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明細書 :肺特異的にヒトEGFRを発現する非ヒト哺乳類のトランスジェニック動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年8月30日(2018.8.30)
発明の名称または考案の名称 肺特異的にヒトEGFRを発現する非ヒト哺乳類のトランスジェニック動物
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01K 67/027
国際予備審査の請求
全頁数 35
出願番号 特願2017-534404 (P2017-534404)
国際出願番号 PCT/JP2016/073053
国際公開番号 WO2017/026383
国際出願日 平成28年8月5日(2016.8.5)
国際公開日 平成29年2月16日(2017.2.16)
優先権出願番号 2015158369
優先日 平成27年8月10日(2015.8.10)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】ガバザ エステバン セサル
【氏名】ガバザ コリナ
出願人 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100108280、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 洋平
審査請求 未請求
要約 【課題】 肺特異的にh-EGFRを発現し、自然発症的に肺がんを発症するTGマウスを提供すること。
【解決手段】 発現用プロモーター領域の下流側に、28個のエクソンと27個のイントロンの全遺伝子領域を含むヒト[L858R]上皮成長因子受容体([L858R]-h-EGFR)遺伝子が組み込まれた非ヒト哺乳類のトランスジェニック動物(特に、トランスジェニックマウス)によって達成される。このとき、発現用プロモーター領域は、テトラサイクリン・レスポンス・エレメント(TRE)を含むと共に、当該非ヒト・トランスジェニック哺乳類は、更に当該哺乳類における肺特異的発現遺伝子の発現プロモーターの下流側に、リバーステトラサイクリン調節性トランス活性化因子(rtTA)遺伝子が組み込まれていることが好ましい。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
発現用プロモーター領域の下流側に、28個のエクソンと27個のイントロンの全遺伝子領域を含むヒト[L858R]上皮成長因子受容体([L858R]-h-EGFR)遺伝子が組み込まれた非ヒト哺乳類のトランスジェニック動物。
【請求項2】
発現用プロモーター領域の下流側に、28個のエクソンと27個のイントロンの全遺伝子領域を含むヒト[L858R+T790M]上皮成長因子受容体([L858R+T790M]-h-EGFR)遺伝子が組み込まれた非ヒト哺乳類のトランスジェニック動物。
【請求項3】
前記非ヒト哺乳類は、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、サルからなる群から選択される少なくとも一つである請求項1又は2に記載のトランスジェニック動物。
【請求項4】
前記発現用プロモーター領域は、テトラサイクリン・レスポンス・エレメント(TRE)を含むと共に、当該非ヒト・トランスジェニック哺乳類は、更に当該哺乳類における肺特異的発現遺伝子の発現プロモーターの下流側に、リバーステトラサイクリン調節性トランス活性化因子(rtTA)遺伝子が組み込まれている請求項1~3のいずれか一つに記載のトランスジェニック動物。
【請求項5】
前記肺特異的発現遺伝子は、クララ細胞分泌蛋白(CCSP)、サーファクタント・プロテインA(SPA)、サーファクタント・プロテインB(SPB)、サーファクタント・プロテインC(SPC)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1~4のいずれか一つに記載のトランスジェニック動物。
【請求項6】
前記非ヒト哺乳類がマウスであり、ドキシサイクリンの投与によって、肺がんを発症する請求項4または5に記載のトランスジェニック動物。
【請求項7】
上記マウスの系統は、C57BL/6Jである請求項6に記載のトランスジェニック動物。
【請求項8】
(1)28個のエクソンと27個のイントロンの全遺伝子領域を含有するh-EGFR遺伝子を含むBACにおいて、h-EGFR遺伝子のEx21に選択用カセットを組み込み、選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子を得る選択用遺伝子組換え工程、(2)前記選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子のEx21の前後のゲノム配列を相同配列として[L858R]変異の両端に配置し、EGFRトランスファーコンストラクトを作製する修飾工程、(3)前記Ex21の選択用カセットをEGFRトランスファーコンストラクトの[L858R]変異リペアーフラグメントで置換する置換工程、(4)[L858R]-h-EGFRの5'側に前記発現用プロモーター領域を連結する受容体発現用遺伝子とする受容体発現用遺伝子調製工程、(5)前記受容体発現用遺伝子とm-SSCPrtTA RecBAC発現用遺伝子とを精製し、マウス胚にマイクロインジェクションして、トランスジェニックマウスを得る工程を備えることを特徴とする請求項6または7に記載のトランスジェニック動物の作製方法。
【請求項9】
(1)28個のエクソンと27個のイントロンの全遺伝子領域を含有するh-EGFR遺伝子を含むBACにおいて、h-EGFR遺伝子のEx21に選択用カセットを組み込み、選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子を得る選択用遺伝子組換え工程、(2)前記選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子のEx21の前後のゲノム配列を相同配列として[L858R]変異の両端に配置し、EGFRトランスファーコンストラクトを作製する修飾工程、(3)前記Ex21の選択用カセットをEGFRトランスファーコンストラクトの[L858R]変異リペアーフラグメントで置換する置換工程、(4)[L858R]-h-EGFRの5'側に前記発現用プロモーター領域を連結する受容体発現用遺伝子とする受容体発現用遺伝子調製工程、(4-1)前記受容体発現用遺伝子調製工程で得られた[L858R]-h-EGFRのEx20に選択用カセットを組み込み、選択用遺伝子導入[L858R]-h-EGFR遺伝子を得る第2選択用遺伝子組換え工程、(4-2)前記第2選択用遺伝子導入[L858R]-h-EGFR遺伝子のEx20の前後のゲノム配列を相同配列として[T790M]変異の両端に配置し、EGFRトランスファーコンストラクトを作製する第2修飾工程、(4-3)前記Ex20の選択用カセットをEGFRトランスファーコンストラクトの[T790M]変異リペアーフラグメントで置換することで、EGFRの5'側に前記発現用プロモーター領域を備えた第2受容体発現用遺伝子とする第2受容体発現用遺伝子調製工程、(5)前記第2受容体発現用遺伝子とm-SSCPrtTA RecBAC発現用遺伝子とを精製し、マウス胚にマイクロインジェクションして、トランスジェニックマウスを得る工程を備えることを特徴とする請求項6または7に記載のトランスジェニック動物の作製方法。
【請求項10】
前記選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子を作製する際に用いられるPCR反応用の一対のプライマーの塩基数は、50塩基~60塩基であることを特徴とする請求項8または9に記載のトランスジェニックマウスの作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、肺特異的にヒトEGFR(human epidermal growth factor receptor;上皮成長因子受容体(上皮増殖因子受容体、上皮細胞成長因子受容体、上皮細胞増殖因子受容体とも言われる);以下、「ヒトEGFR」または「h-EGFR」という)を発現するトランスジェニック(TG)マウスに代表される疾病対策実験用動物に関する。
【背景技術】
【0002】
肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍である。肺がんが発見されたときには、既に相当に進行していることが多く、難治性の疾患として知られている。我が国においては、肺がんの死亡者数は、各種腫瘍患者の中で男性では1位、女性では3位の位置を占めている。
肺がんの種類としては、全体の20%が小細胞肺がん、80%が非小細胞肺がんである。このうち小細胞肺がんの治療法として、ステージIaの場合には、手術または放射線治療が、それ以降の場合には、化学療法(抗がん剤)が用いられる。また、非小細胞肺がんの治療法として、ステージIIIまでの場合には手術治療が、それ以降の場合には、化学療法が用いられる。近年、非小細胞肺がんの化学療法薬として、分子標的治療薬(例えば、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬、抗血管内皮細胞増殖因子など)が使用されている。分子標的治療薬は、投与初期には高い効果を示す。但し、長期間の使用によって、がん細胞に耐性が発生し、効果が認められなくなってしまう。現在、がん細胞の薬剤耐性に関する研究が進められているが、その機構は充分には解明されていない。
【0003】
全肺がんのうち、約半分にはh-EGFRの遺伝子変異が認められる。h-EGFRは、脂質二重膜を貫通するタンパク質であり、上皮成長因子(EGF)を認識してシグナル伝達を行う受容体である。通常、EGFによってh-EGFRが活性化されると、h-EGFRが持つチロシンキナーゼ活性が上昇し、自己をリン酸化することで、正常な反応として細胞増殖を含む種々の作用を発揮する。しかし、肺がん患者のh-EGFRの遺伝子には変異が認められることが多い。患者に認められるh-EGFRの遺伝子変異として、L858R(858位のロイシンがアルギニンに変異したもの)、T790M(790位のスレオイニンがメチオニンに変異したもの)、ΔE749-A750(749位のグルタミン酸と750位のアラニンが欠損したもの)などが知られている。このうち21番目のエクソン(Ex21)に位置する変異に由来するL858Rは、肺がん患者の40%~45%程度に認められる。この変異を持つh-EGFR([L858R]-h-EGFR)は、EGFが存在しない状態でも、チロシンキナーゼ活性が上昇し、自己リン酸化を起こし、過剰な細胞増殖を起こす。このため、[L858R]-h-EGFRを持つTGマウスを作製し、その性状に関する研究が行われている(非特許文献1,2)。
また、20番目のエクソン(Ex20)に[T790M]変異を備えたh-EGFRは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性を備えたものとなる。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Politi K et al. Lung adenocarcinomas induced in mice by mutant EGF receptors found in human lung cancers respond to a tyrosine kinase inhibitor or to down0-regulation of the receptors. Genes & Development 20:1496-1510, 2006
【非特許文献2】Ji H, et al. The impact of human EGFR kinase domain mutations on lung tumorigenesis and in vivo sensitivity to EGFR-targeted therapies.Cell. 2006 Jun;9(6):485-95.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の[L858R]-h-EGFR TGマウスは、タンパク質を発現するmRNAから調製されたcDNAを用いたものであるため、臨床的な状態を充分に反映しているとは言い難かった。このため、更に肺がんのヒト患者に近い態様を示すTGマウスが望まれていた。
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、肺特異的にh-EGFRを発現し、自然発症的に肺がんを発症するTGマウスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための発明に係るトランスジェニック動物は、発現用プロモーター領域の下流側に、28個のエクソン(Ex)と27個のイントロンの全遺伝子領域を含むヒト[L858R]上皮成長因子受容体([L858R]-h-EGFR)遺伝子が組み込まれた非ヒト哺乳類である。
また、別の発明に係るトランスジェニック動物は、発現用プロモーター領域の下流側に、28個のエクソンと27個のイントロンの全遺伝子領域を含むヒト[L858R+T790M]上皮成長因子受容体([L858R+T790M]-h-EGFR)遺伝子が組み込まれた非ヒト哺乳類である。
このとき、前記非ヒト哺乳類は、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、サルからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、前記発現用プロモーター領域は、テトラサイクリン・レスポンス・エレメント(TRE)を含むと共に、当該非ヒト・トランスジェニック哺乳類は、更に当該哺乳類における臓器特異的発現遺伝子の発現プロモーターの下流側に、リバーステトラサイクリン調節性トランス活性化因子(rtTA)遺伝子が組み込まれていることが好ましい。
また、前記臓器は肺であり、臓器特異的発現遺伝子は、クララ細胞分泌蛋白(CCSP)、サーファクタント・プロテインA(SPA)、サーファクタント・プロテインB(SPB)、サーファクタント・プロテインC(SPC)からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。これらの遺伝子は、特に肺で特異的に発現することが確認されているものであることから、少なくとも一つを選択し、その発現プロモーター領域を用いることにより、下流側に組み込んだrtTA遺伝子を肺で特異的に発現させることができる。
【0008】
また、前記非ヒト哺乳類がマウスであり、ドキシサイクリンの投与によって、肺がんを発症することが好ましい。このとき、マウスの系統は、C57BL/6Jであることが好ましい。
別の発明に係るトランスジェニックマウスの作製方法は、(1)28個のエクソン(Ex)と27個のイントロンの全遺伝子領域を含有するh-EGFR遺伝子を含むBACにおいて、h-EGFR遺伝子のEx21に選択用カセットを組み込み、選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子を得る選択用遺伝子組換え工程、(2)前記選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子のEx21の前後のゲノム配列を相同配列として[L858R]変異の両端に配置し、EGFRトランスファーコンストラクトを作製する修飾工程、(3)前記Ex21の選択用カセットをEGFRトランスファーコンストラクトの[L858R]変異リペアーフラグメントで置換する置換工程、(4)[L858R]-h-EGFRの5'側に前記発現用プロモーター領域を連結する受容体発現用遺伝子とする受容体発現用遺伝子調製工程、(5)前記受容体発現用遺伝子とm-SSCPrtTA RecBAC発現用遺伝子とを精製し、マウス胚にマイクロインジェクションして、トランスジェニックマウスを得る工程を備えることが好ましい。
【0009】
また、別の発明に係るトランスジェニックマウスの作製方法は、(1)28個のエクソンと27個のイントロンの全遺伝子領域を含有するh-EGFR遺伝子を含むBACにおいて、h-EGFR遺伝子のEx21に選択用カセットを組み込み、選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子を得る選択用遺伝子組換え工程、(2)前記選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子のEx21の前後のゲノム配列を相同配列として[L858R]変異の両端に配置し、EGFRトランスファーコンストラクトを作製する修飾工程、(3)前記Ex21の選択用カセットをEGFRトランスファーコンストラクトの[L858R]変異リペアーフラグメントで置換する置換工程、(4)[L858R]-h-EGFRの5'側に前記発現用プロモーター領域を連結する受容体発現用遺伝子とする受容体発現用遺伝子調製工程、(4-1)前記受容体発現用遺伝子調製工程で得られた[L858R]-h-EGFRのEx20に選択用カセットを組み込み、選択用遺伝子導入[L858R]-h-EGFR遺伝子を得る第2選択用遺伝子組換え工程、(4-2)前記第2選択用遺伝子導入[L858R]-h-EGFR遺伝子のEx20の前後のゲノム配列を相同配列として[T790M]変異の両端に配置し、EGFRトランスファーコンストラクトを作製する第2修飾工程、(4-3)前記Ex20の選択用カセットをEGFRトランスファーコンストラクトの[T790M]変異リペアーフラグメントで置換する(第2置換工程)ことで、EGFRの5'側に前記発現用プロモーター領域を備えた第2受容体発現用遺伝子とする第2受容体発現用遺伝子調製工程、(5)前記第2受容体発現用遺伝子とm-SSCPrtTA RecBAC発現用遺伝子とを精製し、マウス胚にマイクロインジェクションして、トランスジェニックマウスを得る工程を備えることが好ましい。
このとき、前記選択用遺伝子導入h-EGFR遺伝子を作製する際に用いられるPCR反応用の一対のプライマーの塩基数は、50塩基~60塩基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、肺特異的にh-EGFRを発現し、自然発症的に肺がんを発症するTGマウスを提供できる。このTGマウスは、従来のモデルマウスに比べ、悪性度が高くヒト肺がんの臨床に近い状態を示すので、肺がんに関する研究を飛躍的に発展させられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】h-EGFRの遺伝子構造を示す概念図である。
【図2】TGマウスが肺がんを発生するメカニズムを示す図である。
【図3】肺特異的[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製方法を説明する図(1)である。
【図4】肺特異的[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製方法を説明する図(2)である。
【図5】h-EGFR遺伝子座を含むBACゲノムクローン(RP11-815K24)中のEx21をPCR法で確認した結果を示す図である。上側はh-EGFR遺伝子のイメージを、下側はPCR後のゲル電気泳動写真図である。
【図6】WT-h-EGFR遺伝子座のEx21を削除したときの経過と結果を示す図である。
【図7】[L858R]変異遺伝子ドナーコンストラクトの構築方法と結果を示す図である。
【図8】組換えBAC型h-EGFR-tetO発現コンストラクトの構築方法と結果を示す図である。
【図9】高純度BAC DNAフラグメントの精製工程と結果を示す図である。
【図10】Red/ET Recombination Technology(Red/ET相同組み換え法)を利用したCCSP_rtTA RecBACの構築を示す図である。
【図11】CCSP_rtTA RecBACの構築のシークエンス解析を示す図である。
【図12】肺特異的[L858R]-h-EGFR RecBAC遺伝子誘導発現トランスジェニックマウス・ファウンダーを作製し、サザンスクリーニングを行った結果を示す写真図である。
【図13】TGマウスのジェノタイピングの結果を示す写真図である。
【図14】TGマウスの肺特異的にh-EGFRが発現していることを示す写真図である。
【図15】TGマウスの肺をCTで検査した結果を示す写真図である。図中の矢印Tは、肺がんの発生・進行部位を示す(図14及び図15においても同じ)。
【図16】図13中の一枚を拡大して示す写真図である。
【図17】TGマウスの肺組織をH&E染色したときの顕微鏡写真図である。
【図18】TGマウスの肺組織をH&E染色したときの顕微鏡写真図である(癌による血管への浸潤を示す)。
【図19】TGマウスの肺組織をH&E染色したときの顕微鏡写真図である(癌細胞の上皮間葉移行及び癌細胞によるムチンの過剰発現を示す)。
【図20】癌によるリンパ節転移を示す写真図である。
【図21】TGマウスの肺がん組織中にPD-1及びPD-L1が多く発現することを確認したグラフである。
【図22】肺特異的[L858R+T790M]-h-EGFR発現TGマウスの作製方法を説明する図である。
【図23】[L858R]-h-EGFR遺伝子座のEx20を削除したときの経過と結果を示す図である。
【図24】組換えBAC型[L858R+T790M]-h-EGFR-tetO発現コンストラクトの結果を示す図である。
【図25】高純度BAC DNAフラグメントの精製工程と結果を示す図である。
【図26】肺特異的[L858R+T790M]-h-EGFR RecBAC遺伝子誘導発現トランスジェニックマウス・ファウンダーを作製し、サザンスクリーニングを行った結果を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。
A.[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製と評価
まず、[L858R]-h-EGFRを肺特異的に発現するTGマウスを作製し、その特性を調べた。
<肺特異的h-EGFR発現TGマウスの作製>
1.TGマウスの作製方法
図1には、h-EGFRの遺伝子構造(特に、エクソンとイントロン領域)の様子を示した。h-EGFR遺伝子には、28個のエクソンと、27個のイントロンが含まれている。ここで従来行われた研究報告によると、タンパク質としてのh-EGFRを発現させたTGマウスを製造する場合には、cDNAライブラリからエクソンのみが結合したDNAを調製し、これを用いればよい(例えば、非特許文献1,2には、この方法で作製されたTGマウスが開示されている)。一方、従来にはジャンクと思われていたイントロン部分から転写されたRNAが、エピジェネティックな効果(例えば、siRNA、microRNAとしての作用)を持つことが解明されつつある。この点に注目し、本発明のTGマウスにおいて使用されるh-EGFR遺伝子には、すべて(28個)のエクソンとすべて(27個)のイントロンが含まれているので選択的スプライシング(alternative splicing)が起こる可能がある。選択的スプライシングとは、遺伝子のスプライシングを行う部位・組み合わせが変化し、複数種の成熟mRNAが生成することである。即ち、ひとつの遺伝子から多数の生成物(蛋白)が生じてくるという意味である。選択的スプライシングには、エクソン内スプライシング部位の選択、カセットエクソン、イントロン保持など、多様な種類がある。この選択的スプライシングによって、スプライスバリアント(splice variant)と呼ばれる変異タンパク質が生成される。複数のエクソンを持つ遺伝子の95%が選択的スプライシングを受けると言われている。従って、本発明のTGマウスでは通常のh-EGFR cDNAから作製されたh-EGFR TGマウスと違って、癌の悪性度を高くするh-EGFRの変異(バリアント)の蛋白が合成される可能性が高い。このような理由により、従来のcDNAから作製されたh-EGFR TGマウスは、充分にヒト肺がんの臨床的な状態を表していない可能性が考えられる。
そこで、本発明者は、h-EGFRの全エクソン・イントロンを用いてTGマウスを作製する方法を用いた。図2~図4には、肺特異的に[L858R]-h-EGFRを発現し、肺がんを発症するTGマウスの作製方法の概要を示した。

【0013】
本実施形態の方法により作製されるTGマウスは、二種類の外来遺伝子が組み込まれている。図2に示すように、一方の外来遺伝子(図中下側の(A))は、マウスの肺特異的に発現する遺伝子(CCSP)のプロモーター(promoter)に続けて、所定の物質(ドキシサイクリン(Doxycycline):Dox)と結合するリバーステトラサイクリン制御性トランス活性化因子(rtTA protein)とポリAテール(polyA)を有している。CCSPは、クララ細胞分泌タンパク質プロモーターである。rtTAは、テトラライクリンリプレッサー(TetR)とVP16トランス活性化ドメインの融合タンパク質である。この融合タンパク質では、TetR中のDNA結合部位の4個のアミノ酸が変化しており、Dox存在下において標的とする遺伝子のTRE(tetracycine response element)にあるtetO配列を認識する。このシステムでは、Dox存在下においてのみ、rtTAによって、TRE制御標的遺伝子が発現する。
また、他方の外来遺伝子(図中上側の(B))は、TREの下流に[L858R]-h-EGFR遺伝子とpolyAを有している。TREには、7個の連続するtetOオペレーター(10塩基からなるバクテリアtet-O配列とスペーサー配列とを含む)とCMV(サイトメガロウイルス)プロモーター配列(minimal promoter)が含まれている。
二種類の外来遺伝子が組み込まれたTGマウスでは、rtTAタンパク質が恒常的に肺において発現しており、図2中の(A)、(B)の破線内で示すように、Doxが体内に存在する場合にのみ、Dox-rtTA複合体を生じる。これがtetOに結合することで、[L858R]-h-EGFR遺伝子の発現を誘導する。このように、Doxの存在によって、[L858R]-h-EGFRの発現を誘導するシステムとなる。
図3及び図4には、二種類の外来遺伝子をマウスに組み込む方法を示した。図3中、StepAには、[L858R]-h-EGFRを発現する遺伝子(図2中(B))を作製する方法を、StepBには、マウスの肺特異的にrtTAを発現する遺伝子(図2中(A))を作製する方法を、StepCには、各遺伝子を直鎖化後に高純度DNAを精製する方法の概要を、それぞれ示した。図4中、StepDには、二種類の遺伝子混合物を組み込んだ産子の作製方法を、StepEには、二種類の外来遺伝子が組み込まれた雄性TGファウンダーを、StepF及びStepGには、雄性TGファウンダーから得た精子からTGマウス(雄性F1及び雌性F1)を作製する方法の概要を、それぞれ示した。各ステップの詳細については、次に説明する。

【0014】
2.h-EGFR遺伝子ゲノムクローンの作製
tetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC TGマウスを作出するための標的遺伝子であるh-EGFR遺伝子情報を解析し、ヒトEGFR遺伝子座を含むBACゲノムクローン(RP11-815K24)を理化学研究所から入手した。このクローンをPCR法でスクリーニングしたところ、図5に示すように、標的遺伝子マーカーを示すバンドが認められた。このことより、このクローンが標的遺伝子を含む目的のBACゲノムクローンである事を確認した。
なお、図5(A)は、ヒト野生型(WT)EGFR遺伝子中のEx21の位置とイメージを、図5(B)は、クローンからPCR法によって増幅したEx21のバンドを電気泳動で確認した結果を示した。
EGFR遺伝子のゲノムDNA配列をもとにして、EGFR遺伝子のエキソン21に表1に示す配列のPCRプライマー(配列番号1及び配列番号2)を設定した。このプライマーの組み合わせで、購入したBACクローンをテンプレートにして、LA-Taq(タカラバイオ社製)を用いてEGFR遺伝子のエキソン21のゲノムDNAフラグメント、490bpを増幅するPCRを行い、購入したBACクローンがtetO-h[L858R]EGFR RecBACの構築に必要なEGFR遺伝子座のDNA配列を含むクローンであることを確認した。

【0015】
【表1】
JP2017026383A1_000003t.gif

【0016】
3.h-EGFR遺伝子レシピエントコンストラクトの構築
ヒトEGFR遺伝子座を含むゲノムクローン(RP11-815K24)について、Red/ET Recombination Technologyを利用して、[L858R]変異遺伝子を組み込むためのレシピエントとなる組換えBACクローンを構築した。(i)ヒトBACクローンのEGFR遺伝子のEx21にセレクションマーカーを挿入し(図6(A))、(ii)ヒトBACクローンのEGFR遺伝子産物をコードするゲノム領域のうちEx21を削除して、tetO-[L858R]-h-EGFR RecBACの中間体を調製した(選択用遺伝子組換え工程。図6(B))。図6(C)には、当該中間体が作製されたことを電気泳動で確認した結果を示した。
大腸菌内での能動型相同組み換え反応であるRed/ET Recombination Technologyを利用して、EGFR遺伝子を含むBACクローンから[L858R]変異の組換えBACクローン(tetO-h[L858R]EGFR RecBAC)を構築した。
表2に示したように、ヒトEGFR遺伝子の5’-UTRのゲノムDNA配列の5'、および3’flanking配列、および[L858R]変異遺伝子の5'、および3' flanking配列を大腸菌内での能動型相同組み換え反応のためのキー配列とした(配列番号3~配列番号6)。

【0017】
【表2】
JP2017026383A1_000004t.gif

【0018】
まず、EGFR遺伝子座のエキソン21の領域にポジティブ/ネガティブセレクションマーカーカセット(Rpsl-kan)を挿入するために、EGFR-H3配列、Rpsl-kan、およびEGFR-H4配列をタンデムにつないだDNAフラグメントを、LA-Taq(タカラバイオ社製)を用いたPCRにより構築した(EGFR Rpsl-Kanブレークインフラグメント)。Red/ET反応の能力を有した大腸菌株に、EGFR遺伝子座を含むヒトBAC クローンとEGFR Rpsl-Kanブレークインフラグメントを導入し、このホスト大腸菌内でRed/ET反応を誘導させ、クロラムフェニコール耐性、かつカナマイシン耐性のコロニーをピックアップすることにより、EGFR RpslkanブレークインフラグメントがEGFR遺伝子座のエキソン21に挿入した組み換えBACクローンをスクリーニングした(tetO-h[L858R]EGFR RecBAC Intermediate)。

【0019】
4.[L858R]変異遺伝子ドナーコンストラクトの構築
EGFR遺伝子座のEx21の前後のゲノム配列を相同配列として[L858R]変異の両端に配置し、[L858R]変異を挿入するためのEGFRトランスファーコンストラクトを作製した(修飾工程)。図7(A)及び図7(B)には、TAクローニングを用いて[L858R]トランスファープラスミドを構築する方法を、図7(C)及び図7(D)には、[L858R]を電気泳動で確認した結果を示した。
大腸菌内での能動型相同組み換え反応であるRed/ET Recombination Technologyを利用して、tetO遺伝子を含むDNAクローンからtetO-h[L858R]EGFR RecBAC遺伝子トランスファープラスミドを構築した。
表2に示したように、ヒトEGFR遺伝子の5’-UTRのゲノムDNA配列の5'、および3’flanking配列を大腸菌内での能動型相同組み換え反応のためのキー配列とした。
まず、[L858R]変異遺伝子をプラスミドベクターにサブクローニングするために、EGFR-H3配列、[L858R]変異-H1、[L858R]変異遺伝子、[L858R]変異-H2、およびEGFR-H4の各配列をタンデムにつないだDNAフラグメントをPCRにより増幅した。形質転換能力を有した大腸菌株に、PCRフラグメントとpGEM-T easyプラスミドを同時に導入し、アンピシリン耐性のコロニーをピックアップすることにより、[L858R]変異トランスファープラスミドをスクリーニングした。

【0020】
5.組換えBAC型EGFR tetO発現コンストラクトの構築
Red/ET Recombination Technologyを利用して、ヒトEGFR遺伝子座に[L858R]変異遺伝子を挿入した組換えBACクローンを構築した。前述のヒトEGFRレシピエントコンストラクトのEx21に挿入したセレクションマーカーを、[L858R]変異リペアーフラグメントにより正確に置換して除去した(置換工程。図8(A)~図8(C))。つまり、この段階では、ヒトEGFR遺伝子座のエキソン21の領域に[L858R]変異遺伝子を挿入するために、Red/ET反応の能力を有した大腸菌株に、先に構築したヒトEGFRレシピエントコンストラクトと[L858R]変異リペアーフラguメントを導入した。このホスト大腸菌内でRed/ET反応を誘導し、クロラムフェニコールおよびストレプトマイシン耐性コロニーをピックアップして、コロニーPCRでスクリーニングすることにより、ヒトEGFR遺伝子座のエキソン21に挿入したセレクションマーカーを、[L858R]変異リペアーフラグメントにより正確に置換したtetO-h[L858R]EGFR RecBAC発現ベクターを同定した。
シークエンス解析によりtetO-[L858R]-h-EGFR RecBACの接合部のDNA配列を精査したところ、意図した通りに[L858R]変異遺伝子がヒトEGFR遺伝子座に挿入されていることを確認した(受容体発現用遺伝子調製工程。図8(D)及び図8(E))。

【0021】
6.高純度BAC DNAフラグメントの精製
tetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC組換えBACクローンを精製し、制限酵素で直鎖化した後、パルスフィールド電気泳動を行い、高純度BAC DNAフラグメントの精製を行った。分析用アガロースゲル電気泳動により精製した発現コンストラクトの純度と濃度を調べたところ、純粋な長鎖の発現コンストラクトが回収できていることがわかった。DNA濃度は215.3 ng/μlであり、トランスジェニックマウス作製に供するのに充分な濃度であった。図9において(A)は、分析用アガロースゲル電気泳動のガイドマーカーを、(B)は、直鎖化したDNAフラグメントのバンドを、(C)は、HPLCにてDNA濃度を調べた結果をそれぞれ示した。

【0022】
7.m-CCSP rtTA RecBAC発現コンストラクトの構築
図10に示すように、Red/ET Recombination Technologyを利用して、マウスのCCSP遺伝子座をコードするゲノムクローンを入手し、そのコード配列にインフレームになるようにrtTA_SV40 polyA配列を挿入した組換えBACクローンを構築した。マウスCCSP遺伝子情報を解析し、マウスCCSP遺伝子座を含むBACゲノムクローン、RP23-223J21を理化学研究所から入手した。この、(i)マウスBACクローンのCCSP遺伝子のエキソン1に存在する翻訳開始コドンにセレクションマーカーを挿入し、(ii)マウスBACクローンのCCSP遺伝子産物をコードするゲノム領域のうち翻訳開始コドンのゲノムDNA配列を削除して、CCSP_rtTA RecBACの中間体を調製した。次に、(iii)rtTA_SV40 polyA配列の両端にマウスCCSP遺伝子のセレクションマーカー挿入部位のflanking配列を連結し、CCSP_rtTA RecBACリペアーフラグメントを作製後、(iv)最後にマウスCCSP遺伝子のエキソン1に存在する翻訳開始コドンに挿入したセレクションマーカーを、CCSP_rtTA RecBACリペアーフラグメントにより正確に置換して除去した。
つまり、大腸菌内での能動型相同組み換え反応であるRed/ET Recombination Technologyを利用して、CCSP遺伝子を含むBACクローンからrtTA_SV40 polyA配列の組換えBACクローン(CCSP_rtTA RecBAC)を構築した。表3に示したように、マウスCCSP遺伝子の翻訳開始コドンのゲノムDNA配列の5'、および3’flanking配列、およびrtTA遺伝子の5'、および3' flanking配列を大腸菌内での能動型相同組み換え反応のためのキー配列とした(配列番号7,8)。

【0023】
【表3】
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【0024】
図10が示すように、まず、CCSP遺伝子座のエキソン1に存在する翻訳開始コドンの領域にポジティブ/ネガティブセレクションマーカーカセット(Rpsl-kan)を挿入するために、CCSP-H3配列、Rpsl-kan、およびCCSP-H4配列をタンデムにつないだDNAフラグメントを、LATaq(タカラバイオ社製)を用いたPCRにより構築した(CCSP Rpsl-Kanブレークインフラグメント)。Red/ET反応の能力を有した大腸菌株に、CCSP遺伝子座を含むBAC クローンとCCSP Rpsl-Kanブレークインフラグメントを導入し、このホスト大腸菌内でRed/ET反応を誘導させ、クロラムフェニコール耐性、かつカナマイシン耐性のコロニーをピックアップすることにより、CCSP Rpsl-kanブレークインフラグメントがCCSP遺伝子座のエキソン1に存在する翻訳開始コドンに挿入した組み換えBACクローンをスクリーニングした(CCSP_rtTA RecBAC Intermediate)。そして、このRecBAC Intermediate に、rtTA遺伝子のDNA配列を導入するため、rtTA_SV40 polyA配列の両端にマウスCCSP遺伝子のセレクションマーカー挿入部位のflanking配列をタンデムにつないだDNAカセットを構築した(rtTA_SV40 polyA配列リペアーフラグメント)。上記と同様の方法で、Red/ET反応の能力を有する大腸菌株に、CCSP_rtTA RecBAC Intermediateとともに、rtTAリペアーフラグメントを導入し、このホスト大腸菌内でRed/ET反応を誘導させてアンピシリンおよびストレプトマイシン耐性コロニーをピックアップすることにより、マウスCCSP遺伝子のエキソン1に存在する翻訳開始コドンに挿入したセレクションマーカーを、CCSP_rtTA RecBAC リペアーフラグメントにより正確に置換した組換えBACクローン(CCSP_rtTA RecBAC)をスクリーニングした。
以上の4段階のRed/ET反応により、マウスCCSP遺伝子座のエキソン/イントロン構造、およびCCSP遺伝子座の発現制御配列を損なうことなく、CCSP_rtTA RecBACを構築することができた。シークエンス解析によりCCSP_rtTA RecBACの組換えBACクローンの接合部のDNA配列を精査したところ、意図した通りにrtTA_SV40 polyA配列がマウスCCSP遺伝子座に挿入されていることを確認した(図11)。
次に、環状の組換えBACクローンを特異的制限酵素でリニアライズを行い、パルスフィールド電気泳動でその長鎖のDNAを精製した。

【0025】
8.C57BL/6Jマウスへの遺伝子マイクロインジェクション
次に、詳述するように、C57BL/6Jマウスから受精卵を採取し、マイクロインジェクション法により二種類の外来遺伝子(tetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC/CCSP_rtTA RecBAC発現コンストラクト)を導入した。すなわち、雌性C57BL/6J マウスに妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG)及びヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を投与して過排卵を誘起し、同系統の雄性マウスと交配した後、受精卵を採取した。マイクロマニュピレーターを用いて、C57BL/6J マウスの前核期胚の雄性核に、精製したtetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC/CCSP-rtTA RecBAC発現コンストラクトを直接注入した。このDNA注入胚を偽妊娠誘起した受胚雌マウスの卵管に移植した(図4)。
偽妊娠処置したマウスの卵管に、発現コンストラクトを導入した受精卵を移植した。過排卵誘起して交配したC57BL/6J 雌性マウスから、合計322個の受精卵を採取した。マイクロインジェクションを受けたマウス受精卵を顕微鏡下で観察したところ、注入操作によるダメージで死滅した受精卵はわずかであった。これらの受精卵のうち、ダメージなく発現コンストラクトを注入できた300個の受精卵を偽妊娠マウスに移植することができた。
表4には、マイクロインジェクションを行ったマウス受精卵とファインダーに関するデータを、表5には、胚を移植した妊娠マウスの個体リストをそれぞれ示した。

【0026】
【表4】
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【0027】
【表5】
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【0028】
9.肺特異的[L858R]-h-EGFR RecBAC遺伝子誘導発現TGマウス・ファウンダーのサザンスクリーニング
マイクロインジェクション法によりtetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC/CCSP_rtTA RecBAC発現コンストラクトを導入したC57BL/6J マウスの受精卵から、TGマウスのファウンダー候補となる産子を得て、サザン解析によるジェノタイピングを行い、TGマウス・ファウンダー個体を同定した。合計322個の受精卵に発現コンストラクトを注入して、合計300個の注入胚を偽妊娠マウスに移植して自然分娩させたところ、これらの遺伝子を注入した受精卵から合計43頭のマウス産子を得た。これら43頭全ての個体を離乳まで育成することができた。tetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC/CCSP-rtTA RecBAC発現コンストラクトを導入した初期胚からの産子数、離乳数は良好であった。このことから、発現コンストラクトを注入したことによるマウス受精卵の発生、分化への悪影響はなかったと考えられた。
図12に示すように、TGマウスのファウンダー候補となる産子から抽出したゲノムDNA断片と[32P]ラベル化プローブのハイブリダイゼーションを行った。図12(A)、(B)には、tetO-[L858R]-h-EGFRの結果を、図12(C)、(D)には、RecBAC/CCSP-rtTAの結果をそれぞれ示した。この結果より、tetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC/CCSP-rtTA RecBAC発現コンストラクトを導入したTGマウス・ファウンダー個体、5頭(図12中のNo. 11, 25, 27, 36及び41)を同定した。これらのTGマウス・ファウンダー個体に導入した発現コンストラクトのコピー数は1コピーから3コピーであった。

【0029】
10.TGマウスのジェノタイピング
TGマウス・ファウンダー個体のジェノタイピングはPCR法を用いて行った。表6には使用したプライマーを示した(配列番号9~配列番号12)。図13に示すように、TGマウス・ファウンダー個体のそれぞれには、tetO-[L858R]-h-EGFR RecBAC/CCSP-rtTA RecBAC発現コンストラクトが認められた。

【0030】
【表6】
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【0031】
11.肺特異的[L858R]-h-EGFRの発現(RT-PCR)
表7には、RT-PCRに用いたプライマーの配列を示した(配列番号13,14)。TGマウス・ファウンダー個体(雄性)の精巣上体から得た精子と、C57BL/6Jマウス(雌性)から得た未受精卵とから受精卵を作製した。この受精卵を偽妊娠処置したマウスの卵管に移植した。各マウスからTGマウス(雌雄第1世代(F1))を得た。

【0032】
【表7】
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【0033】
TGマウスにDoxが含まれている餌を与え、肺特異的に[L858R]-h-EGFRを発現させた。TGマウスにおいて肺特異的に[L858R]-h-EGFRが発現していることを逆転写酵素PCR(RT-PCR)によって確認した。各組織からトリゾール(TRIZOL (Invitrogen, Carlsbad, CA))を用いて、全RNAを抽出した後、RT-PCRを実施した。PCR反応物は、2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、バンドを臭化エチジウムで染色した後、紫外光にて観察した。結果を図14に示した。図中、A549は[L858R]-h-EGFRを持つコントロール細胞を、Gapdhはハウスキーピング遺伝子マーカーを示す。野生型(WT)では、[L858R]-h-EGFRの発現は認められず、TGマウスでは、肺特異的に[L858R]-h-EGFRの発現が認められた。

【0034】
12.肺がん組織中のPD-1及びPD-L1の発現
近年、がん細胞が免疫のはたらきを抑制して、免疫細胞の攻撃を阻止していることがわかってきた。そこで、がん細胞によるブレーキを解除することで、免疫細胞の働きを再び活発にしてがん細胞を攻撃できるようにする新たな治療法が考えられた。その中でも、現在では免疫チェックポイントと呼ばれるブレーキ部分(PD-L1とPD-1の結合)を阻害する「免疫チェックポイント阻害薬」が治療で使用されている。
肺がん組織においても、EGFR遺伝子変異と免疫チェックポイント分子発現の間に関連性が指摘されている。これまで、ヒトの生検組織や手術検体で両者を検討した報告はあるが、ヒト変異EGFR遺伝子全長を組み込んだ肺癌モデルマウスでの報告は認められない。
そこで、本実施形態のTGマウスを用いて、マウスの肺がん組織における免疫チェックポイント分子(PD-1及びPD-L1)の発現を蛍光顕微鏡及びRT-PCRによって調べた。肺がん組織からトリゾール(TRIZOL (Invitrogen, Carlsbad, CA))を用いて、全RNAを抽出した後、RT-PCRを実施した。PCR反応物は、2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、バンドを臭化エチジウムで染色した後、紫外光にて観察した。

【0035】
<肺特異的[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの評価>
1.TGマウスの肺がん発症
TGマウスにDox投与開始前とDoxが含まれている餌を与え始めた日から7日目、13日目に肺CT画像を写した。図15には、1匹のTGマウス(横方向に、同一マウスのCTの同一スライドレベルを示す;縦方向に、同一マウスのCTの違うスライドレベルを示す)のCT画像を示した。また、図16には、TGマウス(3)の13日目の画像を拡大して示した。
Dox投与後から7日目には、肺がんが認められ、従来のモデルに比べると発症が早かった。また、この肺がんは、進行性のものであり、Dox投与からの日数が増加するに連れて増大した。

【0036】
2.[L858R]-h-EGFR TGマウスの肺組織及びその他の所見
肺がんを発症した[L858R]-h-EGFR TGマウスについて、肺組織を顕微鏡にて観察した。TGマウスの肺組織をヘマトキシリン・エオジン染色(H&E染色)し、顕微鏡(A→×40; B→×100;C,D→×200)にて観察した結果を図17に示した。各画像中には、腫瘍細胞(図中の矢印T)が認められた。腫瘍細胞の形態を確認したところ、未分化型であり、悪性度の高い腫瘍が示す上皮間葉転移(epithelial-mesenchymal transition; EMT)(図18A)、及びムチンの過剰発現(図18B)が認められた。腸間膜リンパ節(図18A)と横隔膜リンパ節(図20B)の転移の様子を示した。
肺がんを発症した[L858R]-h-EGFR TGマウスを精査したところ、癌細胞の血管への浸潤(図19A)、腸間膜リンパ節(図20A)と横隔膜リンパ節(図20B)の遠隔転移が認められ、悪性度が高いことが確認された。従来のTGマウス(cDNAを用いたもの)では、癌細胞の血管浸潤、遠隔転移に関する報告は認められない。また、Doxを含有させた餌を与え始めてから、肺がんが発症するまでの日数が7日と短く、悪性度が高いものと認められた。
WHOによれば、肺癌組織型として、表8のような分類がなされている。

【0037】
【表8】
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【0038】
[L858R]-h-EGFR TGマウスの肺癌には、上記肺癌組織型のうち、肺胞置換性パターン、乳頭状パターン、充実性パターン、粘液性肺腺癌(ムチンの多量発現)などの各種のものが認められたことから、侵襲性肺癌の臨床モデルとして利用できることが分かった。また、血管への浸潤、腸間膜リンパ節及び横隔膜リンパ節への遠隔転移も認められた。このことからも、ヒトの臨床モデルにより近いものと考えられた。
また、TGマウスにおいて肺特異的にPD-1及びPD-L1が発現していることを逆転写酵素PCR(RT-PCR)によって確認した。結果をまとめたものを図21に示した。図21(A)、(B)は、PD-L1の発現を調べたゲル写真図とグラフを、図21(C)、(D)は、PD-1の発現を調べたゲル写真図とグラフをそれぞれ示す。図中、GAPDHはハウスキーピング遺伝子マーカーを示す。野生型(Wild Type)及びTGマウス(EGFR-TG)のいずれにおいても、PD-1及びPD-L1の発現が認められたが、TGマウスはWTマウスに比べて、高い発現が認められた。特に、PD-L1は、TGマウスで有意に(P<0.05)高い発現が認められた。このため、本実施形態のTGマウスを用いることで、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法の有用性など新しい治療法の開発に役立てられる。【0039】
B.[L858R+T790M]-h-EGFR発現TGマウスの作製と評価
次に、[L858R]と[T790M]の二種類の変異を持つh-EGFRを肺特異的に発現するTGマウスを作製し、その特性を調べた。
<肺特異的h-EGFR発現TGマウスの作製>
1.TGマウスの作製方法
図22には、肺特異的に[L858R+T790M]-h-EGFRを発現するTGマウスを作製するための遺伝子の構造を示した。StepA'において、上記<A.[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製と評価>で作製したtetO-[L858R]-h-EGFRを用いて、tetO-[L858R+T790M]-h-EGFRを作製した。
その他のステップ(StepB~StepG)については、上記<A.[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製と評価>と同様に実施した。重複する記載を削除するため、下記にはTGマウスを作製するために重要であると考えるデータのみを説明した。

【0040】
2.h-EGFR遺伝子レシピエントコンストラクトの構築
tetO-[L858R]-h-EGFRについて、Red/ET Recombination Technologyを利用して、[T790M]変異を組み込むためのレシピエントとなるBACクローンを構築した。(i)ヒトBACクローンのEGFR遺伝子のEx20にセレクションマーカーを挿入し(図23(A))、(ii)Ex20を削除して、tetO-[L858R+T790M]-h-EGFR RecBACの中間体を調製した(第2選択用遺伝子組換え工程。図23(B))。図23(C)には、当該中間体が作製されたことを電気泳動で確認した結果を示した。
Red/ET Recombination Technologyを利用して、[L858R+T790M]変異の組換えBACクローン(tetO-h[L858R+T790M]EGFR RecBAC)を構築した。
表9に示したように、ヒトEGFR遺伝子の[T790M]変異遺伝子の5'および3' flanking配列並びにエキソン20のゲノムDNA配列の5'および3’flanking配列を大腸菌内での能動型相同組み換え反応のためのキー配列とした(配列番号15~配列番号18)。

【0041】
【表9】
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【0042】
3.組換えBAC型EGFR tetO発現コンストラクトの構築
EGFR遺伝子座のEx20の前後のゲノム配列を相同配列として[T790M]変異の両端に配置し、[T790M]変異を挿入するためのEGFRトランスファーコンストラクトを作製した(第2修飾工程)。その後、Red/ET Recombination Technologyを利用して、ヒトEGFR遺伝子座に[T790M]変異遺伝子を挿入した組換えBACクローンを構築した。ヒトEGFRレシピエントコンストラクトのEx20に挿入したセレクションマーカーを、[T790M]変異リペアーフラguメントにより正確に置換して除去した(第2置換工程)。次いで、ヒトEGFR遺伝子座のEx20に挿入したセレクションマーカーを、[T790M]変異リペアーフラグメントにより正確に置換したtetO-h[L858R+T790M]EGFR RecBAC発現ベクターを同定した。
シークエンス解析によりtetO-[L858R+T790M]-h-EGFR RecBACの接合部のDNA配列を確認し、[T790M]変異遺伝子が挿入されていることを確認した(第2受容体発現用遺伝子調製工程。図24)。

【0043】
4.高純度BAC DNAフラグメントの精製
tetO-[L858R+T790M]-h-EGFR RecBAC組換えBACクローンを精製し、制限酵素で直鎖化した後、パルスフィールド電気泳動を行い、高純度BAC DNAフラグメントの精製を行った。分析用アガロースゲル電気泳動により精製した発現コンストラクトの純度と濃度を調べたところ、純粋な長鎖の発現コンストラクトが回収できていることがわかった。DNA濃度は202.2ng/μlであり、トランスジェニックマウス作製に供するのに充分な濃度であった。図25において(A)は、アガロースゲル中に分離した発現コンストラクトを含むゲルを切り出した様子を、(B)は、電気溶出、透析により精製したDNA断片をパルスフィールド電気泳動したDNAフラグメントのバンドを、(C)は、NanoDrop分光光度計によりDNA濃度を調べた結果をそれぞれ示した。
なお、m-CCSP rtTA RecBAC発現コンストラクトは、上記<A.[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製と評価>に記載の方法に従って調製した。

【0044】
5.C57BL/6Jマウスへの遺伝子マイクロインジェクション
次に、C57BL/6Jマウスから受精卵を採取し、マイクロインジェクション法により二種類の外来遺伝子(tetO-[L858R+T790M]-h-EGFR RecBAC/CCSP_rtTA RecBAC発現コンストラクト)を導入した。方法の詳細は、上記<A.[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製と評価>に記載の通りであった。
過排卵誘起して交配したC57BL/6J 雌性マウスから、合計627個の受精卵を採取した。このうち355個の受精卵に二種類の外来遺伝子をマイクロインジェクションした。この操作によるダメージで死滅した受精卵は少なく、合計308個の受精卵は安定な状態を維持した。このうち、300個の受精卵を偽妊娠マウスに移植した。
表10には、マイクロインジェクションを行ったマウス受精卵とファインダー(産子)に関するデータを、表11には、胚を移植した妊娠マウスの個体リストをそれぞれ示した。

【0045】
【表10】
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【0046】
【表11】
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【0047】
6.肺特異的[L858R+T790M]-h-EGFR RecBAC遺伝子誘導発現TGマウス・ファウンダーのサザンスクリーニング
表10,11に示したマイクロインジェクションのデータに加え、実験日を変えて、新たに365個の胚を採取し、このうち300個の胚を偽妊娠マウスに移植して自然分娩させ、合計52頭のマウス産子を得た。合計108頭の産子のうち、105頭を離乳まで育成した。
tetO-[L858R+T790M]-h-EGFR RecBAC/CCSP-rtTA RecBAC発現コンストラクトを導入した初期胚からの産子数、離乳数は良好であったので、発現コンストラクトを注入したことによるマウス受精卵の発生、分化への悪影響はなかったと考えた。
図26に示すように、TGマウスのファウンダー候補となる産子から抽出したゲノムDNA断片と[32P]ラベル化プローブのハイブリダイゼーションを行った。図26(A)、(B)には、tetO-[L858R+T790M]-h-EGFRの結果を、図26(C)、(D)には、RecBAC/CCSP-rtTAの結果をそれぞれ示した。この結果より、tetO-[L858R+T790M]-h-EGFR RecBAC/CCSP-rtTA RecBAC発現コンストラクトを導入したTGマウス・ファウンダー個体として5頭を同定した。これらのTGマウス・ファウンダー個体に導入した発現コンストラクトのコピー数は1コピーから10コピーであった。

【0048】
<肺特異的[L858R+T790M]-h-EGFR発現TGマウスの評価>
本実施形態のTGマウスについても、上記<A.[L858R]-h-EGFR発現TGマウスの作製と評価>に記載した通りの方法に従って、Doxが含まれている餌を与え始めて7日目程度から肺がんが認められる。
また、本実施形態のTGマウスでは、[L858R]に加えて、[T790M]変異を備えている。この変異を持つことにより、発生した肺がんがEGFRチロシンキナーゼ阻害薬に耐性を備えたものとなる。臨床的には、[T790M]変異は、[L858R]-h-EGFRを持つ肺がん患者がEGFRチロシンキナーゼ阻害薬を投与されているうちに変異を起こすことで検出される場合が多い。このため、両変異を備えた[L858R+T790M]-h-EGFRは、ヒトの臨床モデルとしての有効性が高い。
このため、本実施形態のTGマウスは、従来のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬が効かない肺がんに対して、新たな薬剤をスクリーニングするために用いることができる。

【0049】
<その他の試験への応用>
(1)[L858R]-h-EGFR TGマウス及び[L858R+T790M]-h-EGFR TGマウスは、次の試験に使用することができる。
・肺がんの発症予防薬及び/または治療薬の研究開発に使用できる。
・タバコの煙を導入することにより、肺がんの発症の有無を調べる。このとき、発症した肺がんの増悪の様子を時系列に沿って調べられる。
・免疫チェックポイント阻害薬を標的とする新たな抗がん剤の研究開発に使用できる。
・特に、[T790M]変異を持つTGマウスでは、EGFR-TKIに耐性を持つ肺がんに対する新たな抗がん剤の研究開発に使用できる。
(2)本発明の技術的思想を応用することにより、次のような展開が考えられる。
・[L858R]-h-EGFRの誘導発現を行う際に、TREとrtTAの誘導発現系の他に、Cre酵素とloxP配列とを使う誘導発現系を用いることもできる。
・肺以外の他の臓器について、臓器特異的ながんを発症させるTGマウスへの応用可能性がある。
これらのことから、本実施形態の[L858R]-h-EGFR TGマウス及び[L858R+T790M]-h-EGFR TGマウスに発症する肺がんは、従来のモデルマウスに比べると、より悪性度が高く、ヒト肺がんの臨床に近い状態を示すものであった。このTGマウスを用いることにより、肺がんに関する研究を飛躍的に発展させられる。
図面
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