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明細書 :フェナセン化合物、フェナセン化合物の製造方法及び有機発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年8月2日(2018.8.2)
発明の名称または考案の名称 フェナセン化合物、フェナセン化合物の製造方法及び有機発光素子
国際特許分類 C07F   5/02        (2006.01)
C07C  49/788       (2006.01)
C07C  49/92        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI C07F 5/02 CSPZ
C07C 49/788
C07C 49/92
H05B 33/14 B
H05B 33/22 B
H05B 33/22 D
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 39
出願番号 特願2017-545458 (P2017-545458)
国際出願番号 PCT/JP2016/080392
国際公開番号 WO2017/065219
国際出願日 平成28年10月13日(2016.10.13)
国際公開日 平成29年4月20日(2017.4.20)
優先権出願番号 2015205045
優先日 平成27年10月16日(2015.10.16)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA
発明者または考案者 【氏名】山路 稔
出願人 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査請求 未請求
テーマコード 3K107
4H006
4H048
Fターム 3K107AA01
3K107CC04
3K107CC23
3K107DD59
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD78
4H006AA01
4H006AB82
4H006AB90
4H048AA01
4H048AA02
4H048AB92
4H048AC44
4H048AD17
4H048BB11
4H048BC10
4H048BE56
4H048VA77
4H048VB10
要約 下記一般式(1)で表されるフェナセン化合物。一般式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は一般式(2)で表される基を表し、R、R及びRのいずれか1つは一般式(2)で表される基である。RとR10とは、R及びR10が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。一般式(2)中、*は前記一般式(1)で表される化合物との結合位置を示す。Xはハロゲン基を示し、Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。
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特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフェナセン化合物。
【化1】
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(一般式(1)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(2)で表される基を表し、R、R及びRのいずれか1つは下記一般式(2)で表される基である。RとR10とは、R及びR10が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【化2】
JP2017065219A1_000031t.gif

(一般式(2)中、*は前記一般式(1)で表される化合物との結合位置を示す。Xはハロゲン基を示し、Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、Rが前記一般式(2)で表される基である請求項1に記載のフェナセン化合物。
【請求項3】
下記一般式(3)で表される化合物のカルボニル基を保護化剤よって保護する保護化工程と、
前記保護化工程によって得られた化合物を、光縮環反応によって縮環したベンゼン環を形成する光縮環工程と、
前記光縮環工程によって得られた化合物を、脱保護化剤によって脱保護することにより下記一般式(4)で表されるフェナセン化合物を合成する脱保護化工程と、
を含むフェナセン化合物の製造方法。
【化3】
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(一般式(3)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数1~12のアシル基を表し、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、及びR22の少なくとも1つは、炭素数1~12のアシル基を表す。R21とR22とは、R21及びR22が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【化4】
JP2017065219A1_000033t.gif

(一般式(4)中、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数1~12のアシル基を表し、R23、R24、R25、R26、R27、R28、R29、R30、R31及びR32の少なくとも1つは、炭素数1~12のアシル基を表す。R31とR32とは、R31及びR32が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【請求項4】
前記保護化剤は、ジオール化合物である請求項3に記載のフェナセン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記脱保護化剤は、抱水クロラール及びペルオキシ一硫酸カリウムから選ばれるいずれか1つである請求項3又は請求項4に記載のフェナセン化合物の製造方法。
【請求項6】
更に、前記脱保護化工程によって得られた化合物とカルボニル基含有化合物とを反応させることにより下記一般式(5)で表されるβ-ジケトン誘導体を合成するβ-ジケトン誘導体合成工程を含む請求項3~請求項5のいずれか一項に記載のフェナセン化合物の製造方法。
【化5】
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(一般式(5)中、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は下記一般式(6)で表される基であり、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41及びR42の少なくとも1つは、下記一般式(6)で表される基を表す。R41とR42とは、R41及びR42が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【化6】
JP2017065219A1_000035t.gif

(一般式(6)中、*は前記一般式(5)で表される化合物との結合位置を示す。Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【請求項7】
更に、前記β-ジケトン誘導体合成工程によって得られた化合物とハロゲン化ほう素とを反応させることにより、下記一般式(7)で表される錯体を形成する錯体形成工程を含む請求項6に記載のフェナセン化合物の製造方法。
【化7】
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(一般式(7)中、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は下記一般式(2)で表される基であり、R43、R44、R45、R46、R47、R48、R49、R50、R51及びR52の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される基を表す。R51とR52とは、R51及びR52が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【化8】
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(一般式(2)中、*は前記一般式(7)で表される化合物との結合位置を示す。Xはハロゲン基を示し、Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【請求項8】
下記一般式(8)で表されるフェナセン化合物。
【化9】
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(一般式(8)中、Yはフェニル基、フリル基又はチエニル基を表す。Zは縮環した0個以上のベンゼン環であることを示す。)
【請求項9】
下記式(1-1)で表されるフェナセン化合物。
【化10】
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【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載のフェナセン化合物を含む有機発光素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フェナセン化合物、フェナセン化合物の製造方法及び有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子発光デバイスの発光層として、蛍光発光が可能な有機芳香族化合物の開発が世界的にすすめられている。これらの有機芳香族化合物においては、高効率に蛍光発光することが必要不可欠であると同時に、高電圧、酸素、光及び水分等の外部環境に対する堅牢性も求められる。
【0003】
高い蛍光効率を有する有機芳香族化合物としては、ナフタレン骨格やアントラセン骨格を有するボロン-ジケトン-ジアリール錯体が知られている(例えば、Inorg.Chem.2013,52,3597-3610(以下「文献1」ともいう)参照)。
また、高効率、高輝度かつ高耐久性である有機電子発光(以下、ELという)素子に用いられる化合物としては、蛍光発光基を有するフェナントレン誘導体が報告されている(例えば、特開2008-308467号公報参照)。
さらに、フェナントレンについては、1,2-ジアリルエテンを光縮環反応させることによって、効率的に合成できることが報告されている(例えば、Chem.Lett.2014,43,994-996(以下「文献2」ともいう)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発光材料としての使用性を考えた場合、前記文献1のボロン-ジケトン-ジアリール錯体のアリール部分を構成するナフタレンやアントラセンは堅牢性が低いことが知られており、特に発光効率にとって重要な物性の一つである蛍光収率が環境に大きく依存するという課題を有する。一方、特開2008-308467号公報に示されるように、ベンゼン環がジグザグに縮環した構造を有するフェナセンは、ベンゼン環が直線状に配列した構造を有するアセンに比べて、外部因子に対する堅牢性が高いことが知られている。従って、ボロン-ジアリール-ジケトン錯体を形成するフェナセン化合物が上記課題を解決しうる化合物として期待でき、同時にそれらの効率的な合成方法が必要になるものと考えられる。すなわち、ボロン-ジアリールジケトン錯体を形成するために必要な機能性基(すなわち、ボロン-アリール-ジケトン基)をフェナセン化合物に効率的に導入する方法が必要であり、このためには、上記の機能性基に変換可能な官能基を有するフェナセン化合物も必要であるものと考えられる。
【0005】
しかし、特開2008-308467号公報には、機能性基を有するフェナセン化合物の合成方法及び機能性基に変換可能な官能基を有するフェナセン化合物の合成方法は何ら記載されていない。さらに、前記文献2は、官能基を有しないフェナセン化合物を効率的に合成する上では有用な知見ではあるものの、官能基を有するフェナセン化合物の合成方法については記載されていない。そのため、上記のボロン-アリール-ジケトン基のような機能性基を有したフェナセン化合物が合成できるか否かは不明である。
【0006】
このように、ボロン-アリール-ジケトン基を有するフェナセン化合物及び該フェナセン化合物の効率的な製造方法並びにボロン-アリール-ジケトン基に変換可能な官能基を有するフェナセン化合物の効率的な製造方法の提供が望まれていた。
【0007】
そこで、本開示では、環境に影響されにくくかつ高い蛍光収率を有するフェナセン化合物及び該フェナセン化合物の効率的な製造方法並びに有機発光素子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための具体的手段には、以下の形態が含まれる。
<1>下記一般式(1)で表されるフェナセン化合物である。
【0009】
【化1】
JP2017065219A1_000003t.gif

【0010】
(一般式(1)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(2)で表される基を表し、R、R及びRのいずれか1つは下記一般式(2)で表される基である。RとR10とは、R及びR10が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【0011】
【化2】
JP2017065219A1_000004t.gif

【0012】
(一般式(2)中、*は前記一般式(1)で表される化合物との結合位置を示す。Xはハロゲン基を示し、Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0013】
<2>前記一般式(1)中、Rが前記一般式(2)で表される基である<1>に記載のフェナセン化合物である。
<3>下記一般式(3)で表される化合物のカルボニル基を保護化剤よって保護する保護化工程と、前記保護化工程によって得られた化合物を、光縮環反応によって縮環したベンゼン環を形成する光縮環工程と、前記光縮環工程によって得られた化合物を、脱保護化剤によって脱保護することにより下記一般式(4)で表されるフェナセン化合物を合成する脱保護化工程と、を含むフェナセン化合物の製造方法である。
【0014】
【化3】
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【0015】
(一般式(3)中、R11~R22は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数1~12のアシル基を表し、R11~R22の少なくとも1つは、炭素数1~12のアシル基を表す。R21とR22とは、R21及びR22が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【0016】
【化4】
JP2017065219A1_000006t.gif

【0017】
(一般式(4)中、R23~R32は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数1~12のアシル基を表し、R23~R32の少なくとも1つは、炭素数1~12のアシル基を表す。R31とR32とは、R31及びR32が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【0018】
<4>前記保護化剤は、ジオール化合物である<3>に記載のフェナセン化合物の製造方法である。
<5>前記脱保護材は、抱水クロラール、及びペルオキシ一硫酸カリウムから選ばれるいずれか1つである<3>又は<4>に記載のフェナセン化合物の製造方法である。
<6>更に、前記脱保護化工程によって得られた化合物とカルボニル基含有化合物とを反応させることにより下記一般式(5)で表されるβ-ジケトン誘導体を合成するβ-ジケトン誘導体合成工程を含む<3>~<5>のいずれか一つに記載のフェナセン化合物の製造方法である。
【0019】
【化5】
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【0020】
(一般式(5)中、R33~R42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は下記一般式(6)で表される基であり、R33~R42の少なくとも1つは、下記一般式(6)で表される基を表す。R41とR42とは、R41及びR42が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【0021】
【化6】
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【0022】
(一般式(6)中、*は前記一般式(5)で表される化合物との結合位置を示す。Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0023】
<7>更に、前記β-ジケトン誘導体合成工程によって得られた化合物とハロゲン化ほう素とを反応させることにより、下記一般式(7)で表される錯体を形成する錯体形成工程を含む<6>に記載のフェナセン化合物の製造方法である。
【0024】
【化7】
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【0025】
(一般式(7)中、R43~R52は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は下記一般式(2)で表される基であり、R43~R52の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される基を表す。R51とR52とは、R51及びR52が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。)
【0026】
【化8】
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【0027】
(一般式(2)中、*は前記一般式(7)で表される化合物との結合位置を示す。Xはハロゲン基を示し、Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。)
【0028】
<8>下記一般式(8)で表されるフェナセン化合物である。
【0029】
【化9】
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【0030】
(一般式(8)中、Yはフェニル基、フリル基又はチエニル基を表す。Zは縮環した0個以上のベンゼン環であることを示す。)
【0031】
<9>下記式(1-1)で表されるフェナセン化合物である。
【0032】
【化10】
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【0033】
<10><1>又は<2>に記載のフェナセン化合物を含む有機発光素子である。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、環境に影響されにくくかつ高い蛍光収率を有するフェナセン化合物及び該フェナセン化合物の効率的な製造方法並びに有機発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、各フッ化ボロン-ジアリール-ジケトン錯体の吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを示す図である。
【図2A】図2Aは、フッ化ボロン-アリール-ジケトン基を有する各フェナセン化合物の、クロロホルム中及びアセトニトリル中における蛍光の光物理特性を示す図である。
【図2B】図2Bは、フッ化ボロン-アリール-ジケトン基を有する各フェナセン化合物の、クロロホルム中及びアセトニトリル中における蛍光の光物理特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて示された用語について説明する。
数値範囲を表す「~」はその上限及び下限の数値を含む範囲を表す。

【0037】
「フェナセン化合物」とは、ベンゼン環が3個以上縮環した多環状の芳香族化合物であり、そのベンゼン環の縮環様式が、ジグザグ(zigzag)に縮環した化合物で、フェナントレン骨格を拡張した縮環様式の化合物群の総称である。例えば、[J.Amer.Chem.Soc.,119、2119(1997)、J.Org.Chem.,70、2509(2005)]を参考にすることができる。

【0038】
「ハロゲン化ボロン-アリール-ジケトン基」とは、前記一般式(2)で表される基を指し、前記一般式(6)で表される基をアリール-ジケトン基と称することがある。さらに、ハロゲン化ボロン-アリール-ジケトン基を有するフェナセン化合物やアセン化合物をボロン-ジアリール-ジケトン錯体と称することもある。
また、本明細書中、ハロゲン化ボロン-アリール-ジケトン基を有するフェナセン化合物を製造するために用いられる化合物、例えば、アリール-ジケトン基を有するフェナセン化合物(β-ジケトン誘導体とも称する)やアシル基を有するフェナセン化合物を、総称してフェナセン前駆体化合物と称することもある。また、本明細書中において、「ボロン-アリール-ジケトン錯体」、「ハロゲン化ボロン-アリール-ジケトン基」及び「アリール-ジケトン基」のアリールには、アリール基だけでなくヘテロアリール基を含むものとする。
また、本明細書中、「蛍光収率」は、蛍光量子収率と同じ意味である。

【0039】
≪フェナセン化合物≫
本発明の一実施形態に係るフェナセン化合物は、下記一般式(1)で表される。

【0040】
【化11】
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【0041】
一般式(1)中、R~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は下記一般式(2)で表される基を表し、R、R及びRのいずれか1つは下記一般式(2)で表される基である。RとR10とは、R及びR10が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。

【0042】
【化12】
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【0043】
一般式(2)中、*は前記一般式(1)で表される化合物との結合位置を示す。Xはハロゲン基を示し、Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。

【0044】
前記フェナセン化合物は、ボロン-ジアリール-ジケトン錯体であり、2つのアリール(すなわち、ジアリール)のうちの一つまたは二つがフェナセンである。これによって、蛍光における優れた光物理特性(例えば、蛍光収率、蛍光寿命及び速度定数)を有し、中でも、発光素子や電子材料等の使用時に重要な物性である蛍光収率を高い値で確保することができる。また、前記フェナセン化合物の特性が環境に影響されにくいために、該フェナセン化合物の化学的な安定性だけでなく、光、熱及び温度に対する安定性、すなわち化合物としての堅牢性を有するものと考えられる。
加えて、理由は不明であるが、前記フェナセン化合物においては、ハロゲン化ボロン-アリール-ジケトン基をフェナセンの特定の位置に配置することで、外部からの環境に影響されにくくかつ高い蛍光収率を有するようになる。

【0045】
なお、化合物の蛍光における光物理特性が環境に影響されやすいか否かは、例えば、化合物を性質の異なる溶剤に溶解させた溶液について、それぞれの溶液の蛍光における各物性を測定し、性質の異なる溶媒での物性値の違いを、他の化合物における物性値の違いと比較することで確かめることができる。ここで、溶剤としては、例えば、非極性溶剤と極性溶剤の組合せ、非プロトン性溶剤とプロトン性溶剤の組合せ、などを挙げることができ、非極性溶剤と極性溶剤の組合せが好ましい。
非極性溶剤としては、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ヘキサン及びトルエン等を挙げることができ、極性溶剤としては、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、炭素数1~4のアルコール、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルスルホオキシド(DMSO)が挙げられる。

【0046】
一般式(1)中、縮環とは、6員環(すなわち、ベンゼン環)をさす。すなわち、一般式(1)においては、縮環を形成する場合のベンゼン環の数は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されない。しかし、フェナセン化合物の合成操作の容易さという観点から、縮環される環の数は0以上13以下であることが好ましく、0以上8以下であることがさらに好ましい。特に好ましくは、環の数が0以上6以下である。より好ましくは環の数が0以上1以下であり、最も好ましくは環の数が0である。

【0047】
また、一般式(1)中、R~R10は、R、R及びRのいずれか1つが前記一般式(2)で表される基(すなわち、ハロゲン化ボロン-アリール-ジケトン基)であれば、他は水素原子であっても前記一般式(2)で表される基を有していてもよい。また、R、R及びRの中でも、環境に影響されにくく高い蛍光収率を示すという観点から、Rが前記一般式(2)で表される基であることが好ましい。さらに、R~R10のうち、ハロゲン化ボロン-アリール-ジケトン基を有する数は適宜調整されるが、合成操作の容易さから、4以下が好ましく、2以下がさらに好ましく、1が特に好ましい。

【0048】
一般式(2)中、Xはハロゲン基であれば特に限定されないが、環境に影響されにくく高い蛍光収率を有するという点から、フッ素基であることが好ましい。

【0049】
また、Yは、アリール基又はヘテロアリール基であれば特に限定されないが、環境に影響されにくく高い蛍光収率を有するという点から、アリール基又はヘテロアリール基は、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、フェナントリル基又はピセニル基であることが好ましい。中でも、フェニル基、フリル基又はチエニル基が特に好ましい。

【0050】
前記フェナセン化合物の蛍光の光物理特性、すなわち蛍光収率(Φ)、蛍光寿命(τ)及び速度定数は、公知の測定方法によって測定することができる。例えば、蛍光収率は、絶対PL光量子収率測定装置(C9920-02、浜松フォトニクス(株)製)を用い、前記フェナセン化合物をクロロホルム等の有機溶剤に溶解させた試料として測定することができる。
蛍光寿命及び速度定数は、小型蛍光寿命測定装置(C11367-01、浜松フォトニクス(株)製)を用いて、クロロホルム中及びアセトニトリル中における上記化合物の蛍光寿命(τ)を測定し、上記で得られた蛍光量子収率(Φ)と蛍光寿命(τ)との関係から、放射過程における速度定数(k)を算出することができる。

【0051】
前記フェナセン化合物における最大吸収波長は、特に限定されないが、有機ELとしての使用性の観点から、280nm~600nmであることが好ましい。また、最大蛍光波長も適宜設定されることが好ましいが、環境に影響されにくくし、かつ蛍光収率をより高めるという観点から、300nm~500nmであることが好ましい。

【0052】
また、一般式(1)の具体例として、下記に列挙される化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。

【0053】
【化13】
JP2017065219A1_000015t.gif

【0054】
≪フェナセン化合物の製造方法≫
本発明の一実施形態に係るフェナセン化合物の製造方法は、下記一般式(3)表される化合物(以下、1,2-ジアリルエテン化合物又はアシル化された1,2-ジアリルエテン化合物ともいう)のカルボニル基を保護化剤よって保護する保護化工程と、前記保護化工程によって得られた化合物を、光縮環反応によって新たに縮環した6員環を形成する光縮環工程と、前記光縮環工程によって得られた化合物を、脱保護化剤によって脱保護することにより下記一般式(4)で表されるフェナセン化合物を合成する脱保護化工程と、を含む。

【0055】
【化14】
JP2017065219A1_000016t.gif

【0056】
一般式(3)中、R11~R22は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数1~12のアシル基を表し、R11~R22の少なくとも1つは、炭素数1~12のアシル基を表す。R21とR22とは、R21及びR22が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。さらに、R13とR14についても同様に縮環を形成していてもよい。
また、一般式(3)中の波線は、一般式(3)で表される化合物には、下記一般式(3a)及び一般式(3b)のように、2つの異性体が存在することを示す。
なお、一般式(3a)及び一般式(3b)中のR11~R22は、それぞれ一般式(3)中のR11~R22と同義である。

【0057】
【化15】
JP2017065219A1_000017t.gif

【0058】
一般式(3)中、R11~R22の少なくとも1つが炭素数1~12のアシル基を有していれば、他は水素原子、炭素数6以下のアルキル基及び炭素数1~12のアシル基のいずれであってもよいが、R11~R22のうち、炭素数1~12のアシル基を有する数は、合成の容易さから4以下であることが好ましく、さらに2以下であることが好ましい。

【0059】
また、炭素数1~12のアシル基のカルボニル基以外の部分、すなわち-C(=O)-R100で示される置換基R100は特に限定されず、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基であってよい。また、これらの置換基の水素がハロゲン及びニトロ基で置換されていてもよい。
炭素数1~12のアシル基としての好ましい炭素数及び種類は、合成操作の容易さから、炭素数2~6が好ましく、さらに炭素数2が特に好ましい。

【0060】
上記のアシル基のR100としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル、ベンジル基、フェネチル基、o-クロロフェニル基、m-クロロフェニル基、p-クロロフェニル基、o-ニトロフェニル基、p-ニトロフェニル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基及びt-ブチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。

【0061】
また炭素数6以下のアルキル基は、炭素数6以下であれば、直鎖構造であっても分岐した構造であってもよい。炭素数6以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基及びn-ヘキシル基等が挙げられ、中でも、メチル基及びエチル基が特に好ましい。
また、一般式(3)中の縮環について、縮環を形成する場合のベンゼン環の数の好ましい範囲は、上記の一般式(1)の縮環と同様である。

【0062】
フェナセン化合物の製造方法としては、まず保護化工程において、芳香環上にアシル基を有し、かつ渡環構造を合成する1,2-ジアリルエテン化合物のアシル基を保護化剤によって保護した化合物を合成する。次に、光縮環工程において、光縮環反応によって、前記保護化した化合物に新たに縮環を形成させ、さらに脱保護化工程において、保護基を脱保護化剤によって脱保護することにより、アシル基を有するフェナセン前駆体を合成する工程を含むものである。以下、各工程について説明する。

【0063】
(保護化工程)
保護化工程では、前記一般式(3)で表される化合物のアシル基を、保護化剤によって、保護する。ここで、保護するとは、前記一般式(3)で表される化合物のアシル基を、保護化剤によって、後述する脱保護化剤によって脱保護が可能な基に変換することを意味する。保護化剤としては、ジオール化合物、ジチオール化合物及びジシリルエーテル化合物が挙げられる。これらの中でも、合成操作の容易さ及び収率の優位さから、ジオール化合物を保護化剤として用いることが好ましい。ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール及び1,2-ドデカンジオール等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールがさらに好ましい。

【0064】
上記の保護化剤による前記アシル基中のカルボニル基の保護は、公知の一般的な方法を用いることができる。例えば、保護化剤がジオールやジチオールの場合には、保護化触媒としては、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、三フッ化ホウ素およびこれらの組合せからなる群から選択され得るが、これらに限定されない。

【0065】
また、反応に用いる溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル及び酢酸エチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、前記保護化工程において、保護化を行う温度、時間、基質、保護化剤あるいは触媒等の濃度といった条件は、用いる保護化剤の種類によって、適宜、調整されることが好ましい。

【0066】
<アシル化した1,2-ジアリルエテン化合物>
前記保護化工程に用いるアシル化した1,2-ジアリルエテン化合物の調製方法は特に限定されず、公知の一般的な合成方法によって調製してもよいし、市販のものを用いてもよい。ここで、アシル化した1,2-ジアリルエテン化合物とは、アシル基が芳香環を形成する炭素及びエテンを形成する炭素の少なくともいずれかに結合した1,2-ジアリルエテン化合物のことをさす。

【0067】
合成方法による調製方法としては、例えば、一般的なウィッティッヒ反応による方法や右田-小杉-スチレンカップリング法などを挙げることができる。一般的なウィッティッヒ反応としては、例えば、ブロモベンジルトリアリルホスホニウム塩とアセチルベンズアルデヒドとを反応させることによって、所望の位置にアシル基を有する1,2-ジアリルエテン化合物を得ることができる。また、右田-小杉-スティルカップリング法としては、例えば、ハロゲン化アレンとトランス-1,2-ビス(トリブチルスタニル)エテンとを用いる方法によっても、同様に1,2-ジアリルエテン化合物を得ることができる。

【0068】
(光縮環工程)
光縮環工程では、上記の保護化工程で得られた、保護化された1,2-ジアリルエテン化合物を、酸化剤存在下、光縮環反応によって新たな縮環したベンゼン環を形成させることで、保護化されたフェナセン前駆体化合物を合成する。新たな縮環したベンゼン環とは、前記保護化工程で得られた1,2-ジアリルエテン化合物を保護化した化合物においては、エテン基が結合する一方のアリル基の2位又は6位の炭素と、他方のエテン基が結合するアリル基の2位又は6位の炭素との結合によって形成されるベンゼン環をいう。
光縮環反応とは、酸化剤存在下、1,2-ジアリルエテン化合物に光を照射することで、1,2-ジアリルエテン化合物の2つのベンゼン環の間に新たな縮環したベンゼン環を形成する反応をいう。

【0069】
光の種類は、本工程における光縮環反応によって、前記フェナセン前駆体化合物を合成することができれば特に限定されないが、合成操作の容易さから、例えば紫外線及び可視光線が挙げられ、中でも紫外線が好ましい。紫外線領域としては、280nm~390nmが好ましく、さらに300nm~330nmが好ましい。
紫外線を発生させる光源の種類は特に限定されないが、例えば、水銀ランプやメタルハライドランプなどが挙げられる。
酸化剤としては、ヨウ素、酸素及び塩化鉄が挙げられ、中でも合成操作の容易さからヨウ素が好ましい。
光縮環工程に用いる光縮環反応としては特に限定されないが、合成操作の容易さの観点から、「マロリー光環化反応」が好ましく挙げられる。また、前記マロリー光環化反応を行う場合には、山路らの文献[Chem.Lett.(2014),43,994-996]に記載されたフローリアクターを用いることで、効率よく前記フェナセン前駆体化合物を合成することができる。

【0070】
前記フローリアクターを用いて、保護化されたフェナセン前駆体化合物を合成する場合の条件、すなわち、原料の濃度、酸化剤の濃度、原料の供給速度、溶解させる溶媒の種類、用いる光源の種類や設定する波長等は上記文献に記載の条件を参考に、適宜調整されることが好ましい。

【0071】
(脱保護化工程)
脱保護化工程では、前記光縮環工程で得られた保護化されたフェナセン前駆体化合物の保護基を、脱保護化剤によって脱保護することにより、下記一般式(4)で表されるフェナセン前駆体を合成する。
【化16】
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【0072】
一般式(4)中、R23~R32は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は炭素数1~12のアシル基を表し、R23~R32の少なくとも1つは、炭素数1~12のアシル基を表す。R31とR32とは、R31及びR32が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。さらに、R25とR26についても同様に縮環を形成していてもよい。また、一般式(4)中の「縮環」について、縮環を形成する場合のベンゼン環の数の好ましい範囲は、上記の一般式(1)の縮環と同様である。また、R23~R32で表されるアルキル基及びアシル基は、一般式(3)のR11~R22で表されるアルキル基及びアシル基と同義であり、好ましい炭素数及び好ましい種類も前記一般式(3)のR11~R22で表されるアルキル基及びアシル基と同様である。また、R23~R32のうちの前記アシル基の好ましい数も、前記一般式(3)と同様である。

【0073】
脱保護化剤としては、保護基の種類に応じて適宜選択されることが好ましい。例えば、ジオール化合物を保護化剤として用いた場合には、脱保護化剤としては、例えば、抱水クロラール;ペルオキシ一硫酸カリウム;塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、及びパラトルエンスルホン酸等の酸によってpH1~4に調整した水溶液;固体酸;並びに陽イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの中でも、合成操作の容易さの観点から、抱水クロラール及びペルオキシ一硫酸カリウムが好ましい。脱保護の条件は、脱保護化剤の種類によって適宜調整されることが好ましい。

【0074】
また、抱水クロラール又はペルオキシ一硫酸カリウムを用いて脱保護する場合の溶媒の種類、温度及び脱保護化剤の前記フェナセン前駆体化合物に対する使用量は、適宜調整されることが好ましい。

【0075】
前記保護化工程に用いる保護化剤及び脱保護化工程に用いる脱保護化剤の組合せとしては、合成操作の容易さと、合成におけるより高い収率の観点から、保護化剤がエチレングリコール、1,2-プロパンジオール及び1,3-プロパンジオールから選択される少なくとも1種であり、脱保護化剤が抱水クロラールであることが好ましい。

【0076】
<1-アセチルフェナントレン>
以上の工程によって、例えば、以下の式(1-1)で表される化合物、すなわち1-アセチルフェナントレンが合成できる。

【0077】
【化17】
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【0078】
1-アセチルフェナントレンは、後述するβジケトン誘導体、すなわちアリール-ジケトン基を有するフェナセンの合成のために用いる化合物として有用である。

【0079】
(β-ジケトン誘導体合成工程)
前記フェナセン化合物の製造方法においては、更にβ-ジケトン誘導体合成工程を有していることが好ましい。β-ジケトン誘導体合成工程では、前記脱保護化工程によって得られたフェナセン前駆体化合物のアシル基を、カルボニル基含有化合物と反応させることにより、下記一般式(5)で表されるフェナセン前駆体化合物(β-ジケトン誘導体)をより効率的に合成することができるので有利である。

【0080】
【化18】
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【0081】
一般式(5)中、R33~R42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は下記一般式(6)で表される基であり、R33~R42の少なくとも1つは、下記一般式(6)で表される基を表す。R41とR42とは、R41及びR42が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。さらに、R35とR36についても同様に縮環を形成していてもよい。また、一般式(5)中の縮環を形成する場合のベンゼン環の数の好ましい範囲は、上記一般式(1)の縮環と同様である。また、R33~R42で表されるアルキル基及びアシル基は、一般式(3)のR11~R22で表されるアルキル基及びアシル基と同義であり、好ましい炭素数及び好ましい種類も前記一般式(3)のR11~R22で表されるアルキル基及びアシル基と同様である。

【0082】
【化19】
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【0083】
一般式(6)中、*は前記一般式(5)で表される化合物との結合位置を示す。Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。一般式(6)中のYは、前記一般式(2)のYと同義であり、好ましい置換基の種類も同様である。

【0084】
β-ジケトン誘導体合成工程中、カルボニル基含有化合物とは、アリール基を有するカルボニル化合物をさし、前記一般式(4)で表される化合物と反応させることによって、βジケトン基を有する化合物を合成することが可能な化合物である。カルボニル基含有化合物としては、アリール基を有するアルデヒド、アリール基を有するケトン及びアリール基を有するカルボン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、アリール基を有するカルボン酸エステルが好ましい。また、当該化合物(Ar-C(=O)-O-R)のRは特に限定されず、適宜調整されることが好ましい。また、アリール基(Ar)としては、前記一般式(2)中のYと同義であり、好ましい置換基の種類も同様である。

【0085】
また、上記脱保護化工程で用いられる反応は特に限定されないが、合成操作の容易さから、例えば、縮合反応として、一般的なアルドール縮合反応やクライゼン縮合反応などが挙げられ、特にクライゼン縮合反応が好ましい。これらの縮合反応を利用したβジケトン化合物の合成方法は公知であり、反応を行う場合の条件は適宜調整されることが好ましい。

【0086】
以上の工程によって、例えば、以下の一般式(8)で表されるβジケトン誘導体、すなわち、アリール部分がフェニル基、フリル基又はチエニル基であるフェナセン前駆体化合物を合成できる。

【0087】
【化20】
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【0088】
一般式(8)中、Yはフェニル基、フリル基又はチエニル基を表す。Zは縮環した0個以上のベンゼン環であることを示す。また、縮環を形成する場合のベンゼン環の数の好ましい範囲は、上記一般式(1)の縮環と同様である。

【0089】
上記一般式(8)で表されるフェナセン前駆体化合物は、前記一般式(1)で表されるフェナセン化合物の合成のために用いる化合物として有用である。

【0090】
(錯体形成工程)
前記フェナセン化合物の製造方法においては、更に錯体形成工程を有していることが好ましい。錯体形成工程では、前記β-ジケトン誘導体合成工程によって得られた一般式(5)で表される化合物とハロゲン化ほう素とを反応させることにより、下記一般式(7)で表される錯体をより効率的に合成することができるので有利である。

【0091】
【化21】
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【0092】
一般式(7)中、R43~R52は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基又は下記一般式(2)で表される基であり、R43~R52の少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される基を表す。R51とR52とは、R51及びR52が結合する炭素原子とともに、互いに結合して縮環を形成していてもよい。さらに、R45とR46についても同様に縮環を形成していてもよい。また、一般式(7)中の縮環について、縮環を形成する場合のベンゼン環の数の好ましい範囲は、上記の一般式(1)の縮環と同様である。また、R43~R52で表されるアルキル基は、一般式(3)のR11~R22で表されるアルキル基と同義であり、好ましい炭素数及び種類も前記一般式(3)のR11~R22で表されるアルキル基と同様である。

【0093】
また、R43~R52のうち、下記一般式(2)で表される基を有する数は適宜調整されるが、合成の容易さから、4以下が好ましく、2以下がさらに好ましい。

【0094】
【化22】
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【0095】
一般式(2)中、*は前記一般式(7)で表される化合物との結合位置を示す。Xはハロゲン基を示し、Yはアリール基又はヘテロアリール基を表す。

【0096】
一般式(2)中、Xはハロゲン基であれば特に限定されないが、環境に影響されにくく高い蛍光収率を有するという点から、フッ素基であることが好ましい。

【0097】
また、Yは、アリール基又はヘテロアリール基であれば特に限定されないが、環境に影響されにくく高い蛍光収率を有するという点から、アリール基又はヘテロアリール基は、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、フェナントリル基又はピセニル基であることが好ましい。中でも、フェニル基、フリル基又はチエニル基が特に好ましい。

【0098】
一般式(7)で表されるフェナセン化合物は、前記β-ジケトン誘導体合成工程によって得られた一般式(5)で表される化合物から、例えば、Sakaiら[Tetrahedron Letters(2012),53,4138-4141]を参考に合成することができる。

【0099】
≪有機発光素子≫
前記フェナセン化合物及び前記フェナセン化合物の製造方法によって得られたフェナセン化合物は、環境に影響されにくいために堅牢性を有するものと考えられ、かつ高い発光収率を有することから、広い分野への応用が期待できる。具体的には、例えば、二光子吸収材料、共役ポリマー材料、半導体材料、フォトクロミック材料、近赤外検出デバイス、酸素センサー及び有機発光素子等への応用が期待できる。有機発光素子としては、有機発光素子の電荷輸送層、発光層の構成材料、好ましくは発光層の構成材料として用いることができる。これにより、高い発光効率を有し、かつ高電圧、酸素、光、水分等の外部環境に対して堅牢なデバイスとして期待できる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、収率の「%」は、原料が理論上、所望の生成物にすべて変換された場合に対する実際に得られた生成物の量の比率(質量基準)である。
≪フェナセン化合物の調製≫
(試薬及び化合物の同定方法)
フェナセン化合物の調製に試薬は、すべて市販のものを用いた。また、合成した生成物については、薄層クロマトグラフィー及びNMR測定によって確認した。薄層クロマトグラフィーはミリポア社製のTLCシリカゲル60F254(製品番号:1.05715.0001)を用いUV検出器にて確認した。NMR測定においては日本電子社製のECS400およびECS600を用いた。
【実施例】
【0101】
(光反応装置)
光縮環工程に用いる光反応装置は、上記非特許文献2に記載の反応装置(すなわち、マイクロリアクター)を用いた。条件を以下に示す。
<条件>
光源:中圧水銀(Hg)燈
波長:314nm
流速:1ml/min~3ml/min
温度:20℃
溶媒:シクロヘキサン
【実施例】
【0102】
<化合物A-1の合成>
フッ化ボロン-アリル-ジケトン基を有するフェナセン化合物(化合物A-1)の合成スキームにおける一例の概略を下記に示す。
【実施例】
【0103】
【化23】
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【実施例】
【0104】
<化合物1の合成>
α-ブロモベンジルトリアリルホスホニウム塩2.5g(5.77mmol)、2-アセチルベンズアルデヒド780mg(5.25 mmol)を、クロロホルム60mlに加え、撹拌しながら50質量%のKOH水溶液を30ml滴下した。窒素雰囲気下、室温で1.5 時間反応させクロロホルムで抽出し、飽和食塩水で2回洗浄して溶媒を留去した。ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)を展開溶媒として用いたTLCでRf値0.37付近に新たなスポットが観測された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、913mgの化合物1が収率76%で得られた。
【実施例】
【0105】
<化合物2の合成(保護化工程)>
1.3gの化合物1(5.85mmol)、エチレングリコール1当量以上、p-トルエンスルホン酸0.77g(4.0mmol)、をベンゼン200mlに加え、ディーン・スターク装置を用いて85℃で48時間還流した。水と飽和食塩水で1回ずつ洗浄して溶媒を留去した。ヘキサン:酢酸エチル(3:1、v/v)を展開溶媒として用いたTLCで、Rf値0.45付近に新たなスポットが観測された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(3:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、1.42gの化合物2が収率91%で得られた。
【実施例】
【0106】
<化合物3の合成(光縮環工程)>
600mgの化合物2(2.26mmol)を1000mlのシクロヘキサンに溶解させ、ヨウ素(I)を2,3粒加えて、マイクロリアクターに投入し、上記の条件にて反応させた。反応終了後に得られた反応混合物を、チオ硫酸ナトリウム水溶液で2回、飽和食塩水で2回洗浄し溶媒を留去した。ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)を用いたTLCでRf=0.32付近に新たなスポットが観測された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、500mgの生成物が得られた。NMR測定によって得られた下記の結果により、化合物3が収率83%で得られたことを確認した。
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) δ:8.75-8.71 (m, 3H), 8.01 (d, 1H, J = 7.33), 7.95-7.92 (m, 1H), 7.85 (d, 1H, J = 9.39), 7.69-7.63 (m, 3H), 4.14-4.13 (m,2H), 3.85-3.83 (m, 2H),2.04 (s, 3H).
【実施例】
【0107】
<化合物4の合成(脱保護化工程)>
1.0gの化合物3(3.78mmol)及びClCCH(OH)(抱水クロラール)3.8g(22.7mmol)をn-ヘキサン6ml、ジクロロメタン0.5mlの混合溶媒に加え、窒素雰囲気下、室温で2時間反応させた。ジクロロメタンで抽出し、有機層を水で2回、飽和食塩水で2回洗浄し、さらに溶媒を除去することで600mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ:8.88 (brd, 1H, J = 8.5 Hz), 8.69 (d, 1H, J = 8.1 Hz), 8.51 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 7.96 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.86 (d, 2H, J = 9.2 Hz), 7.71-7.66 (m, 2H), 7.64 (ddd, 1H, 8.1, 7.5, 1.0 Hz).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ:202.9, 137.1, 131.8, 131.2, 130.1, 129.6, 129.1, 128.7, 128.0, 127.3, 127.0, 126.7, 125.3, 123.8, 122.9, 30.6.
以上の測定結果によって、化合物4である1-アセチルフェナントレン(1-AcPhe)が収率72%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0108】
(化合物5の合成(β-ジケトン誘導体合成工程))
550mgの1-AcPhe(2.5 mmol)、水素化ナトリウム(NaH)700mg(29mmol)を脱水THF25mlに加え、室温で5分間撹拌した。反応溶液に安息香酸メチル0.40ml(3.0mmol)を加えて5時間還流した。その後、塩化アンモニウム水溶液を滴下した。酢酸エチルで抽出し、塩化アンモニウム水溶液で2回、飽和食塩水で2回洗浄して溶媒を留去した。ヘキサン:酢酸エチル(9:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCでRf値0.33付近に新たなスポットが確認された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、390mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ:16.80 (brs, 1H), 8.85 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.71 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.38 (d, 1H, J = 9.1 Hz), 7.99 (d, 2H, J = 7.6 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.88 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 7.83 (d, 1H, J = 9.1 Hz), 7.72-7.66 (two triplets overlapped, 2H), 7.63 (t, 1H, J = 7.3 Hz), 7.56 (t, 1H, J = 7.6 Hz), 7.48 (t, 2H, J = 7.6 Hz), 6.72 (s, 1H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ:191.0, 184.6, 136.0, 135.1, 132.8, 131.9, 131.0, 130.2, 129.2, 128.9, 128.7, 128.4, 127.4, 127.2, 127.1, 125.9, 125.8, 123.8, 123.0, 98.8.
以上の測定結果によって、フェナントレンの1位にフェニル-ジケトン基を有するフェナセン前駆体化合物(化合物5)が収率48%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0109】
(化合物A-1の合成(錯体形成工程))
240mgの化合物5(0.74mmol)、BF/EtO(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体)0.3ml(2.2mmol)をベンゼン7mlに加え、1時間還流した。反応終了後、析出した固体を吸引ろ過した。ヘキサン:酢酸エチル(3:1、v/v)を展開溶媒として用いたTLCでRf値0.20付近に新たなスポットが観測された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(3:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、130mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ:8.97 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 8.70 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 8.38 (d, 1H, J = 9.3 Hz), 8.17 (m, 2H), 8.04 (dd, 1H, J = 7.3, 1.0 Hz), 7.95 (dd, 1H, J = 7.8, 1.0 Hz), 7.91 (d, 1H, J = 9.3 Hz), 7.77-7.68 (m, 4H), 7.57 (m, 2H), 7.11 (s, 1H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ:187.8, 183.3, 135.7, 132.0, 131.8, 131.4, 130.0, 129.9, 129.8, 129.4, 129.34, 129.29, 128.9, 128.6, 127.7, 127.5, 125.7, 123.04, 122.95, 99.0.
以上の測定結果によって、化合物A-1が収率47%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0110】
<化合物A-2の合成>
<3-フェニル-ジケトンを有するフェナントレン(3-PheDKPh)の合成>
原料である3-アセチルフェナントレン(アルドリッチ社製)507mg(2.3mmol)及び水素化ナトリウム(NaH)700mg(29 mmol)を脱水したTHF20mlに加え、室温で5分間撹拌した。その後安息香酸メチル0.34ml(2.5mmol)を加えて5時間、撹拌しながら、66℃で還流した後、塩化アンモニウム水溶液100mlを滴下した。生成物に酢酸エチルを加えた溶液を、塩化アンモニウム水溶液で2回洗浄した後、飽和食塩水でさらに2回洗浄し、洗浄後の溶液を減圧濃縮した。濃縮した溶液について、ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)を展開溶媒として用いたTLCを行い、Rf値0.32付近に新たなスポットが確認された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、444mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3) δ:17.1 (s, 1H), 8.83 (d, 2H J = 8.3 Hz), 8.13 (dd, 1H, J= 8.2, 1.5 Hz), 8.08-8.05 (m, 2H), 7.97 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 7.93 (brd, 1H, J = 7.9 Hz), 7.85 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 7.78 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 7.74 (ddd, 1H, J = 8.3, 7.1, 1.3 Hz), 7.65 (ddd, 1H, J = 7.9, 7.1, 1.3 Hz), 7.61-7.56 (m, 1H), 7.57-7.51 (m, 2H), 7.07 (s, 1H).
13C NMR (150 MHz, CDCl3) δ:186.0, 185.8, 135.8, 134.8, 133.4, 132.7, 132.4, 130.7, 130.2, 129.6, 129.1, 129.0, 128.9 (overlapped), 127.40, 127.35, 126.5, 124.5, 123.0, 122.7, 93.7.
以上の測定結果によって、フェナントレンの3位にフェニル-ジケトン基を有するフェナセン前駆体化合物(3-PheDKPh)が収率60%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0111】
<化合物A-2の合成>
324mgの3-PheDKPh(1.0 mmol)、0.41mlのBF/EtO(3.0mmol)をベンゼン10mlに加え、1時間還流した。反応終了後、析出した固体を吸引ろ過した。ヘキサン:酢酸エチル(3:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCでRf値0.26付近に、反応後の溶液に新たなスポットが観測された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(3:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、180mgの生成物が得られた。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ:9.80 (d, 1H, J = 1.2 Hz), 9.21 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.51-8.48 (m, 3H). 8.30 (s, 1H), 8.25 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 8.12 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 8.10 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 8.00 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.90-7.84 (two trip-lets overlapped, 2H), 7.78 (t, 1H, J = 7.7 Hz), 7.34, t, 2H, J = 7.7 Hz).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6) δ:182.5, 182.3, 136.3, 135.9, 131.9, 131.5, 131.4, 130.0, 129.8, 129.6, 129.50, 129.47, 129.27, 129.0, 127.9, 126.3, 125.9, 125.5, 123.7, 95.0.
以上の測定結果によって、化合物A-2が収率48%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0112】
<化合物A-3の合成>
<3-PheDKFの合成>
3-アセチルフェナントレン 500 mg(2.3 mmol)、水素化ナトリウム(NaH)700mg(29mmol)を脱水THF25mlに加え、室温で5min撹拌した。反応溶液にメチル-2-フロエート0.40ml(3.9mmol)を加えて5時間、66℃で還流した後、塩化アンモニウム水溶液を滴下した。酢酸エチルで抽出し、抽出した有機層を塩化アンモニウム水溶液で2回、飽和食塩水で2回洗浄して有機層を留去した。ヘキサン:酢酸エチル(9:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCで、Rf値0.20付近に新たなスポットが確認された。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、358mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ:16.40(brs, 1H), 9.31 (s, 1H), 8.79 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.08 (dd, 1H, J = 8.3, 1.6 Hz), 7.92 (d, 1H, J = 8.4), 7.90 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 7.82 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 7.75-7.70 (m, 2H), 7.68-7.62 (m, 2H), 7.30 (d, 1H, J = 3.4 Hz), 6.95 (s, 1H), 6.95(s, 2H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ:182.5.0, 177.7, 151.2, 146.3, 134.7, 132.4, 132.3, 130.6, 130.1, 129.5, 129.0, 128.9, 127.32, 127.28, 126.4, 124.3, 122.9, 122.4,116.0, 122.9, 93.2.
以上の測定結果によって、フェナントレンの3位にフリル-ジケトン基を有するフェナセン前駆体化合物(3-PheDKF)が収率50%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0113】
〈化合物A-3の合成〉
3-PheDKF300mg(0.95mmol)、BF/EtO(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体)0.3ml(2.2mmol)をベンゼン6mlに加え、1時間、80℃で還流した。反応終了後、析出した固体を吸引ろ過した。ヘキサン:酢酸エチル(3:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCで、Rf値0.11付近に新たなスポットが観測された。析出した固体の溶媒を除去することで、320mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ:9.69 (bs, 1H), 9.15 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 8.44 (m, 1H), 8.41 (dd, 1H, J = 8.3, 1.3 Hz), 8.28 (d, 1H, J = 3.6 Hz), 8.24 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 8.10 (two doublets, 2H), 8.00 (two doublets, 2H), 7.85 (ddd, J = 8.4, 7.2, 1.1 Hz), 7.77 (t, 1H, J = 7.6 Hz), 7.06 (dd, 1H, 3.6, 1.5 Hz).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6) δ:180.7, 170.8, 152.5, 147.3, 136.0, 131.9, 131.2, 129.9, 129.8, 129.6, 129.3, 129.0, 127.90, 127.88, 126.3, 125.24, 125.18, 124.9, 123.6, 115.1, 93.9.
以上の測定結果によって、化合物A-3が収率92%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0114】
<化合物A-4の合成>
〈3-PheDKTの合成〉
3-アセチルフェナントレン500mg(2.3mmol)、水素化ナトリウム(NaH)700mg(29mmol)を脱水THF25mlに加え、室温で15min撹拌した。反応溶液にメチル-2-チオフェンカルボキシレート0.35ml(3.0mmol)を加えて3時間、66℃で還流した。その後、塩化アンモニウム水溶液を滴下した。酢酸エチルで抽出し、抽出した有機層を塩化アンモニウム水溶液で2回、飽和食塩水で2回洗浄して溶媒を留去した。ヘキサン:酢酸エチル(9:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCで、Rf値0.24付近に新たなスポットが確認された。シリカゲルカラムクロマトグラフィー[展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル(9:1、v/v)]で分離後に溶媒を除去することで、426mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3) δ:16.54(brs, 1H), 9.27 (s, 1H), 8.02 (dd, 1H, J = 8.5, 1.2 Hz), 7.92-786 (m, 2H), 7.86 (dd, 1H, J = 3.7, 0.8 Hz), 7.81 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 7.74-7.69 (m, 3H), 7.66-7.61 (m, 2H), 7.19 (dd, 1H, J = 4.9, 3.8 Hz), 6.84 (s, 1H).
13C-NMR (150 MHz, CDCl3) δ:183.1, 180.7, 142.5, 134.6, 132.8, 132.3, 132.1, 130.5, 130.1, 129.4, 129.0, 128.9, 128.4, 127.30, 127.27, 126.4, 124.1, 122.9, 122.2, 93.6.
以上の測定結果によって、フェナントレンの3位にチオフェン-ジケトン基を有するフェナセン前駆体化合物(3-PheDKT)が収率56%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0115】
〈化合物A-4の合成〉
3-PheDKT376mg(1.14mmol)、BF/EtO(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体)0.4 ml(3.0mmol)をベンゼン10mlに加え、1時間、80℃で還流した。反応終了後、析出した固体を吸引ろ過した。ヘキサン:酢酸エチル(3:1,v/v)を展開溶媒として用いたTLCで、Rf値0.13付近に新たなスポットが観測された。析出した固体から溶媒を除去することで、309mgの生成物を得た。生成物について、NMR測定を行い下記結果を得た。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ:9.71 (bs, 1H), 9.16 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 8.86 (d, 1H, J = 4.1 Hz), 8.46 (dd, 1H, J = 4.8, 1.2 Hz), 8.44 (dd, 1H, J = 8.5, 1.2 Hz), 8.25 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 8.19 (s, 1H), 8.11 (two doublets, 2H), 8.00 (d, J = 7.8 Hz), 7.86 (t, 1H, J = 7.6 Hz), 7.77 (t, 1H, 7.3 Hz), 7.56 (dd, 1H, J = 4.8, 4.1 Hz).
13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6) δ:180.7, 170.8, 152.5, 147.3, 136.0, 131.9, 131.1, 129.9, 129.8, 129.6, 129.3, 129.0, 127.89, 127.88, 126.3, 125.24, 125.18, 124.9, 123.6, 115.1, 93.9.
以上の測定結果によって、化合物A-4が収率72%で得られたことを確認した。
【実施例】
【0116】
(比較化合物1の合成)
上記A-1の合成において、原料である1-アセチルフェナントレンの代わりにアルドリッチ社製の2-アセチルフェナントレンを用いた以外は同様にして、比較化合物1を調製した。
【実施例】
【0117】
【化24】
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【実施例】
【0118】
(比較化合物2の合成)
上記A-1の合成において、原料である1-アセチルフェナントレンの代わりにアルドリッチ社製の9-アセチルフェナントレンを用いた以外は同様にして、比較化合物2を調製した。
【実施例】
【0119】
【化25】
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【実施例】
【0120】
下記構造を有する比較化合物3~5は公知であり、上記化合物A-1の合成において、市販されているアセチルフェニル、2-アセチルナフタレン及び2-アセチルアントラセンを用いた以外は同様にして、比較化合物3~5を調製した。
【実施例】
【0121】
【化26】
JP2017065219A1_000028t.gif
【実施例】
【0122】
≪評価≫
上記にて調製したフェナセン化合物(A-1~A-4、比較化合物1及び2)並びにアセン化合物(比較化合物3~5)それぞれを含む各溶液(クロロホルム及びアセトニトリル)に対する蛍光の光物理特性(蛍光収率、蛍光寿命及び速度定数)を測定した。なお、表1にあるように、上記のそれぞれの化合物を含む溶液を、実施例1~4、比較例1~5とした。
<各物性の測定方法>
(蛍光収率の測定)
紫外可視分光光度計(V-550、日本分光(株)製)を用いて吸収スペクトル及び最大吸収波長(λabs/nm)を測定した。絶対PL光量子収率測定装置(C9920-02、浜松フォトニクス(株)製)を用いて、クロロホルム中及びアセトニトリル中における上記化合物のモル吸光定数、最大蛍光波長及び蛍光収率(Φ)を測定した。結果を図1に示す。図1中、各化合物における吸収スペクトルを実線で示し、蛍光スペクトルを破線で示す。
【実施例】
【0123】
(蛍光寿命の測定)
小型蛍光寿命測定装置(C11367-01、浜松フォトニクス(株)製)を用いて、クロロホルム中及びアセトニトリル中における上記化合物の蛍光寿命(τ)を測定し、上記で得られた蛍光収率(Φ)と蛍光寿命(τ)との関係から、放射過程における速度定数(k)を算出した。蛍光収率、すなわち蛍光量子収率(Φ)とは、物質が吸収した光子のうち、蛍光として放出される光子の割合を表す。このため、蛍光収率が高いほど発光効率が良いことを示す。
また、蛍光寿命(τ)の値は分子固有の値を有し、放射過程における速度定数の値(k)は蛍光収率(Φ)を蛍光寿命(τ)で除した値である。
【実施例】
【0124】
各化合物を溶解した溶液に対する上記の物性の測定結果を表1に示す。
また、表1中の、化合物A-1~A-4、比較化合物1及び2の蛍光収率(Φ)、蛍光寿命(τ)、及び放射過程における速度定数(k)におけるクロロホルム中とアセトニトリル中での値の違いを、図2A及び図2Bに示す。
【実施例】
【0125】
【表1】
JP2017065219A1_000029t.gif
【実施例】
【0126】
表1の結果から、実施例1~4のいずれも、クロロホルム中及びアセトニトリル中で高い蛍光収率を有した。一方、比較例では、いずれの溶媒中でも実施例に比べて低い蛍光収率であるか、あるいは、いずれかの溶媒中で蛍光収率が高くても、他方の溶媒中で低い蛍光収率を示した。
また、図2A及び図2Bを参照すると、同じフェナントレン化合物で比較した場合には、フェナントレンの1位又は3位にフッ化ボロン-アリール-ジケトン基が結合した本発明の一実施形態に係るフェナセン化合物が溶媒の違いによらずに、他の位置にフッ化ボロン-アリール-ジケトン基が結合したフェナセン化合物より高い蛍光収率を有することが示された。一方、比較化合物2は、化合物A-1~A-4に近い蛍光収率を有するものの、蛍光寿命がやや劣ることが示された。
また、図2Bの結果から、フッ化ボロン-アリール-ジケトン基が結合したフェナセン化合物のうち、アリール基としてフェニル、フリル及びチオフェンのいずれの置換基でも、溶媒の違いによらずに、高い蛍光収率を有することも示された。
このように、本発明の一実施形態に係るフェナセン化合物は、環境に影響されにくく、かつ高い蛍光収率を有することが示された。
【実施例】
【0127】
2015年10月16日に出願された日本国特許出願2015-205045号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2