TOP > 国内特許検索 > 炎症及び過剰免疫を抑制する装置、並びに炎症及び過剰免疫を抑制するための方法 > 明細書

明細書 :炎症及び過剰免疫を抑制する装置、並びに炎症及び過剰免疫を抑制するための方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年8月9日(2018.8.9)
発明の名称または考案の名称 炎症及び過剰免疫を抑制する装置、並びに炎症及び過剰免疫を抑制するための方法
国際特許分類 A61N   1/32        (2006.01)
FI A61N 1/32
国際予備審査の請求
全頁数 26
出願番号 特願2017-545471 (P2017-545471)
国際出願番号 PCT/JP2016/080443
国際公開番号 WO2017/065239
国際出願日 平成28年10月13日(2016.10.13)
国際公開日 平成29年4月20日(2017.4.20)
優先権出願番号 2015203033
優先日 平成27年10月14日(2015.10.14)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA
発明者または考案者 【氏名】甲斐 広文
【氏名】首藤 剛
【氏名】スイコ メリー アン ソテン
【氏名】荒木 栄一
【氏名】近藤 龍也
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100102015、【弁理士】、【氏名又は名称】大澤 健一
審査請求 未請求
テーマコード 4C053
Fターム 4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ21
4C053JJ32
要約 炎症抑制又は炎症性サイトカイン産生抑制のための新たな手段を提供する。
微弱なパルス電流を生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における炎症を抑制する装置を、電力供給手段と、電力の供給を受けて直流電流を所定の間隔で間欠的に印加するための電流制御手段と、を備え、該電流制御手段はパルス幅変調制御手段を含み、該パルス幅変調制御手段は、矩形波であるとともに、当該パルス波の1周期における立ち上がりのピーク値を示す時間(「パルス持続時間」)が0.1ミリ秒以上であり、当該ピーク値が1.0V以上20V以下であり、当該パルス波のDuty比が5.5%以上である、パルス波を発生するように構成する。
特許請求の範囲 【請求項1】
微弱なパルス電流を生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における炎症を抑制する装置であって、
電力供給手段と
電力の供給を受けて直流電流を所定の間隔で間欠的に印加するための電流制御手段と、
を備え、
該電流制御手段はパルス幅変調制御手段を含み、
該パルス幅変調制御手段は、パルス波が矩形波であり、そして、当該パルス波の1周期における立ち上がりのピーク値を示す時間(「パルス持続時間」)が0.1ミリ秒以上であり、当該ピーク値が1.0V以上20V以下であり、当該パルス波のDuty比が5.5%以上であるパルス波を発生するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記炎症が炎症性サイトカインの産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が、該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記炎症がIL-2、IL-6、TNF-α、INF-γのいずれか一以上の炎症性サイトカインの産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記炎症性サイトカインがIL-2である請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記直流電流の間歇的な間隔が55ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が1ミリ秒より大きい請求項1~4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
前記パルス持続時間が10ミリ秒以上である請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記直流電流の間歇的な間隔が550ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が0.1ミリ秒より大きい請求項1~4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
前記直流電流の間歇的な間隔が5500pps以上である請求項7に記載の装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載の装置を用いた治療装置。
【請求項10】
さらに、生体又は生体組織の異なる部位の表面に付着する導電性の1対のパッド
を備え、
前記電流制御手段は、さらに前記1対のパッド間に間欠的に微弱な直流電流を生じさせるように構成されている、請求項1~9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記炎症が、全身性自己免疫疾患又は臓器特異性自己免疫疾患より選ばれる疾患に基づく請求項1~10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
全身性自己免疫疾患又は臓器特異性自己免疫疾患より選ばれる疾患に基づく炎症の治療のために用いられる請求項1~10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
免疫抑制剤が投与されている患者に使用される請求項1~10のいずれか一つに記載の装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内において生じた炎症、特には自己免疫作用により生じた炎症を抑制するための装置に関する。本発明はまた、生体内に生じた過剰免疫を抑制する装置に関する。
【0002】
本発明はまた、生体内に生じた炎症、特には自己免疫作用により生じた炎症を抑制するための方法、並びに過剰免疫を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
地球上に存在するあらゆる生命は、灼熱から極寒まで過酷な地球環境の変動に暴露されつつも、その環境を受容・適応することで生存し、現代まで進化を遂げてきた。人類もそれは例外ではなく、暴露される様々な刺激を感知し、あらゆる環境に順応できるシステムを進化の過程で獲得している。このシステムを最大限に活用した人類の英知の結晶の一つが医薬品であるとも言える。しかしながら、現代においてもその受容機構が明らかにされていない刺激も存在する。その代表的な例が、脱分極を惹起させないレベルの微弱な電流である。これまで、生体に対する電流の作用については次の3つが明らかにされている。(1)能動的な電気特性として、活動電位発生を伴う現象。(2)受動的な電気特性として、抵抗損失による組織の発熱・変形・破壊。(3)極めて微弱な電流の長期作用として、骨の発育や損傷治癒の促進作用等の、元来の生理機能に対する補助的効果。このうち(3)は、長い歴史を有し、その臨床的有用性が経験的に認知されていたにも関わらず、その生体の受容・作用メカニズムについては全く不明であった。
【0004】
しかしながら、近年、微弱電流の生体の受容・作用メカニズムへの注目が集まっている。例えば、本発明者らにより、以下の報告がなされている。特定のパルス幅の微弱電流刺激を認識する受容機構が存在し、微弱電流が、インスリン刺激下のAKT活性化の増強反応(非特許文献1-2)や、慢性炎症病態との関連から注目されているp53の活性化作用(非特許文献3)を及ぼすことが報告されている。この最適化された物理的療法は、正常動物には、全く作用を示さないが、糖尿病モデル(非特許文献4-5など)、虚血性再還流障害モデル(非特許文献6)、慢性腎臓病モデル(非特許文献7)において有効であることが報告されている。さらには、メタボリックシンドローム対象者や肥満2型糖尿病患者におけるクロスオーバーの臨床試験において、極めて良好な結果が報告されている(非特許文献8)。
【0005】
また、本発明者らにより、微弱電流と温熱(38℃~45℃)を組み合わせて、熱ショックタンパク質又はユビキチン化タンパク質を介して生体又は生体組織における正常化機能を活性化する生体組織正常化装置が提案されている(特許文献1:特許第5148254号公報)。そこでは、パルス波の1周期における立ち上がりのピーク値を示す時間が0.05ミリ秒以上0.1ミリ秒以下であり、当該ピーク値が3.0V以上20.0V以下であり、パルス波の立ち上がり時間が18ナノ秒以上5000ナノ秒以下であるの矩形波であるパルス波が用いられている。
【0006】
免疫応答反応においては多くのサイトカインが重要な役割を担っていることが知られている。なかでも、Th1細胞が産生するIL-2は、Tc細胞やNK細胞を活性化し、さらに、B細胞の増殖・抗体産生細胞への分化、Th細胞自身の増殖・分化も促進することなど、IL-2は獲得免疫全体を活性化するため、生体防御への寄与は大きいと考えられる。通常,このように免疫を活性化する炎症性サイトカインであるIL-2は、IL-10などの抗炎症性サイトカインとの間で免疫の恒常性を維持している。一方、この免疫の恒常性が破綻し、IL-2過剰に産生されると、炎症応答が誘導され、炎症関連疾患の発症を促進する因子となりうる。したがって、IL-2産生を抑制し、適切にコントロールすることは、炎症関連疾患(難治性の自己免疫疾患や潰瘍性大腸炎など)の治療に有効であると考えられる。
【0007】
IL-2の遺伝子発現制御は,NF-κB,AP-1,NFATの3つの転写因子が協調して行っている。T細胞表面のTCRが刺激を受けると、その下流のシグナル伝達は、TCR/CD3複合体とそれに会合するチロシンキナーゼやアダプター分子から開始する。これらにより活性化されたPLC-γは、PIP2を加水分解することでDAGとIP3を生じ、DAGはPKCやMAPKの活性化、IP3はカルシウムの細胞内流入を誘導する。また、PKCの活性化は、補助刺激受容体であるCD28の下流でも誘導される。PKCは、IκBとNF-κBを解離させることでNF-κBの核内移行を誘導し(PKC/NF-κB経路)、また、MAPKの活性化はそれに続くAP-1の活性化を誘導する(MAPK/AP-1経路)。一方で、IP3による細胞内のカルシウム濃度の上昇は、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼの1つであるカルシニューリンを活性化する。さらに、カルシニューリンはNFATを脱リン酸化して活性化することで、NFATの核内移行を誘導する(カルシウム流入/NFAT経路)。これらのシグナルの下流で活性化された転写因子は,IL-2の転写を促進する。
【0008】
現在、臨床の現場において、シクロスポリンA(CsA)やタクロリムス(FK506)などの免疫抑制薬が自己免疫疾患の治療や拒絶反応の抑制に用いられている。これらの薬物は、カルシニューリンに作用し、NFATの活性化を阻害することでIL-2の発現抑制を標的としており、著効を示すことが知られている。しかしながら、有効治療濃度域が狭く、腎毒性や易感染性などの副作用が問題となることから、血中薬物濃度モニタリングが必須である。さらに、シクロスポリンAやタクロリムスは、薬物代謝酵素であるCYP3Aサブファミリーにより代謝されるため、この酵素の活性に影響する薬物や食品と併用する場合には、血中薬物濃度の上昇・低下が起こる可能性がある、実際に、これまで様々な薬物との相互作用が報告されており、生ワクチンや肺高血圧症治療薬であるボセンタンとは併用禁忌とされている。このように、免疫抑制薬には薬物ならではの欠点も存在するため、より安全性の高いIL-2産生抑制法の開発が必要とされている。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特許第5148254号公報
【0010】

【非特許文献1】森野ら、J. Pharmacol. Sci. 2008, 108号222-226頁
【非特許文献2】森野-古賀ら、J. Cell. Physiol. 2012, 228号439-446頁
【非特許文献3】福田ら、J. Biol. Chem. 2013, 288号16117-16226頁
【非特許文献4】森野ら、PLoS ONE 2008, 3号e4068頁
【非特許文献5】近藤ら、Diabetes 2012, 61号838-847頁
【非特許文献6】大場ら、J Surg Res 2010, 162号213-220頁
【非特許文献7】古賀ら、PLoS ONE 2012, 7号e43852頁
【非特許文献8】近藤ら、E BioMedicine 2014, 1号80-89頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既存の免疫抑制薬は、正常な免疫系に作用する、腎障害などの副作用を引き起こすなど、過剰免疫病態を安全にコントロールするには課題がある。そこで、本発明は新たな炎症性サイトカイン産生抑制の手段又は炎症抑制の手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らにより、微弱パルス直流電流(0.1ms、55pps(pulse per seconds))がp53の活性化作用を及ぼすことが示されている。しかしながら、本発明者らにより検討した結果、当該パルス直流電流は、IL-2産生抑制の手段、即ち免疫作用により生じる炎症には効果が無いことが確認された。
【0013】
そこで、本発明者らは鋭意研究を重ね、炎症性サイトカイン(例えば、IL-2)産生抑制又は炎症抑制の手段となりうる、微弱パルス直流電流の条件を見いだし、本発明を完成した。
【0014】
本発明は、一つの態様において、特定のDuty比の微弱パルス直流電流(パルス波)を生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における炎症性サイトカイン(例えばIL-2)産生を抑制する又は炎症を抑制する装置である。本発明の装置は以下の態様を含む。
(1)(直流電流を所定の間隔で間歇的に印加することにより生じる)微弱なパルス電流を生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における炎症を抑制する装置であって、
電力供給手段と
電力の供給を受けて直流電流を所定の間隔で間欠的に印加するための電流制御手段と、
を備え、
該電流制御手段はパルス幅変調制御手段を含み、
該パルス幅変調制御手段は、パルス波が矩形波であり、そして、当該パルス波の1周期における立ち上がりのピーク値を示す時間(以下、「パルス持続時間」という)が0.1ミリ秒以上であり、当該ピーク値が1.0V以上20V以下(好ましくは、2.0V以上18V以下、より好ましくは3.0V以上、15V以下)であり、当該パルス波のDuty比が5.5%以上であるパルス波(パルス電流)を発生するように構成されていることを特徴とする装置。
(2)前記炎症が炎症性サイトカインの産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が、該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく上記(1)に記載の装置。
(3)前記炎症がIL-2、IL-6、TNF-α、INF-γのいずれか一以上の炎症性サイトカインの産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく上記(2)に記載の装置。
(4)前記炎症性サイトカインがIL-2である上記(3)に記載の装置。
(5)前記直流電流の間歇的な間隔が55ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が1ミリ秒より大きい上記(1)~(4)のいずれか一つに記載の装置。
(6)前記パルス持続時間が10ミリ秒以上である上記(5)に記載の装置。
(7)前記直流電流の間歇的な間隔が550ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が0.1ミリ秒より大きい上記(1)~(4)いずれか一つに記載の装置。
(8)前記直流電流の間歇的な間隔が5500pps以上である上記(7)に記載の装置。
(9)上記(1)~(8)のいずれか一つに記載の装置を用いた治療装置。
(10)さらに、生体又は生体組織の異なる部位の表面に付着する導電性の1対のパッドを備え、
前記電流制御手段は、さらに前記1対のパッド間に間欠的に微弱な直流電流を生じさせるように構成されている、上記(1)~(9)のいずれか一つに記載の装置。
(11)前記炎症が、全身性自己免疫疾患(関節性リウマチなど)、臓器特異性自己免疫疾患(乾癬、脱毛など)からなる群より選ばれる疾患に基づく上記(1)~(10)のいずれか一つに記載の装置。
(12)全身性自己免疫疾患(関節性リウマチなど)、臓器特異性自己免疫疾患(乾癬、脱毛など)からなる群より選ばれる疾患に基づく炎症の治療のために用いられる上記(1)~(10)のいずれか一つに記載の装置。
(13)免疫抑制剤が投与されている患者に使用される上記(1)~(10)のいずれか一つに記載の装置。
【0015】
本発明はまた別の態様において、特定のDuty比の微弱パルス直流電流(パルス波)を生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における炎症性サイトカイン(例えばIL-2)産生を抑制する又は炎症を抑制する方法である。本発明の方法は以下の態様を含む。
[1](直流電流を所定の間隔で間歇的に印加することにより生じる)微弱なパルス電流を生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における炎症を抑制する方法であって、印加される入力電流のパルス波形が矩形波であり、当該パルス波の1周期における立ち上がりのピーク値を示す時間(以下、「パルス持続時間」という)が0.1ミリ秒以上であり、当該ピーク値が1.0V以上20V以下(好ましくは、2.0V以上18V以下、より好ましくは3.0V以上、15V以下)であり、当該パルス波(パルス電流)のDuty比が5.5%以上であることを特徴とする生体組織の炎症を抑制する方法。
[2]前記炎症が炎症性サイトカイン産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく上記[1]に記載の方法。
[3]前記炎症がIL-2、IL-6、TNF-α、INF-γのいずれか一以上の炎症性サイトカインの産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく上記[1]に記載の方法。
[4]前記炎症性サイトカインがIL-2である上記[3]に記載の方法。
[5]前記直流電流の間歇的な間隔が55ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が1ミリ秒より大きい上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6]前記パルス持続時間が10ミリ秒以上である上記[5]に記載の方法。
[7]前記直流電流の間歇的な間隔が550ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が0.1ミリ秒より大きい上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[8]前記直流電流の間歇的な間隔が5500pps以上である上記[7]に記載の方法。
[9]前記炎症が、全身性自己免疫疾患(関節性リウマチなど)、臓器特異性自己免疫疾患(乾癬、脱毛など)からなる群より選ばれる疾患に基づく上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10]全身性自己免疫疾患(関節性リウマチなど)、臓器特異性自己免疫疾患(乾癬、脱毛など)からなる群より選ばれる疾患に基づく炎症の治療のための上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[11]免疫抑制剤が投与されている患者の炎症の治療のための上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
【0016】
本発明はまた別の態様において、当該生体又は生体組織における炎症性サイトカイン(例えばIL-2)産生を抑制する又は炎症を抑制するために用いられる特定のDuty比の微弱パルス直流電流又はその使用である。本発明において、微弱パルス直流電流は、生体又は生体組織に適用され又は与えられ又は印加され)、当該生体又は生体組織における炎症性サイトカイン(例えばIL-2)産生を抑制する又は炎症を抑制する。本発明の微弱パルス直流電流又はその使用の態様は以下のものを含む。
「1」直流電流を所定の間隔で間歇的に印加することにより生じる微弱なパルス電流であって、所定の間隔で間歇的に生体又は生体組織に適用(又は与え又は印加)し、当該生体又は生体組織における炎症を抑制する電流であって、印加される該電流は、矩形波のパルス波形を有し、当該パルス波の1周期における立ち上がりのピーク値を示す時間(以下、「パルス持続時間」という)が0.1ミリ秒以上であり、当該ピーク値が1.0V以上20V以下(好ましくは、2.0V以上18V以下、より好ましくは3.0V以上、15V以下)であり、当該パルス波(パルス電流)のDuty比が5.5%以上であることを特徴とする微弱パルス直流電流。
「2」前記Duty比が50%以上である微弱パルス直流電流又はその使用
[3]前記炎症が炎症性サイトカイン産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が、該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく上記「1」又は[2]に記載の微弱パルス電流又はその使用。
「4」前記炎症がIL-2、IL-6、TNF-α、INF-γのいずれか一以上の炎症性サイトカインの産生により生じる炎症であり、前記炎症抑制が、該炎症性サイトカインの産生抑制に基づく上記「3」に記載の微弱パルス電流又はその使用。
「5」前記炎症性サイトカインがIL-2である上記「4」に記載の微弱パルス直流電流又はその使用。
「6」前記生体又は組織に適用する間歇的な間隔が55ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が1ミリ秒より大きい上記「1」~「5」のいずれか一つに記載の微弱パルス直流電流又はその使用。
「7」前記パルス持続時間が10ミリ秒以上である上記「6」に記載の微弱パルス直流電流又はその使用。
「8」前記生体又は組織に適用する間歇的な間隔が550ppsより大きくかつ前記パルス持続時間が0.1ミリ秒より大きい上記「1」~「5」のいずれか一つに記載の微弱パルス直流電流又はその使用。
「9」前記生体又は組織に適用する間歇的な間隔が5500pps以上である上記「8」に記載の微弱パルス直流電流又はその使用。
「10」前記炎症が、全身性自己免疫疾患(関節性リウマチなど)、臓器特異性自己免疫疾患(乾癬、脱毛など)からなる群より選ばれる疾患に基づく上記「1」~「9」のいずれか一つに記載の微弱パルス直流電流又はその使用。
[11]全身性自己免疫疾患(関節性リウマチなど)、臓器特異性自己免疫疾患(乾癬、脱毛など)からなる群より選ばれる疾患に基づく炎症の治療のために用いられる上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の微弱パルス直流電流又はその使用。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、生体に安全な、新たなIL-2産生抑制の手段が提供される。本発明によりまた、(例えば免疫作用に基づく)炎症を抑制する新たな手段が提供される。
【0018】
本発明はさらには、免疫抑制薬との併用が可能であり、免疫抑制薬の使用量を少なくし、副作用の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の装置の一実施態様に係る治療装置の全体概略構成図である。
【図2】実施例のインビトロ実験で用いた、微弱電流(MES)発生装置のモデル図である。
【図3】PMA/Io誘導性IL-2産生に対する交流電流(MAES)と直流電流(MDES)の効果を確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図4】PMA/Io誘導性IL-2産生に対するパルス直流電流(MPES;0.1ms、55 pps)の効果を確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図5】PMA/Io誘導性IL-2産生に対するパルス直流電流(MPES)の効果を、パルス持続時間を変えて確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図6】PMA/Io誘導性IL-2産生に対するパルス直流電流(MPES)の効果を、パルス数を変えて確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図7】PMA/Io誘導性IL-2産生に対する直流電流(MDES)の効果を、電圧を変えて確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図8】PMA/Io誘導におけるIL-2タンパク質産生に対する直流電流(MDES)の効果を確認した結果である。データは、各群3での標準誤差を示す。N.D.は、検出限界以下を示す。
【図9】CD3/CD28誘導性IL-2産生に対する直流電流(MDES)の効果を、電圧を変えて確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図10】PMA/Io又はCD3/CD28誘導性炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ、TRAF1、CCL3)産生に対する直流電流(MDES)の効果を確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図11】MDESと既存の免疫抑制薬(F506,CsA)との炎症性サイトカイン産生抑制効果の比較した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチン mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図12】PMA/Io誘導性IL-2産生に対する温熱の効果を確認した結果である。mRNAの発現レベルは、β-アクチンで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【図13】コンカナバインA誘導の炎症マウスモデルを用いた炎症性サイトカイン(IL-2、IFN-γ)産生に対する直流電流(MES:MDESとMPES)の効果を確認した結果である。mRNAの発現レベルは、HPRT mRNAで標準化した。データは、各群6個の固体での標準誤差を示す。
【図14】コンカナバインA誘導の炎症マウスモデルを用いた各種の炎症性サイトカイン(IL-2、IL-6、IFN-γ、TNF-α)産生に対する直流電流(MES:MPES)の効果を確認した結果である。mRNAの発現レベルは、GDPDH mRNAで標準化した。データは、脾臓は各群8個、肝臓は各群4個の固体での標準誤差を示す。
【図15】コンカナバインA誘導の炎症マウスモデルを用いた、直流電流(MES:MPES)と既存の免疫抑制薬(CsA)との炎症性サイトカイン産生抑制効果の比較した結果である。mRNAの発現レベルは、GDPDH mRNAで標準化した。データは、各群8個の固体での標準誤差を示す。
【図16】ミクログリア細胞株であるBV2細胞を用いて、LPS誘導性炎症性サイトカイン産生に対する直流電流(MES:MPES)の効果を確認した結果である。mRNAの発現レベルは、GAPDH mRNAで標準化した。データは、各群3での標準誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として、本発明の実施において使用することができる好ましい方法および材料とともに説明する。なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等または同様の任意の材料および方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物および特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。

【0021】
本発明においては、直流電流を所定の間隔で間歇的に印加することにより生じる微弱なパルス電流は、Duty比が、5.5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上である。また、パルス電流のDuty比の上限は、炎症の抑制を示すかぎり特に制限がないが、制御装置の性能その他の要因より、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。

【0022】
印加される入力電流のパルス波形は矩形波であり、当該パルス波の1周期における立ち上がりのピーク値を示す時間(「パルス持続時間」)は、0.1ミリ秒以上、好ましくは0.1ミリ秒より大きく、より好ましくは0.2ミリ秒以上であり、さらに好ましくは1ミリ秒以上であり、特に好ましくは10秒ミリ以上である。

【0023】
当該ピーク値の電圧は、好ましくは1.0V以上20.0V以下であり、下限は、より好ましくは2.0V以上、さらに好ましくは3.0V以上、特に好ましくは6.0V以上であり、上限は、より好ましくは18V以下、さらに好ましくは15V以下である。なお、電圧の入力にはファンクションジェネレータを用いてもよい。そうすることで、入力電圧を正確に印加することが可能となり、且つ、回路を簡潔にすることができる。

【0024】
本発明に係る装置の、生体又は生体組織に特定の微弱パルス直流電流を通電するための電極205が配置されたパッド204は、対象とする炎症部位周辺、例えば、これらに限定されないが、患者の頭、顔、首、肩、体幹、胸、腹部、腕、手首、手、腰、膝、下脚、足首、足から選ばれた目標となる領域に適用される(例えば、貼られる)。

【0025】
そして、本発明の装置を用いて、任意の時間、所定の特定の微弱パルス直流電流を通電することにより、炎症を抑制できる。

【0026】
本発明に係る装置は、さらに前記パッド204内に発熱層を備え、標的とする組織に温熱効果を加えることもできる。係る場合は、例えば、発熱層で、1対の電極が各々短冊状に形成され、当該電極間の抵抗が短冊状の電極に平行な方向に配向性を有するカーボン繊維で形成されることにより達成できる。

【0027】
このようにして、パッドの発熱層が、1対の電極が各々短冊状に形成され、当該電極間の抵抗が短冊状の電極に平行な方向に配向性を有するカーボン繊維で形成されるため、電極間がカーボン繊維により短絡されることなく、この各平行なカーボン繊維相互間の適度な抵抗値により発熱できることとなり、本発明の効果に加えて温熱効果を付加できる。

【0028】
本発明に係る装置は、パッド内の電極205に直流電流を任意の周期で間歇的に供給するための電流制御部202、それを操作するための操作部201を備え、さらに、供給される電流をモニターするための表示部203を備えることもできる。電力供給手段(図中には示されていない)から電流制御部202に電力が供給されて電流を発生する。電流制御部202には電流制御手段が備えられている。電流制御手段により、前記電極205に供給される直流電流が、所定のDuty比を提供できる周期で間歇的に供給制御される。電流制御手段はさらにパルス幅変調制御手段を含み、それにより任意の高さ(振幅)を有するパルス波を発生する。パルス幅変調制御手段により、任意の、例えばこれに限定されないが、0.1ミリ秒、1ミリ秒、10ミリ秒のパルス持続時間で、任意の、例えばこれに限定されないが、5555pps以上、550pps以上、5500pps以上の周期で間歇的なパルス波(パルス電流)を発生する。Duty比は、例えば、パルス持続時間が0.1ミリ秒で、周期が550ppsであれば、5.5%となる。パルス持続時間と周期は、Duty比が、5.5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上となるように選択される。より具体的には、パルス持続時間が、0.1ミリ秒である場合は、周期は、550pps以上、好ましくは5500pps以上であり、パルス持続時間が1.0ミリ秒である場合は、55pps以上、好ましくは550pps以上であり、パルス持続時間が10ミリ秒である場合は55ppsでも好ましい結果が得られる。

【0029】
本発明に係る治療装置において温熱を同時に用いる場合は、前記1対のパッド内の各発熱層が、38℃以上45℃以下に加熱することが望ましい。温熱が38℃以上45℃以下であれば、生体又は生体組織に温熱刺激を適度に与えることができ、治療を効果的に行うことができる。

【0030】
本発明の装置においては、前記パッドは、所定のDuty比のパルス直流電流を生体又は生体内の組織に印加できる限り特に制限がないが、生体に刺激性の少ない物質から作られていることが好ましい。また、遠赤外線を発生する電磁波シールドゴムをもちいてもよく、係る場合は、温熱刺激も容易に達成できる。

【0031】
本発明に係る装置は、対象とする生体又は生体組織に、Duty比が5.5%以上の微弱パルス直流電流を印加して通電することを特徴とし、それにより炎症性サイトカイン産生により生じる炎症を抑制することを特徴とする。微弱パルス直流電流の種類や条件については、既に上記した通りである。

【0032】
炎症性サイトカインとしては、これに限定されないが、例えば、IL-2,Il-4,IL-6,IL-13,IFN-γ,TNF-αをあげることができ、本発明に係る装置は、これらの炎症性サイトカインのうちの少なくとも一つ以上のサイトカインの産生を抑制することを特徴とし、特には、効果的にIL-2の産生を抑制できる。

【0033】
これらのサイトカインは、自己免疫疾患の原因となっており、本発明に係る装置は、自己免疫疾患の治療に適している。

【0034】
また、本発明に係る装置は、これらに限定されないが、例えば、全身性自己免疫疾患(関節性リウマチなど)、臓器特異性自己免疫疾患(乾癬、脱毛など)、等の治療において炎症を抑制することができ、これらの疾患の治療又は予防に適している。

【0035】
本発明の装置は、炎症を起こしている生体の部位、(これに限定されないが、例えば、膝、足、腕、その他の部位)に、所定の微弱パルス直流電流を通電するためのパッドを貼り付けて使用することができる。本発明の装置はまた、炎症を起こすと予想される生体部位に使用して、炎症を予防又は軽減することもできる。また、材料として生体適合性の材料を用いることにより、生体内に本発明の装置のパッド部分を適用することも可能である。

【0036】
これに限定されないが、例えば、関節性リウマチについて説明すると、関節性リュウマチを起こしている関節部分、例えば、膝部分の左右に本発明の装置のパッドを貼り付けて所定の微弱パルス直流電流を通電することにより使用することができる。

【0037】
また、生体内で炎症性サイトカインにより炎症が生じることに起因する疾患の場合は、本発明の装置を用いて生体内での炎症を抑制することにより、該疾患の治療や予防が可能となる。例えば、頭部に本発明の装置を適用することにより、脳内での炎症性サイトカインによる炎症が原因の疾患、例えばアルツハイマー病の治療又は予防も可能となる。

【0038】
本発明に係る方法は、対象とする生体又は生体組織に、Duty比が5.5%以上の微弱パルス直流電流を印加して通電することを特徴とし、それにより炎症性サイトカイン産生により生じる炎症を抑制することを特徴とする。微弱パルス直流電流の種類や条件については、既に上記した通りである。また、抑制できる炎症性サイトカインや適用できる疾患についても上記の通りである。

【0039】
本発明の方法に基づいて上記Duty比の微弱パルス直流電流を生体に通電するために、電流を生体に通電できる市販の装置を改良して、目的のDuty比をもつ微弱パルス直流電流を印加することもできる。

【0040】
本発明はまた、対象とする生体又は生体組織に経皮と通して適用する又は与える又は印加する)ことにより、生体又は生体組織に生じた炎症性サイトカイン産生により生じる炎症を抑制するために用いるための、Duty比が5.5%以上の微弱パルス直流電流又はその使用に関する。微弱パルス直流電流の種類や条件については、既に上記した通りである。また、抑制できる炎症性サイトカインや適用できる疾患についても上記の通りである。

【0041】
本発明で用いるDuty比が5.5%以上の微弱パルス直流電流は、生体に対して安全であり、また、生体に適用した場合も快適~刺激を感じない範囲となるので、通電を受けるヒトに負荷をかけることがない。

【0042】
本発明の装置や方法はまた、免疫抑制剤と併用することができる。併用することにより、免疫抑制薬の使用量を少なくし、副作用の発生を抑制することができる。免疫抑制剤としては、これに限定されないが、シクロスポリンA(CsA)やタクロリムス(FK506)などをあげることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
材料と実験方法
1.実験装置モデル
培養細胞を用いた、インビトロ実験で用いる装置のモデル図を図2に示す。図中のMESは、低電圧パルス電流(MES)発生装置を示す。プラスチック培養皿の蓋に電極用の穴を開け、電極コードを通して電極を培養液に浸した。電極は、つちやゴム(株)社製の赤外線を発生する電磁波シールドゴムを用いた。側面をテープで覆い、37℃の恒温槽につけることで温度を一定に保った。処置時間は、通常、10分間とした。
【実施例】
【0045】
2.細胞及び培養条件
ATCCより入手したヒト急性T細胞性白血病細胞株Jurkat細胞、ATCCより入手したマウスミクログリア細胞株BV2を用い、RPMI-1640(Wako)を基礎培養液として培養した。細胞は、3 ×106 cells/mLを超えない細胞数で、静置培養した。実験では無血清の培養液を用い、細胞死は、Trypan blue染色により確認した。
【実施例】
【0046】
3.培養細胞からの全RNA抽出
35 mmのプラスチック培養皿にJurkat細胞(或いは、BV2細胞)を3~5×106 cells/dishの割合で播種し、実験を行った。MESを、37℃で、10分間で処置し、直後にT細胞活性化薬を処理し、37℃で3時間培養した後、全RNAの抽出をRNAiso plus(登録商標)(Takara)を用いて、製造元のプロトコールに従って行った。
【実施例】
【0047】
4.定量的RT-PCR法
培養細胞から抽出した全RNAを用いてRT-PCRを行った。RT反応にはPrimeScript(登録商標)RT reagent Kit (Perfect real time)(Takara)もしくはPrimeScript(登録商標)RT Master Mix (Perfect real time)(Takara)を、PCR反応にはSYBR(登録商標)Premix EX TaqTMII(Tli RNaseH Plus)(Takara)を用いた。また、サンプル間のmRNAの発現量を比較するために、インターナルコントロールとしてβ-actinを用いた。方法は、製造元のプロトコールに従って行った。条件は、以下の通りである:逆転写反応(37℃:30分間,85℃:10秒間)、PCR反応(95℃:3分間,[95℃:10分間,60℃:1分間]x40cycles/増幅反応,65~95℃:10秒間/融解反応)。プライマー(センス配列、アンチセンス配列)は、ヒトIL-2,ヒトINF-γ,ヒトIL-10,ヒトCCL-3,ヒトTRAF-1,β-アクチンを用いた。
【実施例】
【0048】
5.培養細胞からのタンパク質抽出および濃度測定
3と同様の条件で培養した後、常法に従い、タンパク質を回収し、BCA法によりタンパク質定量を行い、各サンプルのタンパク質量を一定にした。
【実施例】
【0049】
6.培養細胞からの核タンパク質抽出および濃度測定
3と同様の条件で培養した後、常法に従い、核タンパク質を回収し、Bradford法によりタンパク質定量を行い,各サンプルのタンパク質量を一定にした.
【実施例】
【0050】
7.ウェスタンブロット法
培養細胞から抽出したタンパク質をサンプルとして用いて、各サンプルのタンパク質量を一定にし、常法に従い、ウェスタンブロット法を行った。用いた一次抗体及び二次抗体を、以下に示す。
1次抗体:Rabbit anti-phospho-IκB-α (Ser32), Rabbit anti-IκB-α, Mouse anti-NF-κB p65, Mouse anti-NF-κB p50, Rabbit anti-NFAT1, Rabbit anti-phospho-AMPK-α
(Thr172), Rabbit anti-AMPK-α, Rabbit anti-phospho-JNK (Thr183/Tyr185), Rabbit anti-JNK, Rabbit anti-phospho-p38 (Thr180/Tyr182), Rabbit anti-p38, Rabbit anti-phospho-ERK1/2 (Thr202/Tyr185), Rabbit anti-ERK1/2 はCell signaling Technology, Inc から, Mouse Ubiquitinated protein はBIOMOL, Inc から, Goat anti-β-actin, Goat anti-γ-tubulin はSANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY, Inc からそれぞれ購入した。
二次抗体:Anti-rabbit IgG-HRP, Anti-mouse IgG-HRP, Anti-goat IgG-HRP は Jackson Immuno Research LABORATORIES, Inc からそれぞれ購入した。
【実施例】
【0051】
8.ELISA法
35 mmのプラスチック培養皿にJurkat細胞を3×106 cells/dishの割合で播種し、実験を行った。MESを37℃、10分間で処置し、直後にT細胞活性化薬を処理し、37℃で24時間培養した後、培養液を回収し、遠心分離(4℃,12,000rpm,10分間)を行った。その上清に1% v/v Protease inhibitor cocktailを加え、サンプルとした。ELISA法を用いて、サイトカインの産生を定量した。
【実施例】
【0052】
実施例1:PMA/Io誘導性IL-2産生に対するMESの効果
(1)交流電流(MAES)と直流電流(MDES)の効果
微弱電流(mild electrical stress:MES)が免疫細胞に直接的に作用することで炎症性サイトカインの産生を抑制するかを検討した。T細胞が産生する主な炎症性サイトカインの一種であり、免疫抑制薬の標的分子にもされているIL-2に着目し、IL-2産生誘導薬としてPKCの活性化薬であるPMA(Phorbol 12-myristate 13-acetate)とカルシウムイオノフォアであるIonomycin(Io)を用いた。電流は、時間と共に周期的に大きさと向きが変化する交流電流(MAES)と時間により大きさが変化しても流れる方向(正負)が変化しない直流電流(MDES)の2種類に大別されるので、これらの電流条件の違いがIL-2の産生抑制効果に影響を及ぼすか否かを検討した。
【実施例】
【0053】
Jurkat細胞を35 mm dishに5×106 cells/dishの割合で播種し、6V,37℃,10分間の条件で、MES(MAES,MDES)処置を行った。MES処置直後に、PMA(10 nM)とIonomycin(500 nM)で併用処理(PMA/Io)をし、37℃で3時間培養後、全RNAを回収し、定量的RT-PCR法によりIL-2 mRNAの発現量を比較した。結果を図3に示す。その結果、PMA/Ioにより誘導されたIL-2産生に対してMAESは抑制効果を示さなかったが、MDESは、定常状態のIL-2発現量に影響を与えなかった一方で、PMA/Io誘導性IL-2産生を有意に抑制した。この結果より、MESがT細胞に直接的に作用することでIL-2産生を抑制することが明らかになった。またその効果は直流電流においてのみ認められ、交流電流では認められなかった。
【実施例】
【0054】
(2)MPES(55 pps)の効果
直流電流の波形にはパルス直流電流(MPES)も存在するので、次いで、MPESが免疫細胞に直接的に作用することで炎症性サイトカイン産生を抑制するか否か検討した。パルス直流電流として、パルス持続時間0.1 msの矩形波を1秒間に55回与える(55 pps)条件(Duty比=0.55%)を用いた。MES以外は、上記と同じ条件で行い、IL-2 mRNAの発現量を比較した。結果を図4に示す。その結果、PMA/Ioにより誘導されたIL-2産生に対してMPES(0.1ms、55 pps)は有意な抑制効果を示さなかった。
【実施例】
【0055】
(3)MPES(パルス持続時間 1 ms,10 ms)の効果
次に、パルス持続時間の検討を行った。上記同様にしてIL-2 mRNAの発現量を比較した。但し、MESは、パルス持続時間 1 ms,10 msのMPES(6Vp-p,55pps)(それぞれ、Duty比=5.5%、55%)もしくはMDES(duration:∞)(Duty比=100%)を用いた。結果を図5に示す。その結果、パルス持続時間が長い(10 ms)条件において、PMA/Ioにより誘導されたIL-2産生に対するより顕著な抑制効果が認められた。
【実施例】
【0056】
(4)MPES(パルス波数 550 pps,5500 pps)の効果
次いで、1秒間あたりのパルス回数について検討した。上記同様にしてIL-2 mRNAの発現量を比較した。但し、MESは、パルス波数 550 pps,5500 ppsのMPES(6 Vp-p,0.1ms)(それぞれ、Duty比=5.5%、55%)、もしくはMDES(pulse rate:∞)(Duty比=100%)用いた。結果を図6に示す。その結果、1秒間あたりのパルス回数が多い(5500 pps)条件において、PMA/Ioにより誘導されたIL-2産生に対するより顕著な抑制効果が認められた。
【実施例】
【0057】
(5)MDES(電圧:3V,6V)の効果
さらに、MDESによるIL-2産生抑制効果に対する電圧の大きさの影響を検討した。上記同様にしてIL-2 mRNAの発現量を比較した。但し、3Vもしくは6V,37℃,10分間の条件でMDES処置を行った。結果を図7に示す。その結果、MDESによるIL-2産生抑制効果は電圧依存的に認められた。また、予備的な検討ではあるが、9VのMDESは6VのMDESと同程度のIL-2産生抑制効果を示した(データ示さず)。
【実施例】
【0058】
(6)IL-2タンパク質産生抑制の効果
MDESによるIL-2産生抑制効果がタンパク質レベルでも認められるかを検討した。上記と同様にして細胞を培養し、24時間培養後に細胞培養液を回収しELISA法を用いて細胞培養液中に分泌されたIL-2タンパク質量を比較した。結果を図8に示す。その結果、MDESはPMA/Io誘導性IL-2産生をタンパク質レベルでも抑制した。
【実施例】
【0059】
実施例2:TCR刺激誘導性IL-2産生に対するMESの効果
一般的に生体内のT細胞は、抗原提示細胞によりTCR/CD3複合体及びCD28が刺激されることで活性化する。そこで、TCR/CD3複合体及びCD28を刺激した際に誘導されるIL-2産生に対してもMDESが抑制効果を示すか検討した。刺激には、1μg/mlの抗ヒトCD3抗体と1μg/mlの抗ヒトCD28抗体(CD3/CD28)を用いた。
Jurkat細胞を35 mm dishに4×106 cells/dishの割合で播種し、3Vもしくは6V,37℃,10分間の条件で、MDES処置を行った。MDES処置直後にCD3/CD28を処理し、37℃で3時間培養後、全RNAを回収し、定量的RT-PCR法によりIL-2 mRNAの発現量を比較した。結果を図9に示す。その結果、CD3/CD28刺激下でもMDESはIL-2産生を電圧依存的に抑制した。
【実施例】
【0060】
実施例3:炎症関連因子産生に対するMESの効果
IL-2以外のT細胞活性化薬誘導性のサイトカイン、ケモカイン産生に対するMDESの抑制効果を検討した。Jurkat細胞を35 mm dishに4×106 cells/dishの割合で播種し、6V,37℃,10分間の条件で、MDES処置を行った。処置直後にPMA/IoもしくはCD3/CD28を処理し、37℃で3時間培養後、全RNAを回収し、定量的RT-PCR法により各mRNAの発現量を比較した。結果を図10に示す。その結果、MDESは、TNF-α,IFN-γ,TRAF1,CCL3などIL-2以外のサイトカインやケモカイン産生を、抑制もしくは抑制傾向にあることが示された。従って、MDESは、包括的に炎症性サイトカイン産生を抑制していることが示唆された。
【実施例】
【0061】
実施例4:MESと既存の免疫抑制薬との炎症性サイトカイン産生抑制効果の比較
現在臨床で使用されている免疫抑制薬にはCsAやFK506がある。これらの薬物はカルシニューリンを強力に阻害することで、IL-2の転写因子であるNFATの活性化を抑制する。そこで、MDESとこれらの免疫抑制薬の有用性を比較するため、IL-2産生抑制効果の程度を指標として検討を行った。それぞれの免疫抑制薬の濃度は、TCR刺激誘導性IL-2産生を効果的に抑制するが,定常状態、活性化状態のT細胞に対するアポトーシス誘導など細胞傷害性は認められない濃度域内(0.1μM~1μM)とした。
【実施例】
【0062】
Jurkat細胞を35 mm dishに4×106 cells/dishの割合で播種し、1μMのFK506もしくは1μg/mL(≒0.83μM)のCsAを処理後37℃で1時間培養、または、6V,37℃,10分間の条件でMDES処置を行った。その後、PMA/Ioを処理し、37℃で3時間培養し、全RNAを回収し、定量的RT-PCR法によりIL-2,TNF-α,及びIFN-γの発現量を比較した。結果を図11に示す。その結果、MESは4時間処理した既存の免疫抑制薬と同程度のIL-2、TNF-α,及びIFN-γの産生抑制効果を示した。したがって、MESは既存の免疫抑制薬と同等の有用性があることが示唆された。
【実施例】
【0063】
実施例5:PMA/Io誘導性IL-2産生に対するHS(Heat Shock)の効果
HSが免疫細胞に直接的に作用することで炎症性サイトカインの産生を抑制するか検討した。Jurkat細胞を35 mm dishに3×106 cells/dishの割合で播種し、42℃,10分間の条件でHS処置を行った。HS処置直後にPMA/Ioを処理し、37℃で3時間培養後、全RNAを回収し、定量的RT-PCR法によりIL-2 mRNAの発現量を比較した。結果し図12に示す。その結果、HSはPMA/Io誘導性IL-2産生を抑制した。
【実施例】
【0064】
比較例:コンカナバインA誘導の炎症マウスモデルを用いた試験
コンカナバインAは、T細胞を活性化し、T細胞由来のIL-2,INF-γその他のサイトカインの産生を誘導する。コンカナバインAを投与したモデルでは、これらのサイトカインが肝臓や脾臓に蓄積し、炎症を引き起こす。
【実施例】
【0065】
MESが、コンカナバインA投与マウスモデルの脾臓及び肝臓における炎症性サイトカインの産生を抑制するかを検討した。BALB/cマウスを、2V/cm,10分間の条件でMES処置した。MES処置は、MPES(0.1ms;55pps)(Duty比=0.55%)及びMDES(duration:∞)(Duty比=100%)の条件で行った。その後、5mg/kgの量にてコンカナバインA(ConA)を静脈内投与し、4時間後に、マウスの脾臓から全RNAを抽出し、定量的RT-PCR法によりIL-2,及びIFN-γの発現量を比較した。ConAの対照としてPBSを用いた。結果を図13に示す。その結果、上記の条件のMESでは、サイトカインの産生を抑制しなかった。
【実施例】
【0066】
実施例7:コンカナバインA誘導の炎症マウスモデルを用いた試験
Duty比が特定に数値以上のMPESが、コンカナバインA投与マウスモデルの脾臓及び肝臓における炎症性サイトカインの産生を抑制するかを検討した。BALB/cマウスを、4V/cm,20分間の条件でMPES(duration:0.1 ms;5500 pps)(Duty比=55%)処置した。その後、1mg/kgの量にてコンカナバインA(ConA)を静脈内投与し、マウスを再び同条件でMES処置した。MES処置の4時間後に、マウスの脾臓と肝臓から全RNAを抽出し、定量的RT-PCR法によりIL-2,IL-6,IFN-γ,及びTNF-αの発現量を比較した。ConAの対照としてPBSを用いた。結果を図14に示す(上段:脾臓;下段:肝臓)。その結果、MESはサイトカインの産生を抑制した。また、ConA投与の8時間後の脾臓及び肝臓の組織切片のH&E染色を行ったところ、MESは炎症の改善を示した(データ示さず)。これにより、MESは、ConA誘導の炎症を改善した。
【実施例】
【0067】
次いで、コンカナバインA誘導の炎症マウスモデルを用いて、シクロスポリンA(CsA)とMESのサイトカイン産生抑制効果を比較した。MES処置群は、上記と同様に、ConAの投与の前後にMES処置を行った。CsAは、比較するMES処置群のMES処理の15時間前と40分前に、3.25mg/kgの量にて投与した。CsA及びConAの対照として、それぞれ、KolliphorとPBSを用いた。ConA投与の4時間後に、マウスの脾臓から全RNAを抽出し、定量的RT-PCR法によりIL-2,IL-6,IFN-γ,及びTNF-αの発現量を比較した。結果を図15に示す。その結果、MESは、CsAと同様の抑制効果を示した。
【実施例】
【0068】
実施例8:LPS誘導性炎症性サイトカイン産生に対するMESの効果
BV2細胞を35 mm dishに5×106 cells/dishの割合で播種し、6V,37℃,10分間の条件で、MES処置を行った。MES処置は、MPES(6V、0.1 ms、55 pps又は5500 pps)(それぞれ、Duty比=0.55%又は55%)で行った。MES処置30分後に、LPS(100 ng/ml)で処理をし、37℃で4時間培養後、全RNAを回収し、定量的RT-PCR法によりIL-1β及びIL-6のmRNAの発現量を比較した。結果を図16に示す。MES5500 ppsは、炎症性サイトカイン産生を有意に抑制した。
【実施例】
【0069】
上記の詳細な記載は、本発明の目的及び対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、免疫作用に基づく炎症を抑制する新たな手段として有用である。本発明はまた、生体に安全である。本発明はさらには、既存の免疫抑制薬との併用が可能であり、既存の免疫抑制薬の使用量を少なくし、副作用の発生を抑制することができるので、既存の免疫抑制薬との併用療法として有用である。
【符号の説明】
【0071】
101・・治療装置
201・・操作部
201・・電流制御部
203・・表示部
204・・パッド
205・・電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15