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明細書 :自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-164092 (P2019-164092A)
公開日 令和元年9月26日(2019.9.26)
発明の名称または考案の名称 自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラム
国際特許分類 G01N  24/08        (2006.01)
G01N  24/00        (2006.01)
FI G01N 24/08 510P
G01N 24/08 510D
G01N 24/00 530J
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2018-053131 (P2018-053131)
出願日 平成30年3月20日(2018.3.20)
発明者または考案者 【氏名】佐々木 進
【氏名】白石 賢二
【氏名】天野 浩
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100175019、【弁理士】、【氏名又は名称】白井 健朗
【識別番号】100195648、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 悠太
【識別番号】100104329、【弁理士】、【氏名又は名称】原田 卓治
【識別番号】100132883、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 泰司
審査請求 未請求
要約 【課題】自発分極を直接的に検出することができる自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラムを提供する。
【解決手段】自発分極検出装置1は、試料61に電波(π/2パルス信号及びπパルス信号)を送信する送信部30と、送信部30からの電波の送信後に信号(スピンエコー信号)を受信する受信部40と、受信した信号について周波数解析を行う周波数解析部10aと、周波数解析部10aによる周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には試料61に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には試料61に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別部10bと、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
試料に電波を送信する送信部と、
前記送信部からの前記電波の送信後に信号を受信する受信部と、
受信した前記信号について周波数解析を行う周波数解析部と、
前記周波数解析部による周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別部と、を備える、
自発分極検出装置。
【請求項2】
前記周波数解析結果に基づき前記複数のピークの間の周波数差に応じて前記試料の自発分極量を検出する自発分極量検出部を備える、
請求項1に記載の自発分極検出装置。
【請求項3】
前記複数のピークは、
最大の信号強度を有するメインピークと、
前記メインピークよりも信号強度が弱いサテライトピークと、を備え、
前記自発分極検出装置は、さらに、前記サテライトピークの幅に応じて前記試料における自発分極の空間的な分布を検出する自発分極分布検出部を備える、
請求項1又は2に記載の自発分極検出装置。
【請求項4】
前記複数のピークは、
最大の信号強度を有するメインピークと、
前記メインピークよりも信号強度が弱いサテライトピークと、を備え、
前記自発分極検出装置は、さらに、前記メインピークの積分強度と前記サテライトピークの積分強度に基づき前記試料の全域に占める自発分極が存在しない割合又は自発分極が存在する割合を検出する自発分極割合検出部を備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の自発分極検出装置。
【請求項5】
前記自発分極検出装置は、前記試料の周囲に静磁場を生成する静磁場生成部を備え、
前記送信部は、前記電波としてラーモア周波数のπ/2パルスとπパルスを所定の時間間隔で送信し、
前記受信部は、前記信号としてスピンエコー信号を受信し、
前記周波数解析部は、前記ラーモア周波数を変化させつつ、前記スピンエコー信号のピーク強度を検出することにより前記周波数解析を行う、
請求項1から4の何れか一項に記載の自発分極検出装置。
【請求項6】
送信部を通じて試料に電波を送信する送信ステップと、
前記送信部からの前記電波の送信後に受信部を通じて信号を受信する受信ステップと、
受信した前記信号について周波数解析を行う周波数解析ステップと、
前記周波数解析ステップによる周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別ステップと、を備える、
自発分極検出方法。
【請求項7】
コンピュータに、
送信部を通じて試料に電波を送信した後に受信部を通じて受信した信号について周波数解析を行う周波数解析機能と、
前記周波数解析機能による周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別機能と、を実現させるための自発分極検出プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されるように、窒化ガリウム等のイオン結合によって構成されたイオン結合物質の内部に自発的に生じる電界である、いわゆる自発分極の存在が知られていた。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2005-79417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、イオン結合物質に自発分極が存在することは、様々な実験から間接的に知られていたが、直接的に検出する手法がこれまでなかった。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、自発分極を直接的に検出することができる自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る自発分極検出装置は、試料に電波を送信する送信部と、前記送信部からの前記電波の送信後に信号を受信する受信部と、受信した前記信号について周波数解析を行う周波数解析部と、前記周波数解析部による周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別部と、を備える。
【0007】
また、前記自発分極検出装置は、前記周波数解析結果に基づき前記複数のピークの間の周波数差に応じて前記試料の自発分極量を検出する自発分極量検出部を備える、ようにしてもよい。
【0008】
また、前記複数のピークは、最大の信号強度を有するメインピークと、前記メインピークよりも信号強度が弱いサテライトピークと、を備え、前記自発分極検出装置は、さらに、前記サテライトピークの幅に応じて前記試料における自発分極の空間的な分布を検出する自発分極分布検出部を備える、ようにしてもよい。
【0009】
また、前記複数のピークは、最大の信号強度を有するメインピークと、前記メインピークよりも信号強度が弱いサテライトピークと、を備え、前記自発分極検出装置は、さらに、前記メインピークの積分強度と前記サテライトピークの積分強度に基づき前記試料の全域に占める自発分極が存在しない割合又は自発分極が存在する割合を検出する自発分極割合検出部を備える、ようにしてもよい。
【0010】
また、前記自発分極検出装置は、前記試料の周囲に静磁場を生成する静磁場生成部を備え、前記送信部は、前記電波としてラーモア周波数のπ/2パルスとπパルスを所定の時間間隔で送信し、前記受信部は、前記信号としてスピンエコー信号を受信し、前記周波数解析部は、前記ラーモア周波数を変化させつつ、前記スピンエコー信号のピーク強度を検出することにより前記周波数解析を行う、ようにしてもよい。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る自発分極検出方法は、送信部を通じて試料に電波を送信する送信ステップと、前記送信部からの前記電波の送信後に受信部を通じて信号を受信する受信ステップと、受信した前記信号について周波数解析を行う周波数解析ステップと、前記周波数解析ステップによる周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別ステップと、を備える。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る自発分極検出プログラムは、コンピュータに、送信部を通じて試料に電波を送信した後に受信部を通じて受信した信号について周波数解析を行う周波数解析機能と、前記周波数解析機能による周波数解析結果に基づき複数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には前記試料に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラムにおいて、自発分極を直接的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る自発分極検出装置のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る周波数解析処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る自発分極検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る周波数解析結果を模式的に示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態に係る試料が窒化ガリウム結晶である場合の周波数解析結果を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態に係る試料が窒化ガリウム粉末である場合の周波数解析結果を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係るスピンエコー法における各種信号の送信タイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る自発分極検出装置、自発分極検出方法及び自発分極検出プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。

【0016】
図1に示すように、自発分極検出装置1は、制御部10と、静磁場生成部20と、送信部30と、受信部40と、ディスプレイ50と、試料台60と、を備える。

【0017】
静磁場生成部20は、試料台60に設置される試料61の周囲に外部磁場として静磁場を生成する。詳しくは、静磁場生成部20は、静磁場磁石21と、静磁場電源22と、を備える。
静磁場電源22は、制御部10による制御のもと、静磁場磁石21に電流を供給することで静磁場磁石21を励磁する。
静磁場磁石21は、例えば、永久磁石、電磁石又は超伝導磁石により構成され、励磁されることにより試料61の周囲に静磁場を生成する。

【0018】
試料61は、例えば、イオン結合性が支配的な結晶である。具体的には、試料61は、窒化ガリウム(GaN)若しくは窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物の結晶、又は酸化亜鉛(ZnO)等の酸化物の結晶である。

【0019】
送信部30は、RF(Radio Frequency)パルス信号を電波として試料61に送信する。詳しくは、送信部30は、送信コイル31と、送信回路32と、を備える。
送信回路32は、制御部10による制御のもと、試料61を構成する原子の種類及び磁場強度で定まるラーモア周波数に対応するRFパルス信号を電源からの入力電力に基づき生成し、そのRFパルス信号を送信コイル31に出力する。送信回路32は、RFパルス信号を生成するための入力電力を調整する電力調整部32aを備える。電力調整部32aにより入力電力が高く調整されることにより、後述する図5等の周波数解析結果(周波数スペクトル)において広い周波数帯を励起することができる一方、周波数分解能は低下する。送信コイル31は、送信回路32からのRFパルス信号を電波として送信する。これにより、試料台60に設置される試料61の周囲に高周波磁場が発生する。

【0020】
受信部40は、電波の送信後に試料61から発せられる磁気共鳴信号(以下、「MR信号」と呼ぶ)を受信する。詳しくは、受信部40は、受信コイル41と、受信回路42と、を備える。
受信コイル41は、例えば、複数のコイルエレメントを有する。受信コイル41は、高周波磁場の影響によって試料61から発せられるMR信号を受信する。受信コイル41は、MR信号を受信すると、受信したMR信号を受信回路42へ出力する。
受信回路42は、受信コイル41を通じて受信したMR信号をデジタル変換し、そのデジタル変換したMR信号を制御部10に出力する。

【0021】
本例では、自発分極検出装置1はスピンエコー法を採用している。スピンエコー法においては、自発分極検出装置1は、図7に示すように、送信部30を介して励起(π/2)パルス信号Sg90°と再収束(πパルス)パルス信号Sg180°を一定時間(エコー時間TE/2)間隔で送信する。そして、πパルス信号Sg180°の送信後、一定時間(エコー時間TE/2)を経過したとき、受信部40を介してMR信号としてのスピンエコー信号Sspを受信する。ここで、エコー時間TEは、π/2パルス信号Sg90°の送信からスピンエコー信号Sspを受信するまでの時間をいう。
また、本例では、自発分極検出装置1は、試料61に送信される電波(スピンエコー法においてはπ/2パルス信号Sg90°及びπパルス信号Sg180°)のラーモア周波数を連続的に変化させながら受信する信号(スピンエコー法においてはスピンエコー信号Ssp)の信号強度を検出及び記録することにより周波数スペクトルを生成するPoint-by-point法を採用している。

【0022】
図1に示すように、ディスプレイ50は、制御部10による制御のもと、試料61の検出された自発分極に関する情報画像を表示する。

【0023】
制御部10は、自発分極検出装置1、具体的には、その静磁場電源22、送信部30、受信部40及びディスプレイ50を制御する。制御部10は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)等の電子回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ等から構成される。
制御部10は、周波数解析部10aと、自発分極有無判別部10bと、自発分極量検出部10cと、自発分極分布検出部10dと、自発分極割合検出部10eと、表示制御部10fと、記憶部10gと、を備える。

【0024】
記憶部10gは、ROM及びRAMからなる。ROMには、周波数解析処理に係る周波数解析プログラム及び自発分極検出処理に係る自発分極検出プログラム等が記憶される。RAMは、制御部10のワークエリアとして機能する。

【0025】
周波数解析部10aは、後述する図2のフローチャートに沿って周波数解析処理を実行することにより、図4等にグラフで示す周波数解析結果(周波数スペクトル)のデータを生成する。自発分極有無判別部10bは、周波数解析結果に基づき試料61に自発分極が存在するか否かを判別する。自発分極量検出部10cは、周波数解析結果に基づき試料61の自発分極量、すなわち内部電界の大きさを検出する。自発分極分布検出部10dは、周波数解析結果に基づき試料61における自発分極の空間的な分布を検出する。自発分極割合検出部10eは、周波数解析結果に基づき試料61の全域に占める自発分極が存在しない割合を検出する。表示制御部10fは、ディスプレイ50を介して検出された自発分極に関する情報画像を表示する。
なお、周波数解析部10a、自発分極有無判別部10b、自発分極量検出部10c、自発分極分布検出部10d、自発分極割合検出部10e及び表示制御部10fの詳細な処理内容については後述する図2及び図3のフローチャートとともに説明する。

【0026】
次に、図2のフローチャートを参照しつつ周波数解析処理について説明する。例えば、ユーザは、試料台60に試料61を設置した後に周波数解析処理を開始する旨のスイッチ操作を行う。周波数解析部10aは、このスイッチ操作をトリガとして周波数解析処理を開始する。

【0027】
まず、周波数解析部10aは、静磁場電源22を介して静磁場磁石21に電流を供給することで試料61の周囲に均一な静磁場を生成する(ステップS101)。

【0028】
そして、周波数解析部10aはラーモア周波数を設定し(ステップS102)、設定されたラーモア周波数のπ/2パルス信号Sg90°とπパルス信号Sg180°をエコー時間TEの半分の時間間隔にて試料61に送信する(ステップS103)。

【0029】
次に、周波数解析部10aは、πパルス信号Sg180°の送信からエコー時間TEの半分の時間を経過したときスピンエコー信号Sspを受信する(ステップS104)。そして、そのスピンエコー信号Sspのピーク強度を検出し、そのピーク強度を記憶部10gに記憶させる(ステップS105)。これにより、図4に模式的に示すように、ラーモア周波数とスピンエコー信号の信号強度との関係を示すグラフにおいて黒点で示すようにプロットされる。

【0030】
周波数解析部10aは、ラーモア周波数の変更が全て完了したか否かを判別する(ステップS106)。ラーモア周波数の変更が全て完了しない旨判別したとき(ステップS106:NO)、現在、設定されるラーモア周波数に所望の周波数値を加算することにより新たなラーモア周波数を設定する(ステップS107)。その後、新たなラーモア周波数にて、上記と同様に、ステップS103,S104,S105に係る処理が行われる。よって、図4のグラフにおいて、新たなラーモア周波数に対応する信号強度がプロットされる。ステップS103~S107の処理が繰り返されることにより、所望のラーモア周波数帯域におけるプロットが行われ、プロット間は例えば直線補間、それが不十分な場合には,スペクトルの形状に適切な手法でフィットされる。

【0031】
そして、周波数解析部10aは、ラーモア周波数の変更が全て完了した旨判別したとき(ステップS106:YES)、周波数解析処理に係るフローチャートを終了する。以上のように、周波数解析処理により、図4のグラフに示す周波数解析結果がデータとして記憶部10gに記憶される。

【0032】
次に、図3のフローチャートを参照しつつ自発分極検出処理について説明する。制御部10は、例えば、上述した周波数解析処理の終了後に、自動で自発分極検出処理を開始する。

【0033】
まず、自発分極有無判別部10bは、記憶部10gに記憶される図4のグラフに示す周波数解析結果からピークPの数が複数であるか否かを判別する(ステップS201)。具体的には、自発分極有無判別部10bは、図4に示すように、信号強度が予め設定される閾値Thを超えた後、当該閾値Thを再び下回る波形を一つのピークPとしてカウントする。

【0034】
自発分極有無判別部10bは、ピークPの数が複数でない旨判別したとき(ステップS201:NO)、図6に示すように、ピークPの数が単数であるとして、試料61に自発分極が存在しない旨判別する(ステップS202)。この場合、ピークPはメインピークPmのみからなる。そして、表示制御部10fは、試料61に自発分極が存在しない旨を示す画像をディスプレイ50に表示し(ステップS207)、自発分極検出処理に係るフローチャートを終了する。

【0035】
一方、自発分極有無判別部10bは、ピークPの数が複数である旨判別したとき(ステップS201:YES)、試料61に自発分極が存在する旨判別する(ステップS203)。一例として、複数のピークPは、図4に示すように、最大の信号強度を有するメインピークPmと、メインピークPmよりも信号強度が弱い一対のサテライトピークPs1,Ps2と、を備える。サテライトピークPs1はメインピークPmよりも低周波数側に位置し、サテライトピークPs2はメインピークPmよりも高周波数側に位置する。

【0036】
図3のフローチャートに戻って、自発分極量検出部10cは、一対のサテライトピークPs1,Ps2間の第1の周波数差Δf1に応じて試料61に発生する自発分極量を検出する(ステップS204)。この自発分極量は、試料61に発生する内部電界の大きさである。具体的には、自発分極量検出部10cは、第1の周波数差Δf1が大きいほど試料61の自発分極量が大きい旨検出する。本例では、第1の周波数差Δf1は、図4に示すように、一対のサテライトピークPs1,Ps2の中心値C1,C2間の差分である。

【0037】
次に、自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の幅に応じて試料61に生じる自発分極の空間的な分布を検出する(ステップS205)。
具体的には、自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の半値幅W1,W2が小さいほど試料61の空間的に自発分極量の差が少なく、試料61の全域に均一な自発分極が生じている傾向がある。一方、各サテライトピークPs1,Ps2の半値幅W1,W2が大きいほど試料61の空間的に自発分極量の差が多く、試料61に自発分極が空間的に広く分布している傾向がある。
例えば、自発分極分布検出部10dは、複数の半値幅W1,W2の平均値を算出し、その算出した平均値に基づき自発分極の空間的な分布を検出する。
ここで、半値幅W1,W2と自発分極の空間的な分布を関連づけることができる原理について説明する。図4に示すように、各サテライトピークPs1,Ps2の互いに対向する斜辺L1,L2間の差分を第2の周波数差Δf2と規定する。半値幅W1,W2が大きいほど、各サテライトピークPs1,Ps2の頂点に近い第2の周波数差Δf2と各サテライトピークPs1,Ps2の底辺に近い第2の周波数差Δf2との差が大きくなる。第2の周波数差Δf2は、上記第1の周波数差Δf1と同様に、自発分極量を示す値であるため、この場合には、試料61において自発分極量が大きい箇所と自発分極量が小さい箇所が存在すること、言い換えると、自発分極が空間的に広く分布していることが予想される。よって、半値幅W1,W2により自発分極の空間的な分布が検出可能となる。

【0038】
図3のフローチャートに戻って、自発分極割合検出部10eは、試料61の全域に占める自発分極が存在しない割合Aを検出する(ステップS206)。具体的には、自発分極割合検出部10eは、図4に示すように、メインピークPmの面積である積分強度SmとサテライトピークPs1,Ps2の面積である積分強度S1,S2に基づき試料61の全域に占める自発分極が存在しない割合Aを検出する。例えば、自発分極が存在しない割合Aは、以下の式により導出される。
A=Sm/(S1+S2+Sm)

【0039】
最後に、表示制御部10fは、自発分極が存在する旨、自発分極量、自発分極分布及び自発分極が存在しない割合Aを示す画像をディスプレイ50に表示し(ステップS207)、自発分極検出処理に係るフローチャートを終了する。

【0040】
(実験結果)
本願発明者は、試料61が窒化ガリウム結晶である場合と試料61が窒化ガリウム粉末である場合について上述した図2のフローチャートに示す周波数解析処理に関する実験を行った。窒化ガリウムは半導体として利用されることが想定される。試料61が窒化ガリウム粉末である場合には、その試料61には自発分極が存在せず、試料61が窒化ガリウム結晶である場合には、その試料61には自発分極が存在することを前提に実験が行われた。

【0041】
図6には、試料61が窒化ガリウム粉末である場合に上述した図2のフローチャートに示す周波数解析処理が実行されたときの実験結果が周波数スペクトルとして示されている。同図に示すように、サテライトピークPs1,Ps2は観測されず、メインピークPmのみが観測される。メインピークPmは、外部から印加される磁場(静磁場)のみによる信号である。当該実験結果について上述した図3のフローチャートに示す自発分極検出処理が実行された場合、自発分極有無判別部10bは、ピークPの数が単数である旨判別し(ステップS201:NO)、試料61に自発分極が存在しない旨判別する(ステップS202)。そして、ディスプレイ50には、試料61に自発分極が存在しない旨を示す画像が表示される(ステップS207)。

【0042】
一方、図5には、試料61が窒化ガリウム結晶である場合に上述した図2のフローチャートに示す周波数解析処理が実行されたときの実験結果が周波数スペクトルとして示されている。同図に示すように、メインピークPmとサテライトピークPs1,Ps2が観測される。サテライトピークPs1は61.7MHzにて観測され、サテライトピークPs2は64.4MHzにて観測され、第1の周波数差Δf1は2.7MHzとなる。当該実験結果について上述した図3のフローチャートに示す自発分極検出処理が実行された場合、自発分極有無判別部10bは、ピークPの数が複数である旨判別し(ステップS201:YES)、試料61に自発分極が存在する旨判別する(ステップS203)。そして、ステップS204~S206に係る処理により、自発分極量、自発分極分布、自発分極が存在しない割合Aが検出され、その検出結果がディスプレイ50に表示される(ステップS207)。
以上で、窒化ガリウムに関する実験結果の説明を終了する。

【0043】
次に、メインピークPmとサテライトピークPs1,Ps2が検出される原理について具体的に説明する。
試料61の内部の核スピンは、当該の核スピンの位置における磁場の大きさに応じて、電波を吸収する。これが周波数スペクトルのメインピークPmを与える。核スピンの中には、磁場以外に電場勾配の大きさに比例して電波を吸収するものが少なからず存在する。この電場勾配により、試料61を構成する原子の4つのエネルギー準位におけるエネルギーの差が等間隔でなくなるため、周波数スペクトルにおいてメインピークPmの両側に偶数本のサテライトピークPs1,Ps2が現れる。隣接するサテライトピークPs1,Ps2同士の間隔である第1の周波数差Δf1が電場勾配の大きさに比例する。試料61が窒化ガリウム結晶のようなイオン結合性が支配的なイオン結晶である場合、試料61の構成原子が電界を生じるため、試料61の内部にナノスケールの電場勾配が形成される。詳しくは、陽イオンであるガリウム(Ga)が結晶の上部最表面に、陰イオンである窒素(N)が結晶の下部最表面にあるため、イオン結晶の上部から下部に向かって内部電界が生じる。この内部電界が自発分極である。この自発分極によりガリウムの核スピンが感じことができるナノスケールの電場勾配が生成され、これによりメインピークPmとサテライトピークPs1,Ps2が観測される。よって、このサテライトピークPs1,Ps2の第1の周波数差Δf1が自発分極を反映している。
一方、窒化ガリウム粉末は、正電荷をもつガリウムと負電荷をもつ窒素のそれぞれの核スピンが空間的にランダム方向を向いているため内部電界が生じない。このため、電場勾配が生成されず、ガリウムの核スピンからの応答は、外部から印加した磁場のみによる信号であるメインピークPmが観測される。

【0044】
(効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の効果を奏する。

【0045】
(1)自発分極検出装置1は、試料61に電波(π/2パルス信号Sg90°及びπパルス信号Sg180°)を送信する送信部30と、送信部30からの電波の送信後に信号(スピンエコー信号Ssp)を受信する受信部40と、受信した信号について周波数解析を行う周波数解析部10aと、周波数解析部10aによる周波数解析結果に基づき複数のピークPが検出された場合には試料61に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークPが検出された場合には試料61に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別部10bと、を備える。
この構成によれば、試料61に自発分極が存在するか否かを周波数解析結果から直接的に非破壊で検出することができる。
特に、試料61が半導体材料である場合、半導体材料の自発分極を検出することにより、電気的動作を向上させた半導体材料の開発に資することができる。

【0046】
(2)自発分極検出装置1は、周波数解析結果に基づき複数のピークPの間、例えば、一対のサテライトピークPs1,Ps2の間の第1の周波数差Δf1に応じて試料61の自発分極量を検出する自発分極量検出部10cを備える。
この構成によれば、試料61の内部磁界の大きさである自発分極量を検出することができる。

【0047】
(3)複数のピークPは、最大の信号強度を有するメインピークPmと、メインピークPmよりも信号強度が弱いサテライトピークPs1,Ps2と、を備える。自発分極検出装置1は、さらに、サテライトピークPs1,Ps2の半値幅W1,W2に応じて試料61における自発分極の空間的な分布を検出する自発分極分布検出部10dを備える。
この構成によれば、試料61における自発分極の空間的な分布を検出することができる。よって、試料61の自発分極の詳細を知ることができる。
例えば、自発分極分布検出部10dは、半値幅W1,W2が小さいほど試料61の全域に生じている自発分極の均一度が高い旨検出し、半値幅W1,W2が大きいほど均一度が低く、試料61の全域における自発分極の大きさのバラツキが大きい旨検出する。このように、試料61における自発分極の空間的な分布を検出することができる。

【0048】
(4)複数のピークPは、最大の信号強度を有するメインピークPmと、メインピークPmよりも信号強度が弱いサテライトピークPs1,Ps2と、を備える。自発分極検出装置1は、さらに、メインピークPmの積分強度SmとサテライトピークPs1,Ps2,Ps3,Ps4,Ps5の積分強度S3に基づき試料61の全域に占める自発分極が存在しない割合Aを検出する自発分極割合検出部10eを備える。
この構成によれば、試料61の全域に占める自発分極が存在しない割合Aを検出することができる。よって、試料61の自発分極の詳細を知ることができる。

【0049】
(5)自発分極検出装置1は、試料61の周囲に静磁場を生成する静磁場生成部20を備える。送信部30は、電波としてラーモア周波数のπ/2パルス信号Sg90°とπパルス信号Sg180°を予め設定される時間(エコー時間TE/2)間隔で送信し、受信部40は、信号としてスピンエコー信号Sspを受信する。周波数解析部10aは、ラーモア周波数を変化させつつ、スピンエコー信号Sspのピーク強度を検出することにより周波数解析を行う。
この構成によれば、スピンエコー法により周波数解析が行われるため、より正確な自発分極の検出を実現することができる。

【0050】
(6)自発分極検出方法は、送信部30を通じて試料61に電波(π/2パルス信号Sg90°及びπパルス信号Sg180°)を送信する送信ステップと、送信部30からの電波の送信後に受信部40を通じて信号(スピンエコー信号Ssp)を受信する受信ステップと、受信した信号について周波数解析を行う周波数解析ステップと、周波数解析ステップによる周波数解析結果に基づき複数のピークPが検出された場合には試料61に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークが検出された場合には試料61に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別ステップと、を備える。なお、送信ステップは図2のステップS103に相当し、受信ステップはステップS104に相当し、周波数解析ステップはステップS105に相当し、自発分極有無判別ステップは図3のステップS201~S203に相当する。
この方法によれば、上述したように、試料61の自発分極を直接的に検出することができる。

【0051】
(7)自発分極検出プログラムは、コンピュータである制御部10に、送信部30を通じて試料61に電波を送信した後に受信部40を通じて受信した信号について周波数解析を行う周波数解析機能と、周波数解析機能による周波数解析結果に基づき複数のピークPが検出された場合には試料61に自発分極が存在する旨判別し、単数のピークPが検出された場合には試料61に自発分極が存在しない旨判別する自発分極有無判別機能と、を実現させる。周波数解析機能は周波数解析部10aの処理により実現され、自発分極有無判別機能は自発分極有無判別部10bの処理により実現される。
この自発分極検出プログラムによれば、上述したように、試料61の自発分極を直接的に検出することができる。

【0052】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。

【0053】
上記実施形態における自発分極検出装置1においては、Point-by-point法による周波数スペクトルが採用されていたが、FT-NMR(フーリエ変換 NMR、Fourier transform)が採用されてもよい。このFT-NMRが採用された場合、自発分極検出装置1は、共鳴周波数範囲のあらゆる周波数成分を含む電波を試料61に送信した後に、自由誘導減衰(FID、free induction decay)信号を受信し、この自由誘導減衰信号をフーリエ変換することで周波数解析結果として周波数スペクトルを生成することができる。

【0054】
上記実施形態においては、第1の周波数差Δf1は、図4に示すように、一対のサテライトピークPs1,Ps2の中心値C1,C2間の差分であったが、これに限らず、例えば、一対のサテライトピークPs1,Ps2のピーク値間の差分であってもよいし、第2の周波数差Δf2と同一であってもよい。
また、自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の傾きに基づき試料61の自発分極量を検出してもよい。自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の傾きの絶対値が大きい場合、各サテライトピークPs1,Ps2の幅が小さいとして、試料61の空間的に自発分極量の差が少ない旨検出し、各サテライトピークPs1,Ps2の傾きの絶対値が小さい場合、各サテライトピークPs1,Ps2の幅が大きいとして、試料61の空間的に自発分極量の差が大きい旨検出してもよい。

【0055】
上記実施形態においては、自発分極量検出部10cは、一対のサテライトピークPs1,Ps2間の第1の周波数差Δf1に応じて試料61の自発分極量を検出していたが、これに限らず、サテライトピークPs1,Ps2の少なくとも何れか一方とメインピークPmとの周波数差に応じて試料61の自発分極量を検出してもよい。

【0056】
上記実施形態においては、静磁場磁石21は、超電導磁石もしくは電磁石であったが、これに限らず、永久磁石であってもよい。この場合、自発分極検出装置1は、静磁場電源22を備えなくてもよい。

【0057】
試料61は、上記実施形態に限らず、磁性体等であってもよい。

【0058】
上記実施形態においては、自発分極割合検出部10eは、周波数解析結果に基づき試料61の全域に占める自発分極が存在しない割合Aを検出していたが、試料61の全域に占める自発分極が存在する割合を検出してもよい。例えば、自発分極が存在する割合Bは、以下の式により導出される。
B=(S1+S2)/(S1+S2+Sm)
また、自発分極が存在しない割合A及び自発分極が存在する割合Bは、計算式により算出されていたが、記憶部10gに記憶される積分強度S3,Smと自発分極が存在しない割合A又は自発分極が存在する割合Bとが対応づけられたデータテーブルに基づき求められてもよい。

【0059】
上記実施形態においては、自発分極分布検出部10dは、各サテライトピークPs1,Ps2の半値幅W1,W2に基づき試料61における自発分極の空間的な分布を検出していたが、幅であれば、半値幅W1,W2に限らず、例えば、各サテライトピークPs1,Ps2の底辺の長さであってもよい。

【0060】
上記実施形態においては、自発分極検出装置1は、それぞれ独立した送信コイル31と受信コイル41を備えていたが、送受信機能を備えた共通のコイルを備えていてもよい。

【0061】
上記実施形態においては、制御部10は、図2に示す周波数解析処理の終了後に、自動で、図3に示す自発分極検出処理を開始していたが、周波数解析処理の終了後、ユーザのスイッチ操作をトリガとして自発分極検出処理を開始してもよい。

【0062】
上記実施形態においては、自発分極検出装置1は、π/2パルス信号Sg90°及びπパルス信号Sg180°を連続的に送信するスピンエコー法を採用していたが、これに限らず、例えば、πパルスSg180°を省略して、π/2パルスSg90°を送信後に信号を受信してもよい。

【0063】
上記実施形態における自発分極量検出部10c、自発分極分布検出部10d及び自発分極割合検出部10eのうち少なくとも何れか一つを省略してもよい。また、表示制御部10f及びディスプレイ50は、自発分極検出装置1とは別に設けられていてもよい。

【0064】
本発明の対象は、自発分極検出装置1に限らず、自発分極検出装置1の機能を実現するための自発分極検出プログラムであってもよい。この自発分極検出プログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、HDD(Hard Disk Drive)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータにダウンロードされてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 自発分極検出装置
10 制御部
10a 周波数解析部
10b 自発分極有無判別部
10c 自発分極量検出部
10d 自発分極分布検出部
10e 自発分極割合検出部
10f 表示制御部
10g 記憶部
20 静磁場生成部
21 静磁場磁石
22 静磁場電源
30 送信部
31 送信コイル
32 送信回路
32a 電力調整部
40 受信部
41 受信コイル
42 受信回路
50 ディスプレイ
60 試料台
P ピーク
Pm メインピーク
Ps1,Ps2 サテライトピーク
S1,S2,S3,Sm 積分強度
W1,W2 半値幅
Δf1 第1の周波数差
Δf2 第2の周波数差
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6