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明細書 :NR5A1発現抑制剤および医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-151600 (P2019-151600A)
公開日 令和元年9月12日(2019.9.12)
発明の名称または考案の名称 NR5A1発現抑制剤および医薬組成物
国際特許分類 A61K  31/4745      (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P   5/38        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
C07D 471/04        (2006.01)
FI A61K 31/4745 ZNA
A61P 35/00
A61P 5/38
A61P 43/00 111
C07D 471/04 113
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2018-038982 (P2018-038982)
出願日 平成30年3月5日(2018.3.5)
発明者または考案者 【氏名】柳瀬 敏彦
【氏名】大江 賢治
【氏名】田中 智子
出願人 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100100158、【弁理士】、【氏名又は名称】鮫島 睦
【識別番号】100122297、【弁理士】、【氏名又は名称】西下 正石
【識別番号】100145104、【弁理士】、【氏名又は名称】膝舘 祥治
審査請求 未請求
テーマコード 4C065
4C086
Fターム 4C065AA05
4C065AA18
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK08
4C065LL07
4C065PP03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC08
4C086ZC41
要約 【課題】NR5A1の発現を抑制可能なNR5A1発現抑制剤の提供。
【解決手段】下記化合物の提供。具体的には、ZがCH基、(R)pがメタ位にCl基、Rがカルボキシル基である化合物CX-4945が挙げられる。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、NR5A1発現抑制剤。
【化1】
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(式中、ZはNまたはCRであり、R、RおよびRはそれぞれ独立して、置換されてもよい炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から12のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基、または水素原子、ハロゲン原子、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシバイオイソスター、CONR、OOCR、COR、若しくはNOである。ここで各Rは独立して水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から10のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基であるか、または同じ原子若しくは隣接する原子に結合している2つのRは結合して1つ若しくは複数のN、O若しくはSを含んでもよい3員から8員の環を形成してもよい。pは0から4の整数である)
【請求項2】
式Iで表される化合物が、CX-4945を含む請求項1に記載のNR5A1発現抑制剤。
【請求項3】
下記式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、副腎皮質腫瘍の処置に用いられる医薬組成物。
【化2】
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(式中、ZはNまたはCRであり、R、RおよびRはそれぞれ独立して、置換されてもよい炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から12のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基、または水素原子、ハロゲン原子、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシバイオイソスター、CONR、OOCR、COR、若しくはNOである。ここで各Rは独立して水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から10のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基であるか、または同じ原子若しくは隣接する原子に結合している2つのRは結合して1つ若しくは複数のN、O若しくはSを含んでもよい3員から8員の環を形成してもよい。pは0から4の整数である)
【請求項4】
式Iで表される化合物が、CX-4945を含む請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の医薬組成物を、対象に投与することを含む副腎皮質腫瘍の処置方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、NR5A1発現抑制剤および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
NR5A1(別名:Ad4BPあるいはSF-1)は、ステロイドホルモン受容体スーパーファミリーに属する核内転写因子である。NR5A1は、大多数のステロイド合成酵素遺伝子の上流に共通して存在するAd4またはSF-1と呼ばれるDNA結合部位に特異的に結合するとされている。またNR5A1は、正常副腎皮質、副腎皮質腺腫のすべておよび副腎皮質癌の多くの症例において、副腎皮質細胞の核内で発現していることが知られている。
【0003】
一方、プロテインキナーゼCK2(カゼインキナーゼ2)は、細胞の生存維持を含む種々の細胞機能に関与する。正常細胞中のCK2レベルは厳密に調節され、細胞増殖の役割を果たしていると考えられている。CK2は、癌特異的に多様な機能を有することが知られており、多くの癌細胞においてCK2レベルの上昇を示すことが知られている。そのため、抗癌剤として種々のCK2阻害剤が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。例えば、CX-4945は、経口投与可能なCK2阻害剤として、シスプラチン、ゲムシタビンとの併用で胆管癌に対する臨床試験が進行中である。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2011-515337号公報
【特許文献2】特表2013-506836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NR5A1はステロイドホルモン産生における主要転写調節因子であるが、NR5A1を作用標的とする薬剤は知られていない。そこで本発明は、NR5A1の発現を抑制可能なNR5A1発現抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、下記式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、NR5A1発現抑制剤である。
【0007】
【化1】
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【0008】
式中、ZはNまたはCRであり、R、RおよびRはそれぞれ独立して、置換されてもよい炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から12のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基、または水素原子、ハロゲン原子、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシバイオイソスター、CONR、OOCR、COR、若しくはNOである。ここで各Rは独立して水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から10のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基であるか、または同じ原子または隣接する原子に結合している2つのRは結合して1つまたは複数のN、OまたはSを含んでもよい3員から8員の環を形成してもよい。pは0から4の整数である。
【0009】
第二態様は、上記式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含み、副腎皮質腫瘍の処置に用いられる医薬組成物である。
【0010】
第三態様は、前記医薬組成物を対象に投与することを含む、副腎皮質腫瘍の処置方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、NR5A1の発現を抑制可能なNR5A1発現抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】CX-4945の濃度とNR5A1のmRNAの発現量の関係を示す図である。
【図2】CX-4945の濃度とNR5A1蛋白質の発現量の関係を示す図である。
【図3】CX-4945によるNR5A1のmRNAに対する影響を示す図である。
【図4A】CK2α-siRNAによるCK2α発現阻害を示す図である。
【図4B】CK2α-siRNAによるNR5A1の発現に対する影響を示す図である。
【図5】CX-4945の濃度と、H295R細胞の生存率との関係を示す図である。
【図6A】CX-4945の濃度と、コルチゾール分泌量との関係を示す図である。
【図6B】CX-4945の濃度と、アルドステロン分泌量との関係を示す図である。
【図7A】CX-4945の濃度と、アルドステロン産生副腎腫瘍細胞におけるコルチゾール産生との関係を示す図である。
【図7B】CX-4945の濃度と、アルドステロン産生副腎腫瘍細胞におけるアルドステロン産生との関係を示す図である。
【図8】CX-4945の濃度と、カスパーゼ3/7の活性化との関係を示す図である。
【図9】CX-4945の濃度と、カスパーゼ3の活性化との関係を示す図である。
【図10】CX-4945の濃度と、TUNEL陽性細胞の検出率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、NR5A1発現抑制剤等を例示するものであって、本発明は、以下に示すNR5A1発現抑制剤等に限定されない。

【0014】
NR5A1発現抑制剤
NR5A1発現抑制剤は、下記式Iで表される化合物(以下、「特定化合物」ともいう)またはその薬学的に許容される塩の少なくとも1種を含む。特定構造の化合物を含むNR5A1発現抑制剤を、NR5A1を発現する細胞に適用することで当該細胞におけるNR5A1の発現を抑制することができる。

【0015】
【化2】
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【0016】
式Iにおいて、ZはNまたはCRである。R、RおよびRはそれぞれ独立して、置換されてもよい炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から12のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基、または水素原子、ハロゲン原子、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、カルボキシバイオイソスター、CONR、OOCR、COR、若しくはNOである。ここで各Rは独立して水素原子、炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から10のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、若しくは炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基であるか、または同じ原子若しくは隣接する原子に結合している2つのRは結合して1つ若しくは複数のN、O若しくはSを含んでもよい3員から8員の環を形成してもよい。pは0から4の整数である。カルボキシバイオアイソスターには、例えば以下の官能基が含まれる。

【0017】
【化3】
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【0018】
式Iにおいて、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールアルキル基およびヘテロアリールアルキル基における置換基としては、炭素数1から8のアルキル基、炭素数2から8のアルケニル基、炭素数2から8のアルキニル基、炭素数2から8のアシル基、炭素数6から10のアリール基、炭素数5から12のヘテロアリール基、炭素数7から12のアリールアルキル基、炭素数6から12のヘテロアリールアルキル基、ハロゲン原子、OR、NR、NROR、NRNR、SR、SOR、SOR、SONR、NRSOR、NRCONR、NRCOOR、NRCOR、CN、COOR、CONR、OOCR、COR、NO等を挙げることができる。

【0019】
式Iにおいて、Zは例えばCRであり、Rは例えば水素原子である。pは例えば1であり、Rは、例えばハロゲン原子等で置換されてもよい炭素数1から8のアルキル基またはハロゲン原子である。Rは、例えばCOORまたはカルボキシバイオイソスターであり、Rは例えば水素原子または炭素数1から8のアルキル基である。

【0020】
特定化合物は、下記式Iaで表されるCX-4945を含むことが好ましい。

【0021】
【化4】
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【0022】
特定化合物は、例えば、特表2011-515337号公報に記載の方法で製造することができる。特定化合物は1つ又はそれ以上の不斉中心を有していてもよい。従って、特定化合物は、立体異性体混合物(ラセミ体及び非ラセミ体)として、あるいはエナンチオマー又はジアステレオマーとして製造することができる。特定の立体異性体は、光学活性な出発物質を用いることによって、又は、合成のいくつかの適切な段階で中間体のラセミ体若しくは非ラセミ体混合物を分割することによって得ることができる。

【0023】
特定化合物は、用量依存的にNR5A1の発現を抑制することができる。NR5A1は、ステロイドホルモン産生の主要な調節因子と考えられている。NR5A1の発現を制御することでステロイド産生を制御することができると考えられるが、NR5A1の発現を本明細書の実施例に示す濃度で制御可能な物質は従来知られていない。特定化合物は、例えば、副腎皮質癌細胞株H295Rに適用することで、用量依存的にNR5A1の発現を抑制し、さらに細胞増殖とステロイドホルモン産生を抑制することができる。さらに特定化合物は、副腎皮質癌細胞株H295Rに適用することで、アポトーシスを誘導することができる。一方、特定化合物はCK2を主要標的とする化合物として知られており、種々の癌細胞においては、CK2のサブユニットであるCK2αの発現が高いほど特定化合物に対する感受性が高いとされている。しかしながら、例えば、副腎皮質癌細胞株H295RにおいてCK2αの発現をsiRNAによりノックダウンして抑制しても、細胞増殖、ステロイドホルモン産生は変化せず、NR5A1の発現量も変化しない。すなわち、特定化合物はCK2を介さない経路によってNR5A1の発現を抑制すると考えられる。

【0024】
医薬組成物
医薬組成物は、前記特定化合物またはその薬学的に許容される塩を有効量で含み、副腎皮質腫瘍の処置に用いられる。ここで処置とは、疾患について施される何らかの処置であればよく、例えば、疾患の治療、改善、進行の抑制(悪化の防止)等が挙げられる。特定化合物は、副腎皮質癌細胞株の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導することから、特定化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、副腎皮質腫瘍の処置に用いることができる。

【0025】
また特定化合物は、NR5A1の発現を抑制し、ステロイドホルモン産生を抑制することができることから、特定化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、ステロイドホルモン産生過剰を示す疾患の処置に用いることができる。ステロイドホルモン産生過剰を示す疾患としては、副腎癌、クッシング症候群、原発性アルドステロン症等を挙げることができる。

【0026】
特定化合物は、遊離塩基の形態で、薬学的に許容される塩、水和物、エステル、溶媒和物、プロドラッグ等の形態で、NR5A1発現抑制剤または医薬組成物に用いられてもよい。

【0027】
特定化合物は、薬学的に許容される塩として含まれていてもよい。薬学的に許容される塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等から得られる金属塩、リジン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、プロカインから得られる有機塩が挙げられる。また酸付加塩としては、酢酸、プロピオン酸、アルギン酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸、メタンスルホン酸、エテンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、フロ酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グリコール酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、ムチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸等から得られる有機酸塩、臭化水素酸、塩酸、硝酸、リン酸、スルファニル酸、硫酸等から得られる無機酸塩が挙げられる。

【0028】
医薬組成物は、有効量の特定化合物に加えて、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等が挙げられる。

【0029】
医薬組成物の投与方法としては特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別、疾患の状態、その他の条件に応じた方法で投与される。例えば、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与される。また、注射剤の場合には、単独であるいはブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内に投与したり、更には必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内に投与したりすることができる。坐剤の場合には、直腸内に投与される。

【0030】
医薬組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件に応じて適宜選択すればよく、通常、有効成分である一般式(1)の化合物の量として、1日あたり体重1kgに対して0.001mg以上100mg以下、好ましくは0.001mg以上50mg以下を1回から数回に分けて投与される。投与量は、種々の条件で変動するので、上記範囲より少ない投与量で充分な場合もあるし、また上記範囲を超えた投与量が必要な場合もある。

【0031】
特定化合物を含む医薬組成物は、まったく新しい機序により効能を発揮するので、他の医薬組成物と併用されてもよい。併用される医薬組成物は、目的等に応じて適宜選択される。例えば、副腎癌においては、ミトタン(副腎皮質ホルモン阻害薬(CYP11A1、CYP17A1)との併用。あるいは、保険適応外使用だが、ある程度有効と言われているEDP療法(エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン)との併用の可能性が考えられる。また、クッシング症候群、原発性アルドステロン症などの副腎腫瘍においては、手術不能症例に対して、ミトタンとの併用;コルチゾール異常高値に対して、一過性の効果しか認められないトリロスタン(HSD3B1阻害薬)、ケトコナゾール(CYP3A4阻害薬)、メチラポン(CYP11B阻害薬)との併用が考えられる。

【0032】
副腎皮質腫瘍の処置方法
副腎皮質腫瘍の処置方法は、有効量の前記医薬組成物を、対象に投与することを含む。医薬組成物の詳細および投与方法は既述の通りである。処置の対象は、例えば、哺乳動物であり、哺乳動物はヒトを含む。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下では、データを平均値(mean)±標準誤差(SEM)で表す。統計計算は、Student t-testまたはone-way ANOVA、post-hoc testはTukey法を用い、p<0.05を有意とした。また特定化合物としては、式Iaで表されるCX-4945を用いた。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
NR5A1の発現解析 リアルタイムPCR
96ウェルプレートの1ウェル当たり、2×10個のヒト由来副腎皮質癌細胞株H295R(ATCC#CRL-2128)の細胞を播種し、一晩培養した。培養は、1%ITS premixおよび2.5%NuSerum I Culture Supplementを含むDMEM/Ham’s F-12培地を用い、37℃、5%COインキュベーター内で行った。次いで各濃度でCX-4945を含む培地と培地交換し、24時間培養した。なお、コントロールにはDMSOを用いた。CellAmp(Takarabio社)にて細胞上清を調製し、One-step SYBR PrimeScript PLUS RT-PCR-kit(Takarabio社)を用い、表1に示すプライマーを用いてリアルタイムPCRを行った。アクチンβ(ACTB)を内因性コントロールとし、NR5A1のmRNAの発現量をACTBのmRNAの発現量との比で表した。結果を表2および図1に示す。
【実施例】
【0035】
【表1】
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【実施例】
【0036】
【表2】
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【実施例】
【0037】
(実施例2)
NR5A1の発現解析 ウェスタンブロット
24ウェルプレートの1ウェル当たり2×10個のH295R細胞を播種し、一晩培養した。次いで各濃度でCX-4945を含む培地と培地交換し、24時間培養した。なお、コントロールにはDMSOを用いた。RIPA Bufferにて細胞上清を調整し、抗STF-1および抗HSP90抗体(CST社#12800および#4874)を用いてウェスタンブロットを行った。コントロールであるDMSOでの発現量を基準とし、NR5A1の強度をHSP90にて補正して発現量(fold)とした。結果を表3および図2に示す。
【実施例】
【0038】
【表3】
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【実施例】
【0039】
以上により、CX-4945は、用量依存的にH295R細胞におけるNR5A1蛋白質の発現を有意(p<0.0001)に抑制することが示された。
【実施例】
【0040】
(実施例3)
NR5A1の発現解析 RT-PCR
6ウェルプレートの1ウェル当たり2×10個のH295Rの細胞を播種し、一晩培養した。培地を5μMの濃度でCX-4945を含む培地と交換し、24時間培養した。なお、コントロールにはDMSOを添加した培地を用いた。RNeasy kit(Qiagen社)を用いてtotal RNAを調製し、total RNA 1μgをpromega社のRTキットを用いてcDNAに逆転写した。cDNAを鋳型としてKOD FX(TOYOBO社)を用いて、NR5A1 cDNAのコーディング領域を増幅するプライマーでPCR反応を行った。PCR産物を1%アガロースゲルで電気泳動した。プライマーの配列を表4に、電気泳動の結果を図3に示す。
【実施例】
【0041】
【表4】
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【実施例】
【0042】
図3では、特定化合物で処理したH295R細胞から、全長のNR5A1よりも短いPCR産物が検出された。このPCR産物をプラスミド(pCR Blunt II TOPO)にサブクローニングし、配列を決定したところ、2種類のNR5A1アイソフォームとして、NR5A1のエキソン2とエキソン7の間がスプライシングされ、エキソン1-2-7からなるSF-1ex2-7と、エキソン3とエキソン7の間がスプライシングされ、エキソン1-2-3-7からなるSF-1ex3-7が検出された。
【実施例】
【0043】
(実施例4)
siRNAによるCK2α発現阻害実験
1×10個のH295Rの細胞にnucleofecter(Lonza社)にて、200pmolのnon-target siRNA(Mission_Negative control SIC-001,SIGMA社)またはCK2α siRNAをトランスフェクションし、6ウェルプレートに播種後、一晩培養した。培地交換したのち、トランスフェクションから24時間後にCellAmp(Takarabio社)にて細胞上清を調製した。以下に示すプライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、CK2αとNR5A1の発現量を解析し、Student t検定を実施した。なお、CK2α siRNAには、配列番号9で示される配列をターゲット(オーバーハング2残基を含む)としたsiRNA(配列番号10および11)を用いた。CK2αのmRNAの発現量を図4Aに、NR5A1のmRNAの発現量を図4Bに示す。
【実施例】
【0044】
【表5】
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【実施例】
【0045】
CK2α siRNAによって、CK2αの発現は有意(p=0.0023)に抑制されたが、NR5A1の発現は抑制されなかった。よって、CX-4945によるNR5A1の発現抑制は、CK2阻害作用とは異なるメカニズムによるものと考えられる。
【実施例】
【0046】
(実施例5)
細胞増殖抑制効果
2×10個のH295R細胞を96ウェルプレートのウェルに播種し、一晩培養した。次いで、H295R細胞を各濃度のCX-4945を含む培地中で24、48、72時間培養した後、Cell Counting Kit-8(Dojindo社)を10μL加え、3時間培養後、420nmにおける吸光度を測定した。培地のみのウェルの吸光度を差し引いた後、培養0日目の吸光度に対する比を算出し、細胞生存率とした。結果を表6および図5に示す。
【実施例】
【0047】
【表6】
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【実施例】
【0048】
H295R細胞の細胞増殖が、CX-4945の添加によって、用量依存的に有意(p<0.0001)に抑制されることが示された。
【実施例】
【0049】
(実施例6)
ステロイドホルモン産生量の測定
24ウェルプレートの1ウェル当たり2×10個のH295R細胞を播種し、一晩培養した。次いで各濃度でCX-4945を含む培地と培地交換し、48時間培養した。培地中のコルチゾール、アルドステロン濃度を、Cortisol ELISA Kit、Aldosterone ELISA Kit(Cayman chemical社)にて測定した。各ウェルのタンパク量をBCA法にて測定し、タンパク1μg当たりのステロイドホルモン分泌量を算出した。コルチゾールの分泌量(ng/μg)を表7および図6Aに、アルドステロンの分泌量(pg/μg)を表8および図6Bに示す。
【実施例】
【0050】
【表7】
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【実施例】
【0051】
【表8】
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【実施例】
【0052】
H295R細胞におけるステロイドホルモン産生が、CX-4945の添加によって、用量依存的に抑制されることが示された。
【実施例】
【0053】
(実施例7)
ステロイドホルモン産生量の測定2
H295R細胞に代えて、原発性アルドステロン症患者から摘出された副腎腺腫組織の初代培養細胞および付随して得られた正常副腎初代培養細胞を用いたこと以外は、実施例6と同様にしてステロイドホルモン濃度を測定した。コルチゾール濃度を表9および図7Aに、アルドステロン濃度を表10および図7Bに示す。
【実施例】
【0054】
【表9】
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【実施例】
【0055】
【表10】
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【実施例】
【0056】
CX-4945は、副腎腺腫細胞および正常副腎細胞におけるコルチゾール産生に対しては有意な影響を与えなかった(p=0.0624およびp=0.1130)。また正常副腎細胞におけるアルドステロン産生に対しては有意な影響を与えなかったが(p=0.7097)、副腎腺腫細胞におけるアルドステロン産生を有意(p=0.0002)に抑制した。また、総蛋白で補正してもCX-4945によるアルドステロン産生抑制がみられた。このことから、CX-4945は正常細胞のステロイドホルモン産生には影響せずに、ステロイドホルモン過剰産生細胞におけるステロイドホルモン産生を抑制できることが示唆される。
【実施例】
【0057】
(実施例8)
カスパーゼ3/7活性の測定
96ウェルプレートの1ウェル当たり2×10個のH295Rの細胞を播種し、一晩培養した。次いで各濃度でCX-4945を含む培地と交換し24時間培養した。培地と等量のCaspase-Glo 3/7 Assay試薬(Promega社)を加えて、1時間、37℃、インキュベーションした後、ルミノメーターを用いて、化学発光量(unit)を測定した。各ウェルの化学発光量をタンパク量で補正し、タンパク質1μg当たりの化学発光量(unit/μg)を算出した。結果を表11および図8に示す。
【実施例】
【0058】
【表11】
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【実施例】
【0059】
CX-4945の添加によって、用量依存的にH295R細胞におけるカスパーゼ3/7が有意に活性化されることが示された。
【実施例】
【0060】
(実施例9)
切断カスパーゼ3の検出
24ウェルプレートの1ウェル当たり2×10個のH295R細胞を播種し、一晩培養した。次いで各濃度でCX-4945を含む培地と培地交換し、24時間培養した。RIPA Bufferにて細胞上清を調製し、抗カスパーゼ3抗体(CST社9662)を用いてウェスタンブロットを行い、カスパーゼ3および切断カスパーゼ3を検出した。結果を図9に示す。
【実施例】
【0061】
(実施例10)
TUNEL陽性細胞の検出
4ウェルチャンバースライドの1ウェル当たり1×10個のH295R細胞を播種し、一晩培養した。次いで各濃度でCX-4945を含む培地と培地交換し、24時間培養した。なお、コントロールにはDMSOを用いた。細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液にて固定した後、promega社のDeadEnd Fluorometric TUNEL Systemを用いて、TUNEL陽性細胞を検出、カウントした。TUNEL陽性細胞数を全細胞数で割り、TUNEL陽性細胞率(%)とした。結果を表12および図10に示す。
【実施例】
【0062】
【表12】
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【実施例】
【0063】
コントロールであるDMSOで処理したウェルでは、TUNEL陽性細胞は検出されなかった。
以上から、H295R細胞では、CX-4945処理によってTUNEL陽性細胞率(%)が有意に上昇することが示された。またCX-4945処理によってH295R細胞にアポトーシスが誘導されることが示された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図5】
5
【図6A】
6
【図6B】
7
【図7A】
8
【図7B】
9
【図8】
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【図9】
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【図10】
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