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明細書 :ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチド及び糖尿病治療用医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-131413 (P2018-131413A)
公開日 平成30年8月23日(2018.8.23)
発明の名称または考案の名称 ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチド及び糖尿病治療用医薬組成物
国際特許分類 C07K  14/47        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  35/76        (2015.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
A61K  31/7088      (2006.01)
A61K  31/155       (2006.01)
A61K  31/64        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C07K 14/47 ZNA
A61K 37/02
A61K 45/00
A61K 35/76
A61P 3/10
A61K 48/00
A61K 31/7088
A61K 31/155
A61K 31/64
C12N 15/00 A
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 37
出願番号 特願2017-026742 (P2017-026742)
出願日 平成29年2月16日(2017.2.16)
発明者または考案者 【氏名】合田 亘人
【氏名】新井 理智
【氏名】大野 友美絵
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100161665、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 知之
【識別番号】100178445、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 淳二
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C084
4C086
4C087
4C206
4H045
Fターム 4B065AA01X
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4B065AA72X
4B065AA87X
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4B065CA24
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4C084AA02
4C084AA07
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4C084AA19
4C084BA01
4C084CA53
4C084DB52
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZC351
4C084ZC352
4C086AA01
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4C086EA16
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4C086ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA05
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZC35
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
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4C206MA04
4C206NA05
4C206ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
4H045GA31
要約 【課題】
高脂肪高糖質食の摂取によって活性化される遺伝子を検討し、その遺伝子によって発現されるタンパク質の糖尿病発症及び病態の役割を研究することにより、従来にない作用機序を有する糖尿病の予防又は治療用の薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
高脂肪高糖質食の摂取によって活性化される遺伝子を検討した結果、I型ニューレグリン1αが糖尿病の発症と病態に関与することを解明し、ニューレグリン1αの生理活性を明らかにし、ニューレグリン1α発現ベクター又はニューレグリン1α様活性を有する組換えポリペプチドを製造し、これらがin vivoの糖尿病モデル等で耐糖能改善効果、肝糖代謝改善効果、さらに、ランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性を有することを見出し、これらを有効成分とする糖尿病の予防又は治療のための医薬組成物を提供する。
【選択図】図11A
特許請求の範囲 【請求項1】
ニューレグリン1αのEGFドメイン及びαドメインを有するニューレグリン1αEGF様ドメインを含むことを特徴とする組換えポリペプチド。
【請求項2】
前記組換えポリペプチドが、
(i) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列のいずれか1つ又は複数個のアミノ酸を置換、欠失若しくは付加したアミノ酸配列を有し、かつ、ニューレグリン1α様活性を有するタンパク質;又は、
(iii) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列のいずれか1つと80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチド;
であることを特徴とする請求項1に記載の組換えポリペプチド。
【請求項3】
前記ニューレグリン1α様活性が、EGF様活性、Mpc1遺伝子発現抑制活性、Mpc2遺伝子発現抑制活性、ERBB3のリン酸化促進活性、PEPCKタンパク質発現抑制活性、G6Paseタンパク質発現抑制活性、転写因子FOXO1の核内発現量抑制活性、肝臓におけるAktリン酸化促進活性、肝糖新生抑制活性、ランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性、耐糖能改善活性、インスリン抵抗性改善活性、又は、糖代謝改善作用の少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組換えポリペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことを特徴とする発現ベクター。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、
(i) 配列番号5~8で表される核酸配列を有する、
(ii) 配列番号5~8に示される核酸配列のいずれか1つ又は複数個のアミノ酸を置換、欠失若しくは付加した核酸配列を有する核酸配列を有し、かつ、該核酸配列が翻訳されたポリペプチドがニューレグリン1α様活性を有する;又は、
(iii) 配列番号5~8に示される核酸配列のいずれか1つと80%以上の同一性を有する核酸配列を有し、かつ、該核酸配列が翻訳されたポリペプチドがニューレグリン1α様活性を有する;
ことを特徴とする、請求項4に記載の発現ベクター。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の発現ベクターを有することを特徴とする宿主細胞。
【請求項7】
請求項1~3の組換えポリペプチド又は請求項5~6の発現ベクターを含有することを特徴とする、糖尿病の予防又は治療のための医薬組成物。
【請求項8】
前記糖尿病が、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病又はグルコース不耐性糖尿病から選択されることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~3に記載のポリペプチド又は請求項4~5に記載の発現ベクターと、他の1つ以上の糖尿病治療薬とを組み合わせることを特徴とする、糖尿病の予防又は治療のための組合せ医薬組成物。
【請求項10】
前記糖尿病治療薬が、メトホルミン、フェンホルミン、スルホニル尿素、グリニド、DPP-IV阻害剤、グリタゾン、シタグリプチンリン酸塩、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン安息香酸塩、リナグリプチン、テネリグリプチン、ジェミグリプチン、エクセナチド及びリラグルチド、グリクラジド、カルブタミド、グリベンクラミド、インスリン又はインスリン類似体からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項9に記載の組合せ医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドを発現するベクター、これらを活性成分とする糖尿病の予防又は治療のための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は高血糖を主徴とする疾患であり、我が国をはじめとし、世界中で罹患者の非常に多い疾患として知られている。国際糖尿病連合(IDF)によると糖尿病罹患者は、2015年において4億1500万人に上り、今後も増加し2040年には6億4000万人以上になることが予想されている。血糖を下げるホルモンであるインスリンは膵臓のランゲルハンス島内にあるβ細胞から分泌され血糖を正常に保つ役割を有する。しかし、糖尿病患者ではインスリンの作用不足により高血糖を呈する。この高血糖状態が持続すると、神経障害、網膜症、慢性腎不全などの合併症を引き起こすことや癌罹患率の上昇などにより健康寿命が著しく低下することが知られている(非特許文献1)。
【0003】
糖尿病は大きく1型と2型に分類される。前者は自己免疫疾患であり、膵島のβ細胞が免疫細胞により破壊されることでインスリン分泌不全に陥り、糖尿病を発症する。後者は生活習慣病の1つとして位置づけられ、インスリン抵抗性とインスリン分泌不足によって引き起こされる疾患である。
【0004】
現在の治療法は1型糖尿病ではインスリン投与を基本として、食事療法や運動療法、2型糖尿病では、食事療法や運動療法、薬物療法がある。2型糖尿病に対する薬物療法の第一選択薬はAMPK(AMP-activated protein kinase A)を活性化することで肝臓の糖新生の抑制や筋肉における糖取り込みを促進するメトホルミンである(非特許文献2、3)。また、PPARγのアゴニストであるチアゾリジン薬は脂肪細胞の分化を促進することでインスリン抵抗性を改善し、脂肪細胞における糖取り込みを促進する(非特許文献4)。また、SU(sulfonylurea)薬はカリウムチャネルに働きかけ膵β細胞の脱分極を促進することでインスリン分泌を増強する(非特許文献5)。この他にも近年、小腸から分泌されるインクレチンを標的とした薬剤も存在する。インクレチンは膵β細胞のcAMP(cyclic-AMP)、Epac2経路を活性化させることでインスリン分泌を促進する。インクレチンは血中における半減期が非常に短いため、その分解酵素であるDPP4(Dipeptidyl Peptidase-4)の阻害薬やインクレチンの半減期を長期化したタンパク質製剤であるGLP1(Glucagon like peptide 1) 受容体作動薬が存在する(非特許文献6、7)。また、腎臓において糖は一旦排出された後に近位尿細管に存在するSGLT2(sodium glucose transporter 2)を介して血中に再吸収される。SGLT2阻害薬は尿からの糖の再吸収を阻害することで、尿中への糖排出を促進する薬剤である(非特許文献8、9)。しかしながら、このように、糖尿病の薬剤は複数存在するものの、根本的な治療には至っていない。
【0005】
一方、ニューレグリン1(Nrg1)はヒト、マウス共に8番染色体に位置する遺伝子である。Nrg1ファミリーは生理活性を有するEGF様ドメインが共通に存在する一方、そのN末には6つの異なるエクソン(開始コドン)からコードされる領域を有するスプライシングバリアントが多数報告されている。EGF様ドメインは少なくともEGF様α(EGF-like α)とEGF様β(EGF-like β)の2種類が存在することが知られている(非特許文献10)。また、EGF様ドメインの直後には切断酵素によって認識される配列を含むエクソンが存在し、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインと続く(図1)。このように、ヒトNrg1には少なくとも12以上のスプライシングバリアントが存在し、臓器特異性があることが知られている。Uniprot (http://www.uniprot.org/) によると、I型Nrg1αは乳房、卵巣、精巣、前立腺、心臓、骨格筋、肝臓、腎臓、小腸、脳に発現しており、I型Nrg1βは主に脳や神経、脊髄に発現している。また、II型Nrg1βは骨格筋、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓において発現が認められる。III型Nrg1βは神経系特異的であること、またIV型Nrg1は脳特異的なアイソフォームであることが知られている。この情報と一致して、アフリカツメガエルにおいても、脳ではIg-Nrg1β(I型Nrg1βまたII型Nrg1β)やIII型Nrg1βの発現が、肝臓や小腸においてはIg-Nrg1αの発現が報告されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】W. T. Cade, "Diabetes-Related Microvascular and Macrovascular Diseases in the Physical Therapy Setting Diabetes-Related Microvascular and Macrovascular Diseases in Physical Therapy," Phys Ther. Phys. Ther., vol. 88, no. 11, pp. 1322-1335, 2008.
【非特許文献2】H. An and L. He, "Current understanding of metformin effect on the control of hyperglycemia in diabetes," J. Endocrinol., vol. 228, no. 3, pp. R97-R106, 2016.
【非特許文献3】A. Sliwinska and J. Drzewoski, "Molecular action of metformin in hepatocytes: An updated insight," Curr. Diabetes Rev., vol. 11, no. 3, pp. 175-181, 2015.
【非特許文献4】H. Hauner, "The mode of action of thiazolidinediones," Diabetes. Metab. Res. Rev., vol. 18, no. SUPPL. 2, 2002.
【非特許文献5】P. Proks, F. Reimann, N. Green, F. Gribble, and F. Ashcroft, "Sulfonylurea stimulation of insulin secretion," in Diabetes, 2002, vol. 51, no. SUPPL. 3.
【非特許文献6】N. A. Thornberry and B. Gallwitz, "Mechanism of action of inhibitors of dipeptidyl-peptidase-4 (DPP-4)," Best Practice and Research: Clinical Endocrinology and Metabolism, vol. 23, no. 4. pp. 479-486, 2009.
【非特許文献7】L. L. Kjems, J. J. Holst, A. Volund, and S. Madsbad, "The Influence of GLP-1 on Glucose-Stimulated Insulin Secretion," Diabetes, vol. 52, no. April 2002, pp. 380-386, 2003.
【非特許文献8】E. C. Chao, "SGLT-2 Inhibitors: A New Mechanism for Glycemic Control," Clin. Diabetes, vol. 32, no. 1, pp. 4-11, 2014.
【非特許文献9】S. Kalra, "Sodium Glucose Co-Transporter-2 (SGLT2) Inhibitors: A Review of Their Basic and Clinical Pharmacology," Diabetes Therapy, vol. 5, no. 2. pp. 355-366, 2014.
【非特許文献10】D. L. Falls, "Neuregulins: Functions, forms, and signaling strategies," in The EGF Receptor Family: Biologic Mechanisms and Role in Cancer, 2003, pp. 15-31.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高脂肪高糖質食の摂取によって活性化される遺伝子を検討し、その遺伝子によって発現されるタンパク質の糖尿病発症及び病態の役割を研究することにより、従来にない作用機序を有する糖尿病の予防又は治療用の薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、高脂肪高糖質食の摂取によって活性化される遺伝子を検討した結果、ニューレグリン1αが糖尿病の発症と病態に関与することを解明し、ニューレグリン1αの生理活性を明らかにした。さらに、ニューレグリン1α発現ベクターの投与によるI型ニューレグリン1αのin vivoでの発現、及び、ニューレグリン1αの活性発現部位であるEGF様ドメインの組換えポリペプチドの投与が、糖尿病モデル等で耐糖能改善効果、肝糖代謝改善効果、さらに、膵臓におけるβ細胞の増殖促進とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
具体的には、本発明は、ニューレグリン1αのEGFドメイン及びαドメインを有するニューレグリン1αEGF様ドメインを含む組換えポリペプチドを提供する。
【0010】
前記組換えポリペプチドが、
(i) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列のいずれか1つ又は複数個のアミノ酸を置換、欠失若しくは付加したアミノ酸配列を有し、かつ、ニューレグリン1α様活性を有するタンパク質;又は、
(iii) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列のいずれか1つと80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチド;
である場合がある。
【0011】
前記ニューレグリン1α様活性が、EGF様活性、Mpc1遺伝子発現抑制活性、Mpc2遺伝子発現抑制活性、ERBB3のリン酸化促進活性、PEPCKタンパク質発現抑制活性、G6Paseタンパク質発現抑制活性、転写因子FOXO1の核内発現量抑制活性、肝臓におけるAktリン酸化促進活性、肝糖新生抑制活性、ランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性、耐糖能改善活性、インスリン抵抗性改善活性、又は、糖代謝改善作用の少なくとも1つから選択される場合がある。
【0012】
また、前記組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0013】
本発明の発現ベクターにおいて、前記ポリヌクレオチドが、
(i) 配列番号5~8で表される核酸配列を有する、
(ii) 配列番号5~8に示される核酸配列のいずれか1つ又は複数個のアミノ酸を置換、欠失若しくは付加した核酸配列を有する核酸配列を有し、かつ、該核酸配列が翻訳されたポリペプチドがニューレグリン1α様活性を有する;又は、
(iii) 配列番号5~8に示される核酸配列のいずれか1つと80%以上の同一性を有する核酸配列を有し、かつ、該核酸配列が翻訳されたポリペプチドがニューレグリン1α様活性を有する;
場合がある。
【0014】
さらに、本発明は、前記発現ベクターを有する宿主細胞を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記組換えポリペプチド又は前記発現ベクターを含有する糖尿病の予防又は治療のための医薬組成物を提供する。
【0016】
本発明の医薬組成物において、前記糖尿病が、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病又はグルコース不耐性糖尿病から選択される場合がある。
【0017】
また、本発明は、前記ポリペプチド又は前記発現ベクターと、他の1つ以上の糖尿病治療薬とを組み合わせる糖尿病の予防又は治療のための組合せ医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明の組合せ医薬組成物において、前記糖尿病治療薬が、メトホルミン、フェンホルミン、スルホニル尿素、グリニド、DPP-IV阻害剤、グリタゾン、シタグリプチンリン酸塩、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン安息香酸塩、リナグリプチン、テネリグリプチン、ジェミグリプチン、エクセナチド及びリラグルチド、グリクラジド、カルブタミド、グリベンクラミド、インスリン又はインスリン類似体からなる群から選択される少なくとも1つである場合がある。
【0019】
さらに、本発明は、ニューレグリン1α様活性を有する前記ポリペプチド又は前記発現ベクターの有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、糖尿病の予防又は治療のための方法を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、糖尿病の予防又は治療方法に使用するためのニューレグリン1α様活性を有する前記ポリペプチド又は前記発現ベクターを提供する。
【0021】
また、本発明は、糖尿病の予防又は治療に使用するための医薬を製造するためのニューレグリン1α様活性を有する前記ポリペプチド又は前記発現ベクターを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、ニューレグリン1α様活性を有する組換えポリペプチド、該組換えポリペプチドを生体内で発現させるための、若しくは、前記組換えポリペプチドを製造するための発現ベクター、該発現ベクターを含む宿主細胞、及び、前記ポリペプチド又は発現ベクターを有効成分とし、従来にない作用機序を有する糖尿病の予防又は治療用の医薬組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ヒトNrg1アイソフォームの遺伝子構造を表す図。
【図2】マウスI型(type I)Nrg1αのアミノ酸配列とドメイン構造を表す図。上段:これまでに報告されているマウスI型(type I)Nrg1βのアミノ酸配列(AY648976.1)、中段:今回の本発明の研究で決定されたI型(type I)Nrg1αのアミノ酸配列、下段:ヒトI型Nrg1αのアミノ酸配列(NM 013964.3)を表す。
【図3A】マイクロアレイ解析による遺伝子抽出の概略図。
【図3B】RT-PCRによるマイクロアレイ結果の再現性の確認を表す図。投与前(0W)の発現を1とした時のHFHS15W与えたマウスの肝臓Nrg1発現量相対値を表す(各群n=6~9)。
【図4A】肝臓におけるNrg1アイソフォームの発現を確認した結果を表す図。肝臓から合成したcDNAを用いてPCRを行った結果を表す(30Cycle)。
【図4B】糖尿病病態下における肝臓Nrg1アイソフォームの発現を表す図。I型(type 1)及びII型(type 2):30Cycle、III型(type 3):35CycleのPCRを行った結果を表す。
【図4C】RT-PCRによるタイプ特異的プライマーによるNrg1アイソフォームの発現を表す図(*はP<0.05を表す)。投与前(0W)を1とした時のHFHS15W与えたマウスの肝臓Nrg1遺伝子発現を表す。各群の例数はI型Nrg1(各群n=6~10)、III型Nrg1(各群n=3~5)である。【図5A】肝臓におけるI型Nrg1α遺伝子強制発現による表現型の解析結果を表す図。Htvi法によるI型Nrg1α遺伝子導入24時間後の各臓器のタンパク質発現解析結果を表す。(-)は空ベクター、(+)はFlagタグ付きI型Nrg1α遺伝子発現ベクターを表す。
【図5B】I型Nrg1α遺伝子強制発現による耐糖能への影響を評価した図(*はP<0.05を表す)。Htviを2週間に渡り3回行った後、16時間絶食したマウス経口糖負荷試験(2g/kg body weight)を行った結果を表す(各群n=6~8)。【図6A】I型Nrg1α強制発現による肝糖新生に関連する遺伝子の発現に対する影響を評価した結果を表す図(*はP<0.05を表す)。糖新生経路の律速酵素PepckとG6pase及びMPCの肝臓内遺伝子発現変化)。コントロール群(Con)の発現量を1とした(各群n=6~8)。【図7B】C末Flagタグ付きI型Nrg1α遺伝子を導入したマウスの肝臓におけるI型Nrg1αタンパク質の発現解析を表す図。Htvi法を用いてC末Flagタグ付きI型Nrg1α遺伝子をマウス肝臓に導入した。16時間絶食後の肝臓サンプルを、抗Flag抗体を用いて解析した結果を表す。
【図7C】C末Flagタグ付きI型Nrg1α遺伝子を導入したマウスの肝臓から分泌されたI型Nrg1αタンパク質の発現解析結果を表す図。
【図8A】大腸菌で作製したマウスI型Nrg1αタンパク質のEGF様ドメインを含む組換えポリペプチド(rNrg1α)のCBB(Coomassie Brilliant Blue)染色像を表す図。
【図8B】rNrg1α単回投与による耐糖能への影響を評価した図(*はP<0.05を表す)。rNrg1α(100 ng/g body weight)投与(i.p.)15分後にOGTT(Oral glucose tolerance test)を行った(各群n=7~8)。【図9B】肝臓のI型Nrg1α遺伝子過剰発現による膵島増殖作用の解析結果を表す図。HE染色画像から解析した膵島のサイズを表す図(*はP<0.05を表す)(各群n=10~12)。【図10C】rNrg1αの長期投与後のHE染色画像から解析した膵島のサイズを解析した結果を表す図(*はP<0.05を表す。)コントロールはPBSを同量投与したマウスのサンプルを用いた(各群n=10~12)。【図11C】2型糖尿病モデルマウス(ob/obマウス)へのrNrg1αの長期投与後のHE染色画像から解析した膵島のサイズを評価した図(*はP<0.05を表す)。コントロールはPBSを同量投与したマウスのサンプルを用いた(各群n=8~9)。【図12E】STZ投与1型糖尿病モデルにおけるrNrg1αの長期投与による膵島内インスリン分泌細胞領域を組織学的に評価した結果を表す図(*はP<0.05を表す。各群n=6~9)。NormalはSTZ未処置群。STZ処置後糖尿病を発症したマウスにベヒクル投与を行った群をcon、組換えNrg1α投与を行った群をrNrg1αと示した。【0024】
1.ニューレグリン1α様活性を有する組換えポリペプチド
本発明の実施形態の1つは、ニューレグリン1αのEGFドメイン及びαドメインを有するニューレグリン1αEGF様ドメインを含む組換えポリペプチドである。該組換えポリペプチドは、ニューレグリン1α様活性を有する組換えポリペプチドである。

【0025】
前記のように、ニューレグリン1αポリペプチドは、Nrg1のスプライシングバリアントである(図1参照)。Nrg1はヒト,マウス共に染色体8番目に位置し、N末に6種類の開始コドンを有し、EGF様ドメインにはαとβの2つの型が存在する。EGF様ドメインの後ろにはリンカーと呼ばれる配列が続き、この部分にBace1やADAMの切断認識配列が含まれる。このように,Nrg1は非常に複雑であり、多くのスプライシングバリアントを有している。

【0026】
Nrg1αとNrg1βとは、EGF様ドメインのαドメインとβドメインの相違によってその構造が特徴付けられる(図2参照)。そして、両者の活性は大きく相違する。例えば、下記の実施例で示されるようにNrg1αのEGF様ドメインポリペプチドの投与は、膵臓のランゲルハンス氏島のβ細胞の増殖を促進し、インスリン分泌を増加させる。一方、Nrg1βの投与は、膵臓のβ細胞の増殖促進効果は報告されておらず、また、インスリン分泌の低下作用が知られている(Lopez-Soldado, I.ら、Am J Physiol Endocrinol Metab 310, E440-451 (2016);Caillaud, K. ら、Diabetes Metab 42, 96-104 (2016); Ennequin, G.ら、PLoS One 10, e0130568, (2015).)。

【0027】
したがって、本発明に係る前記ポリペプチドの例として、I型ニューレグリン1αのEGFドメイン及びαドメインを含む組換えポリペプチドが挙げられる。

【0028】
前記組換えポリペプチドは、例えば、
(i) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列のいずれか1つ又は複数個のアミノ酸を置換、欠失若しくは付加したアミノ酸配列を有し、かつ、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチド;又は、
(iii) 配列番号1~4に示されるアミノ酸配列のいずれか1つと80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチド;
である。

【0029】
配列番号1はヒトI型ニューレグリン1αタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号2はマウスI型ニューレグリン1αタンパク質のアミノ酸配列を、配列番号3はヒトI型ニューレグリン1αEGF様ドメインポリペプチドのアミノ酸配列を、配列番号4はマウスI型ニューレグリン1αEGF様ドメインポリペプチドのアミノ酸配列を表す。配列番号5~8は、配列番号1~4のタンパク質若しくはポリペプチドをコードする核酸配列を表す。

【0030】
そして、下記の実施例で前記ニューレグリン1αEGF様ドメインポリペプチドの細胞内若しくは生体内における活性として、EGF様活性、Mpc1遺伝子発現抑制活性、Mpc2遺伝子発現抑制活性、ERBB3のリン酸化促進活性、PEPCKタンパク質発現抑制活性、G6Paseタンパク質発現抑制活性、転写因子FOXO1の核内発現量抑制活性、肝臓におけるAktリン酸化促進活性、肝糖新生抑制活性、ランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性、耐糖能改善活性、インスリン抵抗性改善活性、及び、糖代謝改善作用が下記の実施例に示される。

【0031】
したがって、本明細書において、「ニューレグリン1α様活性」として、EGF様活性、Mpc1遺伝子発現抑制活性、Mpc2遺伝子発現抑制活性、ERBB3のリン酸化促進活性、PEPCKタンパク質発現抑制活性、G6Paseタンパク質発現抑制活性、転写因子FOXO1の核内発現量抑制活性、肝臓におけるAktリン酸化促進活性、肝糖新生抑制活性、膵臓のランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性、耐糖能改善活性、インスリン抵抗性改善活性、及び、糖代謝改善作用から選択される少なくとも1つの生理活性、好ましくは、肝糖新生抑制活性、膵臓のランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性、もっとも好ましくは、肝糖新生抑制活性、及び、ランゲルハンス氏島β細胞に対する増殖活性、とすることができる。また、ニューレグリン1α様活性は、I型ニューレグリン1αが有する生理活性である「I型ニューレグリン1α様活性」が好ましい。

【0032】
そして、「ニューレグリン1α様活性」として、肝糖新生抑制活性、ランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性、耐糖能改善活性、インスリン抵抗性改善活性、及び、糖代謝改善作用等の活性を有するところから、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチドを活性成分として含有する医薬組成物は、糖尿病の予防又は治療のために使用できる。

【0033】
前記糖尿病は、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病又はグルコース不耐性糖尿病から選択でき、1型糖尿病及び2型糖尿病が好ましい。

【0034】
また、「ニューレグリン1α様活性」を有するポリペプチドは、膵臓のランゲルハンス氏島β細胞に対する増殖活性を含むところから、糖尿病以外の各種膵臓病、例えば、急性膵炎、慢性膵炎、及び、膵臓障害に起因する自律神経失調症等の疾患の予防及び治療、並びに膵組織切除後の再生医療に使用できる。

【0035】
組換えポリペプチドの製造
前記ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチドは、例えば、配列番号5~8で表されるDNAをテンプレートとして、その部分核酸配列を有するプライマーを用い、当業者に周知慣用の方法により、配列番号1~4のポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドを挿入したベクター(以下、「発現ベクター」と記載)、さらに該発現ベクターを導入した下記の宿主細胞(以下、「形質転換細胞」と記載する場合がある)を作製し、該形質転換細胞を含む宿主細胞を適切な培地で培養し、該形質転換体により製造されたポリペプチドを塩沈法、ゲルクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法等の通常の酵素の単離精製法を用いることにより、単離精製し製造することができる。

【0036】
前記テンプレートとして使用するDNAは、例えば、配列番号5~8のポリヌクレオチド配列の部分配列より設計されるプローブを用い、ヒト又はマウス由来の細胞の染色体DNAに対するサザンハイブリダイゼーション法等により配列番号5~8のポリヌクレオチドを取得できる。

【0037】
ベクターとしては、例えば、宿主細胞にエシェリヒア・コリを用いる場合、pColdI(タカラバイオ社製)、pCDF-1b、pRSF-1b(いずれもノバジェン社製)、pMAL-c2x(ニューイングランドバイオラブス社製)、pGEX-4T-1(ジーイーヘルスケアバイオサイエンス社製)、pTrcHis(インビトロジェン社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-30(キアゲン社製)、pET-3(ノバジェン社製)、pBluescriptII SK(+)、pBluescript II KS(-)(ストラタジーン社製)、pTrS30 [エシェリヒア・コリ JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、等を挙げることができる。

【0038】
前記ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、エシェリヒア・コリ等の宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、エシェリヒア・コリやファージ等に由来するプロモーターを用いることができる。また親株としてバチルス属に属する微生物を用いる場合、バチルス・サチルスで機能するSPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等も用いることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。

【0039】
本発明の組換えポリペプチドを製造する目的において、発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でタンパク質を発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(インビトロジェン社製)、培養細胞であればpME18S-FL3ベクター(GenBank Accession No. AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol. 8:466-472(1988))等が好ましい。ベクターへの本発明のDNAの挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 11.4-11.11)。

【0040】
この組換えポリペプチドは、動物に投与することにより、典型的には、肝臓の糖代謝改善作用、膵臓のランゲルハンス氏島におけるβ細胞に対する増殖活性とそれに伴うβ細胞からのインスリン分泌増強活性を発揮する。そこで、本製造方法の例で製造される組換えポリヌクレオチドは下記の「医薬組成物」の説明に記載の方法でその有効成分として医薬組成物を製造し、これを必要とする患者等に投与することにより、糖尿病の予防又は治療用の医薬組成物として使用することができる。

【0041】
2.発現ベクター
本発明のもう1つの実施形態は、前記組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する発現ベクターである。該発現ベクターは、前記組換えポリペプチドの製造に使用することができる。また、発現ベクターを有効成分として、その有効量を含有する医薬組成物は、糖尿病等の治療又は予防に使用できる。

【0042】
該発現ベクターにおける前記ポリヌクレオチドの例としては、
(i) 配列番号5~8で表される核酸配列を有する、
(ii) 配列番号5~8に示される核酸配列のいずれか1つ又は複数個のアミノ酸を置換、欠失若しくは付加した核酸配列を有する核酸配列を有し、かつ、該核酸配列が翻訳されたポリペプチドがニューレグリン1α様活性を有する;又は、
(iii) 配列番号5~8に示される核酸配列のいずれか1つと80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、もっとも好ましくは95%以上の同一性を有する核酸配列を有し、かつ、該核酸配列が翻訳されたポリペプチドがニューレグリン1α様活性を有する;
ポリヌクレオチドである。

【0043】
2.1組換えポリペプチドの製造用の発現ベクター
前記組換えポリペプチドの製造用の発現ベクターは、前記「組換えポリペプチド」の実施形態に記載した発現ベクターの製造方法と使用方法の説明に従い、前記組換えポリペプチドを製造し、単離・精製により取得し、糖尿病の予防又は治療用の医薬組成物の有効成分として使用できる。

【0044】
2.2 医薬組成物の有効成分としての発現ベクター
前記「組換えポリペプチド」をコードする核酸配列を有するポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、これを有効成分とする医薬組成物として、これを必要とする患者に投与することにより、糖尿病の予防又は治療のために使用できる。

【0045】
糖尿病の予防又は治療用の医薬組成物の有効成分として用いられる発現ベクターは、前記組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組込んだ組換えベクターである。当該発現ベクターを対象哺乳動物に投与すると、当該対象哺乳動物の細胞内に該発現ベクターが取り込まれ、該細胞が前記組換えポリペプチドを発現する。前記組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを挿入する発現ベクターの例としてはプラスミド、ウイルス、ファージ、コスミド、及び、当分野において従来用いられるその他のベクターを使用することができる。プラスミドベクターの例としては、pCAGGS(Gene 108:193~199(1991))、pCR-X8(Vaccine 24:4942~4950(2006))、pcDNA3.1TM (Invitrogen)、pZeoSVTM (Invitrogen)、およびpBK-CMVTM (Stratagene)等を挙げることができる。ウイルスベクターは、DNAウイルス又はRNAウイルスである。ウイルスベクターの例としては、無毒化レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス(HVJ)、SV40、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)等を挙げることができる。さらにセンダイウイルスエンベロープ(HVJ-E)等も利用できる。

【0046】
前記発現ベクターにおいては、前記組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(好ましくはDNA)が、投与対象である哺乳動物の細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されている。

【0047】
使用されるプロモーターは、投与対象である哺乳動物の細胞内で機能し得る限り、特に制限はない。プロモーターの例としては、polI系プロモーター、polII系プロモーター、polIII系プロモーター等を使用することができる。具体的の例としては、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR等のウイルスプロモーター、β-アクチン遺伝子プロモーター等の哺乳動物の構成蛋白質遺伝子プロモーター、並びにtRNAプロモーター等のRNAプロモーター等が用いられる。

【0048】
上記発現ベクターは、好ましくは前記組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含む。さらに、形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含むこともできる。

【0049】
3.宿主細胞
本発明のさらなる実施形態は、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチドの発現ベクターを含有する宿主細胞である。前記発現ベクターを宿主細胞に導入し、本発明の前記タンパク質を発現する形質転換された宿主細胞である。発現ベクターを宿主細胞に導入するための試薬は、各種の試薬が商業的に利用可能であり、これらを入手して形質転換細胞の作製に使用できる。

【0050】
宿主細胞は酵母細胞、真菌細胞、藻類細胞、動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、植物細胞及び古細菌細胞、動物細胞から選択され、好ましくは、細菌細胞である。細菌細胞の例としては、Escherichia細胞、Bacillus細胞、Lactobacillus細胞、Rhodococcus細胞、Pseudomonas細胞、Aspergillus細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0051】
具体的には、本発明の発現ベクターを導入する宿主細胞の例としては、エシェリヒア(Escherichia)属細菌、例えば、大腸菌、放線菌(Actinomycetes)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属細菌、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌、ラクトバチルス(Lactobacillus)属細菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属細菌、サーマス(Thermus)属細菌、ストレプトコッカス(Streptococcus)属細菌、サッカロミセス(Saccharomyces)属酵母、ピキア(Pichia)属酵母、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属酵母、キャンディダ(Candida)属酵母、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属酵母、デバリヨミセス(Debaryomyces)属酵母、ヤロウィア(Yarrowia)属酵母、クリプトコッカス(Cryptococcus)属酵母、キサントフィロミセス(Xanthophyllomyces)属酵母、アスペルギルス(Aspergillus)属カビ、モルティエレラ(Mortierella)属カビ、フザリウム(Fusarium)属カビ、シゾキトリウム(Schizochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属等を好適に用いることができる。好ましくは、宿主細胞は大腸菌である。

【0052】
宿主細胞への前記発現ベクターの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソーム媒介トランスフェクション(リポフェクション)、接合、天然の形質転換、エレクトロポレーション及び当業者に公知のその他の方法を含む様々な方法によって実施できる。また、商業的に利用可能なトランスフェクション試薬を入手し、これらを利用することにより、宿主細胞への前記発現ベクターの導入を実施できる。[参考文献: Current protocols in molecular biology. 3 vols. Edited by Ausubel F.M.et al., John Wiley & Son,Inc., Current Protocols.]

【0053】
4.医薬組成物
上記の方法で製造される発明の組換えポリペプチド又は発現ベクターは、薬学的に許容可能な医薬品添加剤を加えて、注射用製剤、経口用製剤、経皮投与用製剤等として、糖尿病の予防又は治療用の医薬組成物を製造することができる。

【0054】
4.1 製剤の製造
前記製剤の調製に使用される薬学的に許容可能な医薬品添加剤は、当業者に公知の、安定化剤、抗酸化剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁剤、乳化剤、界面活性剤等の添加物を添加して、調製することができる。これらの医薬品添加剤の種類及びその用法・用量は、医薬品添加物事典2016(日本医薬品添加剤協会編、薬事日報社、2016年2月)などに記載され、これらの記載に従って調製し、使用することができる。

【0055】
より具体的には、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸が、抗酸化剤として例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン又は没食子酸プロピル等が、pH調整剤として希塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液等が、緩衝剤としてクエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸若しくはアスコルビン酸又はその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン若しくはアルギニン又はその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸若しくはホウ酸又はその塩類が、懸濁剤又は乳化剤としてレシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート又はポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物等が、界面活性剤として例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が使用できるが、これらに限定されない。

【0056】
上記製剤に含まれる有効成分化合物の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、組換えポリペプチド及び発現ベクターのいずれも、通常、全組成物中0.5~95重量%、好ましくは1~30重量%含む。

【0057】
4.2 組換えポリペプチドを有効成分として含有する医薬組成物
本発明にかかる医薬組成物の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、薬剤に対する感受性差、疾患の具体的な種類等に応じて異なるが、通常、成人の場合は1日あたり経口投与で約0.1μg~約1000mg(好ましくは約1μg~約50mg)、外用剤の場合には、約0.1μg~約1000mg(好ましくは約10μg~約500mg)、注射剤の場合には、体重1Kgあたり、約0.01μg~約300mg(好ましくは約0.03μg~約100mg)を1日に1回投与又は2~6回に分けて使用する。

【0058】
また、「ニューレグリン1α様活性」を有するポリペプチドは、膵臓のランゲルハンス氏島β細胞に対する増殖活性を含むところから、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチドを有効成分とする医薬組成物は、糖尿病以外の各種膵臓病、例えば、急性膵炎、慢性膵炎、及び、膵臓障害に起因する自律神経失調症等の疾患の予防及び治療、並びに膵組織切除後の再生医療等に使用できる。

【0059】
4.3 発現ベクターを有効成分として含有する医薬組成物
発現ベクターを有効成分として含有する医薬組成物は、前記「製剤の製造」の説明に記載の方法で、注射剤、経口剤又は経皮剤等の製剤として本発明の医薬組成物を製造できる。さらに、前記製造の製造の説明に加えて、発現ベクターの細胞内への導入を促進するために、本発明の医薬組成物は、核酸導入用試薬を更に含有してもよい。核酸導入用試薬としては、リポフェクチンTM(Invitrogen)、リポフェクタミンTM(Invitrogen)、トランスフェクタムTM(Promega)、DOTAPTM(Roche Applied Science)、dioctadecylamidoglycyl spermine(DOGS)、L-dioleoyl phosphatidyl-ethanolamine(DOPE)、dimethyldioctadecyl-ammonium bromide(DDAB)、N,N-di-n-hexadecyl-N,N-dihydroxyethylammonium bromide(DHDEAB)、N-n-hexadecyl-N,N-dihydroxyethylammonium bromide(HDEAB)、ポリブレン、又はポリ(エチレンイミン)(PEI)等の陽イオン性脂質を使用できる。また、発現ベクターを静電気的リポソームのような脂質二重層で構成される任意の既知のリポソームに封入することができる。該リポソームは、不活化センダイウイルス(Hemagglutinating virus of Japan;HVJ)のようなウイルスに融合させてもよい。HVJ-リポソームは、通常のリポソームと比較して細胞膜に対して非常に高い融合活性を有する。また、発現ベクターとしてレトロウイルスを用いる場合には、導入試薬としてレトロネクチン、ファイブロネクチン、ポリブレン等を用いることができる。

【0060】
当該医薬組成物中の上記発現ベクターの含有量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、通常、医薬組成物全体の約0.00001ないし99重量%である。

【0061】
本発明にかかる医薬組成物の有効成分である発現ベクターの投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、薬剤に対する感受性差、疾患の具体的な種類等に応じて異なるが、通常、成人の場合は1日あたり、注射剤の場合には、体重1Kgあたり約0.1μg~約1000μg、好ましくは約1μg~約100μgを、経口投与では体重1Kgあたり約0.3μg~約3000μg、好ましくは約3μg~約300μgを、外用剤の場合には、体重1Kgあたり約0.5μg~約5000μg、好ましくは約5μg~約500μgを、1日に1回投与又は2~6回に分けて使用する。

【0062】
本発明の発現ベクターを有効成分とする医薬組成物は、適用対象である哺乳動物へ投与後、組織(又は細胞)内への前記発現ベクターの導入により、前記ニューレグリン1α様活性を有する組換えポリペプチドのin vivo発現を誘導し、該組換えポリペプチドに含まれるEGF様ドメインによって奏されるニューレグリン1α様活性を誘導し、典型的には、肝臓の糖代謝改善作用、膵臓のβ細胞増殖促進作用及びインスリン分泌促進作用を奏することにより、哺乳動物における糖尿病の予防又は治療効果を発揮するものである。発現ベクター等の核酸を生体内へ導入する種々の方法が知られており(T.Friedman,Science 244:1275-1281(1989))、前記ポリペプチドのin vivo発現を誘導し、前記組換えポリペプチドによって糖尿病に対して予防又は治療又は改善する限り、いかなる導入方法を採用することも可能である。

【0063】
in vivoで哺乳動物の組織(又は細胞)内に発現ベクターを導入する方法の例としては、内部型リポソーム法、静電気型リポソーム法、HVJ-リポソーム法、HVJ-AVEリポソーム法、受容体媒介遺伝子導入、パーティクルガン法、裸のDNA法、陽性荷電ポリマーによる導入法が挙げられる。

【0064】
また、「ニューレグリン1α様活性」を有するポリペプチドは、膵臓のランゲルハンス氏島β細胞に対する増殖活性を含むところから、ニューレグリン1α様活性を有するポリペプチドの発現ベクターを有効成分とする医薬組成物は、糖尿病以外の各種膵臓病、例えば、急性膵炎、慢性膵炎、及び、膵臓障害に起因する自律神経失調症等の疾患の予防及び治療、並びに、膵組織切除後の再生医療等に使用できる。

【0065】
4.4 組換えポリペプチド又は発現ベクターと、他の糖尿病治療薬とを組合わせる医薬組成物
前記ポリペプチド又は前記発現ベクターを含有する医薬組成物は、他の1つ以上の糖尿病治療薬とを組み合わせることにより、糖尿病の予防又は治療のための医薬組成物とすることもできる。

【0066】
前記糖尿病治療薬の例としては、メトホルミン、フェンホルミン、スルホニル尿素、グリニド、DPP-IV阻害剤、グリタゾン、シタグリプチンリン酸塩、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン安息香酸塩、リナグリプチン、テネリグリプチン、ジェミグリプチン、エクセナチド及びリラグルチド、グリクラジド、カルブタミド、グリベンクラミド、インスリン又はインスリン類似体からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。

【0067】
前記の前記糖尿病治療薬と、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチド若しくはそれらの塩は、公知の方法に従って混合し、同一の医薬組成物(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等)中に製剤化して併用してもよく、各々を別個に製剤化し、同一患者に対して同時に又は異なった時間に投与してもよい。

【0068】
前記糖尿病治療薬と、本発明のポリペプチド又はポリヌクレオチドと他の活性成分とを組み合わせて使用する場合には、患者の症状、年齢、性別、体重及び既往歴等に従って、それぞれの成分を適宜増減した量を組み合わせて使用できる。

【0069】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。ここに記述される実施例は本発明の実施形態を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0070】
1. 実験材料と実験方法
基本的な実験材料については市販のものを使用し、特殊な試薬については、具体的な実験方法の説明において、該当する説明文に併せて記載した。
【実施例1】
【0071】
1.1 実験動物
本研究で実施したすべの動物実験、遺伝子組換え実験は、早稲田大学のそれぞれの委員会で承認を得た(承認番号:2015-A083a)。マウスはSPF環境下において、餌、飲料水ともに自由摂取のもと、昼12時間、夜12時間のサイクルで厳密に管理した。C57BL/6とob/obマウス(日本クレア株式会社、東京)を用いて実験を行った。
【実施例1】
【0072】
1.2 高脂肪高糖質食(High fat High Sucrose:以下「HFHS」と記載)誘導性糖尿病モデルマウスの作製と解剖
6~7週齢の雄性マウスかつ体重が19~21g程度のマウスにHFHS(日本クレア株式会社)を5~15週間を自由摂取させた。その後、16時間(PM19:00~AM10:00)絶食後、サンプリングを行った。サンプリングは、トリブロモエタノール(Avertin、25 μl/g body weight)で麻酔後、肝臓は外側左葉、内側左葉、内側右葉を採取し、外側左葉を用いて組織切片を作製した。WATは精巣上体の脂肪と鼠径部の脂肪を採取した。また、心臓採血を行い血液のサンプリングも行った。血液はキャピジェクト(テルモ株式会社、東京)に入れ、血清を分離した。
【実施例1】
【0073】
【表1】
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【実施例1】
【0074】
1.3 肝組織の脂質抽出
肝組織の脂質抽出は、以下の操作で実施した。
(1)クロロホルム:メタノール=2:1で混合したFolch試薬を調製した。Folch試薬はスターラーで1時間以上混合した。
(2) 採取した肝組織の約100mgを300μlの 0.9%NaCl水溶液でホモジナイズした。
(3) 50μlを1mlのFolch試薬に入れ、よく混ぜて一晩転倒混和した。
(4) 11000×g 30分間、室温で遠心した後、上清800μlを新しい試験管に移した。
(5) ドラフト中で一晩Folch試薬を気化した。
(6) 完全に気化したのを確認した後、Folch試薬50μlとMeOH:Triton X-100=1:1で混合した溶液を10μl加えた。
(7) オートシェーカーで20分間よく懸濁した。
(8) ドラフト中で一晩Folch試薬を気化した。
(9) 10mM HEPESを95μl加えた。
(10) 超音波(YAMATO brain sonic ultra cleaner 151 DJ-DTH、ヤマト科学株式会社、東京)で70W、20分間処理したものを試料として使用した。この際、確実に脂質が溶解していることを確認した。
【実施例1】
【0075】
1.4 TG測定
トリグリセライドEテスト(和光純薬工業株式会社、大阪)を用いて以下の操作でトリグリセライドの測定を行った。
(1) 基準液(トリオレイン)300mg/mlを希釈して200、100、50mg/mlの溶液を作製した。
(2) 溶液1mlに対して希釈した基準液、サンプルをそれぞれ10μl加えた。
肝臓抽出液に関してはTGを測るときのみ5倍希釈してサンプルを加えた。
(3) 37℃で5分間インキューべートした後、600nmの吸光度を測定した。キュベット(Kartell 1938)、吸光光度計(HITACHI U2800A、株式会社日立製作所、東京)を用いた。
【実施例1】
【0076】
1.5 OGTT(Oral Glucose Tolerance Test)、PTT(Pyruvate Tolerance test)、ITT(Insulin Tolerance Test)
血糖値の測定にはAccucheck Aviva(Roche)を使用して測定した。
OGTTはマウスを16時間絶食した後に2g/kg body weightでグルコース溶液(0.2g/ml water)を経口投与し、0、15、30、60、90、120分での測定値を記録した。
また、OGTTの際には、ヘパリンナトリウム入りのチューブに尾静脈からの血液を入れ、血漿の採取も行った。
PTTはマウスを24時間絶食した後に2g/kg body weightでピルビン酸ナトリウム(0.2g/ml PBS)の腹腔内投与(i.p.)を行い、0、15、30、60、90及び120分の測定値を記録した。
ITTはマウスを6時間又は16時間絶食した後に0.75IU/kg body weightでインスリン溶液(PBS)の腹腔内投与を行い、0、15、30、60、90及び120分の測定値を記録した。
【実施例1】
【0077】
1.6 組織切片の作製
定法に従い、PLP固定溶液で固定し、0.5μm切片を作製し、ヘマトキシリン-エオジン染色(HE染色)を行った。
【実施例1】
【0078】
1.7 免疫染色
Vectastain社のKitを用い、下記に記載の抗体を使用し、DAB溶液を用いて発色することにより免疫染色を実施した。
【実施例1】
【0079】
1.8 インスリン測定
高感度インスリン測定キット(株式会社 森永生科学研究所、神奈川)を用い、血漿インスリン濃度を測定した。
【実施例1】
【0080】
1.9 Nrg1αプラスミドのHtvi(Hydrodynamic Tail Vein Injection)
Htviはマウスの尾静脈から体重の10%のプラスミド溶液(PBS)を5~7秒かけて勢い良く入れることで肝臓特異的に遺伝子を発現する手法である。2.5mlのシリンジと27Gの注射針を用いてHtvi行った(M. Gao, Y. Ma, R. Cui, and D. Liu, “Hydrodynamic delivery of FGF21 gene alleviates obesity and fatty liver in mice fed a high-fat diet,” J. Control. Release, vol. 185, no. 1, pp. 1-11, 2014.)。また、スクリーニング手法としてはDay0、Day6、Day12に30μg/2mlの溶液をマウスに打ち込むことで、2週間にわたりNrg1αを発現させた。
【実施例1】
【0081】
1.10 RNA抽出
Nucleospin RNA plus(Takara U0984、タカラバイオ株式会社、滋賀)を用いてRNA抽出を行った。
【実施例1】
【0082】
1.11 逆転写反応
Reverse Transcript System(Promega Corporation、米国)、Random primer (Invitrogen社、米国)を用い、常法に従い、前記抽出したRNAの逆転写を行った。
【実施例1】
【0083】
1.12 リアルタイムPCR(RT-PCR)
RT-PCRについて条件は表2に、表3にプライマー及びプローブの配列を示す。
【実施例1】
【0084】
【表2】
JP2018131413A_000004t.gif
【実施例1】
【0085】
【表3】
JP2018131413A_000005t.gif
1.13 PCR
前記RNA抽出と逆転写により作成されたcDNAを用いてPCRを行った。使用したポリメラーゼはQ5 polymerase(NEB)であり、使用したプライマーを表4に示す。
【実施例1】
【0086】
【表4】
JP2018131413A_000006t.gif
【実施例1】
【0087】
1.14クローニング、発現ベクターの作製
マウス肝cDNAを用いて、PCRを実施した。用いた酵素はQ5 polymeraseであり、用いたプライマーは表5に示す。フォワードプライマーにはNotIの切断配列とコザック配列(CCACC:フォワードプライマー下線部)、リバースプライマーにはFlag tag(リバースプライマー:下線部)を入れた配列を用いてクローニングを行った。これは分泌タンパク質であるので、N末に分泌配列を含む可能性を考慮した。
【実施例1】
【0088】
より具体的には、フォワードプライマーは、表5の「フォワードプライマー」の欄に記載の配列であり、下線部は発現を上昇させると言われているコザック配列を組み込み、その前にはNot1の切断サイト、その後ろはType1-Nrg1のN末端でとした。また、リバースプライマーの配列は、表5の「リバースプライマー」の欄に記載の配列であり、下線部は発現を認識するためのFlagタグの配列、taaは終止コドン、それ以外はType1-Nrg1のC末端の配列として設計し、ユーロフィンジェノミクス株式会社(東京)で製造したものを使用した。テンプレートとしてはWTマウスの肝臓からcDNAを作製し、使用した。また、PCR産物はシークエンスを解析し、確認した。
【実施例1】
【0089】
【表5】
JP2018131413A_000007t.gif
【実施例1】
【0090】
次に、ブラントエンドでpBlue scriptII SK(+)にT7側向きに挿入し、NotIを用いて切り出し、pCAGGS vectorに乗せ換えを行った。
【実施例1】
【0091】
1.15 アデノウィルス作製と力価測定
アデノウィルスはGateway system(Thermo Fischer Scientific Inc、米国)を用いて以下の操作で実施し、NotIを用いて切り出し、pENTER1Aに乗せ換えた。
(1) pENTER1A(50-150ng)+pAd/PL CMV-dest(300ng)+LR clonaseを入れ、25℃、1時間インキュベーションすることでLR反応を行った。
(2) その後、pAd/PL CMV I型Nrg1をPacI処理した後にHEK293Aにトランスフェクションを行い、剥がれたらウイルスの完成とし、TCID50測定法によりウイルスの力価を測定した。
(3) 10000倍希釈ウイルスを25μl加え、2倍希釈になるように11列行った。最後の列はNegative controlとした。
(4) HEK293A細胞を播種した。
(5) 4~5日後、7~8日後に培地を加えた。
(6) 14日後に50%変性の認められたWellを数え、力価を算出した。
【実施例1】
【0092】
1.16 肝組織タンパク質の抽出及びサンプル調整
(1) 表6に示したRIPA緩衝液を作製し、肝組織50mgについてホモジナイズした。
(2) 氷上で20分間静置した
(3) 16500×g、4℃、15分間遠心した。
(4) 上清をタンパク質アッセイした後、濃度を合わせて、3×Sample Bufferを加えた。
(5) 100℃、5分間煮沸した後、サンプルとした。
【実施例1】
【0093】
【表6】
JP2018131413A_000008t.gif
【実施例1】
【0094】
1.17 肝組織、初代培養肝細胞からの核タンパク質の抽出
以下の操作で、肝組織、初代培養肝細胞からの核タンパク質の抽出を行った。
(1) 10倍量の表7のBufferAを用いて肝臓:150mg、又は、初代培養肝細胞の106細胞をホモジナイズした。
(2) ホモジナイズした試料を氷上に15分間静置した。
(3) 400×g、4℃で5分間遠心した。
(4) 細胞質分画である上清を除去した。
(5) BufferAを用いて沈殿物を洗浄した。
(6) 沈殿物に300μlの表8に示したBufferCを入れた。
(7) 4℃で30分間転倒撹拌した。
(8) 4℃、16500×g、20分間遠心した。
(9) 上清を表9に示したBufferEを用いて透析した(4℃、O/N)。
(10) 回収したサンプルをタンパク質アッセイした後、濃度を合わせて、3×Sample Bufferを加えた。
(11) 100℃で5分間煮沸した後、サンプルとした。
【実施例1】
【0095】
【表7】
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【表8】
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【表9】
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【実施例1】
【0096】
1.18 ウェスタンブロッティング
表10に使用した抗体、型番、条件で常法に従いウェスタンブロッティングを実施した。
【実施例1】
【0097】
【表10】
JP2018131413A_000012t.gif
【実施例1】
【0098】
1.19 初代培養マウス肝細胞の培養
Avertin(25μl/g body weight)麻酔下、門脈から24Gのサーフローを用いて、酸素を送り、40℃に加温したHBSSを10ml/分のスピードで循環し、脱血した。HBSSが循環したのを確認後、速やかに下大静脈を切断し、コラゲナーゼを10~15分間循環し、肝臓を摘出した。
【実施例1】
【0099】
以後の操作はクリーンベンチ内で行い、肝臓をほぐし、ほぐした肝細胞を100μmのセルストレーナー(Falcon)を通した後、50×g 4℃で5分間遠心し、上澄み液を除去後、肝細胞をHBSS 12mlで再懸濁した。percoll 10.8mlと10×ハンクス液 1.2mlを混ぜたpercoll溶液とで肝細胞を洗浄後、さらに、HBSSで洗浄した。
【実施例1】
【0100】
以下William Eagles培地は10%FBS、P/S、1/100 X glutamaxを加え保存し、さらに終濃度が0.5nM インスリン、100nMデキサメタゾンになるように加えたものを使用した。次に、William Eagles培地(GIBCOTM)に懸濁した後Collagen coat dish(IWAKITM)に3.5×105cells/35mmdishに播種し、16時間後に培地交換を行った。
【実施例1】
【0101】
【表11】
JP2018131413A_000013t.gif
【実施例1】
【0102】
1.20 siRNAのトランスフェクション
siRNAのトランスフェクションは以下の操作で実施した。
(1) 初代肝細胞を播種した次の日に無血清培地に交換(DEMEM basic)を行い、siRNA 50nM、リポフェクタミン200TMを5μl用いてトランスフェクションを行い、その後、無血清培地に交換した。なお、使用したsiNrg1の配列はIDTより購入した。以下に配列を示す。
5’-UGCAACUGGUGAAUCAAUAUGUAUCTA-3’
【実施例1】
【0103】
1.21 培養肝細胞に対するcAMP/デキサメタゾン(Dex)刺激
初代肝細胞を播種した次の日に培地交換を行い、アデノウイルスを添加し、インキュベーションすることによりMOI50で感染させた後、無血清培地に交換した。次の日に500μM 8-bromo-cAMP/D2W、100nM デキサメタゾン/エチルアルコールを用いて刺激した。その3時間後に細胞を回収した。
【実施例1】
【0104】
なお、rNrg1αは、他のタンパク質の影響を出来る限り除くために、cAMP/Dex刺激の1時間前に、無血清培地で培地交換した後、刺激を行った。また、LY294002/DMSO、PD98059/DMSOは1時間前に添加して、刺激を行った。
【実施例1】
【0105】
1.22 グルコース産生アッセイ
培養肝細胞におけるグルコース産生の測定は、以下の操作で実施した。
(1) 6ウェルのプレートに初代肝細胞を1×106細胞播種した。
(2) 初代肝細胞を播種した次の日に培地交換を行い、アデノウイルスをMOI50で感染させた。
(3) 無血清培地に交換した。
(4) 次の日にPBSで2回洗浄した後に、表12に示す0.5%BSA含有KRB緩衝液1mlに培地交換した。
(5) 500μM 8-bromo-cAMP、100nMデキサメタゾン、5mM ピルビン酸ナトリウム/D2W (和光純薬工業株式会社)、10mM 乳酸ナトリウム/D2W (Sigma-Aldrich Co. LLC.、米国)を用いて刺激した。
(6) 6時間後にAccucheckR(Roche Diabetes Care, Inc.、米国)を用いてグルコース濃度を測定した。
(7) 初代肝細胞のタンパク定量を行い、タンパク質あたりのグルコース濃度に補正した。
【実施例1】
【0106】
【表12】
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【実施例1】
【0107】
1.23 rNrg1αの作製
組換えNrg1αEGF様ドメインポリペプチド(rNrg1α)は、以下の操作で作製した。
(1) Q5 Polymeraseを用いてI型Nrg1αのHis178~Arg242までをクローニングし、pBluescriptII SK(+)(Agilent Technologies、米国)に挿入し、配列を解析し、目的とす
る配列と一致する配列が挿入されたことを確認した。
(2) フレームシフトが起こらないように注意し、pColdI(MCS前に Hisタグ付き)(TAKARA、タカラバイオ株式会社)に乗せ換えた。(コントロールについては空ベクターで同様の操作を行った。)
(3) BL21株を用いて、トランスフォーメーションを行い、OD600が0.4程度まで培養した。
(4) 氷浴で急冷した後に、終濃度500mM IPTG/D2Wを加え、15℃、24時間培養した。
さらに、以下HisTALON Gravity column purification kit(635654;タカラバイオ株式会社)を使用して精製した。
(5) 2ml/100mgペレットのxTractor Bufferを加え、ピペッティングした。
(6) 1μl DNase I/2ml 入れ、15分間氷冷後、4℃で遠心した。
(7) 上清を回収し、0.33μm Filterを用いて濾過した。
(8) カラムにビーズ容量の5~10倍量の平衡化緩衝液で平衡化した。
(9) 試料を入れ、ビーズ容量の8倍量の平衡化緩衝液、7倍量の洗浄用緩衝液(10mM イミダゾール緩衝液)で洗浄した。
(10) ビーズ容量の5倍量の溶出用緩衝液(150mMイミダゾール緩衝液)で溶出した。
(11) PBSを用いて透析を行った。
さらに、以下の操作をPierce High Capacity Endotoxin Removal Spin Column(Thermo Fischer Scientific Inc.:88276)を用いて後、エンドトキシンの除去を行った。
(12) 20%エタノールを除去し、PBSで3回洗浄し平衡化した。
(13) 試料を入れて4℃、1時間転倒撹拌した。
(14) 試料を回収した。
【実施例1】
【0108】
1.24 検定
統計学的解析は、Studentのt検定で実施した。また、多重検定では一元配置分散分析の後にTurkey-Cramer検定を行った。
【実施例1】
【0109】
2. 実験結果
2.1 HFHS(高脂肪食高糖質食)による糖尿病モデルマウスの作製
糖尿病病態下において作用するヘパトカインを探索するため、HFHS誘導性糖尿病モデルマウスの作製を試みた。HFHSを与えたマウスについて経時的(0~15週間)に解析を行ったところ、肝重量、精巣上体の脂肪(Epididymal WAT:eWAT)の増加、肝臓中のTGの増加、ALTの増加が認められた。空腹時血糖についてHFHS投与15週の時点で有意に上昇し、HFHS投与後15週において空腹時血糖>126mg/dlを満たしていることから糖尿病を発症していると判断された。
【実施例1】
【0110】
そこでHFHS15週与えたマウスについて、さらに詳細な解析を行った。耐糖能の指標であるOGTT(Oral Glucose Tolerance Test)を行ったところ、HFHS15週投与マウスにおいて有意に血糖値の上昇が認められた。OGTTの120分値>200mg/dl、空腹時血糖>126mg/dlの条件を満たしているため糖尿病を発症していることが分かる。また、末梢のインスリン抵抗性の指標であるインスリン耐性テスト(ITT:Insulin Tolerance Test)を行ったところ、通常食を与えた群と比べて有意な差は認められなかった。組織切片を作製し、膵島の解析を行ったところ、増殖マーカーであるKi67陽性細胞の増加が認められた(図示せず)。
【実施例1】
【0111】
以上より、膵β細胞の代償的増殖による膵島の肥大が起こっていることことが示唆された。また、組織切片で得られた所見に一致して、HFHS投与後15週において空腹時おける高インスリン血症、OGTTにおけるインスリン追加分泌の増加が認められた(図示せず)。したがって、2型糖尿病モデルマウスの作製に成功した。
【実施例1】
【0112】
2.2 マイクロアレイ解析によるニューレグリン1(Nrg1)の同定
上記糖尿病モデルマウスを用いて、糖尿病病態下において肝臓で発現誘導し全身の糖代謝制御にかかわる新規ヘパトカインを探索するためマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイは、糖尿病病態を明確に示す代表的な2つのマウス肝組織試料をプールして行った。
【実施例1】
【0113】
マイクロアレイ解析により糖代謝に関与する因子(GCK、PFKP、G6PDなど)や脂質代謝に関与する因子(PPARγ、Lipin1、SCDなど)に発現上昇が認められた。また、炎症性サイトカインやケモカイン(IL1β、CCL2など)、コラーゲンFamily(COL1A1など)の遺伝子発現亢進が認められた。したがって、肝臓における解糖系の亢進、脂質合成の増加、炎症、線維化の亢進に関与する遺伝子群が上昇しており、既存の糖尿病モデルと一致することを確認した。
【実施例1】
【0114】
次に、通常食を与えたマウスに比べて、HFHSの15週間投与群で2倍以上の発現上昇が認められる遺伝子の中から、上位50の遺伝子についてSPD(Secreted protein database:http://spd.cbi.pku.edu.cn/)を用いて分泌の可能性について検討した(図3A、表13)。
【実施例1】
【0115】
【表13】
JP2018131413A_000015t.gif
【実施例1】
【0116】
表13は、通常食とHFHS15週与えたマウスの肝臓のマイクロアレイ発現解析結果を示す。Accession Number、遺伝子の名前、Fold change、P値を示した。また、ハイライトした6遺伝子は分泌する可能性のある遺伝子を指し、これらを候補とした。
【実施例1】
【0117】
また、GEO profile ( http://www.ncbi. nlm.nih.gov/PubMed )を用いて2型糖尿病患者においても発現上昇が認められた遺伝子を抽出した。この過程で、肝細胞以外から分泌している可能性が高い分子(ケモカインや線維化関連因子)については除外した。これらの条件に当てはまる遺伝子(Nrg1、Gpnmb)についてはRT-PCRによりマイクロアレイ結果の妥当性の確認を行った(図3B)。再現性が得られた遺伝子の中で、本研究ではNrg1に着目し解析を行った。
【実施例1】
【0118】
2.3 肝臓におけるNrg1の発現とHFHSによる食事応答性
肝臓において発現するNrg1の性状を調べるために前記表4に記載したプライマーを用いてPCRを行った。なお、マウスのII型、IV型、V型、VI型のNrg1遺伝子の存在を検証するために、ヒトNrg1のそれぞれのタイプの開始コドンを含むエクソン配列と相同性の高いマウスゲノム領域を検索しプライマーを設定した。
【実施例1】
【0119】
その結果、マウス正常肝臓ではI型Nrg1αとIII型Nrg1βのみの発現が確認された(図4A)。この結果に一致して、2型糖尿病モデルマウス(HFHS誘導性、ob/ob)において発現する肝臓のNrg1はI型Nrg1αとIII型Nrg1βが主なアイソフォームであることを確認した(図4B)。
【実施例1】
【0120】
そこで、I型及びIII型に特異的なプライマーを用いてRT-PCRを行ったところ、HFHSの15週間摂食によってI型Nrg1の有意な発現増加が認められた。一方、III型Nrg1は上昇傾向が認められたものの有意な差はなかった(P=0.148)(図4C)。
【実施例1】
【0121】
次に、肝臓において発現の認められたI型Nrg1αとIII型Nrg1βのコーディング領域のクローニングと配列決定を行った。その結果、III型Nrg1βの転写産物はエクソン1の最後の70塩基が欠失していることが確認された。この欠失はフレームシフトとそれによるEGFドメイン上での終止コドンの出現を生じることから、III型Nrg1βの転写産物はEGF活性を示すタンパク質に翻訳されない可能性が示された (図4D)。
【実施例1】
【0122】
一方、ヒト及びマウスのI型Nrg1α遺伝子について、その核酸配列とアミノ酸配列を配列番号1~4に示した。この配列の正確性は、異なるマウス個体のサンプルに対して読み込み精度の高いDNAポリメラーゼ(Error late~106)を用いて得られた再現性とヒト遺伝子との高い相同性により担保されると考えた(図2)。したがって、マウス肝臓では、I型Nrg1α遺伝子が主なアイソフォームとして機能する可能性が高いと結論づけた。
【実施例1】
【0123】
2.4 Htvi法による肝臓特異的Nrg1強制発現マウスの耐糖能評価in vivo試験
肝臓におけるNrg1の機能解析を行うため、Htvi法を用いてI型Nrg1αの発現ベクター:30μg/headを、正常マウス(体重20~30g)に投与し、肝臓にC末Flagタグ付きI型Nrg1α遺伝子を強制発現させた。Flag抗体を用いた解析の結果、I型Nrg1α遺伝子が肝臓のみに発現していることを確認した(図5A)。
【実施例1】
【0124】
6日に1度、2週間にわたり遺伝子導入をしたところ、I型Nrg1α過剰発現群においてOGTT時の血糖値上昇の有意な抑制が認められた(図5B)。また、PTTでも血糖値上昇の低下が認められ、I型Nrg1αの過剰発現により肝糖新生が抑制されていることが示唆された(図5C)。ITTでは、コントロールマウス(空ベクターを同量投与したマウス)と比較して有意な差は認められなかった(図5D)。肝体重比がI型Nrg1α過剰発現群において有意に上昇したものの、脂肪沈着や炎症、また肝細胞の腫大などの組織学的変化は認められなかった(図示せず)。
【実施例1】
【0125】
肝臓で発現しているIII型Nrg1β遺伝子産物は、フレームシフトによりEGFドメイン内において終止コドンが入ることが予想される。しかし、III型Nrg1βのN末が機能を有する可能性も考えられるため、同様にHtvi法を用いてHAタグ付きIII型Nrg1β遺伝子を過剰発現させたマウスについて解析を行なった。その結果、III型Nrg1β過剰発現群はコントロールマウスと比較して耐糖能に差は認められなかった(図示せず)。
【実施例1】
【0126】
次に、I型Nrg1αによる肝糖新生の抑制機構を明らかにするため、糖新生経路の重要な律速酵素Pepck、G6pase、ピルビン酸の取り込みに関与するMpc1、Mpc2遺伝子発現について定量的PCRを行った。
【実施例1】
【0127】
その結果、I型Nrg1α過剰発現群のこれらの遺伝子発現がコントロール群と比較して有意に抑制されていた(図6A)。また、この結果に一致して、PEPCKとG6Paseのタンパク質発現も有意に低下していた(図6B)。
【実施例1】
【0128】
これら律速酵素の発現レベルの低下にかかわる分子メカニズムを調べるため、上位の転写因子であるFOXO1の核内発現量とCREBのリン酸化(ser133)を検証した。その結果、CREBのリン酸化はほとんど観察できなかった一方で、核内FOXO1(nFOXO1)の有意な減少が認められた(図6C)。また、細胞質におけるFOXO1(cFOXO1)の発現も低下していたことから肝臓内FOXO1全体の発現量が低下していた。FOXO1の減少率は核分画の方が細胞質分画に比べて高く、核分画と細胞質分画の比はI型Nrg1αの過剰発現群で有意に低下した(図6C)。
【実施例1】
【0129】
以上より、I型Nrg1αの過剰発現は、FOXO1の発現量と核内移行の両方を制御することで肝糖新生を抑制していると結論づけた。
【実施例1】
【0130】
2.5 肝細胞におけるI型Nrg1αによる糖新生の抑制機構の解明
I型Nrg1αによる糖新生の抑制が肝臓自律的に起こっていることを検証するために、アデノウイルスを用いてI型Nrg1α遺伝子を初代培養肝細胞に過剰発現させた。肝糖新生の誘導は、cAMP/Dex(PKAの活性化剤/グルココルチコイド受容体アゴニスト)刺激を行なった。PepckとG6paseについて発現解析を行ったところ、cAMP/Dex(デキサメタゾン)刺激により認められた律速酵素の発現上昇がI型Nrg1αの過剰発現により抑制された。また、核内CREBはcAMP/Dex刺激に応答してリン酸化を受けるが、このリン酸化レベルはI型Nrg1αの過剰発現により影響は受けなかった。一方、cAMP/Dex刺激によるFOXO1の核内移行はI型Nrg1α過剰発現細胞では完全に抑制されていた。さらに、これらの結果と一致して、I型Nrg1αの過剰発現によりcAMP/Dex刺激で誘導される糖産生が抑制された(図示せず)。
【実施例1】
【0131】
次に、遺伝子の発現抑制による糖新生への影響を、Nrg1遺伝子特異的なsiRNAの導入実験により検討した。用いたsiRNAの有効性は、導入から30時間後のI型Nrg1遺伝子発現量解析から確認した。その結果、Nrg1発現抑制によりPepckとG6paseの発現誘導がさらに上昇することが明らかになった。一方、cAMP/Dex未刺激下のこれらの遺伝子発現に対する影響は認められなかった。この結果に一致して、Nrg1遺伝子のノックダウンは糖産生能をさらに活性化することが明らかになった。したがって、I型Nrg1αは肝臓において糖新生抑制能を有し、in vivoで認められた糖新生の抑制は肝臓自律的に起こっていることが示された(図示せず)。
【実施例1】
【0132】
2.6 I型Nrg1αによるシグナル伝達と糖新生の抑制
I型Nrg1はEGF様ドメインを含む細胞外ドメイン領域が切断後分泌され、標的細胞の細胞膜上にある受容体ERBB3あるいはERBB4に結合することでシグナルを伝達すること、あるいはそのC末端側の細胞内ドメインが切断され核内移行し、標的遺伝子の転写調節を行う2種類の様式が報告されている(R. Pinkas-Kramarskiら、“ErbB tyrosine kinases and the two neuregulin families constitute a ligand-receptor network.,” Mol. Cell. Biol., vol. 18, no. 10, pp. 6090-101, 1998.、J. Baoら、“Back signaling by the Nrg-1 intracellular domain,” J. Cell Biol., vol. 161, no. 6, pp. 1133-1141, 2003.)。
【実施例1】
【0133】
I型Nrg1αによる糖新生の抑制機構を明らかにするために、EGF様ドメインを含む細胞外ドメイン領域を認識できる抗Nrg1αポリクロナール抗体(177Ser-241Lysを認識する)とC末端をタグ標識したFlagタンパク質を認識できる抗Flag抗体を用いたタンパク質発現解析を行った。
【実施例1】
【0134】
C末端にFlagタグを標識したI型Nrg1α遺伝子をHtvi法により過剰発現させたマウスの肝臓から全抽出したタンパク質を用いて解析したところ、約46kDa付近に抗Nrg1α抗体で認識されるバンドが確認できた(図7A)。一方、同量のタンパク質を用いた解析では、空ベクターを投与したコントロールマウスの肝臓では発現は認められなかった。また、抗Flag抗体を用いた解析では、I型Nrg1α遺伝子過剰発現マウスの肝臓の核内タンパク質において特異的なバンドは観察されなかった(図7B)。
【実施例1】
【0135】
これらの結果は、肝細胞に発現するI型Nrg1α遺伝子産物は細胞膜に局在後速やかにそのほとんどのタンパク質の細胞外ドメイン領域が切断後分泌され、受容体に結合していることを示している。一方、その細胞内ドメイン領域は細胞内では安定して存在せず、速やかに分解されている可能性を示している。
【実施例1】
【0136】
そこで、これを検証するために、初代培養肝細胞を用いてI型Nrg1αの細胞外ドメイン領域が実際に分泌されているか検討した。その結果、アデノウイルスを用いてI型Nrg1αを過剰発現させた細胞の培地中に抗Nrg1α抗体で認識される約46kDa付近にウェスタンブロッティングにおけるバンドを認めた(図7C)。また、細胞から全抽出したタンパク質においても発現量は少ないものの、同じ分子量のバンドが認められた。
【実施例1】
【0137】
以上の結果より、肝臓で発現させたI型Nrg1αの大部分はその細胞外ドメイン領域が切断され、分泌されることで作用を発揮していると言える。さらに、48時間培養したマウス初代肝細胞培養上清中に、抗Nrg1α抗体で認識される同様の分子量のバンドを認めた結果は、内因性に発現しているI型Nrg1αも同じ発現様式を介して機能していることを示唆している。
【実施例1】
【0138】
2.7 rNrg1α(組換えNrg1αEGF様ドメインポリペプチド)のin vivo投与試験、及び培養初代肝細胞におけるin vitro試験
I型Nrg1αによる糖新生の抑制にかかわる細胞内シグナル伝達機構を解析するために、まずI型Nrg1αタンパク質の生理活性ドメインであるEGF-likeドメイン(配列番号4)の組換えタンパク質(rNrg1α、約8kDa)を大腸菌で作製した(図8A)。この精製したrNrg1αの単回投与によりOGTT、PTTによる血糖値の上昇の抑制が認められた(図8B、C)。
【実施例1】
【0139】
また、マウス初代培養肝細胞を用いてcAMP/Dex刺激により誘導される糖新生律速酵素の遺伝子発現へのrNrg1α添加の影響を解析した。その結果、4時間の1nM rNrg1α処置により、PepckとG6paseの発現増強が有意に抑制された。10nM添加においても同等の効果が認められた(図示せず)。
【実施例1】
【0140】
次にシグナル経路を解析するために、精製したrNrg1αをマウス初代培養肝細胞に添加したところ、ERBB3のリン酸化の増強が認められた。一方、ERBB1のリン酸化の亢進は認められず、またこれまでの報告に一致しERBB2やERBB4のタンパク質は検出できなかった。rNrg1αの添加はAkt、Erk及びFOXO1のリン酸化も増強することが明らかになった(図示せず)。
【実施例1】
【0141】
以上より、肝臓に発現するI型Nrg1αは切断・分泌され、その細胞外ドメイン領域がERBB3受容体との結合を介して、AktとErkがかかわる2つのシグナル経路を活性化することでFOXO1のリン酸化と不活化を誘導し、結果として肝糖新生を負に制御していることが考えられる。
【実施例1】
【0142】
そこで、I型Nrg1αによる糖新生の抑制へのAkt、Erkの関与について検討を行った。PI3K 阻害剤であるLY294002とMek阻害剤のPD98059の濃度検討を行い、LY294002は1μM、PD98059は50μMにおいて、Nrg1αによるAkt、Erkのリン酸化を十分に抑制することを確認した。
【実施例1】
【0143】
次に、I型Nrg1α遺伝子を過剰発現させたマウス初代培養肝細胞で認められたPepckとG6paseの発現抑制がそれぞれの阻害剤処置により消失するか検討を行った。その結果、LY294002及びPD98059処理ともに、cAMP/Dex(Dex: 核内グルココルチコイド受容体に結合)刺激により正常肝細胞で誘導された発現レベルと同程度まで回復が認められた図示せず)。したがって、I型Nrg1α遺伝子の発現により誘導される肝糖新生抑制機構に、AktとErkの2つのシグナル経路を介したFOXO1のリン酸化が糖新生の抑制に関与している可能性が示された。
【実施例1】
【0144】
2.8 肝臓におけるI型Nrg1α遺伝子の発現制御
肝臓の糖新生は飢餓状態において、血糖値を保つために重要な機構である。したがって、空腹時ではNrg1の発現が抑制されていると仮説を立て検証を行った。しかし仮説と反して、24時間飢餓状態におけるマウス肝臓のI型Nrg1遺伝子の発現を調べたところ、その発現は飢餓に応答し誘導されることが明らかになった。また、ErbB3受容体の発現上昇も認められた。このI型Nrg1の発現誘導メカニズムを解明するために、マウス初代培養肝細胞を用いて、飢餓状態の血中において変化するグルカゴン/グルココルチコイド(cAMP/Dex、パルミチン酸及びグルコースによる刺激を行った。その結果、cAMP/Dexとパルミチン酸の添加ではI型Nrg1の発現に変化は認められなかったものの、低グルコース濃度条件下(5.5mM)により発現誘導が認められた。また、この結果に一致して、I型Nrg1αタンパク質の細胞外ドメイン領域の分泌が低グルコース刺激に応答して増加することが明らかになった(図示せず)。
【実施例1】
【0145】
このI型Nrg1α遺伝子発現の低グルコースや飢餓の応答にAMPKが関わっているか検討をマウス初代培養肝細胞で行なった。まず、低グルコース処置によりAMPKのThr172リン酸化が誘導されるか検討したところ、48時間の刺激に応答してリン酸化の増強、つまりAMPKの活性化が認められた。次に、AMPK阻害剤であるCompound Cで処理したところ、低グルコース刺激により誘導されたI型Nrg1遺伝子の発現増強が濃度依存的に抑制された。一方、AMPKの活性化薬剤であるメトホルミンやAICARで肝細胞を処理したところ、低グルコース刺激によるI型Nrg1遺伝子の発現上昇がさらに増強した(図示せず)。これらの結果は、長期の飢餓状態に応答したAMPKの活性化により、マウス肝臓ではI型Nrg1の発現上昇が誘導されることを強く示している。
【実施例1】
【0146】
2.9 Nrg1αの膵島増殖作用の解析
前記肝細胞におけるI型Nrg1αタンパク質の発現挙動実験とマウス肝臓におけるI型Nrg1遺伝子の飢餓応答実験の結果から、肝臓のI型Nrg1αは分泌された細胞外ドメイン領域がホルモンとして他臓器に作用し糖代謝制御にかかわる可能性が考えられた。そこで、I型Nrg1αが末梢組織のインスリン感受性に与える影響を評価するために、肝臓のI型Nrg1α遺伝子過剰発現マウスに対してインスリン投与によるAktのリン酸化を指標に解析を行った。その結果、骨格筋や脂肪組織のインスリンによるAktのリン酸化レベルは、I型Nrg1α遺伝子の過剰発現により大きな変化は認められなかった。一方、肝臓のAktのリン酸化は減少していた。各臓器におけるERBB3/4受容体のリン酸化について評価を行ったところ、I型Nrg1α遺伝子過剰発現マウスの肝臓で恒常的なERBB3のリン酸化が認められた一方で、骨格筋や脂肪組織のリン酸化は認められなかった。また、ERBB4受容体の発現はI型Nrg1α遺伝子過剰発現マウスの肝臓において認められたもののそのリン酸化については認められず、一方骨格筋や脂肪組織においてはERBB4受容体の発現そのものが検出できなかった図示せず)。この結果は、図5DのITTの結果、つまり、肝臓のI型Nrg1α遺伝子の過剰発現による耐糖能の改善作用が骨格筋や脂肪組織のインスリン感受性に非依存的に発揮されているとの考えと一致している。
【実施例1】
【0147】
しかしながら、I型Nrg1α遺伝子過剰発現マウスで認められた耐糖能の改善作用(図5B)に糖新生抑制以外の要因がかかわっていない可能性も完全に否定できない。次に、I型Nrg1αの耐糖能改善作用に膵β細胞からのインスリン分泌亢進がかかわっている可能性を検証するために、糖負荷時の血中インスリン値の変動について解析を行った。その結果、肝臓のI型Nrg1α遺伝子過剰発現マウスにおいて、糖負荷15分後のインスリン分泌量とインスリン追加分泌の増加が認められた(図9D)。また、膵島の組織学的解析から、膵島の肥大とそれに伴う細胞増殖マーカーKi67陽性細胞数が増加していることが分かった(図9A、B、C)。
【実施例1】
【0148】
肝臓から分泌されたI型Nrg1αがヘパトカインとして膵島肥大に関与するのかを検討するため、正常マウスにrNrg1αの腹腔内投与(i.p.)を週3回4週間に亘り行った。低用量のrNrg1α(50 μg/kg body weight)の投与では、PBS投与のコントロール群と比較して、耐糖能に有意な差は認められなかった。一方、高用量(100 μg/kg body weight)を投与した場合、糖負荷後15及び30分値における有意な血糖値上昇の抑制が認められた(図10A)。肝糖新生能は高用量のrNrg1α処置によっても顕著な変化は認められず、この結果と一致して、肝臓の糖新生にかかわる遺伝子群の発現にも差は認められなかった。さらに、インスリン負荷による血糖値の減少とAktのリン酸化に対してもrNrg1α投与の影響はないことが明らかになった(図示せず)。また、肝臓のI型Nrg1α遺伝子過剰発現により認められた前記の肝体重比の増加や過去に報告されたrNrg1βによる体重変化もrNrg1αの長期投与では変化がなかった(図示せず)。これらの結果から、高用量のrNrg1α投与により惹起された耐糖能の改善効果は肝臓やその他の末梢組織におけるインスリン感受性の差に起因しないことが考えられた。
【実施例1】
【0149】
そこで、膵島の増殖作用の関与を明らかにするために、組織学的及び生化学的解析を行った。その結果、肝臓のI型Nrg1α遺伝子過剰発現マウスと同様に、高用量のrNrg1α投与による膵島の肥大とそれに伴うKi67陽性細胞数の増加が認められた(図10B~D)。また、この結果に一致して、糖負荷後のインスリン追加分泌の増加が認められた(図10E)。
【実施例1】
【0150】
以上より、rNrg1αの長期投与は膵β細胞の増殖とそれに伴うインスリン追加分泌の増加により耐糖能を改善することが明らかになった。
【実施例1】
【0151】
2.10 2型糖尿病モデルであるob/obマウスにおけるrNrg1αの改善効果(in vivo)
次に、このrNrg1αによる長期投与が糖尿病下においても血糖降下作用を示すかを検討するためob/obマウスを用いて実験を行った。rNrg1αによる体重及び肝体重比への影響は特に認められなかった。一方、正常マウスと同様、耐糖能の顕著な改善が認められた(図11A)。またこの変化は、膵島サイズの肥大(図11B、C)とそれに伴うKi67陽性細胞の増加(図11D)、糖負荷後のインスリン追加分泌の増加(図11E)と相関していることが明らかになった。
【実施例1】
【0152】
したがって、糖尿病下においてもrNrg1αは膵島肥大によるインスリン分泌の増強を介して血糖降下作用を示すことが示された。
【実施例1】
【0153】
2.11 STZ投与1型糖尿病マウスにおけるrNrg1αの改善効果(in vivo)
ストレプトゾトシン(STZ、和光純薬工業株式会社)をマウス(7~8週齢)に単回投与(150mg/kg body weight)して1型糖尿病マウスを作製した。投与後1週間において血糖値350mg/dlを超えたマウスを糖尿病発症マウスとして取り扱った。αタイプのEGF様ドメインの組換えポリペプチド(rNrg1α)を4週間に亘り1週間3回、100 μg/kg body weight/回を投与し、随時血糖の低下、耐糖能の改善、インスリン陽性細胞の割合、摂食時血中インスリン値についてrNrg1α効果を評価した。免疫染色はクエン酸バッファーで賦活化を行った後、抗Insulin抗体(SIGMA 2018)、MOM kit(Vectastain BMK-2202)を用いて染色を行った。
【実施例1】
【0154】
その結果、随時血糖の低下、耐糖能の改善,インスリン分泌細胞の増加、血中インスリン値の増加が認められた(図12A~G)。
【実施例1】
【0155】
以上よりrNrg1a投与は1型糖尿病においても耐糖能改善に働くことが明らかとなった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図4A】
4
【図4B】
5
【図4C】
6
【図4D】
7
【図5A】
8
【図5B】
9
【図5C】
10
【図5D】
11
【図6A】
12
【図6B】
13
【図6C】
14
【図7A】
15
【図7B】
16
【図7C】
17
【図8A】
18
【図8B】
19
【図8C】
20
【図9A】
21
【図9B】
22
【図9C】
23
【図9D】
24
【図10A】
25
【図10B】
26
【図10C】
27
【図10D】
28
【図10E】
29
【図11A】
30
【図11B】
31
【図11C】
32
【図11D】
33
【図11E】
34
【図12A】
35
【図12B】
36
【図12C】
37
【図12D】
38
【図12E】
39
【図12F】
40
【図12G】
41