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明細書 :細胞外電位計測デバイス及び細胞外電位計測方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6550694号 (P6550694)
公開番号 特開2016-015912 (P2016-015912A)
登録日 令和元年7月12日(2019.7.12)
発行日 令和元年7月31日(2019.7.31)
公開日 平成28年2月1日(2016.2.1)
発明の名称または考案の名称 細胞外電位計測デバイス及び細胞外電位計測方法
国際特許分類 C12M   1/34        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
FI C12M 1/34 D
C12Q 1/02
G01N 27/416 341M
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2014-140645 (P2014-140645)
出願日 平成26年7月8日(2014.7.8)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 2014年1月11日、12日 第26回バイオエンジニアリング講演会 東北大学にて発表
特許法第30条第2項適用 2014年1月10日 第26回バイオエンジニアリング講演会 講演論文集 第75頁、第76頁に発表
特許法第30条第2項適用 平成26年5月22日、23日 化学とマイクロ・ナノシステム学会第29回研究会 日本女子大学 にて発表
特許法第30条第2項適用 平成26年5月22日 化学とマイクロ・ナノシステム学会第29回研究会講演要旨集 第23頁に発表
特許法第30条第2項適用 2014年6月24-26日 第53回日本生体医工学会大会 仙台国際センターにて発表
特許法第30条第2項適用 2014年6月24日 第53回日本生体医工学会大会抄録集に発表
審査請求日 平成29年7月3日(2017.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
【識別番号】507181039
【氏名又は名称】STEMバイオメソッド株式会社
発明者または考案者 【氏名】安田 隆
【氏名】八尋 寛司
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
【識別番号】100176142、【弁理士】、【氏名又は名称】清井 洋平
【識別番号】100127155、【弁理士】、【氏名又は名称】来田 義弘
【識別番号】100159581、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 勝誠
審査官 【審査官】伊達 利奈
参考文献・文献 特開2009-204407(JP,A)
特開2004-166693(JP,A)
米国特許出願公開第2009/0247898(US,A1)
特開2005-233641(JP,A)
米国特許出願公開第2013/0143254(US,A1)
国際公開第2011/121968(WO,A1)
国際公開第2011/010720(WO,A1)
特開2010-151540(JP,A)
特開平06-078889(JP,A)
特開平06-296595(JP,A)
調査した分野 C12M 1/00
C12Q 1/00
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)


特許請求の範囲 【請求項1】
表面に細胞の集合体である細胞組織を載置して培養する細胞培養膜を備え、
該細胞培養膜が、
絶縁材料から形成される膜本体と、
該膜本体の表面に露出して配置される複数の微小電極と、
該各微小電極に接続される電極配線とを有する細胞外電位計測デバイスにおいて、
前記膜本体を形成する前記絶縁材料は透明であり、
前記膜本体には、裏面側から所定成分を前記細胞組織へ供給するための複数の供給孔が形成され
前記細胞培養膜表面側に、前記複数の微小電極及び前記複数の供給孔を含む領域を囲むように配置された細胞培養用筒状体を備え、
前記細胞培養膜裏面側に、前記複数の供給孔を含む領域を囲むように配置された所定成分供給用容器を備えることを特徴とする細胞外電位計測デバイス。
【請求項2】
請求項記載の細胞外電位計測デバイスを用い、
前記細胞培養膜の裏面側から前記供給孔を介して、前記細胞培養膜の表面に載置された前記細胞組織に前記所定成分を供給する工程、及び
前記細胞組織の前記微小電極と接触する部位の電位を計測する工程
を有することを特徴とする細胞外電位計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外電位計測デバイス及びこれを用いた細胞外電位計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外の多点の電位を同時計測することが可能なデバイスが、再生医療分野における細胞機能評価、創薬分野における薬効評価、神経生理学分野における細胞機能の解明などを目的に広く利用されている。このデバイスは、細胞培養面に多数の微小電極がアレイ状に配置された構造を有し、この面上に載置された神経系細胞や心筋細胞及びこれらの組織の細胞外電位を測定することができる(特許文献1~4参照)。
【0003】
しかしながら、上述の従来の細胞外電位計測デバイスにおいては、比較的大きな細胞組織片の電位計測を行う際に、細胞組織と細胞培養面とが接触する領域で、栄養分や酸素等が枯渇して細胞組織が部分的に壊死してしまうことがある。そのため、長期的に安定した電位計測を行うことが困難である。また、従来の細胞外電位計測デバイスにおいては、細胞組織に対して薬剤刺激を行う際に、薬剤を均一に溶解した溶液を全ての細胞に対して均等に作用させることしかできず、薬剤刺激を時間及び場所的に制御することが難しい。例えば、細胞組織の特定部位に対して局所的に薬剤刺激をするためには、外部からガラスピペットなどの先端をその特定部位に近づけ、その先端から薬剤放出するなどの手法をとらざるを得ない。この手法は、複雑かつ慎重な操作を伴い、薬剤刺激の量や位置の制御性が良くない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平06-78889号公報
【特許文献2】特開平06-296595号公報
【特許文献3】特開平08-62209号公報
【特許文献4】特開平11-187865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、細胞組織の長期の電位計測、及び細胞組織への薬剤刺激の制御を可能とする細胞外電位計測デバイス及び細胞外電位計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る細胞外電位計測デバイスは、表面に細胞の集合体である細胞組織を載置して培養する細胞培養膜を備え、該細胞培養膜が、絶縁材料から形成される膜本体と、該膜本体の表面に露出して配置される複数の微小電極と、該各微小電極に接続される電極配線とを有する細胞外電位計測デバイスにおいて、前記膜本体を形成する前記絶縁材料は透明であり、前記膜本体には、裏面側から所定成分を前記細胞組織へ供給するための複数の供給孔が形成され、前記細胞培養膜表面側に、前記複数の微小電極及び前記複数の供給孔を含む領域を囲むように配置された細胞培養用筒状体を備え、前記細胞培養膜裏面側に、前記複数の供給孔を含む領域を囲むように配置された所定成分供給用容器を備える
【0007】
第1の発明に係る細胞外電位計測デバイスによれば、細胞培養膜表面に載置して培養している細胞組織に、供給孔から所定成分として、栄養分や酸素、薬剤等を供給することができ細胞の集合体である細胞組織電位計測も可能である
供給孔から栄養分や酸素を供給することで、細胞組織と細胞培養膜とが接する領域においても細胞組織が部分的に壊死することなく、細胞組織の生存期間を延ばすことができる。これにより、長期的な電位計測が可能となる。また、供給孔から刺激薬剤を添加させることで、薬剤刺激の制御性が高まる。例えば、供給孔を特定の箇所にのみ形成したり、特定の箇所の供給孔からのみ薬剤を供給したりすることで、細胞組織の特定箇所を局所的に薬剤刺激すること、すなわち薬剤刺激の空間的(位置的)制御が可能になる。また、供給孔の配置密度や各孔径に勾配を設けることなどにより、薬剤刺激強度を変化させることもできる。さらに、供給する薬剤の種類を時間的に切り替えることなどにより、薬剤刺激の時間的制御が可能になる。
【0008】
第1の発明に係る細胞外電位計測デバイス、前記細胞培養膜表面側に、前記微小電極及び前記供給孔を含む領域を囲むように配置された細胞培養用筒状体を備える。この細胞培養用筒状体内に配置した細胞組織を培養液に浸すことにより、細胞組織の長期培養及び長期計測をより好適に行うことができる。
【0009】
第1の発明に係る細胞外電位計測デバイス、前記細胞培養膜裏面側に、前記供給孔を含む領域を囲むように配置された所定成分供給用容器をさらに備える。このように所定成分供給用容器を配置することで、所定成分を連続的に供給孔から供給することができる。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る細胞外電位計測方法は、第1の発明に係る細胞外電位計測デバイスを用い、前記細胞培養膜の裏面側から前記供給孔を介して、前記細胞培養膜の表面に載置された前記細胞組織に前記所定成分を供給する工程、及び前記細胞組織の前記微小電極と接触する部位の電位を計測する工程を有する。
【0011】
第2の発明に係る細胞外電位計測方法によれば、供給孔から計測対象の細胞組織へ栄養分や薬剤等を供給することができるため、細胞組織の長期電位計測及び細胞組織への薬剤刺激の制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係る細胞外電位計測デバイス及び第2の発明に係る細胞外電位計測方法によれば、細胞組織の長期の電位計測、及び電位計測の際の細胞組織への薬剤刺激の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る細胞外電位計測デバイスを示す模式図である。
【図2】同細胞外電位計測デバイスの細胞培養膜を示す模式図である。
【図3】同細胞培養膜の部分拡大模式図である。
【図4】(a)~(f)は、同細胞培養膜の製造過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しながら本発明を具体化した実施の形態について説明する。
(細胞外電位計測デバイス)
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る細胞外電位計測デバイス10は、細胞培養膜11、細胞培養用筒状体12(細胞培養用チャンバ)及び所定成分供給用容器13(所定成分供給用チャンバ)を主に備えている。

【0015】
図2、図3に示すように、細胞培養膜11は、膜本体14、複数の微小電極15、複数の電極配線16及び複数の供給孔17を有する。細胞培養膜11の表面には、計測対象の細胞組織Aが載置され、培養される。細胞培養膜11の平面視した形状としては特に限定されず、方形のほか、円形等であってもよい。

【0016】
膜本体14は、透明な絶縁材料から形成されている。このような材料としては、窒化ケイ素、酸化ケイ素、ガラス等のケイ素化合物、その他の無機化合物、アクリル、ポリスチレン等の有機化合物が挙げられるが、耐熱性、耐腐食性、耐薬品性等の点から無機化合物が好ましい。さらに、加工性等の点から、ケイ素化合物、さらには窒化ケイ素又は酸化ケイ素が好ましく、窒化ケイ素が特に好ましい。窒化ケイ素等は、表面(培養面)への有機分子の化学吸着による自己組織化単分子膜形成などによる表面処理を容易に行うことができ、かつその安定性が高く、自家蛍光も少ない。なお、透明な材料を用いることで、載置した細胞組織Aの裏面側からの視認性を高めることができる。なお、膜本体14は、例えばセラミックス等の不透明絶縁材料から形成されていてもよい。

【0017】
膜本体14(細胞培養膜11)の厚さTとしては、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上10μm以下であり、1μm以上3μm以下とすることができる。膜厚が小さすぎると、加工性や強度が低下する。逆に膜厚が大きすぎると、視認性等が低下する傾向にある。膜本体14(細胞培養膜11)の単層部分の平面視の大きさは、用途等に応じて適宜設定できるが、例えば、1mm以上100mm以下であり、5mm以上20mm以下とすることができる。正方形である場合、一辺の長さLは例えば1mm以上10mm以下であり、2mm以上5mm以下とすることができる。

【0018】
微小電極15は、膜本体14の表面(細胞培養面)の中心部分(縁部ではない領域:単層部分)に露出して配置されている。微小電極15の数及びその配置形状は特に限定されないが、例えば、64個(8個×8個)の微小電極15をアレイ状に配置することができる。微小電極15を形成する材料は、導電性を有するものであれば特に限定されず、白金、銅、銀等の金属等のほか、炭素等の導電性材料を用いることができる。微小電極15表面を形成する材料としては、白金黒が好ましい。白金黒を用いた場合、広い周波数帯域にわたってインピーダンスが低く、様々な細胞組織の活動シグナルを検出することが可能となる。各微小電極15の平面視の大きさとしては、例えば、100μm以上50,000μm以下であり、1,000μm以上10,000μm以下とすることができる。

【0019】
各電極配線16は、各微小電極15と接続している。電極配線16は、膜本体14の内部をとおり、微小電極15と反対側の端部が、パッド18として、膜本体14の縁部表面に露出している。このパッド18にはリード線30が接続され、リード線30はアンプ31を介して解析用のコンピュータ32に接続される。電極配線16を形成する材料は、導電性材料であれば特に限定されないが、ITO(インジウム錫酸化物)、IWO(インジウムタングステン酸化物)等の透明導電性材料を用いることが好ましい。透明導電性材料を用いることで、視認性を高めることができる。

【0020】
複数の供給孔17は、それぞれ膜本体14の単層部分の表面から裏面に貫通して形成されている。後に詳述するように、この供給孔17の裏面側から、所定成分Bが表面側に載置されている細胞組織Aへ供給される。供給孔17の配置箇所は特に限定されず、各微小電極15間に配置されていてもよいし、複数の微小電極15の群の周囲に配置されていてもよい。供給孔17の個数も特に限定されない。供給孔17の孔径としては、細胞組織Aが落ちない程度のサイズであれば特に限定されず、例えば、0.1μm以上20μm以下であり、1μm以上10μm以下とすることができる。孔径が小さすぎると、所定成分Bの供給効率が低下するおそれなどもある。

【0021】
複数の供給孔17は、全面に均等に形成されていてもよいし、不均等に形成されていてもよい。同一サイズの供給孔17を均等に形成した場合、全面均等に所定成分Bを供給することができる。一方、膜本体14において、孔径を一方側から他方側にかけて拡大させたり、孔密度を一方側から他方側にかけて高くさせたりした場合、所定成分Bの供給量を一方側から他方側にかけて増やすことができる。このようにすることにより、所定成分B量が細胞組織Aに与える影響を細胞外電位から調べることもできる。

【0022】
ここで、細胞培養膜11の製造方法の一例を、図4(a)~(f)を参照にしつつ説明する。まず、プラズマCVDにより、シリコン基板40の鏡面側(表面側)に膜厚1μmのSiN膜41を、非鏡面側(裏面側)に膜厚2μmのSiN膜42を順次成膜する(図4(a)参照)。この際、残留応力を小さくし、屈折率を下げるために、チャンバ圧力、RFパワー、ステージ温度、アンモニアガス流量、シランガス流量、窒素ガス流量等を予め最適化しておく。

【0023】
次に、シリコン基板40表面側に、スパッタリングにより膜厚100nmのITO膜43を成膜し、王水によりITO膜43(電極配線)のパターニングを行う。その後、再びプラズマCVDにより膜厚1μmのSiN膜44を成膜する(図4(b)参照)。

【0024】
CFプラズマにより、表面側SiN膜44をエッチングすることで、ITO膜43上に窓を開ける。次に、スパッタリングにより膜厚100nmのTi膜と膜厚100nmのAu膜を連続して成膜する。リフトオフによりこれらの膜をパターニングし、辺長50μmのAu/Ti電極45を形成する(図4(c)参照)。

【0025】
CFプラズマにより、シリコン基板40表面側のSiN膜41、44をエッチングすることにより、直径5μmの多数の微小穴17aを形成する。シリコン基板40裏面側のSiN膜42も同様にCFプラズマでエッチングすることにより、シリコン基板40の異方性エッチングのための窓を開ける(図4(d)参照)。

【0026】
25%TMAH(Tetramethylammonium hydroxide)溶液を用いて、シリコン基板40の異方性エッチングを行う。シリコン基板40が貫通するまでエッチングを進め、供給孔17アレイ及びAu/Ti電極45アレイを有するSiN製の自立膜(SiN膜46)を形成する(図4(e)参照)。

【0027】
電解めっきによりAu/Ti電極45上に白金黒47を形成して、微小電極15とする。めっき液として、塩化白金酸水溶液に酢酸鉛を添加したものを使用する。なお、縁部のAu/Ti電極45にはめっきを施さず、そのままパッド18となる。これにより、細胞培養膜11が得られる(図4(f)参照)。

【0028】
細胞培養用筒状体12は、細胞培養膜11表面側に、微小電極15及び供給孔17を含む領域を囲むように配置される。パッド18は、細胞培養用筒状体12の外側となるように配置される。細胞培養膜11上の細胞培養筒状体12で囲まれた領域に培養液Cが満たされ、細胞組織Aが培養されるスペースとなる。

【0029】
細胞培養用筒状体12は、環状壁部19及び蓋部20を有する。環状壁部19としては、例えば、PDMS(polydimethylsiloxane)等のシリコーン樹脂、アクリル、ポリスチレン等の材料から形成されたものを用いることができる。蓋部20にはガス供給管21が設けられ、細胞組織Aの培養に必要な酸素、二酸化炭素等のガスDを供給できるよう構成されている。また、細胞培養用筒状体12には、液等を排出するための排出管22が設けられている。

【0030】
所定成分供給用容器13は、細胞培養膜11裏面側に、供給孔17を含む領域を囲むように配置されている。すなわち、細胞培養膜11は、所定成分供給用容器13の上に載置されている。所定成分供給用容器13は、ガラス、シリコーン樹脂、アクリル、ポリスチレン等の透明材料から形成されたもの等を用いることができる。

【0031】
所定成分供給用容器13には、栄養分や刺激薬剤等の所定成分Bの溶液が充填される。さらに、所定成分供給用容器13には、細胞培養膜11よりも上側から設けられた液供給管23が連結されている。

【0032】
(細胞外電位計測方法)
次いで、細胞外電位計測デバイス10の使用方法(細胞外電位計測デバイス10を用いた細胞外電位計測方法)について説明する。本方法は、細胞培養膜11の裏面側から供給孔17を介して、細胞培養膜11の表面に載置された細胞組織Aに所定成分Bを供給する工程、及び細胞組織Aの微小電極15と接触する部位の電位を計測する工程を有する。以下、具体的に説明する。

【0033】
まず、細胞外電位計測デバイス10の細胞培養膜11表面中央部分に細胞組織Aを載置する。この細胞組織Aが細胞外電位の計測対象となるものであり、各部位の神経系細胞や心筋細胞等が対象となる。細胞組織Aは培養液Cに浸されるが、完全に浸されていてもよいし、一部のみが浸された状態であってもよい。細胞組織Aの裏面は、細胞培養膜11表面の各微小電極15と接している。培養の際には、ガス供給管21から、酸素や二酸化炭素等のガスDが細胞培養用筒状体12(細胞培養用チャンバ)内に供給される。

【0034】
さらに、細胞組織Aには、長期の計測を可能とするため、あるいは、薬剤刺激を与えるため、供給孔17を介して所定成分B(所定成分Bの溶液)が供給される。所定成分Bの溶液は所定成分供給用容器13に充填されており、所定成分供給用容器13には液供給管23から所定成分Bの溶液が供給される。また、供給孔17から供給された細胞培養用筒状体12中の所定成分Bや培養液C等は、排出管22から排出される。

【0035】
所定成分Bは細胞組織Aの培養に必要な栄養分や酸素、細胞組織Aへ刺激を与えるための薬剤等である。また、新薬の影響評価のために、新薬を所定成分Bとして供給することもできる。この栄養分や薬剤は特に限定されるものではなく、公知のもの及び開発された新薬等を用いることができる。例えば、細胞組織Aとしての海馬切片に対し、所定成分Bとして人工脳脊髄液(ACSF)に溶解したピクロトキシンを使用することなどができる。

【0036】
このように、栄養分や薬剤を所定成分Bとして細胞組織Aに供給しながら、細胞組織Aの微小電極15と接触する部位の電位を計測する。なお、細胞培養用筒状体12中の溶液(所定成分B)中には、白金ワイヤー24の一端側が差し込まれ、その他端側は接地されている。この接地された白金ワイヤー24により、細胞培養用筒状体12中の溶液(所定成分B)が計測の際の基準電位となる。微小電極15により計測された電位は、アンプ31により増幅され、コンピュータ32に出力される。なお、白金ワイヤー24を用いず、微小電極15の一つを基準電極として他の微小電極15の電位を計測してもよい。

【0037】
供給孔17から栄養分や酸素を供給することで、細胞組織Aと細胞培養膜11が接する領域においても細胞組織Aが部分的に壊死することなく、細胞組織Aの生存期間を延ばすことができる。これにより、長期的な電位計測が可能となる。また、供給する薬剤の種類を時間的に切り替えることなどにより、薬剤刺激の時間的制御が可能になる。

【0038】
なお、計測及び所定成分Bの供給の際には、押さえつけ部材(図示しない)により、細胞組織Aは上方から押さえつけられている。これにより、所定成分Bの供給孔17からの供給により、細胞組織Aが浮き上がること、すなわち、微小電極15との接触性が低下することを抑えることができる。押さえつけ部材としては、特に限定されず、板状、棒状、網状等の非導電性部材などを用いることができる。

【0039】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、微小電極及び供給孔は複数で無くてもよく、それぞれ1つであってもよい。微小電極及び供給孔の数は、計測対象の細胞組織のサイズ等に応じて適宜設定することができる。また、供給孔から供給する所定成分は液体に限定されるものではなく、酸素等ガス状(気体)であってもよい。

【0040】
また、細胞培養膜の上下に異なる溶液を供給してもよい。すなわち、細胞培養膜の上側に配置した細胞培養用筒状体に液供給管と排出管を共に配置し、細胞培養用筒状体内で栄養分を含む溶液の流れを作ると共に、細胞培養膜の下側に配置した所定成分供給用容器にも液供給管と排出管を共に配置し、所定成分供給用容器内で例えば刺激薬剤を含む溶液の流れを作ることで、供給孔から刺激薬剤を細胞組織に供給してもよい。これにより、大量の刺激薬剤が細胞培養膜の上側に供給されることがなくなるので、細胞組織の特定箇所を局所的に薬剤刺激する際などに、より精密な刺激制御が可能となる。

【0041】
さらに、供給孔から供給する所定成分は1種類及び全て同量であることに限らない。例えば、各領域の供給孔毎に異なる薬剤等を供給したり、供給量を変えるようにしたりしてもよい。また、所定の供給孔からのみ薬剤等を供給したり、時間的に供給量を変化させたりしてもよい。このような制御は、例えば、複数に分割された所定成分供給用容器を用いることなどにより行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
10:細胞外電位計測デバイス、11:細胞培養膜、12:細胞培養用筒状体、13:所定成分供給用容器、14:膜本体、15:微小電極、16:電極配線、17:供給孔、17a:微小穴、18:パッド、19:環状壁部、20:蓋部、21:ガス供給管、22:排出管、23:液供給管、24:白金ワイヤー、30:リード線、31:アンプ、32:コンピュータ、40:シリコン基板、41、42:SiN膜、43:ITO膜(電極配線)、44:SiN膜、45:Au/Ti電極、46:SiN膜、47:白金黒、A:細胞組織、B:所定成分、C:培養液、D:ガス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3