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明細書 :胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年8月2日(2018.8.2)
発明の名称または考案の名称 胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド及びその使用
国際特許分類 C07K   7/64        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
A61K  38/12        (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
A61K  51/08        (2006.01)
A61K  47/61        (2017.01)
A61K  47/60        (2017.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
G01N  33/60        (2006.01)
G01N  33/58        (2006.01)
FI C07K 7/64
C12N 15/00 ZNAA
A61K 38/12
A61K 49/00
A61K 51/08 200
A61K 47/61
A61K 47/60
A61P 1/16
A61P 35/00
G01N 33/60 Z
G01N 33/58 Z
国際予備審査の請求
全頁数 32
出願番号 特願2017-543480 (P2017-543480)
国際出願番号 PCT/JP2016/078607
国際公開番号 WO2017/057450
国際出願日 平成28年9月28日(2016.9.28)
国際公開日 平成29年4月6日(2017.4.6)
優先権出願番号 2015196227
優先日 平成27年10月1日(2015.10.1)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA
発明者または考案者 【氏名】近藤 英作
【氏名】齋藤 憲
出願人 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
審査請求 未請求
テーマコード 2G045
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4H045
Fターム 2G045AA24
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2G045BB20
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2G045CB01
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2G045CB17
2G045CB26
2G045DA36
2G045FA11
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2G045FA19
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2G045GC15
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4H045BA57
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4H045FA10
4H045FA74
要約 本発明は、胆道癌に特異的な集積性を有する新規ペプチドを提供する。本発明は、以下の(a)又は(b)のペプチドである。(a)配列番号1で表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、(b)配列番号1で表される配列と同一性が60%以上である配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a)配列番号1で表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1で表される配列と同一性が60%以上である配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド
【請求項2】
環状構造である請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
さらに、N末端及びC末端にシステイン残基を備える請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
D体アミノ酸に置換したRetro-Inverso型である請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチドをコードすることを特徴とする核酸。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチドを含むことを特徴とするキャリア。
【請求項8】
さらに、標識物質又は修飾物質を備える請求項7に記載のキャリア。
【請求項9】
前記標識物質が、安定同位体、放射性同位体又は蛍光物質である請求項8に記載のキャリア。
【請求項10】
前記修飾物質が、糖鎖又はポリエチレングリコールである請求項8又は9に記載のキャリア。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載のキャリアと生理活性物質とを備えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
胆道癌治療用又は診断用である、請求項11に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド及びその使用に関する。
本願は、2015年10月1日に、日本に出願された特願2015-196227号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
胆道癌は、胆管癌、胆嚢癌、及び十二指腸乳頭部癌からなる癌である。日本における胆管癌及び胆嚢癌の死亡数は、2013年では男性約8,900人、女性約9,300人である。胆管癌及び胆嚢癌の罹患数(全国推計値)は、2010年では、男性約11,300例及び女性約11,300例で、それぞれ癌罹患数全体の2%及び3%を占める。また、胆管癌及び胆嚢癌患者の内、外科手術が適用可能なのは全体の約20%であり、さらに、外科手術後から5年後の生存率は約30%である。
胆道癌は、早期には自覚症状がほとんどなく、黄疸、白色便、黄疸尿、腹痛等の症状が現れた時点ではある程度進行していることがあり、早期に発見することが治療において重要である。なお、本明細書における胆道癌とは病理組織学的に胆管上皮由来の腺癌、腺扁平上皮癌、肝内胆管細胞癌を包括する。
【0003】
胆道癌(特に、肝内又は肝外胆管上皮由来癌)の検査及び診断方法は、血液生化学的検査、腹部超音波検査、腹部造影CT検査、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP:endoscopic retrograde cholangiopancreatography)、FDG-PET(Fluorodeoxy glucose-Positron Emission Tomography)検査等が挙げられる。
【0004】
ところで、ペプチドをバイオマテリアルとして活用した医療分野での動向において、Tat、penetratin、polyarginine等の細胞膜透過性(細胞吸収性)ペプチドが着目されている。
しかしながら、これらのペプチドは、正常細胞又は正常組織と腫瘍細胞又は腫瘍組織との区別なく広汎且つ非選択的に吸収されるため、標的選択的な薬剤輸送を要求する悪性腫瘍の治療DDS(Drag Delivery System)ツールに応用することは、重篤な副作用を惹起する点で利用困難である。特に、世界的に実験系で汎用されているTat等の細胞膜透過性(細胞吸収性)ペプチドは、肝臓に集積を引き起こす性質が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
これに対して、cyclic RGDは、唯一医薬化されているペプチドである。cyclic RGDは、新生血管あるいは既存血管中の内皮細胞(及び一部の腫瘍細胞)で高発現することが報告されているαβインテグリンを標的としており、血管透過性亢進にその作用点を持っているため、単独でなく他の医薬との同時併用の形でイメージング剤やDDS剤として応用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第5721140号公報
【0006】

【非特許文献1】Vives E., et al., A Truncated HIV-1 Tat Protein Basic Domain Rapidly Translocates through the Plasma Membrane and Accumulates in the Cell Nucleus, J. Biol. Chem., 272, 16010-16017, 1997.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の胆道癌(特に、肝内又は肝外胆管上皮由来癌)の検査及び診断方法では、検査結果の判断基準が異常陰影の判定である。陰影判定には病変の拡がりを含めて精度上の限界が存在する。
また、特許文献1に記載のcyclic RGDは、腫瘍細胞及び腫瘍組織そのものを標的とするペプチドではないため、がんを直接捕捉する性能を持つペプチドという点で新規であり、制がん医療技術の面で未だ改良の余地があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、胆道癌細胞及び組織に直接作用しに特異的な集積性を有する新規ペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a)配列番号1で表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1で表される配列と同一性が60%以上である配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド
[2]環状構造である、[1]に記載のペプチド。
[3]さらに、N末端及びC末端にシステイン残基を備える[1]又は[2]に記載のペプチド。
[4]D体アミノ酸に置換したRetro-Inverso型である[1]~[3]のいずれか一つに記載のペプチド。
[5][1]~[4]のいずれか一つに記載のペプチドをコードすることを特徴とする核酸。
[6][5]に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。
[7][1]~[4]のいずれか一つに記載のペプチドを含むことを特徴とするキャリア。
[8]さらに、標識物質又は修飾物質を備える[7]に記載のキャリア。
[9]前記標識物質が、安定同位体、放射性同位体又は蛍光物質である[8]に記載のキャリア。
[10]前記修飾物質が、糖鎖又はポリエチレングリコールである[8]又は[9]に記載のキャリア。
[11][7]~[10]のいずれか一つに記載のキャリアと生理活性物質とを備えることを特徴とする医薬組成物。
[12]胆道癌治療用又は診断用である[11]に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、胆道癌に特異的な集積性を有する新規ペプチドを提供することできる。また、胆道癌を簡便、高感度且つ選択的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験例1における各種ペプチドを添加した各種胆道癌細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図2A】試験例2におけるPeptide3及びクロルプロマジンを添加したM213細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図2B】試験例2におけるPeptide3及びダイナソーを添加したM213細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図2C】試験例2におけるPeptide3及びEIPAを添加したM213細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図3A】試験例3におけるPeptide3(L体)を添加し、異なる血清濃度で培養したM214細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図3B】試験例3におけるPeptide4(D体)を添加し、異なる血清濃度で培養したM214細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図4】試験例4におけるPeptide3を添加した各種胆道癌細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図5】試験例5におけるPeptide3を添加した各種肝癌細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図6】試験例6におけるPeptide3を添加した各種癌細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図7】試験例7におけるPeptide3を添加した正常な各種組織由来の細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図8】試験例8におけるPeptide3を添加し、共培養した胆管癌細胞及び胆管由来の正常な細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図9】試験例9におけるM214細胞を移植し、Peptide3(L体)を腹腔内投与したマウスの各種組織の明視野及び暗視野の蛍光顕微鏡写真である。
【図10】試験例10におけるM156細胞を植えた肝臓を移植し、Peptide3(L体)を腹腔内投与したマウスの各種組織の明視野及び暗視野の蛍光顕微鏡写真である。
【図11】試験例11におけるPeptide4(D体)を添加した各種細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図12】試験例12におけるTKKK細胞を移植し、Peptide3(L体)又はPeptide4(D体)を腹腔内投与したマウスの各種組織の明視野及び暗視野の蛍光顕微鏡写真である。
【図13A】試験例12におけるTKKK細胞を移植し、Peptide3(L体)を腹腔内投与したマウスの各種組織での蛍光強度を示すグラフである。
【図13B】試験例12におけるTKKK細胞を移植し、Peptide4(D体)を腹腔内投与したマウスの各種組織での蛍光強度を示すグラフである。
【図14】試験例12におけるTKKK細胞を移植し、Peptide3(L体)又はPeptide4(D体)を腹腔内投与したマウスの各種組織での蛍光強度を示すグラフである。
【図15】試験例13におけるM156細胞を移植し、Peptide4(D体)を腹腔内投与したマウスの各種組織の明視野及び暗視野の蛍光顕微鏡写真である。
【図16】試験例14におけるPeptide3を添加した胆管癌患者の腹水に含まれる胆管癌細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド]
一実施形態において、本発明は、以下の(a)又は(b)のペプチドを提供する。
(a)配列番号1で表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)配列番号1で表される配列と同一性が60%以上である配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド。

【0013】
本実施形態のペプチドは、胆道癌に特異的な集積性を有する新規のペプチドである。

【0014】
本発明者らは、in vitro virus(IVV)法により、胆道癌に特異的な集積性を有する新規ペプチドを見出し、本発明を完成するに至った。
IVV法では、mRNAの3’末端にPEG(ポリエチレングリコール)スペーサーを介して抗生物質の一種のピューロマイシンを結合し、それを鋳型として無細胞翻訳反応を行うことにより、タンパク質とmRNAとがピューロマイシンを介して共有結合した単純なmRNA-タンパク質連結分子IVVが構築される。本発明者らは、IVVを独自に作製することにより、IVVライブラリーを構築した。このIVVライブラリーの中からベイト(餌)と結合するタンパク質を含むIVVをin vitroで釣り上げた後、そこに連結しているmRNAを逆転写反応し、PCRで増幅し、塩基配列を解読することによって、相互作用するタンパク質群を、ごく微量(質量分析法の千倍以上の感度)で同定できる。

【0015】
本実施形態のペプチドは、下記(a)のペプチドを含む。
(a)配列番号1で表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド。

【0016】
上記(a)における配列番号1で表されるアミノ酸配列は、下記のアミノ酸配列で表される配列である。
LVXGARLVVR (配列番号1)
[上記の配列番号1で表されるアミノ酸配列において、Xは、イソロイシン残基(I)、アラニン残基(A)、アルギニン残基(R)、リシン残基(K)又はヒスチジン残基(H)を表す。]

【0017】
上記(a)のペプチドは、胆道癌に特異的な集積性を有する。また、本実施形態のペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列のみからなるペプチドであっても、胆道癌に特異的な集積性を有する。

【0018】
本明細書において、「胆道癌」とは、胆管癌、胆嚢癌及び十二指腸乳頭部癌胆管癌からなる癌を意味する。また、胆管癌とは、胆管の上皮から発生する悪性腫瘍を意味し、その発生した胆管の部位により、肝外胆管がんである肝門部領域胆管がん及び遠位胆管がん、並びに、肝内胆管がん(胆管細胞癌)に分けることができる。胆嚢癌とは、胆嚢と胆嚢管から発生する悪性腫瘍を意味する。十二指腸乳頭部は、乳頭部胆管、乳頭部膵管、共通管部、大十二指腸乳頭から構成されており、十二指腸乳頭部癌とは、上述の部位に発生した癌を意味する。また、病理組織学的分類では、腺癌、腺扁平上皮癌、肝内胆管細胞癌を指す。

【0019】
本明細書において、「胆道癌に特異的な集積性」とは、生体内正常組織及び他の系統の腫瘍細胞と比較して、胆道癌細胞内に高度に吸収され、集積する性質を意味する。後述の実施例において示すように、本実施形態のペプチドはダイナミンによるクラスリン依存性のエンドサイトーシスにより胆道癌細胞内に吸収されていると推察される。

【0020】
配列番号1で表されるアミノ酸配列において、Xは、親水性を有するアミノ酸残基であることが好ましく、アルギニン残基(R)、リシン残基(K)又はヒスチジン残基(H)であることがより好ましく、毒性の観点から、アルギニン残基(R)であることがさらに好ましい。

【0021】
上記(a)における配列番号1で表されるアミノ酸配列のうち、より具体的には、下記配列番号2で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
LVRGARLVVR (配列番号2)

【0022】
本実施形態のペプチドは、上記(a)のペプチドと機能的に同等なペプチドとして、下記(b)のペプチドを含む。
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列と同一性が60%以上であるアミノ酸配列からなり、且つ、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチド。

【0023】
上記(a)のペプチドと機能的に同等であるためには60%以上の同一性を有する。係る同一性としては、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
さらに、前記(b)のペプチドは、胆道癌に特異的な集積性を有する。

【0024】
ここで、基準アミノ酸配列に対する、対象アミノ酸配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列をアラインメントする。ここで、各アミノ酸配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列において、一致したアミノ酸の数を算出し、下記式(1)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
「配列同一性(%)」 = [一致したアミノ酸の数]/[対象アミノ酸配列のアミノ酸の総数]×100 (1)

【0025】
上記(a)又は(b)のペプチドは、環状構造であることが好ましい。環状構造であることにより、胆道癌細胞内にのみ吸収されやすくなる。また、上記(a)又は(b)のペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、又はこれらの組み合わせからなるものであってもよく、D体アミノ酸に置換したRetro-Inverso型であることが好ましい。
Retro-Inverso型であることにより、細胞内の酵素による分解を受けにくくなる。L-アミノ酸のみから構成される上記(a)又は(b)のペプチドの半減期が3~6時間であるのに対し、Retro-Inverso型であることにより、半減期を8~12時間まで長くすることできる。
L-アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり、D-アミノ酸は、L-アミノ酸残基のキラリティーが反転しているものである。また、胆道癌に特異的な集積性を高めるために、又は他の物性を最適化するために化学的修飾を受けていてもよい。

【0026】
上記(a)又は(b)のペプチドは、さらに、N末端及びC末端にシステイン残基を備えることが好ましい。具体的には、下記配列番号3で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
CLVRGARLVVRC (配列番号3)
本実施形態のペプチドは、N末端及びC末端にシステイン残基を備えることで、システイン残基が有するチオール基同士のジスルフィド結合を利用して環状化形態をとることができる。

【0027】
[ペプチドをコードする核酸]
一実施形態において、本発明は、上述したペプチドをコードする核酸を提供する。

【0028】
本実施形態の核酸によれば、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチドを得ることができる。

【0029】
上記のペプチドをコードする核酸としては、例えば、配列番号4に記載の塩基配列からなる核酸、又は、配列番号4に記載の塩基配列と80%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上の同一性を有し、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチドの構成成分となる各アミノ酸をコードする組み合わせの塩基配列のいかなるものも含めた核酸等が挙げられる。なお、配列番号4に示す塩基配列は、上記の配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする核酸の塩基配列である。

【0030】
ここで、基準塩基配列に対する、対照塩基配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準塩基配列及び対象塩基配列をアラインメントする。ここで、各塩基配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準塩基配列及び対象塩基配列において、一致した塩基の塩基数を算出し、下記式(2)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
「配列同一性(%)」 = [一致した塩基数]/[対象塩基配列の総塩基数]×100 (2)

【0031】
[ペプチドをコードする核酸を含むベクター]
一実施形態において、本発明は、上述した核酸を含むベクターを提供する。

【0032】
本実施形態のベクターによれば、胆道癌に特異的な集積性を有するペプチドを得ることができる。

【0033】
本実施形態のベクターは、発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては特に限定されず、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のプラスミド;pSH19、pSH15等の酵母由来プラスミド;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。

【0034】
上述の発現ベクターにおいて、上述のペプチド発現用プロモーターとしては特に限定されず、例えば、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-tkプロモーター等の動物細胞を宿主とした発現用のプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、REF(rubber elongation factor)プロモーター等の植物細胞を宿主とした発現用のプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等の昆虫細胞を宿主とした発現用のプロモーター等を使用することができる。これらプロモーターは、上述のペプチドを発現する宿主に応じて、適宜選択することができる。

【0035】
上述の発現ベクターは、さらに、マルチクローニングサイト、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点等を有していてもよい。

【0036】
[キャリア]
一実施形態において、本発明は、上述したペプチドを含むキャリアを提供する。

【0037】
本実施形態のキャリアによれば、目的物質を胆道癌まで簡便且つ効率よく運搬することができる。

【0038】
本実施形態のキャリアは、さらに、標識物質又は修飾物質を備えることが好ましい。また、本実施形態のキャリアは、標識物質及び修飾物質両方を備えていてもよい。標識物質又は修飾物質は、上述のペプチドと、直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていてよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。

【0039】
標識物質としては、例えば安定同位体、放射性同位体、蛍光物質、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)用核種、単一光子放射断層撮影(Single photon emission computed tomography:SPECT)用核種、核磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging:MRI)造影剤、コンピューター断層撮影法(Computed Tomography:CT)造影剤、磁性体等が挙げられる。中でも、安定同位体、放射性同位体又は蛍光物質が好ましい。上記標識物質を備えることで、目的物質が胆道癌に運搬されたか否かを簡便且つ高感度に確かめることができる。

【0040】
安定同位体としては、例えば13C、15N、H、17O、18Oが挙げられる。放射性同位体としては、例えばH、14C、13N、32P、33P、35Sが挙げられる。標識物質が安定同位体又は放射性同位体である場合、安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸を用いて、上述のペプチドを作製してもよい。安定同位体又は放射性同位体で標識されるアミノ酸としては、20種類のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、バリン、トリプトファン、システイン、アスパラギン、グルタミン)であって、上述のペプチドに含まれるアミノ酸であれば特に限定されない。また、アミノ酸はL体であってもD体であってもよく、必要に応じて適宜選択することができる。

【0041】
安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の存在する系で発現させることにより調製することができる。安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の存在する系としては、例えば安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の存在する無細胞ペプチド合成系や生細胞ペプチド合成系等を挙げることができる。すなわち、無細胞ペプチド合成系において安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸に加えて安定同位体非標識アミノ酸又は放射性同位体非標識アミノ酸を材料としてペプチドを合成させることや、生細胞ペプチド合成系において、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターで形質転換した細胞を安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸存在下で培養することにより、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターから安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドを調製することができる。

【0042】
無細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの発現は、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターや上記の安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の他に、安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの合成のために必要な安定同位体非標識アミノ酸又は放射性同位体非標識アミノ酸、無細胞ペプチド合成用細胞抽出液、エネルギー源(ATP、GTP、クレアチンホスフェート等の高エネルギーリン酸結合含有物)等を用いて行うことができる。温度、時間等の反応条件は、適宜最適な条件を選択して行うことができ、例えば温度は20~40℃、好ましくは23~37℃であり、また反応時間は1~24時間、好ましくは10~20時間である。

【0043】
本明細書において、「無細胞ペプチド合成用細胞抽出液」とは、リボソーム、tRNA等のタンパク質合成に関与する翻訳系、又は、転写系及び翻訳系に必要な成分を含む植物細胞、動物細胞、真菌細胞、細菌細胞からの抽出液を意味する。具体的には、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網赤血球、マウスL-細胞、エールリッヒ腹水癌細胞、HeLa細胞、CHO細胞、出芽酵母等の細胞抽出液を挙げることができる。かかる細胞抽出液の調製は、例えばPratt,J.M.ら、Transcription and trasnlation-a practical approach(1984)、pp.179-209に記載の方法に従い、上記の細胞をフレンチプレス、グラスビーズ、超音波破砕装置等を用いて破砕処理し、タンパク質成分やリボソームを可溶化するための数種類の塩を含有する緩衝液を加えてホモジナイズし、遠心分離にて不溶成分を沈殿させることによって行うことができる。

【0044】
また、無細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの発現は、例えば、小麦胚芽抽出液を備えたPremium Expression Kit(セルフリーサイエンス社製)、大腸菌抽出液を備えたRTS 100,E.coli HY Kit(Roche Applied Science社製)、無細胞くんQuick(大陽日酸社製)等市販のキットを適宜使用して行ってもよい。発現させた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドが不溶性の場合、グアニジン塩酸塩、尿素等のタンパク質変性剤を用いて適宜可溶化させてもよい。安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、さらに分画遠心法、ショ糖密度勾配遠心法等による分画処理や、アフィニティーカラム、イオン交換クロマトグラフィー等を用いた精製処理により調製することもできる。

【0045】
生細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの発現は、生細胞に上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを導入し、かかる生細胞を栄養分や抗生物質等の他、上記の安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸、安定同位体標識ペプチド又は放射性同位体標識ペプチドの合成のために必要な安定同位体非標識アミノ酸又は放射性同位体非標識アミノ酸等を含む培養液中で培養することにより行うことができる。ここで生細胞としては、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを発現させることができる生細胞であれば特に限定されず、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等の生細胞を挙げることができ、簡便性や費用対効果の面から考慮すると、大腸菌が好ましい。上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターの発現は、遺伝子組換え技術により、それぞれの生細胞で発現できるように設計された発現ベクターへ組み込み、かかる発現ベクターを生細胞へ導入することにより行うことができる。また上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターの生細胞への導入は、使用する生細胞に適した方法で行うことができ、例えば、エレクトロポレーション法、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクル・ガン法、ウイルスを用いた方法や、FuGENE(登録商標) 6 Transfection Reagent(ロシュ社製)、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine LTX Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine 3000 Reagent(インビトロジェン社製)等の市販のトランスフェクション試薬を用いた方法等を挙げることができる。

【0046】
生細胞ペプチド合成系により発現させた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドを含む生細胞を破砕処理や抽出処理することにより調製することができる。破砕処理としては、例えば凍結融解法、フレンチプレス、グラスビーズ、ホモジナイザー、超音波破砕装置等を用いた物理的破砕処理等を挙げることができる。また抽出処理としては、例えばグアニジン塩酸塩、尿素等のタンパク質変性剤を用いた抽出処理等を挙げることができる。安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、さらに分画遠心法、ショ糖密度勾配遠心法等による分画処理や、アフィニティーカラム、イオン交換クロマトグラフィー等を用いた精製処理等により調製することもできる。

【0047】
蛍光物質としては、例えば公知の量子ドット、インドシアニングリーン、5-アミノレブリン酸(5-ALA;代謝産物プロトポルフィリンIX(PP IX)、近赤外蛍光色素(例えば、Cy5.5、Cy7、AlexaFluoro等)、その他公知の蛍光色素(例えば、GFP、FITC(Fluorescein)、TAMRA等)等が挙げられる。蛍光物質標識された上述のペプチドは、蛍光物質及び上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを、安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸を使用せずに、上述の無細胞ペプチド合成系又は生細胞ペプチド合成系により調製すればよい。

【0048】
PET用核種、SPECT用核種として好ましくは、例えば11C、13N、15O、18F、66Ga、67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、或いはそれらの組み合わせ等が挙げられる。PET用核種又はSPECT用核種で標識された上述のペプチドは、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを、上述の無細胞ペプチド合成系又は生細胞ペプチド合成系により調製すればよい。
MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体としては、例えばガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体、若しくはそのキレート錯体等が挙げられる。MRI造影剤、CT造影剤又は磁性体で標識された上述のペプチドは、MRI造影剤、CT造影剤又は磁性体と上述のペプチドとを直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合させて調製すればよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。

【0049】
修飾物質としては、例えば糖鎖、ポリエチレングリコール(PEG)等を挙げることができる。上記の修飾物質を備えることで、目的物質が胆道癌細胞内に簡便且つ効率よく吸収されやすくなる。修飾物質で修飾された上述のペプチドは、修飾物質と上述のペプチドとを直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合させて調製すればよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。

【0050】
本実施形態のキャリアにおいて、目的物質としては、用途に応じて適宜選択することができ、例えば胆道癌のイメージングのために使用する場合においては、後述するとおり、上述の標識物質を目的物質として備えることができ、また、胆道癌の治療又は診断用途で使用する場合においては、後述するとおり、生理活性物質を目的物質として備えることができる。目的物質は、上述のペプチドと、直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていてよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。

【0051】
また、本実施形態のキャリアにおいて、目的物質がタンパク質である場合、目的物質と上述のペプチドとを含む融合タンパク質は、例えば次のような方法により作製することができる。まず、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて、宿主を形質転換する。続いて、当該宿主を培養して融合タンパク質を発現させる。培地の組成、培養の温度、時間、誘導物質の添加等の条件は、形質転換体が生育し、融合タンパク質が効率よく産生されるよう、公知の方法に従って当業者が決定できる。また、例えば、選択マーカーとして抗生物質抵抗性遺伝子を発現ベクターに組み込んだ場合、培地に抗生物質を加えることにより、形質転換体を選択することができる。続いて、宿主が発現した融合タンパク質を適宜の方法により精製することにより、融合タンパク質が得られる。

【0052】
宿主としては、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを発現させることができる生細胞であれば特に制限されず、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、ウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルス等のウイルス等)、細菌(例えば、大腸菌等)等の微生物、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞などの生細胞が挙げられる。
さらに、本実施形態のキャリアにおいて、上述の融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを胆道癌細胞又は組織に直接導入し、発現させてもよい。

【0053】
[医薬組成物]
一実施形態において、本発明は、上述のキャリアと生理活性物質とを備える医薬組成物を提供する。

【0054】
本実施形態の医薬組成物によれば、胆道癌選択的に治療することができる。

【0055】
本明細書において、「生理活性物質」としては、胆道癌の治療に有効なものであれば、特別な限定はなく、例えば抗癌剤等の薬剤、核酸、胆道癌に特異的に結合する抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。
「生理活性物質」としては、胆道癌選択的な細胞障害活性を有する分子標的薬が好ましいが、上述のキャリアにより、胆道癌選択的に蓄積されるため、従来の抗癌剤として用いられているサイトトキシック薬でもよい。
また、生理活性物質は、上述のキャリアと、直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていてよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。また、本実施形態の医薬組成物において、上述のキャリアは上述の標識物質又は修飾物質を含んでいてもよい。

【0056】
核酸は、例えば、siRNA、miRNA、antisense、又はそれらの機能を代償する人工核酸等が挙げられる。

【0057】
抗体は、例えば、マウス等のげっ歯類の動物に胆道癌由来のペプチド等を抗原として免疫することによって作製することができる。また、例えば、ファージライブラリーのスクリーニングにより作製することができる。抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。

【0058】
アプタマーとは、胆道癌に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。胆道癌に特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、胆道癌に特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法等により選別することができる。

【0059】
本実施形態の医薬組成物は、胆道癌診断、胆道癌治療効果診断、病態解析、胆道癌治療、又は胆道癌を伴う疾患の診断、病態解析、治療、治療効果診断のために用いることができる。診断方法としては、例えばPET、SPECT、CT、MRI、内視鏡、蛍光検出器等を用いることができる。

【0060】
<投与量>
本実施形態の医薬組成物は、被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)の年齢、性別、体重、症状、治療方法、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。
例えば、本実施形態の医薬組成物を注射剤により静脈内(Intravenous:i.v.)注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1kg体重当たり、5mg以上のペプチドの量を投与することが好ましく、5mg以上15mg以下のペプチドの量を投与することがより好ましく、5mg以上10mg以下のペプチドの量を投与することが特に好ましい。

【0061】
投与回数としては、1週間平均当たり、1回~数回投与することが好ましい。
投与形態としては、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、鼻腔内的、腹腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、又は経口的に当業者に公知の方法が挙げられ、静脈内注射又は腹腔内的投与が好ましい。

【0062】
<組成成分>
本実施形態の医薬組成物は、治療的に有効量の上述のキャリア及び生理活性物質、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む。薬学的に許容されうる担体又は希釈剤は、賦形剤、稀釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、添加剤等が挙げられる。これら担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、又はシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、ペプチドの生体内安定性を高める効果や、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ペプチドの移行性を高める効果が期待される。コロイド分散系としては、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを包含する脂質を挙げることができ、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ペプチドを効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞が好ましい。

【0063】
本実施形態の医薬組成物における製剤化の例としては、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に使用されるものが挙げられる。
又は、水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用されるものが挙げられる。さらには、薬理学上許容される担体又は希釈剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化されたものが挙げられる。

【0064】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。

【0065】
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。

【0066】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例えば、塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール等)、酸化防止剤等を配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。

【0067】
注射剤である場合、上記のような水性又は非水性の希釈剤、懸濁剤、又は乳濁剤として調製することもできる。このような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤等の配合により行うことができる。注射剤は、用事調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって、無菌の固体組成物とし、使用前に注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。

【0068】
<治療方法>
本発明の一側面は、胆道癌の治療のための上述のキャリアと生理活性物質とを備える医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、治療的に有効量の上述のキャリア及び生理活性物質、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、胆道癌の治療剤を提供する。
また、本発明の一側面は、胆道癌の治療剤を製造するための上述のキャリア及び生理活性物質の使用を提供する。
また、本発明の一側面は、上述のキャリア及び生理活性物質の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、胆道癌の治療方法を提供する。

【0069】
[胆道癌をイメージングするための方法]
一実施形態において、本発明は、胆道癌をイメージングするための方法であって、上述のキャリアを用いる方法を提供する。

【0070】
本実施形態の方法によれば、胆道癌を簡便、高感度且つ選択的に検出することができる。

【0071】
本実施形態の方法において、上述のキャリアは標識物質を備えることが好ましい。さらに、修飾物質を備えていてもよい。標識物質及び修飾物質としては、上述したものと同様のものが挙げられる。

【0072】
例えば、標識物質を備える上述のキャリアを胆道癌細胞に添加する場合において、標識物質を備える上述のキャリアの添加量は培養液中1μM以上4μM以下が好ましい。また、添加後、30分以上3時間以下後には胆道癌細胞内に集積されているか否かについて評価することができる。

【0073】
また、例えば、標識物質として蛍光物質を備える上述のキャリアを注射剤により静脈内(Intravenous:i.v.)注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1kg体重当たり、5mg以上のペプチドの量を投与することが好ましく、5mg以上15mg以下のペプチドの量を投与することがより好ましく、5mg以上10mg以下のペプチドの量を投与することが特に好ましい。
また、例えば、標識物質として安定同位体、PET用核種又はSPECT用核種を備える上述のキャリアを注射剤により静脈内(Intravenous:i.v.)注射する場合、使用する安定同位体、PET用核種又はSPECT用核種の種類に応じた放射線量から投与量を決定すればよい。

【0074】
本実施形態の方法において、標識物質を備える上述のキャリアの検出方法としては、例えばPET、SPECT、CT、MRI、内視鏡、蛍光検出器等を用いることができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0076】
[実施例1]ペプチドの合成
独自に作製した、ピューロマイシン(puromycin)を介在して表現型としての12アミノ酸残基ペプチドとそれに対応する遺伝子型としてのmRNAコード配列を有するprotein-RNAキメラ型ランダムペプチドライブラリー(in vitro virus library; IVVL)を用いて、公知のIVV(in vitro virus)法に準じて、下記表1に示す各ペプチド(Peptide1~4)を分離及び同定した。また、IVVL由来の同定された各ペプチドは、FITC(Fluoresceinisothiocyanate)ラベルで合成し、塩酸塩処理を施したものである。また、r9(9残基連続D-アルギニン)は、現在汎用されている非選択的膜透過性ペプチドである。
これらは、いずれもシグマアルドリッチジャパン(ジェノシス事業部)への委託合成により入手した。
【実施例】
【0077】
【表1】
JP2017057450A1_000002t.gif
【実施例】
【0078】
また、以下の試験例1~13に使用した各種細胞の細胞株と由来は下記表2示したとおりである。これらは、発明者が研究室において、継代培養して維持しているものである。
【実施例】
【0079】
【表2】
JP2017057450A1_000003t.gif
【実施例】
【0080】
胆管癌細胞、MMNK-1細胞、肝癌細胞、HeLa細胞、U2OS細胞、A172細胞、A549細胞、MCF7細胞、GCIY細胞、Lovo細胞、BxPC3細胞、KPK細胞、PC-3細胞、NHDF細胞については、10%FBS含有RPMI1640培地(RPMI1640 medium)を用いて培養した。Hepatocyte細胞は、5%FBS含有肝細胞培地(Hepatocytemedium)を用いて培養した。
HPNE細胞は、5%FBS含CS-C培地キットを用いて培養した。NuLi-1細胞は、BEGM培地(Bronchial Epithelial Growth Medium, Serum-free)を用いて培養した。Kidney細胞は、正常ヒト腎臓上皮細胞用増殖培地(RenaLife Comp Kit)を用いて培養した。TIME細胞は、EBM-2-MV Bullet kit(Endothelial Cell Basal Medium-2 Bullet kit)を用いて培養した。
【実施例】
【0081】
[試験例1]ペプチドの胆道癌細胞での集積性の確認試験
M156細胞、M213細胞、M214細胞及びKKU-100細胞に、実施例1において作製したPeptide1、2及び3をそれぞれ、培地中に4μMとなるように添加した。それらの細胞を37℃で60分間培養した。続いて、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。検鏡の前にペプチドを添加した培養上清を除去し、1×PBS(-)で3回洗浄後、トリプシン処理し接着細胞を剥離してただちに新しい96穴プレートに移入して新しい培養液に再懸濁後、検鏡を行った。結果を図1に示す。
【実施例】
【0082】
図1から、Peptide1、2及び3について、全ての細胞で蛍光が検出された。特にPeptide3を添加した細胞は、蛍光が強く検出された。以上のことから、Peptide3は、胆管癌細胞内への高透過性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0083】
[試験例2]インヒビターを用いたペプチドの胆道癌細胞での集積性の確認試験
M213細胞に、実施例1において作製したPeptide3又はr9を、培地中に4μMとなるように添加し、37℃で60分間培養した。胆管癌細胞内へのペプチドの阻害を検討するための阻害剤として、培養開始から20分後に、0、5、20、50、100μMのクロルプロマジン又は0、2、10、50、100μMの5-(N-エチル-N-イソプロピル)アミロライド(EIPA)を、30分後に0、10、20、40、80μMのダイナソーを、それぞれ添加した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図2A~図2Cに示す。
なお、クロルプロマジンはクラスリン依存性のエンドサイトーシスを阻害する阻害剤である。また、ダイナソーは、ダイナミンによるクラスリン依存性のエンドサイトーシスを阻害する阻害剤である。また、EIPAは、マクロピノサイトーシス(飲作用)を阻害する阻害剤である。
【実施例】
【0084】
図2A~図2Cから、r9を添加した細胞における蛍光は、EIPAの添加量の増加に応じて、減少するのに対し、Peptide3を添加した細胞における蛍光は、ダイナソーの添加量の増加に応じて、減少することが明らかとなった。このことから、Peptide3の胆管癌細胞内への取り込みは、ダイナミンによるクラスリン依存性のエンドサイトーシスによるものであると推察された。
【実施例】
【0085】
[試験例3]異なる血清濃度の培地におけるペプチドの胆道癌細胞での集積性の確認試験
M214細胞に、実施例1において作製したPeptide3又はPeptide4を、0%、10%、50%FBS含有培地中に4μMとなるように添加し、37℃で60分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図3A及び図3Bに示す。
なお、Peptide3及びPeptide4は同じアミノ酸配列からなるペプチであって、Peptide3はL体のアミノ酸のみから構成されており、Peptide4はD体のアミノ酸のみから構成されている。すなわち、Peptide3及びPeptide4は鏡面異性体の関係にある。
【実施例】
【0086】
図3A及び図3Bから、Peptide3を添加した細胞よりも、Peptide4を添加した細胞の方が、120分後においても強い蛍光が見られることが確かめられた。また、50%FBS含有の高血清濃度の環境下においても、血清中に含まれるアルブミン等による胆管癌細胞内への取り込みの阻害を受けるが、Peptide4を添加した細胞の方が、胆管癌細胞での集積性が高いことが明らかとなった。50%FBS含有の培地は、ヒトの血液の濃度に近い。よって、Peptide3及びPeptide4は、例えば静脈内注射等によりヒト体内に添加した場合においても、胆管癌に集積させることが可能であると推察された。
【実施例】
【0087】
[試験例4] ペプチドの各種胆道癌細胞での集積性の確認試験
上記表1に示した各種胆道癌細胞に、実施例1において作製したPeptide3(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図4に示す。
【実施例】
【0088】
図4から、Peptide3は、M156細胞、M213細胞、M214細胞、KKU-100細胞及びTKKK細胞において、蛍光が検出された。
【実施例】
【0089】
[試験例5] ペプチドの各種胆細胞癌細胞での集積性の確認試験
上記表1に示した各種胆細胞癌細胞に、実施例1において作製したPeptide3(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図5に示す。
【実施例】
【0090】
図5から、PLC/PRF/5細胞及びHepG2細胞において、ほとんど蛍光が検出されなかった。
【実施例】
【0091】
[試験例6] ペプチドのその他各種組織由来の癌細胞での集積性の確認試験
上記表1に示したその他各種組織由来の癌細胞及びM156細胞に、実施例1において作製したPeptide3(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図6に示す。
【実施例】
【0092】
図6から、GCIY細胞及びPC-3細胞において、ほとんど蛍光が検出されなかった。
【実施例】
【0093】
[試験例7] ペプチドの各種組織由来の正常細胞での集積性の確認試験
上記表1に示した各種組織由来の正常細胞に、実施例1において作製したPeptide3(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図7に示す。
【実施例】
【0094】
図7から、いずれの細胞においても、蛍光は検出されなかった。
【実施例】
【0095】
試験例4~7から、本発明のペプチドは、胆管癌細胞に特異的な集積性を有することが確認された。
【実施例】
【0096】
[試験例8] ペプチドの共培養した胆管癌細胞及び胆管由来の正常な細胞での集積性の確認試験
共培養したM156細胞及びMMNK-1細胞に、実施例1において作製したPeptide3(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を含む培地を入れ、37℃で60分間培養した。また、同時に、共培養したM156細胞及びMMNK-1細胞に、実施例1において作製したPeptide3(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を添加し、37℃で30分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図8に示す。
【実施例】
【0097】
図8から、Peptide3は、MMNK-1細胞には取り込まれず、M156細胞にのみ取り込まれることが明らかとなった。このことから、本発明のペプチドは、従来の細胞透過性ペプチドであるTat等と異なり、胆管癌細胞にのみ特異的な集積性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0098】
[試験例9]ヒト胆管癌細胞移植マウスでの各種組織におけるペプチドの集積性の評価試験
M214細胞を腹腔内(i.p.)注射したNOD-SCIDマウス(日本チャールズリバー社より購入した6週齢雌マウス)をヒト胆管癌細胞移植モデル(human leukemia-xenograft model)として作製した。続いて、マウス体重20gに対して150μgの実施例1で作製したPeptide3を静脈内(i.v.)注射した。投与後90分で開腹して腫瘍病変とペプチドの分布を蛍光実体顕微鏡下に観察した。結果を図9に示す。図9において、gallは胆嚢、livは肝臓、stは胃、spは脾臓、brは脳、hrは心臓、kdは腎臓、luは肺、tumorは悪性腫瘍を意味する。また、図9において、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において撮影した画像である。さらに上部の画像はマウスの開腹時の画像であり、下部の左側の画像は、摘出された各種組織の画像であり、下部の右側の画像は、摘出された各種組織をスライスしたものの画像である。
【実施例】
【0099】
図9から、Peptide3は胆嚢及び悪性腫瘍にのみ集積していることが確かめられた。
【実施例】
【0100】
[試験例10]ヒト胆管癌細胞を植えた肝臓を移植したマウスでの各種組織におけるペプチドの集積性の評価試験
M156細胞を植えた肝臓をNOD-SCIDマウス(日本チャールズリバー社より購入した6週齢雌マウス)に移植した。続いて、マウス体重20gに対して150μgの実施例1で作製したPeptide3を静脈内(i.v.)注射した。投与後90分で開腹して腫瘍病変とペプチドの分布を蛍光実体顕微鏡下に観察した。結果を図10に示す。図10において、gallは胆嚢、livは肝臓、stは胃、spは脾臓、brは脳、hrは心臓、kdは腎臓、luは肺、tumorは悪性腫瘍を意味する。また、図10において、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において撮影した画像である。さらに上部の画像はマウスの開腹時の画像であり、下部の左側の画像は、摘出された各種組織の画像であり、下部の右側の画像は、摘出された各種組織をスライスしたものの画像である。
【実施例】
【0101】
図10から、Peptide3は胆嚢及び悪性腫瘍にのみ集積していることが確かめられた。
【実施例】
【0102】
[試験例11]ペプチドの各種細胞での集積性の確認試験
上記表1に示した各種胆道癌細胞、MMNK-1細胞及びHepatocyte細胞に、実施例1において作製したPeptide4(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図11に示す。
【実施例】
【0103】
図11から、胆管癌細胞においてのみ、蛍光が検出された。また、Peptide3を添加した胆管癌細胞と比較したところ、Peptide4を添加した胆管癌細胞のほうが、強い蛍光が検出された。さらにPeptide3では蛍光が検出されなかったSSP25細胞、OCUG-1細胞、TFK-1細胞及びHuCCT1細胞においても蛍光が検出された。以上のことから、D体であるPeptide4のほうが胆管癌細胞への集積性が高いことが確かめられた。
【実施例】
【0104】
[試験例12]ヒト胆管癌細胞移植マウスでの各種組織におけるペプチドの集積性の評価試験
TKKK細胞を腹腔内(i.p.)注射し、さらにTKKK細胞を植えた肝臓を移植したNOD-SCIDマウス(日本チャールズリバー社より購入した6週齢雌マウス)をヒト胆管癌細胞移植モデル(human leukemia-xenograft model)として作製した。続いて、マウス体重20gに対して150μgの実施例1で作製したPeptide3又はPeptide4を静脈内(i.v.)注射した。投与後90分で開腹して腫瘍病変とペプチドの分布を蛍光実体顕微鏡下に観察した。結果を図12に示す。図12において、gallは胆嚢、livは肝臓、stは胃、spは脾臓、brは脳、hrは心臓、kdは腎臓、luは肺、tumorは悪性腫瘍を意味する。また、図12において、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において撮影した画像である。さらに、上部の画像はPeptide3を添加したマウスから摘出された組織の画像であり、下部の画像はPeptide4を添加したマウスから摘出された組織の画像である。また、左側の画像は、摘出された各種組織の画像であり、右側の画像は、摘出された各種組織をスライスしたものの画像である。
【実施例】
【0105】
図12から、Peptide3及びPeptide4は悪性腫瘍にのみ集積していることが確かめられた。また、Peptide3よりもPeptide4の方が強い蛍光が検出された。
【実施例】
【0106】
また、図13A及び図13Bは、試験例12において、各組織で検出された蛍光を定量化し、膵臓で検出された蛍光を1としたときの各種組織で検出された蛍光強度の割合を示すグラフである。また、図14は、各組織で検出された蛍光を定量化し、各組織で検出された蛍光を1としたときの悪性腫瘍で検出された蛍光強度の割合を示すグラフである。
図13A及び図13Bから、Peptide3を投与したマウスでは、悪性腫瘍で検出された蛍光が肝臓で検出された蛍光の約8.6倍であるのに対し、Peptide4を投与したマウスでは、悪性腫瘍で検出された蛍光が肝臓で検出された蛍光の約45.8倍であった。
また、図14から、いずれの組織での蛍光を1としたときにおいても、Peptide3を投与したマウスでの悪性腫瘍で検出された蛍光よりも、Peptide4を投与したマウスでの悪性腫瘍で検出された蛍光のほうが高い数値であった。
【実施例】
【0107】
以上のことから、D体であるPeptide4のほうが胆管癌細胞への集積性が高いことが確かめられた。
【実施例】
【0108】
[試験例13]ヒト胆管癌細胞を植えた肝臓を移植したマウスでの各種組織におけるペプチドの集積性の評価試験
M156細胞を植えた肝臓をNOD-SCIDマウス(日本チャールズリバー社より購入した6週齢雌マウス)に移植した。続いて、マウス体重20gに対して150μgの実施例1で作製したPeptide4を静脈内(i.v.)注射した。投与後90分で開腹して腫瘍病変とペプチドの分布を蛍光実体顕微鏡下に観察した。結果を図15に示す。図15において、gallは胆嚢、livは肝臓、tumorは悪性腫瘍を意味する。また、図15において、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において撮影した画像である。さらに上部の画像はマウスの開腹時の画像であり、下部の左側の画像は、摘出された肝臓及び悪性腫瘍の画像であり、下部の右側の画像は、摘出された肝臓及び悪性腫瘍をスライスしたものの画像である。
【実施例】
【0109】
図15から、Peptide4は胆嚢及び悪性腫瘍にのみ集積していることが確かめられた。
【実施例】
【0110】
[試験例14]胆管癌患者の腹水に含まれる胆管癌細胞におけるペプチドの集積性の評価試験
3例の胆管癌患者の腹水に、実施例1において作製したPeptide3(4μM)及び核染色剤であるHoechst(同仁堂社製)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図16に示す。図16において、「Phase+Hoechst」とは、核染色像を含む明視野を示す。
【実施例】
【0111】
図16から、Peptide3は、培養細胞だけでなく、胆管癌患者由来の胆管癌細胞においても、集積性を有することが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、胆道癌に特異的な集積性を有する新規ペプチドを提供することできる。また、胆道癌を簡便、高感度且つ選択的に検出することができる。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図3A】
4
【図3B】
5
【図4】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
11
【図10】
12
【図11】
13
【図12】
14
【図13A】
15
【図13B】
16
【図14】
17
【図15】
18
【図16】
19