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明細書 :非アルコール性脂肪性肝炎診断用キット及び試験方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6829888号 (P6829888)
登録日 令和3年1月27日(2021.1.27)
発行日 令和3年2月17日(2021.2.17)
発明の名称または考案の名称 非アルコール性脂肪性肝炎診断用キット及び試験方法
国際特許分類 C12Q   1/6883      (2018.01)
C12Q   1/68        (2018.01)
G01N  33/576       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/6883 ZNAZ
C12Q 1/68
G01N 33/576 Z
C12N 15/09 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2017-545450 (P2017-545450)
出願日 平成28年10月13日(2016.10.13)
国際出願番号 PCT/JP2016/080346
国際公開番号 WO2017/065206
国際公開日 平成29年4月20日(2017.4.20)
優先権出願番号 2015202418
優先日 平成27年10月13日(2015.10.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和元年7月11日(2019.7.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】南野 徹
【氏名】清水 逸平
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
審査官 【審査官】西 賢二
参考文献・文献 国際公開第2009/122367(WO,A2)
TAKAHARA, K. et al,Type I Procollagen COOH-terminal Proteinase Enhancer Protein: Identification, Primary Structure, and Chromosomal Localization of the Cognate Human Gene(PCOLCE),THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1994年,Vol.269, No.42,pp.26280-26285
調査した分野 C12Q 1/00-3/00
G01N 33/48-33/98
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)



特許請求の範囲 【請求項1】
Procollagen C-endopeptidase enhancer(PCPE-1)タンパク質に対する特異的結合物質、
PCPE-1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセット、又は
PCPE-1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ、
を備える、非アルコール性脂肪性肝炎診断用キット。
【請求項2】
被験者由来の褐色脂肪組織試料におけるPCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質の発現量を定量する工程を備え、前記発現量が、健常人由来の褐色脂肪組織におけるPCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質の発現量と比較して有意に高いことが、前記被験者が非アルコール性脂肪性肝炎に罹患している可能性が高いことを示す、褐色脂肪組織試料の試験方法。
【請求項3】
被験者由来の血清又は血漿中のPCPE-1タンパク質の発現量を定量する工程を備え、前記発現量が、健常人由来の血清又は血漿中のPCPE-1タンパク質の発現量と比較して有意に高いことが、前記被験者が非アルコール性脂肪性肝炎に罹患している可能性が高いことを示す、血清又は血漿の試験方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎マーカー及びその使用に関する。本願は、2015年10月13日に、日本に出願された特願2015-202418号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化と運動不足による肥満人口の増加に伴い、非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis、NASH)の患者が増加している。
【0003】
NAFLDとは、飲酒歴がないにもかかわらずアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害が認められる疾患である。NAFLDの約90%は非進行で予後良好な単純性脂肪肝であるが、残りの約10%は、肝硬変、肝細胞癌へと進行し得るNASHに分類される(例えば、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Khan F. Z., et al., Advances in hepatocellular carcinoma: Nonalcoholic steatohepatitis-related hepatocellular carcinoma., World J. Hepatol., 7 (18), 2155-2161, 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NASHの病態に陥ると、肝臓の線維化が進行し、肝硬変へと進展する。しかしながら、肝臓の線維化が進行する機序はほとんどわかっていない。現在、NASHの診断方法としては、肝臓生検による侵襲的手法しか存在しない。このため、NASHを容易に診断できるマーカーの開発が求められている。そこで、本発明は、新たなNASHマーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を含む。
(1)Procollagen C-endopeptidase enhancer(PCPE-1)遺伝子又はPCPE-1タンパク質からなる、NASHマーカー。
(2)PCPE-1タンパク質に対する特異的結合物質、PCPE-1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセット、又はPCPE-1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ、を備える、NASH診断用キット。
(3)生体試料中の、PCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質の発現量を定量する工程を備える、NASHの検出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、新たなNASHマーカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実験例2のリアルタイムPCRの結果を示すグラフである。
【図2】実験例2のウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。
【図3】実験例3のマウスPCPE-1タンパク質の定量結果を示すグラフである。
【図4】実験例4のウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。
【図5】実験例5のPCPE-1タンパク質の定量結果を示すグラフである。
【図6】実験例6のI型コラーゲンの分泌量の定量結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[NASHマーカー]
1実施形態において、本発明は、PCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質からなる、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)マーカーを提供する。

【0010】
PCPE-1遺伝子は、PCOLCE遺伝子とも呼ばれ、PCPE-1タンパク質をコードする遺伝子である。ヒトPCPE-1遺伝子のGenbankアクセッション番号はNM_002593であり、マウスPCPE-1遺伝子のGenbankアクセッション番号はNM_008788である。配列番号1にヒトPCPE-1遺伝子のcDNAの塩基配列を示し、配列番号2にヒトPCPE-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。また、配列番号3にマウスPCPE-1遺伝子のcDNAの塩基配列を示し、配列番号4にマウスPCPE-1タンパク質のアミノ酸配列を示す。

【0011】
実施例において後述するように、発明者らは、NASH患者の血清中でPCPE-1タンパク質の存在量が増加することを見出した。また、肥満ストレスにより、褐色脂肪組織特異的にPCPE-1遺伝子の発現レベルが上昇することを明らかにした。

【0012】
係る知見から、PCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質をNASHマーカーとして用いることができる。本実施形態のNASHマーカーにより、NASHを簡便に診断することが可能になる。また、低侵襲に診断することが可能になる。

【0013】
本実施形態のマーカーにより、NASHに罹患していることが疑われる患者に対しては、運動療法や食餌療法を積極的に行うことにより、肝硬変、肝細胞癌への進行を抑制又は防止することができる。

【0014】
[NASH診断用キット]
1実施形態において、本発明は、PCPE-1タンパク質に対する特異的結合物質、PCPE-1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセット、又はPCPE-1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ、を備える、NASH診断用キットを提供する。

【0015】
特異的結合物質としては、例えば、抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。抗体は、例えば、マウス等の動物にPCPE-1タンパク質又はその部分ペプチドを抗原として免疫することにより作製してもよい。あるいは、ファージライブラリー等の抗体ライブラリーのスクリーニング等により作製することもできる。

【0016】
抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。上記の抗体又は抗体断片は、ポリクローナルであってもよく、モノクローナルであってもよい。

【0017】
アプタマーとは、標識物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。PCPE-1タンパク質に特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、PCPE-1タンパク質に対する特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法等により選別することができる。

【0018】
特異的結合物質は、PCPE-1タンパク質に特異的に結合することができれば特に制限されず、市販のものであってもよい。また、特異的結合物質は、担体上に固定されてプロテインチップ等を構成していてもよい。

【0019】
本実施形態のNASH診断用キットを用いて、生体試料中のPCPE-1遺伝子の発現又はタンパク質の発現を検出することができる。PCPE-1遺伝子又はタンパク質の発現量が健常人と比較して上昇していた場合には、生体試料が由来する被検者がNASHに罹患している可能性が高い。

【0020】
プライマーセットとしては、診断対象の動物種のPCPE-1遺伝子のcDNAを増幅することができるものであれば特に限定されない。例えば、ヒトPCPE-1遺伝子のcDNAを増幅するプライマーとしては、配列番号5に示す塩基配列からなるセンスプライマー及び配列番号6に示す塩基配列からなるアンチセンスプライマーのセット等が挙げられる。

【0021】
mRNAに特異的にハイブリダイズするプローブとしては、PCPE-1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするものであれば特に限定されない。プローブは、担体上に固定されてDNAマイクロアレイ等を構成していてもよい。

【0022】
生体試料としては、血清、血漿、尿、組織等が挙げられる。組織としては、褐色脂肪組織、肝臓生検等が挙げられる。生体試料が、血清、血漿、尿等である場合、本実施形態のNASH診断用キットは、上記の特異的結合物質であってもよい。この場合、低侵襲で簡便にNASHの診断を行うことができる。また、生体試料が組織等である場合、本実施形態のNASH診断用キットは、上記のプライマーセット又はプローブを備えるものであることが好ましい。

【0023】
[NASHの検出方法]
1実施形態において、本発明は、生体試料中の、PCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質の発現量を定量する工程を備える、NASHの検出方法を提供する。本実施形態の検出方法は、NASHの診断方法であるということもできる。

【0024】
生体試料は、上述したものと同様である。PCPE-1遺伝子の発現量の定量方法としては、PCPE-1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーセットを用いたリアルタイムPCR;PCPE-1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを固定したマイクロアレイによる遺伝子発現解析;PCPE-1遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを用いたノーザンブロッティング等が挙げられる。

【0025】
また、PCPE-1タンパク質の発現量の定量方法としては、PCPE-1タンパク質に対する特異的結合物質を用いたウエスタンブロッティング、ELISA、免疫染色、逆相タンパク質アレイを用いた検出等が挙げられる。なお、逆相タンパク質アレイを用いた検出とは、試料を固相にアレイ状に固定し、特定物質に対する特異的結合物質を反応させることにより、試料中の特定物質を検出する解析方法である。

【0026】
本実施形態の検出方法は、生検試料がNASH患者由来のものであるか否かを判定する方法であるということもできる。すなわち、生検試料中のPCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質の発現量が、健常人由来の生検試料中のPCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質の発現量と比較して高い場合、生検試料はNASH患者由来のものであると判定することができる。

【0027】
また、生体試料中のPCPE-1タンパク質の発現量は、生体試料中のPCPE-1タンパク質の存在量といい換えることもできる。実施例において後述するように、PCPE-1タンパク質は、褐色脂肪組織で転写、翻訳、分泌され、血流を通じて肝臓に到達するものと考えられる。

【0028】
NASHを検出する場合には標準を設けてもよい。このような標準としては、例えば、健常人由来の生体試料等が挙げられる。健常人と比較して、PCPE-1遺伝子又はPCPE-1タンパク質の発現量が高い場合、被検者はNASHに罹患している可能性が高い。
【実施例】
【0029】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
[実験例1]
(褐色脂肪組織から分泌されるタンパク質の探索)
発明者らは、褐色脂肪組織から分泌されるタンパク質を解析した。その結果、NASHマーカーを見出した。本実験例の内容について、以下に、より詳細に説明する。
【実施例】
【0031】
脂肪組織には、褐色脂肪組織と白色脂肪組織が存在する。褐色脂肪組織は熱産生器官であることが知られているが、内分泌器官としての機能についてはほとんど知られていなかった。そこで、発明者らは、褐色脂肪組織の内分泌器官としての機能を検討するために、DNAマイクロアレイ解析により褐色脂肪組織が分泌するタンパク質を探索した。
【実施例】
【0032】
具体的には、4週齢のマウスに高脂肪食を8ヶ月間与えた肥満マウスモデルの褐色脂肪組織、及び脂肪組織特異的に低酸素状態にしたマウスの褐色脂肪組織において、共通に発現する分泌タンパク質を探索した。脂肪組織特異的に低酸素状態にしたマウスの褐色脂肪組織を用いたのは、肥満マウスの脂肪組織は低酸素状態になることが知られているためである。つまり、肥満させる以外の方法で脂肪組織を低酸素状態にしたマウスの褐色脂肪組織を用いた。より具体的には、脂肪組織特異的にVascular Endothelial Growth Factor(VEGF)-Aをノックアウトしたマウスを用いた。
【実施例】
【0033】
肥満食を与えた肥満マウスモデルの褐色脂肪組織で発現が上方制御される遺伝子の情報としては、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)の遺伝子発現情報データベース(Gene Expression Omnibus;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)にアクセッション番号GSE28440として公開されている情報を使用した。
【実施例】
【0034】
その結果、褐色脂肪組織が分泌するタンパク質として、23種類のタンパク質が同定された。それらのタンパク質のうちの1つがPCPE-1遺伝子であった。
【実施例】
【0035】
[実験例2]
(肥満ストレスで褐色脂肪組織におけるPCPE-1の発現レベルが上昇した)
4週齢のマウスに高脂肪食を8週間与えた肥満マウスモデルの各臓器におけるPCPE-1遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより測定した。対照として通常食を与えたマウスを使用した。マウスPCPE-1遺伝子のcDNAを増幅するためのプライマーとしては、センスプライマー(配列番号7)及びアンチセンスプライマー(配列番号8)を使用した。また、臓器としては、褐色脂肪組織、白色脂肪組織、肝臓、心臓、腎臓、肺、筋、脾臓を用いた。
【実施例】
【0036】
図1は、リアルタイムPCRの結果を示すグラフである。図中、「**」は、危険率1%未満で有意差があることを示す。その結果、肥満ストレスにより、褐色脂肪組織特異的にPCPE-1遺伝子の発現レベルが上昇することが明らかとなった。
【実施例】
【0037】
続いて、PCPE-1のタンパクレベルでの発現を検討した。4週齢のマウスに高脂肪食を8ヶ月間与えた肥満マウスモデル及び通常食を与えた対照のマウス由来の褐色脂肪組織からタンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティング法によりPCPE-1タンパク質を検出した。PCPE-1タンパク質の検出には、抗PCPE-1抗体(型式「MAB2239」、R&Dシステムズ社)を使用した。また、ローディングコントロールとして、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質を検出した。GAPDHタンパク質の検出には、抗GAPDH抗体(型式「#3683S」、Cell Signaling Technology社)を使用した。
【実施例】
【0038】
図2は、ウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。その結果、肥満ストレスにより、褐色脂肪組織特異的にPCPE-1タンパク質の発現レベルが上昇することが明らかとなった。
【実施例】
【0039】
[実験例3]
(肥満ストレスで血漿中のPCPE-1レベルが上昇した)
4週齢のマウスに高脂肪食を8ヶ月間与えた肥満マウスモデル及び通常食を与えた対照のマウスの血漿中のPCPE-1タンパク質の量をELISA法により定量した。PCPE-1タンパク質の定量には、市販のキット(型式「DL-PCPE1-Mu」、DLDEVELOP社)を使用した。
【実施例】
【0040】
図3はマウスPCPE-1タンパク質の定量結果を示すグラフである。図中、「**」は、危険率1%未満で有意差があることを示す。その結果、肥満ストレスにより、血漿中のPCPE-1タンパク質の存在量が上昇することが明らかとなった。
【実施例】
【0041】
[実験例4]
(肥満ストレスにより肝臓におけるPCPE-1レベルが上昇した)
4週齢のマウスに高脂肪食を8ヶ月間与えた肥満マウスモデルの肝臓における、PCPE-1タンパク質の存在を、ウエスタンブロッティング法により検出した。対照として通常食を与えたマウスの肝臓を使用した。PCPE-1タンパク質の検出には、抗PCPE-1抗体(型式「MAB2239」、R&Dシステムズ社)を使用した。また、ローディングコントロールとして、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)タンパク質を検出した。GAPDHタンパク質の検出には、抗GAPDH抗体(型式「#3683S」、Cell Signaling Technology社)を使用した。
【実施例】
【0042】
図4は、ウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。その結果、肥満ストレスにより、肝臓におけるPCPE-1タンパク質の存在量が上昇することが明らかとなった。実験例2で示されたように、肥満ストレスを与えても肝臓におけるPCPE-1遺伝子の発現の上昇は認められない。したがって、本実験例で検出されたPCPE-1タンパク質は肝臓以外の場所で発現されたものであると考えられた。
【実施例】
【0043】
[実験例5]
(NASH患者の血清中でPCPE-1レベルが上昇した)
NASH患者の血清中のPCPE-1タンパク質の量を定量した(n=46)。また、同時に、健常人(n=29)及び肥満患者(BMI25以上)(n=22)の血清中のPCPE-1タンパク質の量を定量した。PCPE-1タンパク質の定量には、市販のキット(型式「MBS722836」、MyBioSource社)を使用した。
【実施例】
【0044】
図5はPCPE-1タンパク質の定量結果を示すグラフである。図中、「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示す。その結果、NASH患者の血清中では、PCPE-1タンパク質の存在量が上昇することが明らかとなった。この結果は、PCPE-1タンパク質がNASHマーカーであることを示す。
【実施例】
【0045】
[実験例6]
(PCPE-1は肝星細胞によるI型コラーゲンの分泌を促進した)
NASH患者の肝臓においてTransforming growth factor(TGF)-βの発現が上昇することが知られている。そこで、ヒト肝星細胞株LX-2を、終濃度1.0ng/mLのTGF-β(型式「240-B-002」、R&D社)の存在下で培養した。上記の細胞の培地に、リン酸緩衝液(PBS)(n=4)又は終濃度8.5μMのPCPE-1タンパク質(型式「2627-PE-020」、R&D社)(n=4)を添加して24時間培養し、I型コラーゲンの分泌量を定量した。対照として、TGF-βの非存在下で培養したLX-2細胞の培地に、リン酸緩衝液(PBS)(n=6)又は終濃度8.5μMのPCPE-1タンパク質(n=8)を添加して24時間培養し、I型コラーゲンの分泌量をELISA法により定量した。I型コラーゲンの定量には市販のキット(型式「ACE-EC1-E205-EX」、コスモバイオ社)を使用した。
【実施例】
【0046】
図6は、I型コラーゲンの分泌量の定量結果を示すグラフである。図中、「*」は、危険率5%未満で有意差があることを示し、「**」は、危険率1%未満で有意差があることを示す。
【実施例】
【0047】
その結果、PCPE-1タンパク質の添加により、LX-2細胞によるI型コラーゲンの分泌量が増加することが明らかとなった。この結果は、PCPE-1タンパク質が、肝臓の線維化に関与することを示す。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、新たなNASHマーカーを提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5