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明細書 :複合材料、複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6652758号 (P6652758)
公開番号 特開2017-065139 (P2017-065139A)
登録日 令和2年1月28日(2020.1.28)
発行日 令和2年2月26日(2020.2.26)
公開日 平成29年4月6日(2017.4.6)
発明の名称または考案の名称 複合材料、複合材料の製造方法
国際特許分類 B32B   7/025       (2019.01)
B32B  27/00        (2006.01)
C08F   2/44        (2006.01)
FI B32B 7/025
B32B 27/00 C
C08F 2/44 C
請求項の数または発明の数 8
全頁数 18
出願番号 特願2015-194485 (P2015-194485)
出願日 平成27年9月30日(2015.9.30)
審査請求日 平成30年7月23日(2018.7.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】西澤 松彦
【氏名】長峯 邦明
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100181272、【弁理士】、【氏名又は名称】神 紘一郎
審査官 【審査官】増田 亮子
参考文献・文献 特開2009-051211(JP,A)
特開2008-260272(JP,A)
特開2013-060505(JP,A)
特表2013-500717(JP,A)
調査した分野 B32B 1/00-43/00
C08F 2/00-2/60
特許請求の範囲 【請求項1】
導電性基材と、前記導電性基材上に設けられた絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に設けられたハイドロゲルと、前記絶縁性基材表面から始端し前記ハイドロゲル内部に伸びる絶縁性ポリマーと、を含むことを特徴とする、生体電気信号計測用又は通電用電極
【請求項2】
前記絶縁性ポリマーの導電率は、1mS/cm未満である、請求項1に記載の電極
【請求項3】
前記絶縁性ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、PPEGDA、PPEGDMからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の電極
【請求項4】
前記ハイドロゲルは、コラーゲン、グルコマンナン、フィブリン、アルギン酸、ポリビニルアルコール、PPEGDA、PPEGDM、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シリコーン、DNハイドロゲル、これらの2種以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極
【請求項5】
前記導電性基材は、導電性ポリマー材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
基材表面に重合開始部を導入する、重合開始部導入工程と、
ハイドロゲル中にモノマーを含浸させる、モノマー含浸工程と、
前記重合開始部を重合開始点として前記モノマーの重合反応を行う、重合工程と、
を含むことを特徴とする、生体電気信号計測用又は通電用電極の製造方法。
【請求項7】
前記モノマーの重合反応は、ラジカル重合反応である、請求項6に記載の電極の製造方法。
【請求項8】
前記モノマーの重合は、熱反応、光反応、酸化還元反応からなる群より選択される少なくとも1つにより開始される、請求項6又は7に記載の電極の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料、複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療における診断・治療の手法として、各種機器を用いた、心電・筋電・脳電等の生体が発する電気信号の計測、及び通電(電気刺激)による生体機能の制御が、既に一般化している。かかる手法では、機器の一部である電極が、機器と生体とのインターフェースとなっている。
【0003】
医療分野で用いられている電極は、一般的には、金属や炭素等の導電性を備える配線と、導電性を備えない基板材料(プラスチックやガラス等)とで構成されている。ここで、生体と直接的に接触することとなる電極には、生体親和性が必要とされており、昨今使用されている機器には、この点において改善の余地が残されているとされてきた。
【0004】
最近、生体親和性に優れるハイドロゲルを基板に用いるメリットが注目されており、電極材料とハイドロゲルとを接着する技術の開発が始まっている。
【0005】
上記接着技術として、電極材料にハイドロゲルを載せた状態で、導電性高分子の電解重合を行い、電極材料近傍において、電極材料表面から導電性高分子を伸長させることによって、導電性接着層を形成させる技術が知られている(特許文献1及び非特許文献1参照)。これらの文献では、ハイドロゲルを構成する高分子鎖と導電性高分子とが相互に絡み合うことにより、電極材料とハイドロゲルとが強固に接着することが報告されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2014/157550号
【0007】

【非特許文献1】M. Sasaki, et al., Advanced Healthcare Materials, 2014, 3, 1919.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の複合材料の製造方法では、電極とゲルとを接着する役割を果たすポリマーの合成を電解重合により行っているため、複合材料においてゲル表層に設けることができるのは導電性ポリマー層に限られる。ゲル等の多孔質体の表層に絶縁性ポリマー層による接着を行うことも、デバイス応用の観点から、産業上大きな意義を有している。
【0009】
そこで、本発明は、ポリマーが低い導電性しか備えていない場合であっても、基材と多孔質体との間でのポリマーの合成を可能にすること、ひいては、基材と多孔質体とが絶縁性ポリマーを介して強く接着されている複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
本発明の生体電気信号計測用又は通電用電極は、導電性基材と、前記導電性基材上に設けられた絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に設けられたハイドロゲルと、前記絶縁性基材表面から始端し前記ハイドロゲル内部に伸びる絶縁性ポリマーと、を含むことを特徴とする。

【0012】
本発明の電極では、前記絶縁性ポリマーの導電率は、1mS/cm未満であることが好ましい。
本発明の電極では、前記絶縁性ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、PPEGDA、PPEGDMからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。また、本発明の電極では、前記多孔質体は、ハイドロゲルであることが好ましい。更に、本発明の電極では、前記ハイドロゲルは、コラーゲン、グルコマンナン、フィブリン、アルギン酸、ポリビニルアルコール、PPEGDA、PPEGDM、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シリコーン、DNハイドロゲル、これらの2種以上の混合物からなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
本発明の電極では、前記導電性基材は、導電性ポリマー材料を含むことが好ましい。

【0013】
本発明の電極の製造方法は、基材表面に重合開始部を導入する、重合開始部導入工程と、ハイドロゲル中にモノマーを含浸させる、モノマー含浸工程と、前記重合開始部を重合開始点として前記モノマーの重合反応を行う、重合工程と、を含むことを特徴とする。

【0014】
本発明の電極の製造方法では、前記モノマーの重合反応は、ラジカル重合反応であることが好ましい。また、本発明の電極の製造方法では、前記モノマーの重合は、熱反応、光反応、酸化還元反応からなる群より選択される少なくとも1つにより開始されることが好ましい。

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基材と多孔質体とが絶縁性ポリマーを介して強く接着されている複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の複合材料を示す図である。(a)(i)は、本発明の一例の複合材料の平面図であり、(a)(ii)は、(a)(i)の線A-Aに沿う面による断面図である。(b)(i)は、本発明の別の例の複合材料の平面図であり、(b)(ii)は、(b)(i)の線A-Aに沿う面による断面図である。
【図2】本実施形態の複合材料の製造方法の概要について示す図である。
【図3】(i)は、本発明の更なる例の複合材料の平面図であり、図3(ii)は、(i)の線A-Aに沿う面による断面図である。
【図4】PEDOT・PU/PU-IrgacureフィルムにDNハイドロゲルを接着させた複合材料を、肉眼で又は倒立型顕微鏡を用いて観察したときの写真である。(a)は、複合材料を倒立型顕微鏡を用いて観察したときの写真である。(b)は、複合材料を肉眼で観察したときの写真である。(c)(i)は、リン酸緩衝液で膨潤させた状態の複合材料を肉眼で観察したときの写真であり、(c)(ii)は、乾燥させた状態の複合材料を肉眼で観察したときの写真である。
【図5】(a)は、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムにコラーゲンハイドロゲルを接着させた複合材料を肉眼で観察したときの写真であり、(b)は、PEDOT・PU/PU-IrgacureフィルムにPPEGDAハイドロゲルを接着させた複合材料を肉眼で観察したときの写真である。
【図6】PP-BPフィルムにPPEGDAハイドロゲルを接着させた複合材料を肉眼で観察したときの写真である。
【図7】実施例の「A-4-3.」において得られたガラス/PU-IrgacureとDNハイドロゲルとがポリアクリルアミドを介して接着した複合材料を接着強度評価に供したときの様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の複合材料、及び本発明の複合材料の製造方法の実施形態について詳細に例示説明する。

【0018】
(複合材料)
本発明の実施形態の複合材料1は、図1に示すように、基材2と、基材2上に設けられた多孔質体3と、基材2表面から始端し多孔質体3内部に伸びる絶縁性ポリマー4ipとを含む。

【0019】
図1に、本発明の実施形態の複合材料の断面図を示す。図1(a)(i)に、本発明の一例の複合材料の平面図を示し、図1(a)(ii)に、(a)(i)の線A-Aに沿う面による断面図を示す。図1(b)(i)に、本発明の別の例の複合材料の平面図を示し、図1(b)(ii)に、(b)(i)の線A-Aに沿う面による断面図を示す。

【0020】
なお、本発明の実施形態の複合材料1は、図1(a)に示すように、基材2表面から始端し多孔質体3内部に伸びるポリマー4pを絶縁性ポリマー4ipのみとしてもよく、図1(b)に示すように、かかるポリマー4pに、前述の絶縁性ポリマー4ipに加えて、任意選択的に、導電性ポリマー4cpを含めてもよい。
また、本発明の実施形態の複合材料1では、図1(a)、(b)に示すように、基材2を絶縁性基材2iのみとしてもよく、後述の図3に示すように、基材2を絶縁性基材2iと導電性基材2cとの組み合わせとしてもよい。

【0021】
なお、図面では、絶縁性ポリマー4ipを破線にて、導電性ポリマー4cpを実線にて、示し、また、絶縁性基材2iを白色部にて、導電性基材2cを黒色部にて、示す(以下、同様)。

【0022】
詳細には、本発明の実施形態の複合材料1では、多孔質体3は、基材2と多孔質体3との絶縁性ポリマー4ipを介した接着を高める観点から、図1に示すように、基材2表面に接触するように(好適には密着するように)設けられることが好ましい。
本発明の実施形態の複合材料1では、絶縁性ポリマー4ipは、図1(a)、(b)に示すように、その一端で基材2表面に導入された基F(図中、黒丸にて示す。)と共有結合していることが好ましい。また、絶縁性ポリマー4ipは、図1に示すように、基材2と多孔質体3との接着性を高める観点から、多孔質体3の厚さ方向一方側から他方側に向かって侵入するように伸びることが好ましい。更に、絶縁性ポリマー4ipは、基材2と多孔質体3との接着性を高める観点から、多孔質体3をなす材料(例えば、多孔質体3が高分子ゲルである場合における高分子)と相互に絡み合っていることが好ましい。

【0023】
以下、本発明の実施形態の複合材料1の各要素について詳細に記載する。

【0024】
基材2としては、その表面に基F(絶縁性ポリマー4ipの重合(後述)における重合開始部PI)を付与することができる限り、特に限定されることなく、絶縁性基材2iとしてもよく、導電性基材2cとしてもよい。

【0025】
絶縁性基材2iとしては、一般的な樹脂や該樹脂を含む樹脂組成物を用いることができる。
ここで、樹脂としては、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)共重合体、ポリジオキサノン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル酸エステル、アクリロニトリルエチレンプロピレンゴムスチレン共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、アクリロニトリルスチレンアクリレート、ポリブタジエン、ビスマレイミドトリアジン、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、サイクリックブチルテレフタレート、クレゾールホルムアルデヒド、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドリンゴム、セルロースプロピオネート、塩素化塩化ビニル、クロロプレンゴム、カゼイン、セルローストリアセテート、ジアリルフタレート、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレンジアミン四酢酸、エチレンエチルアクリレート、エチレンメチルアクリレート、エチレンメタクリル酸、エポキシ樹脂、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチルビニルエーテル、パーフルオロゴム、ポリエチレン、ポリスチレン、ブチルゴム、イソプレンゴム、ジフェニルメタンイソシアネート、メラミンホルムアルデヒド、ニトリルゴム、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイソブチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられ、特に、生体親和性、安定性の観点から、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、シリコーン、ポリエステル、テフロン、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。

【0026】
導電性基材2cとしては、炭素材料、導電性ポリマー材料、半導体、金属等が挙げられる。かかる導電性基材2cは、複合材料1において電極として機能することができる。
ここで、炭素材料としては、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラッシーカーボン、グラフェン、フラーレン、カーボンファイバ、カーボンファブリック、カーボンエアロゲル等が挙げられ;導電性ポリマー材料としては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリチオフェン、ポリ(p-フェニレンスルフィド)等が挙げられ、半導体としては、シリコーン、ゲルマニウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化チタン、酸化銅、酸化銀等が挙げられ;金属としては、金、白金、銀、チタン、アルミニウム、タングステン、銅、鉄、パラジウム等が挙げられる。
導電性基材2cとしては、特に、電子伝導性、安定性、及び生体親和性の観点から、炭素材料各種、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロール、金、白金が好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。

【0027】
多孔質体3としては、定型性を有していてモノマー4mを含浸できるものであれば特に限定されることなく、スポンジ、軽石、ゲル等が挙げられ、特に、ゲルが好ましい。なお、本願明細書では、ゲル一般は多孔質体に含まれるものとする。
ゲルとしては、ハイドロゲル、油性ゲル等が挙げられ、特に、ハイドロゲルが好ましい。

【0028】
ハイドロゲル材料(分散媒である水に分散させることによってハイドロゲルを形成する材料)としては、例えば、寒天、ゼラチン、アガロース、キサンタンガム、ジェランガム、スクレロチウガム、アラビヤガム、トラガントガム、カラヤガム、セルロースガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、キトサン、カラギーナン、クインスシード、ガラクタン、マンナン、デンプン、デキストリン、カードラン、カゼイン、ペクチン、コラーゲン、フィブリン、ペプチド、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のコンドロイチン硫酸塩、ヒアルロン酸(ムコ多糖類)及びヒアルロン酸ナトリウム等のヒアルロン酸塩、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、及びアルギン酸カルシウム等のアルギン酸塩、並びにこれらの誘導体等の天然高分子;メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体及びこれらの塩;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー、等のポリ(メタ)アクリル酸類及びこれらの塩;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの重合体(PPEGDA、PPEGDM)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、無水マレイン酸コポリマー、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体、ポリエチレングリコール架橋体、N-ビニルアセトアミド架橋体、アクリルアミド架橋体、デンプン・アクリル酸塩グラフトコポリマー架橋物等の合成高分子;シリコーン;相互侵入網目構造ハイドロゲル及びセミ相互侵入網目構造ハイドロゲル(DNハイドロゲル);これらの2種以上の混合物等が挙げられる。
これらの中でも、生体親和性及び成型容易性を得る観点、機械的強度を高める(脆性を低減する)観点から、コラーゲン、グルコマンナン、フィブリン、アルギン酸、ポリビニルアルコール、PPEGDA、PPEGDM、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、シリコーン、DNハイドロゲル、これらの2種以上の混合物が好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。

【0029】
絶縁性ポリマー4ipは、前述の多孔質体3の一形態であるハイドロゲルを構成するハイドロゲル材料と同じであってもよく異なっていてもよい。
絶縁性ポリマー4ipは、後述する本発明の実施形態の複合材料1の製造方法を用いて簡便に製造する観点からは、光反応、熱反応、酸化還元反応による重合開始により重合することが可能なものが好ましく、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー等のポリ(メタ)アクリル酸類及びこれらの塩;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの重合体(PPEGDA、PPEGDM)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、無水マレイン酸コポリマー、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、ポリ(メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物)とポリエチレングリコールとの架橋体、ポリエチレングリコール架橋体、N-ビニルアセトアミド架橋体、アクリルアミド架橋体、デンプン・アクリル酸塩グラフトコポリマー架橋物等の合成高分子;シリコーン;等が挙げられ、特に、周辺環境に応じた変形が無い(温度やpH等で膨潤度が変化しない)ことから、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、PPEGDA、PPEGDMが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。

【0030】
絶縁性ポリマー4ipの導電率は、1mS/cm未満としてよく、0.1mS/cm未満であることが好ましい。

【0031】
本発明において任意選択的に用いられる導電性ポリマー4cpとしては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリドデシルチオフェン、ポリイソナイトチオフェン、ポリ-3-ヘキシルチオフェン、ポリアニオン、ポリイソチアナフテン、ポリチアジル、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられ、特に、電子伝導性と構造安定性の観点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリピロールが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。

【0032】
特に、多孔質体3が高分子ハイドロゲルであり、絶縁性ポリマー4ipがハイドロゲル材料である場合、本実施形態の複合材料1は、電子伝導性(導電性)を備えないものともし得るが、例えば、ハイドロゲル中に電解質を含めること等によって、イオン伝導性を備えるものともすることができる。

【0033】
また、多孔質体3が高分子ハイドロゲルであり、絶縁性ポリマー4ip(及び任意選択的に用いられる導電性ポリマー4cp)がハイドロゲル材料である場合、複合材料1では、基材2表面から多孔質体3の内部に伸長したポリマーからなるポリマー層が、多孔質体3の内部に形成される。
このとき、複合材料1をその厚さ方向に沿って切断したときの断面図において、上記ポリマー層の厚さは、ポリマー層が存在する各箇所において、接着強度を高める観点から、5μm以上としてよく、10μm以上であることが好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、500μm以上であることが特に好ましく、より大きいほど一層好ましい。なおここで、ポリマー層の厚さとは、当該ポリマー層の最大厚さをいうものとする。

【0034】
絶縁性ポリマー4ip及び導電性ポリマー4cpそれぞれの数平均分子量(Mn)としては、接着強度を高める観点から、100以上としてよく、1,000以上であることが好ましく、104以上であることが更に好ましく、105以上であることが特に好ましく、より大きいほど好ましい。

【0035】
基材2表面に導入された基Fの単位面積当たりの個数は、接着強度を高める観点から、1011~1015個/mm2としてよく、1012~1015個/mm2であることが好ましい。

【0036】
(複合材料の製造方法)
本発明の実施形態の複合材料の製造方法は、基材2表面に重合開始部PIを導入する、重合開始部導入工程と、多孔質体3中にモノマー4mを含浸させる、モノマー含浸工程と、重合開始部PIを重合開始点としてモノマー4mの重合反応を行う、重合工程と、を含む。
図2に、本実施形態の複合材料の製造方法の概要について示す。なお、ここでは、図1(a)(i)に示す本発明の一例の複合材料の製造方法を例示的に示す。

【0037】
上記各工程により、基材2表面から始端し多孔質体3内部に伸びる絶縁性ポリマー4ipを備える本実施形態の複合材料1を製造することが可能になる。

【0038】
本実施形態の複合材料の製造方法におけるモノマー4mの重合反応の種類としては、特に限定されないが、ラジカル重合反応であることが好ましい。

【0039】
[重合開始部導入工程]
本実施形態では、まず、基材2表面に重合開始部PIを導入する(図2(i)、(ii)参照)。

【0040】
重合開始部PIとしては、(Irgacure(登録商標)シリーズの)アルキルフェノンタイプ、アシルフォスフィンオキサイドタイプ、分子内水素引き抜きタイプ、オキシムエステル等のその他のタイプ、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテルタイプ、ベンジルメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のベンジルケタールタイプ、ベンゾフェノン、2-クロロチオキサントン等のケトンタイプ等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
なお、基材2は、本実施形態の複合材料1における基材2と同様としてよい。

【0041】
重合開始部PIの導入においては、オゾン処理(カルボキシル基の導入)、酸素プラズマ処理、コロナ放電処理、UV処理(例えば、ベンゾフェノンの導入)、シランカップリング剤による処理、チオール化合物による処理等を用いてよく、また、重合開始部PIは、上記基材2表面の処理により、直接的に導入してもよく、重合開始部PIは、上記処理後に、例えば、エステル結合やアミド結合等を介して、更に結合させてもよい。

【0042】
具体的には、重合開始部導入工程では、例えば、平板上に置かれた前述の基材2(例えば、ポリウレタン)にオゾンを照射して、基材2表面にカルボキシル基を導入し、次いで、このカルボキシル基に、ヒドロキシル基を備えるα-ヒドロキシアルキルフェノンを、縮合剤を用いて結合させることができる。
また、例えば、平板上に置かれた前述の基材2(例えば、ポリプロピレン)の表面にベンゾフェノンを塗布させ、次いで、塗布後の基材2に紫外線を照射して、基材2表面にベンゾフェノン部分を導入することができる。

【0043】
[モノマー含浸工程]
本実施形態では、次いで、多孔質体3中にモノマー4mを含浸させる(図2(iii)、(iv)参照)。ここでは、モノマー4mとして、重合体となって絶縁性ポリマー4ipとなり得るモノマーを用いている。

【0044】
具体的には、モノマー含浸工程では、例えば、多孔質体3がハイドロゲルである場合、ハイドロゲルをモノマー4m水溶液に含浸することができる。
また、例えば、多孔質体3が高分子ハイドロゲルである場合、高分子ハイドロゲルを、一旦、水に含浸させて、重合反応の副生成物や残存モノマー等の共雑物を洗浄(除去)した後に、モノマー4m水溶液に含浸することができる。

【0045】
モノマー4mとしては、重合体となって絶縁性ポリマー4ipとなり得るモノマーとしてもよく、重合体となって導電性ポリマー4cpとなり得るモノマーとしてもよい。

【0046】
絶縁性ポリマー4ipとなり得るモノマーとしては、前述の絶縁性ポリマー4ipを構成する単量体としてよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキル等の(メタ)アクリル酸類及びこれらの塩;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGDA、PEGDM)、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-イソプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、スチレンスルホン酸、エチレングリコール、無水マレイン酸、アルキレンオキサイド、メチルビニルエーテル-alt-マレイン酸無水物、N-ビニルアセトアミド、デンプン;シラノール;等が挙げられ、特に、周辺環境に応じた変形が無い(温度やpH等で膨潤度が変化しない)ことから、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、PEGDA、PEGDMが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。

【0047】
導電性ポリマー4cpとなり得るモノマーとしては、前述の導電性ポリマー4cpを構成する単量体としてよく、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェン、アセチレン、ピロール、チオフェン、ビチオフェン、イソチオフェン、ドデシルチオフェン、イソナイトチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、イソチアナフテン、チアジル、フルオレン、ジアセチレン、アセン、パラフェニレン、チエニレンビニレン、フェニレンスルフィド等が挙げられ、特に、電子伝導性及び構造安定性の観点から、(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ピロールが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。

【0048】
なお、多孔質体3は、本実施形態の複合材料1における多孔質体3と同様としてよい。

【0049】
[重合工程]
本実施形態では、更に、重合開始部PIを重合開始点としてモノマー4mの重合反応を行う(図2(v)、(vi)参照)。ここでは、絶縁性ポリマー4ipが合成されている。

【0050】
モノマー4mの重合の開始反応としては、熱反応、光反応、酸化還元反応が挙げられ、反応制御の容易性から、光反応が好ましい。これらは、1つ単独で用いてもよく、2つ以上組み合わせて用いてもよい。

【0051】
重合開始反応の条件は、重合開始部PIの特性に応じて、適宜定めることができる。
重合反応の条件は、モノマー4mの特性に応じて、適宜定めることができる。

【0052】
以下、図3を参照して、前述の本実施形態の複合材料の製造方法を用いて製造される、本発明の更なる例の複合材料について記載する。
本発明の更なる例の複合材料1は、絶縁性基材2iと導電性基材2cとを含む基材2と、基材2上に設けられた多孔質体3と、絶縁性基材2i表面から始端し多孔質体3内部に伸びる絶縁性ポリマー4ip(4ip2)及び導電性ポリマー4cp(4cp1)と、導電性基材2c表面から始端し多孔質体3内部に伸びる絶縁性ポリマー4ip(4ip2)及び導電性ポリマー4cp(4cp1)とを含む。

【0053】
図3(i)に、本発明の更なる例の複合材料の平面図を示し、図3(ii)に、(i)の線A-Aに沿う面による断面図を示す。

【0054】
ここで、本発明の更なる例の複合材料1における絶縁性基材2iと導電性基材2cとの配設パターンは、目的や用途に応じて適宜定められてよい。特に、図3では、平面視で、導電性基材2cがS字形状となっている。

【0055】
本発明の更なる例の複合材料1は、例えば、下記の製造方法により製造することができる。
初めに、絶縁性基材2i表面及び導電性基材2c表面に第1重合開始部PI1(図中、黒丸にて示す。)を導入し、絶縁性基材2i表面及び導電性基材2c表面に第2重合開始部PI2(図中、クロスにて示す。)を導入する(重合開始部導入工程)。ここで、第1重合開始部PI1の重合開始反応の反応条件と第2重合開始部PI2の重合開始反応の反応条件とは、異なるものとしておく。次いで、多孔質体3中に、第1重合開始部PI1を用いて重合させる第1モノマー含浸させる(第1モノマー含浸工程)。そして、第1重合開始部PI1を重合開始点として第1モノマー重合反応を行う(第1重合工程)。ここでは、第1モノマーして、導電性ポリマー4cpとなり得るモノマーを用いており、上記重合により、第1ポリマー4cp1(導電性ポリマー4cp)が形成される。
ここで、基材2及び多孔質体3を、溶媒に含浸させて、残存する第1モノマーを洗浄(除去)する(洗浄工程)。
続いて、洗浄後の基材2及び多孔質体3中に、第2重合開始部PI2を用いて重合させる第2モノマー含浸させる(第2モノマー含浸工程)。そして、第2重合開始部PI2を重合開始点として第2モノマー重合反応を行う(第2重合工程)。ここでは、第2モノマーして、絶縁性ポリマー4ipとなり得るモノマーを用いており、上記重合により、第2ポリマー4ip2(絶縁性ポリマー4ip)が形成される。


【0056】
なお、上記製造方法においては、第1重合開始部PI1の重合開始反応を光反応とし、第2重合開始部PI2の重合開始反応を熱反応としてよく、また、第1重合開始部PI1及び第2重合開始部PI2の重合開始反応をいずれも光反応としつつ、両者の波長を異ならせてもよい。

【0057】
なお、本発明の更なる例の複合材料1には、図3に示すように、導電性基材2cを利用した電解重合により、導電性基材2c表面から始端し多孔質体3内部に伸びるその他の導電性ポリマー5cpが形成された部分が設けられていてもよい(図中、中央部参照)。

【0058】
従来の複合材料では、その製造において電解重合による接着を用いるため、基材2と多孔質体3との接合面が導電性を有していなければならず、基材2には電極となり得る導電性基材2cを、多孔質体3内部に伸びるポリマー4には導電性ポリマー4cpを、用いなければならなかった。しかしながら、この場合、例えば、生体を電気刺激する際には、リーク電流の発生の原因となり、また、生体の電気信号を計測する際にはノイズの発生の原因になり得る。
一方、本発明の実施形態の複合材料1によれば、基材2及びポリマー4pの電子伝導性によらず、基材2表面からポリマー4pを伸長させることが可能であるため、基材2の一部に導電性基材2cをその他の部分に絶縁性基材2iを用いた場合であっても、基材2全表面において多孔質体3との強固な接着を得ることができ、また、導電性基材2cと絶縁性基材2iとの配設パターンを自由に設計することにより、刺激や計測に供する所望の箇所においてのみ導電性基材2cを多孔質体3との接合面に露出させることも可能となる。

【0059】
本発明の実施形態の複合材料は、心電・筋電・脳電等の生体電気信号の計測、及び通電による生体機能の制御に好適に用いることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
A.複合材料の作製
A-1.試薬と材料
・ポリウレタン顆粒(オカダエンジニアリング社製)
・テトラヒドロフラン(和光純薬社製)
・1-ブタノール(和光純薬社製)
・N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)(和光純薬社製)
・2-オキソグルタル酸(和光純薬社製)
・2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム塩(NaAMPS)(シグマアルドリッチ社製)
・N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm)(シグマアルドリッチ社製)
・1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)(同仁化学研究所製)
・2-モルホリノエタンスルホン酸、一水和物(MES)(同仁化学研究所製)
・Irgacure2959(BASF社製)
・4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(東京化成工業)
・3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)(Clevious MV2、ヘレウス社製)
・鉄トシラート溶液(pTS・Fe(III))(Clevious C-B40V2、ヘレウス社製)
・コラーゲンフィルム(高研社製)
・ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)(Mn=700、シグマアルドリッチ社製)
・2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(シグマアルドリッチ社製)
・アクリルアミド(和光純薬社製)
【実施例】
【0062】
A-2.基材の調製
A-2-1.導電性フィルム(PEDOT・PU)をポリウレタン(PU)で絶縁被覆し、被覆ポリウレタン(PU)に光重合開始部を導入したフィルム(PEDOT・PU/PU-Irgacure)の調製
A-2-1-1.PUフィルムの調製
ポリウレタン顆粒をテトラヒドロフランに溶解させて、10wt%ポリウレタン(PU)溶液を調製した。
スライドガラスにPU溶液を2000rpmで30秒間スピンコートし、その後、ホットプレートを用いて100℃で10分間加熱して、PUフィルムを得た。
【実施例】
【0063】
A-2-1-2.PUフィルム表面への光重合開始剤の固定化
PUフィルムに対して、卓上UVオゾン表面処理装置(PL17-110、太洋株式会社製)を強度15mW/cm2の条件で用いて、5分間オゾン処理することによって、フィルム表面を改質し、PUフィルム表面にカルボキシル基を約1014個/mm2の密度で導入した。
蒸留水を用いて、0.2M WSC(縮合剤)、50mM Irgacure2959(光重合開始剤)、2.5mM DMAP(縮合反応の促進剤)、及び0.1M MESを含む縮合反応用溶液を調製した。
カルボキシル基導入後のPUフィルムを縮合反応用溶液に浸し、室温(25℃)、暗所で、一晩静置することによって、Irgacure2959をPUフィルム表面に固定化した(PU-Irgacure)。
【実施例】
【0064】
A-2-1-3.導電性フィルム(PEDOT・PU)の調製
10wt% PU溶液35mL、1-ブタノールを2mL、EDOT溶液を0.88mL、pTS・Fe(III)6.5mLを、氷浴中で混合して、EDOT/PU溶液を調製した。
スライドガラスにEDOT/PU溶液を750rpmで30秒間スピンコートし、その後、ホットプレートを用いて100℃で10分間加熱することによって、PEDOT・PUフィルムを得た。
【実施例】
【0065】
A-2-1-4.PEDOT・PUへの光重合開始剤固定化PUフィルムの貼り合わせ
PEDOT・PUフィルム表面にPU-Irgacureフィルムを置き、その後、70℃に設定したオーブンで10分間加熱することによって、2枚のフィルムを貼り合わせて、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムを得た。
【実施例】
【0066】
A-2-2.ポリプロピレンフィルム(PP)に光重合開始部を導入したフィルム(PP-BP)の調製
PPフィルムをヘプタンで10分間超音波洗浄した。
PPフィルムを、50mMのベンゾフェノン(光重合開始剤)ヘプタン溶液に、室温(25℃)、暗所で、1時間浸漬した。その後、PPフィルムを溶液から取り出し、室温(25℃)、暗所で、30分間乾燥させて、PPフィルムにベンゾフェノンを吸着させた。
ベンゾフェノンを吸着させたPPフィルムに対して、窒素を充填したグローブボックス中で、UV(365nm、強度:1mW/cm2)を照射することによって、ベンゾフェノンをPPフィルム表面に化学的に固定化した。
【実施例】
【0067】
A-2-3.ガラス板をポリウレタン(PU)で被覆し、被覆ポリウレタン(PU)に光重合開始部を導入したフィルム(ガラス/PU-Irgacure)の調製
「A-2-1-1.」及び「A-2-1-2.」における操作と同様の操作により、PUフィルムを調製し、その表面に光重合開始剤を固定化した。
準備したスライドガラス(サイズ:15mm×30mm)に対して、「A-2-1-4.」における操作と同様の操作により、光重合開始剤固定化PUフィルムを貼り合わせて、ガラス/PU-Irgacureを得た。
【実施例】
【0068】
A-3.多孔質体(ハイドロゲル)の調製
A-3-1.ダブルネットワーク(DN)ハイドロゲルの調製
蒸留水を用いて、1M NaAMPS(モノマー)、40mM MBAA(架橋剤)、1mM 2-オキソグルタル酸(光重合開始剤)を含む1stプレポリマー溶液を調製した。
2枚のガラス板を、厚さ0.2mmのシリコーンスペーサーを介して、貼り合わせ、その隙間に1stプレポリマー溶液を満たした。
ガラス板に、窒素を充填したグルーブボックス中で、UV(365nm、強度:1mW/cm2)を6時間照射することによって、(1st)PNaAPMSハイドロゲルを得た。
次いで、蒸留水を用いて、3M DMAAm(モノマー)、3mM MBAA、1mM 2-オキソグルタル酸を含む2ndプレポリマー溶液を調製した。
(1st)PNaAPMSハイドロゲルを2ndプレポリマー溶液に2日間浸漬した後、窒素を充填したグルーブボックス中で、UV(365nm、強度:1mW/cm2)を6時間照射することによって、PNaAPMSとPDMAAmとが相互侵入してなるDNハイドロゲルを得た。
未反応モノマーや光重合開始剤を除去するため、DNハイドロゲルを蒸留水で一晩洗浄した。
【実施例】
【0069】
A-3-2.PPEGDAハイドロゲルの調製
20vol% PEGDA水溶液に0.5vol% 2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(光重合開始剤)を溶解させて、重合溶液を調製する。
2枚のUV透過性アクリル板を、厚さ1mmのシリコーンスペーサーを介して、貼り合わせ、その隙間に重合溶液を満たした。
アクリル板に、UV(365nm、強度:1mW/cm2)を1分間照射することによって、PPEGDAハイドロゲルを得た。
未反応モノマーや光重合開始剤を除去するため、PPEGDAハイドロゲルを蒸留水で一晩洗浄した。
【実施例】
【0070】
なお、上記の他に、コラーゲンハイドロゲルも準備した。
【実施例】
【0071】
A-4.複合材料の調製
A-4-1.フィルム(PEDOT・PU/PU-Irgacure)とハイドロゲル(DN、コラーゲン、PPEGDA)との接着
対象となるハイドロゲルを、50wt%アクリルアミドを含むPBS溶液(接着用プレポリマー溶液)に1時間以上浸漬した。ハイドロゲルには、DNハイドロゲル、コラーゲンゲルハイドロゲル、PPEGDAハイドロゲルを用いた。なお、特に、コラーゲンハイドロゲルを用いた場合には、接着用プレポリマー溶液に0.06mol% MBAAを添加した。
任意のデザインに加工したPEDOT・PU/PU-Irgacureフィルム表面に対象となるハイドロゲルを貼り付けた。
2枚のUV透過性アクリル板の間に、上記のフィルム-ハイドロゲル積層体を挟み込み、全体をサランラップ(登録商標)で包んだ。
包みの中に窒素を導入しながら、UV(302nm、強度:370μW/cm2)を6分間照射することによって、接着用ポリアクリルアミドをPUフィルム表面からハイドロゲル内に成長させた。なお、ポリアクリルアミドの数平均分子量(Mn)は106程度と推定された。
UV照射後のフィルム-ハイドロゲル積層体をアクリル板間から取り出し、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムとハイドロゲルとがポリアクリルアミドを介して接着した複合材料を得た。
【実施例】
【0072】
A-4-2.PPフィルムとハイドロゲルとの接着
対象となるハイドロゲルを、50wt%アクリルアミドを含むPBS溶液(接着プレポリマー溶液)に1時間以上浸漬した。ハイドロゲルには、PPEGDAハイドロゲルを用いた。
PP-BPフィルム表面にPPEGDAハイドロゲルを貼り付けた。
2枚のUV透過性アクリル板の間に、上記のフィルム-ハイドロゲル積層体を挟み込み、全体をサランラップ(登録商標)で包んだ。
包みの中に窒素を導入しながら、UV(365nm、強度:1mW/cm2)を10分間照射することによって、接着用ポリアクリルアミドをPPフィルム表面からハイドロゲル内に成長させた。
UV照射後のフィルム-ハイドロゲル積層体をアクリル板間から取り出し、PP-BPフィルムとPPEGDAハイドロゲルとがポリアクリルアミドを介して接着した複合材料を得た。
【実施例】
【0073】
A-4-3.ガラス/PU-Irgacureとハイドロゲルとの接着
対象となるハイドロゲル(サイズ:15mm×30mm)を、50wt%アクリルアミドを含むリン酸緩衝液(接着プレポリマー溶液)に1時間以上浸漬した。ハイドロゲルには、DNハイドロゲルを用いた。
ガラス/PU-IrgacureとDNハイドロゲルとが、それぞれの一部において接触するように、具体的には、いずれも15mm幅である、ガラス/PU-IrgacureとDNハイドロゲルとを、幅を合わせて重ね合わせ、サイズ:15mm×6mmの面積で接触し合うように、配置した。
そして、「A-4-1.」における操作と同様の操作により、UV(365nm、強度:1mW/cm2)を6分間照射することによって、アクリルアミドの光重合を行い、ガラス/PU-IrgacureとDNハイドロゲルとがポリアクリルアミドを介して接着した複合材料を得た。
図7に、実施例の「A-4-3.」において得られたガラス/PU-IrgacureとDNハイドロゲルとがポリアクリルアミドを介して接着した複合材料を接着強度評価に供したときの様子を側面図で示す。
【実施例】
【0074】
B.構造解析・物性評価
【実施例】
【0075】
図4に、PEDOT・PU/PU-IrgacureフィルムにDNハイドロゲルを接着させた複合材料を、肉眼で又は倒立型顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
図4(a)に、複合材料を倒立型顕微鏡を用いて観察したときの写真を示す。
図4(a)に示す通り、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムを接着させた部分(写真の下部、白両矢印にて示す。)の表面からDNハイドロゲルの内部に向かって広がる、断面図において半円状の、部分(影)が観察された。なお、かかる部分(影)が周囲のDNハイドロゲルから区画されているように見えるのは、区画の境界の内外においてハイドロゲルの屈折率が異なっているためであると考えられる。
PU接着部以外の箇所ではこの影が観察されなかったことから、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルム表面に始端し、DNハイドロゲルの内部に伸長した、ポリアクリルアミドが存在する部分(ポリアクリルアミド層)であることが示唆された。
写真から、DNハイドロゲルの厚さは0.74mmであり、ポリアクリルアミド層の厚さは0.54mmであった。
上記の通り、ポリアクリルアミドによりPEDOT・PU/PU-IrgacureフィルムとDNハイドロゲルとの強固な接着が得られたと言える。
【実施例】
【0076】
図4(b)に、複合材料を肉眼で観察したときの写真を示す。
前述の「A-4-1.」における調製のうちDNハイドロゲルを用いた場合の複合材料については、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムは、ピンセットで強めに引っ掻いても剥離しない程度の強度で、DNハイドロゲルに接着していた(図示せず)。また、図4(b)に示す通り、ハイドロゲルは手の甲に貼り付け可能な程度の柔軟性を有していた。
【実施例】
【0077】
図4(c)(i)に、リン酸緩衝液で膨潤させた状態の複合材料を肉眼で観察したときの写真を示す。図4(c)(ii)に、乾燥させた状態の複合材料を肉眼で観察したときの写真を示す。
図4(c)に示す通り、膨潤によりサイズが増加した場合でも、乾燥によりサイズが約半分にまで収縮した場合も、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムはハイドロゲルから剥離することはなく、また、乾燥及び膨潤のサイクルを繰り返しても、剥離は生じなかったことから、PUフィルムとDNハイドロゲルとの強固な接着が実証された。
【実施例】
【0078】
図5(a)に、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムにコラーゲンハイドロゲルを接着させた複合材料を肉眼で観察したときの写真を示す。図5(b)に、PEDOT・PU/PU-IrgacureフィルムにPPEGDAハイドロゲルを接着させた複合材料を肉眼で観察したときの写真を示す。
図5(a)に示す通り、DNハイドロゲルを用いた場合と同様に、コラーゲンハイドロゲルを用いた場合、及びPPEGDAハイドロゲルを用いた場合にも、フィルムとハイドロゲルとの接着が確認された。これより、本発明では、ハイドロゲルの種類を用途に応じて変更することも可能であることが示された。
【実施例】
【0079】
図6に、PP-BPフィルムにPPEGDAハイドロゲルを接着させた複合材料を肉眼で観察したときの写真を示す。
図6に示す通り、PEDOT・PU/PU-Irgacureフィルムを用いた場合と同様に、PP-BPフィルムを用いた場合にも、フィルムとハイドロゲルとの接着が確認された。これより、本発明では、用いる光重合開始剤は、特に限定されず適宜選択することが可能であることが示された。
【実施例】
【0080】
C.接着強度測定
「A-4-3.」で得た複合材料について剪断試験を行った。
具体的には、この複合材料におけるガラス/PU-Irgacureが突出した側とDNハイドロゲルが突出した側とを両側から、引張り試験機(IMADA製、DPU)を用いて、9.3mm/minの速度で引張り、接着部が剥離した時の応力を測定した。応力を接触面積で除した値を接着力(単位:kPa)とした。この剪断試験は3回行い、接着力の値の平均値を算出した結果、平均値は66kPaであった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、基材と多孔質体とが絶縁性ポリマーを介して強く接着されている複合材料を提供することができる。本発明の複合材料は、心電・筋電・脳電等の生体電気信号の計測、及び通電による生体機能の制御に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 複合材料
2 基材
2i 絶縁性基材
2c 導電性基材
3 多孔質体
4p ポリマー
4ip 絶縁性ポリマー
4cp 導電性ポリマー
4m モノマー
5cp その他の導電性ポリマー
F 基材表面に導入された基
PI 重合開始部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6