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明細書 :自立性高分子薄膜及びその製造方法、並びに、自立性高分子前駆体薄膜、それからなる密閉容器及び内包剤の放出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-108473 (P2019-108473A)
公開日 令和元年7月4日(2019.7.4)
発明の名称または考案の名称 自立性高分子薄膜及びその製造方法、並びに、自立性高分子前駆体薄膜、それからなる密閉容器及び内包剤の放出方法
国際特許分類 C08J   5/18        (2006.01)
C08G  81/00        (2006.01)
FI C08J 5/18
C08G 81/00
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2017-242440 (P2017-242440)
出願日 平成29年12月19日(2017.12.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 第78回応用物理学会秋季学術講演会予稿集11-051、福岡国際会議場 第66回高分子討論会予稿集、愛媛大学 SmaSys2017予稿集、山形大学米沢キャンパス
発明者または考案者 【氏名】松井 淳
【氏名】松永 康平
出願人 【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100129425、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 護晃
【識別番号】100087505、【弁理士】、【氏名又は名称】西山 春之
【識別番号】100168642、【弁理士】、【氏名又は名称】関谷 充司
【識別番号】100099623、【弁理士】、【氏名又は名称】奥山 尚一
【識別番号】100096769、【弁理士】、【氏名又は名称】有原 幸一
【識別番号】100107319、【弁理士】、【氏名又は名称】松島 鉄男
【識別番号】100125380、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 綾子
【識別番号】100142996、【弁理士】、【氏名又は名称】森本 聡二
【識別番号】100166268、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 祐
【識別番号】100170379、【弁理士】、【氏名又は名称】徳本 浩一
【識別番号】100180231、【弁理士】、【氏名又は名称】水島 亜希子
審査請求 未請求
テーマコード 4F071
4J031
Fターム 4F071AA29X
4F071AA33X
4F071AA35X
4F071AA51X
4F071AA75
4F071AA81
4F071AF04
4F071BC01
4J031AA22
4J031AA53
4J031AB01
4J031AC01
要約 【課題】 簡易な方法でシリンダー構造を形成することができる自立性高分子薄膜及びその製造方法、並びに自立性高分子前駆体薄膜、それからなる密閉容器、及び内包剤の放出方法を提供する。
【解決手段】 本発明の自立性高分子薄膜は、親水性ポリマー成分と、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖をアミド基またはエステル基を介して有する疎水性ポリマー成分とのブロック共重合体からなり、自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に配向する親水性ポリマー成分からなるシリンダー構造を有する。このシリンダー構造は、前記ブロック共重合体からなる自立性高分子前駆体薄膜を加熱および水分と接触させることによって形成される。この自立性高分子前駆体薄膜で密閉容器を構成することで、加熱および水分と接触させることで、内包剤を密閉容器から放出させることができる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
親水性ポリマー成分と、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖をアミド基またはエステル基を介して有する疎水性ポリマー成分とのブロック共重合体からなる自立性高分子薄膜であって、
前記自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に配向する前記親水性ポリマー成分からなるシリンダー構造を有する、自立性高分子薄膜。
【請求項2】
親水性ポリマー成分と、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖をアミド基またはエステル基を介して有する疎水性ポリマー成分とのブロック共重合体からなる自立性高分子薄膜前駆体を配向してなる自立性高分子前駆体薄膜であって、
加熱および水分との接触によって、前記自立性高分子前駆体薄膜の表面に対し垂直方向に配向する前記親水性ポリマー成分からなるシリンダー構造が形成可能な、自立性高分子前駆体薄膜。
【請求項3】
前記ブロック共重合体が、下記一般式(1)
【化1】
JP2019108473A_000014t.gif
(上式中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基であり、R3は、水素原子または炭素数が1~4の直鎖若しくは分岐したアルキル基であり、mは、25~250の整数であり、nは20~500の整数であり、Xは、NHまたはOであり、
Yは、任意で、下記一般式(2)
【化2】
JP2019108473A_000015t.gif
(A1およびA2は水素、メチル基、シアノ基、又はフェニル基であり、同一でも、異なっていても良い。)
で示される構造を有し、
Zは、任意で、ハロゲン原子、又は下記一般式(3)
【化3】
JP2019108473A_000016t.gif
(R4は、アルキル基、アリル基、フェニル基、ピロール基、ピロリドン基、若しくはピリジン、又は、これらの4級芳香族アミン、又は、ジエチルアミノ基であり、R5は、水素原子、アルキル基、フェニル基である。)
で示される構造を有する。)
で示される構造を有する請求項1に記載の自立性高分子薄膜または請求項2に記載の自立性高分子前駆体薄膜。
【請求項4】
前記親水性ポリマー成分が、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、又はポリビニルアルコールであり、前記疎水性ポリマー成分が、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖を有するポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリアクリレート、またはポリメタクリレートであり、前記疎水性ポリマー成分の繰り返し単位が、25~250の範囲である請求項1に記載の自立性高分子薄膜または請求項2に記載の自立性高分子前駆体薄膜。
【請求項5】
親水性ポリマー成分と、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖を有するアミド系またはアクリレート系の疎水性ポリマー成分とをブロック共重合してなる高分子の薄膜を形成する工程と、
前記高分子の薄膜を加熱するとともに水分と接触させることによって、自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に配向する前記親水性ポリマー成分からなるシリンダー構造を有する前記自立性高分子薄膜を得る工程と
を含む自立性高分子薄膜の製造方法。
【請求項6】
密閉容器であって、その全部または一部が請求項2に記載の又は請求項2を引用する請求項3若しくは請求項4に記載の自立性高分子前駆体薄膜からなる密閉容器。
【請求項7】
前記密閉容器内に内包された内包剤を更に備える請求項6に記載の密閉容器。
【請求項8】
請求項7に記載の密閉容器を加熱するとともに水分と接触させて、前記内包剤を、前記自立性高分子前駆体薄膜に形成される前記シリンダー構造を通して前記密閉容器の外部に放出させる、内包剤の放出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自立性高分子薄膜及びその製造方法、並びに、自立性高分子前駆体薄膜、それからなる密閉容器及び内包剤の放出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、表面積が大きく、ナノオーダーの厚みを有する自立性高分子薄膜が、選択透過膜、マイクロセンサ、薬物送達用のフィルム等の用途として用いることができるとして注目されている。このような薄膜は、layer-by-layer法(LbL積層法)、ラングミュア-ブロジェット法(Langmuir Blodgett,LB)法、及びスピンコーティング法のような方法で製造できる。
【0003】
近年、ブロック共重合体を用いた自立性薄膜の製造方法が提案されている(非特許文献1、2、特許文献1)。特に特許文献1には、親水性ポリマー成分からなるシリンダーを有する自立性高分子薄膜を形成するため、親水性ポリマー成分と疎水性ポリマー成分とのブロック共重合体を用い、疎水性ポリマー成分の一部にメソゲン鎖を用い、光架橋することで、膜中に親水性ポリマー成分が一定方向に配向したシリンダーを形成する自立性薄膜が得られており、シリンダー部分を選択的に物質が透過することが報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010-275349号公報
【0005】

【非特許文献1】Yang,S.Y.;Ryu,I.;Kim,H.Y.;Kim,J. K.;Jang,S.K.;Russell,T.P.Adv.Mater.2006, 18,709.
【非特許文献2】Yang,S.Y.;Park,J.;Yoon,J.;Ree,M. ;Jang,S.K.;Kim,J.K.Adv.Funct.Mater.2008, 18,1371.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような光架橋によりシリンダー構造を形成する自立性高分子薄膜は、光架橋の条件によってシリンダー構造の成否や性能に影響を与え得ることから、より簡易な方法でシリンダー構造を形成できる自立性高分子薄膜が求められている。
【0007】
そこで本発明は、上記の課題に鑑み、自立性高分子前駆体薄膜に対して、簡易な方法で、シリンダー構造を形成することができる自立性高分子薄膜、及びその製造方法、並びに自立性高分子前駆体薄膜、それからなる密閉容器、及び内包剤の放出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、その一態様によれば、自立性高分子薄膜であって、この自立性高分子薄膜は、親水性ポリマー成分と、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖をアミド基またはエステル基を介して有する疎水性ポリマー成分とのブロック共重合体からなり、前記自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に配向する前記親水性ポリマー成分からなるシリンダー構造を有するものである。
【0009】
また、本発明は、別の態様によれば、自立性高分子前駆体薄膜であって、この自立性高分子前駆体薄膜は、親水性ポリマー成分と、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖をアミド基またはエステル基を介して有する疎水性ポリマー成分とのブロック共重合体からなるものである。この自立性高分子前駆体薄膜は、水分と接触することで、前記自立性高分子前駆体薄膜の表面に対し垂直方向に前記親水性ポリマーが配向し、この親水性ポリマー成分によってシリンダー構造が構成されることとなる。
【0010】
本発明に係る自立性高分子薄膜および自立性高分子前駆体薄膜において、前記ブロック共重合体は、下記一般式(1)
【化1】
JP2019108473A_000003t.gif
(上式中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基であり、R3は、水素原子または炭素数が1~4の直鎖若しくは分岐したアルキル基であり、mは、25~200の整数であり、nは20~500の整数であり、Xは、NHまたはOであり、
Yは、任意で、下記一般式(2)
【化2】
JP2019108473A_000004t.gif
(A1およびA2は水素、メチル基、シアノ基、又はフェニル基であり、同一でも、異なっていても良い。)
で示される構造を有し、
Zは、任意で、ハロゲン原子、又は下記一般式(3)
【化3】
JP2019108473A_000005t.gif
(R4は、アルキル基、アリル基、フェニル基、ピロール基、若しくはN-メチルピリジン-4-アミン、又は、これらの4級芳香族アミン、又は、ジエチルアミノ基であり、R5は、水素原子、アルキル基、フェニル基である。)
で示される構造を有する。)
で示される構造を有してもよい。
【0011】
また、本発明に係る自立性高分子薄膜および自立性高分子前駆体薄膜において、前記親水性ポリマー成分は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、又はポリビニルアルコールであってもよい。前記疎水性ポリマー成分は、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖を有するポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリアクリレート、またはポリメタクリレートであってもよい。前記疎水性ポリマー成分の繰り返し単位は、25~200の範囲であることが好ましい。
【0012】
本発明は、また別の態様として、自立性高分子薄膜の製造方法であって、親水性ポリマー成分と、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基からなる側鎖を有するアミド系またはアクリレート系の疎水性ポリマー成分とをブロック共重合してなる高分子の薄膜を形成する工程と、前記高分子の薄膜を加熱するとともに水分と接触させることによって、前記自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に配向する前記親水性ポリマー成分からなるシリンダー構造を有する自立性高分子薄膜を得る工程とを含む。
【0013】
本発明は、更に別の態様として、密閉容器であって、その全部または一部が、前記自立性高分子前駆体薄膜からなるものである。本発明に係る密閉容器は、この密閉容器内に内包された内包剤を更に備えることが好ましい。
【0014】
本発明は、更に別の態様として、内包剤の放出方法であって、前記密閉容器を加熱するとともに水分と接触させて、前記内包剤を、前記自立性高分子前駆体薄膜に形成される前記シリンダー構造を通して前記密閉容器の外部に放出させるというものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の疎水性ポリマー成分を有するブロック共重合体を用いることで、得られる自立性高分子前駆体薄膜を加熱するとともに水分と接触させるという簡便な方法により、前記自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に配向する親水性ポリマー成分からなるシリンダー構造を有する自立性高分子薄膜を作製することができる。この自立性高分子薄膜は、前記シリンダー構造が透過機能を有することから、種々の透過膜、限外ろ過膜、ナノリアクター等として利用することができる。例えば、カプセル等の密閉容器の全部または一部を前記自立性高分子前駆体薄膜から構成することで、この密閉容器を加熱し且つ水分と接触させることにより、密閉容器内に内包された内包剤を前記シリンダー構造を通して密閉容器の外部に放出させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自立性高分子前駆体薄膜(a)と自立性高分子薄膜(b)の表面を観察した原子間力顕微鏡(AFM)の写真を示す。
【図2】疎水性部分が一定方向に配向した、ヘキサゴナルな構造の、斜入射小角X線散乱(GI-SAXS)の2次元イメージングプレート像による画像を示す。
【図3】疎水性部分が一定方向に配向した場合の散乱ピークのグラフを示す。
【図4】ヘキサゴナルな構造である場合の散乱ピークのグラフを示す。
【図5】自立性高分子薄膜の透過機能発現実験を表したグラフを示す。
【図6】水分との接触による自立性高分子前躯体薄膜の透過機能発現実験の経過を表したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る自立性高分子薄膜及びその製造方法、並びに、自立性高分子前駆体薄膜、それからなる密閉容器及び内包剤の放出方法の一実施の形態について説明する。本発明において、自立性高分子前駆体薄膜及び自立性高分子薄膜の「自立性」とは、基板を取り除いても自立性高分子前駆体薄膜および高分子薄膜が薄膜の形態を維持することを意味する。

【0018】
本実施の形態の自立性高分子薄膜は、以下に詳細を後述する所定の親水性ポリマー成分と疎水性ポリマー成分とのブロック共重合体からなる自立性高分子前駆体薄膜を加熱し且つ水分と接触させることによって、前記自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に親水性ポリマー成分が配向し、この親水性ポリマー成分がシリンダー構造を形成するというものである。

【0019】
(ブロック共重合体の構造)
ブロック共重合体の親水性ポリマー成分としては 、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルアルコール、又はポリアクリル酸が挙げられる。特に、ポリエチレンオキシドが好ましい。また、疎水性ポリマー成分としては、アルキル鎖を有するポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリアクリレート、又はポリメタクリレートが挙げられる。特に、 ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミドが好ましい。

【0020】
ブロック共重合体としては、例えば、下記一般式(1)で表わされる共重合体が好ましく用いられる。
【化4】
JP2019108473A_000006t.gif

【0021】
上式(1)において、R1は、水素原子またはメチル基である。疎水性ポリマー成分の側鎖R2は、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基である。

【0022】
上式(1)において、R2は、炭素数が8~21の直鎖または分岐したアルキル基である。アルキル基としては、n-オクチル、n-デシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル、n-イコシル、n-ヘンイコシル、又は、これらの一部が分岐した異性体を挙げることができる。

【0023】
上式(1)において、R3は、水素原子または炭素数が1~4の直鎖若しくは分岐したアルキル基である。

【0024】
上式(1)において、疎水性ポリマー成分の繰り返し単位mは、25~250の整数であり、好ましくは、mは30~100の整数である。mが25以上であることにより、疎水性を示すため、自立性高分子薄膜前駆体及び自立性高分子薄膜を作製した場合に、親水性ポリマー成分が、前記自立性高分子薄膜前駆体の表面及び前記自立性高分子薄膜の表面と垂直方向に配向し易くなる。mが250以下であることにより、シリンダー構造のような所望の形状を有した自立性高分子薄膜を作製できる。

【0025】
上式(1)において、親水性ポリマー成分の重合度nは20~500の整数であり、好ましくは、nは40~200の整数である。nが20以上であることにより、ミクロ相分離構造が形成され、シリンダー構造を有する自立性高分子薄膜前駆体及び自立性高分子薄膜が得られる。一方、nが500以下であることにより、ミクロ相分離構造が形成されやすくなり、所望の構造、例えばシリンダー構造を有する自立性高分子薄膜前駆体及び自立性高分子薄膜が得られる。

【0026】
上式(1)において、Xは、NHまたはOである。

【0027】
上式(1)において、Yは、下記一般式(2)で表わされる。Yは、親水性ポリマー成分と疎水性ポリマー成分とを連結する役割を持つ。Yは、メチレンまたは、プロピレン基を有するエステルである。原子移動ラジカル重合法の場合には、下記一般式(2)-(A)で、A1、A2がメチル基である。また、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)法によりブロック共重合体を得る場合には、RAFT剤がブロック共重合体の末端に存在する。
【化5】
JP2019108473A_000007t.gif

【0028】
上式(2)において、A1およびA2は水素、メチル基、シアノ基、又はフェニル基であり、同一でも、異なっていても良い。また、A1、A2が付加する炭素と、エステルの炭素との間に直鎖のスペーサーを有することにより、重合のしやすさを制御することができる。

【0029】
上式(2)において、ポリマー末端Zは、ハロゲン原子、又は下記一般式(3)で表される、ジチオエステル、トリチオカーボネート、ジチオカルバメート、キサンテートであり、重合方法により異なる。原子移動ラジカル重合(ATRP)開始剤によりブロック共重合する場合には、重合開始剤が末端に存在する。また、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤によりブロック共重合する場合には、RAFT剤が末端に存在する。
【化6】
JP2019108473A_000008t.gif

【0030】
上式(3)において、R4は、アルキル基、アリル基、フェニル基、ピロール基、ピロリドン基、若しくはピリジン、又は、これらの4級芳香族アミン、又は、ジエチルアミノ基であり、R5は、水素原子、アルキル基、フェニル基である。

【0031】
(ブロック共重合体の重合方法)
親水性ポリマー成分と疎水性ポリマー成分からなるブロック共重合体を製造する方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法等が挙げられる。これらの方法は、目的に応じて使い分けることができるが、重合工程の簡便性の点から、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として、次のブロックを重合する方法が好ましい。

【0032】
(リビング重合法)
あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤として、次のブロックを重合する方法として、リビング重合法、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)法または、原子移動ラジカル重合(ATRP)法が挙げられる。リビング重合法は、得られるブロック共重合体の分子量及び構造を制御できるという点で好ましい。具体的には、重合がリビング的に進行するので、用いるモノマーと開示剤の仕込み時の比率によって分子量及び構造を自由に制御することが可能である。例えば、分子量分布の狭いブロック共重合体を得ることもできる。

【0033】
(可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)法)
RAFT法を用いる場合、通常、ラジカル発生剤、および、リビングラジカル連鎖移動剤として、RAFT剤であるジチオ化合物を使用する。RAFT剤は、(メタ)アクリル系および(メタ)アクリルアミド系単量体を重合することができれば特に限定されない。RAFT剤は、上述した一般式(2)に示すエステルに親水基が付加し、もう一方に、上述した一般式(3)に示すチオ化合物と結合した構造をしている。

【0034】
上述した一般式(2)において、A1、A2が付加する炭素と、エステルの炭素との間に直鎖のスペーサーを有することにより、重合のしやすさを制御することができる。A1、A2は、共重合するアミド、アクリレート系モノマー成分の重合性から選択される。

【0035】
上述した一般式(3)において、R4、R5により、反応性を制御することができる。

【0036】
RAFT法は、共重合体を容易に製造できるという点で好ましい。具体的には、重合がリビング的に進行し、用いるモノマーと開示剤の仕込み時の比率によって自由に制御することが可能である。また、分子量や分散度などのポリマー特性をより効果的に制御するためには、ATRP法よりも、RAFT法を使用することがより好ましい。

【0037】
(原子移動ラジカル重合(ATRP)法)
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として、重合される。原子移動ラジカル重合法の場合には、上述した一般式(2)-(A)でA1、A2がメチル基である。

【0038】
上述した一般式(1)において、Zは、有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物の重合開始剤の構造を示す。有機ハロゲン化物の具体的例としては、エチルブロモアセテート、メチルブロモアセテート、(1-ブロモエチル)ベンゼン、エチル2-ブロモイソブチレート、2-ブロモイソブチルブロマイド、アリールブロマイド、ブロモアセトニトリル、メチル2-ブロモプロピオネート、t—ブチル2-ブロモプロピオネート、メチルクロロアセテート、クロロアセトニトリル、(1-クロロエチル)ベンゼン、メチル2-クロロプロピオネート、メチル(R)(R)(+)2(+)2-クロロプロピオネート、メチル(S)(—)2-クロロプロピオネート、2,2ジクロロアセトフェノン等を挙げることができるが、特に限定されない。

【0039】
周期律表第8族、9族、10族、または11族の遷移金属を中心金属とする金属錯体として、例えば、一価の銅化合物を用いる場合は、触媒活性を高めるために、トリオクチルアミン、トリエチルアミンなどを配位子として添加しても良い。また、無溶媒(塊状重合)又は、種々の溶媒中で行うこともできる。

【0040】
ATRP法は、共重合体を容易に製造できるという点で好ましい。また、重合がリビング的に進行し、用いるモノマーと開示剤の仕込み時の比率によって自由に制御することが可能である。

【0041】
(自立性高分子薄膜のシリンダー構造)
ブロック共重合体における親水性ポリマー成分及び疎水性ポリマー成分としては、互いに非相溶性であり、ブロック共重合体を溶解可能な適当な溶媒に溶解した後、スピンコート等の方法で自立性高分子前駆体薄膜が得られる。得られた自立性高分子前駆体薄膜が加熱され、且つ水分と接触し、吸収することにより、疎水性ポリマー成分が配向し、配向面を形成する。そして、疎水性ポリマー成分の側鎖の根元に当たるアミド基の窒素やエステル基の酸素に水が吸着されることで、疎水性の側鎖部分が一定方向に配向し、前記自立性高分子薄膜の表面に対し垂直方向に親水性ポリマーが配向する。この親水性ポリマー成分によりシリンダー構造が形成される。

【0042】
自立性高分子薄膜のシリンダー構造が形成される。例えば、上述した一般式(1)に示すブロック共重合体が、mが80で、nが45の場合には、シリンダー構造の直径は5~15nmで、シリンダー間隔は10数nmであった。

【0043】
シリンダー構造の大きさは特に限定されないが、例えば、シリンダーの直径は、5nm~50nmである。目的に合わせ、適宜、上式に示す重合度m、nの値だけでなくmとnの比(n/m)によっても制御される。

【0044】
シリンダー構造の直径だけでなく間隔を変更することもできる。上式に示す親水性ポリマーの重合度nが大きいとシリンダーの直径も大きくなる傾向にある。また、疎水性ポリマーの繰り返し単位mの値を大きくすればシリンダーの間隔を大きくすることが可能である。すなわち、シリンダー構造の部分の大きさを小さくしたり、間隔を広くしたい場合には、nを小さく、及びmを大きくして親水性ポリマー成分の体積分率を低くし、一方で、シリンダー部分の大きさを大きくしたり、間隔を狭くしたい場合には、nを大きく、及びmを小さくして親水性ポリマー成分の体積分率を高くすればよい。mは、25~250の整数が好ましく、30~100の整数がより好ましい。また、nは20~500の整数が好ましく、40~200の整数がより好ましい。

【0045】
親水性ポリマー成分の体積分率は5~90%の範囲で変化させることが好ましい。親水性ポリマー成分の体積分率が5%以上であることにより、シリンダー部分の占める割合が大きくなるため、親水性ポリマー成分を垂直配向させてシリンダーアレイ型相分離構造とすることができる。一方、90%以下であることにより、シリンダー部分の占める割合を制御し、親水性ポリマー成分を垂直配向させてシリンダーアレイ型相分離構造とすることができる。

【0046】
(自立性高分子薄膜前駆体および自立性高分子薄膜の製造方法)
本実施の態様の自立性高分子薄膜の製造方法は、基板上に犠牲層を形成する工程と、上述したブロック共重合体を溶解可能な溶媒に溶解したブロック共重合体溶液を、前記犠牲層の上に塗布する工程と、溶媒を蒸発させて前記犠牲層の上に自立性高分子前駆体薄膜を形成する工程と、前記自立性高分子前駆体薄膜を加熱し、水分と接触させて、自立性高分子薄膜のシリンダー構造を形成する工程と、犠牲層を除去する工程とを含む。場合によっては、溶媒を蒸発させて前記犠牲層の上に自立性高分子前駆体薄膜を形成する工程に続き、犠牲層を除去する工程を行い、自立性高分子前駆体薄膜を製造することも可能である。

【0047】
(基板)
基板としては、疎水性物質からなる基板や表面を疎水化処理した基板を用いることが好ましい。基板としては、例えばポリエステル、ポリイミド、雲母板、シリコンウェハ、石英板、ガラス板等が挙げられる。基板表面の疎水化処理方法としては、カーボン蒸着処理やシリル化処理等による方法が好ましい。基板の厚みは特に限定されない。

【0048】
(犠牲層の形成)
犠牲層を形成するためのポリマーとしては、例えば、アルギン酸ナトリウム、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ(4-ビニルフェノール)、ポリスチレン等が挙げられる。

【0049】
犠牲層を形成するには、例えば、犠牲層を形成するためのポリマーを溶解する有機溶媒に、犠牲層を形成するためのポリマーを溶解した溶液を、基板上に塗布することによって形成することができる。犠牲層を形成するためのポリマーを溶解する有機溶媒としては、水、メタノール等が挙げられる。また、塗布する方法は、基板上に均一にポリマーを形成できる方法であれば特に限定されないが、スピンコート、キャスト、ディップ及びバーコート等の方法が好ましい。

【0050】
ブロック共重合体溶液を塗布する前に、犠牲層を形成するためのポリマーを溶解する有機溶媒を除去することが好ましく、その方法は、塗布したポリマーを損傷させない方法であれば特に限定されないが、例えば、加熱して蒸発させてもよい。

【0051】
犠牲層を除去する方法は、自立性高分子薄膜を損傷させない方法であれば特に限定されないが、例えば、溶媒により除去してもよい。この場合、自立性高分子薄膜を溶解せずに、犠牲層のみが溶解される溶媒であれば特に限定されない。例えば、犠牲層のみが溶解される溶媒としては、水やアセトン等が好ましい。

【0052】
(ブロック共重合体液の調製、塗布)
犠牲層を形成した後、自立性高分子薄膜前駆体を犠牲層上に形成するために、ブロック共重合体を溶媒に溶解し、塗布する。ブロック共重合体を溶解する有機溶媒は、犠牲層を形成するポリマーを溶解せず、ブロック共重合体のみを溶解する有機溶媒であって、均一に溶解できる溶媒であれば特に限定されないが、トルエン、THF、イソプロピルアルコールが好ましい。ブロック共重合体を溶媒に溶解させるときの、溶媒に対するブロック共重合体の濃度は、10~100g/Lが好ましい。ブロック共重合体を溶解する有機溶媒によりブロック共重合体を溶解したブロック共重合体溶液を、犠牲層上に塗布する方法は、基板上に均一にブロック共重合体を形成できる方法であれば特に限定されないが、スピンコート、キャスト、ディップ及びバーコート等の方法が好ましい。

【0053】
(自立性高分子前駆体薄膜の形成)
ブロック共重合体を溶解する有機溶媒を蒸発させて、自立性高分子前駆体薄膜のミクロ相分構造膜を形成する。基板を加熱して有機溶媒を蒸発させる場合、加熱温度は、ブロック共重合体のガラス転移温度よりも20℃低い温度よりも高い温度が好ましい。また、加熱温度はブロック共重合体の分解温度よりも低くすることが好ましい。加熱温度を上記範囲とすることにより、相分離構造を形成するのに十分な高分子の流動性を確保できる。

【0054】
(シリンダー構造の形成)
自立性高分子薄膜のシリンダー構造を形成するために、自立性高分子薄膜前駆体を水分と接触させる方法としては、40℃以上100℃以下、相対湿度80%以上の環境で2時間以上48時間未満の加熱処理をする方法である。シリンダー形成速度は、親水性ポリマー成分の重合度と疎水性ポリマー成分の繰り返し単位が小さいほど、また、温度が高いほど、速くなる。

【0055】
(転写)
犠牲層が除去されると、基板から自立性高分子薄膜が剥離する。この自立性高分子薄膜は、他の基板への転写が可能である。例えば犠牲層が除去された後に、自立性高分子薄膜を例えば水等の溶媒に浸漬させると、自立性高分子薄膜は大気-水界面に浮上する。この大気-水界面に浮上した自立性高分子薄膜の下方、すなわち水側から基板を近づけ、自立性高 分子薄膜をすくい取る方法により、基板へ転写することができる。また、大気-水界面に存在する自立性高分子薄膜の上方、すなわち気相側から基板を近づける方法(Langmu ir-Schaeffer法)により、自立性高分子薄膜を基板に転写することも可能である。

【0056】
(密閉容器)
密閉容器(例えばカプセル等の容器)の全部または一部が自立性高分子前駆体薄膜からなり、自立性高分子前駆体薄膜により、カプセル等の密閉容器の内部と外部とが遮断されたカプセルを作ることができる。密閉容器の大きさは特に限定されず、自立性高分子前駆体薄膜以外の素材を密閉容器の一部に用いてもよい。この密閉容器には、予め容器内に内包剤を内包させておいてもよい。内包剤としては、加熱および水分との接触によって形成されるシリンダーの直径よりも小さく、シリンダーを通過できるものであれば特に限定されないが、例えば、メチルオレンジが挙げられる。また、内包剤は、超微粒子分散液や、流動性を有する物質であってもよいが、自立性高分子前駆体薄膜を溶解させるような溶媒(例えば、THF、トルエン等)は使用することはできない。このような構成の密閉容器は、水分と接触できる加温状態に置くことで自立性高分子前駆体薄膜においてシリンダー構造が形成され、このシリンダー構造を通して、内包剤を外部に放出することができる。自立性高分子前駆体薄膜は、密閉容器の全部または一部でよく、内包剤の目的に応じて自立性高分子前駆体薄膜を密閉容器の全部または一部に適宜用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
[実施例1]pDDA80-b-PEO45の合成
下記一般式(4)に示す構造であって、mが80、nが45で表されるブロック共重合体を以下のように合成した。PEO45-マクロRAFT開始剤(アルドリッチ社製、数平均分子量=2,400)200mg、N-ドデシルアクリルアミド(東京化成工業社製)1000mg、アゾジイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)6.86mgをトルエン(ナカライテスク社製、特級)15mLに溶解させ、凍結脱気を三回行った後、70℃、24時間放置した。空気に暴露して反応を停止させ、室温まで冷却した後、反応溶液を濃縮し、アセトニトリル(ナカライテスク社製、特級)中に再沈殿させることでモノマーと開始剤を取り除いた。得られた粗精製物をクロロホルム(和光純薬工業社製、特級)で溶解し、アセトニトリル、メタノール(関東化学社製、鹿一級)中にそれぞれ二回ずつ再沈殿させることにより精製した。数平均分子量(Mn)、多分散度(Mw/Mn)はそれぞれプロトン核磁気共鳴分光法、ポリスチレンを基準物質としたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定した。数平均分子量Mnは、21000であった。多分散度Mw/Mnは1.25であった。
【化7】
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【実施例】
【0059】
[実施例2~3、比較例1~2]
上式(4)における、mを調節するために、実施例1における、N-ドデシルアクリルアミドの量を変化させる以外は、実施例1と同じ条件で、表1に示すmにおけるブロック共重合体を合成した。
【実施例】
【0060】
【表1】
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【実施例】
【0061】
[実施例4~5、比較例3~4]
実施例1におけるPEO45-マクロRAFT開始剤を、別のRAFT開始剤にし、その添加量も変更する以外、つまり、表2に示ように上式(1)に示すm、Y、及びZを変更する以外は、実施例1と同じ条件でブロック共重合体を合成した。
【実施例】
【0062】
【表2】
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【実施例】
【0063】
[実施例6~8、比較例5~6]
実施例1における、N-ドデシルアクリルアミドのドデシル基を、表3に示す官能基にしたアクリルアミド(m=80相当量)を使用する以外は、実施例1と同じ条件で、上式(4)のブロック共重合体を合成した。
【実施例】
【0064】
【表3】
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【実施例】
【0065】
[実施例9](犠牲層と自立性高分子前駆体薄膜の作製)
アルギン酸ナトリウム(自然化粧品研究所)の20重量%水溶液をシリコンウェハ上に4,000rpm、20秒間スピンコートすることにより、犠牲層を形成した。この犠牲層を真空下にて80℃、1時間ほど加熱することで犠牲層中に残存している水を留去した。次いで、この犠牲層上に実施例1で合成したブロック共重合体の5wt%テトラヒドロフラン溶液を1,000rpm、5秒間、1,500rpm、60秒間でスピンコートし、真空下にて80℃、1時間加熱することで自立性高分子前駆体薄膜を形成した。同様の方法で、実施例2~実施例8、及び比較例1~6で作成したブロック共重合体から、自立高分子前駆体薄膜を犠牲層上に形成した。
【実施例】
【0066】
[実施例10](自立性高分子前駆体薄膜の自立性)
実施例9によって得た自立性高分子前駆体薄膜を水に浸漬し、犠牲層であるアルギン酸ナトリウムの溶出を行い、犠牲層を除去することにより自立性高分子前駆体薄膜を得た。浸漬後、数分間で基板の端から自立性高分子薄膜が剥離するのを確認した。シリコンウェハから完全に剥離すると、シリコンウェハとほぼ同様なサイズの自立性高分子前駆体薄膜が大気—水界面に確認された。
【実施例】
【0067】
[実施例11](自立性高分子薄膜の自立性)
実施例9によって得た自立性高分子前駆体薄膜を水とともに、密閉ビン中に入れ水と接触させ、80℃、24時間の加熱処理を行い、自立性高分子薄膜とした。さらに、水により犠牲層であるアルギン酸ナトリウムが溶出し、犠牲膜が除去され、自立性高分子薄膜を得た。浸漬後、数分間で基板の端から剥離するのを確認した。シリコンウェハから完全に剥離すると、シリコンウェハとほぼ同様なサイズの自立高分子薄膜が大気—水界面に確認された。
【実施例】
【0068】
[実施例12](シリンダー構造の観察)
実施例11で得られた、実施例1で得られたブロック共重合体からなる自立性高分子薄膜と、実施例10で得られた、実施例1で得られたブロック共重合体からなる自立性高分子薄膜前駆体との構造について、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面構造の解析を行った。AFMの写真を図1に示す。自立性高分子薄膜の表面には親水性ポリマー成分に由来する六方配列したドットパターンが見られた。次いで、自立性高分子薄膜について斜入射小角X線散乱(GI-SAXS)により、構造の周期性の測定を行った(図2)。自立性高分子薄膜の表面には、親水性ポリマー成分に由来する六方配列したシリンダー構造が形成されていることがわかる。AFM及びGI-SAXSの結果より、自立性高分子薄膜はミクロ相分離構造を形成していることが確認された。同様に、実施例11で得られた、実施例2~実施例8の自立性高分子薄膜についても、実施例1で得られたブロック共重合体からなる自立高分子薄膜と同様のシリンダー構造が形成された。しかしながら、実施例11で得られた、比較例1~比較例6の自立性高分子薄膜については、表4に示すように、シリンダー構造を有する自立高分子薄膜は得られなかった。
【実施例】
【0069】
【表4】
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【実施例】
【0070】
[実施例13](転写)
実施例1で得られたブロック共重合体を、実施例11の方法によって、自立性高分子薄膜とし、この自立性高分子薄膜を、大気-水界面に存在している自立性高分子薄膜の下方、すなわち水相側からシリコンウェハを近づけ、自立性高分子薄膜をすくい取る手法で基板(シリコンウェハ)へ転写させた。GI-SAXSにより、転写後の自立性高分子薄膜の構造の周期性の側定を行った(図3、4)。自立性高分子薄膜が、垂直配向した六方最密充填のシリンダー構造となっていること、すなわち、ヘキサゴナルな構造を示すことが確認された。従って、一度基板から剥離した自立性高分子薄膜を、他の基板に転写した後においても、ミクロ相分離構造を維持していることが確認された。
【実施例】
【0071】
[実施例14](透過機能発現実験)
実施例1で得られたブロック共重合体を、実施例10の方法によって、自立性高分子薄膜前駆体とし、この自立性高分子薄膜前駆体を、親水性ポリカーボネート製トラックエッチメンブレン上に転写し、可視部に強い吸収を有するメチルオレンジ色素をプローブとして用いたシリンダー透過機能発現実験を行なった。透過機能発現実験は自立性高分子薄膜前駆体によって区切られた二個のセルを用い、初めにフィード側のセルに0.1mMメチルオレンジ溶液で満たし、通過側のセルを蒸留水で満たした。この時の時間をゼロとし、通過後のセルの水溶液を一定時間ごとに採取後、そのUV-visスペクトルを測定し、経過時間に対するメチルオレンジの濃度プロットを作製した。自立性高分子薄膜前駆体で区切った場合のプロットを白色にして、結果を図5に示す。
【実施例】
【0072】
[実施例15](透過機能発現実験)
実施例1で得られたブロック共重合体を、実施例11の方法によって、自立性高分子薄膜とし、この自立性高分子薄膜を使用する以外は、実施例14と同様にして透過機能発現実験を行なった。自立性高分子薄膜で区切った場合のプロットを黒色にして、結果を図5に示す。実施例11の方法によって得られた自立性高分子薄膜は約750nMのメチルオレンジが透過したが、実施例10の方法によって得られた自立性高分子薄膜前駆体においては、メチルオレンジは通過しなかった。
【実施例】
【0073】
[実施例16]
実施例1で得られたブロック共重合体からなる、実施例9の自立性高分子薄膜前駆体を使用し、また水分と接触させないこと以外は実施例10と同様にして、薄膜を作製した。この薄膜について、温度を80℃に制御し、実施例14と同様の透過機能発現実験を行なった。結果を図6に示す。初めはわずかしか透過していないが、80℃に制御した後、徐々にメチルオレンジが透過していき、24時間を境に透過機能が安定した。
【実施例】
【0074】
[実施例17]
実施例1において、N-ドデシルアクリルアミド1000mgをドデシルアクリレート(東京化成工業社製)1000mgに換える以外は、同じ条件で、ブロック共重合体を合成した。実施例9における実施例1の場合と同様に、自立性高分子薄膜前駆体を得ることができた。また、実施例12における実施例1の場合と同様に、水と接触させることで貫通したシリンダー構造を持つ自立性高分子薄膜を得ることができた。
【実施例】
【0075】
本発明の自立性高分子薄膜は、物質が透過することができるものであり、種々の透過膜、限外ろ過膜、ナノリアクター等として利用することができる。また、自立性高分子薄膜は、水分により解放されるカプセル等の容器として使用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5