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明細書 :リチウムイオン導電性組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-160566 (P2019-160566A)
公開日 令和元年9月19日(2019.9.19)
発明の名称または考案の名称 リチウムイオン導電性組成物
国際特許分類 H01M  10/0565      (2010.01)
H01M  10/0569      (2010.01)
H01M  10/0568      (2010.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01B   1/06        (2006.01)
C08G  73/06        (2006.01)
FI H01M 10/0565
H01M 10/0569
H01M 10/0568
H01M 10/052
H01B 1/06 A
C08G 73/06
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2018-045831 (P2018-045831)
出願日 平成30年3月13日(2018.3.13)
発明者または考案者 【氏名】金子 達雄
【氏名】松見 紀佳
【氏名】アニルダ ナグ
【氏名】ヴェーダラージャン ラーマン
出願人 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100141472、【弁理士】、【氏名又は名称】赤松 善弘
審査請求 未請求
テーマコード 4J043
5G301
5H029
Fターム 4J043PA02
4J043QC28
4J043RA42
4J043UA12
4J043UA38
4J043UA45
4J043YB05
4J043YB12
4J043YB17
4J043ZA44
4J043ZB49
5G301CA16
5G301CD01
5H029AJ01
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK11
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM07
5H029AM09
5H029AM16
5H029HJ02
要約 【課題】耐熱性に優れると共にリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有するリチウムイオン導電性組成物、及び当該組成物を含有するリチウムイオン二次電池用電解質の提供。
【解決手段】ベンズイミダゾールの繰り返し単位、及びリチオ化し、ボロン化した特定のベンズイミダゾールの繰り返し単位とを有するベンズイミダゾールポリマー、及びイオン液体を含有するリチウムイオン導電性組成物、及び当該組成物を含有するリチウムイオン二次電池用電解質。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP2019160566A_000019t.gif
で表わされる繰り返し単位および式(II):
【化2】
JP2019160566A_000020t.gif
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーおよびイオン液体を含有することを特徴とするリチウムイオン導電性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウムイオン導電性組成物を含有してなるリチウムイオン二次電池用電解質。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン導電性組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、航空機、自動車、鉄道車両、船舶などの輸送機器、電子機器などに使用されるリチウムイオン二次電池に使用することが期待されるリチウムイオン導電性組成物および当該リチウムイオン導電性組成物を含有するリチウムイオン二次電池用電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度を有する電池として用いられている。リチウムイオン二次電池には、有機溶媒系リチウムイオン二次電池と水溶液系リチウムイオン二次電池とに大別される。有機溶媒系リチウムイオン二次電池には、水溶液系リチウムイオン二次電池と対比して、一般にイオン伝導度およびイオンの拡散速度が低く、低温状態で効率よく放電させることが困難であるという欠点がある。
【0003】
低温状態で放電を効率よく行なうことができる有機溶媒系リチウムイオン二次電池に用いることができるリチウムイオン導電性ポリマーとして、リチウムイオン導電性を示し、多数の孔を有し、当該孔の中に有機電解液が保持され、イオンが拡散する通路が確保されている多孔性リチウムイオン導電性ポリマーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記多孔性リチウムイオン導電性ポリマーは、低温での放電性がよく、高温での自己放電量が小さく、長期間の充放電特性に優れるものとされている。しかし、前記多孔性リチウムイオン導電性ポリマーには、ポリアクリロニトリルなどのポリマーが用いられていることから、耐熱性に劣るという欠点がある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2002-373705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有するリチウムイオン導電性組成物、および当該リチウムイオン導電性組成物を含有するリチウムイオン二次電池用電解質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)式(I):
【0008】
【化1】
JP2019160566A_000002t.gif

【0009】
で表わされる繰り返し単位および式(II):
【0010】
【化2】
JP2019160566A_000003t.gif

【0011】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーおよびイオン液体を含有することを特徴とするリチウムイオン導電性組成物、および
(2) 前記(1)に記載のリチウムイオン導電性組成物を含有してなるリチウムイオン二次電池用電解質
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有するリチウムイオン導電性組成物、および当該リチウムイオン導電性組成物を含有するリチウムイオン二次電池用電解質が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】製造例1で用いられた2,5-ポリベンズイミダゾールのフーリエ変換型赤外分光分析の結果を示すグラフである。
【図2】製造例1で用いられた2,5-ポリベンズイミダゾールの13C-NMRスペクトルを示すグラフである。
【図3】製造例1で用いられた2,5-ポリベンズイミダゾールの広角X線回折図である。
【図4】製造例1で用いられた2,5-ポリベンズイミダゾールの応力-歪曲線を示すグラフである。
【図5】製造例2で得られたベンズイミダゾールポリマーのフーリエ変換型赤外分光分析の結果を示すグラフである。
【図6】製造例2で得られたベンズイミダゾールポリマーの11B-NMRスペクトルを示すグラフである。
【図7】実施例1~5で得られたリチウムイオン導電性組成物A~Eのイオン伝導度の温度依存性の測定結果を示すグラフである。
【図8】図7に示されたイオン伝導度の温度依存性の測定結果をVFTプロットしたグラフである。
【図9】実験例2で用いられた半電池の構造を示す概略説明図である。
【図10】実験例2で用いられた半電池の充放電試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリチウムイオン導電性組成物は、前記したように、式(I):

【0015】
【化3】
JP2019160566A_000004t.gif

【0016】
で表わされる繰り返し単位および式(II):

【0017】
【化4】
JP2019160566A_000005t.gif

【0018】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を示す)
で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーおよびイオン液体を含有することを特徴とする。

【0019】
本発明に用いられるベンズイミダゾールポリマーは、放射菌の代謝経路からの生合成経路が確立されている3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸を原料として用いて合成することができる。したがって、本発明に用いられるベンズイミダゾールポリマーは、地球環境にやさしいバイオマス系化合物である3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸を原料として調製することができるという利点を有する。

【0020】
以下に、原料として3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸を用いてベンズイミダゾールポリマーを調製する方法について説明するが、本発明は、当該方法のみによって限定されるものではない。

【0021】
(A)ベンズイミダゾールホモポリマーの調製
ベンズイミダゾールホモポリマーは、例えば、式:

【0022】
【化5】
JP2019160566A_000006t.gif

【0023】
(式中、pは、ベンズイミダゾールホモポリマーの重合度を示す)
で表わされるように、3-アミノ-4-ヒドロキシ安息香酸をスマイルス(Smiles)転位させることによって3,5-ジアミノ安息香酸を調製し、得られた3,5-ジアミノ安息香酸を重合させることによって調製することができる。

【0024】
ベンズイミダゾールホモポリマーは、耐熱性に優れ〔例えば、熱重量分析による窒素ガス雰囲気中における10%重量減少温度(Td10):689℃〕、機械的強度に優れており、破断時の伸度が小さい。したがって、本発明に用いられるベンズイミダゾールポリマーは、当該ベンズイミダゾールホモポリマーを製造中間体として用いて調製することができることから、耐熱性および機械的強度に優れ、破断時の伸度が小さいという利点を有する。

【0025】
なお、前記熱重量分析による重量減少温度(Td)は、以下の測定条件下で測定したときの値である。

【0026】
〔熱重量分析の測定条件〕
・測定装置:熱重量-示差熱同時測定装置〔(株)日立ハイテクノロジーズ製、商品名:STA7200〕
窒素ガス雰囲気中または空気中にて昇温速度10℃/minで800℃までベンズイミダゾールホモポリマーを加熱し、重量減少度を測定した。

【0027】
(B)ベンズイミダゾールポリマーの調製
ベンズイミダゾールポリマーは、例えば、式:

【0028】
【化6】
JP2019160566A_000007t.gif

【0029】
(式中、R1、R2、R3およびpは前記と同じ。qはベンズイミダゾールの繰り返し単位、rはリチオ化されたベンズイミダゾールの繰り返し単位を示す)
で表わされるように、ベンズイミダゾールホモポリマーを用いて調製することができる。より具体的には、以下のようにしてベンズイミダゾールホモポリマーを用いてベンズイミダゾールポリマーを調製することができる。

【0030】
〔ベンズイミダゾールホモポリマーのリチオ化〕
ベンズイミダゾールホモポリマーをリチオ化剤でリチオ化させることにより、ベンズイミダゾールホモポリマーに基づく繰り返し単位の一部がリチオ化され、式(III):

【0031】
【化7】
JP2019160566A_000008t.gif

【0032】
(式中、qおよびrは前記と同じ)
で表わされるベンズイミダゾールポリマーの製造中間体を得ることができる。

【0033】
式(III)において、qとrの比率は、ベンズイミダゾールホモポリマーのリチオ化を調整することによって適宜調節することができる。ベンズイミダゾールホモポリマーのリチオ化は、使用されるリチオ化剤の量を調節することによって容易に制御することができる。

【0034】
リチオ化剤としては、例えば、水素化リチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0035】
ベンズイミダゾールホモポリマーのリチオ化は、必要により、非水系有機溶媒中で行なうことができる。非水系有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0036】
ベンズイミダゾールホモポリマーのリチオ化の温度は、特に限定されないが、通常、0~100℃程度であることが好ましい。ベンズイミダゾールホモポリマーのリチオ化は、大気中で行なってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。

【0037】
以上のようにしてベンズイミダゾールホモポリマーをリチオ化させることにより、式(III)で表わされるベンズイミダゾールポリマーの製造中間体を調製することができる。

【0038】
〔ベンズイミダゾールポリマーの製造中間体のボロン化〕
式(III)で表わされるベンズイミダゾールポリマーの製造中間体をボロン化させることにより、式(I)で表わされる繰り返し単位および式(II)で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーを得ることができる。

【0039】
ベンズイミダゾールポリマーの製造中間体をボロン化させる際には、ボロン化剤が用いられる。ボロン化剤としては、例えば、式:BR123(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされるボロン化剤を用いることができる。式:BR123において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を示すが、当該アルキル基および当該アリール基は、本発明の目的が阻害されない範囲内でハロゲン原子または置換基を有していてもよい。

【0040】
ボロン化剤の量は、ベンズイミダゾールポリマーの製造中間体が有するリチウム原子が効率よくボロン化されるようにするために、通常、ベンズイミダゾールポリマーの製造中間体が有するリチウム原子1モルあたり、1.2~2モル程度であることが好ましい。

【0041】
ベンズイミダゾールポリマーの製造中間体のボロン化の温度は、特に限定されないが、通常、0~100℃程度であることが好ましい。ベンズイミダゾールポリマーの製造中間体のボロン化は、大気中で行なってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。

【0042】
以上のようにしてベンズイミダゾールポリマーの製造中間体をボロン化させることにより、式(IV):

【0043】
【化8】
JP2019160566A_000009t.gif

【0044】
(式中、R1、R2、R3、qおよびrは前記と同じ)
で表わされるベンズイミダゾールポリマー、換言すれば、式(I)で表わされる繰り返し単位および式(II)で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーを得ることができる。

【0045】
なお、式(IV)では、ベンズイミダゾールに基づく繰り返し単位とボロン化されたベンズイミダゾールに基づく繰り返し単位とが便宜上ブロックのように記載されているが、実際に得られるベンズイミダゾールポリマーでは、ベンズイミダゾールに基づく式(I)で表わされる繰り返し単位とボロン化されたベンズイミダゾールに基づく式(II)で表わされる繰り返し単位とがランダムに結合している。

【0046】
ベンズイミダゾールポリマーは、式(I)で表わされる繰り返し単位および式(II)で表わされる繰り返し単位を有する。式(I)で表わされる繰り返し単位と式(II)で表わされる繰り返し単位とのモル比〔式(I)で表わされる繰り返し単位[式(IV)におけるq]/式(II)で表わされる繰り返し単位[式(IV)におけるr]〕は、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有するリチウムイオン導電性組成物を得る観点から、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは20/80~80/20、より一層好ましくは25/75~75/25、さらに好ましくは20/80~80/20である。

【0047】
ベンズイミダゾールポリマーの数平均分子量は、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有するリチウムイオン導電性組成物を得る観点から、好ましくは2000~100000、より好ましくは3000~100000である。

【0048】
なお、ベンズイミダゾールポリマーおよび本発明に用いられる他のポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて以下の測定条件で測定したときの値である。

【0049】
〔測定条件〕
・装置:昭和電工(株)製、商品名:Shodex-101
・注入時の濃度:0.01質量%
・注入量:100μL
・流速:1mL/min
・溶媒:N,N-ジメチルホルムアミド
・カラム:昭和電工(株)製、商品名:Shodex KD-803および商品名:Shodex KD-804
・カラムの温度:40℃
・標準:ポリメチルメタクリレート

【0050】
次に、式(I)で表わされる繰り返し単位および式(II)で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーとイオン液体とを混合することにより、本発明のリチウムイオン導電性組成物を得ることができる。

【0051】
イオン液体としては、例えば、カチオン部とアニオン部を有するイオン液体などが挙げられる。

【0052】
カチオン部としては、例えば、ピロリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、四級アンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、モルホリニウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有するリチウムイオン導電性組成物を得る観点から、ピロリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオンおよび四級アンモニウムカチオンが好ましい。

【0053】
カチオン部の具体例としては、式(V):

【0054】
【化9】
JP2019160566A_000010t.gif

【0055】
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を示す)
で表わされるピロリジニウムカチオン、式(VI):

【0056】
【化10】
JP2019160566A_000011t.gif

【0057】
(式中、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を示す)
で表わされるスルホニウムカチオン、式(VII):

【0058】
【化11】
JP2019160566A_000012t.gif

【0059】
(式中、R9およびR10は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基、R11は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示す)
で表わされるイミダゾリウムカチオン、式(VIII):

【0060】
【化12】
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【0061】
(式中、R12およびR13は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を示す)
で表わされるピリジニウムカチオン、式(IX):

【0062】
【化13】
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【0063】
(式中、R14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基を示す)
で表わされる四級アンモニウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカチオン部は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。

【0064】
アニオン部としては、例えば、式(X):

【0065】
【化14】
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【0066】
(式中、R18およびR19は、それぞれ独立してフッ素原子、トリフルオロメチル基またはペンタフルオロエチル基を示す)
で表わされるビススルホニルイミドアニオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0067】
カチオン部とアニオン部を有するイオン液体の具体例としては、例えば、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-プロピル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのイオン液体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。

【0068】
式(I)で表わされる繰り返し単位および式(II)で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマー100質量部あたりのイオン液体の量は、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有するリチウムイオン導電性組成物を得る観点から、好ましくは30~400質量部、より好ましくは40~300質量部、さらに好ましくは50~200質量部である。

【0069】
式(I)で表わされる繰り返し単位および式(II)で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーとイオン液体との混合は、常温で大気中または窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で行なうことができる。

【0070】
以上のようにして得られるリチウムイオン導電性組成物は、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有することから、リチウムイオン二次電池用電解質に好適に使用することができる。

【0071】
本発明のリチウムイオン二次電池用電解質は、本発明のリチウムイオン導電性組成物を含有するものである。本発明のリチウムイオン二次電池用電解質は、本発明のリチウムイオン導電性組成物のみで構成されていてもよく、必要により、溶媒などの他の成分を本発明の目的が阻害されない範囲内で含有していてもよい。

【0072】
本発明のリチウムイオン二次電池用電解質は、本発明のリチウムイオン導電性組成物を含有しているので、耐熱性に優れるとともにリチウムイオン伝導性に優れ、高リチウムイオン輸率を有することから、例えば、航空機、自動車、鉄道車両、船舶などの輸送機器、電子機器などに使用されるリチウムイオン二次電池に使用することが期待されるものである。
【実施例】
【0073】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
なお、以下の各実施例および比較例で得られた化合物の物性は、以下の方法に基づいて調べた。
【実施例】
【0075】
13C-NMRスペクトルおよび11B-NMRスペクトル〕
・測定装置:核磁気共鳴分光装置〔ブルカー(Bruker)社製、商品名:AVANCE III〕
【実施例】
【0076】
〔フーリエ変換型赤外分光分析(FT-IR)〕
フーリエ変換型赤外分光装置〔日本分光(株)製、品番:FT/IR6100〕を用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。
【実施例】
【0077】
製造例1
2,5-ベンズイミダゾールを重合させて得られた2,5-ポリベンズイミダゾールをあらかじめ用意した。当該2,5-ポリベンズイミダゾールの数平均分子量は、35600であった。
【実施例】
【0078】
前記2,5-ポリベンズイミダゾールのフーリエ変換型赤外分光分析(FT-IR)を図1に示す。図1は、前記2,5-ポリベンズイミダゾールのフーリエ変換型赤外分光分析の結果を示すグラフである。また、前記2,5-ポリベンズイミダゾールの13C-NMRスペクトルを図2に示す。図2は、前記2,5-ポリベンズイミダゾールの13C-NMRスペクトルを示すグラフである。これらの結果から、前記2,5-ポリベンズイミダゾールは、式(I)で表わされる繰り返し単位を有することが確認された。
【実施例】
【0079】
前記で得られた2,5-ポリベンズイミダゾールの熱重量分析による1%重量減少温度(Td1)、5%重量減少温度(Td5)および10%重量減少温度(Td10)を窒素ガス雰囲気中または大気中で前記熱重量分析の測定条件で測定した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0080】
【表1】
JP2019160566A_000016t.gif
【実施例】
【0081】
表1に示された結果から、2,5-ポリベンズイミダゾールは、窒素ガス雰囲気中における10%重量減少温度(Td10)が689℃であり、大気中における10%重量減少温度(Td10)が535℃であることから、従来のポリアクリロニトリル(ガラス転移温度:104℃)が用いられている多孔性リチウムイオン導電性ポリマーと対比して、耐熱性に格段に優れていることがわかる。
【実施例】
【0082】
参考までに、2,5-ポリベンズイミダゾールの広角X線回折の測定結果を図3に示す。なお、図3は、2,5-ポリベンズイミダゾールの広角X線回折図である。図3に示された結果から、2,5-ポリベンズイミダゾールは、ピークがブロードであることから、結晶性が小さいものと考えられる。
【実施例】
【0083】
次に、引張試験機〔インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製、商品名:INSTRON 3365〕を用い、初期標線間距離50mm、引っ張り速度200mm/minの条件で2,5-ポリベンズイミダゾールのプレート(縦:70mm、横:150mm、厚さ:2mm)の破断強度、弾性率および破断伸度を測定した。その結果を図4に示す。図4は、2,5-ポリベンズイミダゾールの応力-歪曲線を示すグラフである。
【実施例】
【0084】
図4に示された結果から、2,5-ポリベンズイミダゾールの破断強度が95MPaであり、弾性率が9.5GPaであり、破断伸度が0.027%であることが確認された。これらの結果から、前記2,5-ポリベンズイミダゾールは、剛直であり、機械的強度に優れていることがわかる。
【実施例】
【0085】
製造例2
フラスコ内を窒素ガス置換し、当該フラスコ内に乾燥させたジメチルスルホキシド10mLを入れた後、2,5-ポリベンズイミダゾール470mg(1当量)および水素化リチウム1.11g(3当量)をフラスコ内に添加し、窒素ガス雰囲気中で攪拌しながら室温下で2,5-ポリベンズイミダゾールと水素化リチウムとを24時間反応させることにより、反応混合物を得た。前記で得られた反応混合物を80℃で1時間加熱することにより、濃い赤色が発色し、式(III)で表わされるベンズイミダゾールポリマーの製造中間体が得られた。
【実施例】
【0086】
次に、前記で得られた反応混合物を室温まで放冷し、攪拌下で15分間かけてゆっくりとトリエチルボラン40mL(6当量)をフラスコ内に添加したところ、黄色の沈殿物が形成された。この沈殿物は、反応温度が低下し、80℃に到達した時点では溶解していた。
【実施例】
【0087】
前記で得られた反応混合物をさらに24時間撹拌し、反応混合物の温度を室温にまで放冷した後、トルエンとアセトンとの混合溶媒〔トルエン/アセトン(容量比):50/50〕に添加することにより、生成したポリマーを沈殿させた。
【実施例】
【0088】
前記で得られたポリマーを80℃の雰囲気中で3日間乾燥させた後、N,N-ジメチルホルムアミドに添加して溶解させ、トルエンとアセトンとの混合溶媒〔トルエン/アセトン(容量比):50/50〕に添加して再沈殿させることによって精製し、得られたポリマーを回収した。前記で得られたポリマーを減圧乾燥機中で80℃にて3日間乾燥させた。
【実施例】
【0089】
前記で得られたポリマーのフーリエ変換型赤外分光分析(FT-IR)を図5に示す。図5に示された結果から、前記で得られたポリマーは、式(I)で表わされる繰り返し単位および式(II)で表わされる繰り返し単位を有するベンズイミダゾールポリマーであることが確認された。
【実施例】
【0090】
また、前記で得られたポリマーにおいて、式(I)で表わされる繰り返し単位10200であり、式(II)で表わされる繰り返し単位の数平均分子量は25400であることがゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって確認された。また、13C-NMRスペクトルの測定結果から、前記で得られたポリマーは、式(IV)において、qとrとの質量比が55/45である化合物であることが確認された。
【実施例】
【0091】
前記で得られたベンズイミダゾールポリマーの11B-NMRスペクトルを調べた。その結果を図6に示す。図6は、前記ベンズイミダゾールポリマーの11B-NMRスペクトルを示すグラフである。
【実施例】
【0092】
図6に示された結果から、前記で得られたベンズイミダゾールポリマーにおいて、ホウ素原子が前記ベンズイミダゾールポリマーの製造中間体のリチウム原子が存在していた箇所のみに導入されており、ボロン化されたベンズイミダゾールに基づく繰り返し単位の比率が45モル%であることが確認された。
【実施例】
【0093】
実施例1
製造例2で得られたベンズイミダゾールポリマー67mgおよび1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド33mgをバイアル瓶に入れ、攪拌しながら80℃の温度にて減圧下で約10時間乾燥させることにより、黄色のペースト状のリチウムイオン導電性組成物Aを得た。
【実施例】
【0094】
実施例2
実施例1において、ベンズイミダゾールポリマーの量を50mgに変更し、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの量を50mgに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン導電性組成物Bを得た。
【実施例】
【0095】
実施例3
実施例1において、ベンズイミダゾールポリマーの量を33mgに変更し、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの量を67mgに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン導電性組成物Cを得た。
【実施例】
【0096】
実施例4
実施例1において、ベンズイミダゾールポリマーの量を25mgに変更し、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの量を75mgに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン導電性組成物Dを得た。
【実施例】
【0097】
実施例5
実施例1において、ベンズイミダゾールポリマーの量を20mgに変更し、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの量を80mgに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン導電性組成物Eを得た。
【実施例】
【0098】
実験例1
各実施例で得られたリチウムイオン導電性組成物の物性として、イオン伝導度、キャリアーイオン数(A)、イオン輸送の活性化エネルギー(B)、信頼性(R2)、リチウムイオン輸率およびリチウムイオン伝導度を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表2に示す。
【実施例】
【0099】
〔イオン伝導度〕
インピーダンスアナライザー(ソーラートロン社製、品番:1260)を用い、リチウムイオン導電性組成物のイオン伝導度を交流インピーダンス法で評価した。その際、測定温度を変化させてイオン伝導度の温度依存性を評価した。その結果を図7に示す。
【実施例】
【0100】
図7は、実施例1~5で得られたリチウムイオン導電性組成物A~Eのイオン伝導度の温度依存性の測定結果を示すグラフである。なお、図7において、A~Eは、それぞれ順に、リチウムイオン導電性組成物A~Eのデータを示す。
【実施例】
【0101】
〔キャリアーイオン数(A)、イオン輸送の活性化エネルギー(B)および信頼性(R2)〕
図7に示された結果に基づき、Vogel-Fulcher-Tammanプロット(以下、VFTプロットという)によるリチウムイオン導電性組成物のイオン伝導挙動を解析した。より具体的には、式(1):
σT1/2=Aexp(-B/(T-T0)) (1)
(式中、Aはキャリアーイオン数、Bはイオン輸送の活性化エネルギー、T0はガラス転移温度を示す)
に基づき、VFTプロットを作成した。その結果を図8に示す。図8は、図7に示されたイオン伝導度の温度依存性の測定結果をVFTプロットしたグラフである。
【実施例】
【0102】
図8において、縦軸切片がキャリアーイオン数(A)であり、直線の傾きがイオン輸送の活性化エネルギー(B)である。
【実施例】
【0103】
なお、表2に記載の信頼性(R2)は、図8で示されたグラフの直線性を意味し、その値が1に近くなることが好ましい。
【実施例】
【0104】
〔リチウムイオン輸率〕
リチウムイオン導電性組成物のリチウムイオンおよび対アニオンの拡散係数比からリチウムイオン輸率を算出した。
【実施例】
【0105】
〔リチウムイオン伝導度〕
ステンレス製の一対の電極を用意し、リチウムイオン導電性組成物を電解質として用いて二極式評価セルを作製した。この二極式評価セルを用い、交流分極法によりリチウムイオン伝導度を測定した。
【実施例】
【0106】
なお、参考のため、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドのイオン伝導度を表2に併記する(出展: N. Matsumi et al., ChemElectroChem., 2015, 2, 1913-1916)。
【実施例】
【0107】
【表2】
JP2019160566A_000017t.gif
【実施例】
【0108】
表2に示された結果から、各実施例で得られたリチウムイオン導電性組成物は、いずれも、イオン伝導度、キャリアーイオン数、活性化エネルギー、信頼性、リチウムイオン輸率およびリチウムイオン伝導度に優れていることがわかる。
【実施例】
【0109】
また、各実施例のなかでは、実施例3~5で得られたリチウムイオン導電性組成物は、リチウムイオン輸率およびリチウムイオン伝導度に優れており、それらのなかでも実施例3で得られたリチウムイオン導電性組成物は、イオン伝導度にも優れていることがわかる。
【実施例】
【0110】
実験例2
実施例4で得られたリチウムイオン導電性組成物Dを用い、以下のようにして充放電試験を行なった。
【実施例】
【0111】
図9に示される構造を有する半電池を用いた。図9は、半電池の構造を示す概略説明図である。図9に示されるように上から順に金属製アノード容器1、固定具2、スペーサー3、作用電極4としてシリコンプレート(直径:15mm、厚さ:100μm)、セパレータ5として円形のポリプロピレン膜(直径:16mm、厚さ:25μm)、対極6としてリチウム金属板(直径:15mm、厚さ:約60μm)、電解液7としてリチウムイオン導電性組成物Dおよび金属製カソード容器8がそれぞれ順に積層されたCR2025タイプのコイン型の半電池を作製した。
【実施例】
【0112】
コンパクト充放電装置〔(株)イーシーフロンティア製、品番:ECAD-1000〕を用い、0.1C(0.0172mA)の電流比でカットオフ電位限界(2.1~0.03V)にて前記で得られた半電池の充放電20サイクルを定電流で行なった。その結果を図10に示す。図10は、前記半電池の充放電試験の結果を示すグラフである。
【実施例】
【0113】
図10において、Xは、第1回目のサイクルにおける放電容量であり、その放電容量は、1118mAh/gであった。また、Yは、第20回目のサイクルにおける放電容量であり、その放電容量は、1297mAh/gであった。
【実施例】
【0114】
以上の結果から、前記リチウムイオン導電性組成物を用いることにより、電池の充放電を可逆的に行なうことができ、充放電を繰り返しても1000mAh/g以上の放電容量が維持されることがわかる。また、充放電を繰り返すことにより、放電容量が増加していることから、充放電の繰り返しにより、良好な固体電解質界面が電極上に形成されているものと考えられる。
【実施例】
【0115】
実験例3
リチウムイオン導電性組成物Aをプレート上に塗工することにより、フィルムを形成させた後、乾燥させた。得られたフィルムを加熱したときの質量減少を熱重量分析計(TGA)で調べた。その結果、加熱温度が250℃となるまで質量減少がほとんど認められなかったことから、前記フィルムは、250℃以上の耐熱性を有することが確認された。
【実施例】
【0116】
実験例4
リチウムイオン導電性組成物A~Eの熱重量分析による5%重量減少温度(Td5)および10%重量減少温度(Td10)を大気中で前記熱重量分析の測定条件で測定した。その結果を表3に示す。
【実施例】
【0117】
【表3】
JP2019160566A_000018t.gif
【実施例】
【0118】
表3に示された結果から、前記リチウムイオン導電性組成物は、いずれも、10%重量減少温度(Td10)が340℃以上であることから、従来のポリアクリロニトリル(ガラス転移温度:104℃)が用いられている多孔性リチウムイオン導電性ポリマーと対比して、耐熱性に格段に優れていることがわかる。
【実施例】
【0119】
以上の結果から、本発明のリチウムイオン導電性組成物は、従来のポリアクリロニトリルが用いられている多孔性リチウムイオン導電性ポリマーと対比して耐熱性に優れているのみならず、リチウムイオン伝導性にも優れ、高リチウムイオン輸率を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明のリチウムイオン導電性組成物は、耐熱性に優れているのみならず、リチウムイオン伝導性にも優れ、高リチウムイオン輸率を有することから、リチウムイオン二次電池用電解質に好適に使用することができるので、これらの性質が要求される用途、例えば、航空機、自動車、鉄道車両、船舶などの輸送機器、電子機器などに使用されるリチウムイオン二次電池に使用することが期待される。
【符号の説明】
【0121】
1 金属製アノード容器
2 固定具
3 スペーサー
4 作用電極
5 セパレータ
6 対極
7 電解液
8 金属製カソード容器

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9