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明細書 :光学フィルタ選択方法、対象物質含有量推定装置の製造方法及び対象物質含有量推定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-146383 (P2018-146383A)
公開日 平成30年9月20日(2018.9.20)
発明の名称または考案の名称 光学フィルタ選択方法、対象物質含有量推定装置の製造方法及び対象物質含有量推定装置
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
FI G01N 21/27 F
G01N 21/27 B
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2017-041408 (P2017-041408)
出願日 平成29年3月6日(2017.3.6)
発明者または考案者 【氏名】櫻井 俊
【氏名】青砥 隆仁
【氏名】舩冨 卓哉
【氏名】久保 尋之
【氏名】向川 康博
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114476、【弁理士】、【氏名又は名称】政木 良文
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
Fターム 2G059AA01
2G059AA05
2G059BB11
2G059BB12
2G059CC12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059JJ03
2G059KK02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM12
要約 【課題】 実用上適切な光学フィルタを備えた対象物質含有量推定装置と、当該対象物質含有量推定装置の製造方法と、当該対象物質含有量推定装置が備える光学フィルタの選択方法とを提供する
【解決手段】 光学フィルタ選択方法は、複数の光学フィルタのそれぞれを個別に使用した場合における反射光、透過光または散乱光の光吸収特性値を取得する第1ステップと、光吸収特性値が取得される学習用目標物TLに含まれる対象物質の含有量を測定する第2ステップと、光吸収特性値を説明変数かつ対象物質の含有量を目的変数として一部の光学フィルタを使用した場合の光吸収特性値のみを考慮して対象物質の含有量を推定する推定モデルを得る第3ステップと、推定モデルにおいて考慮される光吸収特性値を取得するための光学フィルタを選択する第4ステップと、を備える。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の光学フィルタのそれぞれを個別に使用した場合における学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の光吸収特性値のセットを、少なくとも1つの前記学習用目標物から複数取得する第1ステップと、
1または複数の前記光吸収特性値のセットに対応付けられる、当該光吸収特性値のセットが取得される前記学習用目標物に含まれる対象物質の含有量を測定する第2ステップと、
前記第1ステップで取得された前記光吸収特性値のセットを構成する前記光吸収特性値を説明変数、前記第2ステップで測定された当該光吸収特性値のセットに対応付けられる前記対象物質の含有量を目的変数として、前記光学フィルタの一部を使用した場合における前記光吸収特性値のみを考慮して前記対象物質の含有量を推定する推定モデルを得るための推定演算を行う第3ステップと、
前記第3ステップで得られた前記推定モデルにおいて考慮される前記光吸収特性値を取得するための前記光学フィルタを、前記学習用目標物と同種の物体である測定用目標物に含まれる前記対象物質の含有量の推定に使用する光学フィルタとして選択する第4ステップと、を備えることを特徴とする光学フィルタ選択方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、光源と前記学習用目標物の間または前記学習用目標物と検出器の間に前記光学フィルタを設置した状態で、前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の強度を測定し、その測定結果に基づいて前記光吸収特性値を取得することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ選択方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、
前記光学フィルタを設置せずに前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光を分光して測定することで複数の測定波長毎の強度を表す光強度スペクトルを取得し、
前記光強度スペクトル及び前記光学フィルタのフィルタ特性に基づいて、前記光学フィルタを使用した場合に測定されると推定される前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の強度を算出し、その算出結果に基づいて前記光吸収特性値を取得することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ選択方法。
【請求項4】
前記第1ステップよりも後で行う前記第2ステップにおいて、前記学習用目標物を不可逆的に破壊して行う測定方法により、前記学習用目標物に含まれる前記対象物質の含有量を測定することを特徴とする請求項2または3に記載の光学フィルタ選択方法。
【請求項5】
前記第2ステップにおいて、前記学習用目標物の搾汁を用いて前記対象物質の含有量を測定することを特徴とする請求項4に記載の光学フィルタ選択方法。
【請求項6】
前記第3ステップにおいて、前記推定演算としてスパース推定を行い、
前記第4ステップにおいて、前記第3ステップで得られた前記推定モデルにおいて0ではない係数が乗じられる前記光吸収特性値を取得するために使用された前記光学フィルタを、前記測定用目標物に含まれる前記対象物質の含有量の推定に使用する光学フィルタとして選択することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルタ選択方法。
【請求項7】
前記第1ステップにおいて、異なる複数の前記学習用目標物のそれぞれから前記光吸収特性値のセットを取得し、
前記第2ステップにおいて、当該学習用目標物のそれぞれから前記対象物質の含有量を測定することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルタ選択方法。
【請求項8】
前記第1ステップにおいて、1つの前記学習用目標物における異なる複数の第1測定位置のそれぞれから前記光吸収特性値のセットを取得し、
前記第2ステップにおいて、当該学習用目標物における1または複数の前記第1測定位置に対応する第2測定位置から前記対象物質の含有量を測定することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルタ選択方法。
【請求項9】
少なくとも1つの光学フィルタのそれぞれを個別に使用して測定用目標物の反射光または透過光の光吸収特性値を測定する測定部と、前記測定部が測定した前記光吸収特性値に基づいて前記測定用目標物に含まれる対象物質の含有量を推定する推定部とを備えた対象物質含有量推定装置の製造方法であって、
前記測定用目標物と同種の物体である学習用目標物に対して、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルタ選択方法を実行し、
前記光学フィルタ選択方法の前記第4ステップで選択される前記光学フィルタを備えるように構成することを特徴とする対象物質含有量推定装置の製造方法。
【請求項10】
前記推定部を、前記光学フィルタ選択方法の前記第3ステップで得られる前記推定モデルを用いて前記測定用目標物における前記対象物質の含有量を推定するように構成することを特徴とする請求項9に記載の対象物質含有量推定装置の製造方法。
【請求項11】
前記測定部を、前記測定用目標物における異なる複数の第3測定位置のそれぞれから前記光吸収特性値を測定するように構成し、
前記推定部を、前記測定用目標物における前記第3測定位置のそれぞれにおける前記対象物質の含有量を推定するように構成することを特徴とする請求項9または10に記載の対象物質含有量推定装置の製造方法。
【請求項12】
少なくとも1つの第1光学フィルタのそれぞれを個別に使用して測定用目標物の反射光または透過光の光吸収特性値を測定する測定部と、
前記測定部が測定した前記光吸収特性値に基づいて前記測定用目標物に含まれる対象物質の含有量を推定する推定部と、を備え、
前記第1光学フィルタは、
前記測定用目標物と同種の物体である学習用目標物の少なくとも1つから複数取得される、複数の第2光学フィルタのそれぞれを個別に使用した場合における前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の光吸収特性値のセットと、1または複数の前記光吸収特性値のセットに対応付けられる、当該光吸収特性値のセットが取得される前記学習用目標物に含まれる対象物質の含有量と、に対して、前記光吸収特性値のセットを構成する前記光吸収特性値を説明変数、当該光吸収特性値のセットに対応付けられた前記対象物質の含有量を目的変数とした、前記第2光学フィルタの一部を使用した場合における前記光吸収特性値のみを考慮して前記対象物質の含有量を推定する推定モデルを得るための推定演算を行った場合における、前記推定モデルにおいて考慮される前記光吸収特性値を取得するための前記第2光学フィルタに相当することを特徴とする対象物質含有量推定装置。
【請求項13】
前記測定部は、前記測定用目標物における異なる複数の第3測定位置のそれぞれから前記第1光学フィルタ毎の前記光吸収特性値を測定し、
前記推定部は、前記測定用目標物における前記第3測定位置のそれぞれにおける前記対象物質の含有量を推定することを特徴とする請求項12に記載の対象物質含有量推定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、青果等の目標物に含まれる対象物質の含有量を推定する対象物質含有量推定装置、当該対象物質含有量推定装置の製造方法、及び、当該対象物質含有量推定装置が備える光学フィルタの選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青果等の目標物に含まれる糖などの対象物質の含有量を測定する場合、目標物の搾汁を用いた測定方法が確実かつ一般的である。しかし、このような測定方法では、測定した目標物が不可逆的に破壊されるため、当該目標物の販売や消費が不可能になる等の問題がある。そこで、近年では、目標物を破壊することなく対象物質の含有量を推定することが望まれるようになってきており、このような推定方法を実現するための様々な対象物質含有量推定装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、メロンの糖度及び硬度の検出に適した波長を選択的に透過させる光学フィルタを備えたメロン評価装置が提案されている。この特許文献1では、メロンの透過光を分光して得られるスペクトルを解析する等の実験を行うことによって、糖度及び硬度に対して720nm、740nm、770nm及び810nmの相関が高いという知見を得た上で、当該知見に基づいてこれらの4つの波長のそれぞれを選択的に透過させる光学フィルタをメロン評価装置に実装している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-226775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、糖度及び硬度という評価対象に対する相関が高い波長を実験により特定した上で、当該波長を含む光学フィルタを選択している。しかし、このような選択方法では、必ずしも実用上適切な光学フィルタが選択されるとは限らないため問題となる。
【0006】
この問題について具体的に説明する。まず、光学フィルタは、所定の波長帯域の光を選択的に透過させるものであり、狭帯域の光学フィルタであっても透過させる光の波長にはある程度の幅がある。そのため、例えば、糖度に対する相関が最大である第1波長のすぐ近くに糖度の推定精度を著しく悪化させる第2波長(例えば、糖ではない別の成分の影響を受けて糖度とは無関係に透過光の強度や透過率が大きく変動する波長)が存在する場合において、第1波長の光を選択的に透過させる光学フィルタが入手可能であっても、当該光学フィルタの全てが第2波長を透過させるものである場合、第1波長及び第2波長を含まない別の波長帯域を透過させる光学フィルタを使用した方が糖度の推定精度が高くなり得る。したがって、第1波長を透過させる光学フィルタであっても、糖度の推定において必ずしも実用上適切な光学フィルタであるとは限らない。
【0007】
そこで、本発明は、実用上適切な光学フィルタを備えた対象物質含有量推定装置と、当該対象物質含有量推定装置の製造方法と、当該対象物質含有量推定装置が備える光学フィルタの選択方法とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の光学フィルタのそれぞれを個別に使用した場合における学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の光吸収特性値のセットを、少なくとも1つの前記学習用目標物から複数取得する第1ステップと、1または複数の前記光吸収特性値のセットに対応付けられる、当該光吸収特性値のセットが取得される前記学習用目標物に含まれる対象物質の含有量を測定する第2ステップと、前記第1ステップで取得された前記光吸収特性値のセットを構成する前記光吸収特性値を説明変数、前記第2ステップで測定された当該光吸収特性値のセットに対応付けられる前記対象物質の含有量を目的変数として、前記光学フィルタの一部を使用した場合における前記光吸収特性値のみを考慮して前記対象物質の含有量を推定する推定モデルを得るための推定演算を行う第3ステップと、前記第3ステップで得られた前記推定モデルにおいて考慮される前記光吸収特性値を取得するための前記光学フィルタを、前記学習用目標物と同種の物体である測定用目標物に含まれる前記対象物質の含有量の推定に使用する光学フィルタとして選択する第4ステップと、を備えることを特徴とする光学フィルタ選択方法を提供する。
【0009】
この光学フィルタ選択方法によれば、選択候補である光学フィルタを使用した場合に得られる光吸収特性値に基づいて、対象物質の含有量の推定に使用する光学フィルタが選択される。そのため、対象物質含有量推定装置において現実に使用され得る光学フィルタの選択候補の中から、適切な光学フィルタを選択することができる。
【0010】
また、上記特徴の光学フィルタ選択方法の前記第1ステップにおいて、光源と前記学習用目標物の間または前記学習用目標物と検出器の間に前記光学フィルタを設置した状態で、前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の強度を測定し、その測定結果に基づいて前記光吸収特性値を取得してもよい。
【0011】
この光学フィルタ選択方法によれば、光学フィルタを実際に使用して学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の強度を測定するため、対象物質含有量推定装置において当該光学フィルタを使用した場合と同様の測定結果を得ることができる。
【0012】
また、上記特徴の光学フィルタ選択方法の前記第1ステップにおいて、前記光学フィルタを設置せずに前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光を分光して測定することで複数の測定波長毎の強度を表す光強度スペクトルを取得し、前記光強度スペクトル及び前記光学フィルタのフィルタ特性に基づいて、前記光学フィルタを使用した場合に測定されると推定される前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の強度を算出し、その算出結果に基づいて前記光吸収特性値を取得してもよい。
【0013】
この光学フィルタ選択方法によれば、学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の光強度スペクトルを1つ取得するだけで、複数の光学フィルタのそれぞれを個別に使用した場合における光吸収特性値のセットを取得することができる。したがって、光学フィルタの選択を容易かつ迅速に行うことができる。
【0014】
また、上記特徴の光学フィルタ選択方法の前記第1ステップよりも後で行う前記第2ステップにおいて、前記学習用目標物を不可逆的に破壊して行う測定方法により、前記学習用目標物に含まれる前記対象物質の含有量を測定してもよい。
【0015】
特に、上記特徴の光学フィルタ選択方法の前記第2ステップにおいて、前記学習用目標物の搾汁を用いて前記対象物質の含有量を測定してもよい。
【0016】
この光学フィルタ選択方法によれば、学習用目標物を破壊して当該学習用目標物に含まれる対象物質を測定し易くする測定方法を用いることで、上記推定演算における目的変数である対象物質の含有量を精度良く測定することができる。そのため、光学フィルタを選択するための上記推定演算を精度良く行うことが可能になる。
【0017】
また、上記特徴の光学フィルタ選択方法の前記第3ステップにおいて、前記推定演算としてスパース推定を行い、前記第4ステップにおいて、前記第3ステップで得られた前記推定モデルにおいて0ではない係数が乗じられる前記光吸収特性値を取得するために使用された前記光学フィルタを、前記測定用目標物に含まれる前記対象物質の含有量の推定に使用する光学フィルタとして選択してもよい。
【0018】
この光学フィルタ選択方法によれば、選択候補の光学フィルタの中から所望の数まで光学フィルタを削減することができる。
【0019】
また、上記特徴の波長選択方法の前記第1ステップにおいて、異なる複数の前記学習用目標物のそれぞれから前記光吸収特性値のセットを取得し、前記第2ステップにおいて、当該学習用目標物のそれぞれから前記対象物質の含有量を測定してもよい。
【0020】
この光学フィルタ選択方法によれば、上記推定演算に必要とされる、光吸収特性値及び対象物質の含有量の複数の組み合わせを、複数の学習用目標物から得ることができる。
【0021】
また、上記特徴の光学フィルタ選択方法の前記第1ステップにおいて、1つの前記学習用目標物における異なる複数の第1測定位置のそれぞれから前記光吸収特性値のセットを取得し、前記第2ステップにおいて、当該学習用目標物における1または複数の前記第1測定位置に対応する第2測定位置から前記対象物質の含有量を測定してもよい。
【0022】
この波長選択方法によれば、上記推定演算に必要とされる、光吸収特性値及び対象物質の含有量の複数の組み合わせを、1つの学習用目標物における複数の第1測定位置から得ることができる。したがって、説明変数及び目的変数の組み合わせを増やすことが可能になる。
【0023】
また、本発明は、少なくとも1つの光学フィルタのそれぞれを個別に使用して測定用目標物の反射光、透過光または散乱光の光吸収特性値を測定する測定部と、前記測定部が測定した前記光吸収特性値に基づいて前記測定用目標物に含まれる対象物質の含有量を推定する推定部とを備えた対象物質含有量推定装置の製造方法であって、前記測定用目標物と同種の物体である学習用目標物に対して、上記の光学フィルタ選択方法を実行し、前記光学フィルタ選択方法の前記第4ステップで選択される前記光学フィルタを備えるように構成することを特徴とする対象物質含有量推定装置の製造方法を提供する。
【0024】
この対象物質含有量推定装置の製造方法によれば、現実に使用され得る光学フィルタの選択候補の中から選択された適切な光学フィルタを備えた対象物質含有量推定装置を得ることができる。
【0025】
また、上記特徴の対象物質含有量推定装置の製造方法において、前記推定部を、前記光学フィルタ選択方法の前記第3ステップで得られる前記推定モデルを用いて前記測定用目標物における前記対象物質の含有量を推定するように構成してもよい。
【0026】
この対象物質含有量推定装置の製造方法によれば、光学フィルタを選択する際に得られた当該光学フィルタに対応した推定モデルを用いて測定用目標物に含まれる対象物質の含有量を推定する対象物質含有量推定装置を得ることができる。
【0027】
また、上記特徴の対象物質含有量推定装置の製造方法において、前記測定部を、前記測定用目標物における異なる複数の第3測定位置のそれぞれから前記推定用波長における前記光吸収特性値を測定するように構成し、前記推定部を、前記測定用目標物における前記第3測定位置のそれぞれにおける前記対象物質の含有量を推定するように構成してもよい。
【0028】
この対象物質含有量推定装置の製造方法によれば、測定用目標物に含まれる対象物質の含有量の分布を推定することが可能である対象物質含有量推定装置を得ることができる。
【0029】
また、本発明は、少なくとも1つの第1光学フィルタのそれぞれを個別に使用して測定用目標物の反射光、透過光または散乱光の光吸収特性値を測定する測定部と、前記測定部が測定した前記光吸収特性値に基づいて前記測定用目標物に含まれる対象物質の含有量を推定する推定部と、を備え、前記第1光学フィルタは、前記測定用目標物と同種の物体である学習用目標物の少なくとも1つから複数取得される、複数の第2光学フィルタのそれぞれを個別に使用した場合における前記学習用目標物の反射光、透過光または散乱光の光吸収特性値のセットと、1または複数の前記光吸収特性値のセットに対応付けられる、当該光吸収特性値のセットが取得される前記学習用目標物に含まれる対象物質の含有量と、に対して、前記光吸収特性値のセットを構成する前記光吸収特性値を説明変数、当該光吸収特性値のセットに対応付けられた前記対象物質の含有量を目的変数とした、前記第2光学フィルタの一部を使用した場合における前記光吸収特性値のみを考慮して前記対象物質の含有量を推定する推定モデルを得るための推定演算を行った場合における、前記推定モデルにおいて考慮される前記光吸収特性値を取得するための前記第2光学フィルタに相当することを特徴とする対象物質含有量推定装置を提供する。
【0030】
この対象物質含有量推定装置によれば、現実に使用され得る光学フィルタの選択候補の中から選択された適切な光学フィルタを備えることができる。
【0031】
また、上記特徴の対象物質含有量推定装置において、前記測定部は、前記測定用目標物における異なる複数の第3測定位置のそれぞれから前記第1光学フィルタ毎の前記光吸収特性値を測定し、前記推定部は、前記測定用目標物における前記第3測定位置のそれぞれにおける前記対象物質の含有量を推定してもよい。
【0032】
この対象物質含有量推定装置によれば、測定用目標物に含まれる対象物質の含有量の分布を推定することができる。
【発明の効果】
【0033】
上記特徴の光学フィルタ選択方法、対象物質含有量推定装置の製造方法及び対象物質含有量推定装置によれば、対象物質含有量推定装置において現実に使用され得る光学フィルタの選択候補の中から、適切な光学フィルタが選択される。したがって、実用上適切な光学フィルタを備えた対象物質含有量推定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る対象物質含有量推定装置の全体構成の一例について示すブロック図。
【図2】光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第1例を行う際に使用される機器の一例について示すブロック図。
【図3】光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第2例を行う際に使用される機器の一例について示すブロック図。
【図4】光学フィルタの選択数と評価スコア(推定精度)との関係を示すグラフ。
【図5】4つの光学フィルタを選択した場合における糖度分布の推定精度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態に係る対象物質含有量推定装置及び光学フィルタ選択方法について、図面を参照して説明する。なお、以下では説明の具体化のため、青果(特にイチゴ)に含まれる糖の含有量(特にBrix糖度)を推定する場合について適宜例示するが、本発明の実施形態に係る対象物質含有量推定装置及び光学フィルタ選択方法は、糖以外の対象物質の含有量を推定する場合にも当然に適用可能であるし、青果以外の物に対しても当然に適用可能である。

【0036】
<<対象物質含有量推定装置>>
最初に、本発明の実施形態に係る対象物質含有量推定装置の全体構成の一例について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る対象物質含有量推定装置の全体構成の一例について示すブロック図である。

【0037】
図1に示すように、対象物質含有量推定装置1は、測定用目標物TMの透過光の光吸収特性値を測定する測定部10と、測定部10が測定した光吸収特性値に基づいて測定用目標物TMにおける対象物質の含有量を推定する推定部20とを備えている。また、測定部10は、光源11と、光学フィルタ適用部12と、検出器13と、光吸収特性値算出部14とを備えている。なお、光吸収特性値とは、物体における光を吸収する特性が反映された値であり、典型的には物体の透過光(または反射光あるいは散乱光)の強度、透過率、反射率、吸光度などであるが、これらの微分値(例えば、二次微分値)などの値も当然に光吸収特性値に該当する。

【0038】
光源11は、例えばハロゲンランプなどの様々な波長(連続波長)の光を出射する発光装置で構成され、測定用目標物TMに対して光を照射する。測定用目標物TMに入射した光の一部は測定用目標物TMで吸収され、残りは透過光として出力される。

【0039】
光学フィルタ適用部12は、例えばバンドパスフィルタや干渉フィルタなどの光学フィルタ(「第1光学フィルタ」に相当)を少なくとも1つ備えており、当該光学フィルタのそれぞれを個別に使用することで測定用目標物TMの透過光に含まれる所定の波長帯域の光を選択的に透過させる。なお、光学フィルタ適用部12が備えるべき光学フィルタの選択方法については、後述の<光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法>で説明する。また、光学フィルタ適用部12が複数の光学フィルタを備えている場合、光学フィルタ適用部12は、当該光学フィルタを順番に切り替えて使用することで、複数の波長帯域の光を順次かつ選択的に透過させる。

【0040】
検出器13は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの光の強度を検出するセンサで構成され、光学フィルタ適用部12が備える光学フィルタのそれぞれを透過した測定用目標物TMの透過光の強度を順次検出する。

【0041】
光吸収特性値算出部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算装置と半導体メモリなどの記憶装置とで構成され、検出器13が順次検出した光の強度に基づいて、光学フィルタ適用部12が備える光学フィルタ毎に測定用目標物TMの透過光の光吸収特性値を算出する。例えば、光吸収特性値算出部14は、検出器13が検出した光の強度の値を、そのまま光吸収特性値として算出する。なお、光吸収特性値算出部14が、測定用目標物TMを設置していない状態で検出器13によって検出される光の強度の値を基準として記憶しておき、測定用目標物TMを設置した状態で検出器13によって検出される透過光の強度と当該基準との差や商である相対的な強度を光吸収特性値として算出してもよい。

【0042】
推定部20は、下記式(1)の演算を行うことによって、測定用目標物TMに含まれる対象物質の含有量(例えば、糖度)を推定し、その推定結果を表す対象物質含有量推定データを生成する。なお、下記式(1)において、iは光学フィルタの番号、xは測定部10によって測定された光学フィルタiを使用した場合における光吸収特性値、cは光学フィルタiにおける係数、bは定数、yは対象物質の含有量の推定値である。なお、下記式(1)に示すような係数c及びbを含む数式である推定モデルは、光吸収特性値を説明変数、対象物質の含有量を目的変数とした回帰分析の結果に基づいて決定することが可能であるが、その詳細については後述する<光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法>で説明する。

【0043】
【数1】
JP2018146383A_000003t.gif

【0044】
なお、図1に例示する対象物質含有量推定装置1では、光学フィルタ適用部12が測定用目標物TMと検出器13との間に設けられているが、光学フィルタ適用部12が光源11と測定用目標物TMとの間に設けられていてもよい。また、図1に例示する対象物質含有量推定装置1では、検出器13が測定用目標物TMの透過光の強度を検出するように構成されているが、検出器13が測定用目標物TMの反射光や散乱光の強度を検出するように構成されていてもよい。

【0045】
また、上述の対象物質含有量推定装置1において、検出器13を例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどのエリアセンサで構成してもよい。この場合、検出器13において測定用目標物TMの異なる複数の測定位置(「第3測定位置」に相当)のそれぞれにおける透過光(または反射光あるいは散乱光)の強度が測定され、光吸収特性値算出部14において当該測定位置のそれぞれにおける光吸収特性値が算出されるため、推定部20において当該測定位置のそれぞれにおける対象物質の含有量(対象物質の含有量の分布)の推定結果を得ることが可能になる。

【0046】
また、上記のように検出器13をエリアセンサで構成する場合、例えば、入射した光を面状に拡散させて出射する拡散板の上面に測定用目標物TMが設置され、光源11が発する光が当該拡散板の下面から入射するように、対象物質含有量推定装置1を構成してもよい。

【0047】
<<光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法>>
<第1例>
図1に示した対象物質含有量推定装置1における、光学フィルタ適用部12が備える光学フィルタの選択方法と、推定部20が対象物質の含有量の推定に使用する推定モデルの決定方法との第1例について、図面を参照して説明する。図2は、光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第1例を行う際に使用される機器の一例について示すブロック図である。

【0048】
図2に示すように、光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第1例では、光源31と、光学フィルタ適用部32と、検出器33と、光吸収特性値算出部34と、演算部35とが使用される。

【0049】
光源31は、図1に例示した対象物質含有量推定装置1における光源11と同様である。また、光源31の光が照射される学習用目標物TLは、図1に示した測定用目標物TMと同種の物である。なお、測定用目標物TM及び学習用目標物TLが青果である場合、少なくとも『イチゴ』や『メロン』などの植物の種が同じであればよいが、『とちおとめ』や『さがほのか』などの品種まで同じであると好ましい。

【0050】
光学フィルタ適用部32は、フィルタ特性(波長毎の光の透過率)が異なる複数の光学フィルタ(「第2光学フィルタ」に相当)を備えており、この複数の光学フィルタの中から対象物質含有量推定装置1が備える光学フィルタ適用部12において使用される光学フィルタが選択される。光学フィルタ適用部32も、対象物質含有量推定装置1が備える光学フィルタ適用部12と同様であり、光学フィルタを順番に切り替えることで、複数の波長帯域の光を順次かつ選択的に透過させる。

【0051】
検出器33は、対象物質含有量推定装置1が備える検出器13と同様であり、光学フィルタ適用部32が備える光学フィルタのそれぞれを透過した学習用目標物TLの透過光の強度を順次検出する。光吸収特性値算出部34は、対象物質含有量推定装置1が備える光吸収特性値算出部14と同様であり、検出器33が順次検出した光の強度に基づいて、光学フィルタ適用部32が備える光学フィルタ毎に学習用目標物TLの透過光の光吸収特性値を算出する。これにより、複数の光学フィルタのそれぞれを個別に使用した場合における学習用目標物TLの透過光の光吸収特性値のセットが取得される(「第1ステップ」に相当)。

【0052】
演算部35は、例えばCPUなどの演算装置と半導体メモリなどの記憶装置とで構成され、光吸収特性値算出部34が算出した光学フィルタのそれぞれを使用した場合における光吸収特性値を説明変数、当該光吸収特性値が得られる学習用目標物TLに含まれる対象物質の含有量を目的変数として、光学フィルタ適用部32が備える複数の光学フィルタの一部を使用した場合における光吸収特性値のみを考慮して対象物質の含有量を推定する推定モデルを得るための推定演算を行うことで、上記式(1)に示すような推定モデルを得る(「第3ステップ」に相当)。

【0053】
このとき、目的変数である学習用目標物TLに含まれる対象物質の含有量は、測定結果の信頼性が高い測定方法で測定した値である。例えば、学習用目標物TLの搾汁を用いる測定方法のような、学習用目標物TLの不可逆的な破壊を伴う測定方法で、学習用目標物TLに含まれる対象物質の含有量を測定すると、好ましい(「第2ステップ」に相当)。なお、糖度に関しては、旋光計によって測定される国際糖度、屈折計によって測定されるBrix糖度のいずれにおいても、糖度を測定するために搾汁が必要である。また、学習用目標物TLの不可逆的な破壊を伴う測定方法で対象物質の含有量を測定する場合、非破壊の測定方法である光学フィルタを使用した透過光の測定後に行えばよい。

【0054】
ここで、演算部35が、推定モデルを得るための上記推定演算としてスパース推定を行う場合について説明する。スパース推定とは、多数の説明変数の中から目的変数に対する影響が小さいものを除外した推定モデルを得る推定方法である。

【0055】
上記式(1)に示したように、光吸収特性値xと係数cの線形和によって対象物質の含有量yが求められる場合、m個の学習用目標物TLの透過光に対してn個の光学フィルタのそれぞれを使用して得られるm個の光吸収特性値のセットx11~x1n,x21~x2n,・・・,xm1~xmnと、当該光吸収特性値のセットに対応する対象物質の含有量y,y,・・・,yは、下記式(2)のように表される。また、下記式(2a)は、下記式(2)におけるベクトル及び行列の表記を省略したものであり、後述する式(3)~(5)も下記式(2a)と同様の方法で表記している。

【0056】
【数2】
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【0057】
スパース推定ではない通常の推定方法(例えば、最小二乗法やStepwise法など)では、下記式(3)に示すように、単純に目的変数と推定結果との差を最小化する係数c,c,・・・,c及び切片bを求めることになる。

【0058】
【数3】
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【0059】
これに対して、スパース推定では、目的変数と推定結果との差を最小化する過程でL1正則化を行うことによって、説明変数の削減(特定の光学フィルタiを使用して得られる光吸収特性値x1i~xmiに乗じられる係数cを0にする)を行う。具体的には、下記式(4)に示すように、上記式(3)に対してL1正則化項を追加して最小化問題を解く。下記式(4)において、ハイパーパラメータαはL1正則化の強度を調整するための任意の正の数である。なお、下記式(4)に例示する手法は、lassoと呼ばれる手法である。

【0060】
【数4】
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【0061】
また、lassoにおける諸問題を解消するために、lassoを発展させた手法がいくつか提案されている。ここでは、adaptive lassoを採用する場合について例示する。adaptive lassoでは、下記式(5)の最小化問題を解くことになる。下記式(5)において、ハイパーパラメータαはL1正則化の強度を調整するための任意の正の数、wは重み関数である。また、wは光学フィルタiにおける重み関数の値である。また、ハット付きのcは、光学フィルタiにおける初期係数であり、例えば最小二乗法によって決定される。また、adaptive lassoについては、例えばH. Zou, “The Adaptive Lasso and Its Oracle Properties”, Journal of the American Statistical Association, vol.101,pp.1418-1429, 2006.で提案されている。

【0062】
【数5】
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【0063】
上記式(5)の演算を行うことで、上記式(2)の係数c,c,・・・,c及び切片bが決定される。このとき、上記式(5)のハイパーパラメータα及びγの少なくとも一方を調整することで、係数c,c,・・・,cの中で値が0になる数を調整することが可能である。そのため、α及びγを適宜選択することによって、推定に必要な光学フィルタの数を所望の数まで削減した推定モデルを得ることができる。即ち、測定用目標物TMに含まれる対象物質の含有量を推定する場合において(図1及び上記式(1)参照)、必要とされる光学フィルタの数を所望の数まで削減した推定モデルを得ることができる。

【0064】
演算部35は、上記式(5)の演算により得られた推定モデルを表す推定モデルデータと、光学フィルタ適用部12(図1参照)が備えるべき光学フィルタを表す光学フィルタデータとを生成して出力する。このとき、演算部35は、上記のようにして得られた推定モデルにおいて、0ではない係数が乗じられる光吸収特性値を得るために使用された光学フィルタを、光学フィルタ適用部12が備えるべき光学フィルタとして選択する。

【0065】
そして、図1に示す対象物質含有量推定装置1における推定部20に対して、推定モデルデータが表す推定モデルを記憶させることで、推定部20が当該推定モデルを用いて測定用目標物TMにおける対象物質の含有量を推定するように構成する。さらに、図1に示す対象物質含有量推定装置1における測定部10が、光学フィルタデータが表す光学フィルタを使用した場合の光吸収特性値を選択的に測定するように構成する。具体的には、光学フィルタ適用部12を、光学フィルタデータが表す光学フィルタを備えるとともに当該光学フィルタのそれぞれを個別に使用するように構成する。

【0066】
以上のように、光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第1例では、選択候補である光学フィルタを使用した場合に得られる光吸収特性値に基づいて、対象物質の含有量の推定に使用する光学フィルタが選択される。そのため、対象物質含有量推定装置1において現実に使用され得る光学フィルタの選択候補の中から、適切な光学フィルタを選択することができる。したがって、実用上適切な光学フィルタを選択することができる。

【0067】
なお、図2では、光学フィルタ適用部32を学習用目標物TLと検出器33との間に設ける場合について例示しているが、光学フィルタ適用部32を光源31と学習用目標物TLとの間に設けてもよい。また、図2では、検出器33が学習用目標物TLの透過光の強度を検出する構成である場合について例示しているが、検出器33が学習用目標物TLの反射光や散乱光の強度を検出する構成にしてもよい。ただし、対象物質含有量推定装置1における対象物質の含有量の推定精度を可能な限り向上させるために、学習用目標物TLの反射光、透過光または散乱光の測定環境を、対象物質含有量推定装置1における測定用目標物TMの反射光、透過光または散乱光の測定環境と同様のものにすると、好ましい。

【0068】
また、図2に示した機器において、検出器33を例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどのエリアセンサで構成してもよい。この場合、検出器33において学習用目標物TMの異なる複数の測定位置(「第1測定位置」に相当)のそれぞれにおける透過光(または反射光あるいは散乱光)の強度が測定され、光吸収特性値算出部34において当該測定位置のそれぞれにおける光吸収特性値が算出されることになる。そして、光学フィルタ適用部32において使用する光学フィルタを順次切り替えることで、1つの学習用目標物TLから、複数の光学フィルタのそれぞれを個別に使用して得られる光吸収特性値のセットを、複数得ることができる。この場合、上記式(2)におけるmは、学習用目標物TLの数ではなく、測定位置の数になる。さらに、学習用目標物TLが複数の場合、上記式(2)におけるmは、学習用目標物TLのそれぞれにおける測定位置の総数になる。

【0069】
ただし、この場合において、搾汁等によって目的変数である対象物質の含有量を測定するためにはある程度の大きさの試験片が必要であるため、光吸収特性値が取得される学習用目標物TLの測定位置と比較して、対象物質の含有量が測定される学習用目標物TLの測定位置(「第2測定位置」に相当)は粗くなり得る。そのため、演算部35において、学習用目標物TLの1つの測定位置から測定された対象物質の含有量が、当該学習用目標物TLの複数の測定位置から取得された光吸収特性値に対応し得る(1つの第2測定位置に複数の第1測定位置が含まれ得る)ことになる。

【0070】
<第2例>
次に、図1に示した対象物質含有量推定装置1における、光学フィルタ適用部12が備える光学フィルタの選択方法と、推定部20が対象物質の含有量の推定に使用する推定モデルの決定方法との第2例について、図面を参照して説明する。図3は、光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第2例を行う際に使用される機器の一例について示すブロック図である。なお、第2例を説明するための図3において、第1例を説明するための図2と同様の機器については、同じ符号を付すとともにその詳細な説明を省略する。

【0071】
図3に示すように、光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第2例では、光源31と、分光器42と、検出器43と、光吸収特性値算出部44と、演算部35とが使用される。なお、光源31及び演算部35は、図2に示した第1例と同様である。

【0072】
分光器42は、例えばプリズムや回折格子など構成され、学習用目標物TLの透過光を波長に応じた方向に進行させることで空間的に分解する(即ち、分光する)。検出器43は、例えばラインセンサで構成され、分光器42によって分光された光の強度を所定の測定波長毎に測定する(例えば、1nm間隔で測定する)。

【0073】
光吸収特性値算出部44は、検出器43が検出した複数の測定波長のそれぞれにおける光の強度(「光強度スペクトル」に相当)と、様々な光学フィルタのフィルタ特性を表すデータであるフィルタ特性データとに基づいて、光学フィルタを使用した場合に測定されると推定される学習用目標物TLの透過光の強度を算出する。具体的には、下記式(6)の演算によって、光学フィルタiを使用した場合に測定されると推定される学習用目標物TLの透過光の強度zを算出する。なお、下記式(6)において、nは測定波長の番号、fniは光学フィルタiの測定波長nにおける透過率、sは測定波長nにおける透過光の強度である。

【0074】
【数6】
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【0075】
さらに、光吸収特性値算出部44は、上記式(6)のように算出した学習用目標物TLの透過光の強度に基づいて、図2に示した第1例における光吸収特性値算出部34と同様に光吸収特性値を算出する。

【0076】
演算部35は、第1例と同様の演算を行うことで推定モデルを得て、当該推定モデルを表す推定モデルデータと、光学フィルタ適用部12(図1参照)が備えるべき光学フィルタを表す光学フィルタデータとを生成して出力する。そして、図1に示す対象物質含有量推定装置1における推定部20に対して、推定モデルデータが表す推定モデルを記憶させることで、推定部20が当該推定モデルを用いて測定用目標物TMにおける対象物質の含有量を推定するように構成する。さらに、図1に示す対象物質含有量推定装置1における測定部10が、光学フィルタデータが表す光学フィルタを使用した場合の光吸収特性値を選択的に測定するように構成する。具体的には、光学フィルタ適用部12を、光学フィルタデータが表す光学フィルタを備えるとともに当該光学フィルタのそれぞれを個別に使用するように構成する。

【0077】
以上のように、光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法の第2例でも、第1例と同様に、選択候補である光学フィルタを使用した場合に得られる光吸収特性値に基づいて、対象物質の含有量の推定に使用する光学フィルタが選択される。そのため、対象物質含有量推定装置1において現実に使用され得る光学フィルタの選択候補の中から、適切な光学フィルタを選択することができる。したがって、実用上適切な光学フィルタを選択することができる。

【0078】
また、上述の第1例(図2参照)では、1つの学習用目標物TLに対して、光学フィルタ適用部32が備える光学フィルタの数だけ検出器33による透過光の検出が必要になる。これに対して、第2例(図3)では、1つの学習用目標物TLに対して、検出器43による透過光の検出が1回で済む。したがって、第2例は、上述した第1例よりも光学フィルタの選択及び推定モデルの決定を容易かつ迅速に行うことができる。

【0079】
一方、第2例は、分光器42及び検出器43によって測定された測定波長毎の光の強度に対して上記式(6)を適用することにより、光学フィルタを使用した場合における学習用目標物TLの透過光の強度を仮想的に算出するため、図1に示した対象物質含有量推定装置1において当該光学フィルタを使用した場合と若干異なることがあり、算出結果の補正が必要になることがあり得る。これに対して、上述の第1例は、光学フィルタを実際に使用して学習用目標物TLの透過光の強度を測定するため、図1に示した対象物質含有量推定装置1において当該光学フィルタを使用した場合と同様の測定結果を得ることが可能である。

【0080】
なお、図3では、検出器43が学習用目標物TLの透過光の強度を検出する構成である場合について例示しているが、検出器43が学習用目標物TLの反射光や散乱光の強度を検出する構成にしてもよい。ただし、対象物質含有量推定装置1における対象物質の含有量の推定精度を可能な限り向上させるために、学習用目標物TLの反射光、透過光または散乱光の測定環境を、対象物質含有量推定装置1における測定用目標物TMの反射光、透過光または散乱光の測定環境と同様のものにすると、好ましい。

【0081】
また、図2に示した機器において、分光器42及び検出器43をハイパースペクトルカメラ(例えば、Surface optics corp.製のSOC710-VP)として構成してもよい。ハイパースペクトルカメラは、分光器とエリアセンサである検出器を備えており、例えば分光器に入射する光路を切り替えて走査しつつ検出器で測定波長毎の光の強度を検出することで、測定位置毎に測定波長毎の光の強度を検出可能にしたものである。分光器42及び検出器43をハイパースペクトルカメラとして構成すると、検出器43において、学習用目標物TMの異なる複数の測定位置(「第1測定位置」に相当)のそれぞれにおける透過光(または反射光あるいは散乱光)の強度が測定波長毎に測定されることになる。そして、光吸収特性値算出部44において、当該測定位置のそれぞれから光学フィルタ毎の光吸収特性値が算出されることになる。即ち、1つの学習用目標物TLから、複数の光学フィルタのそれぞれを個別に使用して得られる光吸収特性値のセットを、複数得ることができる。この場合、上記式(2)におけるmは、学習用目標物TLの数ではなく、測定位置の数になる。さらに、学習用目標物TLが複数の場合、上記式(2)におけるmは、学習用目標物TLのそれぞれにおける測定位置の総数になる。

【0082】
ただし、この場合において、搾汁等によって目的変数である対象物質の含有量を測定するためにはある程度の大きさの試験片が必要であるため、光吸収特性値が取得される学習用目標物TLの測定位置と比較して、対象物質の含有量が測定される学習用目標物TLの測定位置(「第2測定位置」に相当)が粗くなり得る。そのため、演算部35において、学習用目標物TLの1つの測定位置から測定された対象物質の含有量が、当該学習用目標物TLの複数の測定位置から取得された光吸収特性値に対応し得る(1つの第2測定位置に複数の第1測定位置が含まれ得る)ことになる。

【0083】
<<推定精度の検証結果>>
上述の<光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法>で説明した通りに構成した光学フィルタ適用部12及び推定部20を備えた対象物質含有量推定装置1の推定精度の検証結果について、図面を参照して説明する。なお、以下において説明する検証結果は、<<光学フィルタの選択方法及び推定モデルの決定方法>>の<第2例>を採用するとともに、図3に示す分光器42及び検出器43をハイパースペクトルカメラとして構成した場合のものである。

【0084】
図4は、光学フィルタの選択数と評価スコア(推定精度)との関係を示すグラフである。なお、図4は、サンプル(学習用目標物TL及び測定用目標物TM)が22個のイチゴ、対象物質が糖であって含有量がBrix糖度、選択候補の光学フィルタ(フィルタ特性)の数が119個、光吸収特性値が透過光の強度という場合において、クローズドテストを行って得られた対象物質含有量推定装置1の推定精度の検証結果を示している。ただし、1つのサンプルにおける複数の測定位置から光吸収特性値を得ており、その総数は47596点である。さらに、1つのサンプルを4~6に分割して搾汁することでBrix糖度を測定している。また、図4では、選択される光学フィルタの数が異なる複数の推定結果を示しているが、これらは、上記式(5)においてγを1.0に固定するとともにαの値を増減させることによって、選択される光学フィルタの数を増減させて得られたものである。

【0085】
評価スコアは、下記式(7)を適用して算出される。下記式(7)において、Dは評価スコア、yは実測値、バー付きのyはyの平均値、ハット付きのyは推定値である。また、下記式(7)から明らかなように、評価スコアDの最大値は1である。

【0086】
【数7】
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【0087】
図4に示すように、使用する光学フィルタの数を2つ以上にすることで、評価スコア(推定精度)が著しく悪くなることを防止することができる。さらに、使用する光学フィルタの数を4つ以上にすることで、選択候補の全ての光学フィルタを使用した場合と遜色ない評価スコアを得ることができる。

【0088】
また、対象物質含有量推定装置1による糖度分布の推定精度の検証結果について、図面を参照して説明する。図5は、4つの光学フィルタを選択した場合における糖度分布の推定精度を示す図である。図5(a)は、糖度分布の実測値と推定値とを並べて示した図である。図5(b)は、糖度分布の実測値と推定値との関係を示したグラフである。図5(b)に示すグラフでは、実測値と推定値が一致する場合を斜めの直線で表現しており、推定精度が高いほど、推定値を表している点が当該直線に近づく。なお、図5(a)及び(b)は、図4と同様のシミュレーションによって糖度分布を推定している。また、図5(a)及び(b)において、糖度を実測するための搾汁にはある程度の大きさの試験片が必要であるため、1つの糖度の実測値に対して複数の推定値が対応している。

【0089】
図5(a)及び(b)に示すように、選択された4つの光学フィルタを用いて算出した糖度の推定値は、糖度の実測値における高低の傾向を概ね反映したものとなっている。したがって、上述の実施形態によって選択される光学フィルタは、対象物質の含有量の推定に適した光学フィルタであると言える。

【0090】
<<変形等>>
上述の本発明の実施形態では、イチゴの糖度を推定する場合を具体例として挙げたが、本発明の実施形態はイチゴ以外の測定用目標物TM及び学習用目標物TLに対しても当然に適用可能であるし、糖度以外の対象物質の含有量の推定も当然に可能である。例えば、青果などの食品に含まれる塩、クエン酸やリンゴ酸、タンニン、カプサイシン、農薬などの化学物質、タンパク質、油分、水分、クロロフィルなどの含有量を推定することも可能である。また、本発明の実施形態は、人体またはマウス等の実験動物におけるガン細胞の発見等にも利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、青果等の目標物に含まれる対象物質の含有量を推定する対象物質含有量推定装置、当該対象物質含有量推定装置の製造方法、及び、当該対象物質含有量推定装置における光学フィルタの選択方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 : 対象物質含有量推定装置
10 : 測定部
11 : 光源
12 : 光学フィルタ適用部
13 : 検出器
14 : 光吸収特性値算出部
20 : 推定部
31 : 光源
32 : 光学フィルタ適用部
33 : 検出器
34 : 光吸収特性値算出部
35 : 演算部
42 : 分光部
43 : 検出器
44 : 光吸収特性値算出部
TM : 測定用目標物
TL : 学習用目標物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4