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明細書 :デジタルPCR用熱サイクル装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-143197 (P2018-143197A)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明の名称または考案の名称 デジタルPCR用熱サイクル装置
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
G01N  35/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
FI C12M 1/00 A
G01N 35/00 B
G01N 37/00 101
C12N 15/00 A
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2017-043620 (P2017-043620)
出願日 平成29年3月8日(2017.3.8)
発明者または考案者 【氏名】橋本 雅彦
【氏名】藤田 圭佑
【氏名】西畠 健亮
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G058
4B029
4B063
Fターム 2G058BB02
2G058BB09
2G058BB19
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR45
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
要約 【課題】デジタルPCRの熱サイクルにおける変性及びアニーリング/伸長のためのホールド時間をなくし、デジタルPCRの高速化を実現するデジタルPCR用熱サイクル装置の提供。
【解決手段】PCR反応液の液滴6と油相7のエマルジョンを収容するための液滴収容部2を有する容器1と、平坦な上面5aが加熱面をなすヒーター5とを備えるデジタルPCR用熱サイクル装置。容器1は、上下に貫通する開口3aが少なくとも1つ形成された容器本体3と、容器本体3の下面に接合された熱伝導性を有する基板4とを有し、容器本体3の開口3aと基板4から容器1の液滴収容部2が形成され、容器1はヒーター5の上面5aに載置され、容器1の液滴収容部2に液滴6が単層をなして収容された状態で、容器1の基板4がヒーター5によりPCRの熱サイクルに従って繰り返し温度昇降されるデジタルPCR用熱サイクル装置。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
PCR反応液の液滴と油相とのエマルジョンを収容するための液滴収容部を有する容器と、
前記容器を支持するための支持手段と、
前記容器を加熱するための熱源とを備えたデジタルPCR用熱サイクル装置であって、
前記容器が、
上下に貫通する開口が少なくとも1つ形成された容器本体と、
前記容器本体の下面に接合された熱伝導性を有する基板と、を有し、
前記容器本体の前記開口が前記液滴収容部の内部空間を形成するとともに、前記基板の上面が前記液滴収容部の底面を形成し、
前記熱源が、前記支持手段によって支持された前記容器の下面に接触し、または前記容器の下方において前記容器の下面に対向して配置され、
前記容器の前記液滴収容部に、前記エマルジョンが、前記液滴が単層をなすように収容された状態で、前記容器の前記基板が前記熱源によりPCRの熱サイクルに従って繰り返し温度昇降されるものであることを特徴とするデジタルPCR用熱サイクル装置。
【請求項2】
前記熱源はヒーターからなり、前記ヒーターの上面が平坦な加熱面を形成するとともに前記支持手段をなし、前記容器は前記ヒーターの上面に載置されていることを特徴とする請求項1に記載のデジタルPCR用熱サイクル装置。
【請求項3】
前記ヒーターはフラットベッド熱サイクラーからなっていることを特徴とする請求項2に記載のデジタルPCR用熱サイクル装置。
【請求項4】
前記基板はガラス板からなっていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載のデジタルPCR用熱サイクル装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルPCR(Polymerase Chain Reaction)法において使用される熱サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルPCR法においては、まず、テンプレート(増幅対象)DNA、DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)およびプライマーと呼ばれるオリゴヌクレオチド等を含む反応液(PCR反応液)が、複数の微細ウェル(反応パーティション)に分配される。このとき、微細ウェルのサイズが均一であれば、DNA分子の分配はポアソン分布に従う。
【0003】
その後、微細ウェルは、PCR用の熱サイクル装置によって、変性(94℃程度)・アニーリング(60℃程度)・伸長(72℃程度)のための3段階の温度変化を生じさせる熱サイクル、あるいは変性(94℃程度)・アニーリング/伸長(60℃~68℃程度)のための2段階の温度変化を生じさせる熱サイクルを施され、それによって一斉にPCR増幅が行われる。
【0004】
このとき、DNA分子が1つ以上存在していた微細ウェル内では、PCR増幅が進行し、PCR生産物が得られる。なお、PCR反応液には予め蛍光プローブが含有され、PCR生産物が存在していれば蛍光シグナルが得られるようになっている。
【0005】
こうして、デジタルPCR終了後、各微細ウェルの蛍光シグナルのオン/オフが判定される。そして、微細ウェルの全体に占める蛍光陽性ウェルの割合がわかれば、微細ウェル1個当たりの平均DNA分子数λが、
λ=-ln(1-p)
ここで、pは蛍光陽性液滴の割合を表す、によって算出される。
【0006】
さらに、微細ウェルの個数と微細ウェル1個当たりの体積が既知であるから、PCR反応液中のDNA分子数が算出される。
このように、デジタルPCRは、従来のPCRとは異なり、外部リファレンスを用いることなくDNAの絶対定量を可能とする。
それ故、デジタルPCR法においては、微細ウェル内において一分子からPCR増幅ができることが必須条件となる。なぜなら、もしこの条件が満たされないと、上式のpの値を正しく見積もることができないからである。
【0007】
また近年では、マイクロ流体チップを用いて製造した微小な液滴(エマルジョン)を微細ウェルの代わりに使用したデジタルPCR法が盛んに研究されている。
なお、液滴(エマルジョン)を反応パーティションとして使用するデジタルPCRを、特にドロプレットデジタルPCRと呼ぶこともある。
【0008】
ところで、デジタルPCRにおいても、熱サイクル装置としては、従来のPCR法で用いられる熱サイクル装置が一般に使用されている。
従来の熱サイクル装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1に記載の熱サイクル装置は、基台と、基台の上面に立設された支持壁と、支持壁の一面に取り付けられたモータと、支持壁の他面側に突出するモータの駆動軸に固定された本体とを備えている。
【0009】
本体は、互いに間隔をあけて対置された一対のフランジと、一対のフランジ間にのび、互いに上下に間隔をあけて配置された第1加熱部、スペーサーおよび第2加熱部と、一対のフランジ間にのび、第1加熱部、スペーサーおよび第2加熱部のそれぞれの両側を被覆する一対の固定板と、一対のフランジおよび一対の固定板によって画成された下部開口を被覆する底板と、一対のフランジおよび一対の固定板によって画成された上部開口を被覆する蓋と、を備えており、一対のフランジのうちの一方のフランジがモータの駆動軸に固定されている。第1および第2加熱部は、それぞれアルミニウム製のヒートブロックと、ヒーターとからなっている。
また、第1加熱部のヒートブロック、スペーサーおよび第2加熱部のヒートブロックの上下に整合する位置に複数の穴が貫通形成されており、これらの貫通穴が、バイオチップを装着するための装着部を形成している。
【0010】
そして、PCR反応液と、PCR反応液よりも比重が小さく、かつ反応液と混和しない液体とが充填されたバイオチップが熱サイクル装置の本体の装着部に装着され、第1および第2加熱部の温度が制御されつつ、本体がモータによって回転せしめられて、バイオチップを起立状態に保持する位置と、バイオチップを逆立ち状態に保持する位置の2つの位置に切り替えられることによって、バイオチップ内のPCR反応液に熱サイクルが施されるようになっている。
【0011】
しかしながら、この熱サイクル装置においては、第1および第2加熱部のヒートブロックからバイオチップ内のPCR反応液に熱が伝わるのに一定の時間を要するため、変性・アニーリング・伸長の各設定温度において10秒~1分程度のホールド時間(待機時間)が設けられる。
そのため、PCR生産物を得るまでに時間がかかるという問題があり、ホールド時間をいかに短縮するかがデジタルPCR法における主要な課題の1つとなっている。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】特開2012-115208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、デジタルPCRの熱サイクルの変性、アニーリングおよび伸長の各設定温度におけるホールド時間(待機時間)をなくし、デジタルPCRの高速化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明によれば、PCR反応液の液滴と油相とのエマルジョンを収容するための液滴収容部を有する容器と、前記容器を支持するための支持手段と、前記容器を加熱するための熱源とを備えたデジタルPCR用熱サイクル装置であって、前記容器が、上下に貫通する開口が少なくとも1つ形成された容器本体と、前記容器本体の下面に接合された熱伝導性を有する基板と、を有し、前記容器本体の前記開口が前記液滴収容部の内部空間を形成するとともに、前記基板の上面が前記液滴収容部の底面を形成し、前記熱源が、前記支持手段によって支持された前記容器の下面に接触し、または前記容器の下方において前記容器の下面に対向して配置され、前記容器の前記液滴収容部に、前記エマルジョンが、前記液滴が単層をなすように収容された状態で、前記容器の前記基板が前記熱源によりPCRの熱サイクルに従って繰り返し温度昇降されるものであることを特徴とするデジタルPCR用熱サイクル装置が提供される。
【0015】
本発明の好ましい実施例によれば、前記熱源はヒーターからなり、前記ヒーターの上面が平坦な加熱面を形成するとともに前記支持手段をなし、前記容器は前記ヒーターの上面に載置されている。
本発明の別の好ましい実施例によれば、前記ヒーターはフラットベッド熱サイクラーからなっている。
本発明のさらに別の好ましい実施例によれば、前記基板はガラス板からなっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、PCR反応液の液滴と油相の比重の違いから、容器の液滴収容部内において、PCR反応液の液滴は単層状態で油相中に沈む。こうして、PCR反応液の液滴を熱伝導性を有する基板上に単層状態で配置し、基板を加熱手段によってPCRの熱サイクルに従って繰り返し温度昇降するようにしたので、加熱手段から液滴への伝熱効率が著しく向上する。
それによって、デジタルPCRの熱サイクルの変性、アニーリングおよび伸長の各設定温度におけるホールド時間(待機時間)をなくすことができ、PCRの高速化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1実施例によるデジタルPCR用熱サイクル装置を示す図であり、(A)は縦断面図であり、(B)は(A)のデジタルPCR用熱サイクル装置の容器の平面図である。
【図2】本発明の別の実施例によるデジタルPCR用熱サイクル装置の容器を示す図であり、(A)は容器の平面図であり、(B)は容器の内部構造を示す模式図であり、(C)は容器の液滴収容部にPCR反応液の液滴を捕集する状態を示す斜視図である。
【図3】本発明のデジタルPCR用熱サイクル装置を用いて得られたPCR生産物の落射蛍光顕微鏡による観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1Aは、本発明の1実施例によるデジタルPCR用熱サイクル装置の縦断面図であり、図1Bは、図1AのデジタルPCR用熱サイクル装置の容器の平面図である。

【0019】
図1を参照して、本発明によれば、PCR反応液の液滴6と油相7とのエマルジョンを収容するための液滴収容部2を有する容器1が備えられる。
容器1は、上下に貫通する開口3aが少なくとも1つ(この実施例では、2つ)形成された容器本体3と、容器本体3の下面に接合された熱伝導性を有する基板4とを有している。
そして、容器本体3の開口3aが液滴収容部2の内部空間を形成するとともに、基板4の上面)が液滴収容部2の底面を形成している。

【0020】
基板4は、熱伝導性を有し、かつPCRの熱サイクルに従う温度昇降に耐え得る一定程度の耐熱性を有してさえいれば、どのような材料から形成されていてもよい。この実施例では、基板4はガラス板からなっている。
また、基板4の熱伝導性を上げるため、基板4は十分に薄い方が好ましい。
容器本体3は、PCRの熱サイクルに従う温度昇降に耐え得る一定程度の耐熱性を有してさえいれば、どのような材料から形成されていてもよい。

【0021】
図1を参照して、また本発明によれば、容器1を加熱するための熱源5が備えられる。
この実施例では、熱源5はヒーターからなり、ヒーター5の上面5aが平坦な加熱面を形成している。ヒーター5は、加熱・冷却時にできるだけ大きな温度勾配が得られるものが好ましい。ヒーター5として、例えば、公知のPCR用フラットベッド熱サイクラーを使用することもできる。

【0022】
そして、ヒーター5の上面(加熱面)5aに容器1が載置されている。すなわち、ヒーター5の上面5aは、容器1を加熱する機能だけでなく、容器1の下面を支持する機能も有している。

【0023】
こうして、図1Aに示すように、容器1の液滴収容部2に、PCR反応液の液滴6と油相7とのエマルジョンが、液滴6が単層をなすように収容され、その後、容器1(特に基板4)がヒーター5によってPCRの熱サイクル(変性・アニーリング・伸長)に従って繰り返し温度昇降される。

【0024】
このとき、PCR反応液の液滴6と油相7の比重の違いから、容器1の液滴収容部2において、液滴6が油相7中に単層状態で沈む。そして、PCR反応液の液滴6を熱伝導性を有する基板4上に単層状態で配置し、基板4をヒーター5によってPCRの熱サイクルに従って繰り返し温度昇降するようにしたので、ヒーター5から液滴6への伝熱効率が著しく向上する。
それによって、通常のデジタルPCRの熱サイクルにおいて生じていた変性、アニーリングおよび伸長の各設定温度におけるホールド時間(待機時間)をなくすことができ、デジタルPCRの高速化が実現できる。

【0025】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の構成は上記実施例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で種々の変形例が案出可能であることは言うまでもない。

【0026】
例えば、上記実施例では、熱源5の上面5a(加熱面)に容器1が載置され、熱源5が容器1の下面に接触するようにしたが、その代わりに、熱源5が、熱源5とは別個に備えられた支持手段によって支持された容器1の下方において容器1の下面に対向して配置されていてもよい。
また、熱源5はヒーターに限定されず、送風ファンによって噴出される高温空気等を熱源5として使用することもできる。

【0027】
また、容器1は、上下に貫通する開口3aが少なくとも1つ形成された容器本体3と、容器本体3の下面に接合された熱伝導性を有する基板4とを有し、容器本体3の開口3aが液滴収容部2の内部空間を形成するとともに、基板4の上面が液滴収容部2の底面を形成してさえいれば、どのような構成であってもよく、上記実施例の容器1の代わりに、例えば、液滴6と油相7とのエマルジョンを製造する機能を有し、かつ容器本体3と基板4とから形成された液滴収容部2を備えたマイクロ流体チップを用いることもできる。

【0028】
(実験)
次に、本発明の熱サイクル装置がデジタルPCR法に適用可能かどうか、すなわち、本発明の熱サイクル装置において、デジタルPCR法の絶対定量原理の成立のための必須条件(テンプレートDNAの一分子からのPCR増幅が可能であること)が満たされているかどうかを検証すべく実験を行った。
実験では、本発明のデジタルPCR用熱サイクル装置の容器として、図2に示すようなマイクロ流体チップを使用した。図2Aはマイクロ流体チップの平面図であり、図2Bはマイクロ流体チップの内部構造を示す模式図である。
なお、このマイクロ流体チップは、特開2015-211931号公報に記載されたマイクロ流体チップと基本的構成が同じである。よって、マイクロ流体チップの構成の詳細については特開2015-211931号公報を参照されたい。

【0029】
図2を参照して、マイクロ流体チップは、ガスを吸蔵し得る合成樹脂から形成された一定厚の板状のチップ本体11を有している。この実施例では、チップ本体11を形成する合成樹脂としてポリジメチルシロキサン(PDMS)が使用されている。

【0030】
チップ本体1には、上下に貫通する3つの円柱状の穴12~14が形成されている。
チップ本体11の下面には、第1の穴12の開口縁に接続する第1の微細な溝15と、第2の穴13の開口縁に接続する第2の微細な溝16と、第3の穴14の開口縁に接続する第3の微細な溝17が形成され、第1~第3の溝15~17は互いに一点Pで連結されている。
第1~第3の溝15~17は、それぞれ、全長にわたって同じ深さを有するように、また、連結点Pの手前から当該連結点Pに向かって先細り状に形成されている。
さらに、連結点Pにおいて、第1~第3の溝15~17は、第1および第2の溝15、16のうちの一方(この実施例では、第1の溝15)と第3の溝17が一直線となり、第1および第2の溝15、16のうちの他方(この実施例では、第2の溝16)が、第1および第2の溝15、16のうちの一方(この実施例では、第1の溝15)および第3の溝17に対して直交する配置で、互いにT字状に連結されている。

【0031】
そして、チップ本体11の下面には、ポリカーボネート板(またはアクリル板)18が気密シールされた状態で接合されている。この場合、チップ本体11を形成するPDMSの強い自己吸着性により、チップ本体11とポリカーボネート板18を互いに接触させるだけで、両者を気密シールした状態で接合することができる。
また、ポリカーボネート板18におけるチップ本体11の第3の穴14に整合する位置には、第3の穴14と同一径の穴19が形成されてポリカーボネート板18を上下に貫通している、

【0032】
チップ本体11とポリカーボネート板18との接合によって、チップ本体11の第1および第2の穴12、13のそれぞれの一端開口が封閉されて、第1および第2の液溜m、mが形成され、また、チップ本体11下面の第1~第3の溝15~17のそれぞれの開口部が封閉されて、第1~第3のマイクロ流路n~nが形成される。

【0033】
さらに、ポリカーボネート板18の下面に両面接着テープ20を介してガラス板21が接合されて、ポリカーボネート板18の穴19の下端開口が封閉されている。
そして、チップ本体11の第3の穴14とポリカーボネート板18の穴19から液溜収容部mの内部空間が形成され、ガラス板21の上面から液溜収容部mの底面が形成される。

【0034】
実験では、このマイクロ流体チップをポンプ内蔵真空デシケータ内に収容し、ポンプを作動させてデシケータ内を減圧した後、ポンプを停止させてデシケータ内を30分間減圧状態に維持した。

【0035】
その後、脱気したマイクロ流体チップをデシケータから取り出して大気圧下に置き、液滴収容部mに油相7を第3のマイクロ流路nの高さまで注入した後、図2Cに示すように、液滴収容部mの開口に蓋体22を被せるとともに、固定用ホルダー(図示しない)によって蓋体22をマイクロ流体チップに固定した。さらに、蓋体22に設けた通気路(図示しない)に吸気管23の一端を接続し、吸気管23の他端にはマイクロポンプ(図示しない)を接続した。

【0036】
次いで、第1の液溜mに70μLの油相7を注入する一方、第2の液溜mには10μLのPCR反応液を注入した。
PCR反応液の成分は表1および表2に示す通りであり、油相7の成分は表3に示す通りである。

【0037】
【表1】
JP2018143197A_000003t.gif

【0038】
【表2】
JP2018143197A_000004t.gif

【0039】
【表3】
JP2018143197A_000005t.gif

【0040】
そして、PDMSのガス吸蔵作用を利用するとともにマイクロポンプによる吸気を行い、第1および第2の液溜m、mからそれぞれ油相7およびPCR反応液を第1および第2のマイクロ流路n、nを通じて液滴収容部mに向けて流し、第3のマイクロ流路n内にエマルジョンを形成して、液溜収容部mにPCR反応液の液滴6を油相7とともに、液滴6が単層をなす状態で捕集した。このとき、液滴収容部m内において、液滴6は単層状態で油相7中に沈む。

【0041】
なお、本発明の熱サイクル装置がデジタルPCR法に適用可能かどうか、すなわち、本発明の熱サイクル装置においてテンプレートDNAの一分子からのPCR増幅が可能かどうかを検証するため、ここでは、同一の液滴6に複数のテンプレートDNA分子が内包される確率が極めて低くなるようにPCR反応液中のテンプレート濃度を調整している。

【0042】
次に、液滴収容部mにサンプル溶液の液滴6および油相7が捕集されたマイクロ流体チップを、市販のPCR用フラットベッド熱サイクラーの平坦な加熱面上に載置し、当該熱サイクラーによって、マイクロ流体チップの液滴収容部mの液滴6にPCRの変性、およびアニーリング/伸長のための熱サイクルを施した。
熱サイクルは
・初期変性(98℃、40秒)+[変性(97.5℃、0秒)+アニーリング/伸長(58℃、0秒)]×30サイクル+25℃
とした。
ここで、変性(97.5℃、0秒)とあるのは、アニーリング/伸長温度から温度上昇させて変性のための熱源5の設定温度97.5℃に達した瞬間に温度下降を開始させることを意味し、また、アニーリング/伸長(58℃、0秒)とあるのは、変性温度から温度降下させてアニーリング/伸長のための熱源5の設定温度58℃に達した瞬間に温度上昇を開始させることを意味する。つまり、変性およびアニーリング/伸長の各設定温度においてホールド時間(待機時間)を設けていない。

【0043】
その後、PCRによる生産物を落射蛍光顕微鏡を用いて観察した。
図3は、PCRの生産物の落射蛍光顕微鏡による観察画像である。
図3の画像において白色のドットがいくつか存在するが、実験では、1個の液滴に複数のテンプレートDNAが内包される確率が極めて低くなるような条件を設定している点に鑑みれば、白色のドットの1つ1つが複数のDNAからではなく一分子のDNAから増幅されたPCR生産物を含む液滴を表すと考えるのが妥当である。
このことから、本発明の熱サイクル装置においてテンプレートDNAの一分子からのPCR増幅が可能であること、よって、本発明の熱サイクル装置はデジタルPCR法に適用可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 液滴収容部
3 容器本体
3a 開口
4 基板
5 ヒーター(熱源)
5a 上面
6 液滴
7 油相
11 チップ本体
12 第1の穴
13 第2の穴
14 第3の穴
15 第1の溝
16 第2の溝
17 第3の溝
18 ポリカーボネート板
19 穴
20 両面接着テープ
21 ガラス板
22 蓋体
23 吸気管
第1の液溜
第2の液溜
液滴収容部
第1のマイクロ流路
第2のマイクロ流路
第3のマイクロ流路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2