TOP > 国内特許検索 > 分子内電荷移動化合物を含む光線力学的治療剤 > 明細書

明細書 :分子内電荷移動化合物を含む光線力学的治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2017-210410 (P2017-210410A)
公開日 平成29年11月30日(2017.11.30)
発明の名称または考案の名称 分子内電荷移動化合物を含む光線力学的治療剤
国際特許分類 A61K  41/00        (2006.01)
A61K  33/24        (2006.01)
A61K  47/50        (2017.01)
A61K  49/00        (2006.01)
A61K  31/085       (2006.01)
A61K  31/015       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 41/00
A61K 33/24
A61K 47/48
A61K 49/00 A
A61K 31/085
A61K 31/015
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2016-102568 (P2016-102568)
出願日 平成28年5月23日(2016.5.23)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成28年3月8日 第3回神奈川県ヘルスケア・ニューフロンティア講座にて発表 発行者名:公益社団法人日本化学会 刊行物名:日本化学会第96春季年会予稿集DVD 発行年月日:平成28年3月10日 平成28年3月25日 日本化学会第96春季年会にて発表
発明者または考案者 【氏名】湯浅 英哉
【氏名】津賀 雄輝
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
Fターム 4C076AA95
4C076CC27
4C076DD21
4C076EE59
4C084AA11
4C084AA12
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C085HH11
4C085HH20
4C085KA26
4C085KB15
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA05
4C206CA27
4C206CA33
4C206MA01
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA13
4C206NA14
4C206ZB26
要約 【課題】 標的部位に特異的に送達可能な光線力学的治療剤又は診断剤を提供する。
【解決手段】 赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と、分子内電荷移動化合物と、標的細胞に対して親和性を有する化合物とを含むことを特徴とする光線力学的治療剤又は診断剤。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と、分子内電荷移動化合物と、標的細胞に対して親和性を有する化合物とを含むことを特徴とする光線力学的治療剤。
【請求項2】
分子内電荷移動化合物が、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子及び標的細胞に対して親和性を有する化合物と直接又はリンカーを介して結合していることを特徴とする請求項1に記載の光線力学的治療剤。
【請求項3】
分子内電荷移動化合物が、下記の式(I)
【化1】
JP2017210410A_000021t.gif
〔式中、R1はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるビフェニル誘導体、又は下記の式(II)
【化2】
JP2017210410A_000022t.gif
〔式中、R2はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるターフェニル誘導体であることを特徴とする請求項2に記載の光線力学的治療剤。
【請求項4】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子が、ランタニド粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光線力学的治療剤。
【請求項5】
標的細胞に対して親和性を有する化合物が、グルコースであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光線力学的治療剤。
【請求項6】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と、分子内電荷移動化合物と、標的細胞に対して親和性を有する化合物とを含むことを特徴とする光線力学的診断剤。
【請求項7】
分子内電荷移動化合物が、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子及び標的細胞に対して親和性を有する化合物と直接又はリンカーを介して結合していることを特徴とする請求項6に記載の光線力学的診断剤。
【請求項8】
分子内電荷移動化合物が、下記の式(I)
【化3】
JP2017210410A_000023t.gif
〔式中、R1はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるビフェニル誘導体、又は下記の式(II)
【化4】
JP2017210410A_000024t.gif
〔式中、R2はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるターフェニル誘導体であることを特徴とする請求項7に記載の光線力学的診断剤。
【請求項9】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子が、ランタニド粒子であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の光線力学的診断剤。
【請求項10】
標的細胞に対して親和性を有する化合物が、グルコースであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の光線力学的診断剤。
【請求項11】
分子内電荷移動化合物を含むことを特徴とする光増感剤。
【請求項12】
分子内電荷移動化合物が、下記の式(III)
【化5】
JP2017210410A_000025t.gif
〔式中、R3はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子供与性基を表し、R4はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子求引性基を表す。〕
で表されるビフェニル誘導体、又は下記の式(IV)
【化6】
JP2017210410A_000026t.gif
〔式中、R5はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子供与性基を表し、R6はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、R7はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子供与性基を表す。〕
で表されるターフェニル誘導体であることを特徴とする請求項11に記載の光増感剤。
【請求項13】
酸素存在下で、請求項11又は12に記載の光増感剤に光を照射することにより、一重項酸素を発生させることを特徴とする一重項酸素発生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内電荷移動化合物を含む光線力学的治療剤、光線力学的診断剤、及び光増感剤、並びに前記分子内電荷移動化合物を利用した一重項酸素発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光増感剤は、癌などの疾病の光線力学的治療において、光エネルギーを化学エネルギーに変換して疾病細胞にダメージを与える薬剤として重要な役割を持つ。しかし、これまでに開発されてきた光増感剤は分子量が大きいため、一般に高価であるとともに、標的部位によってはサイズが大きすぎて使えない場合があった。
【0003】
また、本発明者らは、以前に5-アミノレブリン酸を含む光線力学的治療剤について特許出願を行った(特許文献1)。この光線力学的治療剤では、投与された5-アミノレブリン酸が生体内でプロトポルフィリンIXに代謝され、この物質が光増感剤として働く。しかし、この光線力学的治療剤は、内在性のプロトポルフィリンIXを光増感剤とするため、標的部位に応じて光増感剤の構造を変えることができないため、照射励起光の波長を調節できないという問題があった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO2012/1534933
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
動物細胞は細胞膜中のグルコース輸送体を介してグルコースを細胞内に取り込むが、多くの癌細胞では、このグルコース輸送体が過剰発現していることが知られている。従って、このグルコース輸送体の内部に光増感剤を取り込ませることができれば、正常細胞への影響を最小限に抑えつつ癌細胞へ大きなダメージを与えることができる。
【0006】
しかし、内在性のプロトポルフィリンIXやこれまでに合成された光増感剤は、分子サイズなどの問題から、グルコース輸送体の内部に取り込ませることが困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来の光線力学的治療剤の有する問題を解決し、標的部位に特異的に送達可能な光線力学的治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、分子内で電荷移動を起こす化合物(分子内電荷移動化合物)が光増感作用を有することを見出した。また、本発明者は、この分子内電荷移動に基づき光増感剤の分子設計を行ったところ、ビフェニル骨格やターフェニル骨格などのスリムな構造を持つ化合物が高い光増感作用を示すことを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、完成されたものである。
【0009】
即ち、本発明は、以下の(1)~(13)を提供する。
(1)赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と、分子内電荷移動化合物と、標的細胞に対して親和性を有する化合物とを含むことを特徴とする光線力学的治療剤。
【0010】
(2)分子内電荷移動化合物が、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子及び標的細胞に対して親和性を有する化合物と直接又はリンカーを介して結合していることを特徴とする(1)に記載の光線力学的治療剤。
【0011】
(3)分子内電荷移動化合物が、下記の式(I)
【化1】
JP2017210410A_000002t.gif
〔式中、R1はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるビフェニル誘導体、又は下記の式(II)
【化2】
JP2017210410A_000003t.gif
〔式中、R2はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるターフェニル誘導体であることを特徴とする(2)に記載の光線力学的治療剤。
【0012】
(4)赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子が、ランタニド粒子であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の光線力学的治療剤。
【0013】
(5)標的細胞に対して親和性を有する化合物が、グルコースであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の光線力学的治療剤。
【0014】
(6)赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と、分子内電荷移動化合物と、標的細胞に対して親和性を有する化合物とを含むことを特徴とする光線力学的診断剤。
【0015】
(7)分子内電荷移動化合物が、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子及び標的細胞に対して親和性を有する化合物と直接又はリンカーを介して結合していることを特徴とする(6)に記載の光線力学的診断剤。
【0016】
(8)分子内電荷移動化合物が、下記の式(I)
【化3】
JP2017210410A_000004t.gif
〔式中、R1はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるビフェニル誘導体、又は下記の式(II)
【化4】
JP2017210410A_000005t.gif
〔式中、R2はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、両端は赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合する。〕
で表されるターフェニル誘導体であることを特徴とする(7)に記載の光線力学的診断剤。
【0017】
(9)赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子が、ランタニド粒子であることを特徴とする(6)乃至(8)のいずれかに記載の光線力学的診断剤。
【0018】
(10)標的細胞に対して親和性を有する化合物が、グルコースであることを特徴とする(6)乃至(9)のいずれかに記載の光線力学的診断剤。
【0019】
(11)分子内電荷移動化合物を含むことを特徴とする光増感剤。
【0020】
(12)分子内電荷移動化合物が、下記の式(III)
【化5】
JP2017210410A_000006t.gif
〔式中、R3はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子供与性基を表し、R4はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子求引性基を表す。〕
で表されるビフェニル誘導体、又は下記の式(IV)
【化6】
JP2017210410A_000007t.gif
〔式中、R5はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子供与性基を表し、R6はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~4個の電子求引性基を表し、R7はベンゼン環上の置換可能な任意の位置に存在する1~5個の電子供与性基を表す。〕
で表されるターフェニル誘導体であることを特徴とする(11)に記載の光増感剤。
【0021】
(13)酸素存在下で、(11)又は(12)に記載の光増感剤に光を照射することにより、一重項酸素を発生させることを特徴とする一重項酸素発生方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、分子内電荷移動機構という新しい指針に基づいて光増感剤の分子設計をするので、標的部位に適した構造、サイズの光線力学的治療剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1で使用した化合物の構造を示す図である。
【図2】実施例3で使用した化合物の構造を示す図である。
【図3】実施例4で使用した化合物の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)光線力学的治療剤
本発明の光線力学的治療剤は、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と、分子内電荷移動化合物と、標的細胞に対して親和性を有する化合物とを含むことを特徴とするものである。

【0025】
患者に投与された本発明の光線力学的治療剤は、標的細胞に対して親和性を有する化合物の働きにより、癌細胞などの標的細胞へ送達される。このとき、標的細胞の存在する部位に外部から赤外域光を照射すると、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子から、可視光が放出される。この可視光により、光増感剤として機能する分子内電荷移動化合物は励起され、活性酸素の一種である一重項酸素を生成する。この一重項酸素が癌細胞などの標的細胞を破壊し、疾患を治療する。

【0026】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子、分子内電荷移動化合物、及び標的細胞に対して親和性を有する化合物は、直接又はリンカーを介して結合している。結合の順序は特に限定されず、例えば、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子が、標的細胞に対して親和性を有する化合物及び分子内電荷移動化合物と結合していてもよいが、分子内電荷移動化合物が、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子及び標的細胞に対して親和性を有する化合物と結合していること(即ち、分子内電荷移動化合物が中央に位置し、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子及び標的細胞に対して親和性を有する化合物が両端に位置すること)が好ましい。

【0027】
本発明において、「分子内電荷移動化合物」とは、分子内のある部分から他の部分へ電子が移動し、分子内で電子分布に偏りがある励起状態を形成し得る化合物を意味する。

【0028】
分子内電荷移動化合物としては、ビフェニル誘導体やターフェニル誘導体を好ましい化合物として予測できる。これらの化合物はスリムな構造をとるので、従来の光増感剤では入ることができない狭い部分(例えば、グルコース輸送体の狭い管部分など)にも入ることができる。

【0029】
ビフェニル誘導体としては、例えば、下記の式(I)で表される化合物を挙げることができる。
【化7】
JP2017210410A_000008t.gif

【0030】
R1は、1~4個の電子求引性基であればよいが、1個の電子求引性基であることが好ましい。R1が1個の電子求引性基である場合、その位置は、上記の式(I)における2位、3位のいずれでもよいが、3位であることが好ましい。R1が2個以上存在する場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。

【0031】
R1は、電子求引性基であればよいが、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はシアノ基であることが好ましく、ニトロ基であることがより好ましい。ここで、「アルコキシカルボニル基」としては、例えば、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基を挙げることができ、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などを挙げることができる。

【0032】
上記の式(I)の両端には、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子又は標的細胞に対して親和性を有する化合物が結合するが、向かって左側に赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子が結合し、向かって右側に標的細胞に対して親和性を有する化合物が結合してもよく、その逆であってもよい。

【0033】
好ましいビフェニル誘導体の具体例としては、以下の(I-1)~(I-8)の化合物を挙げることができる。
【化8】
JP2017210410A_000009t.gif

【0034】
ターフェニル誘導体としては、例えば、下記の式(II)で表される化合物を挙げることができる。
【化9】
JP2017210410A_000010t.gif

【0035】
R2は、1~4個の電子求引性基であればよいが、2個の電子求引性基であることが好ましい。R2が2個の電子求引性基である場合、その位置は、上記の式(II)における2位と3位、2位と6位であってもよいが、2位と5位であることが好ましい。R2が2個以上存在する場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。

【0036】
R2は、電子求引性基であればよいが、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はシアノ基であることが好ましく、ニトロ基又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましい。ここで、「アルコキシカルボニル基」としては、例えば、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基を挙げることができ、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などを挙げることができる。

【0037】
好ましいターフェニル誘導体の具体例としては、以下の(II-1)~(II-12)の化合物を挙げることができる。
【化10】
JP2017210410A_000011t.gif

【0038】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子における「赤外域光」とは、生体の透過性の高い概ね0.7μm~1mmの波長域に属する光をいい、このような赤外域光は波長0.7μm~2.5μmの近赤外光、波長2.5μm~4μmの中赤外光、波長4μm~1mmの遠赤外光に分類される。このような赤外域光の中でも、比較的エネルギーが高く生体透過度も高い近赤外光、より好ましくは波長0.7μm~1.5μmの近赤外光を有利に用いることができる。これら赤外域光は通常のランプやレーザー光線により供給されるが、これらの波長範囲の光を含みさえすれば光源は特に限定されない。

【0039】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子における「アップコンバージョン」とは、逆ストークスシフトの一種であり、励起状態にある原子や分子にさらに光量子が与えられたときに最初に照射した光より高エネルギーである短波長の光を放出する量子現象をいい、アップコンバージョン発光とは、アップコンバージョンを起こす物質に光を照射したときに発生する、励起エネルギーよりも高いエネルギーの光(励起光よりも波長が短い光)をいう。

【0040】
赤外域光によりアップコンバージョン発光をする粒子としては、複数のランタノイドイオンを含む粒子を例示することができる。ランタノイド元素としては原子番号57~71までのLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15の元素を挙げることができる。ランタノイドイオンの中でも、アップコンバージョンの効率の高いものとしてはYb3+(イットリビウムイオン)とEr3+(エルビウムイオン)、Ho3+(ホロミウムイオン)又はTm3+(ツリウムイオン)との複合体等を挙げることができる。Yb3+とEr3+を含む粒子の場合、Yb3+がf軌道遷移で吸収した赤外域光のエネルギーをEr3+に非放射エネルギー遷移で受け渡し、Er3+にて多光子吸収にも似た遷移を引き起こし、照射光よりも単位あたり高エネルギーである可視光を放射する。このようなランタノイド粒子は良く知られており、例えばNaYF4;Yb/Erでは980nmの近赤外光を吸収して650nmと550nm付近の可視光を放射するし、NaYF4;Yb/Tmでは980nmの近赤外光を吸収して800nmの近赤外光と460nmの可視光を放出する。赤外域光によりアップコンバージョン発光をする粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10~500nmとすることが好ましく、50~200nmとすることがより好ましい。

【0041】
これらランタノイド粒子はスクリーン用などに市販されている市販品を購入して用いることもできるし、公知の方法に基づき作製した合成品を用いてもよい。ランタノイド粒子は、例えば、NaYF4;Yb/Erの場合、YbCl2・6H2O、YbCl3・6H2O、ErCl3・6H2O、NH4F、NaCl、ポリエチレンイミン、エチレングリコールを混合し、オートクレーブで200℃程度に加熱することで合成できる。細かな組成比や加熱温度、時間の調整で様々な粒径やアップコンバージョン特性の違うランタノイド粒子が合成可能である。

【0042】
合成されたランタノイド粒子はそのまま用いることもできるし、粉砕化してナノ化してランタノイドナノ粒子(LNP)として用いることもできる。また、定法に従い粒子表面を修飾することもできる。表面修飾は、例えば糖やアミノ酸で修飾することで、生体適合性を向上させることや細胞への取り込みをコントロールすることができる。例えば、癌組織を貪食するマクロファージは、マンノースレセプター、β-グルカンレセプター、Fcレセプター等を有しているので、LNPに1-アミノエチルマンノース(NEtMan)を付加することなどにより、本発明の光線力学的治療剤を癌組織に特異的に送達することが可能となる。また、癌組織や腫瘍組織は、正常組織に比べ血管透過性が著しく亢進しているため、微粒子が血管より流出しやすく、またリンパ系が発達していないため、癌組織や腫瘍組織に到達した微粒子が蓄積する特性(EPR効果、Enhanced Permeation and Retention effect)を有しており、この特性を利用して、本発明の光線力学的治療剤を癌組織や腫瘍組織に送達してもよい。具体的には、LNPの粒径を50nm~200nmにし、本発明の光線力学的治療剤を血管に投与することにより、本発明の光線力学的治療剤を癌組織や腫瘍組織に特異的に送達することができる。

【0043】
標的細胞に対して親和性を有する化合物とは、本発明の光線力学的治療剤が標的とする細胞に対して親和性を有する化合物という意味である。本発明の光線力学的治療剤の主たる標的細胞は、癌細胞や腫瘍細胞であるが、それ以外の細胞、例えば、細菌や真菌に感染した部位の細胞、ウイルス感染細胞、アレルギーなどによる炎症部位の細胞などを標的細胞としてもよい。癌細胞や腫瘍細胞に対して親和性を有する化合物としては、例えば、グルコースやマンノースなどの糖、シアル酸、葉酸などを挙げることができ、これらの中でもグルコースが好ましい。前述したように、本発明の光線力学的治療剤では、ビフェニル誘導体やターフェニル誘導体のようなスリムな光増感剤を使用することができ、このような光増感剤にグルコースを結合させることにより、癌細胞などで過剰発現しているグルコース輸送体の内部に光増感剤を入れることができるからである。

【0044】
赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子、分子内電荷移動化合物、及び標的細胞に対して親和性を有する化合物は、直接結合していてもよいが、リンカーを介して結合していてもよい。リンカーは各化合物間の距離を適切なものに保持できるものであればどのようなものでもよいが、アルキレン基(但し、アルキレン基の1以上の-CH2-は、-O-、-S-、-NH-、又は-CO-で置換されていてもよい)であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は特に限定されないが、2~30であることが好ましく、20~26であることがより好ましい。なお、アルキレン基中の-CH2-を、-O-、-S-、又は-NH-で置換した場合も、これらの基は1つの炭素を持つものとして、前記した「アルキレン基の炭素数」に含める。

【0045】
本発明の光線力学的治療剤の投与は、光線力学的治療を行いたい部分に送達できればその投与方法は特に限定されない。例えば、静脈注射、点滴、動脈注射、発布、添鼻、膀注、浣腸、舌下等の投与方法を挙げることができる。

【0046】
本発明の光線力学的治療剤には、必要に応じて薬効成分、栄養剤、賦形剤等の他の成分を加えることができる。本発明における光線力学的治療剤の剤型としては、注射剤、点滴剤、膀胱内注入剤、錠剤、カプセル剤、細粒剤、シロップ剤、発布剤、座薬等を例示することができる。これらは溶剤、分散媒、増量剤、賦形剤等を適宜用い、常法に従って製剤することができる。

【0047】
本発明の光線力学的治療剤の投与量は特に限定されないが、光線力学的治療剤中に含まれる分子内電荷移動化合物が成人1人当たり、1~1000mgとするのが好ましく、10~100mgとするのがより好ましい。

【0048】
本発明の光線力学的治療剤を用いた光線力学的治療では、光線力学的治療剤が患部に存在するタイミングで赤外域光を照射すると透過度の高い赤外域光は体内の深部であっても、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子に到達し、可視光が放出される。この粒子近傍に存在する光増感物質はその可視光で励起され活性酸素を生じ、患部を治療できる。この仕組みにより光深達度の問題で外部からの可視光照射では励起できない深部での治療が可能になる。治療したい場所が特定される場合は多方向からの赤外域光で効率よく励起でき、このような目的には近赤外光レーザーを有利に用いることができる。

【0049】
光線力学的治療剤の投与から赤外域光の照射までの時間は、使用する赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子や分子内電荷移動化合物の種類により異なるが、通常は、2~48時間であり、好ましくは6~12時間である。

【0050】
本発明の光線力学的治療剤の利点は、光増感剤としてスリムな構造の化合物(例えば、ビフェニル誘導体やターフェニル誘導体)を使用でき、これにより、従来の光増感剤では送達困難であったグルコース輸送体などへも送達できるという点である。また、分子内電荷移動化合物は、疎水性環境において光増感能が高いので、グルコース輸送体の内部など疎水性環境において選択的に活性酸素を発生させることができるという点も、本発明の利点である。更に、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と分子内電荷移動化合物は、直接又はリンカーを介して結合しているので、両者の距離を近く保つことができ、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子から放出される可視光を分子内電荷移動化合物が効率的に利用できるという点も、本発明の利点である。

【0051】
(2)光線力学的診断剤
本発明の光線力学的診断剤は、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と、分子内電荷移動化合物と、標的細胞に対して親和性を有する化合物とを含むことを特徴とするものである。

【0052】
診断対象者に投与された本発明の光線力学的診断剤は、標的細胞に対して親和性を有する化合物の働きにより、癌細胞などの標的細胞へ送達される。このとき、標的細胞の存在する部位に外部から赤外域光を照射すると、赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子から、可視光が放出される。この可視光により、光増感剤として機能する分子内電荷移動化合物は励起され、プロトポルフィリンIXのような既知の光増感剤と同様に発光する。この分子内電荷移動化合物の発光を指標として癌細胞などの標的細胞の存在を知ることができる。

【0053】
本発明の光線力学的診断剤に含まれる赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子、分子内電荷移動化合物、及び標的細胞に対して親和性を有する化合物は、本発明の光線力学的治療剤に含まれるものと同様のものでよく、また、これらの結合の順序も、本発明の光線力学的治療剤と同様でよい。また、使用するリンカーも、本発明の光線力学的治療剤に使用するものと同様のものでよい。更に、本発明の光線力学的診断剤の投与方法、投与量、製剤化方法、投与から赤外域光照射までの時間も、本発明の光線力学的治療剤と同様でよい。

【0054】
前述したように、本発明の光線力学的治療剤には、スリムな構造にできること、疎水性環境において選択的に機能を発揮させ得ること、及び赤外域光によりアップコンバージョン発光する粒子と分子内電荷移動化合物を近接させ得ることなどの利点があるが、本発明の光線力学的診断剤も同様の利点を有する。

【0055】
(3)光増感剤
本発明の光増感剤は、分子内電荷移動化合物を含むことを特徴とするものである。

【0056】
使用する分子内電荷移動化合物としては、ビフェニル誘導体やターフェニル誘導体を好ましい化合物として挙げることができる。

【0057】
ビフェニル誘導体としては、例えば、下記の式(III)で表される化合物を挙げることができる。
【化11】
JP2017210410A_000012t.gif

【0058】
R3は1~5個の電子供与性基であればよいが、1個の電子供与性基であることが好ましい。R3が1個の電子供与性基である場合、その位置は、上記の式(III)における2'位、3'位、4'位のいずれでもよいが、4'位であることが好ましい。R3が2個以上存在する場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。

【0059】
R3は、電子供与性基であればよいが、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアルキル基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。ここで、「アルコキシ基」としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基を挙げることができ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などを挙げることができる。「アルキルアミノ基」としては、例えば、炭素数1~6のアルキルアミノ基を挙げることができ、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基などを挙げることができる。「ジアルキルアミノ基」としては、例えば、炭素数1~12のジアルキルアミノ基を挙げることができ、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジsec-ブチルアミノ基、ジtert-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基などを挙げることができる。「アルキル基」としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などを挙げることができる。

【0060】
R4は1~5個の電子求引性基であればよいが、1個の電子求引性基であることが好ましい。R4が1個の電子求引性基である場合、その位置は、上記の式(III)における2位、3位、4位のいずれでもよいが、4位であることが好ましい。R4が2個以上存在する場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。

【0061】
R4は、電子求引性基であればよいが、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はシアノ基であることが好ましく、ニトロ基であることがより好ましい。ここで、「アルコキシカルボニル基」としては、例えば、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基を挙げることができ、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などを挙げることができる。

【0062】
好ましいビフェニル誘導体の具体例としては、以下の(III-1)~(III-12)の化合物を挙げることができる。
【化12】
JP2017210410A_000013t.gif

【0063】
ターフェニル誘導体としては、例えば、下記の式(IV)で表される化合物を挙げることができる。
【化13】
JP2017210410A_000014t.gif

【0064】
R5は1~5個の電子供与性基であればよいが、1個の電子供与性基であることが好ましい。R5が1個の電子供与性基である場合、その位置は、上記の式(IV)における2''位、3''位、4''位のいずれでもよいが、4''位であることが好ましい。R5が2個以上存在する場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。

【0065】
R5は、電子供与性基であればよいが、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基又はアルキル基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。ここで、「アルコキシ基」としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基を挙げることができ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などを挙げることができる。「アルキルアミノ基」としては、例えば、炭素数1~6のアルキルアミノ基を挙げることができ、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基などを挙げることができる。「ジアルキルアミノ基」としては、例えば、炭素数1~12のジアルキルアミノ基を挙げることができ、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジsec-ブチルアミノ基、ジtert-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基などを挙げることができる。「アルキル基」としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などを挙げることができる。

【0066】
R6は、1~4個の電子求引性基であればよいが、2個の電子求引性基であることが好ましい。R6が2個の電子求引性基である場合、その位置は、上記の式(IV)における2'位と3'位、2'位と6'位、3'位と5'位あってもよいが、2'位と5'位又は3'位と6'位であることが好ましい。R6が2個以上存在する場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。

【0067】
R6は、電子求引性基であればよいが、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、又はシアノ基であることが好ましく、ニトロ基又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましい。ここで、「アルコキシカルボニル基」としては、例えば、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基を挙げることができ、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基などを挙げることができる。

【0068】
R7は1~5個の電子供与性基であればよいが、1個の電子供与性基であることが好ましい。R7が1個の電子供与性基である場合、その位置は、上記の式(IV)における2位、3位、4位のいずれでもよいが、4位であることが好ましい。R7が2個以上存在する場合、それらは同一の基であっても異なる基であってもよい。

【0069】
R7は、電子供与性基であればよいが、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、又はメチル基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。ここで、「アルコキシ基」としては、例えば、炭素数1~6のアルコキシ基を挙げることができ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基などを挙げることができる。「アルキルアミノ基」としては、例えば、炭素数1~6のアルキルアミノ基を挙げることができ、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基などを挙げることができる。「ジアルキルアミノ基」としては、例えば、炭素数1~12のジアルキルアミノ基を挙げることができ、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジsec-ブチルアミノ基、ジtert-ブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基などを挙げることができる。「アルキル基」としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などを挙げることができる。

【0070】
好ましいターフェニル誘導体の具体例としては、以下の(IV-1)~(IV-12)の化合物を挙げることができる。
【化14】
JP2017210410A_000015t.gif

【0071】
本発明の光増感剤は、一重項酸素の発生のために使用することができる。具体的な用途としては、光線力学的治療のほか、光線力学的診断などに利用できる。また、太陽電池、化成品合成などにも利用できる

【0072】
(4)一重項酸素発生方法
本発明の一重項酸素発生方法は、酸素存在下で、上記の本発明の光増感剤に光を照射することにより、一重項酸酸素を発生させることを特徴とするものである。

【0073】
照射する光の波長は、使用する光増感剤の種類により異なるが、例えば、光増感剤が上記のビフェニル誘導体であれば、300~350nmが好ましく、340~350nmがより好ましく、光増感剤が上記のターフェニル誘導体であれば、340~420nmが好ましく、360~400nmがより好ましい。
【実施例】
【0074】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕 一重項酸素発生の検出(1)
テトラフェニルシクロペンタジエノン(TPCPD)を用いて増感剤候補化合物、又は標準化合物ベンゾフェノン(図1)による一重項酸素の発生を検出した。
【実施例】
【0075】
図1に示した化合物の20 μM アセトニトリル溶液、TPCPD の200 μMアセトニトリル溶液をそれぞれ調整し、1 mL ずつ測りとり、光路長1 cm 石英セル中で混合した。その混合溶液に分光蛍光光度計FP-8500(日本分光)で、増感剤候補化合物それぞれの吸収極大波長の光を照射し、0, 1, 3, 5, 10, 15, 20, 25, 30 分毎に紫外可視分光光度計UV-2600(SHIMAZU)で500 nm の吸光度を測定した。ネガティブコントロールとして増感剤候補化合物なしのTPCPD 100μM アセトニトリル溶液でも同様の実験を行った。光照射時間15 分における500 nm の吸光度の減少率A(15)/A(0)の値を一重項酸素生成率として、それぞれの化合物の一重項酸素生成能を評価した(表1)。
【実施例】
【0076】
【表1】
JP2017210410A_000016t.gif
【実施例】
【0077】
表1に示すように、化合物4,5は、標準化合物ベンゾフェノンに比べ、著しく高い一重項酸素生成能を示した。
【実施例】
【0078】
〔実施例2〕 一重項酸素生成量子収率の算出
化合物4,5 の一重項酸素生成量子収率(ΦΔ)を、TPCPD を用いて、ベンゾフェノンの文献値ΦΔBP = 0.37(S. K. Chattopadhyay, et al, J. Photochem. 1985, 30, 81-91)を標準値として相対的に求めた。
【実施例】
【0079】
化合物4,5、ベンゾフェノンをそれぞれアセトニトリルに溶かし、338.5 nm の吸光度が約0.4 になるように溶液を調整した。TPCPD は100 μM アセトニトリル溶液を調整した。それぞれの溶液から1 mL ずつ測りとり、光路長1 cm 石英セル中で混合した。その混合溶液に分光蛍光光度計FP-8500(日本分光)で、338.5 nm の光を照射し、表2に記す時間間隔毎に紫外可視分光光度計UV-2600(SHIMAZU)で495 nm の吸光度を測定した。横軸光照射時間に対して、縦軸に495 nm の吸光度の変化量をプロットして、傾きm を得た。そして、その傾きと式(1)から化合物4,5 の相対一重項酸素生成量子収率を求めた(N. Adarsh, et al, Org. Lett. 2010, 12, 5720-5723)。
【実施例】
【0080】
【数1】
JP2017210410A_000017t.gif
得られた結果と測定条件を表2に記す。
【実施例】
【0081】
【表2】
JP2017210410A_000018t.gif
【実施例】
【0082】
表2に示すように、化合物4は、相対一重項酸素生成量子収率においても、高い値を示した。
【実施例】
【0083】
〔実施例3〕 一重項酸素生成能に対する溶媒のプロトン効果
一重項酸素生成能に対する溶媒のプロトン効果を調べるため、溶媒を変えて化合物6(図2)の一重項酸素生成能を評価した。
【実施例】
【0084】
化合物6の250 μM アセトニトリル溶液、TPCPDの1 mM アセトニトリル溶液をそれぞれ調整し、1 mL ずつ測りとり、光路長1 cm 石英セル中で混合した。同様の溶液をアセトニトリル: メタノール(1: 1)の混合溶媒でも調整した。その混合溶液に分光蛍光光度計FP-8500(日本分光)で、化合物6の吸収極大波長である268 nm の光を照射し、0, 10, 20, 30, 40, 50分毎に紫外可視分光光度計UV-2600(SHIMAZU)で500 nm の吸光度を測定した。ネガティブコントロールとして増感剤候補化合物なしのTPCPD 500 μM 溶液でも同様の実験を行った。光照射時間50 分における500 nm の吸光度の減少率A(50)/A(0)の値を一重項酸素生成率として、化合物6 のそれぞれの溶媒における一重項酸素生性能を評価した(表3)。
【実施例】
【0085】
【表3】
JP2017210410A_000019t.gif
【実施例】
【0086】
表3に示すように、プロトン性溶媒であるメタノールを含む溶媒を用いた場合よりも、非プロトン性溶媒であるアセトニトリルのみからなる溶媒を用いた場合の方が、高い一重項酸素生成能を示した。このことから、化合物6などの分子内電荷移動機構に基づいて設計された増感剤候補化合物は、疎水性環境において高い一重項酸素生成能を示すと考えられる。
【実施例】
【0087】
〔実施例4〕 一重項酸素の検出(2)
TPCPD を用いて、増感剤候補化合物(図3)による一重項酸素の発生を検出した。
【実施例】
【0088】
図3に示した化合物の250 μM アセトニトリル溶液(酸素飽和)、TPCPDの1 mM アセトニトリル溶液(酸素飽和)をそれぞれ調整し、1 mL ずつ測りとり、光路長1 cm 石英セル中で混合した。その混合溶液に分光蛍光光度計FP-8500(日本分光)で、それぞれの化合物の吸収極大波長の光を照射し、0, 10, 20, 30, 40, 50 分毎に紫外可視分光光度計UV-2600(SHIMAZU)で500 nm の吸光度を測定した。ネガティブコントロールとして増感剤候補化合物なしのTPCPD 500 μM 溶液(酸素飽和)でも同様の実験を行った。光照射時間t 分における500 nm の吸光度の減少率A(t)/A(0)の値を一重項酸素生成率としてそれぞれの化合物の一重項酸素生性能を評価した(表4)。
【実施例】
【0089】
【表4】
JP2017210410A_000020t.gif
【実施例】
【0090】
表4に示すように、実施例1及び2で高い一重項酸素生成率を示した化合物4のほか、化合物9,16なども高い一重項酸素生成率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、医薬品に関するものなので、製薬産業などの産業分野において利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2