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明細書 :円偏光発光組成物及びその製造方法、並びに円偏光発光方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年10月4日(2018.10.4)
発明の名称または考案の名称 円偏光発光組成物及びその製造方法、並びに円偏光発光方法
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
FI C09K 11/06
国際予備審査の請求
全頁数 50
出願番号 特願2017-555091 (P2017-555091)
国際出願番号 PCT/JP2016/086331
国際公開番号 WO2017/099110
国際出願日 平成28年12月7日(2016.12.7)
国際公開日 平成29年6月15日(2017.6.15)
優先権出願番号 2015239565
優先日 平成27年12月8日(2015.12.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA
発明者または考案者 【氏名】伊原 博隆
【氏名】高藤 誠
【氏名】桑原 穣
出願人 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
審査請求 未請求
要約 ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子が会合してなり、2次キラリティを有する超分子配向体と、前記超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に分子間相互作用によって配向して固定化された発光性ゲスト分子と、から構成されるホスト-ゲスト複合体を含み、前記配向して固定化された発光性ゲスト分子が誘起キラリティを有することを特徴とする円偏光発光組成物。当該円偏光発光組成物は、超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基との分子間相互作用によって、発光性ゲスト分子にキラリティを誘起させることができるため、発光性ゲスト分子がキラリティを有していない場合でも、CPL強度に優れる。
特許請求の範囲 【請求項1】
ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子が会合してなり、2次キラリティを有する超分子配向体と、
前記超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に分子間相互作用によって配向して固定化された発光性ゲスト分子と、
から構成されるホスト-ゲスト複合体を含み、
前記配向して固定化された発光性ゲスト分子が誘起キラリティを有することを特徴とする円偏光発光組成物。
【請求項2】
前記発光性ゲスト分子が、非キラルな発光分子である請求項1に記載の円偏光発光組成物。
【請求項3】
前記超分子配向体が、前記自己配向性ホスト分子が会合した二分子膜からなる超分子配向体である請求項1又は2に記載の円偏光発光組成物。
【請求項4】
前記自己配向性ホスト分子が、下記式(1)で表される化合物である請求項1から3のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【化1】
JP2017099110A1_000029t.gif
(但し、式(1)中、
1及びR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、炭素数2~30の炭化水素基を表し、
1及びX2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい2価の連結基を表し、
3は、2価の連結基を含む構造を表し、
4は、炭素数1~11のメチレン鎖、又は鎖中に芳香環を有する炭素数1~11のメチレン鎖を表し、
Yは、前記ホスト官能基を表し、
Zは、水素原子、又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、
*は不斉炭素を表す。)
【請求項5】
前記自己配向性ホスト分子が、式(1-1)又は式(1-2)で表される化合物である請求項4に記載の円偏光発光組成物。
【化2】
JP2017099110A1_000030t.gif
【化3】
JP2017099110A1_000031t.gif

(但し、式(1-1)又は式(1-2)中、
1及びR2は、式(1)と同義であり、
nは、1~4の整数を表し、
5は、炭素数1~10のメチレン鎖、-NH-及び-O-からなる群から選択される1種以上を含む構造、又は単結合を表し、
Yは、前記ホスト官能基を表し、
*は不斉炭素を表す。)
【請求項6】
前記自己配向性ホスト分子が、式(1-1)で表される化合物である請求項5に記載の円偏光発光組成物。
【請求項7】
式(1-1)において、n=2である請求項6に記載の円偏光発光組成物。
【請求項8】
1及びR2が、同一の基であって、炭素数2~22の直鎖アルキル基である請求項4から7のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項9】
前記ホスト官能基が、ピリジル基及びその4級化体、イミダゾリル基及びその4級化体、キノリル基及びその4級化体、イソキノリル基及びその4級化体、アミノ基及びその4級化体、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基及びボロン酸基からなる群から選択される1種以上である請求項1から8のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項10】
前記ホスト官能基が、正電荷を有する基である請求項1から9のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項11】
前記ホスト官能基が、負電荷を有する基である請求項1から9のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項12】
前記発光性ゲスト分子が、負電荷を有する発光分子である請求項10に記載の円偏光発光組成物。
【請求項13】
前記発光性ゲスト分子が、正電荷を有する発光分子である請求項11に記載の円偏光発光組成物。
【請求項14】
前記発光性ゲスト分子が、芳香環あるいは複素環を有し、分子内に電荷分布を有する発光分子である請求項1から11のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項15】
前記発光性ゲスト分子が下記のいずれかである請求項1から11のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【化4】
JP2017099110A1_000032t.gif

【請求項16】
前記ホスト-ゲスト複合体と液体分散媒とを含み、
前記ホスト-ゲスト複合体が液体分散媒に分散した液状組成物である請求項1から15のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項17】
前記ホスト-ゲスト複合体とベースポリマーとを含み、
前記ホスト-ゲスト複合体がベースポリマーに分散したポリマー組成物である請求項1から15のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項18】
前記ベースポリマーが、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、ブチラール樹脂、ビニロン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)樹脂、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)樹脂、ポリジビニルベンゼン樹脂、ポリエチレングリコールジメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリアミド樹脂からなる群のうち少なくとも1種を含む請求項17に記載の円偏光発光組成物。
【請求項19】
前記ベースポリマーが、ポリメチルメタクリレート樹脂及び/又はポリスチレン樹脂を含む請求項18に記載の円偏光発光組成物。
【請求項20】
前記ベースポリマー100質量部に対する、前記円偏光発光組成物中の発光性ゲスト分子の割合が、0.0001質量部以上10質量部以下である請求項17から19のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【請求項21】
請求項16に記載の円偏光発光組成物の製造方法であって、以下の工程を含む製造方法。
工程(i):前記ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、溶媒中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(ii):得られた前記超分子配向体を含む溶媒中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化する工程
【請求項22】
請求項17から20のいずれかに記載の円偏光発光組成物の製造方法であって、以下の工程を含む製造方法。
工程(I-1):ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、ベースポリマーを含む溶媒中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(II-1):前記超分子配向体と前記ベースポリマーとを含む溶媒中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化し、ホスト-ゲスト複合体とベースポリマーとを含有する塗布液を得る工程
工程(III-1):前記塗布液を塗布して塗布膜を形成した後に溶媒を乾燥させて、ポリマー組成物を得る工程
【請求項23】
請求項17から20のいずれかに記載の円偏光発光組成物の製造方法であって、以下の工程を含む製造方法。
工程(I-2):ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、ベースモノマー中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(II-2):前記超分子配向体を含むベースモノマー中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化し、ホスト-ゲスト複合体を形成する工程
工程(III-2):前記ホスト-ゲスト複合体を含むベースモノマー中に熱重合開始剤あるいは光重合開始剤を加え、かき混ぜた後に、加熱あるいは光照射することでベースモノマーを重合することで、ポリマー組成物を得る工程
【請求項24】
請求項1から20のいずれかに記載の円偏光発光組成物に励起光を照射して、円偏光発光させることを特徴とする円偏光発光方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、次世代光シグナルとして期待される円偏光発光を示す有機系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光は、照明はもとより、情報伝達のための手段として極めて重要な役割を果たしてきた。その中でも、近年、円偏光ルミネッセンス(CPL: circularly polarized luminescence)を示す、円偏光発光材料の開発が注目を集めている。
CPLは、位相の異なる2つの直線偏光からなる特殊な異方性を有する光である。そのため、CPLは、光のオンオフ以外に、左右円偏光のオンオフを加えた4つの情報を有するだけでなく、偏光特性を有しつつ角度依存性がないという利点も有している。このような利点から、CPLは次世代光源の一つとして、3Dディスプレイ等での立体視や、LED照明、光記録、分子センシング、光セキュリティシステム、バイオプローブなど様々な用途での応用が期待されている。
【0003】
CPL特性を評価するにあたって重要視されるファクターが、円偏光発光度(glum)であり、glum=2×(IL-IR)/(IL+IR)で算出される。このときILとIRは、それぞれ左円偏光発光強度と右円偏光発光強度である。高いglum値を示す例として、キラルな金属錯体、キラルな包接複合体、ラセン状分子、キラル液晶などが報告され、glum値において、10-3~10-2レベルの数値が実現されている。
【0004】
しかしながら、従来、円偏光発光材料の開発は、分子自体にキラリティを導入したものがほとんどであるため、円偏光発光材料の構造は一般的に複雑であった(非特許文献1~3)。そのため、円偏光発光材料は、難易度の高い合成化学的なアプローチを経て開発されたものが多く、構造やCPL特性の多様化が困難であるだけでなく、高コスト化が弱点となっている。
【0005】
一方で、特許文献1には、ピレン又はナフタレン等とシクロデキストリンとの包接化合物が円偏光を示すという周知技術をベースとして、ピレンとシクロデキストリンとの包接化合物のpHを調整して、左又は右の円偏光を制御する技術が開示されている。
シクロデキストリン系は、合成化学的には難易度が高いものではないが、空孔のサイズが決まっており、選択できる発光性色素が制限的になるため、やはり、CPL特性の多様化が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-260951号公報
【0007】

【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 3684 - 3687
【非特許文献2】Chem. Eur. J. 2013, 19, 14090 - 14097
【非特許文献3】Chem. Sci., 2015, 6, 4267 - 4272
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行文献で開示された円偏光発光材料は、材料の合成や、発光材料の選択の観点から、構造やCPL特性の多様化が困難であり、発光波長の多様化やテーラーメード化が困難ある。また、円偏光発光度(glum)についても実用化のためには必ずしも十分とはいえず、より優れた円偏光発光度(glum)を有する材料の開発が望まれている。
【0009】
かかる状況下、本発明の目的は、複雑な合成方法を必要とせず、様々な発光材料を利用でき、優れた円偏光発光特性を有する円偏光発光組成物を提供することである。また、本発明の別の目的は、前記円偏光発光組成物の製造方法、並びに、円偏光発光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子が会合してなり、2次キラリティを有する超分子配向体と、前記超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に分子間相互作用によって配向して固定化された発光性ゲスト分子と、から構成されるホスト-ゲスト複合体を含み、前記配向して固定化された発光性ゲスト分子が誘起キラリティを有することを特徴とする円偏光発光組成物。
<2> 前記発光性ゲスト分子が、非キラルな発光分子である<1>に記載の円偏光発光組成物。
<3> 前記超分子配向体が、前記自己配向性ホスト分子が会合した二分子膜からなる超分子配向体である<1>又は<2>に記載の円偏光発光組成物。
【0012】
<4> 前記自己配向性ホスト分子が、下記式(1)で表される化合物である<1>から<3>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【化1】
JP2017099110A1_000003t.gif
(但し、式(1)中、R1及びR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、炭素数2~30の炭化水素基を表し、X1及びX2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい2価の連結基を表し、X3は、2価の連結基を含む構造を表し、X4は、炭素数1~11のメチレン鎖、又は鎖中に芳香環を有する炭素数1~11のメチレン鎖を表し、Yは、前記ホスト官能基を表し、Zは、水素原子、又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、*は不斉炭素を表す。)
<5> 前記自己配向性ホスト分子が、式(1-1)又は式(1-2)で表される化合物である<4>に記載の円偏光発光組成物。
【化2】
JP2017099110A1_000004t.gif

【化3】
JP2017099110A1_000005t.gif

(但し、式(1-1)又は式(1-2)中、R1及びR2は、式(1)と同義であり、nは、1~4の整数を表し、X5は、炭素数1~10のメチレン鎖、-NH-及び-O-からなる群から選択される1種以上を含む構造、又は単結合を表し、Yは、前記ホスト官能基を表し、*は不斉炭素を表す。)
<6> 前記自己配向性ホスト分子が、式(1-1)で表される化合物である<5>に記載の円偏光発光組成物。
<7> 式(1-1)において、n=2である<6>に記載の円偏光発光組成物。
<8> R1及びR2が、同一の基であって、炭素数2~22のアルキル基である<4>から<7>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
<9> 前記ホスト官能基が、ピリジル基及びその4級化体、イミダゾリル基及びその4級化体、キノリル基及びその4級化体、イソキノリル基及びその4級化体、アミノ基及びその4級化体、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基及びボロン酸基からなる群から選択される1種以上である<1>から<8>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【0013】
<10> 前記ホスト官能基が、正電荷を有する基である<1>から<9>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
<11> 前記ホスト官能基が、負電荷を有する基である<1>から<9>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
<12> 前記発光性ゲスト分子が、負電荷を有する発光分子である<10>に記載の円偏光発光組成物。
<13> 前記発光性ゲスト分子が、正電荷を有する発光分子である<11>に記載の円偏光発光組成物。
<14> 前記発光性ゲスト分子が、芳香環あるいは複素環を有し、分子内に電荷分布を有する発光分子である<1>から<11>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
<15> 前記発光性ゲスト分子が下記のいずれかの化合物である<1>から<11>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【化4】
JP2017099110A1_000006t.gif

【0014】
<16> 前記ホスト-ゲスト複合体と液体分散媒とを含み、前記ホスト-ゲスト複合体が液体分散媒に分散した液状組成物である<1>から<15>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
<17> 前記ホスト-ゲスト複合体とベースポリマーとを含み、前記ホスト-ゲスト複合体がベースポリマーに分散したポリマー組成物である<1>から<15>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
<18> 前記ベースポリマーが、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、ブチラール樹脂、ビニロン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)樹脂、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)樹脂、ポリジビニルベンゼン樹脂、ポリエチレングリコールジメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミド樹脂からなる群のうち少なくとも1種を含む<17>に記載の円偏光発光組成物。
<19> 前記ベースポリマーが、ポリメチルメタクリレート樹脂及び/又はポリスチレン樹脂を含む<18>に記載の円偏光発光組成物。
<20> 前記ベースポリマー100質量部に対する、前記円偏光発光組成物中の発光性ゲスト分子の割合が、0.0001質量部以上10質量部以下である<17>から<19>のいずれかに記載の円偏光発光組成物。
【0015】
<21> <16>に記載の円偏光発光組成物の製造方法であって、以下の工程を含む製造方法。
工程(i):前記ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、溶媒中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(ii):得られた前記超分子配向体を含む溶媒中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化する工程
<22> <17>から<20>のいずれかに記載の円偏光発光組成物の製造方法であって、以下の工程を含む製造方法。
工程(I-1):ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、ベースポリマーを含む溶媒中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(II-1):前記超分子配向体と前記ベースポリマーとを含む溶媒中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化し、ホスト-ゲスト複合体とベースポリマーとを含有する塗布液を得る工程
工程(III-1):前記塗布液を塗布して塗布膜を形成した後に溶媒を乾燥させて、ポリマー組成物を得る工程
<23> <17>から<20>のいずれかに記載の円偏光発光組成物の製造方法であって、以下の工程を含む製造方法。
工程(I-2):ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、ベースモノマー中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(II-2):前記超分子配向体を含むベースモノマー中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化し、ホスト-ゲスト複合体を形成する工程
工程(III-2):前記ホスト-ゲスト複合体を含むベースモノマー中に熱重合開始剤あるいは光重合開始剤を加え、かき混ぜた後に、加熱あるいは光照射することでベースモノマーを重合することで、ポリマー組成物を得る工程
【0016】
<24> <1>から<20>のいずれかに記載の円偏光発光組成物に励起光を照射して、円偏光発光させることを特徴とする円偏光発光方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基との分子間相互作用によって、発光性ゲスト分子にキラリティを誘起させることができるため、発光性ゲスト分子がキラリティを有していない場合でも、CPL強度に優れる円偏光発光組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の円偏光発光組成物の形成メカニズム及び発光メカニズムを示す概念図である。
【図2】実施例1-4の円偏光発光組成物(4)のCDスペクトル(測定温度5℃)である。
【図3】実施例1-5の円偏光発光組成物(5)の透過型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1-5の円偏光発光組成物(5)の共焦点レーザー顕微鏡写真である。
【図5】実施例1-1の円偏光発光組成物(1)のCPL強度(glum)の評価結果である。
【図6】実施例1-2の円偏光発光組成物(2)、実施例1-3の円偏光発光組成物(3)及び比較例1の比較組成物のCPL強度(glum)の評価結果である。
【図7】実施例1-4の円偏光発光組成物(4)のCPL強度(glum)(励起波長420nm)の評価結果である。
【図8】実施例1-4の円偏光発光組成物(4)のCPL強度(glum)(励起波長500nm)の評価結果である。
【図9】実施例1-5の円偏光発光組成物(5)~実施例1-8の円偏光発光組成物(8)のCPL強度(glum)の評価結果である。
【図10】実施例2のポリマーフィルム(1)のUV-visスペクトルである。
【図11】実施例2のポリマーフィルム(1)の蛍光スペクトルである。
【図12】実施例2のポリマーフィルム(1)のCDスペクトルである。
【図13】実施例2のポリマーフィルム(1)のCPL強度(glum)の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「AからB」又は「A~B」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現は、「A及びBのいずれか一方、又は、双方」を意味する。すなわち、「A及び/又はB」には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。

【0020】
1.円偏光発光組成物
本発明は、ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子が会合してなり、2次キラリティを有する超分子配向体と、前記超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に分子間相互作用によって配向して固定化された発光性ゲスト分子と、から構成されるホスト-ゲスト複合体を含み、前記配向して固定化された発光性ゲスト分子が誘起キラリティを有する円偏光発光組成物(以下、「本発明の円偏光発光組成物」と記載する場合がある。)に関する。本発明の円偏光発光組成物は、2次キラリティに基づいて配向した自己配向性ホスト分子のホスト官能基に、分子間相互作用によって発光性ゲスト分子が配向して固定化されることによって、発光性ゲスト分子への誘起キラリティを生成し、円偏光発光(以下、「CPL」又は「円偏光ルミネッセンス」と記載する場合がある。)する。図1に本発明の円偏光発光組成物の形成メカニズム及び発光メカニズムを示す概念図を示す。

【0021】
本明細書において、「円偏光発光組成物」とは、円偏光ルミネッセンス(CPL: circularly polarized luminescence)を示す成分を含む組成物を意味する。
なお、本発明の円偏光発光組成物は、CPLを示すホスト-ゲスト複合体のみからなる態様でもよいが、通常、後述するように分散媒(分散溶媒、ベースポリマー、ベースモノマー等)を含む態様である。

【0022】
本明細書において、「超分子配向体」とは、複数の分子が共有結合以外の結合(例えば、水素結合、π-π相互作用等)により、自発的に集合、会合して形成される高秩序な構造体のことである。超分子配向体の会合形態は、多彩であり、ミセル型やベシクル型の球状会合体や、ディスク型やシリンダ型の会合体、平面状の会合体、繊維状会合体等の様々な形態をとることができる。繊維状会合体としては、螺旋状、捩れた紐状やリボン状、テープやチューブ状等の形態が挙げられる。これらの高秩序な構造体は、低分子レベルでは発現しえない現象、いわゆる超分子的機能を発現しうる。

【0023】
また、「2次キラリティ」とは、キラルな自己配向性ホスト分子が配向・集合して生成する新たなキラリティであり、前記の超分子的機能の一つである。2次キラリティは、通常、分子自身が有するキラリティ(1次キラリティあるいは分子キラリティと言う)より大きなキラリティを示す(キラリティの大きさを評価する際に用いる円偏光二色性スペクトルの強度が大きい)。「誘起キラリティ」とは、2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に、発光性ゲスト分子が相互作用し配向することによって、発光性ゲスト分子に誘起されるキラリティを示す。

【0024】
本発明の円偏光発光組成物は、2次キラリティを有する超分子配向体と発光性ゲスト分子とから構成されるホスト-ゲスト複合体を含有する。ホスト-ゲスト複合体とは、超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に、分子間相互作用によって発光性ゲスト分子が複合した複合体であり、発光性ゲスト分子自身がキラリティを有さなくとも、発光性ゲスト分子が誘起キラリティを生成することになるため、発光性ゲスト分子が発光すると、円偏光性を有した発光となる。

【0025】
また、本発明の円偏光発光組成物は、発光分子(発光性ゲスト分子)とホスト官能基との分子間相互作用を利用して固定化され、複雑な合成を必要としない。そのため、発光分子(発光性ゲスト分子)は、ホスト官能基と分子間相互作用を有するものであればよく、材料選択性が広がり、様々な発光分子を使用できるので、発光波長の選択も容易となり、発光波長の多様化やテーラーメード化が可能である。

【0026】
また、ホスト-ゲスト複合体が有する2次キラリティ(増幅キラリティ)、誘起キラリティにより優れた円偏光発光特性を有するだけでなく、外部刺激によるキラリティの増幅や変換といったスイッチングが可能となる。

【0027】
以下、本発明の円偏光発光組成物について詳細に説明する。
(1)ホスト-ゲスト複合体
本発明の円偏光発光組成物におけるホスト-ゲスト複合体は、ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子が会合してなり、2次キラリティを有する超分子配向体と、前記超分子配向体の2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に分子間相互作用によって配向して固定化された発光性ゲスト分子と、から構成される複合体である。

【0028】
以下、ホスト-ゲスト複合体を構成する2次キラリティを有する超分子配向体、その構成要素である自己配向性ホスト分子、及び、発光性ゲスト分子について説明する。

【0029】
(1-1)2次キラリティを有する超分子配向体
ホスト-ゲスト複合体の構成要素である、2次キラリティを有する超分子配向体(以下、「キラルな分子配向体」、又は「本発明の超分子配向体」と記載する場合がある。)は、ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子が複数集まり、共有結合以外の結合(例えば、水素結合、π-π相互作用等)により秩序だって自己集合、会合することによって形成された超分子配向体のうち、2次キラリティを有する配向体である。

【0030】
本発明の超分子配向体の会合形態は、特に限定されないが、繊維状会合体であれば、その厚み方向の大きさが小さくなり、光の散乱が起こりづらくなるため透明材料の製造上有利である。さらに、繊維状会合体では、より大きな2次キラリティが生成されやすく、より大きな円偏光発光が得られるため好ましい。
繊維状会合体の中でも、螺旋状や捩れた紐状やリボン状、テープ状やチューブ状に会合した自己配向性ホスト分子からなるキラルな超分子配向体であることが好適である。このような形態が2次キラリティの形成・増幅と関係している。

【0031】
このような2次キラリティを有し、繊維状会合体を形成する超分子配向体としては、例えば、自己配向性ホスト分子が会合した二分子膜からなる超分子配向体が挙げられる。

【0032】
本発明の超分子配向体は、1種類の自己配向性ホスト分子から構成されても、異なる構造の有する複数種の自己配向性ホスト分子から構成されていてもよい。

【0033】
また、本発明の超分子配向体の合成方法はいかなる方法でもよく、例えば、適当な溶媒やベースポリマー、ベースモノマーに、自己配向性ホスト分子を分散させ、任意の条件で会合させる方法が挙げられる。また、任意の方法にて得られた「超分子配向体」は、重合等によって共有結合化させ、これを、発光性ゲスト分子と複合化させてもよい。

【0034】
2次キラリティを有する超分子配向体を構成する自己配向性ホスト分子の数は、超分子配向体の会合形態、ホスト官能基及びこれに固定化される発光性ゲスト分子の種類、自己配向性ホスト分子の大きさ等の諸条件により決定される。

【0035】
(1-2)キラルな自己配向性ホスト分子
ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子(以下、「キラルな自己配向性ホスト分子」、又は単に「自己配向性ホスト分子」と記載する場合がある。)は、分子内にホスト官能基と、自己集積性部位を有し、自己集積性(自己会合性)を有する分子のうち、特に配向性を有して会合する分子であって、当該自己配向性ホスト分子自体が、キラリティを有している分子を意味する。
また、「ホスト官能基」とは、キラルな自己配向性ホスト分子が有する官能基であって、発光性ゲスト分子を分子間相互作用により固定化することができる基を意味する。ここで、本発明において、「分子間相互作用」とは、分子同士が引き合う相互作用を意味する(但し、共有結合は除く)。具体的には、水素結合、疎水性効果、イオン間相互作用(帯電したイオンの間で生じる相互作用)、π-π相互作用、配位結合、双極子間相互作用(双極子である分子間で生じる相互作用)、イオン-双極子間相互作用、ファンデルワールス力などがある。

【0036】
自己配向性ホスト分子が有するホスト官能基の種類は、後述する発光性ゲスト分子を、分子間相互作用を介して固定化できるものから選択される。

【0037】
ホスト官能基が、電荷を有する基であると、当該電荷と反対の電荷を有する発光性ゲスト分子を、イオン間相互作用、双極子間相互作用、イオン-双極子間相互作用等によって固定化できる。また、合成溶液のpH等の条件を制御することにより、固定化される発光性ゲスト分子の種類や量を制御することも可能である。
すなわち、ホスト官能基が正電荷を有する場合、後述するゲスト発光性分子は負電荷を有することが好ましい。一方、ホスト官能基が負電荷を有する場合、後述するゲスト発光性分子は正電荷を有することが好ましい。

【0038】
正電荷を有するホスト官能基として、窒素原子を含む窒素複素環基及びその4級化体、アミノ基及びその4級化体、ホスホニウム基の4級化体等が挙げられるが、これらに限定されない。窒素原子を含む窒素複素環基としては、ピリジル基、イミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ビピリジル基、ターピリジル基、グアニジノ基、アクリジル基、カルバゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、オキサジアゾール基、チアゾール基等が挙げられる。好適な正電荷を有するホスト官能基としては、例えば、アミノ基の4級化体、ピリジル基の4級化体、イミダゾリル基の4級化体、キノリル基の4級化体、イソキノリル基の4級化体が挙げられる。

【0039】
負電荷を有するホスト官能基として、具体的には、カルボン酸基やスルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、ボロン酸基等が挙げられる。

【0040】
また、電荷を有さない基であっても、発光性ゲスト分子と、水素結合や双極子間相互作用、イオン-双極子相互作用、π-π相互作用、ファンデルワールス力等の分子間相互作用で結合できる程度に電荷分布を有する基であれば、ホスト官能基に成り得る。ここで、「電荷分布を有する」とは、電離はしていないが、電子の偏りがある状態を示す。電荷分布を有する官能基として、例えば、ヒドロキシル基、アミド結合等のカルボニル系誘導体、フェニル基やナフチル基、アントラニル基、ピレニル基、チエニル基等が挙げられる。

【0041】
これらのホスト官能基の中でも、好適なホスト官能基として、アミノ基の4級化体、ピリジル基の4級化体、イミダゾリル基の4級化体、キノリル基の4級化体、イソキノリル基の4級化体、カルボン酸基等が挙げられる。

【0042】
ホスト官能基として用いることのできる官能基の具体例を下記に示すが、ホスト官能基はこれらに限定されない。下記式中の***は、結合部位を表す。

【0043】
【化5】
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【0044】
【化6】
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【0045】
【化7】
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【0046】
【化8】
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【0047】
【化9】
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【0048】
自己配向性ホスト分子が有するホスト官能基は、通常1基であるが、2基以上のホスト官能基を含んでいてもよい。2基以上のホスト官能基を含む場合は、ホスト官能基の種類は同一であっても異なっていてもよい。

【0049】
前記ホスト官能基を自己配向性ホスト分子に導入する方法はいかなる方法でもよく、例えば、適当な溶媒に、ホスト官能基の前駆体化合物と自己集積性分子の前駆体化合物を溶解し、そこに縮合剤を加えて、それぞれの前駆体化合物が有する官能基を反応させて結合する方法が挙げられる。

【0050】
自己配向性ホスト分子としては、各種アミノ酸誘導体、多環芳香族誘導体、コレステロール誘導体、糖誘導体等が挙げられ、各種アミノ酸誘導体であることが好ましい。ベースとなるアミノ酸の反応性官能基に、ホスト官能基及び自己集合する役目を担う官能基(例えば、長鎖アルキル基等)を導入することで、自己配向性ホスト分子を得ることができる。より具体的には、アミノ基などの反応性官能基を3点もつ1つのアミノ酸の1点の反応性官能基にホスト官能基を導入し、2点の反応性官能基に、自己集合する役目を担う官能基を導入することで、自己配向性ホスト分子を得ることができる。

【0051】
好適な自己配向性ホスト分子として、下記式(1)で表される自己配向性ホスト分子が挙げられる。なお、式(1)中、*は不斉炭素を表す。

【0052】
【化10】
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【0053】
前記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、炭素数2~30の炭化水素基である。前記式(1)の構造である自己配向性ホスト分子において、R1及びR2は、疎水性効果を示し、水中では配向性を有し、有機溶媒中では分散性を示し、自己配向性ホスト分子の自己集合を補助する役目を担う。

【0054】
1及びR2に該当する炭化水素基において、自己配向性ホスト分子の自己集積性を損なわない範囲で、炭化水素鎖中の一部の炭素原子は、エステル結合、アミド結合、ケトン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、尿素結合、チオ尿素結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、又はこれらの結合を組み合わせた結合等で置換されていてもよい。炭素数2~30の炭化水素基には、炭化水素基の炭化水素鎖中の一部の炭素原子が、エステル結合、アミド結合、ケトン結合、エーテル結合、チオエーテル結合、尿素結合、チオ尿素結合、ウレタン結合、チオウレタン結合、又はこれらの結合を組み合わせた結合等で置換された構造も含む。

【0055】
例えば、炭化水素基の炭化水素鎖の一部の炭素原子が置換された構造としては、下記式(R’)で表される構造が挙げられる。下記式(R’)では、炭化水素基の炭化水素鎖の一部がアミド結合で置換されている。なお、式中の**は結合部位を表す。

【0056】
【化11】
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(但し、式(R’)において、mは、1~26の整数である。)

【0057】
また、R1及びR2に該当する炭化水素基において、水素原子は、他の置換基で置換されていても良く、例えば、水素原子の一部、又は全部がフッ素原子(F)、臭素原子(Br)等のハロゲン原子に置換していてもよい。

【0058】
1及びR2に該当する炭化水素基の具体例としては、非置換又は置換の直鎖アルキル基、非置換又は置換の分枝アルキル基、非置換又は置換の環状アルキル基等が挙げられる。

【0059】
1及びR2は、好適には、炭素数が2以上の直鎖アルキル基であり、炭素数が4以上の直鎖アルキル基であることがより好ましい。例えば、R1及びR2は、炭素数が6以上であっても、炭素数が8以上であっても、炭素数が10以上であってもよい。
また、R1及びR2は、炭素数が22以下の直鎖アルキル基であることが好ましく、炭素数が18以下の直鎖アルキル基であることがより好ましい。なお、当該直鎖アルキル基において、水素原子の一部、又は全部がハロゲン原子に置換していてもよいが、非置換の直鎖アルキル基であることが好ましい。
また、R1及びR2は、同一の基であることが好ましい。
ここで、R1及びR2が、同一の基であって、炭素数2~22(より好ましくは、炭素数4~18)の非置換の直鎖アルキル基であれば、配向性に優れたキラルな超分子配向体を形成することができるため好ましい。

【0060】
前記式(1)中、X1及びX2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい2価の連結基である。2価の連結基としては、自己配向性ホスト分子の自己集積性を損なわない範囲において特に限定されないが、例えば、-NH-、-C(=O)-、-O-、-S-、フェニレンのいずれかの2価の連結基、又は2種以上のこれらの2価の連結基が結合した2価の連結基等が挙げられる。
1及びX2が、同一の連結基であることが好ましい。

【0061】
3は、2価の連結基を含む構造を表す。X3は、ホスト官能基Yを連結させるためのスペーサーである。そのため、自己配向性ホスト分子の分子配向を阻害しない構造であれば特に限定されないが、配向を促進させる構造であればより好ましい。X3としては、本発明の目的を達成できる範囲において特に限定されないが、例えば、-NH-、-C(=O)-、-O-、-S-、メチレン鎖、フェニレンのいずれかの2価の連結基、又は2種以上のこれらの2価の連結基が結合した連結基等が挙げられる。
また、X3は、下記式で表される連結基のいずれかであることが好ましい。ここで、下記式中の****は結合部位を表し、Rは炭化水素鎖を表す。Rは、炭素数1~18の炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数1~10のメチレン鎖、又はフェニレンであることがより好ましく、炭素数2~6のメチレン鎖又はフェニレンであることがより好ましい。

【0062】
【化12】
JP2017099110A1_000014t.gif

【0063】
前記式(1)中、X4は、炭素数1~11のメチレン鎖、又は鎖中に芳香環を有する炭素数1~11のメチレン鎖である。芳香環としては、フェニレン、ナフチレン、又はアントラニレン等が挙げられる。鎖中に芳香環を有する炭素数1~11のメチレン鎖としては、例えば、メチレン鎖の炭素原子の一部をフェニレンが置換した構造が挙げられる。なお、X4において、立体化学的に分子配向を阻害しない限り、水素原子の一部、又は全部が、他の置換基(アルキル基やフェニル基等)で置換されていてもよい。X4において、水素原子の一部、又は全部を、置換する置換基は、分子配向を促進させる構造であることが好ましい。
4は、好適には、炭素数1~6の直鎖状メチレン鎖である

【0064】
前記式(1)中、Yは、上述したホスト官能基であり、後述する発光性ゲスト分子を、分子間相互作用を介して固定化できるものであれば良い。

【0065】
式(1)中、Zは、水素原子、又は炭素数1~3の炭化水素基であり、好適には水素原子、又は、置換又は非置換のメチル基であり、より好適には水素原子である。

【0066】
ここで、式(1)で表される自己配向性ホスト分子は、不斉炭素原子を有し、キラルな二分子膜を形成する。

【0067】
また、前記式(1)で表される自己配向性ホスト分子の中でも、下記式(1-1)又は(1-2)で表される自己配向性ホスト分子は、配向性に優れ、合成や様々な誘導化が容易である点で好ましい。なお、式式(1-1)又は(1-2)中、*は不斉炭素を表す。

【0068】
【化13】
JP2017099110A1_000015t.gif

【0069】
【化14】
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【0070】
前記式(1-1)又は(1-2)中、R1及びR2は、上述した前記式(1)中のR1及びR2と同義であるため、詳細な説明を省略する。

【0071】
前記式(1-1)又は(1-2)中、nは、1~4の整数を表す。

【0072】
前記式(1-1)又は(1-2)中、X5は、炭素数1~10のメチレン鎖、-NH-及び-O-からなる群から選択される1種以上を含む構造、又は単結合を表す。X5は、ホスト官能基Yを自己集積部位に連結させるスペーサーである。そのため、X5は、立体化学的に分子配向を阻害しない構造であれば特に限定されないが、配向を促進させる構造であればより好ましい。

【0073】
式(1-1)又は(1-2)中、Yは、上述したホスト官能基であるため、詳細な説明を省略する。
前記式(1-1)又は(1-2)における好適なホスト官能基(Y)としては、電荷を有する基である。ホスト官能基が、電荷を有する基であれば、ホスト官能基が有する電荷と反対の電荷を有する発光性ゲスト分子をイオン間相互作用、双極子相互作用、イオン-双極子間相互作用によって固定化することができる。
このような電荷を有するホスト官能基(Y)の具体例としては、例えば、ピリジル基やイミダゾリル基及びそれらの4級化体、キノリル基やイソキノリル基及びそれらの4級化体、アミノ基及びその4級化体、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、ボロン酸基等が挙げられるが、これらに制限はされない。
なお、電荷を有するホスト官能基(Y)であっても、発光性ゲスト分子の固定化は、イオン間相互作用、双極子相互作用、イオン-双極子間相互作用のみに由来する必要性はなく、これら以外の分子間相互作用に由来していてもよく、複数の分子間相互作用が相乗的に作用していてもよい。

【0074】
例えば、後述する実施例に示すように、ホスト官能基(Y)としてピリジニウム基を有するL-グルタミン酸誘導体で構成されるキラルな超分子配向体の場合には、電荷を有さない発光性ゲスト分子である、ピレンやアントラセン等の発光性ゲスト分子を固定化することもできる。

【0075】
なお、上述した式(1-1)で表される自己配向性ホスト分子は、反応性官能基を3つ有するアスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、アミノアジピン酸等から誘導することができる。上述した式(1-2)で表される自己配向性ホスト分子は、反応性官能基を3つ有するリシン、オルニチン等から誘導することができる。

【0076】
この中でも、自己配向性ホスト分子は、式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。より好ましくは、式(1-1)において、n=2の自己配向性ホスト分子である。式(1-1)中、R1及びR2が、炭素数12の直鎖アルキル基、nが2であるL-グルタミン酸誘導体は特に好適な自己配向性ホスト分子のひとつである。

【0077】
以下、自己配向性ホスト分子として用いることができる、L-グルタミン酸誘導体の具体的な例を示すが、自己配向性ホスト分子はこれらに限定されない。

【0078】
【化15】
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【0079】
また、本発明の円偏光発光組成物を構成する自己配向性ホスト分子となりうる、その他の化合物の例を、下記に示す。

【0080】
【化16】
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【0081】
【化17】
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【0082】
【化18】
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【0083】
(1-3)発光性ゲスト分子
本発明の円偏光発光組成物において、「発光性ゲスト分子」は、外部からの励起光の照射により、発光する発光分子のうち、2次キラリティに基づいて配向したキラルな超分子配向体のホスト官能基に分子間相互作用を介して配向して固定化されうる分子であり、前記配向して固定化された分子が誘起キラリティを有するものを意味する。
ホスト-ゲスト複合体に固定化し得る発光性ゲスト分子の量や密度は、超分子配向体の会合形態、超分子配向体におけるホスト官能基の密度や、後述する分散媒の種類等により決定される。

【0084】
上述の通り、ホスト-ゲスト複合体において、キラルな超分子配向体が有する2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に分子間相互作用によって配向して固定化された発光性ゲスト分子は、キラリティが誘起される。そのため、発光性ゲスト分子自身がキラリティを有さなくとも、誘起キラリティが発現するため、固定化された発光性ゲスト分子が発光すると、円偏光性を有した発光となる。
すなわち、本発明の円偏光発光組成物において、発光性ゲスト分子は、キラリティを有するキラルな発光分子、キラリティを有さない非キラルな発光分子のいずれであってもよく、特に非キラルな発光分子を利用できることに利点がある。

【0085】
発光性ゲスト分子はホスト官能基と分子間相互作用を介して結合されうる化合物である。以下に具体的な発光分子を例示するがこれらに限定されるわけではない。また、発光性ゲスト分子は単独でもよいし、2種以上を組み合わせても使用されてもよい。2種類以上の発光性ゲスト分子を組み合わせることで、波長の広帯域化が可能である。

【0086】
蛍光性発光分子として、ピレン、アントラセン、ナフタレン、フルオレン、ペリレン、コロネン、フェナントレン、フルオランテン、カルバゾール、クリセン、トリフェニレン、テトラセン、ペンタセン、フルオレノン、アズレン、オリゴフェニレンビニレン、オリゴフェニレンエチニレン、ポルフィリン、シアニン色素、メロシアニン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、ポリフェニレンビニレン、アクリジン、ルシフェリン、ルブレン、スチルベン等、及びこれらの化合物の誘導体等が挙げられる。

【0087】
リン光性発光分子として、元素周期表の8族、9族又は10族に属するいずれか1種の金属を含有し、リン光発光を示す錯体系化合物が挙げられ、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、希土類錯体などのリン光発光を示す有機金属錯体が挙げられる。このような有機金属錯体の配位子となる有機化合物としては、例えば、カルバゾール、ピリジン、ポルフィリン、トリフェニレン、ビピリジン、ロザリン、アントラセン、フタロシアニン及びこれらの化合物の誘導体等が挙げられる。
また、リン光性発光分子として、錯体系化合物以外にもエオシン、クロロフィル、βカロチン、環状アジン、スチルベン、トリフェニレン及びこれらの化合物の誘導体等を用いてもよい。

【0088】
特に、ホスト官能基が電荷を有する場合には、発光性ゲスト分子が、反対の電荷を有する発光分子であると、イオン間相互作用、双極子相互作用、イオン-双極子間相互作用を介してホスト官能基と結合することができるため好適である。

【0089】
すなわち、ホスト官能基が正電荷を有する場合、ゲスト発光性分子は負電荷を有することが好ましい。一方、ホスト官能基が負電荷を有する場合、ゲスト発光性分子は正電荷を有することが好ましい。
発光性ゲスト分子に電荷を付与するには、負電荷の場合にはカルボン酸基、スルホン酸基等の負電荷を有する基を導入し、正電荷の場合にはアミノ基やジメチルアミノ基、4級アンモニウム基等の正電荷を有する基を導入してもよい。

【0090】
また、発光性ゲスト分子が電荷を有さない場合であっても、発光性ゲスト分子が芳香環あるいは複素環を有し、電荷分布を有していれば、電荷を有するホスト官能基と、水素結合や双極子間相互作用、イオン-双極子相互作用、π-π相互作用、配位結合、ファンデルワールス力等の分子間相互作用で結合しうる。ここで、電荷分布を有するとは、電離はしていないが、電子の偏りがある状態を示す。このような発光性ゲスト分子としては、上述したホスト官能基と分子間相互作用によって配向して固定化されうる分子であれば特に限定されない。

【0091】
具体的には、発光性ゲスト分子としては、下記に示す非キラルな発光性ゲスト分子を使用することができるが、これらに限定されるわけではない。

【0092】
【化19】
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【0093】
(2)分散媒
本発明の円偏光発光組成物は、ホスト-ゲスト複合体を単独で使用することもできるが、通常、ホスト-ゲスト複合体を適当な分散媒に分散した態様である。

【0094】
分散媒は、超分子配向体の2次キラリティを阻害せず、ホスト-ゲスト複合体が分散できるものであれば、液体分散媒、固体分散媒のいずれでもよい。
例えば、本発明の円偏光発光組成物は、ホスト-ゲスト複合体が液体分散媒に分散した液状組成物の態様とすることができる。また、ホスト-ゲスト複合体が固体分散媒であるベースポリマーに分散したポリマー組成物の態様とすることができる。

【0095】
液体分散媒は、水、メタノール、アセトニトリル等の極性溶媒、ベンゼンやトルエン、シクロヘキサン、ヘキサン等の非極性溶媒が挙げられ、ホスト-ゲスト複合体の構成要素の種類や、使用用途に応じて適宜選択される。なお、2以上の異なる種類の液体分散媒を混合したものを液体分散媒として用いてもよい。
なお、液体分散媒である場合、pHや温度等の条件を変化させて外部刺激を与えることにより、ホスト-ゲスト複合体におけるホスト官能基から、発光性ゲスト分子を可逆的に着脱できるため、キラリティの増幅や変換といったスイッチングを容易に行うことができる。

【0096】
固体分散媒としては、ホスト-ゲスト複合体が分散できるポリマー(以下、「ベースポリマー」と記載する。)が好適に使用される。
ベースポリマーは、ホスト-ゲスト複合体に含まれる発光性ゲスト分子の吸収波長、発光波長の光に対して透明なポリマーであることが好ましく、ベースポリマーが可視光領域に極大吸収波長を持たないポリマーであることが好ましく、特にベースポリマーが可視光領域に吸収を持たないポリマーであることが好ましい。

【0097】
このようなベースポリマーとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、ブチラール樹脂、ビニロン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)樹脂、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)樹脂、ポリジビニルベンゼン樹脂、ポリエチレングリコールジメタクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミド樹脂などを用いることができる。このような汎用性ポリマーをベースポリマーに用いることができるので低コストであり、フィルム化に特別の基盤技術を必要としない。なお、2以上の異なる種類のポリマーを混合したものをベースポリマーとして用いてもよい。

【0098】
前記ベースポリマーの中でも、ポリメチルメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂は、前記ホスト-ゲスト複合体の可視光領域に吸収を持たない透明性の高いポリマーを低コストで入手できるため好適である。そのため、ベースポリマーはポリメタクリレート樹脂及び/又はポリスチレン樹脂を含むことが好ましい。好適なベースポリマーの一つはポリスチレン樹脂である。

【0099】
ベースポリマーの分子量は、ホスト-ゲスト複合体の種類や配合割合により任意に決定することができる。

【0100】
ベースポリマーに含まれるホスト-ゲスト複合体の濃度は、フィルム等の成形品の形状、厚みを考慮して、成形品全体としての透明性を失わない範囲で決定される。具体的には、通常、発光性ゲスト分子換算でベースポリマー100質量部に対して、0.0001質量部以上10質量部以下であり、より透明度を高めたいときには、5質量部以下である。濃度が高すぎると、成形品全体としての透明性が低下したり、ベースポリマーの性質を変えたりするなどの悪影響があるため好ましくない。

【0101】
本発明の円偏光発光組成物が、ホスト-ゲスト複合体をベースポリマーに分散したポリマー組成物態様の場合には、成形して成形品としてよい。成形品の形状は特に限定されず、フィルム状、シート状、板状、繊維状、ペレット状等であってよい。成型方法は特に限定されず公知の成形方法を用いることができ、例えば、押出成形、射出成形、圧縮(プレス)成形、カレンダー成形、溶融紡糸などが挙げられる。

【0102】
ポリマー組成物がフィルムである場合、成形方法は、特に限定はなく、従来公知の樹脂成形の方法(例えば、インフレーション法、カレンダー法、キャスティング法、スピンコーティング法等)により行うことができる。
フィルムの厚さは、目的とする円偏光発光特性、透明性、強度等を考慮の上、目的に応じて任意の厚さとすることができる。

【0103】
また、分散媒として、ホスト-ゲスト複合体が分散できるモノマー(以下、「ベースモノマー」と記載する。)を用い、これを適当な方法で重合しても良い。ベースモノマーとしては、2次キラリティを阻害せず、透明性の高いポリマーを生成するものが好ましい。また、生成したポリマーは、成形してフィルム状などの成形品にしてもよい。中でも、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート等は低コストで入手できるため、ベースモノマーとして好適である。

【0104】
(3)その他の成分
本発明の円偏光発光組成物は、本発明の目的を損なわない限り、前記ホスト-ゲスト複合体や、分散媒以外の任意の成分を含んでいてもよい。
任意の成分としては、例えば、分散剤、分散安定剤、界面活性剤、光安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、消泡剤、難燃剤、熱安定剤等が挙げられる。

【0105】
また、本発明の円偏光発光組成物は、ホスト-ゲスト複合体に含まれる発光性ゲスト分子以外の発光分子(以下、「その他の発光分子」と記載する。)をさらに含有していてもよい。その他の発光分子は、その目的によって任意に選択され、その種類や含有量は、ホスト-ゲスト複合体に含まれる発光分子の種類や量を考慮して、適宜選択される。

【0106】
本発明の円偏光発光組成物は、ホスト-ゲスト複合体に励起光を照射することによって円偏光発光する。
本発明の円偏光発光組成物に含まれるホスト-ゲスト複合体は、優れた円偏光発光特性を示す。ここで、CPL特性を評価するにあたって重要視されるファクターが、円偏光発光度(glum)であり、glum=2×(IL-IR)/(IL+IR)で算出される。このときILとIRは、それぞれ左円偏光発光強度と右円偏光発光強度である。
後述する実施例で具体的に示すように本発明の円偏光発光組成物は、従来の溶液系での円偏光発光組成物と比較して、非常に優れた円偏光発光度を示す。

【0107】
また、本発明の円偏光発光組成物の他の利点として、発光性ゲスト分子の種類のみならず、これと結合するホスト官能基の種類によって、円偏光発光の波長や強度を制御できることが挙げられる。すなわち、発光性ゲスト分子とホスト官能基との分子間相互作用の種類や強度により、発光性ゲスト分子の円偏光発光の波長や強度を制御できる。
また、複数の発光性ゲスト分子を固定化すれば、様々な波長、強度の円偏光発光を放射することができる。

【0108】
このような性質を利用して、本発明の円偏光発光組成物は、例えば以下のような応用用途が挙げられる。
(1)3Dディスプレイ(左右の円偏光を利用する次世代3Dための光源)
(2)光記録装置・光記録メディア
(3)セキュリティシステム(より情報量の多い光シグナルとして利用)
(4)照明(LED照明や植物工場用照明など)
(5)医療用センサー
(6)太陽電池
(7)液晶ディスプレイ用の偏光光源
(8)光通信、セキュリティ技術への応用

【0109】
すなわち、本発明の円偏光発光組成物は、前記応用用途において、本発明の円偏光発光組成物を含有する3Dディスプレイ、本発明の円偏光発光組成物を含有する光記録装置・光記録メディア、本発明の円偏光発光組成物を含有するセキュリティシステム装置、本発明の円偏光発光組成物を含有する照明、本発明の円偏光発光組成物を含有する医療用センサー等の応用品として用いることできる。

【0110】
本発明の円偏光発光組成物を応用品に用いる場合、円偏光発光組成物は、当然、他の部材と組み合わせて用いることができる。本発明の円偏光発光組成物を応用品に用いる場合、本発明の円偏光発光組成物は空気と接触しないように用いることが好ましく、例えば、少なくとも一対のガラス間に、本発明の円偏光発光組成物を介在させて一体化させて用いることができる。
なお、本発明の円偏光発光組成物の応用用途はこれらに制限されるものではない。

【0111】
2.円偏光発光組成物の製造方法
上述した本発明の円偏光発光組成物の製造方法は特に限定されず、円偏光発光組成物を構成するホスト-ゲスト複合体(2次キラリティを有する超分子配向体、発光性ゲスト分子)、必要に応じて含有される分散媒、及び任意の成分の種類や含有量に応じて適宜好適な方法を選択すればよい。

【0112】
以下、(1)円偏光発光組成物が液状組成物である態様と、(2)円偏光発光組成物がポリマー組成物である態様にわけて、円偏光発光組成物の製造方法を説明する。

【0113】
(1)円偏光発光組成物が液状組成物である態様
円偏光発光組成物が液状組成物である場合、その製造方法は、ホスト-ゲスト複合体の形成を損なわないのであれば特に限定されず適宜選択できる。液状組成物の態様である場合、本発明の円偏光発光組成物(特には含有されるホスト-ゲスト複合体)を、発光体の開発において複雑な合成手法を使用せずに容易に製造できる点で、以下に説明する製造方法(以下、「本発明の液状組成物の製造方法」と称す。)が好適である。

【0114】
本発明の液状組成物の製造方法は、以下の工程(i),(ii)を含む製造方法である。
工程(i):前記ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、溶媒中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(ii):得られた前記超分子配向体を含む溶媒中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化する工程

【0115】
このような製造方法とすることで、溶媒(液体分散媒)中でホスト-ゲスト複合体が容易に製造される。
なお、自己配向性ホスト分子と発光性ゲスト分子の液体分散媒への混合は、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。

【0116】
また、前記工程(i)及び(ii)は連続的に行う必要はなく、前記工程(i)において得られた「超分子配向体」は、任意の溶媒に分散するなどして保存することが可能である。

【0117】
工程(i),(ii)において、キラルな自己配向性ホスト分子、2次キラリティを有する超分子配向体、発光性ゲスト分子、ホスト-ゲスト複合体については、前記「1.円偏光発光組成物」で同じであるため、説明を省略する。

【0118】
溶媒は、キラルな自己配向性ホスト分子及びこれが会合したキラルな超分子配向体が均一に分散できるものであればよく、自己配向性ホスト分子の種類や濃度を考慮して適宜選択される。

【0119】
なお、本発明の製造方法は、自己配向性ホスト分子が、両親媒性の場合には(例えば、上述した式(1),式(1-1),式(1-2)で表される自己配向性ホスト分子)、溶媒に水や極性溶媒を使用することができ、これに発光性ゲスト分子を分散させることにより、2次キラリティを有する超分子配向体及び2次キラリティに基づいて配向したホスト官能基に分子間相互作用を介して発光性ゲスト分子を結合させ、容易にホスト-ゲスト複合体を得ることができる。

【0120】
なお、自己配向性ホスト分子が会合した2次キラリティを有する超分子配向体の形成を損なわないのであれば、自己配向性ホスト分子が会合した2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程と、発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化する工程とを同時に行ってもよい。

【0121】
また、工程(ii)の後工程として、分散媒を留去した後に、他の液体分散媒にホスト-ゲスト複合体を分散させてもよい。

【0122】
なお、円偏光発光組成物を単独で使用する場合は、工程(ii)の後工程として、液体分散媒を留去することで、円偏光発光組成物を粉体として得ることができる。

【0123】
(2)円偏光発光組成物がポリマー組成物である態様
円偏光発光組成物がポリマー組成物である場合、その製造方法は、ホスト-ゲスト複合体の形成を損なわないのであれば、特に限定されない。


【0124】
例えば、本発明のポリマー組成物は以下の工程を有する製造方法で製造することができる。
工程(I-1):ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、ベースポリマーを含む溶媒中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(II-1):前記超分子配向体と前記ベースポリマーとを含む溶媒中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化し、ホスト-ゲスト複合体とベースポリマーとを含有する塗布液を得る工程
工程(III-1):前記塗布液を塗布して塗布膜を形成した後に溶媒を乾燥させて、ポリマー組成物を得る工程

【0125】
このような製造方法であれば、複雑な合成手法や樹脂成形手法を必要としないので容易にポリマー組成物を製造できる。特に、工程(I-1)~工程(III-1)を有する製造方法は、フィルム状のポリマー組成物であるポリマーフィルムの製造に好適である。

【0126】
また、上述した液状組成物の製造方法で得られる円偏光発光組成物から溶媒を除去して得られるホスト-ゲスト複合体と、ベースポリマーとを、ホスト-ゲスト複合体とベースポリマーとの両方を分散可能な適当な溶媒に分散させることによって塗布液を調整してもよい。

【0127】
また、ホスト-ゲスト複合体とベースモノマーとを混合したのち、適当な方法でベースモノマーを重合させてフィルム状などのポリマー組成物を製造することもできる。例えば、ホスト-ゲスト複合体とベースモノマーとの混合物を用いる場合、本発明のポリマー組成物は以下の工程を有する製造方法で製造することができる。

【0128】
工程(I-2):ホスト官能基を有するキラルな自己配向性ホスト分子を、ベースモノマー中で会合させ、2次キラリティを有する超分子配向体を形成する工程
工程(II-2):前記超分子配向体を含むベースモノマー中で、前記ホスト官能基と分子間相互作用を介して結合する発光性ゲスト分子とを結合させ、前記発光性ゲスト分子を前記超分子配向体に固定化し、ホスト-ゲスト複合体を形成する工程
工程(III-2):前記ホスト-ゲスト複合体を含むベースモノマー中に熱重合開始剤あるいは光重合開始剤を加え、かき混ぜた後に、加熱あるいは光照射することでベースモノマーを重合することで、ポリマー組成物を得る工程

【0129】
なお、工程(I-2)~(III-2)は、無溶媒で行っても、溶媒存在下で行っても良い。

【0130】
また、上述した液状組成物の製造方法で得られる円偏光発光組成物から溶媒を除去して得られるホスト-ゲスト複合体と、ベースモノマーとを、ホスト-ゲスト複合体とベースモノマーの両方を分散可能な適当な溶媒に分散させたのちに、熱や光で重合する方法であってもよいし、上述した液状組成物の製造方法で得られる円偏光発光組成物から溶媒を除去して得られるホスト-ゲスト複合体をベースモノマーに分散させて、熱や光で重合する方法であってもよい。

【0131】
これら方法、又は、これらの方法で得られた円偏光発光組成物を従来公知の方法で成形することにより、本発明の円偏光発光組成物を、フィルム等の任意の成形体として得ることができる。
【実施例】
【0132】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0133】
[実施例1]:液状組成物の調製
使用した試薬は以下の通りである。
3-ブロモプロピオン酸(ナカライテスク)
テトラヒドロフラン(THF)(和光純薬化学工業)
ジドデシル-L-グルタミン酸(合成品)
トリエチルアミン(和光純薬化学工業)
シアノリン酸ジエチル(DEPC)(和光純薬化学工業)
クロロホルム(ナカライテスク)
塩酸(和光純薬化学工業)
水酸化ナトリウム(キシダ化学)
メタノール(和光純薬化学工業)
ピリジン(和光純薬化学工業)
ジエチルエーテル(和光純薬化学工業)
ピレン(和光純薬化学工業)
シアニン色素NK-2012(日本感光色素)
アントラセン(ナカライテスク)
9-フェニルアントラセン(東京化成工業)
9,10-ジフェニルアントラセン(東京化成工業)
フルオレセイン(Fluka)
オキサジアゾール系色素(カルボン酸型、黄色)
ピレンブタン酸(シグマアルドリッチジャパン)
2-アントラセンカルボン酸(東京化成工業)
エタノール(和光純薬化学工業)
【実施例】
【0134】
[実施例1-1]
ホスト-ゲスト複合体(1)の調製
(1)自己配向性ホスト分子(N-(3-ピリジニウムプロピオニル)-L-グルタミン酸ジドデシルアミドブロマイド:G-Pyr+(式(1-1)のX=(CH,Y=ピリジル基の4級化体,n=2,R=R=(CH11CH))の合成
【化20】
JP2017099110A1_000022t.gif
【実施例】
【0135】
THF中にN-ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミン酸(L-Gln-Z,12.0g,42mmol)とn-ドデシルアミン(17.7g,93mmol)を溶解し、これにトリエチルアミン(13.5mL,96mmol)を加え氷浴下でDEPC(14.1mL,93mmol)を加え、室温に戻しながら一晩かき混ぜた。THFを減圧留去し、残渣にクロロホルムに溶解した後、有機層を0.2N塩酸、0.2N水酸化ナトリウム水溶液で3回ずつ洗浄した後、飽和食塩水と無水硫酸ナトリウムで乾燥後にエバポレータで乾固した。エタノールで再結晶し、白色沈殿をろ取し、減圧乾燥し、化合物(2C12-L-Gln-Z)を得た。
【実施例】
【0136】
上記の化合物(2C12-L-Gln-Z,9.0g,14.61mmol)をエタノールに溶解させ,パラジウムカーボンを加えて水素ガスを通気させながら50℃で撹拌した。FT-IRスペクトル測定におけるウレタン結合由来のカルボニルC=O伸縮振動が消失したことを確認した後、パラジウムカーボンをろ別した。得られたろ液を減圧乾固し析出した白色固体をメタノールによる再結晶により白色結晶のジドデシル-L-グルタミン酸を得た。
【実施例】
【0137】
3-ブロモプロピオン酸(1.9g,12.6mmol)をTHF(300ml)に溶かし、水浴中でかき混ぜ、ジドデシル-L-グルタミン酸(5.0g,10.4mmol)、トリエチルアミン(2.4ml,18.1mmol)、DEPC(2.2ml,14.9mmol)を加え、1時間かき混ぜた後、常温で12時間かき混ぜた。反応溶液を減圧留去し、残渣をクロロホルムに溶かし、0.2N塩酸、0.2N水酸化ナトリウム水溶液を用いて3回ずつ洗浄し、減圧濃縮した。残渣をメタノールに溶かして冷蔵庫内で再結晶させ、白色粉末を得た。この粉末をピリジン(120ml)に溶解し、3日間還流した。その後、室温まで冷まし、析出した白色結晶をろ別し、ジエチルエーテルで洗い、減圧乾燥し、N-(3-ピリジニウムプロピオニル)-L-グルタミン酸ジドデシルアミドブロマイド(G-pyr+)(1.4g)を得た。
【実施例】
【0138】
(2)ホスト-ゲスト複合体(1)の調製
キラルな超分子配向体としてG-Pyr+を発光性ゲスト分子としてピレンを用いた。G-Pyr+10mMとピレン10mMのクロロホルム溶液をそれぞれ作製し、モル比で40:1になるように混合した。クロロホルムを留去し、これに水4mLを加え、内部超音波照射し、水分散媒を得た。さらに、この水分散媒を90℃で30分間熟成し、さらに25℃で30分間熟成させてホスト-ゲスト複合体(1)が水に分散した円偏光発光組成物(1)(液状組成物(1))を得た。
【実施例】
【0139】
このホスト-ゲスト複合体(1)について、透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL JEM-2000FX)による評価を行ったところ、ホスト-ゲスト複合体(1)は、室温で捩れた繊維状の会合体を形成していた。もっとも薄い部分の厚みは6nmであり、この厚みは、ほぼG-Pyr+の2分子の長さに相当した。また、示差走査熱量分析(DSC,Seiko Instruments Inc. DSC6200,EXTRA6000)を行ったところ、脂質二分子膜に典型的な結晶-液晶相転移(ピークトップ温度、Tc=42℃)が観察された。なお、この条件で作製されたG-pyr+の会合形態は、混合された1/40当量のピレンの有無にかかわらず、捩れた繊維状の会合体を形成することも確認した。
【実施例】
【0140】
[円偏光二色性(CD)スペクトルの評価]
ホスト-ゲスト複合体(1)を所定の温度で、円二色分散計(JASCO J-725)を用いて円偏光二色性(CD)スペクトルの評価を行った。
(測定条件)
測定溶媒:水
測定濃度:[G-Pyr]=0.5mM,
[Pyrene]=12.5μM
測定範囲:190~600nm
【実施例】
【0141】
CDスペクトルより、5℃(G-pyr+の相転移温度以下の温度)では、G-pyr+のピリジニウ基の吸収帯で大きなコットン効果が得られ、G-pyr+は、相転移温度以下の温度でピリジニウム基が高度に配向していることが判明した。さらに、5℃ではピレンの吸収帯付近に大きなコットン効果が観察された。一方、相転移温度以上の温度に加熱すると、G-pyr+二分子膜のピリジニウム基に関与するコットン効果及びピレンのコットン効果ともにほぼ消失した。このことから、ピレンに発現した誘起キラリティは、結晶状態にあるG-pyr+のピリジニウム基(+)とモノメリックなピレン(δ-)間での相互作用を含むものと推察される。
【実施例】
【0142】
[蛍光スペクトルの評価]
ホスト-ゲスト複合体(1)を所定の温度に冷却して、蛍光スペクトル測定装置(JASCO FP-6500)を用いて蛍光スペクトルの評価を行った。
(測定条件)
測定溶媒:水
測定濃度:[G-Pyr]=0.5mM
[Pyrene]=12.5μM
励起波長:320nm
測定範囲:350~600nm
【実施例】
【0143】
ホスト-ゲスト複合体(1)を340nm(5℃)で励起すると、374nmと385nmにピークトップを有する蛍光スペクトルが得られた。また、発光強度比(I374/I385)からピレン周りのミクロ環境を推測すると、ヘキサノール中での発光強度比と類似することから、G-pyr+二分子膜内部に取り込まれており、取り込まれているサイトは、極性基(ピリジニウム基)の近傍であると推測できる。
【実施例】
【0144】
[実施例1-2]
ピレンに代えて、アントラセンを用いた以外は実施例1と同様にして、ホスト-ゲスト複合体(2)が水に分散した円偏光発光組成物(2)(液状組成物(2))を得た。
【実施例】
【0145】
[実施例1-3]
ピレンに代えて、9-フェニルアントラセンを用いた以外は実施例1と同様にして、ホスト-ゲスト複合体(3)が水に分散した円偏光発光組成物(3)(液状組成物(3))を得た。
【実施例】
【0146】
[実施例1-4]
キラルな超分子配向体としてG-Pyr+を発光性ゲスト分子としてシアニン色素NK-2012を用いた。G-Pyr+0.5mMの水溶液を調製し、60℃で加熱溶解させ、25℃に冷却した。G-Pyr+水溶液4mLをとり、G-Pyr+とシアニン色素NK-2012のモル比が40:1となるように、シアニン色素NK-2012メタノール溶液を加えた。この溶液を90℃で30分間熟成し、さらに25℃で30分間熟成させてホスト-ゲスト複合体(4)が水に分散した円偏光発光組成物(4)(液状組成物(4))を得た。
【実施例】
【0147】
[吸収スペクトル及びCDスペクトルの評価]
ホスト-ゲスト複合体(4)について、紫外可視(UV-vis)スペクトル(JASCO V-560)及び円偏光二色性(CD)スペクトルの評価を行った。
(測定条件)
測定溶媒:水
測定濃度:[G-Pyr]=0.5mM,
[NK-2012]=12.5μM
測定範囲:400~700nm
【実施例】
【0148】
UV-visスペクトルを測定すると、5℃(G-Pyr+の相転移温度以下の温度)でNK-2012単独では得られないレッドシフトしたスペクトルが得られ、50℃(G-Pyr+の相転移温度以上の温度)に加熱するとモノメリック種に相当するスペクトルに変化した。
【実施例】
【0149】
CDスペクトルを観察すると、図2に示すように、5℃で、レッドシフトした吸収帯に分裂型のコットン効果が観察された。また、分子楕円率の温度依存性を調査すると、相転移温度である35~45℃の温度範囲で急激に変化していることが明らかになった。すなわち、NK-2012が非キラルな物質であることから、配向状態にあるG-pyr+にイオン結合を介して固定化されたNK-2012が、R-キラルにスタッキングすることで、誘起CDが観察されたと考えられる。
【実施例】
【0150】
[実施例1-5]
シアニン色素(NK-2012)に代えて、フルオレセインを用いた以外は実施例4と同様にして、ホスト-ゲスト複合体(5)が水に分散した円偏光発光組成物(5)(液状組成物(5))を得た。
【実施例】
【0151】
[透過型電子顕微鏡及び共焦点レーザー顕微鏡による評価]
このホスト-ゲスト複合体(5)について、透過型電子顕微鏡(TEM,JEOL JEM-2000FX)による評価の結果を図3に示す。図3に示すように、ホスト-ゲスト複合体(5)は、室温で捩れた繊維状の会合体を形成していた。
また、ホストーゲスト複合体(5)について、共焦点レーザー顕微鏡(Leica TCS SP8 Confocal Microscope (Leica Microsystems))による評価の結果を図4に示す。図4に示すように、捩れた繊維状の発光体が観察されたことから、室温、溶液中で繊維状に会合したG-Pyrにフルオレセインが結合し、ホスト-ゲスト複合体を形成していることが明らかとなった。
[実施例1-6~実施例1-8]
シアニン色素(NK-2012)に代えて、表1に記載の発光性ゲスト分子を用いた以外は実施例4と同様にして、円偏光発光組成物(6)~円偏光発光組成物(8)(液状組成物(6)~液状組成物(8))を得た。
【実施例】
【0152】
[比較例1]
ピレンに代えて、9,10-ジフェニルアントラセンを発光性ゲスト分子として用いた以外は実施例1と同様にして複合体が水に分散した比較組成物を得た。
【実施例】
【0153】
[円偏光発光スペクトルの評価]
実施例1-1の円偏光発光組成物について、円偏光発光(CPL)スペクトル装置(JASCO CPL-200)を用いて円偏光発光スペクトルの評価を行った。
光路長が1cmの石英セル中にホスト-ゲスト複合体(1)を入れ、2℃とし、320nmの励起光を照射し、円偏光発光スペクトルを測定した。
(測定条件)
溶媒:水
濃度: [G-Pyr+]=0.5mM
[Pyrene]=12.5μM
励起波長:320nm
測定範囲:350~600nm
【実施例】
【0154】
実施例1-2~実施例1-8の円偏光発光組成物及び比較例1の比較組成物についても、励起光の波長を表1に記載の波長に変更した以外は同様にして測定した。
【実施例】
【0155】
図5に、実施例1-1のCPLスペクトルを示す。CPLの発光領域は、モノメリックなピレンの蛍光スペクトルの発光領域とほぼ一致しており、モノメリックなピレンがCPLを呈していることがわかる。CPLの強度は、glum値において-0.85×10-2レベルである。非キラル、かつ、このようなシンプルな多環芳香族炭化水素によるCPLの発現は世界初の事例である。また、G-pyr+の相転移温度以上である50℃においてはCPLがほぼ消失する一方で、ピレンによる蛍光そのものは依然として残ることから、このCPLがG-Pyr+二分子膜から誘起されたキラリティによることは明らかである。
【実施例】
【0156】
図7に、実施例1-2、1-3と比較例1のCPLスペクトルを示す。図6に示すように、実施例1-2(アントラセン)、実施例1-3(9-フェニルアントラセン)では、CPLが観察されたが、ホスト官能基と分子間相互作用した時に配向することができない嵩高い9,10-ジフェニルアントラセン(比較例1)では、CPLが観測されなかった。
【実施例】
【0157】
図7に、実施例1-4のホストーゲスト複合体(4)を420nmで励起したときのCPLスペクトルを示す。CPLの発光領域は、J会合したシアニン色素NK-2012の蛍光スペクトルの発光領域とほぼ一致しており、J会合したシアニン色素NK-2012がCPLを呈していることがわかる。CPLの強度は、glum値において-3.0×10-2レベルである。また、G-pyr+の相転移温度以上である50℃において、CPLはほぼ消失した。
また、図8に実施例1-4のホストーゲスト複合体(4)を500nmで励起したときのCPLスペクトルを示す。CPLの強度は、glum値において-10.2×10-2と非常に高い値を示した。
【実施例】
【0158】
図9に、実施例1-5~実施例1-8のCPLスペクトルを示す。実施例1-5(フルオレセイン)及び実施例1-6(オキサジアゾール系色素(カルボン酸型、黄色))では、負のCPLが観察され、実施例1-7(ピレンブタン酸)及び実施例1-8(2-アントラセンカルボン酸)では、正のCPLが観察された。
【実施例】
【0159】
また、CPL特性を評価するにあたって重要視されるファクターが、円偏光発光度(glum)である。glumは、左円偏光発光強度が大きいときはプラスに、右円偏光発光強度が大きいときはマイナスとなり、glumの絶対値が大きいほど、優れた円偏光発光特性を有することを示す。表1に、実施例1-1~実施例1-8及び比較例1の円偏光発光度及びCPL波長の一覧を示す。
【実施例】
【0160】
【表1】
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【実施例】
【0161】
表1に示すように、発光部位として、非キラルな色素をゲスト分子として用いても、本発明の円偏光発光組成物は、CPLを発現することを確認できた。また、ゲスト分子を変更するだけで紫色~橙色までの広範囲にわたる円偏光発光を有する円偏光発光組成物を得ることができた。
【実施例】
【0162】
[実施例2]:ポリマーフィルムの作製
(1)自己配向性ホスト分子(N-カルボキシプロピオニル)-L-グルタミン酸ジドデシルアミド:G-COOH,(式(1-1)のX=(CH,Y=COOH,n=2,R=R=(CH11CH))の合成
【化21】
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【実施例】
【0163】
無水グルタル酸(和光純薬化学工業)(2.3g,20mmol)とジドデシル-L-グルタミン酸(4.8g,10mmol)をTHF(70ml)に溶かし、トリエチルアミン(3.0g,30mmol)を加え、常温で1日かき混ぜた。反応溶液を減圧留去し、残渣をエタノールに溶かし、再結晶し、白色粉末(G-COOH)(5.1g)を得た。
【実施例】
【0164】
(2)ホスト-ゲスト複合体含有のポリマーフィルムの作製
自己配向性ホスト分子としてG-COOHを、発光性ゲスト分子としてNK-77(日本感光色素)を使用し、以下の手順でポリマーフィルムを作製した。
まず、ポリスチレン(ALDRICH、Polystyrene、#182427 average M ~280,000 by GPC)334mgをベンゼン4mLに加熱溶解させ、ポリスチレン溶液を作製した。
G-COOH 11.91mgをポリスチレン溶液に加え、10分間、70℃に設定したホットプレート上で加熱したのちに、3分間、内部超音波を照射した。さらに、10分間、70℃に設定したホットプレート上で加熱し、G-COOHとポリスチレンとを含有する溶液を得た。
次に、1mMのNK-77-エタノール溶液40mLを、G-COOHとポリスチレンとを含有する溶液に加えた。この溶液を3分間、70℃に設定したホットプレート上で加熱したのちに、氷浴で1時間冷却し、ホストーゲスト分散体(II)がベースポリマー中に分散した塗布液を得た
1.2×2.6cmのガラスプレート上に塗布液を400μLキャストし、溶媒を乾燥させてポリマーフィルム(1)を得た。
【実施例】
【0165】
[紫外可視(UV-vis)スペクトル及び円偏光二色性(CD)スペクトルの評価]
ポリマーフィルム(1)について、紫外可視(UV-vis)スペクトル(JASCO V-560)及び円偏光二色性(CD)スペクトルの評価を行った。測定範囲は、400nm~700nmである。結果を図10及び図11に示す。
【実施例】
【0166】
[蛍光スペクトルの評価]
ポリマーフィルム(1)を室温で、発光スペクトル測定装置(JASCO CPL-200)を用いて蛍光スペクトルの評価を行った。励起波長は500nmであり、測定範囲は、540nm~700nmである。結果を図12に示す。
【実施例】
【0167】
[円偏光発光スペクトルの評価]
ポリマーフィルム(1)について、円偏光発光(CPL)スペクトル装置(JASCO CPL-200)を用いて円偏光発光スペクトルの評価を行った。ホルダーにポリマーフィルム(1)を入れ、室温で500nmの励起光を照射し、円偏光発光スペクトルを測定した。励起波長は500nmであり、測定範囲は、540nm~700nmである。結果を図13に示す。CPLの強度は、glum値において6×10-2であった。
図13に示すように、ポリマーフィルム(1)にCPLが観察されたことから、フィルム中でG-COOHにNK-77が結合し、ホストーゲスト複合体(II)を形成していることが確認された。このように、ポリマー中で、自己配向性ホスト分子と発光性ゲスト分子とを混合するだけで、CPL特性を有するホスト-ゲスト複合体(II)を含有するポリマーフィルムを容易に製造することができる。
【実施例】
【0168】
[参考例]
本発明の円偏光発光組成物を構成する自己配向性ホスト分子になりうる分子の合成例を参考例として示す。
【実施例】
【0169】
[参考例1]
N-(3-ピリジニウムプロピオニル)-L-グルタミン酸ジブチルアミドブロマイド:(式(1-1)のX=(CH,Y=ピリジル基の4級化体,n=2,R=R=(CHCH)の合成
【化22】
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【実施例】
【0170】
実施例1-1の自己配向性ホスト分子(G-Pyr+)の合成において、n-ドデシルアミンの代わりにn-ブチルアミンを用いた以外は同様にして、N-(3-ピリジニウムプロピオニル)-L-グルタミン酸ジブチルアミドブロマイドを得た。
【実施例】
【0171】
[参考例2]
N-(3-ピリジニウムプロピオニル)-L-グルタミン酸ジオクタデシルアミドブロマイド:(式(1-1)のX=(CH,Y=ピリジル基の4級化体,n=2,R=R=(CH17CH)の合成
【化23】
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【実施例】
【0172】
実施例1-1の自己配向性ホスト分子(G-Pyr+)の合成において、n-ドデシルアミンの代わりにn-オクタデシルアミンを用いた以外は同様にして、N-(3-ピリジニウムプロピオニル)-L-グルタミン酸ジオクタデシルアミドブロマイドを得た。
【実施例】
【0173】
[参考例3]
N’,N’’-Didodecyl-Nα-[(3-amino)propanoyl]-L-aspartamide:A-NH,(式(1-1)のX=(CH,Y=NH,n=1,R=R=(CH11CH)の合成
【化24】
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【実施例】
【0174】
(3-ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸(0.401g,1.80mmol)をTHF(40ml)に溶かし、水浴中でかき混ぜ、ジドデシル-L-アスパラギン酸(0.700g,1.50mmol)、トリエチルアミン(0.263mL,2.60mmol)、シアノリン酸ジエチル(0.406g,2.49mmol)を加え、1時間かき混ぜた後、常温で42時間かき混ぜた。反応溶液を減圧留去し、残渣をクロロホルムに溶かし、0.3N塩酸、水、5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、水を用いて2回ずつ洗浄し、減圧濃縮した。残渣をメタノールに溶かして冷蔵庫内で再結晶させ、白色粉末を得た。この粉末をTHF(200ml)に溶解させた後、パラジウム黒を1g加えた後、水素ガスを吹き込みながら加熱還流した。パラジウム黒をろ別した後、減圧濃縮し、残渣をメタノールから再結晶させ、減圧乾燥し、N’,N’’-Didodecyl-Nα-[(3-amino)propanoyl]-L-aspartamide(A-NH2)(0.419g)を得た。
【実施例】
【0175】
[参考例4]
αα,Nε-Didodecanoyl-N-(2-carboxy)ethyl-L-lysinamide:L-NH,(式(1-2)のX=(CH,Y=COOH,n=4,R=R=(CH10CH)の合成
【化25】
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【実施例】
【0176】
ジドデシル-L-リシン(1.00g,1.96mmol)、β-アラニンベンジルエステル-p-トルエンスルホン酸塩(1.03g,2.94mmol)とトリエチルアミン(0.816g,8.06mmol)をTHF(100mL)に溶かし、0℃に冷却した後、かき混ぜながら、シアノリン酸ジエチル(0.546g,3.35mmol)を加え、1時間かき混ぜた後、常温で24時間かき混ぜた。反応溶液を減圧留去し、残渣をクロロホルムに溶かし、5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、水、0.3N塩酸、水を用いて2回ずつ洗浄し、減圧濃縮した。残渣をメタノールに溶かして冷蔵庫内で再結晶させ、析出した白色結晶をろ別し、減圧乾燥し、白色粉末を得た。得られた粉末をTHFに溶解させた後、パラジウム黒を加えた後、水素ガスを吹き込みながら加熱還流した。パラジウム黒をろ別した後、室温まで冷却し、析出した白色結晶をろ別し、残渣をメタノールに溶解させ、再結晶した後、析出した白色結晶をろ別し、減圧乾燥し、Nαα,Nε-Didodecanoyl-N-(2-carboxy)ethyl-L-lysinamide(L-NH)(0.74g)を得た。
【実施例】
【0177】
参考例1から参考例4の化合物は、いずれも繊維状の会合体を形成することから、2次キラリティを有する超分子配向体を形成することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の円偏光発光組成物は、以下の利点を有する。
(1)発光性ゲスト分子にキラリティは必要としない。すなわち、合成化学的な制限が少ない。このメリットにより、アントラセンやピレンのような単純な蛍光体を活用することができる。
(2)2次キラリティに基づいて配向した自己配向性ホスト分子のホスト官能基に、発光性ゲスト分子が分子間相互作用により配向して固定化されることによって、キラリティが誘起される。
(3)すなわち、キラルな超分子配向体と発光性ゲスト分子を混ぜるだけで簡単に大きなglum値を実現できるだけでなく、蛍光体を選択することによってCPLの発光領域の選択や発光領域の広帯域化が可能となる。
本発明の円偏光発光組成物は液晶ディスプレイ用の偏光光源や3次元ディスプレイへの応用、光記憶装置や光通信への応用、及びその低コスト化が期待されるため、工業的に有望である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12