦係数をμ、垂直抗力ベクトルをN^(ハット)とし、F^(ハット)<μ|N^(ハット)|のように設定しても良い。

【0098】
以下、回転角度決定部49における処理を具体的に説明する。

【0099】
<把持装置の動作フロー>
制御部46は、把持装置40に所定の動作をさせる際に、回転角度決定部49で指定されたオブジェクトのポリゴンデータに基づいて、回転部45を制御する。

【0100】
図27は、第4の実施形態に係る把持装置40の動作例を示すフローチャートである。

【0101】
まず、回転角度決定49に対して、オブジェクトのポリゴンの形状データを指定(選択)し(ステップS40)、回転角度決定部49は、オブジェクト形状記憶部49bに記憶されているポリゴンデータを読み出し、ポリゴンデータからポリゴンを再現する(ステップS41)。

【0102】
そして、オブジェクトのサイズ等に基づいて、入力部49aからポリゴンのサイズを指定し、弾性索42とオブジェクトとの摩擦係数μ、オブジェクトの質量M、密度ρを入力又は取得する(ステップS42)。

【0103】
続いて、回転部45の回転角度ψのデータ(以下、回転角度ψと称する)等を初期化し(ステップS43)、回転角度ψに対して所定の角度ステップΔψ(以下、単に「Δψ」と称する)を加算する(ステップS44)。

【0104】
そして、回転部45を回転角度ψ分回転した状態をシミュレーションした場合において、ポリゴンに弾性索42の集合が巻き付いた状態(包み込んだ状態)であるか否かを判断する(ステップS45)。ステップS45の判断がNoであるならば、ステップS44に戻る。

【0105】
ステップS45の判断がYesであるならば、ポリゴンの回転角度決定部49内(における仮想空間)において、ポリゴンの各角部における各弾性索42の巻き付いた状態、すなわちポリゴンと弾性索の接触角度Δθを算出する(ステップS46)。

【0106】
また、各弾性索42の伸張ΔL(変位)の推定に基づいて、張力T^(ハット)を算出する(ステップS47)。

【0107】
そして、各角部における外角Δθに基づいて、垂直抗力N^(ハット)、把持力F^(ハット)を見積もる(ステップS48)。

【0108】
また、釣り合い(平衡)方程式に基づいて、各角部において滑りが起きるか否かを判断する(ステップS49)。その判断がYesであるならば、ステップS44に戻る。ステップS49の判断がNoであるならば、各角部において、弾性索42の滑りが起きないとみなし、このときの回転角ψを把持に適した回転角ψh(以下、把持回転角ψhと称する)として保存し、制御部46に出力する(ステップS50)。

【0109】
続いて、制御部46は、把持回転角ψhに基づいて、把持部48の回転部45を回転させる指令を出力する(ステップS51)。そして、回転部45は、把持回転角ψhまで回転した結果、弾性索42がオブジェクトを巻き付けて(或いは拘束して)把持状態とすることができる。

【0110】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る把持装置50を説明する。第5の実施形態に係る把持装置50は、第4の実施形態に係る把持装置40に対して、オイラーのベルト理論及びポリゴンデータに基づいて、角部における張力を算出することによって、各角部における弾性索の滑り判定を行なう点が異なっているが、その他の構成はほぼ同じである。

【0111】
まず、図28を用いて、滑り判定の基礎となるオイラーのベルト理論(以下、ベルト理論と称する)を簡単に説明する。

【0112】
図28に示すように、プーリ(滑車)100aにベルト100bが、接触角θに亘って、巻き付いている。そして、ベルト100bの両端(一端及び他端)に、それぞれ張力Tt及びTs(Tt>Ts)が作用している。プーリ100aとベルト100bとが、微小角dθ内において定常状態(釣り合った状態)を図29に示す。

【0113】
そして、プーリ(滑車)の微小角dθ内において、張力T、(T+dT)、垂直抗力N及び摩擦力Fが、定常状態となるような関係を、数1及び数2として表すことができる。

【0114】
【数1】
JP2019209441A_000003t.gif

【0115】
【数2】
JP2019209441A_000004t.gif
数1は、微小角dθの法線方向の釣り合いの方程式であり、数2は、微小角dθの接線方向の釣り合いの方程式である。ここで、dθ及びdTが微小と仮定したとき、数1及び数2は、それぞれ数3及び数4のように近似することができる。

【0116】
【数3】
JP2019209441A_000005t.gif

【0117】
【数4】
JP2019209441A_000006t.gif
摩擦力Fと最大摩擦力μNとが同じ大きさになると、滑りが起きる。そのような場合、以下に示す数5が成り立つ。

【0118】
【数5】
JP2019209441A_000007t.gif
数5は、微小角dθにあるベルト100bが、プーリ100a表面上で滑る場合、張力の増加分dTと微小角dθとの関係を示している。ここで、数5を接触角θ全体に亘って積分を行なうことによって、数6に示すようなベルト理論の式を得られる。

【0119】
【数6】
JP2019209441A_000008t.gif
数6から、プーリ(滑車)上におけるベルトの滑りに関して、以下のような重要な特徴(1)~(5)を読み取ることができる。

【0120】
(1)両端の張力Tt及びTsとは、比例関係である。

【0121】
(2)ベルト理論の式(数6)は、プーリ(滑車)の半径を含んでいないので、張力は半径に依存しない。(後述するポリゴンの角部は、曲率半径=0の円柱(の一部)みなすことができる根拠である。)
(3)張力の比(Tt/Ts)は、接触角θと指数関数の関係である。

【0122】
(4)平面領域では、接触角θ=0となるので、摩擦力は平面で作用しない。

【0123】
(5)ベルトの両端における張力Tt、Ts、及び接触角θを含むオイラーのベルト理論(数6)を用いれば、摩擦係数μを算出することができる。

【0124】
特に、特徴(5)を用いることによって、オブジェクトと弾性索との摩擦係数μを算出することができる。

【0125】
次に、ポリゴン形状のオブジェクトに対して、ベルト理論を適用できるように、拡張されたベルト理論(以下、拡張ベルト理論と称する。)を説明する。

【0126】
拡張ベルト理論に拠れば、弾性索がポリゴン形状のオブジェクトに巻き付いた状態を解析することができる。すなわち、弾性索がオブジェクトの角部を滑るか否かを判定することができる。また、特徴(4)が示すように、ポリゴンの角部を曲率半径=0の円柱(円柱の一部)として扱うことができる。

【0127】
この特徴を利用すると、ポリゴン形状のオブジェクトにおける把持力が十分に発生しているか否かは、2つの平面で構成されている角部に巻き付いている箇所を拡張ベルト理論を適用して解析することによって、判断することができる。

【0128】
まず、拡張ベルト理論の基本となるポリゴン形状のオブジェクトの角部における微小要素を、図30を用いて、簡単に説明する。

【0129】
図30に示すように、ポリゴンのオブジェクト100dにベルト100cが、外角Δθに亘って、巻き付いている。ベルト100cの両端(一端及び他端)に、それぞれ張力T、T+ΔTが作用している。また、図30に示すように、ポリゴンのオブジェクト100dとベルト100cとが、外角Δθ内において定常状態(釣り合った状態)である。

【0130】
そして、ポリゴンのオブジェクト40cの外角Δθ内における、張力T、(T+ΔT)、垂直抗力N、摩擦力Fを用いて表した定常状態は、数7及び数8のように示すことができる。

【0131】
【数7】
JP2019209441A_000009t.gif

【0132】
【数8】
JP2019209441A_000010t.gif
数7は、外角Δθの法線方向の釣り合い方程式であり、数8は、外角Δθの接線方向の釣り合いの方程式である。

【0133】
ここで、オイラーのベルト理論で用いた数3~数5を参考にして、数7及び数8を整理する。この結果、角部で滑りが発生している時の角部前後の張力の比は(T+ΔT)/Tは、数9のように表すことができる。

【0134】
【数9】
JP2019209441A_000011t.gif
ポリゴンの角部の外角Δθが微小の場合、数7~数9を用いて、垂直抗力N、摩擦力F、滑り時における張力の比を、算出することができる。

【0135】
ここで、ポリゴンの角部が微小でない場合、拡張ベルト理論に基づく張力の比に、外角Δθが与える影響について検討する。

【0136】
外角θが大きくなるにしたがって、数9に示された張力の比と、拡張ベルト理論との差が大きくなるという問題が生じる。しかし、このような差は、ポリゴンのメッシュ(網)をより細かく区分することによって解消する。例えば、図31に示すように、ポリゴンデータのオブジェクトの接触角θを、n個の角部として、外角(θ/n)ずつ屈曲するように分割することができる。この分割数nを増やすことによって、弾性索の両端の張力の比は、ベルト理論に近づけることができる。

【0137】
次に、ポリゴンデータの角部が奥行き方向の成分を有し、また拡張ベルト理論における奥行き方向の力の様子を図32に示す。

【0138】
そして、角部の摩擦係数μを用いて算出された最大静止摩擦力を用いることによって、角部において弾性索が滑るか否かを判定する手法について説明する。なお、その判定の手法において、角部における摩擦係数μは異方性を持たないと仮定する。すなわち、辺方向を示すベクトルとなす角度ψによって変化する摩擦係数をμ(ψ)とするが、本発明の実施形態では、μ(ψ)=μ(一定)として扱う。

【0139】
ベルト理論によれば、張力ベクトルT^(ハット)を法線に射影したベクトルが、垂直抗力N^(ハット)と釣り合い、且つ張力ベクトルT^(ハット)を接線に射影したベクトルが摩擦力μ|N^(ハット)|と釣り合うと、解釈することができる。

【0140】
上述の解釈を図32に則して換言すると、張力ベクトルT^(ハット)を法線に射影したベクトルが垂直抗力N^(ハット)と釣り合い、且つ張力ベクトルT^(ハット)を接平面に射影したベクトルが摩擦力μ|N^(ハット)|と釣り合うと、解釈することができる。

【0141】
この解釈に基づいて、ベクトル方程式を立てると、数10及び数11のように表すことができる。なお、e^(ハット)1、e^(ハット)2及びe^(ハット)3について説明する。ここで、図32の角部における接平面を張る単位ベクトルをe^(ハット)1、e^(ハット)2、単位法ベクトルをe^(ハット)3とする。また、e^(ハット)1は、ポリゴンの辺方向に一致させた単位ベクトルである。

【0142】
【数10】
JP2019209441A_000012t.gif

【0143】
【数11】
JP2019209441A_000013t.gif
ここで、摩擦係数を用いて最大静止摩擦係数を算出することによって、ポリゴンの辺の角部において、ベルトが滑るか否かが判定することができる。

【0144】
まず、ポリゴンデータの角部とベルトとが接する平面(以下、接平面と称する)を仮に設定する。張力ベクトルT^(ハット)をその接平面内に射影したベクトルF^(ハット)と、最大静止摩擦力(摩擦係数μ×垂直抗力N^(ハット))が、後述する数12のような条件式を満たさないような場合、その角部において滑りが生じるとみなす。

【0145】
そのような釣り合い条件は、数12のように示すことができる。数12を満たすとき、その角部では、滑りは起きない。

【0146】
【数12】
JP2019209441A_000014t.gif
以上説明したように、ベルト理論に基づいて、ポリゴンデータのオブジェクトをベルト(弾性索)で把持することができるか否かを判断する手法(拡張ベルト理論)を示した。

【0147】
第5の実施形態に係る把持装置50では、弾性索がオブジェクトに巻き付く時の形状を、静力学を用いて解析する。弾性索はオブジェクトとの接触以降、弾性索の両端からの張力により、オブジェクトの表面を滑りながら巻き付いていくものとする。そして、上述の特徴(1)~(5)に基づいて、弾性索に作用する張力、垂直抗力及び摩擦力を算出する。このような計算(シミュレーション)を繰り返しながら、各弾性索の位置を算出する。各弾性索の位置に基づいて、各弾性索の移動を解析(シミュレーション)して、弾性索の集合がオブジェクトを包み込み、静力学的釣り合い状態を算出する。

【0148】
そこで、第5の実施形態に係る把持装置50では、オブジェクト及び弾性索のモデル化を行なう。具体的には、オブジェクト形状をポリゴンモデルを用いて表現する。

【0149】
まず、拡張ベルト理論に用いるポリゴンデータのオブジェクトのデータ構造の決定法について説明する。

【0150】
拡張ベルト理論では、オブジェクトの形状を、ポリゴンデータで表現する。そして、ポリゴンモデルは、頂点(Vertex)、稜線(Edge)、面(Face)を構成要素として持つ。

【0151】
そして、その第1のメリットは、不定形なオブジェクトに対して、ポリゴン形状で近似することができることである。また、第2のメリットは、オブジェクトと弾性索の挙動の静力学的解析を、比較的簡素化することができることである。

【0152】
特徴(4)が示すように、オブジェクトをポリゴン形状で表現した場合、弾性索が屈曲する部分は、オブジェクトを構成する辺に限定されるからである。なお、本発明の実施形態に係る把持装置では、オブジェクトを凸面体とした例を示す。

【0153】
また、ポリゴン形状を構成する面は、三角形に限定する。このような限定条件を採用することによって、弾性索とオブジェクトとが接触するか否かの判定を一層簡素化することができる。

【0154】
第5の実施形態に係る把持装置では、ポリゴンデータのデータ構造は、ハーフエッジと呼ばれるデータ構造を用いる。ハーフエッジの概念は、図33に示すように辺に2つの方向を付与し1つの辺を2つに分割するものである。

【0155】
そして、ハーフエッジの概念を適用したポリゴンデータのデータ構造を表1~表3に示す。表1は、オブジェクトのポリゴンについて、ハーフエッジ構造の頂点リストに含まれる情報の行列を示す。表2は、ハーフエッジ構造に含まれるハーフエッジリストに含まれる情報の行列を示す。表3は、オブジェクトのポリゴンのハーフエッジ構造の面リストに含まれる情報の行列を示す。

【0156】
【表1】
JP2019209441A_000015t.gif

【0157】
【表2】
JP2019209441A_000016t.gif

【0158】
【表3】
JP2019209441A_000017t.gif
また、ハーフエッジのモデルにおける隣接要素は、頂点、面、及びハーフエッジである。特に、隣接要素の情報を取得するために検索は必要ないことが、特長である。

【0159】
図33に示される隣接要素(頂点、面、ハーフエッジ)の関係に基づいた位相情報が、ハーフエッジには含まれる。このため、隣接要素の情報を容易に取得することができる。

【0160】
例えば、ハーフエッジaの前ハーフエッジ番号bは、ハーフエッジ行列Hの5行a列目に格納されており、b=H(5,a)と表記する。また、ハーフエッジ行列Hの1行b列目に格納されており、c=H(1,b)と表記する。さらに、頂点行列Vの1~3行c列目に格納されており、d^(ハット)=V(1:3,c)と表記する。そして、頂点cの位置ベクトルd^(ハット)は、d^(ハット)=V(1:3,c)と位置情報を辿って近接情報を取得することができる。

【0161】
また、これらの情報を合成することによって、「ハーフエッジaの前ハーフエッジの始点の位置ベクトルd^(ハット)」を、
JP2019209441A_000018t.gifのような形式で表記することができる。

【0162】
第5の実施形態に係る把持装置において、弾性索は、ポリゴンデータのオブジェクトの表面を、隣の面から隣の面へ滑ることによって、移動する。このため、隣接する要素の情報を頻繁に取得する。そのため、ポリゴン形状のデータ構造として、ハーフエッジ構造を採用するメリットは大きい。なお、表1~表3で示したハーフエッジのデータ構造は、一般的なものである。

【0163】
本発明の第5の実施形態では、表1~表3で示した一般的なハーフエッジのデータ構造に、一層の情報を付加したデータ構造を採用する。

【0164】
まず、ハーフエッジ構造の頂点リストに含まれる情報は、変更はない。しかし、ハーフエッジ構造のハーフエッジリストに含まれる情報に関して、本発明の実施形態では、2列目に終点の頂点番号及びこのハーフエッジの長さなる情報を追加する。そして、ハーフエッジ構造の面リストに含まれる情報に関して、本発明の実施形態に係る把持装置では、単位法ベクトルのx座標、y座標及びz座標なる情報を、それぞれ2列目、3列目及び4列目に追加する。

【0165】
ここで、第5の実施形態に係る把持装置50で用いるハーフエッジのデータ構造を表4~6に示す。

【0166】
表4は、オブジェクトのポリゴンについて、ハーフエッジ構造の頂点リストに含まれる情報の行列を示す。表5は、ハーフエッジ構造に含まれるハーフエッジリストに含まれる情報の行列を示す。表6は、オブジェクトのポリゴンのハーフエッジ構造の面リストに含まれる情報の行列を示す。

【0167】
【表4】
JP2019209441A_000019t.gif

【0168】
【表5】
JP2019209441A_000020t.gif

【0169】
【表6】
JP2019209441A_000021t.gif
まず、ハーフエッジの概念をなすハーフエッジ構造と各要素のリンク関係を図33に示す。そして、ハーフエッジは、面の外周をポリゴンの外部から見て反時計回りに1周するように配置されている。図33に示すように互いに次(next)、及び前(prev)という変数を用いて、前後のハーフエッジへのリンクを保持する。また、稜線を表すペアを対(pair)という変数で互いにリンクする。さらに、ハーフエッジを含む面及びハーフエッジの起点となる頂点へのリンクも保持する。頂点には、その頂点を起点とするハーフエッジへのリンクを1つだけ持たせる。よって、どれか一つのハーフエッジがわかれば、そこから巡回して、周囲の面や頂点を取得できる。

【0170】
そして、第5の実施形態に係る把持装置では、ポリゴン表面上を、隣接する面上から隣接する面へと滑って、弾性索が移動することが想定される。したがって、本発明の実施形態に係る把持装置におけるポリゴン上の弾性索の挙動を解析する際は、オブジェクトのデータ構造には、ハーフエッジを用いて記述する。

【0171】
なお、第5の実施形態に係る把持装置では、専用ソフトを用いて、ハーフエッジのデータ構造を有するポリゴンデータが生成される。そして、生成されたポリゴンデータは、専用ソフトを用いて解析できるように保存される。

【0172】
次に、弾性索のモデル化について説明する。

【0173】
前述のように、オブジェクトの表面の曲がっている部分(角部)が、垂直抗力と摩擦力が作用する部分である。つまり、垂直抗力と摩擦力が作用する部分は、オブジェクトのポリゴンの辺(エッジ)に限定される。

【0174】
したがって、図34に示すように、オブジェクト辺上に設けられた各ノードを端から端に順に線分で結ぶことによって、弾性索の形状を表現することができる。図34において、黒点部は各ノードを、実線は弾性索がオブジェクトの表面に接している接触部を、破線は弾性索がオブジェクトの表面から浮いている(離れている)浮遊部を、それぞれ示している。

【0175】
また、ノードが乗っているハーフエッジの番号と、そのハーフエッジ上での位置座標とを用いて、ノードの位置を表現することができる。

【0176】
しかし、ハーフエッジの番号と、ハーフエッジ上の位置座標だけでは、弾性索(内部)の伸縮を表現することができない。そこで、弾性索のデータ構造には、新たな変数を追加する必要がある。表7に、弾性索のデータ構造を示す。

【0177】
【表7】
JP2019209441A_000022t.gif
まず、弾性索のデータ構造においては、i番目のノードを「ノードi」と表記する。そして、ノードiとノードi+1に挟まれた弾性索区間を、「弾性索i」と表記する。弾性索のノードiは、変数mi、変数ui及び変数viなる3つの変数で表される。ここで、変数mi、変数ui及び変数viに関して、説明する。

【0178】
まず、変数miは、ノードiが乗るハーフエッジの番号を示す。そして前述のように、1本の辺には、2本のハーフエッジが重なって存在するところ、弾性索iが接している側の面に所属するハーフエッジを選択する。

【0179】
また、変数uiに関しては、ハーフエッジの始点を変数ui=0、終点を変数ui=1と設定し、ノードiがハーフエッジ上に存在する位置座標を示す。

【0180】
さらに、変数viに関しては、弾性索全体の一方の端点を変数v1=0、もう一方の端点を変数vNn=1と設定し、弾性索全体を自然長に戻した状態における各ノード位置座標(弾性索の自然長を基準とした位置座標)を示す変数である。 ここで、変数viの変化に関して解説すると、変数viが増加する場合は、弾性索iがノードiを通って、弾性索i-1へ流入することを意味する。

【0181】
なお、弾性索の両端(i=1,Nn)は、オブジェクトに接触しないノードである。このため、弾性索の両端(i=1,Nn)における変数mi及び変数uiは、定義することができないので、それらは空白として処理される。

【0182】
次に、3変数mi(ハーフエッジの番号)、ui(ハーフエッジ上のノードiの位置座標)、vi(弾性索の自然長を基準としたノードiの位置座標)と、ポリゴンデータであるV^(ハット)(Vertex(頂点))、H^(ハット)(Halfedge(ハーフエッジ))、F^(ハット)(Face(面))とを用いることによって、弾性索のノードの位置ベクトルとノードとの間に作用する張力を算出することができることを、例を挙げて説明する。

【0183】
例えば、ノードiが乗るハーフエッジの始点及び終点の位置座標を、表4~6に示した位相関係を用いて、それぞれ数13及び数14のように表すことができる。

【0184】
【数13】
JP2019209441A_000023t.gif

【0185】
【数14】
JP2019209441A_000024t.gif
なお、補足すると、H(1,mi)は、ハーフエッジの始点p^(ハット)hsの頂点番号、H(2,mi)は、ハーフエッジの終点p^(ハット)heの頂点番号のを意味する。また、V^(ハット)(1:3,i)は、頂点番号iの頂点の位置ベクトル(xi、yi、zi)座標を意味する。

【0186】
また、ノードiは、ハーフエッジの始点と終点をui:(1-ui)に内分する点に相当する。このため、ノードiの位置ベクトルp^(ハット)i=[xi,yi,ziTを、位置ベクトルp^(ハット)hs、位置ベクトルp^(ハット)he、及び変数uiを用いて、数15のように、算出することができる。

【0187】
【数15】
JP2019209441A_000025t.gif
次に、ノードiとノードi+1との間に作用する張力を算出する。

【0188】
まず、弾性索iの長さliを、ベクトルp^(ハット)i及びp^(ハット)i+1を用いて、数16のように表すことができる。

【0189】
【数16】
JP2019209441A_000026t.gif
弾性索全体の自然長をL0とし、弾性索iの自然長Liを、数17のように表すことができる。

【0190】
【数17】
JP2019209441A_000027t.gif
数16及び数17より、弾性索iの縦歪みεiを、数18のように表すことができる。

【0191】
【数18】
JP2019209441A_000028t.gif
ここで、縦歪みと張力の関係を示す近似式を以下に示すような数19~数21とする。

【0192】
【数19】
JP2019209441A_000029t.gif

【0193】
【数20】
JP2019209441A_000030t.gif

【0194】
【数21】
JP2019209441A_000031t.gif
そして、数19~数21に、数18のように表された縦歪みを代入することによって、張力を算出することができる。弾性索iが、ノードiに印加する張力t^(ハット)i,iの大きさti,iは、数22~24のように表すことができる。なお。数20及び数21における係数aiについては、引張試験機等を用いて、各弾性索の張力と歪みとの関係を計測することによって計測する。

【0195】
【数22】
JP2019209441A_000032t.gif

【0196】
【数23】
JP2019209441A_000033t.gif

【0197】
【数24】
JP2019209441A_000034t.gif
また、張力の方向は、弾性索の方向と一致しているため、張力ベクトルt^(ハット)i,iは、ベクトルp^(ハット)i、p^(ハット)i+1及び張力ベクトルt^(ハット)i,iを用いて、数25のように表すことができる。

【0198】
【数25】
JP2019209441A_000035t.gif
さらに、弾性索iは、ノードi+1にも逆向きの力t^(ハット)i,i+1を加えているため、数26のような関係が成り立つ。

【0199】
【数26】
JP2019209441A_000036t.gif
以後、t^(ハット)i,iはt^(ハット)iとも表記する。

【0200】
以上の数式を用いて、各ノードiに作用する摩擦力、3変数mi(ハーフエッジの番号)、ui(ハーフエッジ上のノードiの位置座標)、vi(弾性索の自然長を基準としたノードiの位置座標)を算出することによって、弾性索の状態を表現することができる。

【0201】
次に、第5の実施形態に用いられる弾性索の移動を解析(シミュレーション)について説明する。

【0202】
前述のように、行列V^(ハット)、行列H^(ハット)、及び行列F^(ハット)は、オブジェクトのポリゴンデータの情報を示す。行列V^(ハット)のm行n列目の要素については、例えば、スカラー量であるV(m,n)のように表記する。行列H^(ハット)、行列F^(ハット)のm行n列目の要素についても、同様に表記する。なお、(l~m)行n列目のように複数の要素からなる行列を表現する場合には、V^(ハット)(l:m,n)のように表記する。

【0203】
なお、最終行と最終列の番号は「end」と表記する。

【0204】
以下、弾性索の移動を解析(シミュレーション)に使用する変数を定義する。

【0205】
j:弾性索の端点配置番号
i:ノード番号
0:弾性索全体の自然長(張力がかからない弾性索全長)
μ:弾性索とオブジェクトとの間の摩擦係数
i:ノードiが乗るハーフエッジ番号
i:ハーフエッジ上におけるノードiの位置座標
i:自然長の弾性索上におけるノードi位置座標
ηi:ノードiの滑り判定指数(ηi=|f^(ハット)i|-μ|N^(ハット)i|(ηi>0・・・滑る、ηi≦0・・・滑らない))
JP2019209441A_000037t.gif j=1,2,3,・・・と移動させることによって、各配置における弾性索形状を決定する」
JP2019209441A_000038t.gif j=1,2,3,・・・と移動させることによって、各配置における弾性索形状を決定する」
E^(ハット)i:ノードiにおける局所座標系
JP2019209441A_000039t.gif t^(ハット)i:弾性索iがノードiに加える張力
T^(ハット)i:ノードiに加わる張力の合力

JP2019209441A_000040t.gif N^(ハット)i:ノードiに加わる垂直抗力
f^(ハット)i:T^(ハット)iをノードiにおける接平面へ投影したベクトル
|f^(ハット)i|が最大静止摩擦力μ|N^(ハット)i|を超えれば、ノードiは滑る
次に、弾性索の端点配置jにおける、弾性索の形状を解析(決定)する手順(1)~(10)を以下に示す。

【0206】
(1)ノードの生成及び削除に関して、弾性索の端点を前の配置j-1から、配置jへ移動した結果、弾性索がオブジェクトの辺に、新しく接触する場合は、ノードを追加する。また、弾性索がオブジェクトの辺から離れる場合は、ノードを削除する。

【0207】
(2)弾性索データであるmi(ハーフエッジの番号)、ui(ハーフエッジ上のノードiの位置座標)、vi(弾性索の自然長を基準とした位置座標)に基づいて、ノード位置p^(ハット)i及び弾性索の張力t^(ハット)iを算出する。

【0208】
(3)各ノードに作用する張力の合力T^(ハット)i、垂直抗力N^(ハット)i、最大静止摩擦力μ|N^(ハット)i|を算出する。

【0209】
(4)判定指数ηiの符号に基づいて、ノードが滑るか否かを判定する。

【0210】
(5)滑るノードに関しては、ノードは判定指数ηiに比例した距離に応じて、張力のベクトルT^(ハット)iの方向へ移動すると仮定する。

【0211】
(6)ノードの移動量を変換することによって、弾性索の変数ui(ハーフエッジ上のノードiの位置座標)、vi(弾性索の自然長を基準としたノードiの位置座標)の変化量を算出する。

【0212】
(7)更新されたui、及びviに基づいて、ノードがハーフエッジの端点に到達する場合は、その頂点を超えた別のハーフエッジにノードが移動する。

【0213】
(8)更新されたui、及びviに基づいて、ノードを移動し、手順(1)に戻る。

【0214】
(9)手順(1)~(7)を繰り返す。全ノードが滑らなくなったならば、端点配置jにおける弾性索形状の計算を終了し、計算結果を保存する。

【0215】
(10)端点を次の配置j+1に移動される。手順(1)に戻る。

【0216】
手順(2)~(6)までのメインプログラムは、ノードがオブジェクトの辺上を移動する「辺上移動」のアルゴリズムである。

【0217】
なお、辺上移動のフローから外れる特殊現象を処理する場合は、それぞれサブプログラム(サブルーチン)で処理される。具体的には、移動する弾性索が、新しくオブジェクトの辺に接触することを「着辺」と呼び、オブジェクトの辺から離れることを「離辺」と呼ぶ。着辺及び離辺は、手順(1)が対応する。ノードがハーフエッジの端に到達した後、頂点を越えて次のハーフエッジに移動する「頂点越え」は、手順(7)として示した。

【0218】
まず、メインプログラムである「辺上移動」のアルゴリズムについて、説明する。ここで、滑り判定指数ηiを算出する方法を、順番に説明する。

【0219】
まず、数15に基づいて、ノードの位置p^(ハット)iと数22~24に基づいて、弾性索iの張力T^(ハット)iを算出する。ノードには、弾性索iと弾性索i-1から張力が作用する。張力の合力ベクトルT^(ハット)iは、以下に示すような数27~29を用いて、垂直抗力方向と摩擦力方向に分解することができる。最初のノード、すなわちノード番号が1の場合は、数27のように張力ベクトルT^(ハット)iを表すことができる。ノード番号が2~(end-1)の場合は、数28のように張力ベクトルT^(ハット)iを表すことができる。最後のノード、すなわちノード番号がendの場合は、数29のように張力ベクトルT^(ハット)iを表すことができる。

【0220】
【数27】
JP2019209441A_000041t.gif

【0221】
【数28】
JP2019209441A_000042t.gif

【0222】
【数29】
JP2019209441A_000043t.gif
張力ベクトルT^(ハット)iを分解する方向を示す局所座標系
JP2019209441A_000044t.gifは、e^(ハット)i,1,e^(ハット)i,2,e^(ハット)i,3の順に以下のように決定する。

【0223】
まず、e^(ハット)i,1は、ノードiが乗っているハーフエッジの方向とする。そして、数13及び数14で表したハーフエッジの始点と終点の位置ベクトルp^(ハット)hs及びp^(ハット)heを用いて、数30のように表すことができる。

【0224】
【数30】
JP2019209441A_000045t.gif
また、e^(ハット)i,3に関しては、e^(ハット)i,1と弾性索i-1で張られた面と、e^(ハット)i,1と弾性索iで張られた面との2面を想定する。それぞれの単位法ベクトルn^(ハット)i,i-1及びn^(ハット)i,iは、それぞれ以下の数31及び数32のように表すことができる。

【0225】
【数31】
JP2019209441A_000046t.gif

【0226】
【数32】
JP2019209441A_000047t.gif
この2面の中間に対応する面を、ノードiにおけるオブジェクトの接平面Snとする。接平面Snの法ベクトルをe^(ハット)i,3とする。

【0227】
したがって、数33が示すようにベクトルn^(ハット)i,i-1及びn^(ハット)i,iの合成ベクトル方向が、e^(ハット)i,3の方向である。

【0228】
【数33】
JP2019209441A_000048t.gif
また、e^(ハット)i,2については、数34に示すように、e^(ハット)i,1及びe^(ハット)i,3に直交する方向として表すことができる。

【0229】
【数34】
JP2019209441A_000049t.gif
次に、張力ベクトルT^(ハット)iのe^(ハット)i,3方向成分の力が、垂直抗力と釣り合うため、垂直抗力は数35として表すことができる。

【0230】
【数35】
JP2019209441A_000050t.gif
そして、分解されたT^(ハット)iのもう一方の成分f^(ハット)iは、e^(ハット)i,1及びe^(ハット)i,2で表される接平面内に存在しているため、以下に示す数36で表される。

【0231】
【数36】
JP2019209441A_000051t.gif
以上のように計算した結果、滑り判定指数ηiは、以下の数37のように表すことができる。

【0232】
【数37】
JP2019209441A_000052t.gif
滑り判定指数ηiが、0以下(ηi≦0)であるならば、注目するノードiを滑らせようとする力の大きさ|f^(ハット)i|が、最大静止摩擦力の大きさμ|N^(ハット)i|以下であるため、ノードiは滑らないと判断することができる。そして、この判断によって、滑り移動の処理は行われない。

【0233】
一方、滑り判定指数ηiが、0を越える(ηi>0)ならば、注目するノードiを滑らせようとする力の大きさ|f^(ハット)i|が、最大静止摩擦力の大きさμ|N^(ハット)i|を越えるため、ノードiは滑ると判断することができる。そして、この判断によって、滑り移動の処理は行う。

【0234】
次に、滑り移動の処理について説明する。滑り移動の処理は、注目するノードiを接平面内で仮想的に移動するものとする。

【0235】
そこで、注目するノードiの仮想的な移動ベクトルΔδ^(ハット)iを算出し、Δδ^(ハット)iに基づいて、変数vi(弾性索の自然長を基準とした位置座標)の変化量Δviを算出する。

【0236】
ノードiの仮想的な移動を示すベクトルΔδ^(ハット)iを図35に示す。ベクトルΔδ^(ハット)iは、f^(ハット)iと平行な大きさαηiのベクトルで、以下に示す数38のように表すことができる。なお、αは、繰り返し計算におけるステップ幅である。

【0237】
【数38】
JP2019209441A_000053t.gif
ベクトルΔδ^(ハット)iについては、e^(ハット)i,1方向の大きさをΔδi,1、e^(ハット)i,2方向の大きさをΔδi,2として、それぞれ数39及び数40のように表すことができる。

【0238】
【数39】
JP2019209441A_000054t.gif

【0239】
【数40】
JP2019209441A_000055t.gif
Δδi,1は、ノードiが乗るハーフエッジに沿った方向に移動した量である。ノードiがハーフエッジ上をΔδi,1分移動した場合、変数ui(ハーフエッジ上のノードiの位置座標)の変化量Δuiとの間に、以下の数41のような関係が成立する。

【0240】
【数41】
JP2019209441A_000056t.gif
数41におけるH(7、mi)は、前述のように、ノードiが乗るハーフエッジの長さを示す。数41を変形することによって、変化量Δuiは、数42のように表すことができる。

【0241】
【数42】
JP2019209441A_000057t.gif
続いて、Δδi,2に基づいて、変数vi(弾性索の自然長を基準としたノードiの位置座標)の変化量Δviを算出する。

【0242】
ここで、図36に、弾性索の伸縮(伸張)に関する概念図を示す。図36によれば、Δδi,2≦0且つΔδi,2≧0の場合、弾性索iは引き伸ばされる。引き伸ばされた弾性索i’の長さは、数43のように表される。

【0243】
【数43】
JP2019209441A_000058t.gif
なお、弾性索iと弾性索i’とでは、両端の変数vは、変化しない。このため、p^(ハット)'iにおいてはvi、またp^(ハット)'i+1においてはvi+1である。

【0244】
したがって、vi~vi+1
JP2019209441A_000059t.gifの比で内分した値が、ノード移動後の新しいv'iである。そのv'iは、数44のように表すことができる。

【0245】
【数44】
JP2019209441A_000060t.gif
また、vi~vi+1
JP2019209441A_000061t.gifの比で内分した値が、移動後の新しいv'i+1である。そのv'i+1は、数45のように表すことができる。

【0246】
【数45】
JP2019209441A_000062t.gif
そして、Δv'i、及びΔv'i+1、は、
JP2019209441A_000063t.gifを用いて、それぞれ数46及び数47のように表すことができる。

【0247】
【数46】
JP2019209441A_000064t.gif

【0248】
【数47】
JP2019209441A_000065t.gif
ここで、数47-数46を演算することによって、v'i+1-v'iを解くと、数48にように表すことができる。さらに、v'i+1-v'iは、数48を整理することによって、数49のように表すことができる。

【0249】
【数48】
JP2019209441A_000066t.gif

【0250】
【数49】
JP2019209441A_000067t.gif
さらに、v'i+1-v'i、を
JP2019209441A_000068t.gifを用いて、表すことができるが、変数vが昇順であることを考慮すると、vi+1-viは、0未満の値を取ることは許されない。すなわち、v'i+1-v'iは、0以上であり、「変数vが昇順である」という条件を保障できる。

【0251】
一方、0<Δδi,2又はΔδi,2<0である場合、外分を用いてv'i+1-v'iを解くと、数50のようになる。そして、数50を整理することによって、v'i+1-v'iを、数51のように表すことができる。

【0252】
【数50】
JP2019209441A_000069t.gif

【0253】
【数51】
JP2019209441A_000070t.gif
そして、数51において、
JP2019209441A_000071t.gifは、1より大きくなり得る。このため、v'i+1-v'iは、0未満になり得る。よって、「変数vが昇順である」という条件を保証できない。そのため、0<Δδi,2又はΔδi,2<0である場合、このような手法は適切ではない。

【0254】
しかし、「Δδi,2≦0且つΔδi+1,2≧0」を満たす場合、数44~47を用いて、すべてのΔviを解くことができる。

【0255】
以上の事項から、弾性索iが、計算可能条件である「Δδi,2≦0且つΔδi+1,2≧0」を満たす弾性索iは必ず存在する。その弾性索iにおいて、数44~45によって更新されたノードは、Δδi,2=0とみなすことができる。
したがって、すべてのΔviを解くことができる。

【0256】
以上の説明を踏まえて、弾性索の滑りを判定し、弾性索が辺上を移動する動きをシミュレートするためのフローチャートを図37に示す。

【0257】
まず、制御部6は、弾性索データ(mi,ui,vi)に基づいて、ノード位置p^(ハット)iを算出する(ステップS60)。

【0258】
次に、変数mi及びノードiの位置ベクトルp^(ハット)iに基づいて、局所座標系E^(ハット)iを決定し、弾性索の張力ベクトルt^(ハット)iを算出する(ステップS61)。

【0259】
さらに、制御部56は、ノードiに加わる垂直抗力ベクトルN^(ハット)i、張力ベクトルの合力T^(ハット)iをノードiにおける接平面へ投影したベクトルf^(ハット)iを算出する(ステップS62)。すなわち、各ノードiに対して作用する張力の合力T^(ハット)i、垂直抗力ベクトルN^(ハット)i、及び張力の合力ベクトルT^(ハット)を接平面へ投影したベクトルを算出する。

【0260】
そして、ノードiに関して、張力ベクトルN^(ハット)i、ベクトルf^(ハット)i及び摩擦係数μに基づいて、判定指数ηiを算出する(ステップS63)。

【0261】
ここで、ノードiの判定指数ηi≦0であるか否かを判断する(ステップS64)。すなわち、判定指数ηiに基づいて、ノードiがオブジェクトの辺を滑るか否を判断する。

【0262】
ステップS64の判断がNoであるならば、判定指数ηi>0のノードiに対応する変数ui及びviの変化量Δui及びΔviをそれぞれ算出し、変数ui及びviを更新する(ステップS65)。すなわち、ノードiは滑ると判断することによって、滑り移動の処理は行う。具体的には、滑ると判断されたノードiに関して、判定指数ηiに比例した量に応じて、張力の合力T^(ハット)iの方向へ移動する。そして、後述する「頂点越え」の処理を行う(ステップS66)。ステップS66の処理後、ステップS60に戻る。変数ui及び変数viを更新することにより、ノードがハーフエッジの端点に到達した場合には、その頂点を越えた別の(隣接する次の)ハーフエッジに、そのノードをハーフエッジに移動し、移し替える。

【0263】
また、ステップS64の判断がYesであるならば、各ノードiの弾性索データ(mi,ui,vi)を記録する(ステップS67)。すなわち、全ノードが滑らない状態となるまで、ステップS60~ステップS66までの処理を繰り返し、端点配置jにおける弾性索の形状計算を終了し、形状を記録する。

【0264】
このようにして、ステップS67の後、制御部56は、弾性索の端点配置jが最後であるか否かを判断する(ステップS68)。

【0265】
ステップS68の判断がYesであるならば、辺上移動の処理を終了する。

【0266】
ステップS68の判断がNoであるならば、端点配置j+1を移動する(ステップS69)。弾性索の端点を次の端点配置j+1の位置に移動(変更)する。具体的には、弾性索の端点を前の配置j-1から配置jへ移動させる。移動後、オブジェクトに弾性索が接触して生成された新規のノードが追加される。逆に、弾性索がオブジェクトの辺から離れたノードは削除される。

【0267】
続いて、着辺又は離辺する処理を行う(ステップS70)。ステップS70の処理後、ステップS60に戻る。なお、辺上移動の基本的なフローから逸脱する現象は、特殊現象として扱われる。それらは、それぞれサブプログラム(サブルーチン)として処理される。移動する弾性索が新規にオブジェクトの辺に接触する現象が「着辺」である。逆に、弾性索がオブジェクトの辺から離れる現象が「離辺」である。また、オブジェクトの頂点を越えた別のハーフエッジへ乗り移る現象が「頂点越え」である。

【0268】
凹部を有さないオブジェクトにおける弾性索の着辺及び離辺が発生する箇所を説明する。弾性索の一方の端点、他方の端点を、それぞれノード1、ノードendと設定する。結果的に、オブジェクトが凹部を有さない凸多面体である場合、弾性索の着辺及び離辺が発生する範囲は、弾性索i(i=2~end-2)に限られる。モデル化した弾性索は、一方の端点からもう一方(他方)の端点まで、オブジェクトの辺に配置されたノードは、すべてオブジェクト表面上の点(オブジェクトの辺)に存在する点である。また、凸多面体の性質として、「凸多面体の表面の任意の2点を結んだ線分は、すべてこの凸多面体の内部に存在する」ことは、明らかであるからである。したがって、弾性索i(i=2~end-2)は、すべてオブジェクトの表面に存在し、弾性索iの浮遊部は存在しない。そして、浮遊部になる弾性索は、オブジェクトの外に存在するノード、すなわちノード1及びノードend(ノードi(i=1,end))である弾性索i(i=1,end-1)に限られる。

【0269】
次に、12本の弾性索の集合によるポリゴンデータのオブジェクトを拘束し、把持するシミュレーションを説明する。シミュレーションの条件は、表8に示すとおりである。

【0270】
【表8】
JP2019209441A_000072t.gif
続いて、オブジェクトを把持する様子を図38~39に示す。

【0271】
また、把持装置50の弾性索52の集合が並列して上下の支持部(円環)52a及び52bを繋いで形成された把持空間Hに、ポリゴン形状のオブジェクトが配置された初期状態を図38に示す。

【0272】
そして、支持部12本の弾性索52の集合で形成された把持空間Hが、下側の支持部52bが回転させることによって、くびれ部を徐々に狭くしていく様子を図38~図41に示す。図38~図41には、弾性索52の集合がオブジェクトを包み込み、また巻き付いていく様子が示されている。図40では、下側の支持部52bが上側の支持部52aに対して、180度回転した状態で把持動作を終えていることが示されている。また、図40では、巻き付きが完了した様子を示している。さらに、図41では、図40の状態から装置を上方へ変位させ、オブジェクトを持ち上げようとする様子を示している。

【0273】
次に、本発明の第5の実施形態に係る把持装置50がポリゴン形状のオブジェクトを把持する実例を示す。まず、把持装置50の把持部58の外観を図42に示す。図42に示すように、支持部53a及び53bは、アクリル円環で作製されている。アクリル円環に10°毎に孔が開けられている。

【0274】
また、各孔の位置に各弾性索52の端部を固定することができるように構成されている。この構成によって、弾性索52の端部を半径105mmの円の上に配置することができる。図42が示すように、上側及び下側の支持部53a及び53bは、回転する回転部55に固定されている。

【0275】
そして、回転部55が回転することによって、2つの円環状の支持部53a及び53bは、相対的な角度で限定された回転運動をすることができる。図43~図45に示すように、2つの支持部53a及び53bが相対的な角度で回転することによって、把持空間のくびれ部の内径を小さくするように制御することができる。なお、くびれ部は、白点線の円で表す。

【0276】
そして、図46は、シャープペンシルの芯のようなオブジェクトを容易に把持する様子を示す図である。

【0277】
次に、支持軸を配してポリゴン化した球体のオブジェクトを図47に示す。

【0278】
また、図48は、本実施形態に係る把持装置50を用いて、オブジェクトとして、支持軸を配してポリゴン化した球体を把持する様子を示している。

【0279】
把持装置50は、図48に示すように、弾性索52を、オブジェクトを安定して把持できる回転角度まで回転させる。そして、制御部56が、把持を確保できる相対的な回転角度まで回転させる役割を果たしている。

【0280】
このため、オブジェクトが、把持空間の中央に配置されている必要はない。そして、オブジェクトが、くびれ部が締まってくれば、適切に把持を行うことができる。

【0281】
また、把持装置50では、把持空間がオブジェクトを包み込むことによって、オブジェクトの姿勢(位置又は方向)を制御することができる。このため、図48に示すように、オブジェクトを把持した状態で、把持装置50の姿勢を制御する場合にも、オブジェクトが動くことによって、オブジェクトを変形又は破損することを防止することができる。それに加えて、オブジェクトをプレースする際の姿勢や位置の精度を一層向上させることができる。

【0282】
また、把持装置50では、把持空間がオブジェクトを包み込むことによって、オブジェクトを拘束するため、オブジェクトと弾性索52の集合とが接触する面積を大きくすることができる。これにより、把持装置50は、オブジェクトに掛かる把持力(摩擦力)を分散させることができる。

【0283】
そのため、図48に示すように、変形し易いオブジェクトであっても、拘束によって、オブジェクトが変形するような、局所的な力がオブジェクトにかかることを防止することができると考えられる。

【0284】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態に係る把持装置60を説明する。

【0285】
上下の支持部63aと63bとの間において、より高い自由度の相対運動が出来るために、第6の実施形態に係る把持装置60は、第1の実施形態に係る把持装置10に対して、回転部5、連結部7a及び7bに代えて、パラレルマニピュレータ65及び回転ステージ69を備えている点が異なっているが、その他の構成は略同じである。第1の実施形態と共通する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。

【0286】
図49は、第6の実施形態に係る把持装置60の概略構成を示す図である。図49に示すように、第6の実施形態に係る把持装置60は、第1の実施形態に係る把持装置1と同様に、複数の弾性索62(弾性索62の集合)と、一対の支持部63a及び63bと、パラレルマニピュレータ65及び回転ステージ69の駆動制御を行なう制御部66と、を備えているが、支持部3a及び3bを回転運動させる回転部5と、回転部5と支持部3a及び3bとを結合する結合部7a及び7bを、備えていない。

【0287】
第6の実施形態に係る把持装置60においては、3組のマニピュレータは、それぞれ支持部63a及び63bの略中心に円周上120度等配するように配置される。各マニピュレータ65は、回転アクチュエータ65a、リンク65b、回転対偶65c、リンク65d、及び球対偶65eから構成されている。

【0288】
図49に示すように、リンク65bの一方の基端は、回転アクチュエータ65aに接続される。リンク65bの他方の基端は、回転待遇65cに接続される。リンク65dの一方の基端は、球待遇65eに接続される。制御部66は、支持部3a及び3bの上に配置された3組の回転アクチュエータ65aのそれぞれに、動作指令値を与える。

【0289】
それによって、各リンク65bを回転アクチュエータ65aの回転軸まわりに揺動させることができる。

【0290】
また、3組のリンク65bの揺動状態を組み合わせることにより、3組のリンク65dと3組の球対偶65eで連結された支持部63aを3次元的に位置制御することができる。このとき、3組の回転対偶65c及び球対偶65eの拘束によって、支持部63aと63bとの相対的変位を制御することができる。

【0291】
さらに、第6の実施形態に係る把持装置60においては、支持部63aの上に、回転ステージ部69を搭載することにより、支持部63aと支持部63bとの相対的角度を0~360°まで回転させることができる。

【0292】
また、回転ステージ部69は、支え部69a、及びステージ部69cで構成されている。そして、支え部69aは、モータ回転部69bと支持部63aとの位置関係を固定するように配設されている。モータ回転部69bから突出したモータ回転軸69b’の軸方向と、ステージ部69cの面に垂直となるように、ステージ部69cは、モータ回転軸69b’に配設され固定される。

【0293】
制御部66は、モータ回転部69bのステージ部69cが所定の回転角度まで回転するように、モータ回転部69bに動作指令値を出力する。

【0294】
したがって、回転ステージ部69を用いた支持部63a及び63bの回転に加え、マニピュレータ65を用いた支持部63a及び63bの相対的変位を制御することによって、弾性索62の集合によって形成された空間は、変形することができる。

【0295】
その結果、把持装置60では、把持装置1以上に、把持空間を自由に変形することができるという格別の効果が得られる。

【0296】
以上、実施例を用いて本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。

【0297】
例えば、本発明の実施形態に係る把持方法及び装置において、弾性索とオブジェクトとの接触点の位置を制御し、オブジェクトを幾何学的に拘束する把持方式(フォームクロージャ)、弾性索とオブジェクトとの接触点から加えられる力を制御して、オブジェクトに作用する力をつり合わせることによって拘束する把持方式(フォースクロージャ)のいずれを用いて、オブジェクトを把持するようにしても良い。

【0298】
また、第1の実施形態に係る把持装置1において、弾性索2の材料として、天然ゴム及びラバーバンドを例に挙げたが、これに限られることはない。弾性索2の材料は、弾性を有する紐状物体(弾性体の紐又はバンド)であれば良く、金属製、樹脂製等でも良く、材料は限定されない。例えば、弾性索2として、金属性のバネ等を採用しても良い。さらに、弾性索2に代えて、弾性を有する網(ネット)又は膜を用いても良い。

【0299】
さらに、第1の実施形態に係る把持装置1において、支持部3a、3bが、互いに逆向きに回転して、弾性索2の集合によって形成された把持空間は、変形する例を挙げたが、支持部3a、3bの一方を固定し、他方を回転させて弾性索2の集合によって形成された把持空間は、変形させても良い。

【0300】
また、第2の実施形態に係る把持装置20において、センサ8として、磁石とホール素子の相対的位置関係に基づいて、弾性索2の張力を算出するもの、及び感圧導電性紐9b、9cの接触点数(接触面積)の増加(変化)に応じた電気抵抗値の変化を用いて、弾性索2の張力を算出するものを挙げたが、これに限られるものではない。

【0301】
さらに、第2の実施形態に係る把持装置20において、2本の弾性索2に対して、一方の端にセンサ8を配置し、他方の端にセンサ80を配置している例を挙げたが、これに限られるものではない。例えば、任意の弾性索2に対して、一方の端にセンサ8を配置し、他方の端にセンサ80を配置して、検出した各弾性索2の張力に基づいて、弾性索2の集合で形成された把持空間Hを変形させるように制御をしても良い。また、センサ8の個数とセンサ80の個数とを異なるように、それぞれ支持部3a及び3bに配置しても良い。例えば、把持空間Hを変形させて、オブジェクトを拘束することに支障がなえれば、支持部3aのみにセンサ8を配置しても良い。同様に、支持部3bのみにセンサ80を配置しても良い。

【0302】
また、第3の実施形態に係る把持装置30において、オブジェクトを幾何学的の拘束できたか否かを判断する手法として、オブジェクトの画像の現在の中心位置の変化を推定するものが挙げたが、これに限られることはない。例えば、撮像部31から送信された画像データから、弾性索2の画像を抽出し、オブジェクトの表面に巻き付いた弾性索2の特徴(例えば、面積、長さ、曲率、又は屈曲点の位置且つ/又は個数等)に基づいて、把持索2がオブジェクトを包み込むように拘束したか否かを判定しても良い。

【0303】
さらに、第4の実施形態に係る把持装置40、及び第5の実施形態に係る把持装置50では、ポリゴンのデータ構造として、ハーフエッジを採用することを説明したが、これに限られることはなく、例えば、ポリゴンセット、インデックスフェースセットなる構造を採用しても良い。また、オブジェクトをポリゴン分割する際、ポリゴン形状を構成する面は、三角形に限定して説明したが、これに限られることはない。例えば、ポリゴン形状を構成する面を四角形、五角形又は六角形としても良く、六角形以上の多角形を用いても良い。さらに、ポリゴン形状の構成する面を、複数の多角形で構成しても良く、例えば、三角形と四角形、又は五角形と四角形混在して構成するようにしても良い。

【0304】
さらに、第6の実施形態に係る把持装置60では、3本のパラレルリンクマニピュレータ65を使用する例を説明したが、これに限られることはなく、3本以上のパラレルリンクマニピュレータを有するように構成しても良い。また、第6の実施形態に係る把持装置60では、3組のマニピュレータは、それぞれ支持部63a及び63bの略中心に円周上120度等配するように配置される例を説明したが、支持部63a及び63bの略中心の円周上に等しい角度で配する必要はなく、異なる角度で配するようにしても良い。また、各マニピュレータ65は、回転アクチュエータ65a、リンク65b、回転対偶65c、リンク65d、及び球対偶65eの順に接続される必要はなく、回転アクチュエータ65a、リンク65b、回転対偶65c、リンク65d、及び球対偶65eの接続の順は、目的に応じて自由に構成することができる。例えば、球対偶65eと回転対偶65cとの位置を入れ替え、回転アクチュエータ65a、リンク65b、球対偶65e、リンク65d、及び回転対偶65cの接続の順に構成しても良い。さらに、球対偶65e又は回転対偶65cの個数を2以上に構成して、把持空間が一層自由に変形することが出来るように構成しても良い。さらに、リンク65b及びリンク65dの長さは、自由に設計しても良い。
【符号の説明】
【0305】
1、10、20、30、40、50、60 把持装置
2、42、52、62 弾性索
3a、43a、53a、63a 支持部
3b、43b、53b、63b 支持部
3c、3d 開口部(孔)
4、44 固定部
5、45、55 回転部
5a、51a 外側円環部
5a’ 内歯
5b、51b 内側円環部
5b’ 外歯
5c、45c 回転駆動部
5c’、45c’ 回転駆動固定部
5d 歯車
6、16、26、36、46、56、66 制御部
7a、7b、47a、47b 連結部
8、80 センサ
8a、9d ハウジング
8b 可動部
8c 弾性体
8d 磁石
8e ホール素子
9 張力センサ
9a 弾性紐
9b、9c 感圧導電性紐
31 撮像部
48、58 把持部
49 回転角度決定部
49a 入力部
49b オブジェクト形状記憶部
49c 算出部
49d 算出データ記憶部
49e 表示部
51 ラック付き回転部
51b’ ラック
51b’’ フレキラック
51c 減速電動部
51d 回転駆動モータ
51e 減速部
51f 駆動軸
51g ピニオンギア
51h エンコーダ
65 パラレルマニピュレータ
65a 回転アクチュエータ
65c 回転対偶
65e 球対偶
65b、65d リンク
69 回転ステージ部
69a 支え部
69b モータ回転部
69b’ モータ回転軸
69c ステージ部
100a プーリ
100b、100c ベルト
100d オブジェクト
H 把持空間
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
29
【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
34
【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
39
【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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