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明細書 :テラヘルツ検出センサ及びテラヘルツ画像測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年10月4日(2018.10.4)
発明の名称または考案の名称 テラヘルツ検出センサ及びテラヘルツ画像測定装置
国際特許分類 G01Q  60/22        (2010.01)
G01J   1/02        (2006.01)
G01Q  20/02        (2010.01)
G01N  21/3581      (2014.01)
FI G01Q 60/22 101
G01J 1/02 C
G01J 1/02 H
G01Q 20/02
G01N 21/3581
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 26
出願番号 特願2017-556092 (P2017-556092)
国際出願番号 PCT/JP2016/087196
国際公開番号 WO2017/104697
国際出願日 平成28年12月14日(2016.12.14)
国際公開日 平成29年6月22日(2017.6.22)
優先権出願番号 2015244218
優先日 平成27年12月15日(2015.12.15)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】河野 行雄
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001807、【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G059
2G065
Fターム 2G059AA05
2G059EE06
2G059FF01
2G059HH01
2G059KK01
2G065AA04
2G065AB03
2G065AB18
2G065BA07
要約 テラヘルツ画像測定装置(20)は、テラヘルツ検出センサ(13)と、磁場発生部(19)と、測定制御部(20)とを備える。センサ(13)は、試料(18)から発せられるテラヘルツ光の近接場光を検出する。磁場発生部(19)は、試料(18)からセンサ(13)に照射されるテラヘルツ光の光軸を囲んで巻回され、試料(18)及びセンサ(13)の周囲のコイル(19a)を有し、コイル(19a)に電流が流されて発生する磁場をセンサ(13)へ印加する。測定制御部(20)は、コイル(19a)に電流を流し、この電流値を変えて磁場の強さを、当該センサ(13)で検出される試料のテラヘルツ光の検出信号レベルが突出して高くなる磁場値とし、テラヘルツ光の特定周波数に同調させる。
特許請求の範囲 【請求項1】
テラヘルツ光を検出するテラヘルツ検出センサにおいて、
テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状であって、前記テラヘルツ光の近接場光を検出する検出ポイントと、
前記検出ポイントが表面に形成された半導体基板と
を備えることを特徴とするテラヘルツ検出センサ。
【請求項2】
前記半導体基板の表面に、前記検出ポイントに電流を流すための第1電極と、当該第1電極を介して電流が流された当該検出ポイントに、前記近接場光の照射時に検出される電圧を出力する第2電極とが形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極の各々は、先端が針状に先細って延びる帯状を成し、当該針状の先端が前記検出ポイントに接合された1対の電極を含んで成る
ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項4】
前記半導体基板は、上下に積層される半導体の種類や構造が異なる異種半導体同士の界面に2次元電子ガスが分布した高電子移動度トランジスタ構造であり、
前記検出ポイントは、前記積層された最上層の半導体層が前記テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状に成形され、当該成形された半導体層と、この下の半導体層との界面に2次元電子ガスが分布した構造である
ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項5】
前記半導体基板は、GaAs層上にAlGaAs層が積層され、当該AlGaAs層と当該GaAs層との界面に2次元電子ガスが分布した高電子移動度トランジスタ構造であり、
前記検出ポイントは、前記AlGaAs層が前記テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状に成形され、当該成形されたAlGaAs層と前記GaAs層との界面に2次元電子ガスが分布した構造である
ことを特徴とする請求項4に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項6】
前記検出ポイントは、当該検出ポイントの上に先端が尖った針状又は線状の金属及び半導体の何れか一方によるプローブが合体して備えられている
ことを特徴とする請求項4に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項7】
前記半導体基板は、上下に種類が異なる半導体を積層した構造であり、
前記検出ポイントは、前記積層された最上層の半導体層の上に、前記テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状に成されたグラフェンである
ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項8】
前記半導体基板は、Si層上にSiO2層を積層した構造であり、
前記検出ポイントは、前記SiO層の上に、前記テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状に成されたグラフェンである
ことを特徴とする請求項7に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項9】
前記検出ポイントは、当該検出ポイントの上に先端が尖った針状又は線状のカーボンナノチューブによるプローブが合体して備えられている
ことを特徴とする請求項7に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項10】
前記第1電極及び前記第2電極の各々は、先端が針状に先細って延びる帯状を成し、当該針状の先端に前記検出ポイントに接合された1対の電極を含み、当該電極は、長さがテラヘルツ波の波長以上で、且つ、テラヘルツ波の波長未満の電界が集中する領域でテラヘルツ波を受信する
ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ検出センサ。
【請求項11】
試料から発せられるテラヘルツ光の近接場光を検出する請求項1又は2に記載のテラヘルツ検出センサと、
前記試料から前記テラヘルツ検出センサに照射されるテラヘルツ光の光軸を囲んで巻回され、当該試料及び当該テラヘルツ検出センサの周囲に配置されるコイルを有し、当該コイルに電流が流されて発生する磁場を当該テラヘルツ検出センサへ印加する磁場発生部と、
前記コイルに電流を流し、この流れる電流値を変えることにより前記磁場の強さを、当該テラヘルツ検出センサで検出される前記試料のテラヘルツ光の検出信号レベルが突出して高くなる磁場値とし、テラヘルツ光の特定周波数に同調させる測定制御部と
を備えることを特徴とするテラヘルツ画像測定装置。
【請求項12】
基端部から延びる板状の先端部に固定した前記テラヘルツ検出センサを、当該基端部への電圧印加により前記試料との間隔方向に振動させる振動部と、
前記テラヘルツ検出センサと前記試料との間に間隙を介して当該試料を載置固定し、前記振動部の振動を検出した電圧に応じて、前記載置固定された試料を、前記間隙が一定となるように当該間隙方向に移動させるピエゾ基板と
を備えることを特徴とする請求項11に記載のテラヘルツ画像測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微弱なテラヘルツ光を検出するテラヘルツ検出センサ及びテラヘルツ画像測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ光は、一般的な定義では周波数が0.1~10THz(1THz=1012Hz)の領域、即ち、波長が0.03mm~3mmのサブミリ波から遠赤外線領域までの電磁波(electromagnetic wave)である。
【0003】
テラヘルツ光は、電波天文学、材料科学、生体分子分光学等の基礎学術分野から、セキュリティ、情報通信、環境、医療等の実用分野に至る幅広い分野での応用が期待されている。例えば、物体にテラヘルツ光を照射し、この反射光や透過光の画像を計測するアクティブ計測を行うと、今迄見えなかった物が見えるようになる。
【0004】
このアクティブ計測を用いれば、封筒内の毒物検査や、カバンや容器内の爆発物や危険物の検知、食品中の異物検査、半導体チップの検査等が実施できる。更に、美術品の劣化度の検査、癌検査等の医療応用、植物のリアルタイム水分のモニタリング、更には、スペースシャトル外壁タイル内部の欠陥検査等も可能となる。
【0005】
この種のテラヘルツ光によるアクティブ計測を用いた技術として特許文献1~3に記載のものがある。
特許文献1の技術は、表面から一定位置に2次元電子ガス(後述)が形成された半導体チップを用い、この半導体チップに磁場を印加しながらテラヘルツ光を照射する。この照射によりカーボンナノチューブに流れる電流を計測することで、微弱なテラヘルツ光の強度と周波数を検出するものである。なお「2次元電子ガス」とは、半導体と絶縁体との接合界面、又は異種半導体同士の接合界面に沿った2次元平面を運動する電子をいう。つまり、キャリアとなる電子が平面状に分布する状態を2次元電子ガスという。なお、本明細書において、異種半導体とは、異なる種類の半導体や、反転層等を利用した異なる構造の半導体をいう。
【0006】
特許文献2の技術は、表面に酸化層が形成された半導体チップの表面にグラフェン(後述)を密着させ、グラフェンに磁場を印加しながらテラヘルツ光を照射する。この照射により半導体チップに流れる電流を計測することで、微弱なテラヘルツ光の強度と周波数を検出するものである。なお、「グラフェン」とは2次元炭素結晶の単原子層であり、エネルギーバンドギャップがゼロであるため、どんなエネルギー状態の光でも吸収でき、テラヘルツ光や赤外光等のエネルギーが極めて低く殆んどの半導体を透過してしまう光の吸収に適している。
【0007】
特許文献3の技術は、対象物にテラヘルツ照明光(波長4μm~10mm)を照射し、対象物の例である電極からの散乱光を散乱光検出器にて信号として検出することにより、電極の表面若しくは電極の中に含まれる異物、例えば、金属異物を検出するものである。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2010-60284号公報
【特許文献2】特開2010-206176号公報
【特許文献3】国際公開第2012/108306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献1~3に示されるようなテラヘルツ光によるアクティブ計測を用いた技術は、例えば試料の分子間の相互作用を知るために有益である。赤外線の場合、特定の分子間検知等に限定されるが、テラヘルツ光では限定されない。但し、テラヘルツ光は、波長が可視光に比べ3桁位長く、テラヘルツ光による分子の画像は、可視光よりも3桁位粗い画像となる。つまり、分子はnm(ナノメートル)サイズなので、mm(ミリメートル)サイズのテラヘルツ光で分子の画像を検出して見るためには、次のような技術が必要となる。
【0010】
金属皮膜にテラヘルツ光の波長よりも小さな穴を開け、この穴にテラヘルツ光を照射すると、殆んどの光は穴を通過しないが、穴の反対側に近接場光(エバネセント光)が漏れて留まる。この近接場光は種々存在する近接場光の一形態であり、穴を通らなくとも近接場光は存在する。
【0011】
また、近接場光は、テラヘルツ光の半波長よりも狭い領域に閉じ込められているので、近接場光をタングステンの針で突くと、近接場光が針によって散乱され伝搬光に変換される。この伝搬光を検出することで分子の画像を見ることが可能となる。
【0012】
しかし、近接場光を針で突くと、近接場光が持っている情報が乱されることになり、正確な画像の検出ができなくなる。また、アクティブ計測では、バイオテクノロジー系等の試料によっては、外部からのテラヘルツ光の照射で試料が影響を受けてしまう。このように、外部からテラヘルツ光を照射するアクティブ計測では分子(試料)の画像が計測時の影響を受けてしまう。
【0013】
このため、試料が自然に発しているテラヘルツ光を計測するパッシブ計測で分子の画像を計測する必要がある。しかし、テラヘルツ光のパッシブ計測を行う技術が、現時点では見当たらない。
【0014】
また、仮に分子の画像を計測するパッシブ計測が行なえたとしても、このパッシブ計測では、任意のテラヘルツ周波数(例えば1THzや10THz等)を選択する術がない。
【0015】
分子は、全周波数のテラヘルツ光に応答する訳ではない。例えば、PHB(細胞内のエネルギー貯蔵物質)では、図20に矢印Y1で示す2.4THz付近と、矢印Y2で示す2.9THz付近のみに特徴的な共鳴周波数を持っている。2.4THz付近の共鳴周波数は、PHB分子の水素結合の画像であり、2.9THz付近の共鳴周波数は、PHB分子のヘリカル構造の振動画像である。各共鳴周波数のみで波長が高くなっており、各共鳴周波数に検出動作を合わせることでPHB分子の各共鳴周波数の画像を見ることができるが、これが現時点では不可能である。
【0016】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、テラヘルツ光によるパッシブ計測を適正に行うことができると共に、パッシブ計測において任意のテラヘルツ周波数を選択することができるテラヘルツ検出センサ及びテラヘルツ画像測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記した課題を解決するため、本発明のテラヘルツ検出センサは、テラヘルツ光を検出するテラヘルツ検出センサにおいて、テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状であって、前記テラヘルツ光の近接場光を検出する検出ポイントと、前記検出ポイントが表面に形成された半導体基板とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明のテラヘルツ画像測定装置は、試料から発せられるテラヘルツ光の近接場光を検出する請求項1~9の何れか1項に記載のテラヘルツ検出センサと、前記試料から前記テラヘルツ検出センサに照射されるテラヘルツ光の光軸を囲んで巻回され、当該試料及び当該テラヘルツ検出センサの周囲に配置されるコイルを有し、当該コイルに電流が流されて発生する磁場を当該テラヘルツ検出センサへ印加する磁場発生部と、前記コイルに電流を流し、この流れる電流値を変えることにより前記磁場の強さを、当該テラヘルツ検出センサで検出される前記試料のテラヘルツ光の検出信号レベルが突出して高くなる磁場値とし、テラヘルツ光の特定周波数に同調させる測定制御部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、テラヘルツ光によるパッシブ計測を適正に行うことができると共に、パッシブ計測において任意のテラヘルツ周波数を選択することができるテラヘルツ検出センサ及びテラヘルツ画像測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るテラヘルツ検出センサを用いたテラヘルツ画像測定装置の構成を示す図である。
【図2】テラヘルツ検出センサの構成を示す斜視図である。
【図3A】テラヘルツ検出センサの製作方法において、GaAs基板上にAlGaAs層を積層した半導体基板を示す側面図である。
【図3B】テラヘルツ検出センサの製作方法において、AlGaAs層をエッチングで削った状態を示す側面図である。
【図3C】テラヘルツ検出センサの製作方法において、GaAs基板の上に各電極を形成した状態を示す側面図である。
【図4】横軸に上述した従来のテラヘルツ検出素子の位置(0~14μm)と、縦軸にテラヘルツ検出信号レベル(任意スケールL0~L4)との関係を示す図である。
【図5A】磁場発生部の構成図である。
【図5B】テラヘルツ光検出原理を説明するための磁場印加によるランダウ準位の形成図である。
【図6A】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数fのテラヘルツ光の波形を示し、特定周波数f=0.7THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図6B】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数fのテラヘルツ光の波形を示し、特定周波数f=1.4THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図6C】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数fのテラヘルツ光の波形を示し、特定周波数f=1.8THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図6D】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数fのテラヘルツ光の波形を示し、特定周波数f=2.6THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図6E】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数fのテラヘルツ光の波形を示し、特定周波数f=3.1THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図7A】磁場値を変えてテラヘルツ光の周波数を選択したテラヘルツ光の発光強度の分布を実測した際のテラヘルツ発光強度分布を示し、周波数f=2.06THzの場合の発光強度分布を示す図である。
【図7B】磁場値を変えてテラヘルツ光の周波数を選択したテラヘルツ光の発光強度の分布を実測した際のテラヘルツ発光強度分布を示し、周波数f=2.25THzの場合の発光強度分布を示す図である。
【図8】本実施形態のテラヘルツ画像測定装置でアクティブ計測の実験を行った際の、横軸におけるセンサの位置と、縦軸におけるセンサでのテラヘルツ検出信号レベルとの関係を示す図である。
【図9】他例のテラヘルツ検出センサの構成を示す斜視図である。
【図10A】グラフェンの蜂の巣状の単層の6角形格子構造を示す図である。
【図10B】典型的な3次元半導体のエネルギーバンドを示す図である。
【図10C】グラフェンのエネルギーバンドを示す図である。
【図11A】通常の半導体における磁場Bと電子エネルギーEとの関係を示す図である。
【図11B】グラフェンにおける磁場Bと電子エネルギーEとの関係を示す図である。
【図12A】テラヘルツ検出センサの製作方法を示し、Si基板の上に積層されたSiO基板の上面にグラフェンが積層された状態を示す側面図である。
【図12B】テラヘルツ検出センサの製作方法を示し、グラフェンをエッチングで削った状態を示す側面図である。
【図12C】テラヘルツ検出センサの製作方法を示し、Si基板の上に各電極を形成した状態を示す側面図である。
【図13A】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数f=0.76THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図13B】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数f=1.6THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図13C】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数f=2.5THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図13D】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数f=3.1THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図14A】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数f=4.2THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図14B】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数f=28THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図14C】横軸の所定の磁場値において、縦軸のテラヘルツ検出信号レベルが急峻に高くなる場合の特定周波数f=33THzのテラヘルツ光の波形を示す図である。
【図15】本実施形態のテラヘルツ検出センサの他例1によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
【図16】本実施形態のテラヘルツ検出センサの他例2によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
【図17】本実施形態のテラヘルツ検出センサの他例3によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
【図18】本実施形態のテラヘルツ検出センサの他例4によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
【図19】テラヘルツ画像測定装置における振動部の他例としてのSi振動部の構成を示す図である。
【図20】PHB(細胞内のエネルギー貯蔵物質)における2.4THz付近と2.9THz付近の特徴的な共鳴周波数を示す周波数スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<実施形態の構成>
図1は、本発明の実施形態に係るテラヘルツ検出センサを用いたテラヘルツ画像測定装置の構成を示す図である。

【0022】
図1に示すテラヘルツ画像測定装置10は、ピエゾ基板10aの下端面に固定されたGaAs(ガリウム・ヒソ)振動部11と、交流電源(電源)12と、テラヘルツ検出センサ13と、電圧検出部14とを備える。また、Z層のピエゾ基板(Zピエゾ基板)15と、Y層のピエゾ基板(Yピエゾ基板)16と、X層のピエゾ基板(Xピエゾ基板)17と、磁場発生部19と、コンピュータ等による測定制御部20とを備えて構成されている。Z層のピエゾ基板15の上に、テラヘルツ画像測定対象の試料18が載置固定されている。なお、GaAs振動部11は、請求項記載の振動部を構成する。この振動部としては、GaAs振動部11以外にも、圧電性材料等の振動部材でもよい。

【0023】
テラヘルツ検出センサ(センサ)13は、試料18が自然に発光するテラヘルツ光を検出するものである。この検出原理は、(1)テラヘルツ電界をゲート電極で検知し、高速で電流を変調する、(2)微小なセンサは比熱が小さいため、加熱効果を利用する、(3)材料の中の不純物準位にトラップされているキャリアのテラヘルツ応答を利用する、(4)後述の磁場印加型のセンサの場合は、ランダウ準位の電子励起に伴う光伝導を利用する、等がある。但し、このような検出原理は、後述の図9に示すグラフェン32を用いたセンサ13Aについても同様である。

【0024】
図1に戻って、上記のテラヘルツ光の検出により、測定制御部20で試料18の分子の画像を計測するパッシブ計測が可能となっている。センサ13は、後述するテラヘルツ光検出ポイント(検出ポイント)が設けられている。検出ポイントは、テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの平面形状を有しており、試料18の近傍位置でテラヘルツ光の近接場光を検出する。つまり、本実施形態では、センサ13はテラヘルツ光を検出すると表現する場合もあるが、実際にはテラヘルツ光の近接場光を検出していることを含んでいる。

【0025】
GaAs振動部11は、GaAs半導体材料を成形することにより、直方体形状の基端部11aと、この基端部11aの下面に沿って面一に突き出た板状部11bとが一体形成されている。板状部11bの先端部下面にはセンサ13が固定されている。このセンサ13の固定面と反対面には、検出ポイントが設けられている。基端部11aには、電源12が接続されており、電源12から基端部11aに電圧を印加するとピエゾ効果により一定の振動周波数で振動し、これに応じて板状部11bが同じ振動周波数で上下に振動する。

【0026】
電圧検出部14は、反転増幅器等で構成されており、GaAs振動部11の振動に応じた電流を検出して得られる電圧を検出し、この検出電圧に応じた制御電圧V1をZピエゾ基板15へ印加する。つまり、電圧検出部14は、基端部11aの振動による板状部11bの振幅に応じた電流を検出して得られる電圧を検出し、この検出電圧に応じた制御電圧V1をZピエゾ基板15へ印加する。但し、基端部11aの振動に応じた電流を検出する場合、振動における周波数から電流を検出する場合と、振動における振幅から電流を検出する場合との2通りがある。

【0027】
Zピエゾ基板15は、制御電圧V1の大きさに応じてZ方向(上下方向)に伸縮し、Zピエゾ基板15上に載置固定された試料18を上下に移動させ、試料18とセンサ13との間を所定間隔に保持する。これは、試料18のセンサ13での検出面が凹凸形状の場合でも、センサ13でのテラヘルツ光の検出状態が変動しないように、一定状態に保持するためである。

【0028】
これを詳細に説明する。Zピエゾ基板15が試料18をセンサ13に少しづつ近づけ、試料18とセンサ13との双方の間隔がnmオーダになると、双方の間に原子間力が働く。例えば、ファンデルワールス力(分子間に働く静電相互作用に基づく引力)が働く。このファンデルワールス力により、板状部11bのセンサ13の固定部分が僅かに下方へ引っ張られるので、基端部11aの振動周波数が僅かにずれる。このずれは、電圧検出部14で検出されて制御電圧V1に反映される。このため、そのずれが一定となるようにZピエゾ基板15に対してZ方向にフィードバックが掛かり、試料18のセンサ13側の面が凹凸形状であっても、板状部11bが、その凹凸とセンサ13との距離が一定となるように上下動する。

【0029】
但し、電圧検出部14の検出電圧V1をピエゾ基板10aに印加し、ピエゾ基板10aをZピエゾ基板15と同様に上下方向に伸縮させて、センサ13を試料18に対して所定間隔に保持してもよい。この際、ピエゾ基板10aを小型とすれば、電圧V1による応答速度が速くなるので、センサ13を試料18に対して高速に上下動させることができる。

【0030】
なお、Yピエゾ基板16は、図示せぬ交流電源からの電圧印加に応じてY方向(左右方向)へ伸縮し、Xピエゾ基板17は、電圧印加に応じてX方向(前後方向)へ伸縮する。これに応じて試料18が左右前後方向へ移動するので、センサ13で試料18の所定位置のテラヘルツ光を検出可能となっている。このように、各ピエゾ基板15,16,17で試料18の位置合わせを行う前に、Xピエゾ基板17の下に粗動用ピエゾ基板1を配置し、この粗動用ピエゾ基板1に図示せぬ交流電源から電圧を印加して、大間かに試料18の位置合わせを行うのが好ましい。

【0031】
図2はテラヘルツ検出センサ13の構成を示す斜視図である。図2に示すセンサ13は、直方体形状のGaAs基板21と、この基板21の上面の一隅部分に形成されたテラヘルツ光検出ポイントとしての2次元電子ガス部(ガス部)22と、このガス部22に、各々が電気的に接続されて独立状に拡がって延びる4つの電極23a,23b,23c,23dとを備えて構成されている。各電極23a~23dは、金等の導電材料により形成されており、ガス部22への接続端が針状に尖り、この針状の接続端から細長く扇状に拡がり基板21の縁まで延在されて形成されている。各電極23a~23dを針状とすることによりアンテナ効果でテラヘルツ波を受信し易くなっている。

【0032】
更に説明すると、各電極23a~23dは、先端が針状に先細って延びる帯状を成し、当該針状の先端に検出ポイント(ガス部22)に接合された1対の電極を含み、当該電極は、長さがテラヘルツ波の波長(半波長及び1/4波長等を含む)以上で、且つ、テラヘルツ波の波長(半波長及び1/4波長等を含む)未満の電界が集中する領域でテラヘルツ波を受信するようになっている。

【0033】
各々の電極23a~23dには、測定制御部20に接続される導電線24が接続されている。なお、導電線24は1つの電極23aに対して2本以上を並列に接続し、1本が断線等で不通となっても、残りの線で信号を伝達可能とする構成としてもよい。

【0034】
測定制御部20は、導電線24から2つの電極(例えば両側の23a,23d)を介してガス部22に電流を流すことにより、ガス部22の2次元電子ガス中の電子を移動させ、試料18のテラヘルツ光の近接場光を検出する動作を行わせる。また、測定制御部20は、ガス部22で検出されるテラヘルツ光の検出電圧を、他の2つの電極23b,23cに接続された導電線24から受け取り、試料18の分子のテラヘルツ画像を計測する。なお、電流が流される2つの電極23a,23dにより請求項記載の第1電極が構成され、テラヘルツ光の検出電圧が伝わる他の2つの電極23b,23cにより請求項記載の第2電極が構成されている。

【0035】
センサ13は、表面から一定の位置(距離)に2次元電子ガスが形成されたHEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)等により形成される。HEMTは、2次元電子ガスを利用したトランジスタであり、変調ドープにより、2次元電子ガスが形成され、電子移動度が高い特徴がある。従って、センサ13は、試料18が発するテラヘルツ光の近接場光を検出することによるゲート電圧で、2次元電子ガス上の図示せぬソースからドレインに流れる電子電流を、高い電子移動度を利用して高速に制御することが可能となっている。但し、ゲート電圧は図示せぬゲートに供給され、このゲート並びに2次元電子ガス上のソース及びドレインは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のゲート電圧、2次元電子ガス上のソース及びドレインに対応するものである。

【0036】
本実施形態では、センサ13は、図3Aに示すように、GaAs基板21の上にAlGaAs(アルミニュウム・ガリウム・ヒソ)層22aを積層した半導体基板を用いて形成する。この半導体基板の構造において、GaAs基板21とAlGaAs層22aとの接合界面に沿って、2次元平面を運動する電子が分布する2次元電子ガス22gが形成されている。

【0037】
この他、半導体基板として、Si層とSiGe(シリコン・ゲルマニュウム)層、AlGaAs層とInGaAs(インジュウム・ガリウム・ヒソ)層、GaN(ガリウム・窒素)層とAlGaN(アルミニュウム・ガリウム・窒素)層等の組合せを用いてもよい。

【0038】
次に、図3Bに示すように、平面長方形のAlGaAs層22aをエッチングで削り、その直方形の一隅部分が氏のテラヘルツ光の波長よりも小さいサイズで残るように成形する。この成形により、残存したAlGaAs層22aと、この下面側の2次元電子ガス22gとの双方で2次元電子ガス部22が形成される。次に、図3Cに示すように、金等の導電材料をGaAs基板21の上に蒸着等により固着させて各電極23a~23d(図1参照)を形成し、センサ13を製作する。この後、各電極23a~23dを図1に示すように導電線24で測定制御部20に接続する。

【0039】
但し、図3Bに示すエッチングで形成される2次元電子ガス部22は、試料18が発するテラヘルツ光の近接場光を効率良く検出できる平面形状とされ、例えば0.8μm~1μmのサイズの楕円形状等に形成される。ガス部22の平面形状は、テラヘルツ光の近接場光を効率良く検出できれば、円形、多角形、星形等の様々な形状でもよい。

【0040】
また、2次元電子ガス部22のサイズは、現状では実物サイズで最小が約0.3μm(このサイズは今後更に縮小されることは自明である)であり、これ以外に約0.9μm、約2μm、約5μm等のものがある。これらのガス部22のサイズは、従来のアクティブ計測によるテラヘルツ光検出素子(従来センサ)のアパーチャの径サイズに対応している。なお、約0.9μm、約2μm、約5μmは以降、0.9μm、2μm、5μmとする。

【0041】
従来センサは、2次元電子ガスを有する異種接合半導体の上にプローブを介して設けられた金属皮膜に、テラヘルツ光の一部を通すアパーチャが開口されている。アパーチャは、テラヘルツ光の波長よりも小さな径サイズとなっており、金属皮膜の上方からアパーチャに向かってテラヘルツ光が照射されると、アパーチャの反対側のプローブの位置に近接場光が漏れるので、この近接場光をプローブを介して2次元電子ガスで検出する。本実施形態のガス部22等の検出ポイントでは、アパーチャを通過させなくとも、試料18に近接することにより試料18が発するテラヘルツ光の近接場光を検出可能となっている。

【0042】
図4において、横軸に上述した従来のテラヘルツ検出素子(従来センサ)の位置(0~14μm)と、縦軸にアパーチャを通過した近接場光検出によるテラヘルツ検出信号レベル(任意スケールL0~L4で示す)との関係を示す。横軸のテラヘルツ検出素子の位置において、5μmの双方向矢印で示す範囲は、従来センサにおける径サイズ=5μmのアパーチャの位置を示す。同様に、2μmの双方向矢印で示す範囲は径サイズ=2μm、0.9μmの双方向矢印で示す範囲は径サイズ=0.9μmのアパーチャの位置を示す。

【0043】
ここで、図4に示す各アパーチャの径サイズ0.9μm、2μm、5μmにおけるテラヘルツ光を検出する分解能を比較する。
アパーチャの径が5μmの場合、テラヘルツ光が透過した近接場光の量が他のアパーチャ(0.9μm,2μm)の場合よりも多いので、近接場光検出により検出されるテラヘルツ検出信号Ts1の立ち下がりエッジは、他のアパーチャ(0.9μm,2μm)の場合よりも緩やかになる。この場合、テラヘルツ検出信号Ts1(又は、後述のTs2,Ts3)の最大値100%の90%~10%の間の距離が分解能となる。この分解能は、アパーチャの大きさ(この場合、5μm)で決まる。従って、アパーチャの径が5μmの場合は、分解能が他のアパーチャ(0.9μm,2μm)の場合よりも低くなる。

【0044】
アパーチャの径が2μmの場合、近接場光の量がアパーチャの径5μmより少なく径0.9μmより多いので、テラヘルツ検出信号Ts2の立ち下がりエッジは径5μmのアパーチャの場合よりも急峻になる。従って、アパーチャの径が2μmの場合は、分解能が径5μmのアパーチャの場合よりも高くなる。

【0045】
アパーチャの径が0.9μmの場合、近接場光の量がアパーチャの径2μmより少ないので、テラヘルツ検出信号Ts2の立ち下がりエッジは径2μmのアパーチャの場合よりも急峻になる。従って、アパーチャの径が0.9μmの場合は、分解能が径2μmのアパーチャの場合よりも高くなる。

【0046】
本実施形態のように、2次元電子ガス部22のサイズを0.9μm、2μm、5μmにした場合も、従来センサのアパーチャの径サイズが0.9μm、2μm、5μmの場合と同等なテラヘルツ光検出の分解能を得ることができる。

【0047】
次に、図1に示す磁場発生部19について説明する。図5Aに磁場発生部19の構成図を示し、図5Bにテラヘルツ光検出原理を説明するための磁場印加によるランダウ準位の形成図を示す。ランダウ準位とは、磁場の中で荷電粒子がサイクロトロン運動(円運動)するときに取り得る、不連続(離散的)なエネルギーの準位のことである。

【0048】
図5Aに示すように、磁場発生部19は、試料18から発生されてセンサ13に照射されるテラヘルツ光の光軸を囲んで巻回されるコイル19aと、コイル19aに流される電流(コイル電流)を計測する電流計19bと、コイル19aの両端の電圧を計測する電圧計19cとを備えて構成されている。この磁場発生部19は、コイル19aに電流を流すことにより破線矢印Y3で示す磁場Bを発生させてセンサ13に印加する。磁場Bは、コイル電流から一義的に求めることが可能となっている。

【0049】
図5Bにおいて、横軸は状態密度、縦軸は電子のエネルギーである。図5Bに示すように、試料18から発せられるテラヘルツ光の光子エネルギーhfが、下式(1)で示されるランダウ準位のエネルギー間隔と等しい場合、テラヘルツ光の非常に大きな吸収が生じる。
(h/2π)eB/m …(1)
この現象はサイクロトロン吸収、或いはサイクロトロン共鳴と呼ばれる。
ここで、hはプランク定数、eは電荷素量、Bは磁場、mは結晶中の電子の有効質量(例えばGaAsであれば、自由電子の質量の約0.0665倍)である。

【0050】
サイクロトロン吸収が生じる際のテラヘルツ光の光子エネルギーhfは、サイクロトロン吸収が生じる際のランダウ準位のエネルギー間隔に等しくなる。即ち、次式(2)が成り立つ。
hf=(h/2π)eB/m …(2)
この式(2)から磁場B以外のh,e,mは既知の定数であるので、サイクロトロン吸収が生じる際の磁場Bからテラヘルツ光の周波数fを求めることができる。

【0051】
本実施形態のテラヘルツ画像測定装置10(図1)では、2次元電子ガス部22のサイクロトロン吸収を利用する。この装置10の測定制御部20は、コイル19aに流す電流値を変えながらセンサ13に印加される磁場Bの強さ(磁場値)を変え、センサ13で検出される試料18のテラヘルツ検出信号のレベルが突出して高くなる磁場値に合わせる。その突出したレベルのテラヘルツ検出信号の周波数が、特徴的な共鳴周波数(特定周波数)となる。従って、磁場値を検出信号レベルが突出した位置に合わせることにより、特定周波数に同調させることができる。言い換えれば、テラヘルツ周波数を選択することができる。なお、測定制御部20は、磁場値を特定周波数に同調させる場合、コイル19aに流す電流値を電流計19bから読み取り、テラヘルツ検出信号のレベルを電圧計19cから読み取って行なう。

【0052】
上述の突出したテラヘルツ検出信号の周波数が、特徴的な共鳴周波数(特定周波数)となる。例えば、測定制御部20の制御により、磁場発生部19で発生される磁場Bを、図6A~図6Eに示すようにしてもよい。図6Aでは、信号レベルが1と急峻に高くなる磁場値の約2[T]として、特定周波数f=0.7THzを選択し、この選択周波数のテラヘルツ光を発する試料18の分子のテラヘルツ画像を表示することができる。

【0053】
同様に、図6Bでは、信号レベルが1と急峻に高くなる磁場値の約3[T]として特定周波数f=1.4THzを選択し、図6Cでは、信号レベルが1と急峻に高くなる磁場値の約4.5[T]として特定周波数f=1.8THzを選択し、図6Dでは、信号レベルが1と急峻に高くなる磁場値の約6[T]として特定周波数f=2.6THzを選択し、図6Eでは、信号レベルが1と急峻に高くなる磁場値の約7.5[T]として特定周波数f=3.1THzを選択し、これらの選択周波数のテラヘルツ光を発する試料18の分子のテラヘルツ画像を表示することができる。

【0054】
このように磁場値を変えてテラヘルツ光の周波数を選択し、この選択したテラヘルツ光の発光強度の分布をパッシブ計測により実測した際のテラヘルツ発光強度分布図を図7に示す。図7Aは周波数f=2.06THzの場合の発光強度分布を、弱い強度から強い強度に向かってS1(最弱)~S4(最強)で示す図である。図7Bは周波数f=2.25THzの場合の発光強度分布をS1(最弱)~S4(最強)で示す図である。但し、本実験は、テラヘルツ画像測定装置10のGaAs基板21として、これ以外の振動部材を用いて行なったものである。

【0055】
図7Aに示す周波数f=2.06THzの場合は、テラヘルツ光の発光強度が、S1で示すように左隅部分及び右隅部分で弱く、この位置から中央に向かって上方へ行くに従ってS2,S3,S4と強くなっている。図7Bに示す周波数f=2.25THzの場合は、テラヘルツ光の発光強度が、S1で示すように下方部分で弱く、この位置から上方へ行くに従ってS2,S3,S4と強くなっている。

【0056】
また、図8にテラヘルツ画像測定装置10でアクティブ計測の実験を行った際の、横軸におけるセンサ13の位置(0~3.5μm)と、縦軸におけるセンサ13での近接場光検出によるテラヘルツ検出信号レベル(任意スケール:0~10)との関係を示す。但し、本実験は、テラヘルツ画像測定装置10のGaAs基板21として、これ以外の振動部材を用いて行なったものである。センサ13の位置は、約2μm~2.3μmの間であり、前述したテラヘルツ検出信号最大値100%の90%~10%の間の距離による空間分解能は280nmと高くなっている。この高分解能の280nmにおいて、試料18から発せられるテラヘルツ光の近接場光を検出した。この検出時のテラヘルツ検出信号の立ち下がりエッジは、図示の通り急峻となっている。

【0057】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のテラヘルツ検出センサ13とテラヘルツ画像測定装置10によれば、次のような効果が得られる。

【0058】
(1)テラヘルツ光を検出するセンサ13を、テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状であって、テラヘルツ光が照射された際に当該テラヘルツ光の近接場光を検出する検出ポイントと、検出ポイントが表面に形成された半導体基板とを備えて構成した。

【0059】
この構成によれば、検出ポイントはテラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状であるため、検出ポイントに動作電流を流した状態で、試料が自然に発するテラヘルツ光が検出ポイントに照射されると、この照射されたテラヘルツ光の近接場光を検出することができる。この近接場光はテラヘルツ光の半波長よりも更に小さい波長なので、この波長に対応した検出ポイントのサイズとすれば、試料のnmサイズの分子の画像を高解像度で計測することが可能となる。この計測は試料が自然に発するテラヘルツ光を計測するパッシブ計測である。

【0060】
従来のアクティブ計測のように、金属皮膜のアパーチャを通過したテラヘルツ光の近接場光をタングステン針で突くことによって、近接場光が持つ情報が破壊されてしまうといった不具合を無くすことができる。このため、試料の分子の画像を適正に計測することができる。従って、テラヘルツ光によるパッシブ計測を適正に行うことができると共に、パッシブ計測において任意のテラヘルツ周波数を選択することができる。

【0061】
(2)上記センサ13の半導体基板の表面に、検出ポイントに電流を流すための第1電極23a,23dと、当該第1電極23a,23dを介して電流が流された当該検出ポイントに、近接場光の照射時に検出される電圧を出力する第2電極23b,23cとが形成されている構成とした。

【0062】
この構成によれば、検出ポイントに第1電極23a,23dを介して動作電流を流すことができる。また、試料が発するテラヘルツ光の近接場光が検出ポイントで検出された際に、この検出電圧を第2電極23b,23cを介して外部の測定制御部へ出力することができる。このため、測定制御部20で、試料のnmサイズの分子の画像を高解像度で計測することができる。

【0063】
(3)第1電極23a,23d及び第2電極23b,23cの各々は、先端が針状に先細って延びる帯状を成し、当該針状の先端が検出ポイントに接合された1対の電極を含んで成る構成とした。

【0064】
この構成によれば、第1電極23a,23d及び第2電極23b,23cの先端が針状に先細って延びるので、アンテナ効果でテラヘルツ波の受信感度を向上させることができる。

【0065】
(4)第1電極23a,23d及び第2電極23b,23cの各々は、先端が針状に先細って延びる帯状を成し、当該針状の先端が検出ポイントに接合された1対の電極を含み、該電極は、長さがテラヘルツ波の波長(半波長及び1/4波長等を含む)以上で、且つ、テラヘルツ波の波長(半波長及び1/4波長等を含む)未満の電界が集中する領域でテラヘルツ波を受信する構成とした。

【0066】
この構成によれば、第1電極23a,23d及び第2電極23b,23cの先端が針状に先細って延び、この延びる先端の1対の電極が、長さがテラヘルツ波の波長以上で、且つ、テラヘルツ波の波長未満の電界が集中する領域でテラヘルツ波を受信するので、アンテナ効果で、よりテラヘルツ波の受信感度を向上させることができる。

【0067】
(5)上記半導体基板は、GaAs層21上にAlGaAs層22aが積層され、当該AlGaAs層22aと当該GaAs層21との界面に2次元電子ガス22gが分布した高電子移動度トランジスタ構造である。上記検出ポイントは、AlGaAs層22aがテラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの形状に成形され、当該成形されたAlGaAs層22aとGaAs層21との界面に2次元電子ガス22gが分布した構造とした。

【0068】
この構成によれば、試料が自然に発するテラヘルツ光の近接場光を、検出ポイントとしての2次元電子ガス22gで検出することができる。この検出を行う2次元電子ガス22gが形成された高電子移動度トランジスタでは、電子移動度が高いので近接場光を高速に検出することができる。

【0069】
(6)テラヘルツ画像測定装置20を次のように構成した。即ち、試料18から発せられるテラヘルツ光の近接場光を検出する上記センサ13と、試料18からセンサ13に照射されるテラヘルツ光の光軸を囲んで巻回され、試料18及びセンサ13の周囲に配置されるコイル19aを有し、当該コイル19aに電流が流されて発生する磁場をセンサ13へ印加する磁場発生部19とを備える。更に、コイル19aに電流を流し、この流れる電流値を変えることにより磁場の強さを、当該センサ13で検出される試料のテラヘルツ光の検出信号レベルが突出して高くなる磁場値とし、テラヘルツ光の特定周波数に同調させる測定制御部20とを備える構成とした。

【0070】
この構成によれば、磁場値を、センサ13でのテラヘルツ光の検出信号レベルが突出した位置に合わせることにより、特定周波数に同調させることができる。言い換えれば、テラヘルツ周波数を選択することができる。従って、その選択周波数のテラヘルツ光を発する試料の分子の画像を表示することができる。

【0071】
(7)基端部11aから延びる板状11bの先端部に固定したセンサ13を、当該基端部11aへの電圧印加により試料18との間隔方向に振動させるGaAs振動部11と、センサ13と試料18との間に間隙を介して当該試料18を載置固定し、GaAs振動部11の振動を検出した電圧に応じて、載置固定された試料を間隙が一定となるように当該間隙方向に移動させるZピエゾ基板15とを備える構成とした。

【0072】
この構成によれば、試料18とセンサ13との双方の間隔がnmオーダになった際のファンデルワールス力により、基端部11aから延びる板状(板状部)11bの先端部が僅かに試料側へ引っ張られるると、GaAs振動部11の振動周波数が僅かにずれる。このずれは、振動部11の振動を検出した電圧に反映されるので、そのずれが一定となるようにZピエゾ基板15の移動方向にフィードバックが掛かり、試料のセンサ13側の面が凹凸形状であっても、板状11bの先端部が、その凹凸とセンサ13との距離が一定となるように上下動する。従って、センサ13でのテラヘルツ光の検出状態が変動しないように、一定状態に保持することができる。

【0073】
<テラヘルツ検出センサの他例>
図9は、他例のテラヘルツ検出センサ13Aの構成を示す斜視図である。図9に示すセンサ13Aは、図1に示すテラヘルツ画像測定装置10のセンサ13として用いられるものである。

【0074】
図9に示すセンサ13Aは、直方体形状のSi(シリコン)基板31aと、このSi基板31aの上に積層されたSiO(二酸化ケイ素)基板31bと、このSiO基板31bの上面一隅部分に形成されたテラヘルツ光検出ポイントとしてのグラフェン32と、このグラフェン32に、前述したと同様な4つの電極23a~23dとを備えて構成されている。各電極23a~23dには、測定制御部20Aに接続される導電線24が接続されている。また、このセンサ13Aも、前述した図5Aに示すように試料18と共に、磁場発生部19のコイル19a内に配置されている。

【0075】
測定制御部20Aは、導電線24を介して2つの電極(例えば両側の23a,23d)に電流を流すことにより、グラフェン32中の電子を移動させ、試料18が発するテラヘルツ光の近接場光を検出する動作を行わせる。また、測定制御部20は、導電線24を介した他の2つの電極23b,23cから、グラフェン32で検出されるテラヘルツ光の近接場光に応じた出力電圧を受け取り、試料18の分子のテラヘルツ画像を計測する。

【0076】
グラフェン32は、図10Aに示すように、炭素原子とその結合からできた蜂の巣状の単層の6角形格子構造をとり、1枚の金網状の形態を成している。ここで、シリコンのような半導体や他の3次元材料では、電荷キャリアは原子格子の周期的な場と相互に作用するために準粒子を形成する。しかし、グラフェン32中の準粒子は、そのような3次元材料の特性とは異なる特性を有している。

【0077】
典型的な3次元半導体のエネルギーバンドは、図10Bの縦軸にエネルギー(energy)、横軸に運動量(momentum)をとって表すように、下部の放物線41の形状を成す価電子帯と、この上方に位置して放物線41と上下反対の放物線42の形状を成す伝導帯を有する。価電子帯と伝導帯の間にはオープンバンドギャップ(band gap)がある。

【0078】
これに対して、グラフェン32のエネルギーバンドは、図10Cに示すように、頂点同志が当接した2つの円錐44,45の形態を有する。2つの円錐44,45の接点はディラックポイント(Dirac point)と呼ばれる。この形態のエネルギーバンドは、ゼロ質量の電子であるディラックフェルミオンのように振る舞う準粒子のエネルギーEと、運動量kとで特徴付けられる。この準粒子は、光速の数%程度で移動する。
このような特殊なバンド構造により、グラフェン32中の電子移動度は、室温であっても非常に高速(通常の半導体の10倍~100倍以上)であることが知られている。

【0079】
また、半導体のような通常の3次元材料におけるフェルミエネルギー(絶対零度でのフェルミ粒子系の化学ポテンシャル)は、キャリアの密度に比例するが、グラフェン32におけるフェルミエネルギーは、キャリア密度の平方根に比例することが確認されている。また、グラフェン32は、価電子帯と伝導帯がディラックポイントで合致する対称的な構造を持つことから、ゲート電圧を印加することで(フェルミエネルギーを上下させることで)、キャリアを電子にもホールにもすることができる(電子とホールの対称性)。

【0080】
上述したグラフェン32の特異的性質から、図5Aに示すように磁場Bを印加した時のエネルギー準位が、図11A及び図11Bに示す関係、即ち、下式(3)及び(4)で表されることが知られている。図11Aは、通常の半導体における磁場Bと電子エネルギーEとの関係を示す。図11Bはグラフェン32における同様の関係である。
半導体:En=(n+0.5)heB/m …(3)
グラフェン:En=c(2ehB|n|)0.5 …(4)
式(3)及び(4)において、cはディラックフェルミオンの速度、eは電荷素量、hはプランク定数hの1/(2π)、Bは印加磁場、nはランダウ準位の指数、mは結晶中の電子の有効質量(例えばGaAsならば、自由電子の質量の0.0665倍)である。

【0081】
上式(3)から、h,e,mは定数であるから、下式(5)が導かれる。ここで、C1は定数である。同様に上式(4)から、c,e,hは定数であるから、下式(6)が導かれる。ここで、C2は定数である。
半導体:En=C1(n+0.5)B・・・(5)
グラフェン:En=C2(B|n|)0.5・・・(6)

【0082】
上式(5)から、nの増加(n=0,1,2,3)に対する電子エネルギーEの変化量ΔEはC1×0.5Bであり、印加磁場Bに比例する。n=0,1,2,3の間隔は一定である。

【0083】
これに対して、上式(6)から、nの増加(n=-3,-2,-1,0,1,2,3)に対する電子エネルギーEの変化量ΔEは、(B|n|)0.5に比例するため、n=-3,-2,-1,0,1,2,3の間隔は一定ではないことがわかる。

【0084】
このようなグラフェン32の特性に着目してセンサ13Aを製作した。このセンサ13Aの製作方法について説明する。
図12Aに示すように、Si基板31aの上に積層されたSiO基板31bの上面にグラフェン32Aが積層された素子を用いる。

【0085】
次に、図12Bに示すように、長方形のグラフェン32Aを酸素アッシャー等を用いたエッチングで削り、その直方形の一隅部分が所定の大きさの形状でグラフェン32として残るように成形する。このグラフェン32の形状は、前述した2次元電子ガス部22の形状のように、テラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの平面形状を有しており、試料18自体が発するテラヘルツ光の近接場光を効率良く検出できる形状とされる。
次に、図12Cに示すように、金等の導電材料をGaAs基板21の上に蒸着等により固着させて各電極23a~23d(図9参照)を形成し、センサ13Aを製作する。この後、各電極23a~23dを導電線24で測定制御部20A(図9)に接続する。

【0086】
次に、図5Aに示す磁場発生部19により、グラフェン32を備えるセンサ13Aに磁場Bを印加する場合について説明する。
磁場発生部19は、試料18から発生され、センサ13に照射されるテラヘルツ光の光軸を囲んで巻回されるコイル19aと、コイル19aに流される電流(コイル電流)を表示する電流計19bと、コイル19aの両端の電圧を計測する電圧計19cとを備えて構成される。そして、コイル19aに電流を流すことにより磁場Bを発生させて、グラフェン32を備えるセンサ13Aに印加する。磁場Bは、コイル電流から一義的に求めることが可能となっている。

【0087】
グラフェン32に試料18から発光されるテラヘルツ光が照射されると、光伝導と呼ぶ現象が観測される。「光伝導」とは、絶縁体や半導体に光を照射したときに電気伝導率が変化する現象である。この現象は通常の半導体では、光吸収によって電子が価電子帯から伝導帯、或いは不純物準位から伝導帯へ励起され、余分の伝導電子又は正孔が生じるために起こる。ここでは、フェルミ準位を挟んだ上下のランダウ準位に励起された余分の電子や正孔の伝導が電気伝導率変化をもたらす。磁場中であるため、電気伝導率の上昇は、電気抵抗率の上昇となる。

【0088】
上述した図11B及び上式(6)から、照射する電磁波の光子エネルギーhfがランダウ準位のエネルギー間隔(例えばn=1から2の場合、C2(B|2|)0.5-C2(B|1|)0.5)と等しい時、電磁波の非常に大きな吸収が生じる。この現象はサイクロトロン吸収(又はサイクロトロン共鳴)である。

【0089】
サイクロトロン吸収が生じる際のテラヘルツ光の光子エネルギーhfは、サイクロトロン吸収が生じる際のランダウ準位のエネルギー間隔に等しくなる。例えばn=1から2の場合、下式(7)が成り立つ。
hf=(C2(B|2|)0.5-C2(B|1|)0.5 …(7)
この式(7)から磁場B以外のC2(即ち、h,e,m)は既知の定数であるので、サイクロトロン吸収が生じる際の磁場Bからテラヘルツ光の周波数fを求めることができる。

【0090】
即ち、図5Aに示すように、測定制御部20Aは、磁場発生部19のコイル19aに流す電流値を変えながらセンサ13Aに印加される磁場Bの強さ(磁場値)を変え、センサ13Aで検出される試料18のテラヘルツ検出信号レベル(信号レベル)が突出して高くなる磁場値に合わせる。その突出したレベルのテラヘルツ検出信号の周波数が、特徴的な共鳴周波数(特定周波数)となる。従って、磁場値を信号レベルが突出した位置に合わせることにより、特定周波数に同調させることができる。言い換えれば、テラヘルツ周波数を選択することができる。

【0091】
このように磁場値を変えてテラヘルツ検出信号の周波数を選択する場合を図13及び図14を参照して説明する。但し、図13及び図14において、縦軸はテラヘルツ検出信号レベルを任意スケールで示し、横軸は磁場Bをテスラ[T]で示してある。
例えば、測定制御部20Aの制御により、磁場発生部19で発生される磁場Bを、図13Aに示すように、信号レベルが6と急峻に高くなる磁場値0.1[T]として、特定周波数f=0.76THzを選択し、この特定周波数f=0.76THzのテラヘルツ光を発する試料18の分子のテラヘルツ画像を表示することができる。

【0092】
同様に、図13Bに示す信号レベルが8.8と急峻に高くなる磁場値0.2[T]として、特定周波数f=1.6THzを選択する。また、図13Cに示す信号レベルが8.2と急峻に高くなる磁場値0.5[T]として特定周波数f=1.6THzを選択する。また、図13Dに示す信号レベルが8.8と急峻に高くなる磁場値0.7[T]として特定周波数f=3.1THzを選択する。これら選択により選択周波数のテラヘルツ光を発する分子のテラヘルツ画像を表示できる。

【0093】
更に、図14Aに示す信号レベルが8.7と急峻に高くなる磁場値1.4[T]として特定周波数f=4.2THzを選択する。また、図14Bに示す信号レベルが8.5と急峻に高くなる磁場値2.4[T]として特定周波数f=28THzを選択する。また、図14Cに示す信号レベルが8.3と急峻に高くなる磁場値3.3[T]として特定周波数f=33THzを選択する。これら選択により選択周波数のテラヘルツ光を発する分子のテラヘルツ画像を表示できる。

【0094】
なお、図9に示すグラフェン32を表面に形成する半導体基板の場合、Si基板31a及びSiO基板31bを用いた例を挙げたが、六方晶系窒化ホウ素(h-BN)や、シリコンカーバイド(SiC)等を用いて半導体基板を構成してもよい。

【0095】
また、グラフェン32と同様にテラヘルツ光の波長よりも小さいサイズの平面形状を有し、試料18自体が発するテラヘルツ光の近接場光を効率良く検出できる形状であれば、検出ポイントとして、超伝導体、半導体ナノワイヤ、カーボンナノチューブ等の材料を用いてもよい。

【0096】
<テラヘルツ検出ポイントの他例1>
図15は本実施形態のテラヘルツ検出センサ13(図2)の他例1によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
図15に示す他例1による検出ポイントは、2次元電子ガス部22の上に、先端が針状に尖ったプローブ51を合体させて形成したものである。

【0097】
プローブ51は、タングステン等の金属やシリコン等の半導体を針状(又は線状)に加工したものである。なお、シリコンは、例えば異方性エッチングにより針状に成形する。このプローブ51は、2次元電子ガス部22のソース-ドレイン間を制御するMOSFET上のゲートに相当するものであり、試料18が発するテラヘルツ光の近接場光を検出して得られるゲート電圧で、2次元電子ガス22g上のソースからドレインに流れる電子電流を、高い電子移動度を利用して高速に制御する。
このプローブ51は、先端が針状に尖っているので空間上のテラヘルツ光の検出サイズが小さくなり、このため、近接場光の検出時の空間解像度を上げることができる。

【0098】
<テラヘルツ検出ポイントの他例2>
図16は本実施形態のテラヘルツ検出センサ13の他例2によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
図16に示す他例2による検出ポイントは、2次元電子ガス部22のAlGaAs層22aの表面の一部を尖って針状22a1としたものである。この針状22a1においても、上述したプローブ51と同様に、試料18が発するテラヘルツ光の近接場光を検出することにより2次元電子ガス22gに流れる電子電流を、高い電子移動度を利用して高速に制御することができる。この針形状22a1でも、プローブ51と同様に、近接場光の検出時の空間解像度を上げることができる。

【0099】
<テラヘルツ検出ポイントの他例3>
図17は本実施形態のテラヘルツ検出センサ13A(図9)の他例3によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
図17に示す他例3による検出ポイントは、Si基板31a上のSiO基板31bの上面一隅部分に形成されたグラフェン32の表面に、垂直に針状(又は線状)のカーボンナノチューブによるプローブ53を立てたものである。このようにカーボンナノチューブによるプローブ53を立てた場合でも、プローブ53が針状(又は線状)に形成されているので空間上のテラヘルツ光の検出サイズが小さくなり、このため、近接場光の検出時の空間解像度を上げることができる。

【0100】
<テラヘルツ検出ポイントの他例4>
図18は本実施形態のテラヘルツ検出センサ13A(図9)の他例4によるテラヘルツ検出ポイントの構成を示す図である。
図18に示す他例4による検出ポイントは、SiO基板31bの上面一隅部分の一部を針状31b1に尖らせて、この針状31b1を含む一隅部分にグラフェン32Bを形成したものである。この構成においては、グラフェン32Bの表面が上述したプローブ53と同様に針状に尖っているので、近接場光の検出時の空間解像度を上げることができる。

【0101】
<振動部の他例>
図19はテラヘルツ画像測定装置10における振動部(図1ではGaAs振動部11)の他例としてのSi振動部62の構成を示す図である。
Si振動部62は、GaAs振動部11と同様に、直方体形状の基端部62aと、この基端部62aの下面に沿って面一に突き出た板状部62bとが一体形成されている。板状部62bの先端部下面にはセンサ13が固定されている。基端部62aは、ピエゾ基板61を介してピエゾ基板10aに固定されている。ピエゾ基板61には電源電圧V2が印加されることによって、ピエゾ効果によりSi振動部62を一定の振動周波数で振動し、これに応じて板状部62bを同じ振動周波数で上下に振動するようになっている。また、Si振動部62の振動に応じた電圧は電圧検出部14で検出されるようになっている。

【0102】
このようなピエゾ基板61に固定されたSi振動部62を用いた構成においても、前述したGaAs振動部11によるZピエゾ基板15と連動する動作と同様に、センサ13による試料18のテラヘルツ光の検出動作を、一定状態に保持することができる。なお、Si振動部62は、請求項記載の振動部を構成する。この振動部としては、Si振動部62以外にも、圧電性材料等の振動部材や、ピエゾ基板61の振動に応じて振動するチューニングフォーク等の振動部材でもよい。

【0103】
以上説明したテラヘルツ画像測定装置は、パッシブ計測以外にも、アクティブ計測でも実施可能である。

【0104】
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 テラヘルツ画像測定装置
10a ピエゾ基板
11 GaAs振動部
12 交流電源
13,13A テラヘルツ検出センサ
14 電圧検出部
15 Z層のピエゾ基板(Zピエゾ基板)
16 Y層のピエゾ基板(Yピエゾ基板)
17 X層のピエゾ基板(Xピエゾ基板)
18 試料
19 磁場発生部
19a コイル
19b 電流計
19c 電圧計
20 測定制御部
21 GaAs基板
22 2次元電子ガス部(検出ポイント)
22a AlGaAs層
22g 2次元電子ガス
23a~23d 電極
31a Si基板
31b SiO基板
32 グラフェン(検出ポイント)
51 プローブ
53 プローブ(カーボンナノチューブ)
61 ピエゾ基板
62 Si振動部
B 磁場
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図3C】
4
【図4】
5
【図5A】
6
【図5B】
7
【図6A】
8
【図6B】
9
【図6C】
10
【図6D】
11
【図6E】
12
【図7A】
13
【図7B】
14
【図8】
15
【図9】
16
【図10A】
17
【図10B】
18
【図10C】
19
【図11A】
20
【図11B】
21
【図12A】
22
【図12B】
23
【図12C】
24
【図13A】
25
【図13B】
26
【図13C】
27
【図13D】
28
【図14A】
29
【図14B】
30
【図14C】
31
【図15】
32
【図16】
33
【図17】
34
【図18】
35
【図19】
36
【図20】
37