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明細書 :リン酸残基を有するニトロキシラジカル含有共重合体及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6836759号 (P6836759)
登録日 令和3年2月10日(2021.2.10)
発行日 令和3年3月3日(2021.3.3)
発明の名称または考案の名称 リン酸残基を有するニトロキシラジカル含有共重合体及びその使用
国際特許分類 C08F   8/30        (2006.01)
A61L  27/34        (2006.01)
A61L  27/04        (2006.01)
C08F   8/40        (2006.01)
FI C08F 8/30
A61L 27/34
A61L 27/04
C08F 8/40
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2017-553858 (P2017-553858)
出願日 平成28年11月29日(2016.11.29)
国際出願番号 PCT/JP2016/085266
国際公開番号 WO2017/094691
国際公開日 平成29年6月8日(2017.6.8)
優先権出願番号 2015234005
優先日 平成27年11月30日(2015.11.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和元年9月20日(2019.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】長崎 幸夫
【氏名】池田 豊
【氏名】赤坂 幸也
個別代理人の代理人 【識別番号】110000741、【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
審査官 【審査官】佐藤 貴浩
参考文献・文献 特開2013-173689(JP,A)
特開2012-111700(JP,A)
特開2011-184429(JP,A)
国際公開第2009/133647(WO,A1)
特開2012-233187(JP,A)
国際公開第2016/052463(WO,A1)
特開2014-001159(JP,A)
長崎幸夫,虚血再灌流障害に挑むナノメディシンの設計,Drug Delivery System,2015年 9月25日,Vol.30, No.4,327-335
調査した分野 C08F 8/00- 8/50
A61L27/00-27/60
A61L31/00-31/18
C08G83/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)で表される共重合体。
【化1】
JP0006836759B2_000007t.gif
上記式中、
Aは、水素原子、非置換または置換C1-C12アルキルを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R12CH-基を表し、ここで、R1およびR2は独立してC1-C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって-OCH2CH2O-、-O(CH23O-もしくは-O(CH24O-を表し、
Lは、結合であるか、あるいは式
【化2】
JP0006836759B2_000008t.gif
-(CH2cS-、-CO(CH2cS-、-(CH2cNH-、-(CH2cCO-、-CO-、-COO-、-CONH-からなる群より選ばれる連結基を表し、
1は-(CH2a-NH-(CH2a-または-(CH2a-O-(CH2a-を介して共有結合した式
【化3】
JP0006836759B2_000009t.gif
で表される基から選ばれ、
2はPO(-OH)2を表し、
YはH、SHまたはS-C(=S)-Phを表し、Phは1または2個のメチルまたはメトキシで置換されていてもよいフェニルを表し、
aは、各独立して0~5の整数であり、
bは2~6の整数であり、
cは1~5の整数であり、
mは2~10,000の整数であり、
nは1~360の整数であり、
kは1~480の整数であり、
但し、
n個の1の中の50%まで、またはk個の2の中の50%までが、それぞれ、H、ハロゲンまたはヒドロキシであることができ、かつ、
n個の該当する反復単位中の各単位とk個の該当する反復単位中の各単位は、それぞれランダムに存在する。
【請求項2】
請求項1に記載の共重合体であって、nおよびkの定義において、n+kが10~600の整数であり、n/n+kが0.2~0.8であり、k/n+kが0.2~0.8であり、ここで、n及びk個の反復単位は、それぞれ100%が前記X1及びX2について定義した基である、共重合体。
【請求項3】
請求項2に記載の共重合体であって、kが少なくとも3の整数であり、nが少なくとも3の整数である、共重合体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の共重合体であって、Lがパラキシリレンまたはメタキシリレンである共重合体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の共重合体を担持する金属材料表面。
【請求項6】
金属材料がステンレス、チタンまたはチタン合金である、請求項5に記載の金属材料表面。
【請求項7】
請求項5または6に記載の金属材料表面であって、ステント、人工補助心臓、人工関節、細胞培養装置、細胞解析装置および細胞分離装置またはそれらの部品の表面から選ばれる、金属材料表面。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の共重合体に由来する塗膜を表面に保持する装置であって、前記表面がステント、人工補助心臓、人工関節、細胞培養装置、細胞解析装置および細胞分離装置またはそれらの部品の金属材料表面から選ばれる表面から選ばれる、装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はリン酸残基を有するニトロキシラジカル含有共重合体に関し、より具体的には、ポリ(エチレングリコール)セグメント(以下、PEGと略記する場合あり)、ならびにリン酸残基と環状ニトロキシドラジカルをそれぞれペンダント基中にランダムに有するセグメントを含んでなる共重合体に関する。さらには該共重合体の金属表面改質のための、具体的には金属材料を抗血栓材料等の生体適合性を有する材料とするための、使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料は現在医療の分野で広く用いられている。例えばステントにはステンレスが用いられており、人工心臓にはジョイント部分にチタン粒子が用いられている。これらの金属材料は機械的な強度が強く用いやすい反面、血液と接触すると血液が活性化され血栓が生じるという大きな欠点があった。そのために脳梗塞等の重篤な副作用が生じることがあった。これら金属材料の表面を加工し、血液が活性化されて生じる凝固反応を抑制し、抗血栓性を付与する医療用技術の開発は、これまでにも様々な検討が行われているが、根本的な解決には至っていない。
【0003】
本発明者等はこれまでに血液の活性化には活性酸素が重要な働きをしていることに着目し、活性酸素を消去するニトロキシラジカルを有するポリマーを生体に適用し各種炎症等の処置に使用できることや(特許文献1)、また、前記ポリマーにより生体に由来する物質と接触する表面の生体適合性を改質できることも報告した(特許文献2)。さらに、本発明者等は同様なポリマーをポリスチレンビーズにコートすると血液の活性化が抑制されることを見出して報告した(非特許文献1)。また、本発明者等はこれまでにリン酸残基を有するポリマーを用いて金属表面をコーティングする技術の開発も行っている(非特許文献2)。
【0004】
医療技術分野では、例えば、ステント等について抗血栓性を有する新しい材料の開発が望まれており、これまでに抗血栓性を有する薬剤を表面に有する薬剤溶出ステントが開発されている。しかしながらこれらのステントは一部の患者においては従来型のステントよりも血栓が生じやすいとの報告もあり、さらに長期的な効果も未だに確認されていない。そうすると、金属材料の機械的な利点を生かしたまま、抗血栓性を付与することができれば、ステンドだけでなく金属が用いられている他のデバイスにも展開が可能となろう。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】WO2009/133647またはUS2011/0142787 A1
【特許文献2】特開2011-78706号公報
【0006】

【非特許文献1】Acta Biomater.2012 Mar;8(3):1323-9
【非特許文献2】J Control Release.2012 Jun 28;160(3):486-94
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景の下、医療用技術分野で使用できる表面改質剤として、金属材料の機械的な利点をいかしたまま、さらには、血液活性化の抑制能を保持したまま、金属に対して親和性を有するものの開発が必要であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
今回、PEGセグメントと環状ニトロキシドラジカルをペンダント基中に有するセグメントを含んでなるブロック共重合体において、後者のセグメント内の反復単位中の一定の環状ニトロキシドラジカルがランダムにリン酸残基(-PO(-OH)2)に置き換わった形態の共重合体が、前記課題を解決できる表面改質剤として使用できることを見出した。
【0009】
したがって、本発明によれば、下記式(I)で表される共重合体が提供される。
【0010】
JP0006836759B2_000002t.gif
【0011】
上記式中、
Aは、水素原子、非置換または置換C1-C12アルキルを表し、置換されている場合の置換基は、ホルミル基、式R12CH-基を表し、ここで、R1およびR2は独立してC1-C4アルコキシまたはR1とR2は一緒になって-OCH2CH2O-、-O(CH23O-もしくは-O(CH24O-を表し、
Lは、結合であるか、あるいは式
【0012】
JP0006836759B2_000003t.gif
【0013】
-(CH2cS-、-CO(CH2cS-、-(CH2cNH-、-(CH2cCO-、-CO-、-COO-、-CONH-からなる群より選ばれる連結基を表し、
1は-(CH2a-NH-(CH2a-または-(CH2a-O-(CH2a-を介して共有結合した式
【0014】
JP0006836759B2_000004t.gif
【0015】
で表される基から選ばれ、
2はPO(-OH)2を表し、
YはH、SHまたはS-C(=S)-Phを表し、Phは1または2個のメチルまたはメトキシで置換されていてもよいフェニルを表し、
aは、各独立して0~5の整数であり、
bは2~6の整数であり、
cは1~5の整数であり、
mは2~10,000の整数であり、
nは1~360の整数であり、
kは1~480の整数であり、
但し、
n個のX1の中の50%まで、好ましくは20%まで、よりこのましくは10%まで、またはk個のX2の中の50%まで、好ましくは20%まで、より好ましくは10%まで、がそれぞれ、H、ハロゲンまたはヒドロキシであることができるが、最も好ましくはX1及びX2は100%上記の定義のとおりでありかつ、
n個の該当する反復単位中の各単位とk個の該当する反復単位中の各単位は、それぞれランダムに存在する。
【0016】
上記式中のnおよびkの定義において、n+kが5~600の整数であり、n/n+kが0.2~0.8、好ましくは0.4~0.7であり、k/n+kが0.2~0.8、好ましくは0.4~0.6であり、ここで、n及びk個の反復単位は、それぞれ100%が原則として上記X及びXについて定義した基である、ことが好ましい態様の共重合体である。
別の態様の本発明として、前記共重合体を担持する金属材料表面が提供される。
さらに別の態様の本発明として、前記共重合体に由来する塗膜を表面に保持する装置であって、前記表面がステント、人工補助心臓、人工関節、細胞培養装置、細胞解析装置および細胞分離装置またはそれらの部品の金属材料表面から選ばれる、装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に従う前記共重合体は、特に、ヒトの体液、組織または器官と直接もしくは間接的に接触する製品の金属材料表面に皮膜として安定に保持され、例えば、血液活性化等を抑制することができるので、例えば、ステント、人工補助心臓、人工関節、細胞培養装置、細胞解析装置および細胞分離装置またはそれらの部品の金属材料表面に生体適合性を付与する機能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】製造例6で得られた化合物(7)(13-18)をステンレスに対してポリマーコーティングして作製したステンレス表面及び当該コーティング前のステンレス表面(ピラニア洗浄後)のXPSによる表面元素(炭素原子についての)分析結果(C/Cr 割合)を、表すグラフである。
【図2】同XPSによる表面元素(リン原子についての)分析結果(P/Cr 割合)を、表すグラフである。
【図3】化合物(7)(13-18)のポリマーコートステンレス表面の接触角の測定結果を表すグラフである。
【図4】リン酸緩衝生理食塩水下におけるポリマーコートの安定性評価の結果を示すグラフである。
【図5】ポリマーコートしていないステンレスの全血接触試験後の表面(対照)、ならびにポリマーコートしているステンレスの全血接触試験後の表面(比較例を含む)についてSEM測定の結果を表す写真である。
【図6】実施例2及び3のコーティングに基づく、化合物(7)(12-6)(図中、n=12,k=6に相当)及び化合物(7)(41-23)(図中、n=41,k=23に相当する)についてのXPSによる解析結果を表すグラフである。
【発明の詳細な記述】
【0019】
・式(I)で表される共重合体について
本発明に関していうC1-C12アルキルは、直鎖または分岐していてもよい炭素原子1~12のアルキルであって、限定するものでないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ウンデシル、ドデシル等を含む。
【0020】
式(I)における、各変動可能な基、部分等についての定義において、連結基Lは、別に定義しないかぎり、記載された方向性を以って結合される。例えば、方向性のある基-(CH2cS-にあっては、メチレン基の炭素原子がエチレンオキシの酸素原子に結合し、硫黄原子がn個のペンダント基としてX1を有する反復単位またはk個のペンダント基としてX2を有する反復単位のいずれかの単位中の主鎖メチレン基の炭素原子に結合することを意味する。また、上記定義または説明から理解できるように、n個の該当する反復単位中の各単位とk個の該当する反復単位中の各単位は、それぞれランダムに存在する。換言すれば、n個の該当する反復単位中の少なくとも1個またはk個の該当する反復単位中の少なくとも1つのいずれかの単位がLと結合し、それ以外の反復単位中の各単位は、Lに結合したいずれかの単位にそれぞれ1以上がランダムに結合することができる。
本発明に関して結合という場合、別に定義しない限り、共有結合を意味する。かような連結基Lは、前記共重合体の製造上の利点および安定性等を考慮すると、パラキシリレンまたはメタキシリレンであることが好ましい。
【0021】
1をペンダント基中のパラキシリレン部に結合せしめる-(CH2a-NH-(CH2a-または-(CH2a-O-(CH2a-基は、aがいずれも0である-NH-または-O-である基が製造上の観点から好ましいが、これに限定されない。一方、X2はリン酸残基(-PO(-OH)2)である。式(I)で表される共重合体は、これらのリン酸残基を介して金属材料表面に固定されることが想定されている。
【0022】
Yは、H、SHまたはS-C(=S)-Phであって、Phは1または2個のメチル又はメトキシで置換されていてもよいフェニルであるが、Phは非置換であることが好ましい。
【0023】
式(I)のn及びkの定義において、n及びkは複数個が好ましく、より好ましくはそれぞれ4及び3以上である。さらに、当該定義において、n+kが5~600、好ましくは10~500、より好ましくは20~300の整数であり、n/n+kが0.2~0.8であり、k/n+kが0.2~0.8であり、より好ましくは、n/n+kが0.4~0.7であり、k/n+kが0.4~0.6であり、ここで、n及びk個の反復単位は、それぞれ100%が原則として上記X及びXについて定義した基(すなわち、但し書にいう、H、ハロゲン及びヒドロキシ以外)であることが好ましい。加えて、本発明所期の目的である、血液活性化の抑制能を保持したまま、金属に対して高い親和性を付与するために望ましいのは、nが少なくとも6、好ましくは少なくとも8、より好ましくは少なくとも11であり、kが少なくとも3、好ましくは少なくとも6、より好ましくは少なくとも8である。
【0024】
mは、理論上最適な範囲について限定されるものでないが、一般的に、2~10,000、好ましくは20~5,000、より好ましくは20~3,000の整数であることができる。
【0025】
式(I)の共重合体は、限定されるものでないが、下式(P)
【0026】
JP0006836759B2_000005t.gif
【0027】
式中、
A、L、Y、mは上記の定義と同義であり、Xはハロゲン(クロロ、ブロモ、ヨード)であり、qは上記n+kの整数に相当する、
で表される前駆ブロック共重合体からX基をX1およびX2基に転化する方法によって製造できる。
【0028】
式(P)で表されるブロック共重合体の一部は前記特許文献1に記載されているか、若しくは記載されている製造方法によって製造でき、または、後述する製造例に基づいて製造できる。X基からX1及びX2基への転化において、X1及びX2基の転化の順は問わないが、X2基への転化を先行させるのが所望の割合のリン酸残基を含む共重合体を容易に提供できることから好ましい。これらの転化反応は、後述する製造例に記載の方法に準ずることが好ましいが、それ自体公知の条件下で行うことができる。
【0029】
・金属材料について
金属材料は本発明の目的に沿う限り限定されるものでないが、好ましくは、医療用製品、その他の各種試験、研究に用いられる製品または部品用材料であることができる。たとえば、医療用製品とは、診断、検査、治療等の医療行為で用いる製品またはかような行為に使用することを前提とした試験もしくは研究で用いる製品またはそれらの部材もしくは部品を意味し、in vitroまたはin vivoのいずれで用いられるものであってもよい。特に、ヒトの体液、組織または器官と直接もしくは間接的に接触する製品を挙げることができる。このような製品としては、限定されるものでないが、ステント、人工補助心臓、人工関節、細胞培養装置、細胞分離装置、細胞解析装置等を挙げることができる。これらの製品および部品の中、前記接触する表面が金属、例えば、ステンレス、チタン、チタン合金、等であるものを主たる適用対象として意図している。
【0030】
かような表面へ前記共重合体を担持または保持させる方法は、共重合体溶液を調製し、それ自体公知のコーティング方式により実施できる。本発明によれば、いずれかの方式でコートした塗装物または塗膜を溶媒除去、乾燥することにより、一定の剥離抵抗性をもって金属表面に固定し、担持または保持できる。
こうして、本発明に従う共重合体を担持または保持した金属材料表面は、前記共重合体に由来する塗膜が安定に前記表面に固定されており、当該塗膜は、金属表面を生物または生体適合性にする。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の具体例について説明するが、本発明をこれらの例に限定することを意図するものでない。
【0032】
本発明に従う共重合体の好適な製造方法の概要を下記反応スキームに示し、さらに、該反応スキームに沿って各製造工程について具体的に説明する。
【0033】
JP0006836759B2_000006t.gif
【0034】
製造例1: PEG-Cl(2)の合成
500mlナスフラスコにPEG-OH(1)(50g,分子量5000,0.01mol)を加え、110℃の減圧下で24時間乾燥させた。65℃まで冷却した後、窒素置換しながら蒸留テトラヒドロフラン(THF)溶媒(200ml)、n-ブチルリチウム(16mmol,10ml)、α,α-ジクロロ-p-キシレン(DCPX)(25g,0.14mol)を加え、65℃で48時間撹拌した。反応後、冷凍庫で冷やした2-プロパノール(IPA)により再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、上澄み液を除いた。反応物をメタノールに溶かし、再び再沈殿を行った。再沈殿は9回行った。9回目の遠心分離及び上澄み液の除去の後、反応物をデシケータ内で36時間減圧乾燥を行った。減圧乾燥後、標題の化合物(2)を収率80%で得た。
1HNMR(CDCl3,400MHz)
7.35-7.34ppm(q,4H),4.58ppm(s,2H),4.56ppm(s,2H),3.83-3.45ppm(s,474H),3.38ppm(s,3H)
【0035】
製造例2: PEG-CTA(3)の合成
500mlナスフラスコに前記化合物(2)(40g,0.08mol)を加え、110℃の減圧下で一晩乾燥させた。また、もう一方で100mlナスフラスコに窒素置換しながら蒸留THF溶媒(50ml)、二硫化炭素(4ml,0.07mol)、フェニルマグネシウムブロミド(6.7ml,3M,0.02mol)を氷浴下で加え、20分間撹拌させた。そのまま室温で2時間反応させることでグリニャール試薬を調製した。化合物2を40℃まで冷却した後、窒素置換しながら蒸留THF溶媒(200ml)、グリニャール試薬を加え、40℃で48時間反応させた。反応後、冷凍庫で冷やした2-プロパノール(IPA)により再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、上澄み液を除いた。反応物をメタノールに溶かし、再び再沈殿を行った。再沈殿は5回行った。5回目の遠心分離及び上澄み液の除去の後、反応物をデシケータ内で36時間減圧乾燥を行った。減圧乾燥後、標題の化合物(3)を収率95%で得た。
1HNMR(CDCl3,400MHz)
8.00ppm(d,1H),7.98ppm(d,1H),7.54-7.50ppm(t,1H),7.40-7.30ppm(m,6H),4.58ppm(s,2H),4.55ppm(s,2H),3.83-3.45ppm(s,500H),3.38ppm(s,3H)
GPC Mw:5213 Mw/Mn=1.21
【0036】
製造例3: PEG-b-PCMS(4)の合成(13-18)
100mlナスフラスコに製造例2で得られる化合物(3)(4g,0.8mmol)、アゾビスイソブチロニトリル(24mg,0.14mmol)を加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら蒸留トルエン(40ml)、p-クロロメチルスチレン(16.4ml,0.12mol)を加え、60℃で24時間重合反応させた。反応後、ジエチルエーテル600mlで再沈殿を行った。吸引濾過により生成物を分離させ、濾液を捨てた。生成物をアセトンに溶かし、再び再沈殿を行った。再沈殿は3回行った。3回目の濾過の後、ベンゼン15mlに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(4)を収率78%で得た。1HNMR(CDCl3,400MHz)
7.24-6.16ppm(m,152H),4.67-4.27ppm(m,74H),3.83-3.45ppm(s,470H),3.38ppm(s,3H),2.40-1.06ppm(m,126H)
GPC Mw=12465 Mw/Mn=1.35
【0037】
製造例4: PEG-b-PCMS-r-PDEVBP(5)の合成(13-18)
100mlナスフラスコに製造例3で得られる化合物(4)(1.1g,0.1mmol)を加え、三方活栓を取り付け、蒸留THF溶媒をナスフラスコに10ml加えた。もう一方の100mlナスフラスコに55%水素化ナトリウム(144mg,3.3mmol)、少量のヨウ化ナトリウムを加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら、蒸留THF溶媒を16ml加え、続いて亜リン酸ジエチル(0.43ml,3.3mmol)を加えた。さらに、この溶液を化合物4に氷浴下で滴下し、室温で15時間反応させた。反応後、エバポレーターにて溶媒を除去した。生成物をメタノールに溶解させ、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。透析後、エバポレーターにて溶媒を除去した。生成物をベンゼン5mlに溶解させ凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(5)を収率96%で得た。
1HNMR(CDCl3,400MHz)
7.24-6.16ppm(m,137H),4.67-4.24ppm(m,26H), 4.21-3.79ppm(m,80H),3.78-3.45ppm(s,423H), 3.38ppm(s,3H),3.23-2.86ppm(s,36H),2.37-0.94ppm(m,232H)
31PNMR(MeOD,600MHz,standard:85% phosphoric acid)26.84ppm
【0038】
製造例5: PEG-b-PCMS-r-PVBP(6)の合成(13-18)
100mlの2口ナスフラスコに製造例4で得られる化合物(5)(1g,0.08mmol)加え、三方活栓と還流管を取り付けた。窒素置換しながらジクロロメタン(12ml)、トリメチルシリルブロミド(1.07ml,8.2mmol)を加え、還流させながら45℃で3時間反応させた。反応後、エバポレーターで溶媒を除去した。過剰のメタノールに反応物を溶解させ、室温で24時間反応させた。反応後、エバポレーターで溶媒を除去した。反応物をメタノールに溶解させ、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。透析後、エバポレーターにて溶媒を除去した。反応物をベンゼン5mlに溶解させ凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(6)を収率93%で得た。
1HNMR(D2O,400MHz)
7.52-5.63ppm(br,160H),4.52p-4.01ppm(br, 22H),3.73-3.27ppm(m,594H),3.83-3.20ppm(s,3H),2.90-2.34ppm(br,36H),2.26-0.54ppm(br,104H)
31PNMR(MeOD,600MHz,standard:85% phosphoric acid)23.99ppm
【0039】
製造例6: PEG-b-PMNT-r-PVBP(7)の合成(13-18)
50mlナスフラスコに製造例5で得られる化合物(6)(490mg,0.04mmol)を加え、三方活栓を取り付け、ジメチルスルホキシドを5ml加えた。また、もう一方の50mlナスフラスコに4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4-aminoTEMPO)(445mg,2.6mmol)を加え、三方活栓を取り付け、窒素置換しながら、ジメチルスルホキシドを5ml加えた。4-aminoTEMPO溶液を化合物6に滴下し、室温で24時間反応させた。反応後、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。精製後、エバポレーターで溶媒を除去した。生成物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(7)を収率98%で得た。
1HNMR及び電子スピン共鳴(ESR)測定結果より化合物7における、4-aminoTEMPO化単位とリン酸化単位の数(上式中のn及びkに該当する)はそれぞれ13及び18であった。
1HNMR(D2O,phenylhydrazine,400MHz)
3.69-3.23ppm(m,530H),3.18ppm(s,3H),2.99-2.40ppm(br,34H),1.78-1.59ppm(s,37H),1.09-0.86ppm(s,114H)
【0040】
製造例7: PEG-b-PCMS(4)の合成(12-6)
100mlナスフラスコに製造例2で得られる化合物(3)(4.5g)、アゾビスイソブチロニトリル(40mg)を加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら蒸留トルエン(100ml)、p-クロロメチルスチレン(10ml)を加え、60℃で24時間重合反応させた。反応後、ジエチルエーテル600mlで再沈殿を行った。吸引濾過により生成物を分離させ、濾液を捨てた。生成物をアセトンに溶かし、再びイソプロパノール及び次エチルエーテルで再沈殿を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(4)(6.25g)を得た。
【0041】
製造例8: PEG-b-PCMS-r-PDEVBP(5)(12-6)の合成
100mlナスフラスコに製造例7で得られる化合物(4)(830mg)を加え、三方活栓を取り付け、蒸留THF溶媒をナスフラスコに8ml加えた。もう一方の100mlナスフラスコに55%水素化ナトリウム(43mg)、少量のヨウ化ナトリウムを加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら、蒸留THF溶媒を3ml加え、続いて亜リン酸ジエチル(0.13ml)を加えた。さらに、この溶液を化合物4に氷浴下で滴下し、室温で15時間反応させた。反応後、エバポレーターにて溶媒を除去した。生成物をメタノールに溶解させ、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。透析後、エバポレーターにて溶媒を除去した。生成物をベンゼン5mlに溶解させ凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(5)を収率86%で得た。
【0042】
製造例9: PEG-b-PCMS-r-PVBP(6)の合成(12-6)
100mlの2口ナスフラスコに製造例8で得られる化合物(5)(0.086mmol)を加え、三方活栓と還流管を取り付けた。窒素置換しながらジクロロメタン(10ml)、トリメチルシリルブロミド(300μl,2.3mmol)を加え、還流させながら45℃で3時間反応させた。反応後、エバポレーターで溶媒を除去した。過剰のメタノールに反応物を溶解させ、室温で24時間反応させた。反応後、エバポレーターで溶媒を除去した。反応物をメタノールに溶解させ、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。透析後、エバポレーターにて溶媒を除去した。反応物をベンゼン5mlに溶解させ凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(6)を収率65%で得た。
【0043】
製造例10: PEG-b-PMNT-r-PVBP(7)の合成(12-6)
50mlナスフラスコに製造例9で得られる化合物(6)(500mg)を加え、三方活栓を取り付け、ジメチルスルホキシドを5ml加えた。また、もう一方の50mlナスフラスコに4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4-aminoTEMPO)(616mg)を加え、三方活栓を取り付け、窒素置換しながら、ジメチルスルホキシドを5ml加えた。4-aminoTEMPO溶液を化合物6に滴下し、室温で24時間反応させた。反応後、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。精製後、エバポレーターで溶媒を除去した。生成物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(7)を収率91%で得た。HNMR及び電子スピン共鳴(ESR)測定結果より化合物(7)における、4-aminoTEMPO化単位とリン酸化単位の数(上式中のn及びkに該当する)は12及び6であった。
【0044】
製造例11: PEG-b-PCMS(4)の合成(41-23)
100mlナスフラスコに製造例2で得られる化合物(3)(4.5g)、アゾビスイソブチロニトリル(40mg)を加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら蒸留トルエン(100ml)、p-クロロメチルスチレン(25ml)を加え、60℃で24時間重合反応させた。反応後、ジエチルエーテル600mlで再沈殿を行った。吸引濾過により生成物を分離させ、濾液を捨てた。生成物をアセトンに溶かし、再びイソプロパノール及び次エチルエーテルで再沈殿を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(4)を収率20%で得た。
【0045】
製造例12: PEG-b-PCMS-r-PDEVBP(5)(41-23)の合成
100mlナスフラスコに製造例11で得られる化合物(4)(710mg)を加え、三方活栓を取り付け、蒸留THF溶媒をナスフラスコに10ml加えた。もう一方の100mlナスフラスコに55%水素化ナトリウム(144mg)、少量のヨウ化ナトリウムを加え、三方活栓を取り付けた。窒素置換しながら、蒸留THF溶媒を16ml加え、続いて亜リン酸ジエチル(0.43ml)を加えた。さらに、この溶液を化合物(4)に氷浴下で滴下し、室温で15時間反応させた。反応後、エバポレーターにて溶媒を除去した。生成物をメタノールに溶解させ、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。透析後、エバポレーターにて溶媒を除去した。生成物をベンゼン5mlに溶解させ凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(5)を収率98%で得た。
【0046】
製造例13: PEG-b-PCMS-r-PVBP(6)の合成(41-23)
100mlの2口ナスフラスコに製造例12で得られる化合物(5)(0.042mmol)を加え、三方活栓と還流管を取り付けた。窒素置換しながらジクロロメタン(5ml)、トリメチルシリルブロミド(650μl,5.1mmol)を加え、還流させながら45℃で3時間反応させた。反応後、エバポレーターで溶媒を除去した。過剰のメタノールに反応物を溶解させ、室温で24時間反応させた。反応後、エバポレーターで溶媒を除去した。反応物をメタノールに溶解させ、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。透析後、エバポレーターにて溶媒を除去した。反応物をベンゼン5mlに溶解させ凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(6)を収率90%で得た。
【0047】
製造例14: PEG-b-PMNT-r-PVBP(7)の合成(41-23)
50mlナスフラスコに製造例13で得られる化合物(6)(0.02mmol)を加え、三方活栓を取り付け、ジメチルスルホキシドを5ml加えた。また、もう一方の50mlナスフラスコに4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(4-aminoTEMPO)(1.4g)を加え、三方活栓を取り付け、窒素置換しながら、ジメチルスルホキシドを5ml加えた。4-aminoTEMPO溶液を化合物(6)に滴下し、室温で24時間反応させた。反応後、MWCO3500の透析膜を用いてメタノール透析を48時間行うことで精製した。精製後、エバポレーターで溶媒を除去した。生成物をベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、標題の化合物(7)を収率98%で得た。HNMR及び電子スピン共鳴(ESR)測定結果より化合物(7)における、4-aminoTEMPO化単位とリン酸化単位の数(上式中のn及びkに該当する)は41及び23であった。
【0048】
実施例1:コーティング
(1)ステンレスに対するポリマーコーティング
厚さ1mmのステンレス(SUS430)を1cm角に切り出し、蒸留水、メタノール、アセトンで15分間超音波洗浄を行った。洗浄後、ステンレス片をピラニア溶液(硫酸:過酸化水素=3:1)に60℃で10分間浸すことで、表面の洗浄及びヒドロキシル化を行った。蒸留水で洗浄後、ステンレス片をすぐに化合物(7)(13-18)のメタノール溶液(15mg/ml)に24時間浸し、ポリマーのコーティングを行った。コーティング後、ステンレス片をメタノールで洗浄し、窒素フローで乾燥させ、ポリマーコートステンレスを得た。
【0049】
(2)電子分光分析(XPS)によるコーティング表面の元素分析
この試験は、X線光電子分光分析(XPS)(JEOL Ltd. JPS-9010TR)を用いて、上記の方法で得られたポリマーコートステンレス表面の元素分析を行ったものである。
XPSの測定では、アルミニウム(AlKα,hν=1468.6eV)を線源として用い、C・O・Fe・Cr・N・P各元素についてスペクトルを得た。これらのスペックトルから、ポリマーコートステンレス表面の炭素原子の割合(C/Cr)がポリマーコート前と比較して上昇していることが分かった。また、ポリマー固有の元素であるリン元素に関しても同様であった。このことから、ステンレス表面にポリマーがコーティングされたことが分かった。XPSによる表面元素分析結果を、それぞれ図1および2に示す。図から、それぞれ、多量の炭素およびリンがポリマーコートした表面から検出されている。
【0050】
(3)接触角測定による表面の濡れ性評価
この試験は、接触角計(協和界面科学CA-X)を用いて、上記の方法で得られたポリマーコートステンレス表面の濡れ性を評価したものである。接触角の測定では、液滴量2μlの蒸留水を液滴化後、60秒経過時点における接触角を測定して、水に対する静的接触角とした。測定の結果を図3に示す。図から、ピラニア洗浄したステンレスでは、表面がヒドロキシル化され親水性を得たことで、接触角の低下が見られた。一方、ポリマーコート後では接触角が大きく上昇していた。これはポリマーによって表面のヒドロキシル基が覆われコーティング前と比べて親水性が低下したためであると考えられる。このことからも、ステンレス表面にポリマーがコーティングされたことが示唆された。
【0051】
(4)リン酸緩衝生理食塩水下におけるポリマー安定性評価
この試験は、上記の方法で得られたポリマーコートステンレスをリン酸緩衝生理食塩水に浸漬させることでポリマーの安定性を評価したものである。ポリマーコートステンレスをPBS(150mM,15ml)中に37℃で任意の時間浸漬させた。その後、ポリマーコートステンレスを回収し、蒸留水で洗浄、窒素フローにより乾燥させた後、XPSにより表面元素分析を行った。その結果、図4に示す。図からリン酸残基を有するポリマーPEG-b-PMNT-r-PVBP(7)または化合物(7)(13-18)をコーティングしたステンレス表面(SS-PEG-b-PMNT-r-PVBP)は4週間PBSに浸漬した後でも炭素原子の割合(C/Cr)に変化は見られなかったことから安定にポリマーがコーティングされていることがわかる。一方で、リン酸残基を持たないPEG-b-PMNT(化合物(7)のk=0のポリマーに相当する)及びPEG-b-PCMS(化合物(6)のk=0のポリマーに相当する)は炭素原子の割合(C/Cr)が低いことからコーティングされていないことがわかる。このことから、ポリマーの有するリン酸基とステンレス表面が安定的に化学結合していることが分かる。なお、Pi-SSは、ステンレス片表面をピラニア洗浄した表面についてのデータである。
【0052】
(5)ポリマーコートステンレスの全血接触試験
この試験は、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子 JSM-5510SEM)を用いて、上記の方法で得られたポリマーコートステンレスの全血接触後の表面を観察したものである。ポリマーコートステンレス片及びコントロールとしてピラニア洗浄したステンレス片を1.5mlチューブへ入れ、予めヘパリンを血液に対し5U/mlとなるよう加えた。Balb/cマウスから全血をチューブに採取し、37℃で3時間インキュベート後、PBSで3回洗浄した。その後、ステンレス表面を2%グルタルアルデヒドに一晩浸潤させることで固定化を行い、最後にエタノール(50%,70%,100%)で脱水、窒素フローにより乾燥させることで、SEMサンプルの調製を行った。SEMの測定では、サンプルを予めスパッタ装置(日本電子 JFC-1600オートファインコーター)にて金をスパッタリングした。その結果、ポリマーコート前のステンレス表面では血塊や血液成分の付着が見られた。
【0053】
PEG-b-PVBP(化合物7のn=0に相当する)をコートしたステンレス表面(それぞれ、比較例)においても血塊や血液成分の付着が見られた。これらの結果はこれらのポリマーでは十分な血液活性化及びそれに伴う凝固反応を抑制することができないことを示している。これに対し、リン酸残基とニトロキシラジカルを共に有するPEG-b-PMNT-r-PVBP(7)(13-18)をコーティングしたステンレス表面では血球成分の付着は見られなかった。このことから、ステンレスに血液適合性を付与するにはPEG-b-PMNT-r-PVBPが適していることが分かった。上記SEM測定の結果を表す写真を図5に示す。
【0054】
実施例2及び3:コーティング
実施例1の(1)において、化合物(7)(13-18)の代わりに、製造例10で得られる化合物(7)(12-6)または製造例14で得られる化合物(7)(41-23)を用いたこと以外そこに記載された条件でコーティング処理し、次いで同(2)に記載に従って、各コーティング表面のXPSによる元素分析(C/Cr)を行った。その結果を図6に示す。
図から、幅広いリン酸化単位の数(k)において、本発明に従う共重合体はステンレス表面に安定に担持または保持されることが確認できる。図中、黒塗りカラムは化合物(7)(12-6)(n=12,k=6に相当)のコーティング表面の、白塗りカラムは化合物(7)(41-23)(n=41,k=23に相当)のコーティング表面のデータに基づき、斜線カラムはポリマーコートなしのピラニア洗浄後のステンレス表面のデータに基づく。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5