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明細書 :被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬、及び被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-151162 (P2018-151162A)
公開日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬、及び被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
C07K  16/28        (2006.01)
C12N  15/02        (2006.01)
FI G01N 33/53 D
C07K 16/28 ZNA
C12N 15/00 C
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2017-045244 (P2017-045244)
出願日 平成29年3月9日(2017.3.9)
発明者または考案者 【氏名】吉宗 一晃
【氏名】赤津 裕康
【氏名】神野 英毅
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
【識別番号】597011784
【氏名又は名称】株式会社イムノ・プローブ
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA74
要約 【課題】簡便且つ正確にアルツハイマー病の進行度を診断可能な診断薬を提供する。
【解決手段】本発明は、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬であって、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のアミロイドβタンパク質の凝集体のみに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを備える。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬であって、
粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のアミロイドβタンパク質の凝集体のみに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを備えることを特徴とする診断薬。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L1と、
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L2と、
(c)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L3と、
を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H1と、
(e)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H2と、
(f)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H3と、
を含む重鎖可変ドメインを有する請求項1に記載の診断薬。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが、
配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、
配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有する請求項2に記載の診断薬。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが、
配列番号4に示されるアミノ酸配列と、配列番号5に示されるアミノ酸配列と、配列番号6に示されるアミノ酸配列と、配列番号1に示されるアミノ酸配列と、配列番号2に示されるアミノ酸配列と、配列番号3に示されるアミノ酸配列と、をこの順に有する請求項2又は3に記載の診断薬。
【請求項5】
被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法であって、
前記被検者から採取した血液試料と、請求項1~4のいずれか一項に記載の診断薬とを接触させて、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量と、アルツハイマー病の各進行度におけるアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の基準値とを比較して、アルツハイマー病の進行度を判断する判断工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法であって、
定期的に前記被検者から血液試料を採取し、前記血液試料と、請求項1~4のいずれか一項に記載の診断薬とを接触させ、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出する定期検出工程と、
前記定期検出工程で検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の経時的な変化からアルツハイマー病の進行度を判断する判断工程と、
を備えることを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬、及び被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
認知症は患者本人だけでなくその介護者の生活の質を大幅に病気であり、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)は認知症の約半分を占める。ADは、病気の進行を遅らせる薬がすでに多く上市されているが、現状の診断方法は医師の問診に頼るものであり、正確な早期診断方法が求められている。
【0003】
また、ADの発症はアミロイドβタンパク質(Aβ)が脳に沈着することが引き金となるとの説が有力であり、より正確なAD診断方法として、例えば、Aβの凝集体に結合する放射性マーカーを患者に注射し、PETで画像診断する方法や、髄液中のAβの濃度を測定する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
一方、脳内に沈着するのは、単量体のAβではなく、繊維状や非晶質のAβの凝集体(Aβ凝集体)であり、32量体以下の小さな非晶質のAβ凝集体については神経毒性が強いことなどから、研究が進められてきた。例えば、この小さな非晶質のAβ凝集体は、微小管結合タンパク質であるタウタンパク質の線維化を促進することが知られており、繊維化したタウタンパク質は繊維状封入体(neurofibrillary tangles;NFT)を形成し、神経原線維変化を引き起こす。ブラークらのアルツハイマー病の進行の分類では、NFTの形成度合いによりIからVIまでのステージに分類している(例えば、非特許文献2参照。)。
【0005】
本発明者らは、直径が50nm程度の非晶質のAβ凝集体に対する複数のモノクローナル抗体を作製し、該モノクローナル抗体を用いた赤血球中のAβ凝集体の免疫学的測定法を開発した(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2014-122179号公報
【特許文献2】特開2015-141149号公報
【0007】

【非特許文献1】下濱俊、「アルツハイマー病の新たな診断基準」、日本老年医学会雑誌、50巻1号、2013.
【非特許文献2】Braak H., et al., “Staging of Alzheimer's disease-related neurofibrillary changes”, Neurobiol. Aging., vol.16, p271-278, (discussion) p278-284, 1995.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
AD診断方法として、Aβの凝集体に結合する放射性マーカーを患者に注射し、PETで画像診断する方法では、簡便であるが病気がある程度進行してからでないと確認ができないという問題があった。また、髄液中のAβの濃度を測定する方法では、髄液の採取は患者への負担が大きく、健康診断等でのADスクリーニングが難しい。
さらに、既存の単量体のAβに対する抗体を用いた測定では、血中のAβ濃度が低いため、髄液を用いた場合と同等の精度で測定を行うことができないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡便且つ正確にアルツハイマー病の進行度を診断可能な診断薬を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、直径が50nm程度の非晶質のAβ凝集体に対するモノクローナル抗体を用いることにより、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬であって、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のアミロイドβタンパク質の凝集体のみに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを備えることを特徴とする診断薬。
[2]前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが、(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L1と、(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L2と、(c)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H1と、(e)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H2と、(f)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有する[1]に記載の診断薬。
[3]前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有する[2]に記載の診断薬。
[4]前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが、配列番号4に示されるアミノ酸配列と、配列番号5に示されるアミノ酸配列と、配列番号6に示されるアミノ酸配列と、配列番号1に示されるアミノ酸配列と、配列番号2に示されるアミノ酸配列と、配列番号3に示されるアミノ酸配列と、をこの順に有する[2]又は[3]に記載の診断薬。
[5]被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法であって、前記被検者から採取した血液試料と、[1]~[4]のいずれか一つに記載の診断薬とを接触させて、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出する検出工程と、前記検出工程で検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量と、アルツハイマー病の各進行度におけるアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の基準値とを比較して、アルツハイマー病の進行度を判断する判断工程と、を備えることを特徴とする方法。
[6]被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法であって、定期的に前記被検者から血液試料を採取し、前記血液試料と、[1]~[4]のいずれか一つに記載の診断薬とを接触させ、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出する定期検出工程と、前記定期検出工程で検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の経時的な変化からアルツハイマー病の進行度を判断する判断工程と、を備えることを特徴とする方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便且つ正確にアルツハイマー病の進行度を診断可能な診断薬を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)~(D)実施例1におけるアルツハイマー病を発症している患者13名、及びアルツハイマー病を発症していない健常者10名の血清について、抗体A、B、C、又はDを用いたELISA法によりアミロイドβタンパク質の凝集体を検出した結果を示すグラフである。
【図2】実施例1におけるブラークステージ0~VIであった66歳以上女性の死後血清約108検体について、抗体Dを用いたサンドイッチELISA法によりアミロイドβタンパク質の凝集体を検出した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬>>
一実施形態において、本発明は、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬であって、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のアミロイドβタンパク質の凝集体のみに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを備える診断薬を提供する。

【0015】
本実施形態の診断薬によれば、簡便且つ正確にアルツハイマー病の進行度を診断することができる。

【0016】
一般に、「アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)」とは、不可逆的な進行性の脳疾患で、記憶や思考能力がゆっくりと障害され、最終的には日常生活の最も単純な作業を行う能力さえも失われる病気である。ほとんどのAD患者では、60歳以降に初めて症状が現れる。ADの発症はアミロイドβタンパク質(Aβ)が脳に沈着することが引き金となると考えられている。
また、本明細書において、「アルツハイマー病の進行度」は、ブラークらのアルツハイマー病の進行の分類における繊維状封入体(neurofibrillary tangles;NFT)の形成度合いに基づいて、IからVIまでのステージ(ブラークステージ、Braak Stage(BS))のいずれのステージにあるかを意味する。各ブラークステージにおけるNFTの形成度合いを以下の表1に示す。

【0017】
【表1】
JP2018151162A_000002t.gif

【0018】
本実施形態の診断薬を用いることで、後述の実施例に示す通り、ブラークステージI~IIIでは、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のアミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度が徐々に上がり、ブラークステージIV以上では前記アミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度が下がることで、被検者がブラークステージIII以下、又はIV以上であることを診断することができる。これは、前記アミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度の上昇に伴い、血管に前記アミロイドβタンパク質の凝集体が蓄積し、血液脳関門がつぶれることで、前記アミロイドβタンパク質の凝集体が脳に蓄積し、前記アミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度が下がるためである。
さらに、後述の<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法>>に示す通り、被検者における前記アミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度と、各ブラークステージにおける前記アミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度の基準値とを比較することで、被検者がいずれのブラークステージにあるかを診断することができる。

【0019】
<モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント>
本実施形態の診断薬は、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のアミロイドβタンパク質の凝集体のみに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを備える。

【0020】
一般に、「アミロイドβタンパク質(Aβ)」は、アミロイドβ前駆体(Amyloid-β precursor protein;APP)からβセクレターゼ及びγセクレターゼによる連続した二段階切断により切り出されて産生される40~42アミノ酸からなるペプチドであり、Aβ1-40及びAβ1-42の2種が同定されていた。このうち、Aβ1-42はインビトロでの凝集性が高く、AD患者の脳において初期から有意に蓄積することが知られている。近年、さらに凝集性が高い分子種として、Aβ1-43が同定され、AD患者の脳において初期から有意に蓄積することが明らかとなった(参考文献:Saito T., et al., “Potent amyloidogenicity and pathogenicity of Aβ43”, Nat. Neurosci., vol.14, no.8, p1023-1032,2011.)。また、Aβは産生後に、N末端の部分分解とピログルタミル化が生じることで、疎水性が上がることが知られている(参考文献:Saido. C. T., et al., “Dominant and differential deposition of distinct beta-amyloid peptide species, A beta N3(pE), in senile plaques”, Neuron., vol.14, no.2, p457-466,1995.)。
よって、本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、3番目のグルタミン酸がピログルタミル化したAβ1-42又はAβ1-43に特異的に結合するものであることが好ましい。
また、脳内に沈着するのは、単量体のAβではなく、繊維状や非晶質のAβの凝集体(Aβ凝集体)であり、32量体以下の小さな非晶質のAβ凝集体については神経毒性が強いことが知られている。
よって、本実施形態の診断薬に含まれるモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体のみに特異的に結合するものであって、単量体のAβ及び繊維状のAβには実質的に結合しないものであり、粒子径220nm以上の非晶質のAβ凝集体への結合が弱いものである。

【0021】
本明細書において、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な特異性を持つ抗体を意味する。また、本明細書において、モノクローナル抗体には、免疫グロブリンのすべてのクラス及びサブクラスが含まれる。
本明細書において、モノクローナル抗体の「抗原結合フラグメント」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、標的タンパク質を特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、およびこれらの重合体等が挙げられる。

【0022】
本明細書において、「特異的結合」とは、抗体が標的タンパク質(抗原)にのみ結合することを意味し、例えば試験管内におけるアッセイ、好ましくは精製した野生型抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore、GE-Healthcare Uppsala, Sweden等)における抗体の抗原のエピトープへの結合等により定量することができる。結合の親和性は、ka(抗体-抗原複合体からの抗体結合に関する速度定数)、kD(解離定数)、及びKD(kD/ka)によって規定することができる。抗体が抗原に特異的に結合している場合の結合親和性(KD)は、10-8mol/L以下であることが好ましく、10-9M~10-13mol/Lであることがより好ましい。

【0023】
本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとしてより具体的には、例えば、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L1と、
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L2と、
(c)配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号3に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、
及び/又は、
(d)配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H1と、
(e)配列番号5に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H2と、
(f)配列番号6に示されるアミノ酸配列、又は、配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されているアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有するもの等が挙げられる。
なお、本明細書において、「CDR」はcomplementarity-determining regionを意味する。

【0024】
本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体のみを特異的に認識するものである。従って、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体の特異的認識能を保持していれば、前記(a)~(f)の配列番号1~6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されていてもよい。
ここで、欠失、置換、若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としては、1個以上15個以下が好ましく、1個以上10個以下がより好ましく、1個以上5個以下がさらに好ましい。

【0025】
本明細書中において「置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・スレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)等で分類することができる。
本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントにおける1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列変異体は、抗原への結合活性が対照抗体(例えば、従来の非晶質のAβ凝集体に対する抗体等)よりも高いことが好ましい。

【0026】
中でも、本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとしては、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを有するものであることが好ましい。

【0027】
さらに、発現精製が容易であることから、本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、抗原を認識するために必要な最小単位である重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインをフレキシブルなペプチドリンカーで結合した単可変ドメインフラグメントであることが好ましい。即ち、scFv抗体であることが好ましい。
具体的には、本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号4に示されるアミノ酸配列と、配列番号5に示されるアミノ酸配列と、配列番号6に示されるアミノ酸配列と、配列番号1に示されるアミノ酸配列と、配列番号2に示されるアミノ酸配列と、配列番号3に示されるアミノ酸配列と、をこの順に有することが好ましい。

【0028】
また、本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは標識物質が結合していてもよい。

【0029】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの標識物質としては、例えば、安定同位体、放射性同位体、蛍光物質、酵素、磁性体等が挙げられる。中でも、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの標識物質としては、検出が容易且つ高感度であることから、蛍光物質又は酵素であることが好ましい。上記標識物質を備えることで、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体が結合しているか否かを簡便且つ高感度に確かめることができる。

【0030】
安定同位体としては、例えば13C、15N、H、17O、18Oが挙げられ、これらに限定されない。
放射性同位体としては、例えばH、14C、13N、32P、33P、35Sが挙げられ、これらに限定されない。
蛍光物質としては、例えばシアニン色素(例えばCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、その他公知の蛍光色素(例えば、GFP、FITC(Fluorescein)、TAMRA等)等が挙げられ、これらに限定されない。

【0031】
酵素としては、例えばアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ(HRP)等が挙げられる。標識物質が酵素である場合、酵素基質を使用することが好ましい。酵素基質としては、アルカリホスファターゼの場合、p-ニトロフェニルリン酸(p-nitropheny phosphase;pNPP)、4-メチルウンベリフェリルリン酸(4-MUP)等を用いることができ、酵素がペルオキシダーゼの場合、3,3’-diaminobenzidine(DAB)、3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(TMB)、o-phenylenediamine(OPD)、2,2-アジノ-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(ADHP)等を用いることができる。

【0032】
磁性体としては、例えばガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体、或いはキレート錯体等が挙げられ、これらに限定されない。

【0033】
<モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの製造方法>
本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、ハイブリドーマ法や組換えDNA法等によって作製することができる。

【0034】
ハイブリドーマ法としては、例えば、ケーラーおよびミルスタインの方法(例えば、Kohler & Milstein, Nature, 256:495,1975. 参照)等が挙げられる。この方法における細胞融合工程に使用される抗体産生細胞としては、例えば抗原(例えば、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体、そのペプチド断片、又はこれらを発現する細胞等)で免疫された動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ等)の脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血白血球等が挙げられる。また、免疫されていない動物から予め単離された上記の細胞又はリンパ球等に対して、抗原を培地中で作用させることによって得られた抗体産生細胞も使用することができる。ミエローマ細胞としては、公知の種々の細胞株を使用することができる。抗体産生細胞及びミエローマ細胞は、それらが融合可能であれば、異なる動物種起源のものでもよいが、同一の動物種起源のものであることが好ましい。ハイブリドーマを得る方法としては、例えば、抗原で免疫されたマウスから得られた脾臓細胞と、マウスミエローマ細胞との間の細胞融合により産生され、その後のスクリーニングにより、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る方法等が挙げられる。ハイブリドーマにより産生されたモノクローナル抗体を得る方法としては、例えば標的タンパク質に対するモノクローナル抗体は、ハイブリドーマを培養することにより、また、ハイブリドーマを投与した哺乳動物の腹水から、取得する方法等が挙げられる。

【0035】
組換えDNA法としては、例えば上記本実施形態のモノクローナル抗体又は抗体の機能的断片をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等)に導入し、本実施形態のモノクローナル抗体を組換え抗体として産生させる手法等が挙げられる(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M.et al.,Eur.J.Biochem.192:767-775(1990)参照)。
本実施形態のモノクローナル抗体をコードするDNAの発現においては、重鎖又は軽鎖をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよく、重鎖及び軽鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換してもよい(例えば、国際特許出願第94/11523号参照)。本実施形態のモノクローナル抗体は、上記宿主細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液から分離及び精製し、実質的に純粋で均一な形態で取得することができる。抗体の分離及び精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている方法を使用することができる。トランスジェニック動物作製技術を用いた方法では、例えば、抗体遺伝子が組み込まれたトランスジェニック動物(例えば、ウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタ等)を作製し、そのトランスジェニック動物のミルクから、抗体遺伝子に由来するモノクローナル抗体を大量に取得する方法等が挙げられる。

【0036】
本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体のみに特異的に結合できるものであれば、上述したようなアミノ酸配列変異体であってもかわない。
アミノ酸配列変異体は、抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、またはペプチド合成によって作製することができる。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖または軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレームワーク領域及びCDR)であってもよい。また、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法等を用いてもよい(例えば、PNAS,102:8466-8471(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:485-493(2008)、国際公開第2002/051870号、J.Biol.Chem.,280:24880-24887(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:345-351(2008)参照)。

【0037】
本実施形態のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント(上述のアミノ酸配列変異体等も含む)の抗原への結合活性は、例えば、ELISA法、ウエスタンブロッティング法、フローサイトメトリー法、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、ラジオイムノアッセイ法、免疫沈降法、免疫染色法等により評価することができる。

【0038】
<ハイブリドーマ>
本実施形態の診断薬は、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの代わりに、前記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを備えていてもよい。前記ハイブリ—ドーマを培養することにより、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。前記ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むCDR-L3と、を含む軽鎖可変ドメイン、及び/又は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むCDR-H3と、を含む重鎖可変ドメインを含む抗体であることが好ましい。

【0039】
前記ハイブリドーマは、上述のハイブリドーマ法を用いて、製造することができる。
具体的には、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体、そのペプチド断片、又はこれらを発現する細胞をPBS(Phosphate-Buffered Saline)、生理食塩水などで適当量に希釈・懸濁し、通常のアジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント等)を適量混合し、乳化し、それをマウスに4~21日毎に計2~10回皮下又は腹腔内投与する。また、抗原免疫時に適当な担体を使用してもよい。マウスの血清中の抗体レベルが免疫により上昇するのを確認した後、最終免疫を行い、その面系の2~5日後に免疫した動物の脾臓又はリンパ節を採取する。続いて、採取された細胞をマウスミエローマ細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生マウスハイブリドーマ細胞を作製する。

【0040】
細胞融合は、公知の方法で行うことができる。例えば、免疫した動物から採取した抗体産生細胞(脾臓、リンパ節等の細胞)とミエローマ細胞とを培養液中で1:1~10:1程度の割合でよく混合し、PEG溶液(例えば、平均分子量1,000~6,000程度のもの)を37℃に加温し、両細胞にPEGを30~60%(w/v)の濃度で添加し、混合し、両細胞を融合する。PEGを除去した後、融合細胞を所定濃度で播種する。

【0041】
マウス由来のミエローマ細胞株としては、例えば、P3(P3-X63Ag8)、P3U1(P3-X63Ag8U1)、X63.653(X63Ag8.653)、SP2(Sp2/0-Ag14)、FO、NS-1(NSI/1-Ag4-1)、NSO/1、FOX-NYなどが、ラット由来のミエローマ細胞株として、例えば、Y3-Ag1.2.3、YB2/0、IR983F等が挙げられる。

【0042】
次に、例えば、HAT選択培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含む培養液)などで数日~数週間培養し、ハイブリドーマ以外の細胞を死滅させてハイブリドーマを選択培養する。

【0043】
次に、選択培養液で生存したハイブリドーマの中から、目的の抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングする。スクリーニング方法は特に限定されないが、上述の<モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの製造方法>において、抗原への結合活性の評価方法として例示された方法を用いて、抗原とハイブリドーマ培養上清中の抗体との結合性の有無を調べることにより、目的のハイブリドーマ株を選抜できる。そして、目的の抗体を産生するハイブリドーマを選抜し、必要に応じてモノクローニングし、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを得ることができる。

【0044】
<その他構成>
(2次抗体)
本実施形態の診断薬は、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに加えて、さらに、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに標識物質が結合したもの、又は前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体に標識物質が結合したものを2次抗体として備えていてもよい。
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに標識物質が結合したものを2次抗体として備える場合、サンドイッチELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法や抗原測定系による化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)等を用いて、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体を検出することができる。
また、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体に標識物質が結合したものを2次抗体として備える場合、抗体測定系によるELISA法、間接蛍光抗体法、抗体測定系によるCLEIA法等を用いて、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のAβ凝集体を検出することができる。

【0045】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体に標識物質が結合したものとしては、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの由来動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、サル、ヤギ等)に対する抗体であることが好ましい。例えば、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの由来がマウスである場合、抗マウス抗体であることが好ましい。また、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに対する抗体に標識物質が結合したものには、免疫グロブリンのすべてのクラス及びサブクラスが含まれる。
標識物質としては、上述の<モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント>において、例示されたものと同様のものが挙げられる。

【0046】
(支持体)
本実施形態の診断薬において、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは支持体上に固定化された状態であってもよい。

【0047】
支持体の形態としては、当該分野において公知のものから適宜選択でき、例えば、マイクロタイタープレート、チューブ、キャピラリチューブ、ビーズ、粒子、濾紙、フィルター、膜、ディスク、スティック、ストリップ、スライドグラス、チップ等が挙げられる。

【0048】
支持体の材料としては、当該分野において公知のものをいずれも使用でき、例えば、ガラス、樹脂(例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ポリビニルブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン、レーヨン等)、セルロース及びその誘導体(例えば、ニトロセルロース等)等が挙げられる。
支持体への前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの固定方法は、例えば、物理的吸着、共有結合又は非共有結合(例えば、イオン結合、静電結合、疎水性相互作用等)等が挙げられる。

【0049】
支持体は非特異的吸着を防止するためにブロッキング処理されていることが好ましい。ブロッキング剤は、当該分野において公知のものをいずれも使用でき、例えば、検出対象の哺乳動物以外の哺乳動物の血清アルブミン(例えば、対象がヒトである場合、例えばウシ血清アルブミン(BSA))、脱脂粉乳、カゼイン等が挙げられる。
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが固定され、ブロッキング処理された支持体の表面は、水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、或いはヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースのようなセルロースエステル等)、又は非還元多糖類(例えば、スクロース、トレハロース、ラフィノース等)等でコーディングされていてもよい。このようなコーディングにより、支持体上の前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含む固相は非常に安定化し、長期間の保存に適する。

【0050】
(その他)
本実施形態の診断薬は、必要に応じて、さらに反応停止液を備えていてもよい。反応停止液としては、例えば、硫酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。

【0051】
本実施形態の診断薬は、さらに、緩衝液を備えていてもよい。緩衝液としては、緩衝液は、当該分野において公知のものから適宜選択でき、例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液等が挙げられる。緩衝液は、必要に応じて、NaCl、界面活性剤(例えば、Tween 20、Triton X-100等)及び防腐剤(例えば、アジ化ナトリウム等)のうち少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。緩衝液の具体例としては、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline;PBS)、PBS-T(PBS-Tween 20)、トリス緩衝生理食塩水(Tris Buffered Saline;TBS)、又はTBS-T(TBS-Tween 20)等が挙げられる。

【0052】
本実施形態の診断薬において、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメント、及び2次抗体は、乾燥状態であってもよく、上述の緩衝液に溶解した上であってもよい。中でも、これらの抗体は、保存安定性から、乾燥状態であることが好ましい。

【0053】
本実施形態の診断薬は、さらに、標準曲線(検量線)作成用の標準溶液、標準溶液希釈剤(例えば、上述の緩衝液等)を備えていてもよい。
本実施形態の診断薬は、さらに、洗浄液(例えば、上述の緩衝液等)や、インキュベーションの間に支持体をシールするシーリング材(例えば、支持体がプレートである場合、プレートシール等)を備えていてもよい。

【0054】
本実施形態の診断薬は、さらに、検出装置を備えていてもよい。検出装置としては、当該分野において公知のものから適宜選択でき、例えば、マイクロプレートリーダー、蛍光スキャナー、2光子励起スキャナー等が挙げられる。

【0055】
<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法>>
本実施形態の診断薬は後述に示す通り、被検者におけるアルツハイマー病の進行度の診断に用いることができる。詳細な診断方法について、以下に説明する。

【0056】
本実施形態の診断方法が適用される被検者としては、例えば、健康診断を受診する者、すでにアルツハイマー病を発症している者、アルツハイマー病を発症している疑いがある者、アルツハイマー病を発症する危険性がある者(例えば、65歳以上の高齢者)等が挙げられる。

【0057】
<第一実施形態>
一実施形態において、本発明は、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法であって、前記被検者から採取した血液試料と、上述の診断薬とを接触させて、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出する検出工程と、前記検出工程で検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量と、アルツハイマー病の各進行度におけるアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の基準値とを比較して、アルツハイマー病の進行度を判断する判断工程と、を備える方法を提供する。

【0058】
本実施形態の診断方法によれば、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を簡便に診断することができる。また、本実施形態の診断方法は、低侵襲性の方法であることから、健康診断などで採取した血液試料を用いてアルツハイマー病患者をスクリーニングすることができ、従来の髄液の採取による診断方法よりも被検者の負担も少ない。
本実施形態の診断方法の各工程について、以下に詳細に説明する。

【0059】
[検出工程]
まず、被検者から血液試料を採取する。血液試料としては、例えば、血液、血清、血漿等が挙げられる。中でも、本実施形態の診断方法で用いられる血液試料としては、余分な血球成分及び凝固因子を含まないことから、血清が好ましい。

【0060】
次いで、採取した血液試料と、上述の診断薬とを接触させて、血液試料中の抗原(アミロイドβタンパク質の凝集体)と前記診断薬に含まれる前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとによる抗原抗体反応(以下、「1次抗原抗体反応」と称する場合がある。)を行う。この抗原抗体反応は、4℃以上37℃以下にて行うことが好ましい。反応時間については、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントの抗体価及び血液試料中の抗原(アミロイドβタンパク質の凝集体)の量によって、適宜調整することができる。
なお、本実施形態の診断方法において用いられる前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、上述の通り、粒子径50nm以上220nm未満の非晶質のアミロイドβタンパク質(Aβ)の凝集体のみに特異的に結合するものであって、単量体のAβ及び繊維状のAβには実質的に結合しないものであり、粒子径220nm以上の非晶質のAβ凝集体への結合が弱いものである。

【0061】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントは、例えば、緩衝液等を用いて溶解又は希釈して用いればよい。使用する緩衝液としては、上述の<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬>>の<その他構成>において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0062】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体に、血液試料を滴下し、接触させればよい。また、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントがビーズ、粒子等の支持体に固定されている場合、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体を緩衝液等に懸濁し、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体を含む溶液と、血液試料とを混合して接触させればよい。使用する緩衝液としては、上述の<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬>>の<その他構成>において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0063】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに標識物質が結合したものを用いる場合、1次抗原抗体反応を検出してもよい。
また、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントに結合した際に、センサー等により1次抗原抗体反応を検出してもよい。
検出感度及び反応特異性の観点から、2次抗体を用いて、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出することが好ましい。2次抗体を用いた場合の検出方法について、以下に詳細に説明する。

【0064】
まず、1次抗原抗体反応後、血液試料を取り除き、洗浄する。この洗浄は、例えば、緩衝液等を用いて行えばよい。使用する緩衝液としては、上述の<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬>>の<その他構成>において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0065】
次いで、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントと、2次抗体を接触させ、アミロイドβタンパク質の凝集体、又は前記モノクローナル抗体若しくはその抗原結合フラグメントと2次抗体(前記モノクローナル抗体若しくはその抗原結合フラグメントに標識物質が結合したもの、又は前記モノクローナル抗体若しくはその抗原結合フラグメントに対する抗体に標識物質が結合したもの)とによる抗原抗体反応(以下、「2次抗原抗体反応」と称する場合がある。)を行う。2次抗原抗体反応についても、4℃以上37℃以下にて行うことが好ましい。反応時間については、使用する2次抗体の抗体価によって、適宜調整することができる。

【0066】
使用する2次抗体としては、上述の<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬>>の<その他構成>において例示したものと同様のものが挙げられる。
また、使用する2次抗体は、例えば、緩衝液等を用いて溶解又は希釈して用いればよい。使用する緩衝液としては、上述の<<被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための診断薬>>の<その他構成>において例示したものと同様のものが挙げられる。

【0067】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、2次抗体を含む溶液を滴下し、接触させればよい。また、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントがビーズ、粒子等の支持体に固定されている場合、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントが固定されている支持体を含む溶液と、2次抗体を含む溶液とを混合して接触させればよい。

【0068】
また、2次抗原抗体反応後に、1次抗原抗体反応後と同様に洗浄を行ってもよい。また、2次抗体の標識物質が酵素である場合、酵素基質と接触させる工程、反応停止液を添加して反応を停止させる工程等をさらに備えていてもよい。

【0069】
次いで、2次抗体を検出することにより、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出することができる。さらに、2次抗体を検出することにより、血液試料中に含まれるアミロイドβタンパク質の凝集体を定量することができ、定量されたアミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度を検出量とすることができる。検出方法としては、標識物質の種類により、当業者が適宜選択することができる。例えば、標識物質が蛍光物質である2次抗体を検出する場合、蛍光スキャナー又は2光子励起スキャナー等により検出することができる。

【0070】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントがマイクロタイタープレート、チューブ、スライドグラス又はチップ等の支持体に固定されている場合、検出機構やサンプル分注機構等の解析に必要な周辺装置と組み合わせることによって、全自動あるいは半自動の血液試料中のアミロイドβタンパク質の凝集体の検出システムとして提供することができる。この検出システムによれば、血液試料中に含まれるアミロイドβタンパク質の凝集体を全自動あるいは半自動で簡便に検出することができる。さらに、血液試料中に含まれるアミロイドβタンパク質の凝集体を定量することができ、アミロイドβタンパク質の凝集体の正確な血液中濃度を測定することができる。

【0071】
[判断工程]
次いで、検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度を検出量として、アルツハイマー病の各進行度におけるアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の基準値とを比較して、アルツハイマー病の進行度を判断する。

【0072】
本実施形態の診断方法において、アルツハイマー病の各進行度におけるアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の基準値は、年齢、性別及びブラークステージが異なる複数の被検者の血液試料を用いて、上述の検出工程を行い、アミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度を測定する。ここで、ブラークステージの違いは、従来のAβの凝集体に結合する放射性マーカーを患者に注射し、PETで画像診断する方法や、髄液中のAβの濃度を測定する方法を用いて判断すればよい。
次いで、測定された複数のアミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度について、統計処理を行うことで、各年齢、性別及びブラークステージにおけるアミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度の絶対値を算出し、これを基準値とする。

【0073】
よって、上述の検出工程を行い、測定されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量(血液中濃度)について、被検者の年齢、及び性別に応じた基準値と比較することで、被検者がいずれのブラークステージにあるかを判断することができる。

【0074】
<第二実施形態>
一実施形態において、本発明は、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を診断するための方法であって、定期的に前記被検者から血液試料を採取し、前記血液試料と、上述の診断薬とを接触させ、アミロイドβタンパク質の凝集体を検出する定期検出工程と、前記定期検出工程で検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の経時的な変化からアルツハイマー病の進行度を判断する判断工程と、を備える方法を提供する。

【0075】
本実施形態の診断方法によれば、被検者におけるアルツハイマー病の進行度を簡便に診断することができる。さらに、本実施形態の診断方法は定期的に実施されるものであり、被検者におけるアルツハイマー病の発症を早期に診断することができ、また、すでにアルツハイマー病を発症している被検者におけるアルツハイマー病の進行度、及びアルツハイマー病の治療の効果を判断することができる。
本実施形態の診断方法の各工程について、以下に詳細に説明する。

【0076】
[定期検出工程]
本実施形態の診断方法において、定期的に検出工程を行うこと以外は、上述の<第一実施形態>の[検出工程]と同様である。
検出工程を行う頻度としては、特別な限定はなく、例えば、年に1~2回の健康診断において血液試料を採取する際に同時に行ってもよい。または、例えば、アルツハイマー病をすでに発症している被検者、又はアルツハイマー病を発症している恐れがある被検者である場合は、3~4か月に1回程度であってもよい。
本実施形態の診断方法は、血液試料の採取により診断を行うことができるため、定期的な診断を要しても、従来の診断方法よりも被検者の負担が少ない。

【0077】
[判断工程]
次いで、前記定期検出工程で検出されたアミロイドβタンパク質の凝集体の検出量の経時的な変化からアルツハイマー病の進行度を判断する。
例えば、アルツハイマー病を発症しておらず、ブラークステージ0の被検者、又はアルツハイマー病を発症している恐れがあり、ブラークステージが不明の被検者において、アミロイドβタンパク質の凝集体の検出量が経時的に増加した場合、アルツハイマー病を発症したと判断することができる。さらに、上述の<第一実施形態>における[判断工程]の基準値から、被検者がブラークステージI~VIのいずれのブラークステージにあるかを判断することができる。
また、例えば、アルツハイマー病をすでに発症しており、ブラークステージI~IIの被検者において、アミロイドβタンパク質の凝集体の検出量が経時的に増加した場合、ブラークステージがII~IIIへ移行したと判断することができる。さらに、上述の<第一実施形態>における[判断工程]の基準値から、被検者がブラークステージII~IIIのいずれのブラークステージにあるかを判断することができる。
また、例えば、アルツハイマー病をすでに発症しており、ブラークステージIIIの被検者において、アミロイドβタンパク質の凝集体の検出量が経時的に減少した場合、ブラークステージがIV以上へ移行したと判断することができる。さらに、上述の<第一実施形態>における[判断工程]の基準値から、被検者がブラークステージIV~VIのいずれのブラークステージにあるかを判断することができる。
また、例えば、アルツハイマー病をすでに発症しており、ブラークステージI~IIの被検者において、アミロイドβタンパク質の凝集体の検出量が経時的に変化しない、又は減少した場合、ブラークステージが変わらず、アルツハイマー病の進行が抑えられていると判断することができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0079】
[実施例1]
(1)モノクローナル抗体の作製
(1-1)抗原の作製
Aβ1-42(AnyGen社製)を0.22mMとなるように1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノールに溶解し、4℃で16時間静置、37℃で3時間
静置したのち、減圧乾燥させた。次いで、この溶解と減圧乾燥の操作を2回繰り返し、水に溶解しやすい非晶質のナノ凝集体を作製した。作製したナノ凝集体には様々な大きさの凝集体が含まれているため、220nm、300kDa(約50nm)、及び100kDaのフィルターでろ過することによりサイズ分画を行った。
【実施例】
【0080】
(1-2)ハイブリドーマの作製
(1-1)で作製した300kDa(約50nm)のAβ1-42ナノ凝集体0.1mgを完全又は非完全フロイントアジュバントと混合し、マウス(BALB/C、8週目、雌)に免疫した。免疫は、2週おきに3回行った。次いで、免疫したマウスの脾臓を摘出し、その細胞数の2割のマウスミエローマ細胞(P3U1)を混合後、この混合細胞にPEG(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)1mLを1分間かけて攪拌しながらゆっくり加えた。次いで、1分間攪拌後、無血清培地FCS3mLを3分間かけて攪拌しながらゆっくり加えた。次いで、無血清培地10mLを3分間かけて攪拌しながらゆっくりと加えた。その後、5分間インキュベート(37℃、5%CO)を行い、遠心分離(1000rpm、5min)により上清を捨てた。次いで、HAT培地で希釈することで細胞を解して培養した。
【実施例】
【0081】
(1-3)ハイブリドーマのスクリーニング
次いで、(1-2)で作製したハイブリドーマの培養上清を用いて、ELISA法によりナノ凝集体に反応する抗体を産生する細胞のスクリーニングを行った。陽性が得られた細胞を限界希釈しハイブリドーマの単一化を行った。
ELISA法はNuncイムノプレートマキシソープ(Thermo scientific社製)を用いて4℃、16時間インキュベートしてAβ1-42ナノ凝集体を非共有結合で固定した。コントロールとして、220nm以上のナノ凝集体、マイクロ凝集体、繊維状のAβ1-42凝集体、及び単量体のAβ1-42を抗原として固定したものも準備した。次いで、PBSに0.05% Tween20を加えた溶液(PBS-T)により洗浄を行った後、ブロッキングバッファー(イムノブロック、DSファーマバイオメディカル社製)添加し、37℃、2時間インキュベートした。次いで、PBS-Tで洗浄後、培養上清を添加し、37℃、2時間インキュベートした。次いで、PBS-Tで洗浄後、2次抗体としてHRPを標識した抗マウスIgGヤギ由来(Sigma-Aldrich社製)を加え、37℃、2時間インキュベートした。次いで、PBS-Tで洗浄後、SIGMAFAST OPD(Sigma-Aldrich社製)の説明に従って発色させ、492nmで測定した。
【実施例】
【0082】
(1-4)モノクローナル抗体の選別
ELISA法の結果から、300kDa(約50nm)のAβ1-42ナノ凝集体のみに高い反応性を有するモノクローナル抗体を産生する複数のハイブリドーマを得た。得られた複数のハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を精製した。次いで、精製したモノクローナル抗体と、アルツハイマー病を発症していない健常者10名、及びアルツハイマー病を発症している患者13名の血清とを用いて、ELISA法により、血清に含まれるAβ1-42ナノ凝集体に反応する抗体を選別した。結果を図1(A)~(D)に示す。
【実施例】
【0083】
図1(A)~(D)から、アルツハイマー病を発症していない健常者の血清とは反応せず、アルツハイマー病を発症している患者の血清と高い反応性を示すモノクローナル抗体として、抗体Dを選別した。
【実施例】
【0084】
(2)死後血清を用いたELISA法によるアミロイドβタンパク質の凝集体の検出試験
(2-1)検体の選定
統計処理を行うために、検体数の多いブラークステージ0~VIであった66歳以上女性の死後血清約108検体を用いた。いずれの死後血清も死後4時間以上経過後に採取されたものであった。また、各検体のブラークステージは死後、脳切片を確認することで確定し、ブラークステージ0~IIIに分類された検体数は73、ブラークステージIV以上に分類された検体数は35であった。
【実施例】
【0085】
(2-2)サンドイッチELISA法によるアミロイドβタンパク質の凝集体の検出
Nuncイムノプレートマキシソープ(Thermo scientific社製)を用いて4℃、16時間インキュベートして(1)で選別した抗体Dを固定した。次いで、PBS-Tにより洗浄を行った後、ブロッキングバッファー(イムノブロック、DSファーマバイオメディカル社製)添加し、37℃、2時間インキュベートした。次いで、各死後血清を加え、37℃、2時間インキュベートした。次いで、PBS-Tで洗浄後、1次抗体として(1)で選別した抗体Dを加え、37℃、2時間インキュベートした。次いで、抗体DPBS-Tで洗浄後、2次抗体としてHRPを標識した抗マウスIgGヤギ由来(Sigma-Aldrich社製)を加え、37℃、2時間インキュベートした。次いで、PBS-Tで洗浄後、SIGMAFAST OPD(Sigma-Aldrich社製)の説明に従って発色させ、492nmで測定した。各ブラークステージの死後血清における測定値を図2に示す。
【実施例】
【0086】
図2から、ブラークステージI~IIIにかけて測定値が増加し、ブラークステージIIIからIVにかけて測定値が減少することが明らかとなった。これは、ブラークステージIIIからIVにかけてアミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度の上昇に伴い、血管に前記アミロイドβタンパク質の凝集体が蓄積し、さらに、ブラークステージIIIからIVにかけて血液脳関門がつぶれることで、前記アミロイドβタンパク質の凝集体が脳に蓄積し、前記アミロイドβタンパク質の凝集体の血液中濃度が下がるためであると推察された。
以上のことから、抗体Dを用いることで、被検者がブラークステージIII以下、又はIV以上であることを診断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、簡便且つ正確にアルツハイマー病の進行度を診断可能な診断薬を提供することができる。また、本発明の診断薬を用いたアルツハイマー病の進行度の診断方法によれば、低侵襲性であるため、健康診断等で採取した血清を用いて、簡便にアルツハイマー病のスクリーニングを行うことができる。
図面
【図1】
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【図2】
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