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明細書 :ナノ流体デバイス及び化学分析装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6806374号 (P6806374)
登録日 令和2年12月8日(2020.12.8)
発行日 令和3年1月6日(2021.1.6)
発明の名称または考案の名称 ナノ流体デバイス及び化学分析装置
国際特許分類 G01N  35/08        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
B81B   3/00        (2006.01)
FI G01N 35/08 A
G01N 37/00 101
B01J 19/00 321
B81B 3/00
請求項の数または発明の数 7
全頁数 17
出願番号 特願2017-545818 (P2017-545818)
出願日 平成28年10月21日(2016.10.21)
国際出願番号 PCT/JP2016/081315
国際公開番号 WO2017/069256
国際公開日 平成29年4月27日(2017.4.27)
優先権出願番号 2015209235
優先日 平成27年10月23日(2015.10.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和元年5月23日(2019.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】嘉副 裕
【氏名】ピホシュ ユーリ
【氏名】北森 武彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査官 【審査官】永井 友子
参考文献・文献 米国特許出願公開第2014/0193896(US,A1)
特表2013-516582(JP,A)
特表2003-525101(JP,A)
米国特許出願公開第2011/0240127(US,A1)
特表2009-511083(JP,A)
調査した分野 B81B 3/00
G01N 35/08
B01J 19/00
G01N 37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
深さ又は幅の少なくとも一方が、10nm以上1000nm以下のサイズの溝を、一面にする第1基板と、該第1基板と互いの一面同士を接合して一体に設けられ、前記第1基板の深さ又は幅の少なくとも一方が、10nm以上1000nm以下のサイズの溝とともにナノ流路を形成する第2基板とを備えたナノ流体デバイスであって、
前記第1基板または前記第2基板のいずれか一方は、平面視して前記ナノ流路と重なる位置の一部に少なくとも薄肉部を備え、
前記ナノ流路は、
一方向に延在する流路部と、
平面視で前記薄肉部と重なる位置に設けられ、前記流路部より幅が広い動作領域である貯留部と、を備え、
前記貯留部の幅が、2μm以上であり、前記貯留部の深さが、10nm~1000nmであり、
前記ナノ流路を形成する前記第1基板及び前記第2基板は、ヤング率が10Pa以上であり、
前記薄肉部が押圧された際に、前記ナノ流路を塞ぐように前記薄肉部が変形する、ナノ流体デバイス。
【請求項2】
前記薄肉部のナノ流路が延在する方向の幅が2~100μmである請求項1に記載のナノ流体デバイス。
【請求項3】
前記第1基板または前記第2基板のうち、前記薄肉部を備えない方の基板が、前記薄肉部に相対する前記ナノ流路内の位置に、変形した薄肉部が当たる突起部を有する請求項1または2に記載のナノ流体デバイス。
【請求項4】
前記第1基板または前記第2基板のうち、前記薄肉部を備えない方の基板が、前記薄肉部に相対する前記ナノ流路内の位置に、変形した薄肉部の形状に合わせた凹部を有する請求項1~のいずれか一項に記載のナノ流体デバイス。
【請求項5】
前記押圧を行う押圧機構を備えた請求項1~のいずれか一項に記載のナノ流体デバイス。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載のナノ流体デバイスを備えた化学分析装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のナノ流体デバイスと、該ナノ流体デバイスを挟むように配置されたマイクロスケールのマイクロ流路を有する2つ以上のマイクロ流路デバイスとを備え、
前記ナノ流体デバイスと前記2つ以上のマイクロ流路デバイスのそれぞれとは、前記ナノ流路と前記マイクロ流路との連通によって連結され、
前記ナノ流体デバイスで化学分析を行うことができる化学分析装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ流体デバイス及び化学分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロスケールの微細空間は、混合・反応時間の短縮化、試料・試薬量の大幅な低減、小型デバイス化などを実現するものとして、診断・分析などの分野での利用が期待されている。例えば、数センチメートル角のガラス基板(マイクロチップ)上に、深さが数百μm以下の溝からなるマイクロチャネル(マイクロ流路)を形成し、化学システムを集積化したデバイスが知られている。
【0003】
化学システムを集積化するための1つの要素デバイスとして、流体を制御することができるバルブ等のデバイスがある。バルブをデバイスに組み込むことにより、マイクロチャネルを流れる流体の流れ方向を規定したり、流体の流れそのものを制御したりすることができる。
【0004】
例えば、非特許文献1には、柔らかいポリマー物質であるジメチルポリシロキサン(PDMS)の形状変化を利用して、マイクロ流路を開閉するデバイスが記載されている。
【0005】
また例えば、特許文献1には、中空部が設けられたガラス基板を用い、中空部の容積を変更することで流体を制御することができるマイクロスケールのバルブが設けられた流体制御デバイスが記載されている。
【0006】
ところで、近年、マイクロスケールの微細空間から更にスケールを小さくしたナノスケールの微細空間の検討が進められている。
【0007】
ナノスケールの微細空間は、単一細胞よりも圧倒的に小さいため、単一細胞分析デバイスとしての利用も期待されている。例えば、大きさが数十μmの細胞一個の中のタンパク質などを、それよりも圧倒的に小さな数十~数百nmの拡張ナノ空間で分析することで、これまでの多数細胞の平均では分からなかった各細胞固有の機能解析が可能となる。また例えば、癌診断などを初期に発生した癌細胞一個で行うことなどが期待される。
【0008】
さらに、ナノスケールの微細空間を用いたデバイスは、超高感度な分析ツールになることも期待される。
このように、拡張ナノ空間を利用することで、高感度、高速のクロマトグラフィ、単一分子や可算個分子(数えられる程度の分子)のイムノアッセイ等が実現可能となる。
【0009】
表面の影響が支配的なナノスケールの微細空間内では、マイクロスケールの微細空間と比べて溶液物性が特異な性質を示す。そのため、この特異な溶液物性を利用した新たなデバイスに注目が集まっている。
【0010】
このような数十~数百nmの拡張ナノ空間を利用した革新的な機能デバイスにおいても、ナノチャネル内を流れる流体を制御したいという要望がある。例えば、非特許文献2には、ナノ流路内に疎水部と親水部を設け、これらの界面のラプラス圧を利用したストップバルブが記載されている。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2014-29327号公報
【0012】

【非特許文献1】Marc A.Unger et al.,Science,Vol.288,p113-116,2000.
【非特許文献2】K.Mawatari et al.,Anal.Chem,2012,84,10812-10816.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、ナノサイズの流路を開閉自在に制御できるナノ流体デバイスは実現されていなかった。
【0014】
例えば、非特許文献1に記載のように柔らかいPDMS等は、ナノサイズの流路を作製することができても、その流路を開閉自在に制御するバルブとして機能することは難しい。
【0015】
ナノサイズの流路はマイクロサイズの流路と比較して狭い。そのため、流路内にかかる内圧が高く、流路の開閉を行う際に押圧を強くする必要がある。しかしながら、流路を構成する材質として柔らかいPDMS等を用いると、内圧に押されてPDMSが変形し、設計されたナノ流路の形状を維持することができなくなる。また押圧時の変形が強すぎて、PDMS同士が吸着する場合もあり、ナノ流路を維持することができない。つまり、ナノ流路を開閉するナノ流体デバイスとしてPDMS等の柔らかい部材は用いても充分な効果を得ることができない。またこの他にも、流路を構成する材質としてPDMS等を用いたナノ流体デバイスは、有機系の化学プロセスで用いることができないという問題もある。
【0016】
また例えば、特許文献1に記載の流体制御デバイスに用いられるダイアフラム型のバルブ構造は、ナノスケールにスケールダウンすることができない。特許文献1のダイアフラム型のバルブは、ガラスに中空部を形成し、中空部の容積を変更することで、流体の流れを制御している。ガラスに制御して設けることができる中空部の穴径は、数十μm~数百μm程度である。すなわち、ナノスケールの流路に対して中空部を適用しようとすると、穴径が大きすぎ、バルブとして適切に機能することができない。また集束イオンビーム(FIB)を用いることで、ビーム径を数nmから数百nmまで絞り、貫通孔を設けることも考えられるが、FIB加工ではガラスを貫通するほどの穴を形成することができない。
【0017】
一方で、非特許文献1に記載のラプラス圧を利用したストップバルブは、ナノサイズの流路の流れを制御できる。しかしながら、ラプラス圧を利用したストップバルブは、液体の表面張力によって生じるラプラス圧を閾値として流体を制御している。そのため、流体の流れを一回しか制御することができず、複数回にわたって自在に流体の流れを制御することは難しい。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ナノ流路を開閉できるバルブが設けられたナノ流体デバイスを提供することを目的とする。またこれらのナノ流体デバイスを用いた化学分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用した。
(1)本発明の一態様に係るナノ流体デバイスは、深さ又は幅の少なくとも一方が、10nm以上1000nm以下のサイズの溝を、一面にする第1基板と、該第1基板と互いの一面同士を接合して一体に設けられ、前記第1基板の深さ又は幅の少なくとも一方が、10nm以上1000nm以下のサイズの溝とともにナノ流路を形成する第2基板とを備えたナノ流体デバイスであって、前記第1基板または前記第2基板のいずれか一方は、平面視して前記ナノ流路と重なる位置の一部に少なくとも薄肉部を備え、前記ナノ流路は、一方向に延在する流路部と、平面視で前記薄肉部と重なる位置に設けられ、前記流路部より幅が広い動作領域である貯留部と、を備え、前記貯留部の幅が、2μm以上であり、前記貯留部の深さが、10nm~1000nmであり、前記ナノ流路を形成する前記第1基板及び前記第2基板は、ヤング率が10Pa以上であり、前記薄肉部が押圧された際に、前記ナノ流路を塞ぐように前記薄肉部が変形する。
【0021】
)上記(1に記載のナノ流体デバイスにおいて、前記薄肉部のナノ流路が延在する方向の幅が2μm~100μmであってもよい。
【0023】
)上記(1)または(2)に記載のナノ流体デバイスにおいて、前記第1基板または前記第2基板のうち、前記薄肉部を備えない方の基板が、前記薄肉部に相対する前記ナノ流路内の位置に、変形した薄肉部が当たる突起部を有してもよい。
【0024】
)上記(1)~()のいずれか一つに記載のナノ流体デバイスにおいて、前記第1基板または前記第2基板のうち、前記薄肉部を備えない方の基板が、前記薄肉部に相対する前記ナノ流路内の位置に、変形した薄肉部の形状に合わせた凹部を有してもよい。
【0025】
)上記(1)~()のいずれか一つに記載のナノ流体デバイスにおいて、前記押圧を行う押圧機構を備えてもよい。
【0026】
)本発明の一態様に係る化学分析装置は、上記(1)~()のいずれか一つに記載のナノ流体デバイスを備える。
【0027】
)本発明の一態様に係る化学分析装置は、上記(1)~()のいずれか一つに記載のナノ流体デバイスと、該ナノ流体デバイスを挟むように配置されたマイクロスケールのマイクロ流路を有する2つのマイクロ流路デバイスとを備え、前記ナノ流体デバイスと前記2つのマイクロ流路デバイスのそれぞれとは、前記ナノ流路と前記マイクロ流路との連通によって連結され、前記ナノ流体デバイスで化学分析を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様に係るナノ流体デバイスによれば、ナノ流路を自在に開閉することができ、ナノ流路を流れる流体を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係るナノ流体デバイスを模式的に示した斜視模式図である。
【図2】本発明の一態様にかかるナノ流体デバイスを切断した断面(図1のA-A面)を模式的に示した図である。
【図3】本発明の一態様に係るナノ流体デバイスの平面模式図である。
【図4】本発明の一態様に係るナノ流体デバイスの機能を説明するための断面模式図である。
【図5】本発明の一態様にかかるナノ流体デバイスを切断した断面の変形例を模式的に示した図である。
【図6】本発明の一態様にかかるナノ流体デバイスを切断した断面の変形例を模式的に示した図である。
【図7】本発明の一態様にかかるナノ流体デバイスを切断した断面の変形例を模式的に示した図である。
【図8】本発明の一態様にかかるナノ流体デバイスを切断した断面の変形例を模式的に示した図である。
【図9】本発明の一態様に係るナノ流体デバイスの平面模式図である。
【図10】本発明の一態様に係るナノ流体デバイスの機能を説明するための断面模式図である。
【図11】本発明の一態様に係る化学分析装置の斜視模式図である。
【図12】実施例1の流体デバイスに蛍光溶液を注入し、アクチュエーターを動作し、ナノ流路を開閉前後の顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。

【0031】
(ナノ流体デバイス)
図1は、本発明の一態様にかかるナノ流体デバイスの斜視模式図である。ナノ流体デバイス10は、溝1aを有する第1基板1と、第1基板1と接合する第2基板2とからなる。ナノ流体デバイス10の使用態様時においては、ナノ流体デバイス10には、ナノ流体デバイス10の所定の箇所を押圧するアクチュエーター(押圧機構)3が設けられる。

【0032】
ナノ流体デバイス10は、第1基板1と第2基板2が接合されることによって形成されたナノ流路Cを有する。ナノ流路Cは、第1基板1の溝1aと第2基板2の一面によって形成されている。

【0033】
図2は、本発明の一態様にかかるナノ流体デバイスを切断した断面(図1のA-A面)を模式的に示した図である。図2に示すように、アクチュエーター3によって押圧される側の第2基板2には薄肉部2Aが設けられている。図2におけるナノ流体デバイス10においては、第2基板2全体が薄化され薄肉部2Aとなっている。薄肉部2Aは、アクチュエーター3の押圧により変形する部分であり、バルブの動作部である。

【0034】
薄肉部2Aが設けられていない第1基板1の薄肉部2Aと相対する位置には、突起部1Aが設けられている。アクチュエーター3の押圧により変形した薄肉部2Aが突起部1Aと密着することで、ナノ流路Cが塞がれる。すなわち、ナノ流体デバイス10では、アクチュエーター3の押圧により、ナノ流路Cを開閉することができる。

【0035】
薄肉部2Aの厚みは、押圧する圧力及び第2基板2の硬度等によって異なる。アクチュエーター3の押圧により薄肉部2Aと突起部1Aが密着するのに必要な動作量が充分小さければ、薄肉部2Aの厚みは10mm程度でもよいが、薄肉部2Aの厚みは100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。また薄肉部2Aの厚みは、100nm以上であることが好ましい。
薄肉部2Aがこの厚みの範囲内であれば、薄肉部2Aが押圧により破断することなく、変形することができる。

【0036】
薄肉部2Aにアクチュエーター3を押圧する圧力は、ナノ流体デバイスを構成する材料のヤング率、厚み、押圧箇所の面積等によって変化する。しかしながら、ナノ流路内の内圧以上の押圧で押す必要があり、10Pa以上であることが好ましく、10Pa以上であることがより好ましく、10Pa以上であることがさらに好ましい。

【0037】
図3は、本発明の一態様に係るナノ流体デバイスの平面模式図である。図3に示すナノ流体デバイス10に設けられたナノ流路Cは、流路部C1と、貯留部C2とを有する。流路部C1は、流体を供給側から排出側に向かって流す通路である。貯留部C2は、アクチュエーター3の押圧により流体が堰き止められた際に、流体を貯留する。貯留部C2は、バルブの動作部である薄肉部2Aが動作できる動作領域でもある。貯留部C2を有することで、流体を堰き止めた際に流路抵抗が急激に大きく変化することを避けることができる。

【0038】
ナノ流路Cは、深さ又は幅の少なくとも一方が、拡張ナノサイズである。拡張ナノサイズとは、10nm~1000nmまでのサイズを意味する。拡張ナノサイズは、大きさが数十μmの細胞一個中のタンパク質と比較しても小さい。そのため、各細胞それぞれを分離して流通することができる。またナノ流路Cの空間体積が、フェムトリットルからアトリットルと極めて小さくなり、ナノ流路Cに供給する液量を極めて少ない量とすることができる。

【0039】
ナノ流路Cの内、流路部C1の深さDは、10nm~1000nmであることが好ましく、100nm~600nmであることがより好ましく、300nm~500nmであることがさらに好ましい。また流路部C1の幅Wは、10nm~1000nmであることが好ましく、500nm~1000nmであることがより好ましく、700nm~900nmであることがさらに好ましい。流路部C1が当該範囲内であれば、流路部C1は加工精度よく加工することができると共に、多数細胞が一度に流路部C1に流入することを防ぐことができる。

【0040】
ナノ流路Cの貯留部C2の体積は、ピコリットル以下であることが好ましく、以下の関係式(1)を満たすことが好ましい。

【0041】
【数1】
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【0042】
貯留部C2の体積が拡張ナノサイズのナノ流路C1から供給される流体の体積に対して極めて大きいと、貯留部C2に流入した溶液が貯留部C2を満たすことができずデッドスペースが生じる。その結果、ナノ流路Cを塞いでいないのに、ナノ流路Cの排出側に流体が流通しない場合が生じ、ナノ流体デバイス10の流体の制御性が低下する。

【0043】
上述のように、ナノ流路Cは拡張ナノサイズである。つまり、流路内に流れる流体の体積はフェムトリットルからアトリットルである。貯留部C2の体積がピコリットル以下であれば、貯留部C2にデッドスペースが生じ、流体が貯留部C2で滞留することを防ぐことができる。

【0044】
また式(1)は、よりデッドスペースが生じにくくなる条件を示している。式(1)の分子は貯留部C2の体積を示している。一方で、式(1)の分母は、貯留部C2と流路部C1の境界から流路部C1側に貯留部C2の幅W分だけ離れた領域における流路部C1の体積を示している。すなわち分母は、ナノ流路Cに流体を流通した際の貯留部C2に流入することとなる液量の概算体積を示している。この流入量に対して、貯留部C2の体積が大きすぎると、デッドスペースが生じやすくなる。デッドスペースが生じることを避け、貯留部C2で流体が対流することを防ぐためには、式(1)の左辺が10より小さいことが好ましく、5より小さいことがより好ましく、3より小さいことがさらに好ましい。

【0045】
貯留部C2の深さD及び幅Wは、貯留部C2の体積が上述の関係を満たすように適宜設定することができる。

【0046】
貯留部C2の深さは、10nm~1000nmであることが好ましく、20nm~300nmであることがより好ましく、50nm~200nmであることがさらに好ましい。
貯留部C2の深さが深いと、薄肉部2Aの形状変位量が大きくなる。この場合、薄肉部2Aの押圧を高くする必要があり、薄肉部2Aが破断しやすくなる。一方で、貯留部C2の深さが浅すぎると、ガラスの表面粗さの影響を受けてしまう。ガラスの表面状態によっては、流体の制御性が低下してしまう。

【0047】
貯留部C2の幅Wは、貯留部C2の深さDと貯留部C2の体積の条件から逆算することができる。具体的には、貯留部C2の幅Wは、2μm~100μmが好ましく、10μm~50μmがより好ましく、20~40μmがさらに好ましい。貯留部C2の幅Wがこの範囲内であれば、貯留部C2内にデッドスペースが形成されることを避けることができる。なお貯留部C2の幅は、薄肉部2Aのナノ流路Cが延在する方向の幅と一致することが好ましい。

【0048】
また上記では貯留部C2の体積の観点で、貯留部C2の深さD及び幅Wの好ましい範囲を定義した。一方で、貯留部C2をバルブの動作部に対する動作領域としての観点から、貯留部(動作領域)C2の深さD及び幅Wの好ましい範囲を決定することもできる。

【0049】
バルブの動作部である薄肉部2Aが押圧された際の薄肉部(バルブ動作部)2Aの曲率を小さくするためには、貯留部(動作領域)C2の幅Wは広い方が好ましい。具体的には、貯留部(動作領域)C2の幅Wは、2μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが好ましい。

【0050】
また押圧時の薄肉部(バルブ動作部)2Aの形状変位量を小さくするためには、貯留部(動作領域)C2の深さDは浅い方が好ましい。具体的には、貯留部(動作領域)C2の深さDは、10nm以上であることが好ましく、1μm以下であることが好ましい。

【0051】
第1基板1及び第2基板2に用いられる材料は、ナノ流路Cを形成し、形状を維持することができる剛性を有するものであれば特に問わない。ナノ流路Cを形成し、形状を維持できる剛性としては、例えば、ヤング率が10Pa以上であることが好ましく、ヤング率が10Pa以上であることがより好ましく、ヤング率が1010以上であることがさらに好ましい。

【0052】
具体的には、ガラス、シリコン、セラミックス、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PET)等を第1基板1及び第2基板2に用いることができる。例えばガラス、シリコン、セラミックスはヤング率が1010~1011Paであ。PDMSはヤング率が10Paと柔らかい。柔らかい材料は、流路内を流れる流体の内圧により変形することが考えられ、好ましくない。




【0053】
また有機系の化学プロセスでの利用も考慮すると、ガラス、シリコン、セラミック等の無機系の材料を用いることが好ましい。ナノ流体デバイス10の製造の容易さという観点からは、ガラス、シリコン等を用いることが好ましい。これらは、後述する低温接合によりナノ流路Cを形成できる。

【0054】
図4は、本発明の一態様に係るナノ流体デバイスの機能を説明するための断面模式図である。図4の左側の図に示すように、第2基板2にアクチュエーター3を押圧していない場合は、ナノ流路Cは開いているため、ナノ流路C内を流体が流通する。

【0055】
これに対し、図4の右側の図に示すように、第2基板2にアクチュエーター3を押圧すると、第2基板2の薄肉部2Aが変形する。変形した薄肉部2Aと、第1基板1の突起部1Aが密着することにより、ナノ流路Cが閉じられ、ナノ流路C内の流体の流れが阻害される。

【0056】
ナノ流路Cの開閉前後における流路抵抗の変化率は、10倍以上であることが好ましく、30倍以上であることがより好ましく、50倍以上であることがさらに好ましい。流路抵抗が大きいということは、ナノ流路C内を流体が流れにくいことを意味し、逆に流路抵抗が小さいということは、ナノ流路C内を流体が流れやすいことを意味する。

【0057】
すなわち、流路抵抗の変化率が大きいということは、ナノ流路Cが閉じた状態で流体が流れにくく、ナノ流路Cが開いた状態で流体が流れやすいことを示す。流路抵抗の変化率が上記範囲内であれば、ナノ流路Cを開くと同時に排出側に流体を流すことができ、ナノ流体デバイス10の応答特性を高めることができる。

【0058】
上述のように、本発明の一態様に係るナノ流体デバイス10は、アクチュエーター3により押圧を行う又は押圧を止めることにより、ナノ流路Cを自在に開閉することができる。

【0059】
アクチュエーター3等による機械的な力による流路の開閉は、流路を構成する基材の剛性が高い場合は、不可能であると考えられていた。これは、押圧に対し剛性の高い基材の変位量が少ないためである。そのため、マイクロ流路等では、剛性の低いPDMS等が一般に用いられていた。

【0060】
一方で、ナノ流路Cを形成するためには、加工精度の関係から剛性の高い基材が求められている。すなわち、機械的な流路開閉の報告はされていなかった。しかしながら、本発明の一態様に係るナノ流体デバイス10は、ナノ流路C自体が拡張ナノサイズと極めて小さな流路であり、剛性の高い基材を用いても充分な変位量を稼ぐことができる。その結果、本発明の一態様に係るナノ流体デバイス10は、機械的な力によりナノ流路Cを自在に開閉することができる。

【0061】
以上、本発明の一実施形態にかかるナノ流体デバイス10について図面を参照して説明したが、本発明の要旨を変更しない限りにおいて、各構成に種々の変更を加えることができる。

【0062】
例えば、図5に示すナノ流体デバイス11のように、第1基板1に突起部設けず、ナノ流路Cの深さを一定としてもよい。また図3におけるナノ流路Cの貯留部C2を設けない構成としてもよい。すなわち、一方向に延在するナノ流路C上に、アクチュエーター3を配設し、押圧する構成でもよい。このような構成によれば、ナノ流路Cの加工を容易に行うことができる。

【0063】
また図6に示すナノ流体デバイス12のように、第2基板2の薄肉部2Aは、アクチュエーター3が押し付けられる部分のみに設ける構成としてもよい。このように、第2基板2のうち押圧による形状変位が必要な部分のみを薄肉化し、その他の部分を厚くすることによりナノ流体デバイス12に外力が加わっても、ナノ流体デバイス12が破損することを避けることができる。

【0064】
この場合、第2基板2において薄肉部2Aが設けられる幅(ナノ流路が延在する方向の幅)は2~100μmであることが好ましい。薄肉部2Aの幅が当該範囲であることで、アクチュエーター3により押圧される部分のみに薄肉部2Aを設けることができ、ナノ流体デバイス12が破損することをより抑制することができる。

【0065】
またこの他、図1では、第1基板1のみに溝1aが設けられているが、図7に示すナノ流体デバイス13のように、第2基板2にも溝1aに対応する溝2aを設けてもよい。この場合、第1基板1の溝1aと第2基板2の溝2aによりナノ流路Cが形成される。

【0066】
また図2では、第2基板2側にアクチュエーター3が配設された例を図示しているが、図8に示すナノ流体デバイス14のように、アクチュエーター3が第1基板1を押圧する構成としてもよい。この場合は、第1基板1のアクチュエーター3により押圧される部分が、変形する必要があるため薄肉部1Bとなる。第1基板1の薄肉部1B以外の部分は、薄肉部1Bより薄くてもよいし、厚くてもよい。

【0067】
またナノ流路Cの貯留部(動作領域)C2の形状は、図3に示すような正方形上に限られず、任意の形状をとることができる。例えば、図9に示すナノ流体デバイス16のように、貯留部(動作領域)C2の形状は、平面視円形でもよい。貯留部C2の形状が平面視円形であれば、アクチュエーター3の押圧が、貯留部C2に均一に分散する。

【0068】
貯留部C2の形状が円形の場合、貯留部C2の幅は、貯留部C2の直径を意味する。ナノ流路Cの貯留部C2の体積の関係式は、以下の関係式(2)を満たすことが好ましい。

【0069】
【数2】
JP0006806374B2_000003t.gif

【0070】
また図10に示すナノ流体デバイス17のように、ナノ流路C内の薄肉部2Aに相対する位置に、変形した薄肉部の形状に合わせた凹部1Cを有してもよい。

【0071】
図10は、本発明の一態様に係るナノ流体デバイス17の機能を説明するための断面模式図である。図10の左側の図に示すように、第2基板2にアクチュエーター3を押圧していない場合は、流路部C1と貯留部(動作領域)C2とは、接続路C3を介して流体が流通する。接続路C3は、流路部C1と貯留部(動作領域)C2とを接続する第1基板1の突起部1Aに設けられた溝である。

【0072】
これに対し、図10の右側の図に示すように、第2基板2にアクチュエーター3を押圧すると、第2基板2の薄肉部2Aが変形する。変形した薄肉部2Aと、凹部1Cとは、面で接触する。薄肉部2Aと凹部1Cが面で接触すると、流体は接続路C3から先に進むことができず、バルブは閉じる。面接触は点接触と比較して密着性が高い。例えば、図4に示すように点接触の場合、アクチュエーター3を押し当てた押圧点の周囲の隙間を介して流体が漏れ出る場合がある。しかしながら、面接触とすることで、このような流体の漏れ出しも防ぐことができる。

【0073】
(化学分析装置)
本発明の一態様に係る化学分析装置は、上述のナノ流体デバイスを備える。図11は、本発明の一態様に係る化学分析装置100の斜視模式図である。化学分析装置100は、上述のナノ流体デバイス10と、該ナノ流体デバイス10を挟むように配置されたマイクロスケールのマイクロ流路を有する2つ以上のマイクロ流路デバイス20とを備える。ナノ流体デバイス10と2つ以上のマイクロ流路デバイス20のそれぞれとは、ナノ流路とマイクロ流路との連通によって連結されている。

【0074】
図11に示すように、化学分析装置100は、マイクロ流路デバイス20によって形成されるマイクロスケール領域μと、ナノ流体デバイス10を含むナノスケール領域nとからなる。

【0075】
マイクロ流路デバイス20の構成は、公知の構成を用いることができる。例えば、図11に示すように、注入口21から注入された試料を一時保管する一時保管領域22と、一時保管領域22から運ばれる細胞を分解する分解処理領域23とを有してもよい。分解処理領域23による細胞の分解手段は特に問わない。流路内にピラー等を設置し、流体の流れに沿って流通する細胞を分解する構成としてもよい。

【0076】
図11において、マイクロスケール領域μは、人間が作業するマクロスケールな領域と、ナノスケール領域nを繋ぐ役割をする。例えば、マクロなスケールで人間が試験管等で分離した細胞等の試料を注入口21から注入する。注入された試料は、マイクロ流路を流通し、一時保管領域22に貯留される。そして、一時保管領域22から1つの細胞を光ピンセット等で選択し、分解処理領域23へ運ぶ。運ばれた細胞を分解処理領域23で分解し、ナノスケール領域nで供給する。このような手順で、マイクロスケール領域μは、マクロスケールとナノスケールを繋ぐことができる。

【0077】
上述の手順でナノ流体デバイス10を含むナノスケール領域nに供給された試料は、ナノスケール領域で種々の測定を行われる。ナノスケール領域nは、大きさが数十μmの細胞一個中のタンパク質等と比較しても圧倒的に空間体積が小さく、多数細胞の平均ではわからなかった各細胞固有の機能解析が可能となる。また他にも、ナノ流路は、サイズが制御された空間でかつ比表面積が非常に高いため、クロマトグラフィを用いた高効率な分離操作やイムノアッセイを用いた単一分子又は可算個分子(数えられる程度の分子)検出も可能となる。

【0078】
例えば、ナノスケール領域nの所定の部分に、所定の機能性デバイス15を設置する。機能性デバイス15は、イムノアッセイでも、クロマトグラフィでも必要に応じたものを設置することができる。

【0079】
図11に示すように、マイクロスケール領域μからナノスケール領域nに供給された試料を含む流体は、ナノ流路を流通しながら機能性デバイス15へ到達する。この際、機能性デバイス15に到達するまでに、本発明の一態様に係るナノ流体デバイス10が複数設置されている。本発明の一態様に係るナノ流体デバイス10は、バルブとして機能する。そのため、ナノ流体デバイス10を開閉することで、流体が流れる流路を制限することができる。また機能性デバイス15に流体を供給するタイミングも制御することができる。

【0080】
また図11では、機能性デバイス15を一つのみ設置したが、機能性デバイス15を複数設置し、用途に応じてナノ流体デバイス10によって流路を制限し、様々な分析を一つの素子で行うことができる化学分析装置100を実現することができる。

【0081】
ナノスケール領域nで種々の計測が行われた試料は、再度マイクロスケール領域μに送られ、排出口24からマクロスケールに排出される。

【0082】
上述のように、本発明の一態様に係る化学分析装置を用いると、用途に応じて様々な分析を一度に行うことができる装置を実現することができる。また所定の機能性デバイスに試料を供給するタイミングも制御することができ、より精密な分析を行うことができる。

【0083】
(化学分析装置及びナノ流体デバイスの製造方法)
本発明の一態様に係る化学分析装置の製造方法は、第1基板及び/又は第2基板の一面に溝を形成する工程と、形成した溝内の一部に所定の機能を付与する工程と、第2基板2の所定の位置を薄肉化する工程と、接合される第1の基板及び/又は第2の基板の接合面をフッ素処理して親水性を調整する工程と、第1基板と第2基板を接合し、ナノ流路を形成する工程とを有する。以下、図1~図11を利用して、化学分析装置及びナノ流体デバイスの製造方法について具体的に説明する。

【0084】
まず、第1基板1と第2基板2とを準備する。準備した第1基板1に溝1aを作製する。溝1aの作製方法は特に制限されるものではないが、基板の表面に、レーザー加工、エッチング加工など、適宜手段を用いて、そのサイズを適宜調整しながら形成する。また本発明の一態様に係るナノ流体デバイス10のナノ流路Cとなる溝1aの他に、機能性デバイス15となる部分や、その他のナノ流路となる部分にも溝を形成する。例えば、機能性デバイスとして、マッハツェンダー素子等を用いる場合は、2つに分岐した溝を形成する。

【0085】
次に、形成した溝内の一部に所定の機能を付与する。例えば、化学分析装置をイムノアッセイとして用いる場合は、機能性デバイス15となる部分に抗体を設置する。この他、付与する機能に合せて必要なものを溝内に設置する。

【0086】
次に、第2基板2を薄肉化する。図1に示すように、第2基板2全体が薄い場合は、市販の薄層ガラスを購入することができる。図6に示すように所定の位置のみを薄肉化する場合は、溝1aを形成した方法と同様に、レーザー加工、エッチング加工等により、薄肉化することができる。

【0087】
次に、接合される第1基板1及び第2基板のうち、少なくとも一方の基板の接合面をフッ素処理して親水性を調整する。
親水性を調整する工程として、基板の接合面をフッ素処理する。フッ素化処理は、種々の方法を用いることができ、例えば、酸素プラズマの照射と同時にフッ素(例えば、四フッ化メタン:CF)を供給することで行うことで実現することができる。このときの酸素プラズマ条件としては、例えば酸素圧力60Pa、250W、40秒照射等を用いることができる。また親水化の程度としては、フッ素化処理を行った表面における水の接触角が10°~50°になっていれば、十分親水化されているとみなすことができる。当該範囲の接触角を有していれば、接合後の接合強度を0.5J/m以上とすることができ、十分な接合強度を得ることができる。

【0088】
最後に、フッ素処理した面が接合面となるように、第1基板1と第2基板2を接合する。当該方法を用いると、第1基板1と第2基板2を低温で接合することができ、熱によりダメージを受けることを避けることができる。

【0089】
接合時の加熱温度は、25℃~400℃であることが好ましく、常温かもしくはそれに近い温度(25℃~100℃)であることがより好ましい。当該温度範囲内であれば、例えば、機能性デバイス15のために設置された抗体等にダメージを与えるダメージを小さくすることができる。熱融着法等の方法による基板接合では、温度が1000℃以上となるため、デバイス内部に表面修飾を施すと、その表面修飾された抗体等へのダメージが大きくなる。

【0090】
接合時の加圧圧力は、1000N~5000Nであることが好ましく、4000N~5000Nであることがより好ましい。1000N未満であると、十分な接合強度を維持することができない。充分な接合強度を得ることができないと、接合面を通過する試料が一部漏洩してしまう恐れも生じる。これに対し、5000Nを超えると基板が破損してしまう恐れがある。

【0091】
また加圧時間は、1時間~10時間であることが好ましく、9時間~10時間であることがより好ましい。当該範囲であれば接合強度を高くすることができる。

【0092】
上述のような手順を行うことで、ナノ流体デバイス及びナノ流体デバイスや機能性デバイスを含む化学分析装置を容易に得ることができる。またこの際、所定の機能を発現する抗体等にダメージを与えることを避けることができる。

【0093】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0095】
(実施例1)
図1に示す構成と同一の構成のナノ流体デバイスを作製した。ナノ流路の構成は以下のようにした。
流路部:深さ400nm、幅900nm
貯留部:深さ100nm、一辺の幅30μm、体積90fL
流通部の一端から貯留部側の一端までの長さ:400μm
式(1)の左辺で表記されるデッドボリューム:8.3倍
流路抵抗変化:80倍
アクチュエーターの先端幅:10μm
第1基板及び第2基板の材質:ガラス
第2基板の厚み(薄肉部を含む):10μm
【実施例】
【0096】
上述のナノ流体デバイスの供給口及び排出口の両端には、マイクロスケールのマイクロ流路を形成し、圧力コントローラーによって20kPaの圧力で、蛍光溶液を供給した。
【実施例】
【0097】
図12は、実施例1の流体デバイスに蛍光溶液を注入し、アクチュエーターを動作し、ナノ流路を開閉前後の顕微鏡画像である。図12(a)はアクチュエーターを押しつけていない状態の顕微鏡画像であり、図12(b)はアクチュエーターを押し付けた状態の顕微鏡画像である。アクチュエーターの押圧は、100nm押し込み時に、ガラス表面に680MPaが加わっている想定で行った。
【実施例】
【0098】
図12(a)ではナノ流体デバイスの流路全体が光っているのに対し、図12(b)では図示右側が光っていないことが分かる。すなわち、アクチュエーターの押圧を変えることにより、蛍光溶液の流通を制御できていることが分かる。つまり、ナノ流体デバイスがナノ流路内を流れる流体の流通を制御するバルブとして機能していることが分かる。
【実施例】
【0099】
(参考例1)
日本電気硝子社製の厚み10μmの薄層ガラスを用いて、薄層ガラスの変位を測定した。測定方法は、直径30μmの穴を有するガラス上に薄層ガラスを設置した。そして、穴の上部に設置された薄層ガラスを、先端径10μmのアクチュエーターを用いて押し付け、押圧に対する薄層ガラスの変位を測定した。
【実施例】
【0100】
薄層ガラスの変位量は、押圧に対して変位は比例して増えていき、2.5μmまで変位させた時点で薄層ガラスは破断した。すなわち、10μmの薄層ガラスを用いれば、破断することなく拡張ナノ空間のナノ流路を開閉できることが分かる。
【符号の説明】
【0101】
1…第1基板、1a…溝、1A…突起部、1C…凹部、2…第2基板、2A…薄肉部、3…アクチュエーター、10,11,12,13,14,16、17…ナノ流体デバイス、15…機能性デバイス、20…マイクロ流路デバイス、21…注入口、22…一時保管領域、23…分解処理領域、24…排出口、C…ナノ流路、C1…流路部、C2…貯留部(動作領域)、C3…接続路、n…ナノスケール領域、μ…マイクロスケール領域
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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