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明細書 :チロシンホスファターゼ及びチロシンキナーゼ活性の測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年9月6日(2018.9.6)
発明の名称または考案の名称 チロシンホスファターゼ及びチロシンキナーゼ活性の測定方法
国際特許分類 C12Q   1/42        (2006.01)
C12Q   1/48        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI C12Q 1/42
C12Q 1/48 Z
G01N 33/15 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 42
出願番号 特願2017-544450 (P2017-544450)
国際出願番号 PCT/JP2016/078224
国際公開番号 WO2017/061288
国際出願日 平成28年9月26日(2016.9.26)
国際公開日 平成29年4月13日(2017.4.13)
優先権出願番号 2015198320
優先日 平成27年10月6日(2015.10.6)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA
発明者または考案者 【氏名】佐藤 伸一
【氏名】中村 浩之
【氏名】中野 洋文
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
Fターム 4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ20
4B063QQ27
4B063QQ33
4B063QR07
4B063QR13
4B063QR58
4B063QS28
4B063QX02
要約 ハイスループット化に適し、高感度の測定方法として、下記の一般式(I)
JP2017061288A1_000034t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは末端に標識物質を有するリンカーなどを表し、R1は水素原子など表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子又はアルキル基などを表す。〕
で表される化合物を利用したチロシンホスファターゼ及びチロシンキナーゼの活性測定方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とするチロシンホスファターゼ活性の測定方法、
(1)測定対象とするチロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、リン酸化チロシン残基を脱リン酸化する工程、
(2)脱リン酸化させたチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化1】
JP2017061288A1_000020t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を結合させる工程、
(3)ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める工程。
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化2】
JP2017061288A1_000021t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のチロシンホスファターゼ活性の測定方法。
【請求項3】
リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、前記蛍光物質によってペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のチロシンホスファターゼ活性の測定方法。
【請求項4】
リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載のチロシンホスファターゼ活性の測定方法。
【請求項5】
リン酸化チロシン残基を含むペプチドと下記の一般式(I)
【化3】
JP2017061288A1_000022t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含むことを特徴とするチロシンホスファターゼ活性測定用キット。
【請求項6】
一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化4】
JP2017061288A1_000023t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載のチロシンホスファターゼ活性測定用キット。
【請求項7】
以下の工程を含むことを特徴とするチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法、
(1)被験物質の存在下で、チロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる工程、
(2)チロシンホスファターゼと接触させたリン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化5】
JP2017061288A1_000024t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物と接触させる工程、
(3)ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める工程。
【請求項8】
一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化6】
JP2017061288A1_000025t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする請求項7に記載のチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【請求項9】
リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、ペプチドに結合した蛍光物質によって一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項7又は8に記載のチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【請求項10】
リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項7又は8に記載のチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【請求項11】
リン酸化チロシン残基を含むペプチドと下記の一般式(I)
【化7】
JP2017061288A1_000026t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含むことを特徴とする糖尿病の診断薬。
【請求項12】
一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化8】
JP2017061288A1_000027t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする請求項11に記載の糖尿病の診断薬。
【請求項13】
以下の工程を含むことを特徴とするチロシンキナーゼ活性の測定方法、
(1)測定対象とするチロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、非リン酸化チロシン残基をリン酸化する工程、
(2)リン酸化しなかったチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化9】
JP2017061288A1_000028t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を結合させる工程、
(3)工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(4)工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドの非リン酸化チロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物を結合させる工程、
(5)工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(6)工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める工程。
【請求項14】
一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化10】
JP2017061288A1_000029t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする請求項13に記載のチロシンキナーゼ活性の測定方法。
【請求項15】
非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、前記蛍光物質によってペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項13又は14に記載のチロシンキナーゼ活性の測定方法。
【請求項16】
非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項13又は14に記載のチロシンキナーゼ活性の測定方法。
【請求項17】
非リン酸化チロシン残基を含むペプチドと下記の一般式(I)
【化11】
JP2017061288A1_000030t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含むことを特徴とするチロシンキナーゼ活性測定用キット。
【請求項18】
一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化12】
JP2017061288A1_000031t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする請求項17に記載のチロシンキナーゼ活性測定用キット。
【請求項19】
以下の工程を含むことを特徴とするチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法、
(1)被験物質の存在下で、チロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる工程、
(2)チロシンキナーゼと接触させた非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化13】
JP2017061288A1_000032t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物と接触させる工程、
(3)工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(4)工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる工程、
(5)工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(6)工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める工程。
【請求項20】
一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化14】
JP2017061288A1_000033t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする請求項19に記載のチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【請求項21】
非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、ペプチドに結合した蛍光物質によって一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項19又は20に記載のチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【請求項22】
非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする請求項19又は20に記載のチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンホスファターゼ及びチロシンキナーゼ活性の測定方法に関する。また、本発明は、この測定方法に使用する測定キット、この測定方法を利用したチロシンホスファターゼ阻害剤若しくは活性化剤及びチロシンキナーゼ阻害剤若しくは活性化剤のスクリーニング方法、並びにこの測定方法を利用した診断薬に関する。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼはタンパク質のチロシン残基をリン酸化する酵素であり、それに対してチロシンホスファターゼはリン酸化されたチロシン残基を基質とし、脱リン酸化を触媒する酵素である。チロシンキナーゼ及びチロシンホスファターゼは生体内で重要な働きをしており、これらの酵素の発現異常などが疾患の原因となっていることも多い。例えば、チロシンキナーゼであるEGFR(上皮成長因子受容体)は、肺がんや大腸がんなどで過剰発現していることが知られており、また、チロシンホスファターゼであるPTP1Bは糖尿病に関係することが報告されている。このため、チロシンキナーゼ及びチロシンホスファターゼの活性を正確に測定することは、これらの酵素が関与する疾患の治療手段確立のために重要である。
【0003】
チロシンキナーゼ活性の測定方法は、数多く知られており、例えば、32P放射性同位体を用いる方法(非特許文献1)、抗リン酸化抗体を用いる方法(非特許文献2)、キャピラリー電気泳動を用いる方法(非特許文献3)などが知られている。一方、チロシンホスファターゼ活性の測定方法については、あまり多くの方法が知られていない。よく使われる方法としては、マラカイトグリーンにより無機リン酸を定量し、それから活性を推定する方法(非特許文献4)やp-ニトロフェニルリン酸(pNPP)のようなリン酸化チロシンミミックとチロシンホスファターゼを反応させ、生成する脱リン酸化体を定量する方法(非特許文献5)がある。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Pike, L. J., Eakes, A. T., Krebs, E. G., Characterization of affinity-purified insulin receptor/kinase. Effects of dithiothreitol on receptor/kinase function.J. Biol. Chem., 1986, 261, 3782-3789.
【非特許文献2】Ise, N., Omi, K., Miwa, K., Honda, H., Higashiyama, S., Goishi,K., Novel monoclonal antibodies recognizing the active conformation of epidermal growth factor receptor.Biochem. Biophys. Res. Commun. 2010, 394, 685-690.
【非特許文献3】Gratz, A., Gotz, C., Jose, J., A CE-based assay for human protein kinase CK2 activity measurement and inhibitor screening. Electrophoresis 2010, 31, 634-640.
【非特許文献4】Scott, L. M., Lawrence, H. R., Sebti, S. M., Lawrence, N.J., Wu,J., Targeting protein tyrosine phosphatases for anticancer drug discovery. Curr. Pharm. Des. 2010, 16, 1843-1862.
【非特許文献5】Zhang, L., Jiang, C. S., Gao, L. X., Gong, J. X., Wang, Z. H., Li, J. Y., Li., J., Li., X. W., Guo, Y. W., Design, synthesis and in vitro activity of phidianidine B derivatives as novel PTP1B inhibitors with specific selectivity.Bioorg. Med. Chem. Lett. 2015, 26, 778-781.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、チロシンキナーゼ活性の測定方法は数多く知られているが、いずれもハイスループット化や感度などに問題がある。
【0006】
また、チロシンホスファターゼについては、上記した二つの方法はいずれも大きな問題を有している。マラカイトグリーンを用いた方法は、無機リン酸を定量することから、測定の際無機リン酸が存在する条件(例えば、リン酸を含むバッファー中)では使用できないという問題があり、また、測定感度の点からも満足のいくものではない。リン酸化チロシンミミックを用いた方法は、リン酸化チロシンミミックがホスファターゼと非選択的に反応してしまうため、測定対象とするチロシンホスファターゼ以外のホスファターゼが存在する条件では使用できないという問題がある。
【0007】
このように従来のチロシンホスファターゼ及びチロシンキナーゼ活性の測定方法には多くの問題がある。本発明は、問題の多いこれらの方法に代わる新たな活性測定手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、ルミノールの誘導体がリン酸化していないチロシン残基に結合するのに対し、リン酸化したチロシン残基には結合しないことを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の〔1〕~〔22〕を提供するものである。
〔1〕以下の工程を含むことを特徴とするチロシンホスファターゼ活性の測定方法、
(1)測定対象とするチロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、リン酸化チロシン残基を脱リン酸化する工程、
(2)脱リン酸化させたチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化1】
JP2017061288A1_000003t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を結合させる工程、
(3)ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める工程。
【0010】
〔2〕 一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化2】
JP2017061288A1_000004t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする〔1〕に記載のチロシンホスファターゼ活性の測定方法。
【0011】
〔3〕リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、前記蛍光物質によってペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のチロシンホスファターゼ活性の測定方法。
【0012】
〔4〕リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のチロシンホスファターゼ活性の測定方法。
【0013】
〔5〕リン酸化チロシン残基を含むペプチドと下記の一般式(I)
【化3】
JP2017061288A1_000005t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含むことを特徴とするチロシンホスファターゼ活性測定用キット。
【0014】
〔6〕一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化4】
JP2017061288A1_000006t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする〔5〕に記載のチロシンホスファターゼ活性測定用キット。
【0015】
〔7〕以下の工程を含むことを特徴とするチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法、
(1)被験物質の存在下で、チロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる工程、
(2)チロシンホスファターゼと接触させたリン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化5】
JP2017061288A1_000007t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物と接触させる工程、
(3)ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める工程。
【0016】
〔8〕一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化6】
JP2017061288A1_000008t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする〔7〕に記載のチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【0017】
〔9〕リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、ペプチドに結合した蛍光物質によって一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔7〕又は〔8〕に記載のチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【0018】
〔10〕リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔7〕又は〔8〕に記載のチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【0019】
〔11〕リン酸化チロシン残基を含むペプチドと下記の一般式(I)
【化7】
JP2017061288A1_000009t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含むことを特徴とする糖尿病の診断薬。
【0020】
〔12〕一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化8】
JP2017061288A1_000010t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする〔11〕に記載の糖尿病の診断薬。
【0021】
〔13〕以下の工程を含むことを特徴とするチロシンキナーゼ活性の測定方法、
(1)測定対象とするチロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、非リン酸化チロシン残基をリン酸化する工程、
(2)リン酸化しなかったチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化9】
JP2017061288A1_000011t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を結合させる工程、
(3)工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(4)工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドの非リン酸化チロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物を結合させる工程、
(5)工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(6)工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める工程。
【0022】
〔14〕一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化10】
JP2017061288A1_000012t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする〔13〕に記載のチロシンキナーゼ活性の測定方法。
【0023】
〔15〕非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、前記蛍光物質によってペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔13〕又は〔14〕に記載のチロシンキナーゼ活性の測定方法。
【0024】
〔16〕非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔13〕又は〔14〕に記載のチロシンキナーゼ活性の測定方法。
【0025】
〔17〕非リン酸化チロシン残基を含むペプチドと下記の一般式(I)
【化11】
JP2017061288A1_000013t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を含むことを特徴とするチロシンキナーゼ活性測定用キット。
【0026】
〔18〕一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化12】
JP2017061288A1_000014t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする〔17〕に記載のチロシンキナーゼ活性測定用キット。
【0027】
〔19〕以下の工程を含むことを特徴とするチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法、
(1)被験物質の存在下で、チロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる工程、
(2)チロシンキナーゼと接触させた非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化13】
JP2017061288A1_000015t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物と接触させる工程、
(3)工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(4)工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる工程、
(5)工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、
(6)工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める工程。
【0028】
〔20〕一般式(I)で表される化合物が、下記の一般式(Ia)
【化14】
JP2017061288A1_000016t.gif
〔式中、Lは上記と同じ意味である。〕
で表される化合物であることを特徴とする〔19〕に記載のチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【0029】
〔21〕非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、ペプチドに結合した蛍光物質によって一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔19〕又は〔20〕に記載のチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【0030】
〔22〕非リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質又は前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することを特徴とする〔19〕又は〔20〕に記載のチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法。
【0031】
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2015‐198320の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の測定方法は、高い精度で、チロシンホスファターゼやチロシンキナーゼの活性を測定することができる。チロシンホスファターゼやチロシンキナーゼは、様々な疾患に関与すると考えられており、それらの治療薬剤の重要な標的となっている。このため、本発明の測定方法は、これらの酵素を標的とする医薬の開発に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】FRET又は蛍光クエンチャーを利用して一般式(I)で表される化合物の量を測定する方法を模式的に説明した図である。
【図2】チロシンホスファターゼ及びチロシンキナーゼの質量分析での活性確認。(A)はチロシンホスファターゼPTP1BによるpY-RR-Srcの脱リン酸化を示し、(B)はチロシンキナーゼErbB1によるRR-Srcのリン酸化を示す。
【図3】RR-SrcへのN3 compoundの結合を質量分析で確認。
【図4】RR-SrcとpY-RR-Srcの混合物での共有結合修飾。
【図5】N3 compound修飾ペプチドへのクリック反応によるビオチン部位の導入。上段はRR-SrcのみのMSチャート(図3のcontrolと同じ)を示し、中段は、N3 compoundとRR-Srcの混合溶液のMSチャート(図3のN3 comp. 10 eq と同じ)を示し、下段は、N3 compoundとRR-Srcの混合溶液にDBCO-biotinを加えた溶液のMSチャートを示す。
【図6】化学修飾ペプチドの蛍光標識による高感度検出。
【図7】マラカイトグリーン法(Promega社のkit)の無機リン酸検出限界。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0035】
本発明において「炭素数1~20のアルキル基」とは、炭素数が1以上20以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、iso-ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などである。

【0036】
本発明において「炭素数1~10のアルキル基」とは、炭素数が1以上10以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、iso-ペンチル基、neo-ペンチル基、ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、iso-ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などである。

【0037】
本発明において「炭素数1~3のアルキル基」とは、炭素数が1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基などである。

【0038】
本発明において「炭素数1~20のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上20以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、iso-ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基などである。

【0039】
本発明において「炭素数1~10のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上10以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso-ペンチルオキシ基、neo-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、iso-ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、iso-ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などである。

【0040】
本発明において「炭素数1~3のアルコキシ基」とは、炭素数が1以上3以下の直鎖又は分枝鎖アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基などである。

【0041】
本発明において「置換基を有していてもよい芳香族基」とは、置換基を有していない芳香族基又は少なくとも一つの置換基を有している芳香族基を意味する。ここで、「芳香族基」とは、芳香族化合物から一個の水素原子を除いた基をいい、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、ピリジン-2-イル基、ピリジン-3-イル基、ピリジン-4-イル基、ピリミジン-2-イル基、ピリミジン-4-イル基、ピリミジン-5-イル基、ピラジン-2-イル基、ピラジン-3-イル基、ピリダジン-3-イル基、ピリダジン-4-イル基、フラン-2-イル基、フラン-3-イル基、チオフェン-2-イル基、チオフェン-3-イル基、ピロール-1-イル基、ピロール-2-イル基、ピロール-3-イル基、ピラゾール-1-イル基、ピラゾール-3-イル基、ピラゾール-4-イル基、ピラゾール-5-イル基、イミダゾール-1-イル基、イミダゾール-2-イル基、イミダゾール-4-イル基、イミダゾール-5-イル基などである。置換基としては、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、及びメトキシ基などからなる群から選択することができる。少なくとも一つの置換基を有している芳香族基の好適な例としては、少なくとも一つの置換基を有しているフェニル基を挙げることができ、その具体例としては、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニ基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2,3-ジブロモフェニル基、2,4-ジブロモフェニル基、2,5-ジブロモフェニル基、2,6-ジブロモフェニル基、3,4-ジブロモフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基などを挙げることができる。

【0042】
本発明において「クリック反応に用いられる官能基」とは、例えば、アジド基やエチニル基である。

【0043】
本発明において「共役環」とは、共役二重結合を有する環をいう。共役環は、芳香環であっても、非芳香環であってもよい。また、共役環は、炭素原子のみからなる環であっても、炭素以外の原子、例えば、窒素、酸素、硫黄などの原子を含む複素環であってもよい。共役環の具体例としては、ベンゼン環、1,3-シクロヘキサジエン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環などの6員環、シクロペンタジエン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環などの5員環などを挙げることができる。

【0044】
本発明において「放射性同位体」とは、例えば、11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br、99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xeなどを挙げることができる。これらの中で好適な放射性同位体としては、18Fを挙げることができる。

【0045】
本発明において「標識物質」とは、ペプチドなどと直接的又は間接的に結合することにより、そのペプチドを検出できるようにする物質をいい、例えば、蛍光物質、放射性同位体、特定の物質と相互作用をする物質などである。蛍光物質としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンなどを挙げることができ、特定の物質と相互作用をする物質としては、例えば、ビオチン、ジニトロフェニル基等の低分子抗体の抗原になりうる構造を持つ物質、Halo Tag(登録商標)やSNAP-tag(登録商標)等の共有結合を形成できる分子構造を持つ物質などを挙げることができる。

【0046】
本発明において「標識物質を含む基」とは、例えば、標識物質を、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0~12の整数を表す。〕で表されるリンカーと結合させた場合において、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-以外の部分をいう。

【0047】
〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法
本発明のチロシンホスファターゼ活性の測定方法は、(1)測定対象とするチロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、リン酸化チロシン残基を脱リン酸化する工程、(2)脱リン酸化させたチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、下記の一般式(I)
【化15】
JP2017061288A1_000017t.gif
〔式中、Aは共役環を表し、Lは水素原子を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー又は末端に標識物質を有するリンカーを表し、R1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表し、R2及びR3は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。〕
で表される化合物を結合させる工程、及び(3)ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める工程を含むことを特徴とするものである。


【0048】
マラカイトグリーンやリン酸化チロシンミミックを用いた従来法では、無機リン酸やホスファターゼ存在下でチロシンホスファターゼ活性を正確に測定することは困難である。細胞破砕物や細胞ライセートには、通常、無機リン酸やホスファターゼが含まれているので、従来法では、これらに含まれているチロシンホスファターゼをそのままの状態で測定することは不可能であり、測定対象とするチロシンホスファターゼの精製が必要である。これに対し、本発明の方法は、チロシンホスファターゼを精製することなく、細胞破砕物や細胞ライセート中に含まれているチロシンホスファターゼをそのままの状態で測定することができる。細胞破砕物や細胞ライセートからチロシンホスファターゼを精製することは労力の要する作業であり、これを省略できる点で、本発明の方法は、従来法よりも優れている。また、チロシンホスファターゼが精製された状態ではなく、細胞破砕物や細胞ライセート中に存在する状態でその活性を測定できるということは、より生体内に近い状態で活性の測定ができるということであり、この点においても、従来法よりも優れている。

【0049】
〔1-1〕工程(1)
工程(1)では、測定対象とするチロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、リン酸化チロシン残基を脱リン酸化する。

【0050】
測定対象とするチロシンホスファターゼは、ペプチド中のリン酸化されたチロシン残基を脱リン酸化できるものであればどのようなものでもよく、例えば、PTP1B、SHP1,2、TCPTP、CD45、DEP1、LAR PTP、PRL-1、LMW-PTPなどを挙げることができる。チロシンホスファターゼには、特定の疾患と関連性が指摘されているものもある。例えば、糖尿病との関連性が指摘されているPTP1B、異常な顔骨格形成、低身長、肥大型心筋症などを伴うNoonan症症候群との関連性が指摘されているSHP-2、大腸がんへの関連性が指摘されているDEP1などである。このようなチロシンホスファターゼを測定対象としてもよい。上述したようにチロシンホスファターゼは未精製のものを使用することができるが、精製されたものを使用してもよい。未精製のチロシンホスファターゼとしては、例えば、チロシンホスファターゼを含む生体採取物(例えば、細胞破砕物、細胞ライセート、血液、血しょう、尿など)を挙げることができる。

【0051】
上記のように、チロシンホスファターゼは、特定の疾患と関連するものがあるので、この酵素の活性を測定することにより、疾患の診断を行うことができる。このような疾患としては、後述する糖尿病のほかに、がんなどを挙げることができる。疾患の診断に利用可能なチロシンホスファターゼの具体例を以下に示す。

【0052】
1)PTP1B
PTP1Bの活性化がインスリン抵抗性の原因となっているという報告があり(Haftchenary et al., ACS Med. Chem. Lett. 2015, 6, 982-986)、このことから、PTP1Bの活性測定により、インスリン抵抗性や糖尿病を診断できると考えられる。PTP1Bは、主に筋肉、肝臓、脂肪組織で発現しているので、これらの器官や組織の破砕物中に含まれるPTP1Bを測定対象とすることができる。

【0053】
2)LAR(leukocyte common antigen-related) PTP
筋肉におけるLAR PTPの高活性化がインスリン抵抗性の発症に関与しているという報告がある(Zabolotny et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 2001, 98(9):5187-92)。このことから、LAR PTPの活性測定により、インスリン抵抗性や糖尿病を診断できると考えられる。

【0054】
3)PRL-1 (Phosphatase of Regenerating Liver 1)
被検者から細胞を採取し、その細胞中のPRL-1活性を評価し、膵臓癌の診断をする方法が知られている(特表2006-519616)。

【0055】
4)低分子タンパク質チロシンホスファターゼ(LMW-PTP)
哺乳類から得られる細胞可溶化物中で、LMW-PTPが過剰発現しているかどうかにより、癌を診断する方法が知られている(特表2006-501153)。

【0056】
5)SHP1
SHP1は、ピロリ菌の発癌タンパク質であるCagAの活性を低下させ、また、この酵素は、EBウイルスの感染により発現が抑制される(Saju et al., Nat Microbiol. 2016 Mar 14;1:16026. doi: 10.1038/nmicrobiol.2016.26.)。従って、胃の上皮細胞におけるSHP1活性を測定することにより、胃がんの罹り易さを診断できる。

【0057】
ペプチドはリン酸化されたチロシン残基を含むものであればどのようなものでもよい。ペプチドの鎖長は、取扱いの容易さなどから、10~20程度であることが好ましいが、非常に長く、一般的には「ペプチド」ではなく、「タンパク質」と認識されているような鎖長のペプチドであってもよい。また、ペプチドは何らかの機能を持つものである必要はないが、特定の機能を持つペプチドやタンパク質を使用してもよい。このようなタンパク質等としては、例えば、活性中心のリン酸化チロシン残基以外に本反応で修飾を受けるチロシン残基が存在しない(または少ない)チロシンホスファターゼ基質タンパク質、もしくは、活性中心のリン酸化チロシン残基以外に修飾反応が進行しないように、あらかじめ脱リン酸化状態の活性中心以外のチロシン残基を修飾反応でキャッピングされたようなチロシンホスファターゼ基質タンパク質などを使用することができる。

【0058】
ペプチド中に含まれるリン酸化チロシン残基は一つでよいが、二つ以上あってもよい。

【0059】
ペプチドはリン酸化されたチロシン残基のみを含み、非リン酸化チロシン残基を含まないものが好ましいが、非リン酸化チロシン残基を含んでいてもよい。この場合、一般式(I)で表される化合物は、チロシンホスファターゼ活性により脱リン酸化されたチロンシン残基だけでなく、元から存在する非リン酸化チロシン残基にも結合してしまうので、その分を差し引いてチロシンホスファターゼ活性を求める必要がある。

【0060】
この反応に使用するチロシンホスファターゼの量は特に限定されないが、ペプチド1 molに対し、通常、1×10-4~1×10-2 molであり、好適には、1×10-3~1×10-2 molである。

【0061】
この反応に使用する緩衝液は、特に限定されず、酢酸ナトリウム、リン酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、スルホン酸系緩衝剤(HEPES, MESなど)などを含む緩衝液を使用することができる。

【0062】
反応時のpHは、特に限定されないが、通常、3~9であり、好適には、5~7である。

【0063】
反応温度は、特に限定されないが、通常、4~40 ℃であり、好適には、20~40 ℃である。

【0064】
反応時間は、特に限定されないが、通常、5分~24時間であり、好適には、30分~2時間である。

【0065】
〔1-2〕工程(2)
工程(2)では、脱リン酸化させたチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物を結合させる。

【0066】
酸化剤としては、通常は過酸化水素を用いるが、反応を進行させ得るものであればこれに限定されず、例えば、アンモニウムパースルフェート(APS)、ターシャリブチルペルオキシド、クメンペルオキシドなどを用いてもよい。

【0067】
金属触媒としては、反応を進行させ得るものであればどのようなものでもよいが、ポルフィリン金属錯体を用いるのが好ましい。ポルフィリン金属錯体としては、ポルフィリン銅錯体やポルフィリンコバルト錯体などを用いてもよいが、ポルフィリン鉄錯体を用いるのが好ましい。ポルフィリン鉄錯体としては、ポルフィリン鉄錯体そのもののほか、ポルフィリン鉄錯体を含むタンパク質などを使用してもよい。ポルフィリン鉄錯体の具体例としては、ヘミン、ヘモグロビン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ミオグロビン、シトクロムなどを挙げることができ、これらの中でも、HRPを使用することが好ましい。

【0068】
一般式(I)においてAは共役環を表す。Aは共役環であればよいが、ベンゼン環であることが好ましい。

【0069】
一般式(I)においてR1は水素原子を表すか、共役環上の任意の位置に存在する1個の放射性同位体、若しくはクリック反応に用いられる官能基を表すか、又は共役環上の任意の位置に存在する1個若しくは2個のアミノ基、アセトアミド基、ヒドロキシ基、アルキル基、若しくはアルコキシ基を表す。ここで、アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1~20であることが好ましく、炭素数が1~10であることが更に好ましく、炭素数が1~3であることが特に好ましい。R1は、前記した基であればよいが、水素原子、又は1個のアミノ基、アセトアミド基、若しくはメトキシ基であることが好ましく、水素原子、又は1個のメトキシ基であることが更に好ましい。上記の置換基が2個存在する場合、各置換基は同一であっても、異なっていてもよい。置換基は共役環上の任意の位置に存在してよいが、合成上の容易さなどから、隣接する複素環から離れた位置に存在することが好ましい。

【0070】
一般式(I)においてR2は水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。ここで、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1~20であることが好ましく、炭素数が1~10であることが更に好ましく、炭素数が1~3であることが特に好ましい。R2は、前記した基であればよいが、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることが更に好ましい。

【0071】
一般式(I)においてR3は水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。ここで、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数が1~20であることが好ましく、炭素数が1~10であることが更に好ましく、炭素数が1~3であることが特に好ましい。R3は、前記した基であればよいが、水素原子であることが好ましい。

【0072】
一般式(I)においてLは、水素原子、末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカー、又は末端に標識物質を有するリンカーを表す。末端にクリック反応に用いられる官能基を有するリンカーは、このような官能基が結合性を失わないような構造であればどのような構造でもよいが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z1〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z1はN3、又はCCHを表し、m及びnはそれぞれ0~12の整数を表す。〕で表されるリンカーが好ましく、-O-CH2-CCH、-O-(CH2)6-N3が更に好ましい。なお、mが0とは、[CH2CH2-Y]が存在しないことを意味し、nが0とは(CH2)が存在しないことを意味する。末端に標識物質を有するリンカーは、標識物質が機能を失わないような構造であればどのような構造でもよいが、-X-[CH2CH2-Y]m-(CH2)n-Z2〔ここで、X及びYはそれぞれCH2、O、NH、S、NHCO、又はCOを表し、Z2は標識物質を含む基を含む基を表し、m及びnはそれぞれ0~12の整数を表す。〕で表されるリンカーが好ましい。

【0073】
一般式(I)で表される化合物の好ましい例としては、下記の一般式(Ia)
【化16】
JP2017061288A1_000018t.gif
で表される化合物を挙げることができる。ここで、Lはベンゼン環上の任意の位置に存在してよいが、ジヒドロフタラジン環上の6位又は7位に存在することが好ましい。また、一般式(Ia)で表される化合物は、一種類の化合物だけ使用してもよいが、二種類以上の化合物の混合物を使用してもよい。例えば、Lが6位に存在する化合物とLが7位に存在する化合物の混合物を使用してもよい。

【0074】
一般式(I)で表される化合物は、ペプチド中の脱リン酸化させたチロシン残基に結合するが、このチロシン残基に1分子結合する場合と2分子結合する場合とがある。一般式(I)で表される化合物の量が、ペプチド、酸化剤及び金属触媒の量よりも相対的に少ない場合には一般式(I)で表される化合物はチロシン残基に2分子結合し、相対的に多い場合には一般式(I)で表される化合物はチロシン残基に1分子結合する。従って、使用する一般式(I)で表される化合物、ペプチド、酸化剤及び金属触媒の量比を調整することにより、チロシン残基に結合する一般式(I)で表される化合物の個数を制御することができる。

【0075】
使用するペプチドの量は特に限定されないが、一般式(I)で表される化合物1molに対し、通常、0.001~1 molであり、チロシン残基に2分子の一般式(I)で表される化合物を結合させる場合には、0.0005~0.5 molである。

【0076】
使用する酸化剤の量は特に限定されないが、一般式(I)で表される化合物1molに対し、通常、1~100 molであり、チロシン残基に2分子の一般式(I)で表される化合物を結合させる場合にも、1~100 molである。

【0077】
使用する金属触媒の量は特に限定されないが、一般式(I)で表される化合物1molに対し、通常、1×10-5~1×10-3 molであり、チロシン残基に2分子の一般式(I)で表される化合物を結合させる場合にも、1×10-5~1×10-3 molである。

【0078】
この反応に使用する緩衝液は、特に限定されず、リン酸緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、スルホン酸系緩衝剤(HEPES, MESなど)などを含む緩衝液などを使用することができる。なお、マラカイトグリーンを用いた従来のチロシンホスファターゼ活性の測定方法では、反応によって生じるリン酸塩を定量するため、リン酸塩を含む緩衝液を使用できないが、本発明の方法では問題なく使用することができる。

【0079】
反応時のpHは、特に限定されないが、通常、5~9であり、好適には、7~8である。

【0080】
反応温度は、特に限定されないが、通常、4~70 ℃であり、好適には、20~30 ℃である。

【0081】
反応時間は、特に限定されないが、通常、15分~24時間であり、好適には、30分~2時間である。

【0082】
工程(2)は、工程(1)の終了後に行ってもよく、また、工程(1)と同時に行ってもよい。即ち、チロシンホスファターゼとペプチドとの反応を、チロシンホスファターゼを失活させることなどにより、終了させ、その後、一般式(I)で表される化合物、酸化剤及び金属触媒を添加し、脱リン酸化したチロシン残基に一般式(I)で表される化合物に結合させてもよく、また、チロシンホスファターゼ、ペプチド、一般式(I)で表される化合物、酸化剤及び金属触媒を混合し、チロシン残基の脱リン酸化とその脱リン酸化したチロシン残基への一般式(I)で表される化合物の結合が同時に起こるようにしてもよい。

【0083】
〔1-3〕工程(3)
工程(3)では、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める。

【0084】
ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する方法は特に限定されず、例えば、一般式(I)で表される化合物が標識物質を含んでいる場合は、その標識物質によって測定することができ、また、一般式(I)で表される化合物がクリック反応に用いられる官能基を含んでいる場合は、その官能基に標識物質を結合させ、その標識物質によって測定することができる。また、以下のような方法によっても、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することができる。

【0085】
(A)一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いる方法
この方法では、リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体を用いて、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物を単離し、ペプチドに結合した蛍光物質によって一般式(I)で表される化合物の量を測定する。

【0086】
蛍光物質としては、フルオレセイン、FITC、ローダミンなどを使用することができる。

【0087】
一般式(I)で表される化合物と特異的に結合する担体としては、一般式(I)で表される化合物がビオチンを含んでいるのであれば、アビジンやストレプトアビジンが結合したビーズなどを使うことができる。また、アビジンやストレプトアビジンが固定されたプレートなども使用できる。

【0088】
(B)FRETを利用する方法
この方法では、リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質とFRETペアを形成する蛍光物質を結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質及び/又は一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する。

【0089】
図1は、このFRETを利用する方法を模式的に説明した図である。

【0090】
FRETペアを形成する蛍光物質としては、FITCとローダミン、FITCとCy3、Cy3とCy5などを挙げることができる。

【0091】
脱リン酸化したチロシン残基に一般式(I)で表される化合物が結合すると、ドナーとなる蛍光物質の蛍光強度が弱くなる一方、アクセプターとなる蛍光物質の蛍光強度が強くなる。従って、ドナーとなる蛍光物質の蛍光強度若しくはアクセプターとなる蛍光物質の蛍光強度、又は両方の蛍光強度の変化を測定することによって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することができる。なお、リン酸化チロシン残基を含むペプチドに結合させた蛍光物質をドナーとし、一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質をアクセプターとしても、逆にリン酸化チロシン残基を含むペプチドに結合させた蛍光物質をアクセプターとし、一般式(I)で表される化合物に結合させた蛍光物質をドナーとしてもよい。

【0092】
この方法では、洗浄操作が不要なので、チロシンホスファターゼ活性測定のハイスループット化に適している。

【0093】
(C)蛍光クエンチャーを利用する方法
この方法では、リン酸化チロシン残基を含むペプチドに蛍光物質を結合させ、一般式(I)で表される化合物に、前記蛍光物質に対するクエンチャーを結合させ、ペプチドに結合させた蛍光物質の蛍光の変化によって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する。

【0094】
図1は、この蛍光クエンチャーを利用する方法を模式的に説明した図である。

【0095】
クエンチャーとしては、DABCYL, BHQ-1, BHQ-2, QSY-7,などを挙げることができる。

【0096】
脱リン酸化したチロシン残基に一般式(I)で表される化合物が結合すると、ペプチドに結合させた蛍光物質の蛍光強度が弱くなるので、この蛍光強度の変化を測定することによって、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することができる。

【0097】
この方法も、洗浄操作が不要なので、チロシンホスファターゼ活性測定のハイスループット化に適している。

【0098】
〔2〕チロシンホスファターゼ活性測定用キット
本発明のチロシンホスファターゼ活性測定用キットは、リン酸化チロシン残基を含むペプチドと一般式(I)で表される化合物を含むことを特徴とする。

【0099】
このキットに含まれるリン酸化チロシン残基を含むペプチドと一般式(I)で表される化合物を、チロシンホスファターゼを含む試料に添加すると、チロシンホスファターゼによりペプチド中のリン酸化チロシン残基が脱リン酸化され、この脱リン酸化チロシン残基に一般式(I)で表される化合物が結合する。このペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定することにより、チロシンホスファターゼ活性を測定できる。

【0100】
リン酸化チロシン残基を含むペプチド及び一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0101】
このキットは、リン酸化チロシン残基を含むペプチドと一般式(I)で表される化合物以外のものを含んでいてもよい。例えば、一般式(I)で表される化合物が脱リン酸化チロシン残基に結合するためには、酸化剤や金属触媒が必要なので、これらを含んでいてもよい。また、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定するための試薬や器材、あるいはペプチドや一般式(I)で表される化合物を安定化させるための物質等を含んでいてもよい。

【0102】
〔3〕チロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法
本発明のチロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法は、(1)被験物質の存在下で、チロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる工程、(2)チロシンホスファターゼと接触させたリン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる工程、及び(3)ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める工程を含むことを特徴とするものである。

【0103】
〔3-1〕工程(1)
工程(1)では、被験物質の存在下で、チロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる。

【0104】
被験物質は、いかなる物質であってもよく、天然物、合成化合物のいずれであってもよい。具体的には、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ホルモン、多糖、オリゴ糖、単糖、低分子化合物、核酸(DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド等)、脂質などを例示することができる。また、被験物質は精製されているものであってもよいが、未精製の細胞抽出液、細胞破砕液、細胞ライセートのようなものであってもよい。

【0105】
使用する被験物質の量は特に限定されないが、チロシンホスファターゼ1molに対し、通常、10~10000 molであり、好適には、100~10000 molである。

【0106】
チロシンホスファターゼは、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したチロシンホスファターゼの中には、活性化することにより、種々の疾患の原因となるものが含まれている。例えば、PTP1BやLAR PTPの活性化はインスリン抵抗性や糖尿病の原因となり、PRL-1やLMW-PTPの活性化はがんの原因となると考えられる。従って、これらのチロシンホスファターゼの阻害剤は、インスリン抵抗性、糖尿病、癌の治療薬や予防薬の候補となり得る。

【0107】
リン酸化チロシン残基を含むペプチドは、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0108】
チロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドの接触は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したチロシンホスファターゼとリン酸化チロシン残基を含むペプチドの反応と同様の条件で行うことができる。

【0109】
〔3-2〕工程(2)
工程(2)では、チロシンホスファターゼと接触させたリン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる。

【0110】
酸化剤、金属触媒、及び一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0111】
ペプチドと一般式(I)で表される化合物の接触は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した脱リン酸化させたチロシン残基に一般式(I)で表される化合物を結合させる反応と同様の条件で行うことができる。

【0112】
工程(2)は、工程(1)の終了後に行ってもよく、また、工程(1)と同時に行ってもよい。

【0113】
〔3-3〕工程(3)
工程(3)では、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定し、その量からチロシンホスファターゼ活性を求める。

【0114】
ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量の測定は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した方法と同様に行うことができる。

【0115】
工程(3)で求められたチロシンホスファターゼ活性が、被験物質非存在下で求められたチロシンホスファターゼ活性と比較して、低い場合には、被験物質をチロシンホスファターゼ阻害剤と判断することができ、高い場合には、被験物質をチロシンホスファターゼ活性化剤と判断することができる。

【0116】
〔4〕糖尿病の診断薬
本発明の糖尿病の診断薬は、リン酸化チロシン残基を含むペプチドと一般式(I)で表される化合物を含むことを特徴とするものである。

【0117】
チロシンホスファターゼの一種であるPTP1Bは、糖尿病の発症との関連性が報告されている。従って、被験者から採取した試料(血液、細胞ライセートなど)中のチロシンホスファターゼ活性を測定することにより、被験者が糖尿病であるかどうか、あるいは糖尿病のリスクがあるかどうかを判断することができる。

【0118】
リン酸化チロシン残基を含むペプチド及び一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0119】
〔5〕チロシンキナーゼ活性の測定方法
本発明のチロシンキナーゼ活性の測定方法は、(1)測定対象とするチロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、非リン酸化チロシン残基をリン酸化する工程、(2)リン酸化しなかったチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物を結合させる工程、(3)工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、(4)工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドの非リン酸化チロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物を結合させる工程、(5)工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、及び(6)工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める工程を含むことを特徴とするものである。

【0120】
〔5-1〕工程(1)
工程(1)では、測定対象とするチロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを反応させ、非リン酸化チロシン残基をリン酸化する。

【0121】
測定対象とするチロシンキナーゼは、ペプチド中の非リン酸化チロシン残基をリン酸化できるものであればどのようなものでもよく、例えば、ErbB1、ErbB2, VEGFR, ALKなどを挙げることができる。チロシンキナーゼには、特定の疾患と関連性が指摘されているものもある。例えば、がんとの関連性が指摘されているErbB1、ErbB2、ALK、肺線維症との関連性が指摘されているVEGFRなどである。このようなチロシンキナーゼを測定対象としてもよい。チロシンキナーゼは精製されたものを使用してもよいが、未精製のもの、例えば、キロシンキナーゼを含む生体採取物を使用してもよい。

【0122】
ペプチドは非リン酸チロシン残基を含むものであればどのようなものでもよい。ペプチドの鎖長は、取扱いの容易さなどから、10~20程度であることが好ましいが、非常に長く、一般的には「ペプチド」ではなく、「タンパク質」と認識されているような鎖長のペプチドであってもよい。また、ペプチドは何らかの機能を持つものである必要はないが、特定の機能を持つペプチドやタンパク質を使用してもよい。このようなタンパク質等としては、例えば、活性中心のリン酸化標的のチロシン残基以外に本反応で修飾を受けるチロシン残基が存在しない(または少ない)チロシンキナーゼ基質タンパク質、もしくは、活性中心のチロシン残基以外に修飾反応が進行しないように、あらかじめ活性中心のチロシン残基以外をチロシン修飾反応でキャッピングされたようなチロシンキナーゼ基質タンパク質などを使用することができる。

【0123】
ペプチド中に含まれる非リン酸化チロシン残基は一つでよいが、二つ以上あってもよい。

【0124】
ペプチドは非リン酸化チロシン残基のみを含むものであっても、非リン酸化チロシン残基とリン酸化チロシン残基の両方を含むものであってもよい。

【0125】
この反応に使用するチロシンキナーゼの量は特に限定されないが、ペプチド1molに対し、通常、1×10-4~1×10-2 molであり、好適には、1×10-3~1×10-2 molである。

【0126】
この反応に使用する緩衝液は、特に限定されず、スルホン酸系緩衝剤(HEPES, MESなど)、リン酸、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、などを使用することができる。

【0127】
反応時のpHは、特に限定されないが、通常、5~9であり、好適には、6~8である。

【0128】
反応温度は、特に限定されないが、通常、4~40 ℃であり、好適には、20~40 ℃である。

【0129】
反応時間は、特に限定されないが、通常、5分~24時間であり、好適には、30分~2時間である。

【0130】
〔5-2〕工程(2)
工程(2)では、リン酸化しなかったチロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物を結合させる。

【0131】
酸化剤、金属触媒、及び一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0132】
リン酸化しなかったチロシン残基に一般式(I)で表される化合物を結合させる反応は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した脱リン酸化させたチロシン残基に一般式(I)で表される化合物を結合させる反応と同様の条件で行うことができる。

【0133】
〔5-3〕工程(3)
工程(3)では、工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する。

【0134】
ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量の測定は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した方法と同様に行うことができる。

【0135】
〔5-4〕工程(4)
工程(4)では、工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドの非リン酸化チロシン残基に、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物を結合させる。

【0136】
酸化剤、金属触媒、及び一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0137】
非リン酸化チロシン残基に一般式(I)で表される化合物を結合させる反応は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した脱リン酸化させたチロシン残基に一般式(I)で表される化合物を結合させる反応と同様の条件で行うことができる。

【0138】
この工程の結合反応は、工程(2)の結合反応と比較するためのものなので、工程(2)の結合反応と同一の条件で行う。

【0139】
〔5-5〕工程(5)
工程(5)では、工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する。

【0140】
ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量の測定は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した方法と同様に行うことができる。

【0141】
〔5-6〕工程(6)
工程(6)では、工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める。

【0142】
チロシンキナーゼの作用により、ペプチド中の非リン酸化チロシン残基はリン酸化される。一般式(I)で表される化合物は、非リン酸化チロシン残基に特異的に結合するので、ペプチドに結合する一般式(I)で表される化合物の量は、チロシンキナーゼを反応させた場合の方(工程(3)における測定量)が、チロシンキナーゼを反応させなかった場合(工程(5)における測定量)よりも、少なくなる。従って、工程(5)における測定量と工程(3)における測定量の差から、チロシンキナーゼの活性を求めることができる。

【0143】
〔6〕チロシンキナーゼ活性測定用キット
本発明のチロシンキナーゼ活性測定用キットは、非リン酸化チロシン残基を含むペプチドと一般式(I)で表される化合物を含むことを特徴とするものである。

【0144】
このキットに含まれる非リン酸化チロシン残基を含むペプチドと一般式(I)で表される化合物を、チロシンキナーゼを含む試料に添加すると、チロシンキナーゼによりペプチド中の非リン酸化チロシン残基がリン酸化される。チロシンキナーゼによってリン酸化しなかったチロシン残基に一般式(I)で表される化合物が結合するので、このペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量に基づいてチロシンキナーゼ活性を測定できる。

【0145】
非リン酸化チロシン残基を含むペプチドは、「〔5〕チロシンキナーゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用でき、一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンキナーゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0146】
このキットは、非リン酸化チロシン残基を含むペプチドと一般式(I)で表される化合物以外のものを含んでいてもよい。例えば、一般式(I)で表される化合物がリン酸化しなかったチロシン残基に結合するためには、酸化剤や金属触媒が必要なので、これらを含んでいてもよい。また、ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定するための試薬や器材、あるいはペプチドや一般式(I)で表される化合物を安定化させるための物質等を含んでいてもよい。

【0147】
〔7〕チロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法
本発明のチロシンキナーゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法は、(1)被験物質の存在下で、チロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる工程、(2)チロシンキナーゼと接触させた非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる工程、(3)工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、(4)工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる工程、(5)工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する工程、(6)工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める工程を含むことを特徴とするものである。

【0148】
〔7-1〕工程(1)
工程(1)では、被験物質の存在下で、チロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを接触させる。

【0149】
被験物質は、「〔3〕チロシンホスファターゼ阻害剤又は活性化剤のスクリーニング方法」に記載したものと同様のものを使用でき、チロシンキナーゼ及び非リン酸化チロシン残基を含むペプチドは、「〔5〕チロシンキナーゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0150】
チロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドの接触は、「〔5〕チロシンキナーゼ活性の測定方法」に記載したチロシンキナーゼと非リン酸化チロシン残基を含むペプチドの反応と同様の条件で行うことができる。

【0151】
〔7-2〕工程(2)
工程(2)では、チロシンキナーゼと接触させた非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる。

【0152】
酸化剤、金属触媒、及び一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0153】
ペプチドと一般式(I)で表される化合物の接触は、「〔5〕キナーゼ活性の測定方法」に記載したリン酸化しなかったチロシン残基に一般式(I)で表される化合物を結合させる反応と同様の条件で行うことができる。

【0154】
〔7-3〕工程(3)
工程(3)では、工程(2)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する。

【0155】
ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量の測定は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した方法と同様に行うことができる。

【0156】
〔7-4〕工程(4)
工程(4)では、工程(1)で使用した非リン酸化チロシン残基を含むペプチドを、酸化剤及び金属触媒の存在下で、一般式(I)で表される化合物と接触させる。
酸化剤、金属触媒、及び一般式(I)で表される化合物は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載したものと同様のものを使用できる。

【0157】
ペプチドと一般式(I)で表される化合物の接触は、「〔5〕キナーゼ活性の測定方法」に記載したリン酸化しなかったチロシン残基に一般式(I)で表される化合物を結合させる反応と同様の条件で行うことができる。

【0158】
この工程の接触反応は、工程(2)の接触反応と比較するためのものなので、工程(2)の接触反応と同一の条件で行う。

【0159】
〔7-5〕工程(5)
工程(5)では、工程(4)においてペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量を測定する。

【0160】
ペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量の測定は、「〔1〕チロシンホスファターゼ活性の測定方法」に記載した方法と同様に行うことができる。

【0161】
〔7-6〕工程(6)
工程(6)では、工程(3)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量と工程(5)で測定したペプチドに結合した一般式(I)で表される化合物の量からチロシンキナーゼ活性を求める。

【0162】
工程(5)における測定量と工程(3)における測定量の差から、被験物質存在下におけるチロシンキナーゼの活性を求めることができるが、この活性が被験物質非存在下で求められたチロシンキナーゼ活性と比較して、低い場合には、被験物質をチロシンキナーゼ阻害剤と判断することができ、高い場合には、被験物質をチロシンキナーゼ活性化剤と判断することができる。
【実施例】
【0163】
次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0164】
〔実施例1〕ホスファターゼ・キナーゼ活性の確認(基質ペプチドの質量分析)
(1)チロシンホスファターゼPTP1BによるpY-RR-Srcの脱リン酸化の確認
pY-RR-Src(アミノ酸配列:RRLIEDAE(pY)AARG、ミリポア12-217)の100 μM溶液(60 mM NaOAc buffer pH5.5に溶解)50 μLに対して、human recombinant PTP1B(フナコシ 6301-100、凍結融解繰り返し厳禁)を1 μg分加え、室温で1時間インキュベートした。PTP1Bを加える前(control)とインキュベート後の100 μMペプチド溶液のサンプルを10倍量の0.1% TFA水溶液で希釈し、その溶液0.5-1 μMとCHCA溶液 (0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Bruker, UltrafleXtreme)により、基質ペプチドpY-RR-Srcの脱リン酸化反応を確認した。図2(A)に1時間後のMSチャートを示した。
【実施例】
【0165】
(2)チロシンキナーゼErbB1によるRR-Srcのリン酸化の確認
RR-Src(アミノ酸配列:RRLIEDAEYAARG、Anaspec AS22581)の100 μM溶液(12.5 mM HEPES buffer pH7.4, 10 mM MnCl2, ATP 1 mMに溶解)50 μLに対して、ErbB1(life PR7295B、凍結融解繰り返し厳禁)を1 μg分加え、37 ℃でインキュベートし、上記と同様のMALDI-TOF-MS測定手法により、基質ペプチドのリン酸化の経時変化を観測した。図2(B)に24時間後のMSチャートを示した。
【実施例】
【0166】
以上の結果よりRR-Srcの脱リン化度を測定できれば、創薬ターゲットであるチロシンホスファターゼPTP1BやチロシンキナーゼErbB1の活性を測定できることが示唆された。
【実施例】
【0167】
〔実施例2〕脱リン化状態のRR-Srcの化学修飾反応
下記の構造のN3 compoundのチロシン残基への結合性を調べた。
【実施例】
【0168】
【化17】
JP2017061288A1_000019t.gif
【実施例】
【0169】
N3 compoundは、6位と7位が1:0.65の割合の異性体混合物として使用した。
【実施例】
【0170】
RR-Srcを100 mM Phosphate buffer (pH 7.4)に溶かし、ペプチド1 mMのストック溶液を調整した。各反応ごと50 μLのスケールで、100 mM Phosphate buffer (pH 7.4)中、最終の濃度がペプチド100 μM、HRP (horse radish peroxidase, Aldrich) 50 nM, N3 compound 0.1-1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。
【実施例】
【0171】
過酸化水素の最終濃度が1 mMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で1時間静置した。10 mM DTT, 0.1 % TFA水溶液に1 / 10の濃度で希釈し、その溶液0.5-1 μMとCHCA溶液 (0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Bruker, UltrafleXtreme)により、共有結合形成反応を確認した(図3)。チロシン残基に特異的に結合すること、及び一つのチロシン残基に2つのN3 compoundが結合することはMS/MSにより証明している。
【実施例】
【0172】
その結果、ペプチドに対してN3 compoundが一当量の条件においても反応はほぼ定量的に進行し、一つのチロシン残基に対して最大2つのN3 compoundが結合することが分かった。
【実施例】
【0173】
〔実施例3〕非リン酸化状態のペプチドに選択的な化学修飾
各反応50 μLのスケールで、100 mM Phosphate buffer (pH 7.4)中、最終の濃度がペプチドRR-Src/pY-RR-Src = 100/100 μM、HRP (horse radish peroxidase, Aldrich) 50 nM, N3 compound 1 mMになるように0.6 mlのエッペンドルフチューブ中に調整した。
【実施例】
【0174】
過酸化水素の最終濃度が1 mMになるように加え、ボルテックスで撹拌後、室温で1時間静置した。10 mM DTT, 0.1 % TFA水溶液に1 / 10の濃度で希釈し、その溶液0.5-1 μMとCHCA溶液 (0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Bruker, UltrafleXtreme)により、共有結合形成反応を確認した(図4)。
【実施例】
【0175】
図4の結果より、リン酸化状態の基質ペプチド(pY-RR-Src)には共有結合修飾反応は進行せず、脱リン酸化状態の基質ペプチド(RR-Src)にのみ特異的に反応することが明らかとなった。また、反応条件を10 μMのペプチド濃度にさせてもほぼ定量的に反応させることが出来ることが示唆された。
【実施例】
【0176】
〔実施例4〕化学修飾ペプチドのビオチン化(クリック反応)
図3に示したN3 comp. 10 eqと同じ組成のペプチド溶液(ペプチド 100 μM、加えたN3 compound 1 mM)に対して2 mMのDBCO-biotin(Aldrich)を加え、37 ℃で1時間インキュベートした。その溶液1 μMとCHCA 溶液(0.5 mg/mL in acetonitrile : 0.1% TFA = 1 : 1) 1 μMをMALDI-TOF-MSプレート上で混合し、室温で乾燥、MALDI-TOF-MS解析(Bruker, UltrafleXtreme)により、共有結合形成反応を確認した(図5下段)。
【実施例】
【0177】
図3ではN3 compoundによるRR-Srcの化学修飾が定量的に進行することが分かったが、図5ではさらに、修飾されたペプチドに対しても定量的にクリック反応が進行し、ビオチン構造を導入できることが示唆された。
【実施例】
【0178】
〔実施例5〕化学修飾された非リン酸化基質ペプチドの検出
実施例2及び4に記載の方法により調製したN3 compound修飾RR-Srcおよび、ビオチン修飾RR-Src (100 μM peptide)溶液に対してFITC (5-Isothiocyanatofluorescein, TCI)の1 M DMSO溶液を最終濃度が4 mMになるように加え、室温で1時間インキュベートした。N3 compound修飾RR-Srcを蛍光標識した溶液をサンプル1、ビオチン修飾RR-Srcを蛍光標識した溶液をサンプル2とし、両サンプルの溶液からペプチド100 pmol相当分を取り、FG-beads Streptavidin beads(多摩川精機)200 μgと100 mM Phosphate buffer (pH7.4) 中で30分撹拌し、ビオチン修飾ペプチドを磁気ビーズに結合させた。その後、1 mLの100 mM Phosphate buffer (pH7.4)で3回ビーズを洗浄し、100 μLにビーズを懸濁させてプレートリーダー(TECAN、Ex/Em = 485/510 nm)で蛍光測定した。
【実施例】
【0179】
FITCはペプチド中のアミノ基と共有結合を形成するため、RR-Scrの配列中のN末端アミノ基に結合し、ペプチドを蛍光標識することが可能である。サンプル1と2の比較により、ビオチン修飾したペプチドをビーズで捕捉し、蛍光で検出する本手法では100 pmolの非リン酸化タンパク質を基質にした条件においても検出することが可能であることが示唆された(図6)。
【実施例】
【0180】
〔比較例〕マラカイトグリーン法(従来法)の検出限界
数少ない従来のチロシンホスファターゼ測定法であるマラカイトグリーン法との比較のため、Progmega社Tyrosine Phosphatase Assay Systemの検出限界を実験により算出した。
【実施例】
【0181】
本発明は非リン酸化状態のチロシン残基含有ペプチドを検出するのに対して、上記assay kitはホスファターゼによる脱リン酸化反応の結果、ペプチドに対して1当量で生じる遊離の無機リン酸を定量するものである。よってアッセイにリン酸を含有するバッファーを使用できないという制限がある。
【実施例】
【0182】
上記assay kitのプロトコルでは無機リン酸の検出有効範囲は200-4000 pmolと記載されている。実際にプロトコルに従い、無機リン酸によるマラカイトグリーン/モリブデン試薬の比色定量を行った結果(630 nmでの吸光度測定)、やはり200 pmol程度が検出限界であり、図7に示した通り、検出感度の面においても本発明が従来法を上回る方法になるものと考えられる。
【実施例】
【0183】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明のチロシンホスファターゼ及びチロシンキナーゼ活性の測定方法は、新たな医薬品の開発に有用なので、製薬産業などの産業分野において利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6