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明細書 :免疫応答を制御する核酸および核酸の加工法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-154556 (P2018-154556A)
公開日 平成30年10月4日(2018.10.4)
発明の名称または考案の名称 免疫応答を制御する核酸および核酸の加工法
国際特許分類 A61K  31/711       (2006.01)
A61K  38/16        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61K  36/18        (2006.01)
A61K  36/48        (2006.01)
A61K  36/31        (2006.01)
A61K  36/8965      (2006.01)
A23L  33/17        (2016.01)
A23L  33/13        (2016.01)
A23K  20/153       (2016.01)
A23K  20/147       (2016.01)
A23K  10/30        (2016.01)
A61K 135/00        (2006.01)
FI A61K 31/711
A61K 38/16
A61P 37/04
A61K 36/18
A61K 36/48
A61K 36/31
A61K 36/8965
A23L 33/17 ZNA
A23L 33/13
A23K 20/153
A23K 20/147
A23K 10/30
A61K 135:00
請求項の数または発明の数 12
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2017-049827 (P2017-049827)
出願日 平成29年3月15日(2017.3.15)
発明者または考案者 【氏名】大石 由美子
【氏名】早川 清雄
出願人 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106297、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 克博
審査請求 未請求
テーマコード 2B150
4B018
4C084
4C086
4C088
Fターム 2B150AA01
2B150AA06
2B150AA10
2B150AB03
2B150AB10
2B150DC19
2B150DC23
2B150DD42
2B150DD57
4B018MD20
4B018MD53
4B018ME07
4B018ME09
4B018MF01
4B018MF07
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA62
4C084DA42
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB352
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C088AB12
4C088AB15
4C088AB61
4C088AC02
4C088BA12
4C088BA37
4C088CA01
4C088NA14
4C088ZB09
要約 【課題】 動物の自然免疫応答を増強するための組成物を提供すること。
【解決手段】 真核生物から得られるDNA、特に野菜のDNAを原材料として用いて、動物の自然免疫応答を増強するための組成物を提供することにより、上記の課題を解決する。特に100-350bp以下のサイズのDNAが、動物の自然免疫応答を強く活性化することができる。DNAのサイズが100-350bp以下になるように処理する際には、超音波処理法等を利用することができる。原料となる野菜は、容易に入手可能であり、安定的な材料供給源として優れ、安全性上の懸念も小さい。野菜のDNAを原材料として用いて、動物の自然免疫応答を増強するための組成物の製造方法も提供される。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
DNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物であって、該DNAのサイズが100~350bpである、組成物。
【請求項2】
DNAが野菜から得られるDNAである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
野菜が緑豆モヤシ、ブロッコリー、またはアスパラである、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
LL37ペプチドをさらに含有する、請求項1~3のいずれか記載の組成物。
【請求項5】
動物が、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ウマ、ウシ、ヤギ、およびヒツジから成る群より選択される、請求項1~4のいずれか記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載の組成物を含有する、食品組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか記載の組成物を含有する、動物用飼料。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか記載の組成物を含有する、口腔粘膜免疫賦活剤。
【請求項9】
DNAを含有する動物の自然免疫応答を増強するための組成物の製造方法であって、DNAを断片化する工程を含む、方法。
【請求項10】
DNAが野菜から得られるDNAである、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
DNAを断片化するために超音波処理する工程を含む、請求項9または10記載の製造方法。
【請求項12】
DNAのサイズが100~350bpとなるようにDNAを断片化する工程を含む、請求項9~11のいずれか記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の自然免疫応答を増強するための組成物およびその製造方法に関する。より具体的には真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然免疫応答は、異物を排除するために生体に備わっている防御反応である。病原体(ウイルス、細菌)の感染のみならず、発がんや生活習慣病の発症や進展にも自然免疫応答が関与することが近年注目されている。自然免疫応答を引き起こすのはマクロファージに代表される免疫細胞であり、常日頃から組織に常駐している。
【0003】
自然免疫応答には、パターン認識受容体(PRR)と呼ばれる分子が関わっており、これらが微生物の侵入等を察知していることが知られている。PRRは、特定の細胞小器官で機能するTLR(Toll like receptors)と細胞質内で機能するRIG-I(Retinoic acid inducibel gene-I)などの受容体にわけることができる(非特許文献1~3)。PRRのうち、核酸の認識に関わる分子としてはTLR3、TLR7、TLR9、RIG-Iなどが知られている。ウイルス由来のDNAは宿主のDNAに比べてCG配列のシトシンがメチル化されている割合が有意に少ない。このような非メチル化CpG-DNAはエンドソームに存在するTLR9によって認識される。一方、TLR3とTLR7はRNAを認識するセンサー分子である。二本鎖RNAを感知するTLR3は、ウエストナイルウイルスなどによる感染によって活性化され、サイトカインの産生を誘導する。TLR7はウイルス由来の一本鎖RNAを認識するセンサー分子であり、HIVなどのウイルスを感知することが報告されている。また、RIG-Iなどの細胞質内の受容体は、インフルエンザウイルスなどのRNAを認識する。これらの核酸認識受容体は、I型インターフェロンの遺伝子やサイトカインの発現を誘導し、細菌感染やウイルス感染防御のために働いている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】S. Akira, K. Takeda, Toll-like receptor signalling, Nat Rev Immunol, 4 (2004) 499-511.
【非特許文献2】M. Yoneyama, M. Kikuchi, T. Natsukawa, N. Shinobu, T. Imaizumi, M. Miyagishi, K. Taira, S. Akira, T. Fujita, The RNA helicase RIG-I has an essential function in double-stranded RNA-induced innate antiviral responses, Nat Immunol, 5 (2004) 730-737.
【非特許文献3】J. Rehwinkel, C. Reis e Sousa, Targeting the viral Achilles' heel: recognition of 5'-triphosphate RNA in innate anti-viral defence, Curr Opin Microbiol, 16 (2013) 485-492.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は真核生物から得られるDNA、特に野菜のDNAを原材料として用いて、動物の自然免疫応答を増強するための組成物を提供することを目的の一つとする。また、本発明は真核生物から得られるDNA、特に野菜のDNAを原材料として用いて、動物の自然免疫応答を増強するための組成物の製造方法を提供することを別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは真核生物から得られるDNA、特に緑豆モヤシ、ブロッコリー、およびアスパラなどの野菜から得られるDNAを用いて、動物の自然免疫応答を増強することが可能なことを見出した。また、特に100~350bpのサイズのDNAが、動物の自然免疫応答を強く活性化することを見出した。DNAのサイズが100~350bpになるように処理する際には例えば、超音波処理法を利用することができる。本発明は、これらの知見を基礎とするものであり、具体的には以下の事項に関する。
【0007】
[1]DNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物であって、該DNAのサイズが100~350bpである、組成物。
[2]DNAが野菜から得られるDNAである、上記[1]記載の組成物。
[3]野菜が緑豆モヤシ、ブロッコリー、またはアスパラである、上記[1]または[2]記載の組成物。
[4]LL37ペプチドをさらに含有する、上記[1]~[3]のいずれか記載の組成物。
[5]動物が、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ウマ、ウシ、ヤギ、およびヒツジから成る群より選択される、上記[1]~[4]のいずれか記載の組成物。
[6]上記[1]~[5]のいずれか記載の組成物を含有する、食品組成物。
[7]上記[1]~[5]のいずれか記載の組成物を含有する、動物用飼料。
[8]上記[1]~[5]のいずれか記載の組成物を含有する、口腔粘膜免疫賦活剤。
[9]DNAを含有する動物の自然免疫応答を増強するための組成物の製造方法であって、DNAを断片化する工程を含む、方法。
[10]DNAが野菜から得られるDNAである、上記[9]記載の製造方法。
[11]DNAを断片化するために超音波処理する工程を含む、上記[9]または[10]記載の製造方法。
[12]DNAのサイズが100~350bpとなるようにDNAを断片化する工程を含む、上記[9]~[11]のいずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、真核生物から得られるDNA、特に野菜のDNAを原材料として用いて、動物の自然免疫応答を増強するための組成物を提供することができる。自然免疫応答の活性化は、様々な疾病の予防や治療に役立つ。原料となる野菜は、容易に入手可能であり、自然免疫応答を活性化するための組成物の安定的な材料供給源として優れ、製造コストを抑制できる。また、野菜を原料とする製品は、安全性上の懸念も少なく、消費者にも受け入れられやすいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】各種DNAによるIFNB mRNAの誘導活性の比較を示すグラフである。縦軸は、相対的な活性の強さを示す(ブロッコリーDNAによるIFNB mRNAの誘導活性を1とした時の値)。横軸は、各種野菜または穀物由来のDNAを示す。
【図2】LL37とブロッコリーDNAによるIFNB mRNAの誘導を示すグラフである。縦軸は、相対的な活性の強さを示す(ブロッコリーDNAによるIFNB/IFNA4/IL6 mRNAの誘導活性を1とした時の値)。横軸は、LL37およびDNAの量を示す。
【図3】超音波処理によるブロッコリーDNAの断片化を示した電気泳動写真である。レーン左に1Kb DNAラダー、レーン右に100bp DNAラダーを示す。超音波処理の結果として、各種サイズのDNA産物を確認することができる。
【図4】超音波処理したブロッコリーDNAによるIFNB mRNAおよびIL6 mRNAの誘導を示すグラフである。縦軸は、相対的な活性の強さを示す(超音波処理0回のDNAによるIFNB mRNAまたはIL6mRNAの誘導活性を1とした時の値)。横軸は、超音波処理を行った回数の違いを示す。
【図5】DNaseI処理によりIFNB mRNA誘導活性が消失することを示した電気泳動写真とグラフである。左の写真は、DNaseI処理によりDNAが分解されたことを示す。右のグラフの縦軸は、相対的な活性の強さを示す(DNaseI未処理のDNAによるIFNB mRNAの誘導活性を1とした時の値)。横軸は、DNaseI処理の有無を示す。
【図6】インフルエンザウイルスに対する抑制効果を示したグラフである。縦軸は、相対的なインフルエンザウイルスRNA量を示す。横軸は、細胞に対して処理を行ったブロッコリーDNA濃度を示す。
【図7】シグナル経路の分析結果を示したグラフである。上図の縦軸は、相対的な各種シグナル分子(RIG-I/STING/Myd88)の遺伝子発現量を示す。横軸は、コントロールsiRNAまたはシグナル分子のsiRNA(RIG-I/STING/Myd88)を示す。下図の縦軸は、IFNB mRNAの相対的な遺伝子発現の強さを示す。また横軸は、ブロッコリーDNA刺激の有無および各種siRNAを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明者らは、上記のように、100~350bpのサイズを有する真核生物から得られるDNA、特に野菜由来のDNAが、動物の自然免疫応答を増強できることを見出した。また特に、緑豆モヤシ、ブロッコリー、およびアスパラから抽出したDNAが、動物の自然免疫応答を強く活性化できることを見出した。よって、本発明の一態様は、真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物であって、DNAのサイズが100~350bpである組成物に関する。以下に、本発明を詳細に説明する。

【0011】
自然免疫応答
免疫とは、動物体内から外来性および内因性の異物を生理的に認識・排除し,自己体として個性と恒常性を維持するための機構の総称をいう。免疫系は、自然免疫(先天性免疫、基本免疫)と獲得免疫(後天性免疫、適応免疫)とに大別される。獲得免疫は、抗体産生を伴う体液性免疫と、リンパ球自身が対象を攻撃する細胞性免疫に大別される。狭義には、あるいは通常は、免疫といえば獲得免疫をさす。

【0012】
自然免疫による防御は非特異的であり、病原体に対して包括的な応答を行う。近年、自然免疫の機構が分子レベルで解明されてきた。自然免疫では、病原体共通の構造パターンを認識する分子が細胞表面上にあり、病原体の感染により、いち早くこの物質が病原体を認識して、インターフェロン(IFNs)やサイトカインを細胞から分泌させる。

【0013】
本発明の一態様は、上記のように真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物であって、該DNAのサイズが100~350bpである組成物に関する。自然免疫応答が増強される動物は、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ウマ、ウシ、ヤギ、またはヒツジでありうるが、これらに限定はされない。上記の動物を含む対象に真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する組成物を投与することにより、動物の自然免疫応答を増強することができる。

【0014】
動物の自然免疫応答の増強または活性化は、例えば、自然免疫に関与する細胞であるマクロファージにおけるインターフェロン(IFN-α、IFN-βなど)およびサイトカイン(TNF-αなど)の発現上昇を指標として評価することができる。

【0015】
インターフェロンおよびサイトカインの発現上昇を評価する方法は、当業者に公知であり、例えば、qRT-PCRやELISA法を用いてmRNA量、タンパク質量を測定する方法が挙げられるが、これに限定はされない。

【0016】
DNA
本発明者らは真核生物から得られるDNA、特に野菜由来のDNAがマクロファージにおけるIFNsまたはサイトカインの遺伝子発現を誘導できることを見出した。よって真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを投与することにより、動物における自然免疫応答を活性化し、増強できることが理解される。野菜は、市場で容易に入手可能であり、自然免疫応答を活性化するための組成物の優れた材料供給源となりうる。なお、野菜とは、生食または調理して、主に副食用とする草本作物を指し、食べる部位により、葉菜あるいは葉茎菜・果菜・根菜・花菜に大別される。なお、本願においては、芋類・豆類も野菜に含まれると解釈する。

【0017】
野菜からDNAを抽出する方法は、当業者に公知であり、例えば、NucleoSpin Plant II Maxi(マッハライ・ナーゲル)を用いる方法、ISOGEN(ニッポンジーン)を用いる方法などが挙げられるが、これらに限定はされない。野菜からDNAを抽出する際には、一般的な可食部を用いるのが好ましいが、通常は食用としない部位を含めてもよい。なお、本発明に係る組成物の製造の際、必ずしもDNAを高度に精製する必要ははなく、野菜由来の他の栄養素などを含む粗精製が好ましい場合もある。

【0018】
野菜としては、例えば、ブロッコリー、ニンジン、ピーマン、アスパラ、および緑豆モヤシなどが挙げられるが、これらに限定はされない。利用する野菜は、自然免疫応答の増強活性、価格、入手可能な時期、量など、様々な観点に基づき選択することができる。自然免疫応答の増強活性の観点からは、緑豆モヤシ、ブロッコリー、および/またはアスパラを用いることが好ましい。また、価格や入手可能な時期の観点からは、緑豆モヤシを用いることが選択されうる。

【0019】
DNAの供給源は、必ずしも野菜に限定する必要はなく、他の真核生物に由来するDNAを使用してもよい。DNAの供給源には、例えば、食用に適する動物(哺乳類、鳥類、魚介類など)、植物(草本類、穀類、果物類など)、海藻類、真菌類などの可食の真核生物、より具体的には、玄米などの穀物、米糠などの穀物の種皮、サケなどの魚類の白子や、酵母などが含まれる。DNAの単離には、ISOGEN(ニッポンジーン)を用いたDNAの抽出など、当業者に公知の任意の方法を使用できる。また、真核生物のゲノムDNA配列に基づき化学的に合成し、必要に応じてメチル化やアセチル化などの修飾を加えたDNAも利用されうる。

【0020】
DNAのサイズ
本発明者らは真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAが一定のサイズ以下となるように処理した場合、特に動物の自然免疫応答を増強できることを見出した。DNAを小さく断片化する方法は、当業者に公知であり、例えば、超音波処理を用いる方法や、酵素処理を用いる方法が挙げられるが、これらに限定はされない。また、DNAの大きさを評価する方法は、当業者に公知であり、例えば、電気泳動を用いる方法が挙げられるが、これに限定はされない。

【0021】
本発明に係る真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物は、DNAのサイズが例えば、350bp以下、300bp以下、250bp以下、200bp以下、または150bp以下であることができる。また、本発明に係る真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物は、DNAのサイズが例えば、100bp以上、150bp以上、200bp以上、250bp以上、または300bp以上であることができる。よって、本発明に係る真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物は、DNAのサイズが100~350bpの範囲のサイズでありうる。

【0022】
本発明の一態様では、真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物は、DNAのサイズが100~350bpである。しかし、小スケールで合成した場合と異なり、大量スケールで製造した場合、100~350bpのDNAの割合が減る場合も十分想定される。その場合、100~350bpのDNAの割合が10%以下になることもありえる。

【0023】
LL37ペプチド
LL37ペプチドは、カテリシジンファミリーに属する37アミノ酸残基から成るペプチドである(ヒトの配列:LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES;配列番号1)。LL37ペプチドは抗菌活性を有し、また感染などの刺激を受けて上皮細胞などから産生、放出されて生体防御にかかわる。また、LL37は、細胞外のDNAを細胞内に導入し、自然免疫応答を活性化することが報告されている(Biochim Biophys Acta. 1798(12):2201-8 2010., Blood 1;120(18):3699-707 2012.) 。本発明者らは、LL37ペプチドを用いてDNAをマクロファージ細胞内に導入すると、濃度に依存してIFNB mRNAの発現が強く誘導されることを見出した。よって、本発明の一態様において、真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物は、LL37ペプチドをさらに含むことができる。使用するLL37ペプチドの量は、所望の効果や費用の観点から適宜選択することができる。なお、LL37ペプチドは、天然の配列に対して1または数個(例えば2個、3個、4個、5個、6個、または7個)のアミノ酸の置換、挿入または欠失を含む変異体も使用されうる。

【0024】
食品組成物
本発明の一態様は、真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物であって、該DNAのサイズが100~350bpである組成物を含有する、食品組成物に関する。このような食品組成物は、例えば、キャンディー、ガム、タブレット、ゼリーなどの口腔内に長時間保持される菓子やとろみや流動性を付与した介護食品でありうるが、それらに限定はされない。

【0025】
動物用飼料
本発明の一態様は、真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物であって、該DNAのサイズが100~350bpである組成物を含有する、動物用飼料に関する。このような動物用飼料は、例えば、イヌ、ネコなどのためのペットフード、口腔クリーナーや歯磨き粉およびジェル等の口腔ケア製品でありうるが、それらに限定はされない。なお、本願においては、イヌ用のガムや歯固め用の食品や玩具のような製品も動物用飼料に含まれると解する。

【0026】
口腔粘膜免疫賦活剤
本発明の一態様は、真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する、動物の自然免疫応答を増強するための組成物であって、該DNAのサイズが100~350bpである組成物を含有する、口腔粘膜免疫賦活剤に関する。このような口腔粘膜免疫賦活剤は、例えば、咀嚼錠、口腔内崩壊錠、洗口液、口腔粘膜貼付剤、義歯安定剤などの形態をとりうるが、それらに限定はされない。本発明に係る口腔粘膜免疫賦活剤は医薬品として、またはサプリメントとしてみなされうる。口腔粘膜免疫の賦活化の有無は、例えば、公知の手法により、口腔内の自然免疫に関わる細胞(マクロファージなど)の活性化を調べることで評価することができる。

【0027】
製造方法
本発明の一態様は、真核生物から得られるDNA、特に野菜から得られるDNAを含有する動物の自然免疫応答を増強するための組成物の製造方法であって、DNAを断片化する工程を含む方法に関する。DNAの断片化は例えば、超音波処理や酵素処理を用いて行うことができるが、これらに限定はされない。DNAの断片化は、動物の自然免疫応答を増強するための組成物に含まれるDNAの大部分、例えば10%以上が100~350bpの範囲のサイズとなるように行うことができる。

【0028】
本発明に係る組成物の製造方法は、より具体的には、例えば、1)DNAの供給源(野菜、玄米などの穀物、米糠などの穀物の種皮、サケなどの魚類の白子、酵母など)を用意する工程、2)DNAの抽出のためにDNAの供給源(野菜、玄米などの穀物、米糠などの穀物の種皮、サケなどの魚類の白子、酵母など)を前処理(洗浄、加熱、乾燥、粉砕など)する工程、3)DNAを抽出する工程、4)DNAを断片化(超音波処理、酵素処理など)する工程、および5)DNAと組成物の他の成分とを混合する工程を含むことができる。

【0029】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1:野菜由来DNAの調製
市販の野菜を店頭より購入し、DNAの抽出を行った。野菜からのDNA抽出は、NucleoSpin Plant II Maxi(マッハライ・ナーゲル)を用いて行った。今回検討を行った5種類の野菜の内訳は、ブロッコリー、ニンジン、ピーマン、アスパラ、および緑豆モヤシである。各種野菜を乳鉢を用いてホモジナイズした。キットに付属のBuffer PL1、RNase Aを加え、65℃で20分間インキュベーションを行った。その後、全量をNucleo spin filterに移し遠心し、濾液にBuffer PCを加えて速やかに混ぜた後、NucleoSpin Plant II Maxi Columnへとサンプルを移した。遠心によりDNAをカラムへと吸着させた後、洗浄用バッファーを加えて遠心し、カラムを洗浄した後に溶出バッファーを加えてDNAを回収した。抽出したDNAは、滅菌水を用いて溶解した。
【実施例】
【0031】
実施例2:野菜由来DNAによるIFNsおよびサイトカインの誘導
実施例1で調製したDNAによるマクロファージにおけるIFNsまたはサイトカインの遺伝子発現の誘導をqRT-PCRを用いて評価した。実験にはRaw264.7細胞または骨髄由来マクロファージを使用した。Raw264.7細胞は10%FBS、ペニシリン・ストレプトマイシン(SIGMA社)を含有するDMEM培地(ナカライ社)で37℃、5%COにて培養した。骨髄由来マクロファージは、以下の手法により調製した。まず、C57BL/6マウス骨髄細胞を大腿骨から常法に従って回収し、赤血球除去処理(eBioscience)を行った。次に、得られた骨髄細胞を10%FBS、ペニシリン・ストレプトマイシン(SIGMA社)を含有するRPMI培地(ナカライ社)に5×10個/mLになるように懸濁した。得られた細胞懸濁液に、マクロファージ誘導サイトカインとしてM-CSF(R&D systems社)を最終濃度100ng/mlで添加し、37℃、5%COインキュベーター内で培養した。3日後に新しい培地に交換し、さらに3日間培養した。6日後に、マクロファージ細胞をPBS/EDTAで剥がし、12穴プレートに播種し、植物由来のDNAで細胞を処理した。
【実施例】
【0032】
細胞内へのDNAの導入には、Lipofectamine 2000(Invitrogen社)またはLL37ペプチド(INNOVAGEN)を用いた。Lipofectamine 2000とDNAを混合し、最終濃度が1μg/mlとなるように調整して細胞へ導入した。また、LL37は、最終濃度がLL37(50μg/ml)、DNA(10μg/ml)となるように添加した。LL37を用いたDNAの導入には、LL37とDNAを20μlのPBS中(室温)で30分間混合した後、培地へと添加した。遺伝子発現については、qPCR(ABI)を用いて解析を行った。
【実施例】
【0033】
結果として、植物由来のDNAを細胞内へ導入すると、IFNB mRNAの発現が強く誘導された。また、その活性は、モヤシ>アスパラ>ブロッコリー>ニンジン>ピーマンの順番であった(図1)。さらに、LL37ペプチドを用いてブロッコリーDNAを細胞内に導入すると、濃度に依存してIFNB mRNAの発現が強く誘導された(図2)。
【実施例】
【0034】
実施例3:超音波処理した野菜由来DNAによるIFNsおよびサイトカインの誘導
実施例1で調製したブロッコリーDNAを超音波装置で破砕した後、IFNsまたはサイトカインの遺伝子発現の誘導をqRT-PCRを用いて評価した。細胞の調製は、実施例2と同様にして行った。実施例1で抽出したDNAを用いて、超音波破砕装置(TOMY UD-100)でDNAの物理的な破砕をおこなった。DNAを1.5mLチューブに10μg/200μLとなるように調整し、氷上にて10秒間超音波処理-10秒間静置の操作を各回数繰り返した。また、破砕したDNAは、アガロースゲルでサイズを確認した後(図3)、細胞内へLipofectamine2000を用いて導入した。
【実施例】
【0035】
結果として、超音波破砕装置で断片化した植物由来のDNAを細胞内へ導入すると、破砕されたDNAの長さに依存してIFNB mRNAの発現が強く誘導された(図4)。その活性は、DNAの長さを100-350bpまで小さくした場合において、未処理のDNAと比較して約4倍強くIFNB mRNA発現が誘導された。その他のIFNs、炎症性サイトカインの発現に関してもIFNA4約3.7倍、TNF約1.4倍、IL-6約5.9倍とDNAの長さに依存して強く誘導された。
【実施例】
【0036】
実施例4:DNAによる誘導であることの確認
実施例1で調製したブロッコリーDNAをDNaseIで処理した後、IFNsまたはサイトカインの遺伝子発現の誘導をqRT-PCRを用いて評価した。細胞の調製は、実施例2と同様にして行った。実施例1で抽出したDNAをDNaseI(invitrogen)で分解処理し、DNAの分解をアガロースゲルで確認した後(図5)、細胞内へLipofectamine 2000を用いて導入した。
【実施例】
【0037】
結果として、植物由来のDNAをDNaseIで分解処理した後、細胞内へと導入した場合、IFNB mRNAの誘導活性が消失したことから、IFNB mRNAおよび炎症性サイトカインの誘導活性に必要な物質はDNAであることが確認された(図10)。
【実施例】
【0038】
実施例5:インフルエンザウイルスに対する抑制効果
実施例1と同様に、lipofectamine2000を用いて細胞内へ各種濃度のブロッコリーDNAを導入した。6時間後、インフルエンザウイルス(PR8株、0.1HA)をトリプシンを含む感染用MEM培地に懸濁し1時間感染させた後、トリプシンを含むMEM培地に交換し18時間培養を行った。その後、ISOGENを用いてRNAを精製し、qRT-PCRを用いてインフルエンザウイルス量を定量的に解析した。ウイルス量の指標としては、Flu NP 由来のRNAを測定した。解析には、以下のプライマー使用した(PR8-NP (F) 5'-GATTGGTGGAATTGGACGAT;配列番号2,PR8-NP (R) 5'-AGAGCACCATTCTCTCTATT;配列番号3)。その結果、細胞内へ導入したDNAの濃度に依存してFlu NPの量が減少したことから、DNAの細胞内への導入によりウイルス量の減少が誘導されることがわかった(図6)。
【実施例】
【0039】
実施例6:IFNsおよびサイトカイン誘導のシグナル経路の解析
合成siRNAを用いて自然免疫応答に重要なシグナル分子をノックダウンした後、実施例1で調製したブロッコリーDNAを細胞内へと導入し、IFNsまたはサイトカインの遺伝子発現の誘導をqRT-PCRを用いて評価した。細胞の調製は、実施例2と同様にして行った。自然免疫応答に重要なシグナル分子であるRIG-I/STING/Myd88の合成siRNA(シグマ)を購入し、Lipofectamine RNAiMax(Invitrogen)を用いて細胞内へと導入し、48時間培養を行った。その後、実施例1で抽出したDNAを細胞内へ導入した。
【実施例】
【0040】
結果として、Raw細胞において、RIG-I/STING/MyD88の遺伝子発現が抑制されている状態において、実施例1で抽出したブロッコリーDNAを細胞内へと導入すると、RIG-I/STINGのノックダウン経路において、インターフェロンの誘導が抑制されることがわかった。一方、MyD88をノックダウンした細胞においては、インターフェロンの抑制が認められなかったことから、細胞内における核酸認識経路において、野菜DNAが認識されることが明らかとなった(図7)。
【実施例】
【0041】
本明細書には、本発明の好ましい実施態様を示してあるが、そのような実施態様が単に例示の目的で提供されていることは、当業者には明らかであり、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変形、変更、置換を加えることが可能であろう。本明細書に記載されている発明の様々な代替的実施形態が、本発明を実施する際に使用されうることが理解されるべきである。また、本明細書中において参照している特許および特許出願書類を含む、全ての刊行物に記載の内容は、その引用によって、本明細書中に明記された内容と同様に取り込まれていると解釈すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
核酸、特に野菜に含まれる核酸を利用することにより、抗ウイルス効果(感染予防効果)及び、自然免疫応答に関連した病態の改善・予防が可能である。本発明は、野菜に含まれる核酸による健康の維持・疾患の予防、食品や介護補助製品の加工・製造において有用となりうる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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