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明細書 :サツマイモの苗及びその作成方法、並びにサツマイモの栽培方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-143188 (P2018-143188A)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明の名称または考案の名称 サツマイモの苗及びその作成方法、並びにサツマイモの栽培方法
国際特許分類 A01G  22/00        (2018.01)
FI A01G 1/00 301Z
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2017-043136 (P2017-043136)
出願日 平成29年3月7日(2017.3.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (電気通信回線を通じての公開) 掲載日:平成28年9月8日 掲載アドレス:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/242/0/242_75/_article/-char/ja/ (刊行物による公開) 刊行物名:第242回日本作物学会講演会要旨集 発行日:平成28年9月9日 (集会での発表による公開) 研究集会名:第242回日本作物学会講演会 開催日:平成28年9月10~11日 公開日:平成28年9月11日
発明者または考案者 【氏名】下田代 智英
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100180862、【弁理士】、【氏名又は名称】花井 秀俊
審査請求 未請求
テーマコード 2B022
Fターム 2B022AA01
2B022AB13
要約 【課題】保存性が高く、機械定植に適する規格性を有し、且つ安定した収量、高い規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することのできるサツマイモ苗及びその作成方法を提供する。
【解決手段】2~4個の節12を有し、且つ節の葉柄14及び展開した葉身15が除去されているサツマイモの苗を作成する方法であって、2個以上の節を有するサツマイモの茎を準備する、準備工程;2個以上の節を有するサツマイモの茎から、節の葉柄及び展開した葉身を除去する、除去工程;2個以上の節を有し、且つ節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの茎を切断して、2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗を得る、切断工程を含む、方法に関する。2~4個の節を有し、且つ節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗にも関する。サツマイモの苗を用いるサツマイモの栽培方法にも関する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗を作成する方法であって、
2個以上の節を有するサツマイモの茎を準備する、準備工程、
2個以上の節を有するサツマイモの茎から、該節の葉柄及び展開した葉身を除去する、除去工程、
2個以上の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの茎を切断して、2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗を得る、切断工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗。
【請求項3】
3個の節を有する、請求項2に記載のサツマイモの苗。
【請求項4】
5~15 cmの範囲の茎長を有する、請求項2又は3に記載のサツマイモの苗。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載のサツマイモの苗を、10~20 cmの範囲の株間隔で定植する、定植工程、
を含む、サツマイモを栽培する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモの苗及びその作成方法、並びにサツマイモの栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サツマイモ又は甘藷(イポモエア・バタタス(Ipomoea batatas))は、ヒルガオ科サツマイモ属に分類される植物である。サツマイモの栽培においては、育苗及び採苗を経て定植するまでに、栽培の全労働時間の約半分を費やすとされている。このため、育苗及び定植の労力分散、省力化、並びに/又は完全自動化のための技術開発が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1は、塊根小切片による甘藷育苗法を記載する。当該文献に記載の方法は、塊根小切片から不定芽を形成させて、育苗する。当該文献は、前記方法により、芽長が3 cm~22 cmであり、節数が5~15節である甘藷の苗を得ることができると記載する。
【0004】
非特許文献1及び2は、サツマイモのセル苗の生産法を記載する。当該文献は、伸長したサツマイモのほふく茎を各節の直下で切断し、腋芽を有した切断茎1節をセルトレイ中の培土に挿苗することにより、サツマイモのセル苗を大量に生産することができると記載する。
【0005】
特許文献2、並びに非特許文献3及び4は、サツマイモの種芋又は塊根片を直播する方法を記載する。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第3554817号公報
【特許文献2】特開2011-217611号公報
【0007】

【非特許文献1】「葉柄専用サツマイモ苗の大量生産法」、平成14年度九州沖縄農業研究成果情報
【非特許文献2】「セル育苗によるサツマイモ栽培の塊根形成における品種間差異」、福岡県農業総合試験場研究報告、第30巻、p. 66-73(2011)
【非特許文献3】有馬進ら、「海浜台地におけるサツマイモの高品質・省力栽培に関する研究 1.塊根を利用した新たな育苗法と移植技術の開発」、Coastal Bioenvironment、第4巻、p. 37-44(2005)
【非特許文献4】Adachi et al., Plant Production Science, 第15巻, p. 57-62(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
サツマイモの栽培には、通常は、サツマイモの茎から作成される苗が用いられる。また、種芋を用いた直播栽培も行われるが、広く普及していない。このうち、慣行のサツマイモの苗は、保存性が低いという問題が存在した。例えば、従来技術の慣行苗は、通常は約2週間しか保存することができない(Nakatani et al., Holding of cut-sprouts in sweet potato.I.Effects of holding on rooting of cut-sprouts., Japan. Jour. Crop Sci., 第56巻, p. 238-243;松本、「サツマイモの取り置き苗利用による作業技術体系の確立」、筑波大学技術報告、第14巻、p. 21-25(1994))。また、従来技術の慣行苗は、茎、葉柄及び葉の形状が揃った規格性の高い苗を大量に作成することが困難であるという問題が存在した。規格性の低い苗は、例えば挿苗機を用いる機械定植に適用することが困難である。
【0009】
非特許文献1及び2に記載のサツマイモ苗の作成方法の場合、比較的規格性の高い苗を作成することができる。しかしながら、当該文献に記載のサツマイモ苗を用いてサツマイモを栽培する場合、収穫される塊根は、形状が不揃いであり規格性が低いという問題が存在した。
【0010】
種芋の場合、茎から作成される苗と比較して、より長期間の保存が可能である。しかしながら、種芋を用いるサツマイモの栽培の場合、種芋自体が肥大することにより、収穫されるサツマイモの収量が減少する可能性が高いという問題が存在した。
【0011】
それ故、本発明は、保存性が高く、機械定植に適する規格性を有し、且つ安定した収量、高い規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することのできるサツマイモ苗及びその作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者は、2個以上の節を有するサツマイモの茎から該節の葉柄及び展開した葉身を除去し且つ茎を切断して得られるサツマイモの苗は、形状の点で高い規格性を有しており、機械定植に適することを見出した。また、本発明者は、このサツマイモの苗は、慣行苗と同程度の収量の塊根を収穫できるだけでなく、慣行苗の場合を上回る高い規格性及び/又は高品質のサツマイモを収穫できることを見出した。本発明者は、前記知見に基づき本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗を作成する方法であって、
2個以上の節を有するサツマイモの茎を準備する、準備工程、
2個以上の節を有するサツマイモの茎から、該節の葉柄及び展開した葉身を除去する、除去工程、
2個以上の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの茎を切断して、2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗を得る、切断工程、
を含む、前記方法。
(2) 2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗。
(3) 3個の節を有する、前記実施形態(2)に記載のサツマイモの苗。
(4) 5~15 cmの範囲の茎長を有する、前記実施形態(2)又は(3)に記載のサツマイモの苗。
(5) 前記実施形態(2)~(4)のいずれかに記載のサツマイモの苗を、10~20 cmの範囲の株間隔で定植する、定植工程、
を含む、サツマイモを栽培する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、保存性が高く、機械定植に適する規格性を有し、且つ安定した収量、高い規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することのできるサツマイモ苗及びその作成方法を提供することが可能となる。特に、本発明のサツマイモ苗は、保存性が高いことから、市場流通における鮮度及び/又は特性の低下を実質的に抑制することができる。
【0015】
前記以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、サツマイモの茎の一形態を示す模式図である。
【図2】図2は、従来技術のサツマイモの慣行苗及び本発明の一態様のサツマイモの苗の一実施形態の外観を示す写真である。A:比較例の慣行苗、B:実施例の3節上位苗(左)及び3節下位苗(右)。
【図3】図3は、低温(約14℃)で1ヶ月間保存した実施例のべにはるかの3節上位苗及び3節下位苗の外観を示す写真である。A:3節上位苗の外観、B:3節下位苗の外観。
【図4】図4は、室温(約30℃)で5日間、又は低温(約14℃)で1ヶ月間保存した実施例の3節上位苗及び3節下位苗を圃場に定植したときの活着率を示す図である。
【図5】図5は、定植後60、120及び150日目において比較例及び実施例の苗から収穫された塊根の収量(新鮮重量)を示す図である。A:ベニサツマの苗の結果、B:べにはるかの苗の結果。
【図6】図6は、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された塊根の平均一個重(新鮮重量)を示す図である。
【図7】図7は、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のべにはるかの苗から収穫された塊根の平均一個重(新鮮重量)を示す図である。
【図8】図8は、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された圃場の単位面積あたりの塊根の個数を図8に示す。
【図9】図9は、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された塊根の規格別の個数を示す図である。
【図10】図10は、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された塊根の規格別の収量を示す図である。
【図11】図11は、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のべにはるかの苗から収穫された塊根の規格別の個数を示す図である。
【図12】図12は、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のべにはるかの苗から収穫された塊根の規格別の収量を示す図である。
【図13】図13は、定植後150日目における、比較例及び実施例のベニサツマの苗の地下部の外観を示す写真である。A:慣行苗の地下部の外観、B:3節上位苗の地下部の外観、C:3節下位苗の地下部の外観。
【図14】図14は、定植後150日目における、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された塊根の外観を示す写真である。A:慣行苗の塊根の外観、B:3節上位苗の塊根の外観、C:3節下位苗の塊根の外観。
【図15】図15は、定植後150日目における、比較例及び実施例のべにはるかの苗の地下部の外観を示す写真である。A:慣行苗の地下部の外観、B:3節上位苗の地下部の外観、C:3節下位苗の地下部の外観。
【図16】図16は、定植後150日目における、比較例及び実施例のべにはるかの苗から収穫された塊根の外観を示す写真である。A:慣行苗の塊根の外観、B:3節上位苗の塊根の外観、C:3節下位苗の塊根の外観。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。

【0018】
<1. サツマイモの苗>
本発明の一態様は、サツマイモの苗に関する。本態様のサツマイモの苗の特徴を、以下において詳細に説明する。

【0019】
本明細書において、「サツマイモ」は、サツマイモの地上部及び地下部を含む植物体全体だけでなく、可食部である塊根も意味する。

【0020】
本明細書において、「節」は、展開している葉が着生している茎(主茎部)の一部分を意味する。

【0021】
本明細書において、「葉柄」は、節から伸長しており、茎と葉身とを連結する柄の形状を有する部分を意味し、「葉身」は、葉柄に着生している面の形状を有する部分を意味し、「葉」は、葉柄及び葉身を合わせた部分を意味する。

【0022】
図1は、サツマイモの茎の一形態を示す模式図である。図1に示すように、サツマイモの茎11は、通常は、複数の節12及び節12から伸長した複数の葉13を有し、先端部分に茎頂部16を有する。1個の葉13は、1個の葉柄14及び1個の葉身15を有する。葉13は、茎11の芽(例えば頂芽又は腋芽)から形成され、生長するにつれて葉柄14が伸長し、葉身15が展開する。茎11において、葉柄14及び展開した葉身15が着生している部分は、節12を形成する。

【0023】
図2は、従来技術のサツマイモの慣行苗及び本発明の一態様のサツマイモの苗の一実施形態の外観を示す写真である。図2Aに示すように、従来技術のサツマイモの慣行苗は、通常は5個以上、例えば5~10個の節を有し、それぞれの節に葉柄及び展開した葉身を有する。このような苗を圃場に定植すると、茎の切断面及びそれぞれの節から根(不定根)が伸長し、活着する。伸長した根のうち、茎の切断面から伸長した根は、通常は吸収根となり、水及び栄養を土壌から吸収するために使用される。これに対し、節から伸長した根の一部は、栄養を貯蔵して肥大し、可食部である塊根を形成する。他方、苗に存在する葉(葉柄及び葉身)は、茎頂部の頂芽及び節の腋芽から展開する新たな葉とともに、光合成に使用される。それ故、サツマイモの苗における節の数は、形成される塊根の収量の観点から、前記範囲であることが好ましいと考えられてきた。また、節から伸長する葉柄及び葉身は、光合成の観点から、健全な状態で存在することが好ましいと考えられてきた。

【0024】
本発明者は、2個以上の節を有するサツマイモの茎から該節の葉柄及び展開した葉身を除去し且つ茎を切断して得られるサツマイモの苗は、形状の点で高い規格性を有しており、機械定植に適することを見出した。また、本発明者は、このサツマイモの苗は、慣行苗と同程度の収量の塊根を収穫できるだけでなく、慣行苗の場合を上回る高い規格性及び/又は高品質のサツマイモを収穫できることを見出した。

【0025】
本態様のサツマイモの苗は、2~4個の節を有することを特徴とする。本態様のサツマイモの苗は、2又は3個の節を有することが好ましく、3個の節を有することがより好ましい。節の数が1個の場合、該サツマイモの苗を用いて得られる塊根は、形状及び/又は大きさのばらつきが大きく、塊根の形状及び/又は大きさの点で規格性が低下する可能性がある。また、節の数が5個以上の場合、結果として苗の茎長が長くなることから、茎の曲がり等による苗の形状のばらつきが大きく、苗の形状及び/又は茎長の点で規格性が低下する可能性がある。このような場合、挿苗機のような機械を用いる機械定植において、大量の苗を取り扱うことが困難となる可能性がある。それ故、前記特徴を有することにより、本態様のサツマイモの苗は、機械定植に適する高い規格性を有することができる。また、本態様のサツマイモの苗を用いて、安定した収量、高い規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することができる。

【0026】
本態様のサツマイモの苗は、節の葉柄及び展開した葉身が除去されていることを特徴とする。換言すれば、本態様のサツマイモの苗には、節の葉柄及び展開した葉身が存在しない。本発明において、「節の葉柄」及び「節の葉身」は、節から伸長している葉柄及び該葉柄に着生している葉身を意味する。また、本発明において、「展開した葉身」は、葉身が十分に生長して、効率よく光合成が行えるように葉身の表面が広がった状態を意味する。サツマイモの苗において、節の葉柄及び展開した葉身が除去されていない場合、すなわち、節の葉柄及び展開した葉身が存在する場合、該苗の保存性が低下する可能性がある。また、節の葉柄及び展開した葉身が存在する場合、葉柄及び葉身の形状のばらつきが大きく、苗全体の形状の点で規格性が低下する可能性がある。このような場合、挿苗機のような機械を用いる機械定植において、大量の苗を取り扱うことが困難となる可能性がある。それ故、前記特徴を有することにより、本態様のサツマイモの苗は、高い保存性を有することができる。また、本態様のサツマイモの苗は、機械定植に適する高い規格性を有することができる。

【0027】
図2Bは、本態様のサツマイモの苗の一実施形態の外観を示す写真である。図2Bに示すように、本態様のサツマイモの苗は、茎(主茎部)の一端が切断部であり、他端が茎頂部であってもよく、主茎部の両端が切断部であってもよい。本明細書において、前者の実施形態を「上位苗」と、後者の実施形態を「中位苗」又は「下位苗」と、それぞれ記載する場合がある。

【0028】
本態様のサツマイモの苗は、1個以上の芽、及び該芽から形成される1個以上の未展開の葉を有していてもよい。例えば、上位苗の実施形態の場合、本態様のサツマイモの苗は、茎頂部から伸長する頂芽及びその直下の複数の腋芽、並びに該頂芽及び該複数の腋芽から形成される複数の未展開の葉を有することができる。このような場合であっても、本態様のサツマイモの苗の範囲に包含される。

【0029】
本態様のサツマイモの苗は、5~15 cmの範囲の茎長を有することが好ましく、5~12 cmの範囲の茎長を有することがより好ましく、5~10 cmの範囲の茎長を有することが特に好ましい。本発明において、「茎長」は、苗の茎(主茎部)の一端の切断部から他端の切断部又は茎頂部までの長さを意味する。茎長が5 cm未満の場合、節の数が前記範囲未満となる可能性がある。また、茎長が前記上限値を超える場合、茎の曲がり等による苗の形状のばらつきが大きく、苗の形状及び/又は茎長の点で規格性が低下する可能性がある。このような場合、挿苗機のような機械を用いる機械定植において、大量の苗を取り扱うことが困難となる可能性がある。それ故、前記範囲の茎長を有することにより、本態様のサツマイモの苗は、機械定植に適する高い規格性を有することができる。また、本態様のサツマイモの苗を用いて、安定した収量、高い規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することができる。

【0030】
従来技術の慣行苗の場合、作成した苗を保存することが困難であることが知られている。例えば、従来技術の慣行苗を、低温(13~18℃)で約2週間を超えて保存する場合、活着に悪影響を及ぼすことが知られている(Nakatani et al., Holding of cut-sprouts in sweet potato.I.Effects of holding on rooting of cut-sprouts., Japan. Jour. Crop Sci., 第56巻, p. 238-243;松本、「サツマイモの取り置き苗利用による作業技術体系の確立」、筑波大学技術報告、第14巻、p. 21-25(1994))。これに対し、本態様のサツマイモの苗は、従来技術の慣行苗と比較して高い保存性を有することが判明した。本態様のサツマイモの苗は、低温、例えば12~18℃の範囲、典型的には12~14℃の範囲において、通常は数ヶ月間、例えば1ヶ月間、実質的に活着率を維持して保存することができる。それ故、本態様のサツマイモの苗は、長期間に亘って高い保存性を発現することができる。特に、本態様のサツマイモの苗は、保存性が高いことから、市場流通における鮮度及び/又は特性の低下を実質的に抑制することができる。

【0031】
サツマイモの苗の保存性は、例えば、保存後の苗の活着率を算出することにより、評価することができる。苗の活着率は、苗を土壌に定植し、所定の条件下で一定期間生育させた後、苗を観察して、定植した苗の総数に対する、発根して正常に生育している苗の数の百分率を算出することにより、決定することができる。

【0032】
本態様のサツマイモの苗は、野生種及び栽培種を含む様々なサツマイモに適用することができる。本態様のサツマイモの苗が適用されるサツマイモとしては、限定するものではないが、例えば、青果用品種であるベニサツマ(高系14号)、べにはるか、ベニアズマ、安納紅及び安納こがね、並びに原料用品種であるコガネセンガン及びシロサツマ等の栽培種を挙げることができる。これらの栽培種は、塊根の収量、規格性及び/又は品質等の特性が優れている。それ故、前記で例示した栽培種に本態様のサツマイモの苗を適用することにより、該苗を用いて、安定した収量、高規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することができる。

【0033】
<2. サツマイモの苗の作成方法>
本発明の別の一態様は、本発明の一態様のサツマイモの苗の作成方法に関する。本態様の方法は、準備工程、除去工程及び切断工程を含む。各工程について、以下において詳細に説明する。

【0034】
[2-1. 準備工程]
本態様の方法は、サツマイモの茎を準備する、準備工程を含む。

【0035】
本工程において、サツマイモの茎を準備するために使用されるサツマイモは、前記で説明した本発明の一態様のサツマイモの苗が適用される様々な野生種又は栽培種のサツマイモから適宜選択することができる。

【0036】
本工程において、サツマイモの茎を準備する具体的な手段は特に限定されない。所定の特徴を有するサツマイモの茎を購入等してもよく、サツマイモを自ら栽培し、所定の特徴を有する茎を得てもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。

【0037】
本工程において準備されるサツマイモの茎は、2個以上の節を有する。本工程において準備されるサツマイモの茎に存在する節の数は、通常は2~20個の範囲であり、例えば2~10個の範囲であり、特に2~4個の範囲である。前記範囲の節を有するサツマイモの茎を準備することにより、以下の工程において、前記で説明した特徴を有する本発明の一態様のサツマイモの苗を得ることができる。

【0038】
本工程において準備されるサツマイモの茎は、5 cm以上の茎長を有することが好ましく、5~60 cmの範囲、例えば5~30 cmの範囲、特に5~15 cmの範囲の茎長を有することがより好ましい。前記範囲の茎長を有するサツマイモの茎を準備することにより、以下の工程において、前記で説明した特徴を有する本発明の一態様のサツマイモの苗を得ることができる。

【0039】
本工程において準備されるサツマイモの茎は、塊根から伸長し、前記で説明した数の節及び茎長を有する程度まで生長した時期の茎を切断することにより、準備することができる。茎を切断する手段は、当該技術分野で使用される通常の手段であれば、特に限定されない。例えば、はさみ又はカミソリ刃を用いて切断してもよく、切断機等を用いて半自動又は全自動的に切断してもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。

【0040】
[2-2. 除去工程]
本態様の方法は、2個以上の節を有するサツマイモの茎から、該節の葉柄及び展開した葉身を除去する、除去工程を含む。

【0041】
本工程において、葉柄及び展開した葉身を除去する手段は、当該技術分野で使用される通常の手段であれば、特に限定されない。例えば、はさみ又はカミソリ刃を用いて切断してもよく、切断機等を用いて半自動又は全自動的に切断してもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。

【0042】
本工程において得られる葉柄及び展開した葉身を除去したサツマイモの茎は、1個以上の芽、及び該芽から形成される1個以上の未展開の葉を有していてもよい。例えば、本態様の方法が、上位苗を作成する実施形態の場合、本工程において得られる葉柄及び展開した葉身を除去したサツマイモの茎は、茎頂部から伸長する頂芽及びその直下の複数の腋芽、並びに該頂芽及び該複数の腋芽から形成される複数の未展開の葉を有することができる。このような場合であっても、本工程の実施形態に包含される。

【0043】
[2-3. 切断工程]
本態様の方法は、2個以上の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの茎を切断して、2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されているサツマイモの苗を得る、切断工程を含む。

【0044】
本工程において、サツマイモの茎を切断する手段は、当該技術分野で使用される通常の手段であれば、特に限定されない。例えば、はさみ又はカミソリ刃を用いて切断してもよく、切断機等を用いて半自動又は全自動的に切断してもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。

【0045】
本工程において、サツマイモの茎を切断する位置は、結果として得られる本発明の一態様のサツマイモの苗における節の数及び茎長に基づき、適宜選択することができる。例えば、準備工程において準備されるサツマイモの茎が、本発明の一態様のサツマイモの苗の数個分に相当する節の数及び茎長を有する場合、隣接する苗に相当する部分の末端に位置する節間(例えば、節の直上若しくは直下、又は節と節との中間)で茎を切断すればよい。また、準備工程において準備されるサツマイモの茎が、本発明の一態様のサツマイモの苗の1個分に相当する節の数及び茎長を有する場合、茎長を揃えるために、苗に相当する部分の末端に位置する節の直上又は直下で茎を切断すればよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。

【0046】
本態様の方法において、除去工程及び切断工程を行う順序は特に限定されない。例えば、準備工程、除去工程及び切断工程の順序で実施してもよく、準備工程、切断工程及び除去工程の順序で実施してもよい。また、本態様の方法において、準備工程、除去工程及び切断工程の少なくとも2工程を、実質的に同時に(すなわち一体として)実施してもよく、連続的に別々に実施してもよく、或いは一定期間(例えば数時間~数日間)を空けて別々に実施してもよい。例えば、準備工程及び切断工程を実質的に同時に実施して、両工程において得られるサツマイモの茎が、本発明の一態様のサツマイモの苗の1個分に相当する節の数及び茎長を有するようにしてもよい。或いは、除去工程及び切断工程を実質的に同時に実施して、一部の葉柄及び展開した葉身を除去した後で茎を切断し、さらにその後で残りの葉柄及び展開した葉身を除去してもよい。いずれの場合も、本態様の方法の実施形態に包含される。

【0047】
<3. サツマイモの栽培方法>
本発明の別の一態様は、サツマイモの栽培方法に関する。本態様の方法は、定植工程を含む。

【0048】
本態様の方法において、定植工程は、本発明の一態様のサツマイモの苗を、7.5~20 cmの範囲の株間隔で定植することを含む。本工程において、株間隔は、7.5~15 cmの範囲であることが好ましく、10~12.5 cmの範囲であることがより好ましい。従来技術のサツマイモの慣行苗の栽培においては、20 cmを超える範囲、例えば25 cmの株間隔で定植することが一般的であり、20 cm以下の株間隔は、密植状態であるとされる。従来技術のサツマイモの慣行苗を密植状態で定植すると、収穫される塊根の形状及び/又は大きさのばらつきが大きくなり、塊根の形状及び/又は大きさの点で規格性が低下することが知られている。本発明者は、本発明の一態様のサツマイモの苗を密植状態で定植しても、従来技術の慣行苗と比較して、形状及び大きさが揃った塊根を収穫できることを見出した。この場合、収穫される塊根は、慣行苗の場合と同程度の収量であり、且つ慣行苗の場合と同程度又はそれ以上の糖度を有することが判明した。それ故、前記範囲の株間隔で本工程を実施することにより、安定した収量、高い規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することができる。

【0049】
サツマイモの栽培において収穫される塊根の収量は、例えば、収穫される塊根の総重量、平均一個重、及び圃場の単位面積あたりの塊根の個数を測定することにより、決定することができる。また、塊根の規格性は、例えば、塊根の重量、平均長及び/又は平均径に基づき収穫される塊根を分類し、分類された各規格の分布を評価することにより、決定することができる。

【0050】
サツマイモの栽培において収穫される塊根の品質は、例えば、塊根より得られる蒸し芋のBrix(ブリックス)値で表される糖度を評価することにより、決定することができる。塊根より得られる蒸し芋のBrix値は、例えば、以下の方法で測定することができる。収穫後数ヶ月以上保存した塊根を蒸し芋とする。得られた蒸し芋を切断し、所定重量の切片を、同重量の水(蒸し芋:水=1:1)又は3倍重量の水(蒸し芋:水=1:3)とともに粉砕する。Brix糖度計を用いて、得られた蒸し芋の粉砕液のBrix値を測定する。

【0051】
定植工程において、本発明の一態様のサツマイモの苗を定植する手段は特に限定されない。当該技術分野で通常使用される様々な手段を適用することができる。例えば、本発明の一態様のサツマイモの苗を、1本ずつ手で挿苗することにより定植してもよく、挿苗機のような機械を用いて機械定植してもよい。前記で説明したように、本発明の一態様のサツマイモの苗は、形状及び/又は茎長が揃っており、苗の形状及び/又は茎長の点で高い規格性を有する。このため、本工程において、本発明の一態様のサツマイモの苗を機械定植することが好ましい。挿苗機のような機械を用いて機械定植することにより、本工程の実施に要する時間及び労力を大幅に削減することができる。

【0052】
本態様の方法において、定植した苗の栽培、及び形成された塊根の収穫は、当該技術分野で通常使用される栽培及び収穫の条件及び手段に基づき、実施することができる。

【0053】
本態様の方法において、本発明の一態様のサツマイモの苗から得られる塊根は、従来技術の慣行苗の場合と同程度の時期、通常は定植後150日目まで、例えば定植後120日目までに、収穫適期となる。それ故、本態様の方法により、従来技術の慣行苗の場合と同程度の期間で安定した収量の塊根を収穫することができる。

【0054】
以上、詳細に説明したように、本発明の一態様のサツマイモの苗を用いてサツマイモを栽培することにより、安定した収量、高規格性及び/又は高品質の塊根を収穫することができる。また、本発明の一態様のサツマイモの苗は、高い規格性を有することから、機械定植に好適に用いることができる。さらに、本発明の一態様のサツマイモの苗は、高い保存性を有することから、市場流通における鮮度及び/又は特性の低下を実質的に抑制して、苗を大量に生産し且つ供給することができる。このため、本発明の一態様のサツマイモの栽培方法において、特に挿苗機のような機械を用いて大量の苗を機械定植することにより、栽培、特に育苗及び苗の定植に要する時間及び労力を大幅に削減することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
<I. サツマイモの苗の作成>
[I-1. 比較例の苗の作成]
サツマイモ品種ベニサツマ(高系14号)及びべにはるかの茎を準備した。使用した各品種の茎は、2個以上の節、及び該節に形成された葉柄及び展開した葉身を有する。各品種の茎を、約30 cmの茎長となるように切断して、慣行苗を得た。
【実施例】
【0057】
[I-2. 実施例の苗の作成]
前記と同様の手順で準備した各品種の茎から、各節に形成された葉柄及び展開した葉身を除去した。この茎を切断して、茎頂部から第1~2節の2個の節を有する苗(2節上位苗)、第3~4節の2個の節を有する苗(2節中位苗)、及び第5~6節の2個の節を有する苗(2節下位苗)を得た。また、同様の手順により、茎頂部から第1~3節の3個の節を有する苗(3節上位苗)、及び第4~6節の3個の節を有する苗(3節下位苗)を得た。3節上位苗及び3節下位苗は、約10 cmの茎長を有した。2節上位苗、2節中位苗及び2節下位苗は、約7cmの茎長を有した。
【実施例】
【0058】
[I-3. 活着試験]
実施例の3節上位苗及び3節下位苗を、セルトレイに入れた培土に挿苗により定植した。定植後35日目に、苗を観察した。定植した苗の総数に対する、発根して正常に生育している苗の数の百分率に基づき、苗の活着率を算出した。
【実施例】
【0059】
[I-4. 保存試験]
実施例の3節上位苗及び3節下位苗を、室温(約30℃)で5日間、又は低温(約14℃)で1ヶ月間保存した。保存後の苗を、鹿児島大学附属農場内の圃場に挿苗により定植した。定植後14日目に、苗の活着率を算出した。
【実施例】
【0060】
[I-3.結果]
得られた比較例の慣行苗及び実施例の苗の外観を図2に示す。比較例の慣行苗は、5~10個の節を有し、それぞれの節に葉柄及び展開した葉身を有する(図2A)。これに対し、実施例の苗は、2~4個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されている。例えば、3節上位苗及び3節下位苗は、3個の節を有し、且つ該節の葉柄及び展開した葉身が除去されている。3節上位苗は、さらに茎頂部及びその直下の未展開の葉を有する(図2B)。
【実施例】
【0061】
セルトレイで栽培した実施例の苗の活着率を表1に示す。
【実施例】
【0062】
【表1】
JP2018143188A_000003t.gif
【実施例】
【0063】
表1に示すように、実施例の苗の活着率は、いずれも96%以上であり、良好であった。
【実施例】
【0064】
低温(約14℃)で1ヶ月間保存した実施例のべにはるかの3節上位苗及び3節下位苗の外観を図3に示す。図中、Aは、3節上位苗の外観を、Bは、3節下位苗の外観を、それぞれ示す。図3に示すように、実施例の苗は、低温で1ヶ月間保存した後であっても、腐敗することなく健全な状態を維持していた。
【実施例】
【0065】
室温(約30℃)で5日間、又は低温(約14℃)で1ヶ月間保存した実施例の3節上位苗及び3節下位苗を圃場に定植したときの活着率を図4に示す。従来技術の慣行苗の場合、作成した苗を保存することが困難であることが知られている。例えば、従来技術の慣行苗を、低温(13~18℃)で約2週間を超えて保存する場合、苗の葉の枯死及び新鮮重の急激な低下が報告されている(Nakatani et al., Holding of cut-sprouts in sweet potato.I.Effects of holding on rooting of cut-sprouts., Japan. Jour. Crop Sci., 第56巻, p. 238-243;松本、「サツマイモの取り置き苗利用による作業技術体系の確立」、筑波大学技術報告、第14巻、p. 21-25(1994))。これに対し、実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、低温で1ヶ月間保存した場合であっても35~65%の活着率を示した。この結果から、本発明のサツマイモの苗は、従来技術の慣行苗と比較して高い保存性を有することが示唆される。
【実施例】
【0066】
<II. サツマイモの栽培>
[II-1. 試験方法]
サツマイモ品種ベニサツマ(高系14号)及びべにはるかについて、比較例の慣行苗、並びに実施例の3節上位苗及び3節下位苗を作成した。各品種の比較例及び実施例の苗を、鹿児島大学附属農場内の圃場に定植した。比較例の慣行苗は、90 cmの畝間隔及び25 cmの株間隔で挿苗により定植した。実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、90 cmの畝間隔及び12.5 cmの株間隔で挿苗により定植した。比較例及び実施例の苗のそれぞれについて、270 cm×300 cmの試験区を設定し、3反復で試験を実施した。定植後14日目に、比較例及び実施例の苗の活着率を算出した。また、定植後60及び120日目に、比較例及び実施例の苗の試験区において、中央部の畝の90 cm×50 cmの区画から苗の地上部及び地下部をサンプリングして、塊根の形状の観察、並びに地上部、地下部及び塊根の新鮮重量及び乾物重量の測定を行った。さらに、定植後150日目に、比較例及び実施例の苗から塊根を収穫し、塊根の形状の観察及び収量の測定を行った。比較例及び実施例の苗から収穫した塊根は、収穫後2ヶ月以上保存した後で蒸し芋とした。比較例及び実施例の苗から得られた蒸し芋を切断し、蒸し芋の切片を、同重量の水(蒸し芋:水=1:1)又は3倍重量の水(蒸し芋:水=1:3)とともに粉砕した。Brix糖度計を用いて、得られた蒸し芋の粉砕液のBrix値を測定した。
【実施例】
【0067】
[II-2. 結果]
定植後14日目の活着率は、比較例の慣行苗、並びに実施例の3節上位苗及び3節下位苗のいずれも約100%であり、良好な結果であった。苗の生育は、実施例の3節上位苗及び3節下位苗のいずれも、定植後初期においては比較例の慣行苗と比較して緩慢であったが、定植後120日目においては比較例の慣行苗と同程度となった。
【実施例】
【0068】
定植後60、120及び150日目において比較例及び実施例の苗から収穫された塊根の収量(新鮮重量)を図5に示す。図中、Aは、ベニサツマの苗を用いた結果を、Bは、べにはるかの苗を用いた結果を、それぞれ示す。ベニサツマの苗の場合、実施例の3節上位苗及び3節下位苗のいずれも、慣行苗の場合と同程度の収量が得られた(図5A)。これに対し、べにはるかの苗の場合、実施例の3節上位苗及び3節下位苗のいずれも、慣行苗の場合の約7割の収量が得られた(図5B)。また、いずれの品種の場合も、実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、慣行苗の場合と同様に、定植後120日目と150日目との間の収量の差が小さかった。この結果から、実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、定植後120日目で収穫できると考えられる。
【実施例】
【0069】
定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された塊根の平均一個重(新鮮重量)を図6に、比較例及び実施例のべにはるかの苗から収穫された塊根の平均一個重(新鮮重量)を図7に、それぞれ示す。いずれの品種の場合も、実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、定植後120日目と150日目との間の平均一個重の差が小さかった。この結果から、実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、定植後120日目で収穫できると考えられる。
【実施例】
【0070】
定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された圃場の単位面積あたりの塊根の個数を図8に示す。図8に示すように、実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、比較例の慣行苗の場合と比較して、圃場の単位面積あたりで略同程度の個数の塊根を収穫することができた。実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、比較例の慣行苗の場合と比較して、1個の苗あたりの節数が少ない。しかしながら、実施例の3節上位苗及び3節下位苗の栽培においては、比較例の慣行苗の場合の2倍の苗を密植することにより、圃場の単位面積あたりで略同程度の個数の塊根を収穫することができたと考えられる。
【実施例】
【0071】
定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された塊根の規格別の個数を図9に、規格別の収量を図10に、それぞれ示す。また、定植後60、120及び150日目において、比較例及び実施例のべにはるかの苗から収穫された塊根の規格別の個数を図11に、規格別の収量を図12に、それぞれ示す。塊根の新鮮重量が、50~79 gの範囲の場合を2Sに、80~129 gの範囲の場合をSに、130~209 gの範囲の場合をMに、210~299 gの範囲の場合をLに、300~449 gの範囲の場合を2Lに、450~599 gの範囲の場合を3Lに、600 g以上の場合を4Lに、それぞれ分類した。図9~12に示すように、いずれの品種の場合も、実施例の3節上位苗及び3節下位苗から収穫された塊根は、比較例の慣行苗の場合と比較して、S~Mサイズの規格の個数及び収量の割合が高くなった。
【実施例】
【0072】
定植後150日目における、比較例及び実施例のベニサツマの苗の地下部の外観を図13に、比較例及び実施例のベニサツマの苗から収穫された塊根の外観を図14に、それぞれ示す。また、定植後150日目における、比較例及び実施例のべにはるかの苗の地下部の外観を図15に、比較例及び実施例のべにはるかの苗から収穫された塊根の外観を図16に、それぞれ示す。図13~16に示すように、いずれの品種の場合も、実施例の3節上位苗及び3節下位苗は、比較例の慣行苗と比較して、1個の苗あたりの塊根数は少ないものの、形成される塊根の形状及び大きさが揃っていた。従来技術の慣行苗の栽培においては、密植状態で定植すると、収穫される塊根の形状及び/又は大きさのばらつきが大きくなり、塊根の規格性が低下することが知られている。これに対し、本発明の苗は、密植状態で定植しても、従来技術の慣行苗と比較して、形状及び大きさの点で規格性の高い塊根を収穫できることが示唆される。
【実施例】
【0073】
定植後60、120及び150日目において、比較例の慣行苗、並びに実施例の3節上位苗及び3節下位苗から収穫された塊根の特性を表2に示す。
【実施例】
【0074】
【表2】
JP2018143188A_000004t.gif
【実施例】
【0075】
表2に示すように、いずれの品種の場合も、実施例の3節上位苗から収穫された塊根の蒸し芋Brix値は、比較例の慣行苗の場合と比較して、有意に高くなった。また、実施例の3節下位苗から収穫された塊根の蒸し芋Brix値は、比較例の慣行苗の場合と同程度であった。この結果から、本発明の苗は、従来技術の慣行苗と比較して、同程度又はそれ以上の糖度を有する高い品質の塊根を収穫できることが示唆される。
【実施例】
【0076】
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
11…茎
12…節
13…葉
14…葉柄
15…葉身
16…茎頂部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15