TOP > 国内特許検索 > 静電気放電評価装置及び評価方法 > 明細書

明細書 :静電気放電評価装置及び評価方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-040590 (P2018-040590A)
公開日 平成30年3月15日(2018.3.15)
発明の名称または考案の名称 静電気放電評価装置及び評価方法
国際特許分類 G01R  29/08        (2006.01)
G01R  29/24        (2006.01)
G01S   5/06        (2006.01)
FI G01R 29/08 D
G01R 29/08 F
G01R 29/24 Z
G01S 5/06
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2016-173007 (P2016-173007)
出願日 平成28年9月5日(2016.9.5)
発明者または考案者 【氏名】大塚 信也
【氏名】田上 剣汰
【氏名】浜崎 大夢
【氏名】川辺 健一
出願人 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
【識別番号】513063431
【氏名又は名称】株式会社オーケー社鹿児島
個別代理人の代理人 【識別番号】100108660、【弁理士】、【氏名又は名称】大川 譲
審査請求 未請求
テーマコード 5J062
Fターム 5J062AA01
5J062CC12
5J062GG02
要約 【課題】液晶パネル製造時に剥離や摩擦帯電などの静電気により発生する静電気放電及びその発生位置を精度よく標定する。
【解決手段】静電気放電の電磁波を検出する3個以上の実質的に同一のアンテナと、700MHz以下のアンテナ受信感度を低減させる低域遮断周波数700MHzのハイパスフィルタHPFを備える。放電発生位置から各アンテナ位置に到達する信号の時間差を検出して、各アンテナの配置位置座標及び各アンテナに到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置を特定する。この特定したx、y、z座標位置を含む評価結果を画像撮影カメラで撮影した画像上に表示する。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
基板を対象とする静電気放電を検出する静電気放電評価装置において、
静電気放電の電磁波を検出する帯域制限無しの3個以上の実質的に同一のアンテナと、
700MHz以下のアンテナ受信感度を低減させる低域遮断周波数700MHzのハイパスフィルタHPFと、
各アンテナに到達する一連の複数の信号を検出する信号検出回路と、
検出した信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、
前記AD変換器により変換されたデジタル信号を格納するメモリと、
放電発生位置から各アンテナ位置に到達する信号の時間差を検出するアンテナ間時間差導出部と、
各アンテナの配置位置座標及び各アンテナに到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置を特定する座標位置特定部と、
前記特定したx、y、z座標位置を含む評価結果を画像撮影カメラで撮影した画像上に表示する表示部と、
から成る静電気放電評価装置。
【請求項2】
前記ハイパスフィルタHPFは、各アンテナのそれぞれの入力側又は前記信号検出回路の後、若しくは前記メモリと前記アンテナ間時間差導出部の間に配置した請求項1に記載の静電気放電評価装置。
【請求項3】
前記アンテナは、少なくとも数100MHzから2GHzに感度を有する帯域制限無しの指向性或いは無指向性アンテナである請求項1に記載の静電気放電評価装置。
【請求項4】
基板を対象とする静電気放電を検出する静電気放電評価装置において、
静電気放電の電磁波を検出する帯域制限有りの3個以上の実質的に同一のアンテナと、
各アンテナに到達する一連の複数の信号を検出する信号検出回路と、
検出した信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、
前記AD変換器により変換されたデジタル信号を格納するメモリと、
放電発生位置から各アンテナ位置に到達する信号の時間差を検出するアンテナ間時間差導出部と、
各アンテナの配置位置座標及び各アンテナに到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置を特定する座標位置特定部と、
前記特定したx、y、z座標位置を含む評価結果を画像撮影カメラで撮影した画像上に表示する表示部と、から構成し、
前記アンテナは、各アンテナ自体が有する低域周波数制限機能により700MHz以下の感度を低減した静電気放電評価装置。
【請求項5】
前記低域周波数制限機能によって、前記アンテナが指向性を有するホーンアンテナであれば、その形状或いは構造を調整することによって、また、ダイポールアンテナであれば、アンテナの長さを調整することによりアンテナの受信帯域を調整する請求項4に記載の静電気放電評価装置。
【請求項6】
前記表示部に表示する評価結果は、静電気放電の発生数N、波形形状、或いは相対的な振幅値、若しくはこれらの値に基づき区別する放電形態を含む請求項1又は4に記載の静電気放電評価装置。
【請求項7】
放電形態の区別部を備え、該区別部は、各アンテナに到達する一連の複数の信号のそれぞれについて、気中放電と沿面放電のいずれであるのかを判別する請求項6に記載の静電気放電評価装置。
【請求項8】
基板を対象とする静電気放電を検出する静電気放電評価方法において、
静電気放電の電磁波を検出する帯域制限無しの3個以上の実質的に同一のアンテナと、700MHz以下のアンテナ受信感度を低減させる低域遮断周波数700MHzのハイパスフィルタHPFと、を備え、
各アンテナに到達する一連の複数の信号を検出し、この検出した信号をAD変換し、かつ、このAD変換により変換されたデジタル信号をメモリに格納し、
放電発生位置から各アンテナ位置に到達する信号の時間差を検出して、各アンテナの配置位置座標及び各アンテナに到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置を特定し、
この特定したx、y、z座標位置を含む評価結果を画像撮影カメラで撮影した画像上に表示すること、
から成る静電気放電評価方法。
【請求項9】
基板を対象とする静電気放電を検出する静電気放電評価方法において、
静電気放電の電磁波を検出する帯域制限有りの3個以上の実質的に同一のアンテナを備えて、各アンテナ自体が有する低域周波数制限機能により700MHz以下の感度を低減し、
各アンテナに到達する一連の複数の信号を検出し、この検出した信号をAD変換し、このAD変換により変換されたデジタル信号をメモリに格納し、
放電発生位置から各アンテナ位置に到達する信号の時間差を検出して、各アンテナの配置位置座標及び各アンテナに到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置を特定し、この特定したx、y、z座標位置を含む評価結果を画像撮影カメラで撮影した画像上に表示する、
ことから成る静電気放電評価方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルなどガラス基板を用いた工業製品の製造工程において発生する静電気放電の発生および発生位置を精度よく検知、評価する静電気放電評価装置及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルを含む電子デバイスの製造に際しては、ガラス基板上に、感光性を有するフォトレジストを均一に塗布した後、パターンを露光装置で露光してそのパターンをフォトレジストに転写する。さらに、露光転写されたパターンに対して現像、エッチング、レジスト剥離を行う。同様の工程を複数回繰り返して、配線パターン、絶縁膜パターン、半導体層パターンなどを積層し、液晶表示素子を形成する。このような製造工程では、ガラス基板は常に静電気による帯電を繰り返すことになる。
【0003】
このような電子デバイス製造時に、剥離や摩擦帯電などの静電気により発生する静電気放電の発生及び発生位置を精度よく標定する技術が求められている。従来、静電気放電による電磁波または放電光をアンテナなどにより検出することによって、放電が発生した際に速やかに異常を認識していた。さらに複数の静電気検出部からの電磁波信号強度を解析することにより発生箇所を特定していた。これによって、電子デバイスなどの製造工程における静電気による放電被害を検出していた。
【0004】
図15は、特許文献1に開示の従来技術による放電検出装置を示す図である。グランドプレーン型アンテナまたはホイップアンテナなどの無指向性アンテナA1 、A2 、A3 、・・・、An は、静電気放電の電磁波を検出する。これらアンテナは、基板を製造する装置近傍に設置されている。各アンテナからそれぞれ検出される検出信号の信号レベルを検出して該信号レベルがあらかじめ設定したノイズレベル以上かどうかを、放電検出回路において判断する。検出信号がノイズレベル以下であれば、それは放電にかかわらないノイズとして廃棄される。
【0005】
アンテナによって検出された電磁波の信号のうち、放電が静電気放電であることを示す信号については、静電気放電発生箇所の識別回路部により、各アンテナからの信号強度を互いに比較する。信号強度比較の比較結果をアンテナの位置情報と合わせて演算処理して放電の発生箇所を特定する。静電気放電パターン比較識別回路部は、実際に剥離放電による静電気放電を発生させたときの電磁波の波形パターンを記憶していて、この記憶されている電磁波の波形パターンと、放電検出回路からの波形信号との比較処理がなされる。波形パターンの時間経過毎の電圧値を比較し、波形パターンの面積差として算出することにより、波形パターンの一致度を比較する。静電気放電発生およびその発生位置についての情報は、表示器で表示され、警報発声器Fにおいて警報音が発せられる。
【0006】
このように、例示のような従来技術による放電検出装置によって、静電気放電発生およびその発生位置を検知することができる。しかし、液晶パネルなどガラス基板を対象とする場合、静電気放電の発生および発生場所を精度よく検知し評価することができないことがあった。これは、液晶パネル製造工程において発生する静電気放電は2種類あり(詳細は後述する)、この2種類の静電気放電の周波数帯域が異なっていることと、複数発(複数回)の放電が連続して発生することが分かっていなかったためである。
【0007】
なお、特許文献2は、到達時間差法により交点を求めることによって位置標定を行なう雷放電位置標定システムを開示する。また、特許文献3~5は、後述する従来周知のホーンアンテナを開示している。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平10-12691
【特許文献2】特開2007-121127
【特許文献3】特開2007-195104
【特許文献4】特開2004-125746
【特許文献5】特開2010-41730
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決して、液晶パネル製造時に剥離や摩擦帯電などの静電気により発生する静電気放電及びその発生位置を、周波数帯域が異なっている上記2種類の静電気放電のいずれに対しても、また、複数発(複数回)の発生に対しても個々に区別して精度よく標定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の静電気放電評価装置及び評価方法は、基板を対象とする静電気放電を検出する。静電気放電の電磁波を検出する帯域制限無しの3個以上の実質的に同一のアンテナと、700MHz以下のアンテナ受信感度を低減させる低域遮断周波数700MHzのハイパスフィルタHPFと、アンテナ数と同数の入力端子を有して、各アンテナに到達する一連の複数の信号を検出する信号検出回路と、検出した信号をデジタル信号に変換するAD変換器と、このAD変換器により変換されたデジタル信号を格納するメモリと、放電発生位置から各アンテナ位置に到達する信号の時間差を検出するアンテナ間時間差導出部と、各アンテナの配置位置座標及び各アンテナに到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置を特定する座標位置特定部と、特定したx、y、z座標位置を含む評価結果を画像撮影カメラで撮影した画像上に表示する表示部と、から構成される。
【0011】
前記ハイパスフィルタは、各アンテナのそれぞれの入力側又は前記信号検出回路の後、若しくは前記メモリと前記アンテナ間時間差導出部の間に配置する。アンテナは、少なくとも数100MHzから2GHzに感度を有する帯域制限無しの指向性或いは無指向性アンテナである。
【0012】
また、本発明の静電気放電評価装置及び評価方法は、静電気放電の電磁波を検出する帯域制限有りの3個以上の実質的に同一のアンテナを備える。このアンテナは、700MHz以下の感度を低減する低域周波数制限機能を各アンテナ自体が有する少なくとも700MHz~2GHz帯の周波数帯域のアンテナである。この低域周波数制限機能は、例えば、指向性を有するホーンアンテナであれば、その形状、構造を調整することによって、また、ダイポールアンテナであれば、アンテナの長さを調整することによって、アンテナの受信帯域を調整することができる。
【0013】
表示部に表示する表示結果は、静電気放電の発生数N、波形形状、或いは相対的な振幅値、若しくはこれらの値に基づき区別する放電形態を含む。放電形態の区別は、一連の入力バースト信号のそれぞれについて、気中放電と沿面放電のいずれであるのかを判別する。
【発明の効果】
【0014】
液晶パネルで対象とする静電気放電は、実験結果により、気中放電が単発あるいは複数発発生した後に沿面放電が発生することがわかった。両放電を対比すれば、気中放電の主成分は沿面放電よりも高周波である。沿面放電は気中放電よりも低い周波数を主成分として含んでいるだけでなく、気中放電と同じ高周波の周波数も含んでいる。振幅は沿面放電が気中放電よりも大きい。従来は、単発放電現象として評価していたため、特に沿面放電の位置評価の精度は低かった。
【0015】
本発明によれば、液晶パネル上に発生する静電気放電及びその発生位置を、気中放電と沿面放電の2種類の静電気放電のいずれに対しても、また、複数発(複数回)の発生に対しても個々に区別して精度よく標定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を具体化する静電気放電評価装置の第1の例を示す概略構成図である。
【図2】本発明を具体化する静電気放電評価装置の第2の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明を具体化する静電気放電評価装置の第3の例を示す概略構成図である。
【図4】放電発生位置の評価を説明する図である。
【図5】放電形態の区別を説明する図である。
【図6】本発明が必要とするアンテナの周波数帯域を説明する図である。
【図7】実験回路を例示する図である。
【図8】放電波形のFFT解析結果を示すグラフである。
【図9】比較検証用の高周波信号用HFアンテナと低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の1発の気中放電と、その後の沿面放電を観察した例である。
【図10】比較検証用の高周波信号用HFアンテナと低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の2発の気中放電と、最後の沿面放電を観察した例である。
【図11】比較検証用の高周波信号用HFアンテナと低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の3発の気中放電と、最後の沿面放電を観察した例である。
【図12】本発明で用いる帯域制限アンテナと、比較検証用のモバイルアンテナ、高周波信号用HFアンテナ、及び低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の気中放電と、その後の沿面放電を観察した例である。
【図13】気中放電に対するハイパスフィルタリング処理結果を例示する図である。
【図14】受信信号SのノイズNに対するS/N比を説明するグラフである。
【図15】特許文献1に開示の従来技術による放電検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明を具体化する静電気放電評価装置の第1の例を示す概略構成図である。本発明は、液晶パネルなどガラス基板を対象とする静電気放電を検出するものである。周知のように、液晶パネルの基板は、表面上に金属または誘電体からなる薄膜を形成したガラスなどによって構成されている。

【0018】
例示の静電気放電評価装置は、静電気放電の電磁波を検出するために、帯域制限無しの3個以上の実質的に同一のアンテナを用いる。この第1の例は、3個以上配置する複数個のアンテナとして、少なくとも数100MHzから2GHzに感度を有する帯域制限無しの指向性或いは無指向性アンテナを用いた点、及び各アンテナのそれぞれの入力側に、低域遮断周波数700MHzのハイパスフィルタHPFを用いて700MHz以下の受信感度を低減させている。帯域制限無しのアンテナとハイパスフィルタHPFの組み合わせによって、少なくとも700MHz以下の感度を低減させて(例えば、一般的な帯域の定義である3dB以下(-3dB)に低減させる)、少なくとも700MHz~2GHz帯の周波数信号を受信する。

【0019】
図4は、放電発生位置の評価を説明する図である。図4(A)に示す第1の例において、帯域制限無しのアンテナとハイパスフィルタHPFの組み合わせによって、各アンテナの配置位置座標及び各アンテナに到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置の特定が可能となる。このx、y、z座標位置を含む評価結果は、図1に示す画像撮影カメラで撮影した画像上に表示する。画像上に表示する評価結果としては、詳細は後述するように、放電の発生数N、波形形状、或いは相対的な振幅値、若しくはこれらの値に基づき区別する放電形態が含まれる。

【0020】
図1において、ハイパスフィルタHPFは、それぞれのアンテナに対応してアンテナ出力を受信する。ハイパスフィルタHPFは、700MHz以下の感度を低減させる。或いは、ハイパスフィルタHPFは、次段の信号検出回路の後に配置することも可能である。信号検出回路は、アンテナ数と同数の入力端子を有して、ハイパスフィルタHPFを通して、各アンテナに到達する一連の複数の信号を検出する。検出した信号は、次段のAD変換器でサンプリングする。サンプリング周期は、図6を参照して後述するように、例えば、1辺20~40cm程度の矩形の液晶パネル平面上で、誤差6mm以内に納めるためには、周波数帯域の下限周波数700MHz に対して、40ギガサンプル/秒(GS/s)以上で、サンプリングする必要がある。

【0021】
サンプリングすることにより変換されたデジタル信号はメモリに格納する。所定時間の間に高サンプリング周波数でサンプリングして得られた、一連のデジタル信号をメモリに格納するために、セグメントメモリ方式を採用することが望ましい。複数発(2~5発程度)の発生信号のそれぞれにトリガをかけて、一連の発生信号波形を少なくとも200nsの時間長で測定し記録できる必要がある。これは、デジタルオシロスコープのセグメントメモリ方式(テクトロニクス製のオシロスコープではファストフレーム方式と呼ばれる)などを用いて実現できる。

【0022】
セグメントメモリ方式は、メモリをセグメント単位で管理する方式であり、アクティブなバーストやパルス内のみの情報を保存でき、非アクティブの期間中は情報を保存しない。非アクティブ期間中に貴重なメモリ・リソースを使用しないため、重要な信号をより多く捕捉することができる。この機能により、高サンプリングで測定してもファイルのサイズも小さくなり、波形ファイルも保存しやすくなる。設定されたトリガレベルを越える入力に対して入力信号がアクティブになり、この一連の複数のアクティブ信号を、それぞれ別々のメモリセグメントに保存する。

【0023】
発生数カウント部は、各メモリセグメント毎に格納されている発生数(バースト数)をカウントする。このカウントした発生数は、表示部で表示しても良いし、また放電形態の区別部に入力して、放電形態の区別のために用いる(詳細は図5(A)を参照して後述する)。

【0024】
放電形態の区別部は、一連の入力バースト信号のそれぞれについて、気中放電と沿面放電のいずれであるのかを判別する。液晶パネルなどガラス基板を対象とする静電気放電は、本発明者らによる実験の結果、気中放電が単発あるいは複数発発生した後に、最後に沿面放電が発生することがわかった。気中放電は沿面放電と対比すれば、その主成分は相対的に高周波であり、沿面放電は気中放電よりも低い周波数を主成分として含んでいるだけでなく、気中放電と同じ高周波の周波数も含んでいる。振幅は沿面放電の方が大きい。

【0025】
図1に示すアンテナ間時間差導出部は、放電発生位置から各アンテナ位置に到達する信号の時間差を検出する。信号の到達時間は、信号の立ち上がり或いは最初の信号のピーク位置によって検出する。この際、各アンテナからそれぞれの信号検出回路までのケーブル長が異なる場合は、ケーブル長を補正して信号の時間差を検出する。

【0026】
図1に示す座標位置特定部は、各アンテナの配置位置座標及び各アンテナ位置に到達する信号の時間差に基づき、放電発生したx、y、z座標位置を特定する。このx、y、z座標位置情報は、発生数カウント部からの発生数とか、放電形態の区別部からの放電形態情報を含む評価結果と共に、表示部において、画像撮影カメラで撮影した画像上に重畳して表示する。

【0027】
図2は、本発明を具体化する静電気放電評価装置の第2の例を示す概略構成図である。この第2の例は、3個以上配置する複数個のアンテナとして、帯域制限したアンテナATを用いる。帯域制限アンテナのそれぞれは、低域周波数制限機能により700MHz以下の感度を低減した少なくとも700MHz~2GHz帯の周波数帯域のアンテナである。このようなアンテナの低域周波数制限機能は、例えば、ダイポールアンテナであれば、アンテナの長さを調整することにより、アンテナの受信帯域を調整することができる。また、指向性を有するホーンアンテナであれば、例えば、特許文献3~5に開示のような周知の技術を用いて、アンテナの形状、構造を調整することによってアンテナの受信帯域を調整することができる。特許文献3は、円筒部の直径及び高さを変えることで周波数を変化できる、即ち、直径を小さくすることで高周波計測できる円形導波管アンテナを開示する。また、特許文献4は、アンテナ開口面の長軸と短軸の寸法を変えることで周波数を変化できる矩形状のホーンアンテナを開示する。また、特許文献5は、リッジの形状を変えることで周波数を変化できるリッジ付きホーンアンテナを開示する。

【0028】
指向性のないアンテナを用いることにより、発生源がわからない場合であっても測定可能であるが、発生源が分かっている場合、対象となる液晶パネルに向けて測定できるので、それ以外からのノイズを拾いにくくなる。それにより位置の評価でのエラーが少なくなるという効果がある。このようなアンテナ配列を用いることによって、一連の複数回の放電現象を連続して観測し、記録、評価し、一連の検出信号の元となる放電状態を区別して、放電発生位置を特定することが可能となる。

【0029】
第2の例においては、上述したような低域周波数制限機能により調整して、700MHz以下の感度を低減した少なくとも700MHz~2GHz帯の周波数帯域に受信感度を有するアンテナを用いることによって、上記した第1の例と同じく、700MHz以下には感度を有しない少なくとも700MHz~2GHzの範囲にある周波数信号を受信する。

【0030】
図3は、本発明を具体化する静電気放電評価装置の第3の例を示す概略構成図である。この第3の例は、上述した第1の例においてアンテナATの後段に配置されていたハイパスフィルタHPFを、メモリとアンテナ間時間差導出部の間に配置した点でのみ異なっている。それ故に、A/D変換されたデジタルデータは、帯域制限されておらず、この帯域制限されていないデジタルデータがメモリに保存されている。図3に例示のハイパスフィルタHPFは、デジタルデータを信号処理することによって、ハイパスフィルタHPFの機能を達成するものである。

【0031】
これによって、アンテナ間時間差導出部には、上述の第1の例(図1)、及び第2の例(図2)と同じく、低域周波数を低減した信号が入力されるが、図3に示す発生数カウント部及び放電形態の区別部には、高域周波数だけでなく、低域周波数も入力される。低域周波数は、アンテナ間時間差導出のためには有害であるが、この低域周波数は、図5(B)及び図5(C)を参照して後述するように、放電形態の区別に利用することができる。

【0032】
図5は、放電形態の区別を説明する図である。図5(A)に示す第1の例は、検出信号の発生順番に基づく区別方法である。図1の発生数カウント部で発生数Nをカウントして、最後のN番目の信号が沿面放電であり、それ以前の1~(N-1)番目は、気中放電とする。この検出信号の発生順番に基づく方法によれば、低域周波数を低減した信号であっても、放電形態を区別することができる。

【0033】
図5(B)に示す第2の例は、検出信号の波形形状に基づく方法である。波形をFFTして周波数特性を評価するか、若しくは、波形の振動周期をピーク間隔で測定する。一連の波形を比べて相対的に周波数が低い成分を有するか、若しくは振動周期が長い成分を有するものは沿面放電であり、低い成分を有しないか、若しくは振動周期が長い成分を有しないものは気中放電であるとする。

【0034】
図5(C)に示す第3の例は、検出信号の振幅値に基づく方法である。一連の波形に対して、1発目か最後の波形で、複数発の信号波形の振幅値を規格化する。規格化した一連の波形を比べて相対的に振幅値が大きくなっているものが沿面放電であり、それ以外は気中放電とする。

【0035】
図6(A)(B)は、本発明が必要とするアンテナの周波数帯域を説明する図であり、(A)は、二つの振動信号のピーク位置での時間差を求める場合、サンプリング周波数(GS/s)で表した正弦波の振動周波数に対するピーク位置誤差をns(ナノ秒)で表したグラフである。さらに、必要とするサンプリング周期についても、グラフ中に表示している。(B)は、振動周期のピーク位置がずれた際にピーク位置が変化することを説明する図であり、その横軸は正弦波のピーク部を拡大して示す正弦波の角度であり、縦軸は、ピーク値を1とする振幅値を表している。

【0036】
図6(A)に示すように、周波数が低下すると誤差は大きくなり、700MHz以下では0.025nsを超えるピーク位置誤差になる。ピーク位置誤差は、2つの正弦波のピーク位置で時間差を求めるとき、ピーク付近をある程度拡大して見ると、どこがピークかわからずにピークと思った位置が本当のピークからずれていると発生する誤差を表している。ここでは、正弦波のピーク付近の位相6度分の位置がずれた時間をピーク位置誤差と定義している。この誤差は正弦波の周波数により異なる。この関係を表したのが図6(B)である。6度分の位置を実際に測定する場合、デジタル計測ではサンプリング周波数により測定点が変わるが、例えば、十分なサンプリング周波数でサンプリングすると、6度分の位置が計測できる。従来より、位置標定は、到達時間差法により交点を求めることにより行なわれている(特許文献2に開示の雷放電位置標定システム参照)。例えば、二つの振動信号のピーク位置での時間差を求める場合、正弦波のピーク部を拡大して示す図6(B)に示すように、ピーク付近は平に見えるので、平の部分から求める時間差は周波数が低下するほど大きくなる。700MHzでのピーク位置誤差0.025nsは、ピーク位置が±3度の6度のずれの範囲内に収まる。

【0037】
図6(A)に示す横軸の3つの点線は、オシロスコープのサンプリング周期(ギガサンプル/秒「GS/s」で表す)が10GS/sと20GS/sと40GS/sの場合について、1点サンプリング点がずれるとどのくらいの誤差になるかを示している。700MHzでの誤差は、上記したように、ピーク位置誤差0.025nsとなるが、この誤差は、40GS/sのサンプリング点1点のずれ以下である。言い換えると、送信周波数700MHz以上のアンテナを用いることにより、ピーク位置誤差0.025ns以内の信号を受信することが可能であるが、さらに、この信号は、サンプリング周期40GS/sでサンプリングすれば、ピーク位置誤差0.025ns以内のデジタル信号に変換することができることを示している。

【0038】
上記のように、700MHz以下に振幅周期が長くなると、ピークを求めることが困難になり、誤差が増えることになるが、3GHz程度以上の振動周期になると、一般的なオシロの帯域や測定ケーブル(BNCケーブル)での制限を超えることになる。通常、オシロスコープの帯域上限は一般的には1GHzであるが、10GHzを超えるクラスのものも市販されている。BNC同軸ケーブルの帯域は3GHz以下である。
【実施例】
【0039】
図7は、実験回路を例示する図である。図7において、寝かした状態の液晶パネルを、接地金属板上に載置する。この状態の液晶パネルに対して、帯電器を用いて数kVの電圧を印加して帯電させ、このパネルの一端を接地金属板に接触させておく一方、他端を持ち上げて、放電を発生させる。
【実施例】
【0040】
発生した放電は、液晶パネルより1m程度離して配置した図示の4つのアンテナで測定して、それぞれの放電波形を比較検証した。4つのアンテナは、700MHz以下の感度を低減した帯域制限アンテナと、比較検証用の3つのアンテナとして、モバイルアンテナと、高周波信号用HFアンテナと、低周波信号用LFアンテナである。
【実施例】
【0041】
モバイルアンテナは、安価に入手できる簡易アンテナである。その周波数帯域は、数100MHzからGHzに幾つかのピーク感度を有している。ここで用いた高周波信号用HFアンテナは、ブルートゥース(登録商標)や無線LANの通信帯域に感度を有するアンテナであり、その周波数帯域は、2.4GHzを中心に感度を有していて、数100MHzと1GHz前後にも感度がある。ここで用いた低周波信号用LFアンテナは、110~220MHzと410~510MHz程度の周波数帯域に感度を有する。
【実施例】
【0042】
各アンテナからの信号はそれぞれ、同軸ケーブルで接続したデジタルオシロスコープ(Tektronix DPO7354C (3.5GNz, 40GS/s)に入力して、その波形形状を観察した。デジタルオシロスコープは、図示のように、各アンテナの信号を検出する信号検出回路と、検出した信号のAD変換器と、サンプリング結果をセグメント単位で記憶するセグメントメモリと、記憶された放電波形の表示部とから構成される。実験結果は、図8~図14に示している。
【実施例】
【0043】
図8は、放電波形のFFT解析結果を示すグラフである。(A)は帯域制限アンテナによる気中放電の受信結果、(B)は帯域制限アンテナによる沿面放電の受信結果、(C)はモバイルアンテナによる気中放電の受信結果、(D)はモバイルアンテナによる沿面放電の受信結果、(E)はHFアンテナによる気中放電の受信結果、(F)はHFアンテナによる沿面放電の受信結果をそれぞれ示している。それぞれグラフ横軸は周波数f(GHz)を、縦軸はスペクトラム強度を任意単位(a.u.)で示している。
【実施例】
【0044】
図示のように、縦軸はdB表示であるため、最大値を示す周波数成分が支配的である。帯域制限アンテナでは、700MHz~4GHzの成分が大きく観測されている。モバイルアンテナは、帯域制限アンテナと比べ、700MHz以下の成分が相対的に大きく、それ以上では相対的に小さく観測されている。HFアンテナでは、700MHz以上の成分と比べ、700MHz以下の成分の相対的な低下が小さい。即ち、HFアンテナは、高周波数までの帯域を有するが、低周波領域にも感度を有している。
【実施例】
【0045】
また、図12を参照して後述するように、沿面放電現象には、沿面放電(低周波)のなかに気中放電現象(高周波)が含まれていると考えられる。そのため、低域周波数を低減した帯域制限アンテナでは、沿面放電と気中放電のFFTはほぼ同じに見える。低域周波数を低減していないモバイルアンテナ、HFアンテナでは、それぞれ沿面放電の低周波に大きなスペクトルが現れている。
【実施例】
【0046】
図9は、比較検証用の高周波信号用HFアンテナと低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の1発の気中放電と、その後の沿面放電を観察した例である。グラフ横軸は時間(20ns/div)を、また、縦軸は電磁波の振幅(mV)を示している。気中放電を、LFアンテナで検出することはできないことが分かる。HFアンテナで検出することは可能であるが、感度は高くない。HFアンテナ、LFアンテナ共に、沿面放電の感度は大きいが波形の周期が大きいため、複数アンテナ間の時間差を定義するとき誤差が大きくなる欠点がある。即ち、ゆっくり振動している低周波成分が大きいため、時間差を精度よく求めることが困難である。
【実施例】
【0047】
図10は、比較検証用の高周波信号用HFアンテナと低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の2発の気中放電と、最後の沿面放電を観察した例である。気中放電が2発である点を除いて、図9と同様な結果が得られている。
【実施例】
【0048】
図11は、比較検証用の高周波信号用HFアンテナと低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の3発の気中放電と、最後の沿面放電を観察した例である。気中放電が3発であるが、図9及び図10と比較すれば、HFアンテナを用いた場合の気中放電の感度が、特に3発目の場合にさらに低下している。
【実施例】
【0049】
図12は、本発明で用いる帯域制限アンテナと、比較検証用のモバイルアンテナ、高周波信号用HFアンテナ、及び低周波信号用LFアンテナを用いて、最初の気中放電と、その後の沿面放電を観察した例である。グラフ横軸は時間(20ns/div)を、また、縦軸は電磁波の振幅(mV)を示している。図中上段のグラフ(A)及び(B)は、アンテナ間で縦軸目盛りを一致させて、各アンテナの受信感度を表示している。帯域制限アンテナはHFアンテナよりゲインが大きいため帯域制限アンテナの振幅強度はHFアンテナより大きくなっている。表示を分かり易くするために、下段のグラフ(C)及び(D)は、グラフ上で各アンテナの表示振幅が略一致するように、縦軸目盛りを変更している。沿面放電では振幅周期が大きなため、帯域制限アンテナ以外では位置標定が困難なことがわかる。
【実施例】
【0050】
帯域制限アンテナとHFアンテナは主にGHzの高周波側に感度を有するため、気中放電を他のアンテナより相対的に大きく検出している。モバイルアンテナとLFアンテナは主に数100MHzの低周波側に感度を有するため、沿面放電を他のアンテナより相対的に大きく検出している。気中放電の観察では、700MHz以下の低周波帯域を低減した帯域制限アンテナは、比較検証用の3つのアンテナのいずれよりも感度が高い。沿面放電の観察では、帯域制限アンテナは、感度良く検出できていることが分かる。これに対して、比較検証用の3つのアンテナは、いずれも、沿面放電の感度は大きいが、ゆっくり振動している低周波成分が大きいため、アンテナ間の時間差を精度よく求めることが困難になる。
【実施例】
【0051】
沿面放電波形を見ると、帯域制限アンテナの大きな振幅が現れる前に、モバイルアンテナやLFアンテナの信号が発生していることがわかる。このことから、沿面放電波形は、気中放電現象が途中に含まれていることがわかる。絶縁物上を沿面放電が進展し、絶縁物端部に達してさらに進展する場合に気中放電が起こり、その先端が接地面や電極に達して短絡されると、この沿面上を通る放電路全体に帯電電荷が消費されるまで放電が継続するものと推測できる。よって、沿面放電の波形は気中放電の周波数成分(高周波)と沿面放電の周波数成分(低周波)の両方が含まれることになる。このことは、図8を参照して上述した気中放電及び沿面放電のFFT解析結果とも一致する。
【実施例】
【0052】
図13は、気中放電に対するハイパスフィルタリング処理結果を例示する図である。グラフ横軸は時間(5ns/div)を、また、縦軸は電磁波の振幅(mV)を示している。グラフ中の最上段に、帯域制限アンテナの測定結果を示し、2番目はHFアンテナの測定結果を示し、さらに、3番目以降は、HFアンテナとハイパスフィルタの組み合わせによって受信した結果を示している。グラフ中の右側に記載したMHz表示は、ハイパスフィルタの低域遮断周波数fcを示している。最上段と2番目以降は、縦軸目盛りを異ならせて、表示振幅を略一致させている。
【実施例】
【0053】
HFアンテナの受信結果を帯域制限すると、帯域制限アンテナの結果と同様に気中放電に対応するパルス振幅を感度よく計測できるようになる。後述する信号対ノイズ強度比(S/N比)は、700MHzで最大となる。図6を参照して上述したように、周波数が高い程にパルスが急峻となって位置標定の精度は向上する。それ故に、要求されるアンテナ帯域はこのS/Nがピークとなる周波数700MHzより高く設定する。
【実施例】
【0054】
図14は、受信信号SのノイズNに対するS/N比を説明するグラフである。(A)に示す信号Sは、帯域制限アンテナの信号に相当するパルス振幅強度を示し、信号Sの前の振幅強度の最大値をノイズNとして、この比S/Nを信号対ノイズ強度比と定義した。(B)は、HFアンテナの測定波形をハイパスフィルタにより帯域制限して、その低域遮断周波数fcとS/Nの関係を示している。このグラフから、低域遮断周波数fcを大きくしていくとS/Nが大きくなっており、700MHzでピークを示している。
【実施例】
【0055】
上述のように、沿面放電はゆっくり振動している低周波成分が大きいが、この低周波成分を低減することにより、アンテナ間の時間差を精度よく求めることができる。また、700MHz以下の低周波帯域を低減した帯域制限アンテナを用いた実験結果は、気中放電或いは沿面放電のいずれに対しても、良好な受信結果を示している。さらに、周波数が高い程にパルスが急峻となって位置標定の精度は向上する。本発明の要求されるアンテナ帯域は、S/N比がピークとなる周波数700MHzより高く設定する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14