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明細書 :グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6789573号 (P6789573)
登録日 令和2年11月6日(2020.11.6)
発行日 令和2年11月25日(2020.11.25)
発明の名称または考案の名称 グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド及びその使用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K   7/06        (2006.01)
C07K  17/02        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61K  47/64        (2017.01)
A61K  47/61        (2017.01)
A61K  47/60        (2017.01)
A61K  51/08        (2006.01)
A61K  49/14        (2006.01)
A61K  49/00        (2006.01)
FI C12N 15/09 ZNAZ
C07K 7/06
C07K 17/02
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 47/64
A61K 47/61
A61K 47/60
A61K 51/08
A61K 49/14
A61K 49/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 23
出願番号 特願2017-547772 (P2017-547772)
出願日 平成28年10月21日(2016.10.21)
国際出願番号 PCT/JP2016/081279
国際公開番号 WO2017/073485
国際公開日 平成29年5月4日(2017.5.4)
優先権出願番号 2015211959
優先日 平成27年10月28日(2015.10.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和元年8月6日(2019.8.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
発明者または考案者 【氏名】近藤 英作
【氏名】齋藤 憲
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100141139、【弁理士】、【氏名又は名称】及川 周
審査官 【審査官】西垣 歩美
参考文献・文献 特表2014-516975(JP,A)
国際公開第2005/087792(WO,A1)
国際公開第2003/066663(WO,A1)
米国特許出願公開第2005/0260133(US,A1)
HO IA. et al.,Isolation of peptide ligands that interact specifically with human glioma cells.,Peptides,2010年,Vol.31, No.4,pp.644-650
HO IA. et al.,Identification and characterization of novel human glioma-specific peptides to potentiate tumor-spec,Hum Gene Ther.,2004年,Vol.15, No.8,pp.719-732
HIGA M. et al.,Identification of a novel cell-penetrating peptide targeting human glioblastoma cell lines as a canc,Biochem Biophys Res Commun.,2015年 2月,Vol.457, No.2,pp.206-212
AGARWAL A. et al.,Rational identification of a novel peptide for targeting nanocarriers to 9L glioma.,J Biomed Mater Res A.,2008年,Vol.87, No.3,pp.728-738
WU C. et al.,A peptide-based carrier for intracellular delivery of proteins into malignant glial cells in vitro.,J Control Release.,2008年,Vol.130, No.2,pp.140-145
調査した分野 C12N 15/09
A61K 45/00
A61K 47/60
A61K 47/61
A61K 47/64
A61K 49/00
A61K 49/14
A61K 51/08
A61P 35/00
C07K 7/06
C07K 17/02
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)又は(c)ペプチド。
(a)配列番号1、2、3のいずれかで表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
c)配列番号1、2、3のいずれかで表される配列と同一性が90%以上である配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド
【請求項2】
L-アミノ酸からなるペプチドである請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のペプチドをコードすることを特徴とする核酸。
【請求項4】
請求項3に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のペプチドを含むことを特徴とするキャリア。
【請求項6】
さらに、標識物質又は修飾物質を備える請求項5に記載のキャリア。
【請求項7】
前記標識物質が、安定同位体、放射性同位体又は蛍光物質である請求項6に記載のキャリア。
【請求項8】
前記修飾物質が、糖鎖又はポリエチレングリコールである、請求項6又は7に記載のキャリア。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載のキャリアと生理活性物質とを備えることを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍治療用又は診断用である、請求項9に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド及びその使用に関する。
本願は、2015年10月28日に、日本に出願された特願2015-211959号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
原発性脳腫瘍の発生頻度は、人口10万人につき1年間に10~15人と言われており、そのうちの1/4を占めるのが神経膠腫(グリオーマ)と呼ばれる腫瘍群である。グリオーマの中でも高悪性度群として分類される退形成性星状細胞腫(グレード3)の5年生存率は約23%であり、膠芽腫(グリオブラストーマ)(グレード4)は約10%と著しく低い。グリオーマは既存脳組織に染み込むように浸潤していくことが腫瘍病変としての特徴であるため、生検による診断確定や開頭外科手術、放射線療法において可能な限り精密な腫瘍境界を含めた病変部の診断情報が必要となる。現在の中枢神経系疾患(脳内病変)に対する画像情報として最も高い精度を提供可能な検査又は診断法としては、例えば、造影剤を併用した、コンピューター断層撮影法(Computed Tomography:CT)、核磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging:MRI)、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)法等の検査方法が挙げられる。さらに精密な画像診断情報の取得方法としては、例えばフルオロデオキシグルコース(fluorodeoxy glucose:FDG)-PET法等が挙げられる。
【0003】
ところで、ペプチドをバイオマテリアルとして活用した医療分野での動向において、Tat、penetratin、polyarginine等の細胞膜透過性(細胞吸収性)ペプチドが着目されている。
しかしながら、これらのペプチドは、正常細胞又は正常組織と腫瘍細胞又は腫瘍組織との区別なく広汎且つ非選択的に吸収されるため、標的選択的な薬剤輸送を要求する悪性腫瘍の治療DDS(Drag Delivery System)ツールに応用することは、重篤な副作用を惹起する点で利用困難である。特に、世界的に実験系で汎用されているTat等の細胞膜透過性(細胞吸収性)ペプチドは、肝臓に集積を引き起こす性質が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
これに対して、cyclic RGDは、唯一医薬化されているペプチドである。cyclic RGDは、新生血管又は既存血管中の内皮細胞(及び一部の腫瘍細胞)で高発現することが報告されているαβインテグリンを標的としており、血管透過性亢進にその作用点を持っているため、単独でなく他の医薬との同時併用の形でイメージング剤やDDS剤として応用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第5721140号公報
【0005】

【非特許文献1】Vives E., et al., A Truncated HIV-1 Tat Protein Basic Domain Rapidly Translocates through the Plasma Membrane and Accumulates in the Cell Nucleus, J. Biol. Chem., 272, 16010-16017, 1997.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グリオーマは、現在もなお治療が困難で悪性腫瘍の中でも生存率が低い腫瘍のひとつとして非常に良く認識されており、効果的な治療方法が求められている。
また、上述の中枢神経系疾患(脳内病変)の検査又は診断方法では、患者に対する造影剤投与の身体的負担や合併症の危険性がある。さらに、FDG-PET検査は、FDGが取り込まれた細胞内又は組織内を検出する手法であり、グルコース代謝活性を反映するものであるため、特に糖代謝活性の亢進が恒常的に認められる脳において、脳内病変の描出は困難である。
また、特許文献1に記載のcyclic RGDは、腫瘍細胞及び腫瘍組織そのものを標的とするペプチドではないため、医療技術の面で未だ改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、グリオーマに直接作用し、特異的な集積性を有する新規ペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]以下の(a)又は(c)ペプチド。
(a)配列番号1、2、3のいずれかで表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
c)配列番号1、2、3のいずれかで表される配列と同一性が90%以上である配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド。
[2]L-アミノ酸からなるペプチドである[1]に記載のペプチド。
[3][1]又は[2]に記載のペプチドをコードすることを特徴とする核酸。
[4][3]に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。
[5][1]又は[2]に記載のペプチドを含むことを特徴とするキャリア。
[6]さらに、標識物質又は修飾物質を備える[5]に記載のキャリア。
[7]前記標識物質が、安定同位体、放射性同位体又は蛍光物質である[6]に記載のキャリア。
[8]前記修飾物質が、糖鎖又はポリエチレングリコールである[6]又は[7]に記載のキャリア。
[9][5]~[8]のいずれか一つに記載のキャリアと生理活性物質とを備えることを特徴とする医薬組成物。
[10]グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍治療用又は診断用である[9]に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グリオーマに特異的な集積性を有する新規ペプチドを提供することできる。また、グリオーマを簡便、高感度且つ選択的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】試験例1における各種ペプチドを添加した各種グリオーマ細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図2】試験例2における各種ペプチドを添加したprimary astrocytes細胞及びprimary glioblastoma細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図3】試験例3における各種ペプチドを添加したprimary neurons細胞及びprimary glioblastoma細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図4】試験例4におけるヒトグリオーマ細胞を皮下移植し、FITCで標識されたPEP1ΔNSペプチド、Peptide1、又はPeptide2を静脈内注射したマウスの各種組織での蛍光強度を示すグラフである。また、試験例4におけるヒトグリオーマ細胞を皮下移植し、FITCで標識されたPEP1ΔNSペプチド、Peptide1、又はPeptide2を静脈内注射したマウスの各種組織の明視野及び暗視野の蛍光顕微鏡写真である。
【図5A】試験例5におけるヒトグリオーマ細胞を右大脳半球内に移植し、Peptide2を尾静脈から注射したマウスの右大脳半球の明視野及び暗視野の蛍光顕微鏡写真である。
【図5B】試験例5におけるヒトグリオーマ細胞を右大脳半球内に移植し、Peptide2を尾静脈から注射したマウスの右大脳半球のスライスをHE染色した結果を示す蛍光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド]
一実施形態において、本発明は、以下の(a)~(c)のいずれかのペプチドを提供する。
(a)配列番号1、2、3のいずれかで表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド、
(b)配列番号1、2、3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド、
(c)配列番号1、2、3のいずれかで表される配列と同一性が60%以上である配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド。

【0012】
本実施形態のペプチドは、グリオーマに特異的な集積性を有する新規のペプチドである。

【0013】
本発明者らは、in vitro virus(IVV)法により、グリオーマに特異的な集積性を有する新規ペプチドを見出し、本発明を完成するに至った。
IVV法では、mRNAの3’末端にPEG(ポリエチレングリコール)スペーサーを介して抗生物質の一種のピューロマイシンを結合し、それを鋳型として無細胞翻訳反応を行うことにより、タンパク質とmRNAとがピューロマイシンを介して共有結合した単純なmRNA-タンパク質連結分子IVVが構築される。本発明者らは、IVVを独自に作製することにより、IVVライブラリーを構築した。この構築されたIVVライブラリーの中からベイト(餌)と結合するタンパク質を含むIVVをin vitroで釣り上げた後、そこに連結しているmRNAを逆転写反応し、PCRで増幅し、塩基配列を解読することによって、相互作用するタンパク質群を、ごく微量(質量分析法の千倍以上の感度)で同定できる。

【0014】
本実施形態のペプチドは、下記(a)のペプチドを含む。
(a)配列番号1、2、3のいずれかで表される配列を含むアミノ酸配列からなるペプチド。

【0015】
上記(a)における配列番号1、2又は3で表されるアミノ酸配列は、下記のアミノ酸配列で表される配列である。
RQAXXRLTV (配列番号1)
RCWYAVLYP (配列番号2)
RRIHXFPLH (配列番号3)
[上記の配列番号1又は配列番号3で表されるアミノ酸配列において、Xは、アスパラギン酸残基(D)又はグルタミン酸残基(E)を表す。]

【0016】
上記(a)のペプチドは、グリオーマに特異的な集積性を有する。また、本実施形態のペプチドは、配列番号1、2又は3で表されるアミノ酸配列のみからなるペプチドであっても、グリオーマに特異的な集積性を有する。

【0017】
本明細書において、「グリオーマ」とは、神経膠腫ともいい、神経膠(グリア)細胞から発生する腫瘍を意味する。また、「神経膠(グリア)細胞」とは、神経系(脳及び脊髄等)を構成する神経細胞ではない細胞の総称であり、神経に栄養を与え、神経の活動を支える役割を果たしている。
グリオーマには、様々な種類及び悪性度があり、例えば、表1に示すように分類できる。

【0018】
【表1】
JP0006789573B2_000002t.gif

【0019】
表1において、「悪性度」とは、グレード(grade)ともいい、細胞の顕微鏡観察所見の異常、又は増殖及び転移速度の予測に基づいて評価されるものである。悪性度は、表2に示すように分類できる(参考文献:中里洋一、脳腫瘍の新WHO分類、脳神経外科 36:473-491,2008)。

【0020】
【表2】
JP0006789573B2_000003t.gif

【0021】
表2において、MIB-1とは、抗Ki-67抗体のクローンの1つであって、増殖の程度を表わす細胞増殖マーカーである。また、Ki-67は乳癌、胃癌、大腸癌、子宮癌等多くの腫瘍において、分化度、血管侵襲及びリンパ節転移といった腫瘍の悪性度や予後とよく相関することが知られており、細胞増殖マーカーとして非常に有用である。

【0022】
上述したグリオーマは、様々な種類又は悪性度のグリオーマが混ざっていることが多く、同じ病名でも抗がん剤の効果、放射線治療の効果、生命予後等が異なる。また、様々な種類又は悪性度のグリオーマが混ざっていることで、腫瘍の一部分だけの生検では診断が難しいこともある。
上記(a)のペプチドは、上述した全ての種類又は悪性度のグリオーマの中でも、特に高悪性度のグリオーマであるグレード3、4の膠芽腫(グリオブラストーマ)に特異的な集積性を有するため、後述するように上記(a)のペプチドをキャリアとして使用することで、高悪性度のグリオーマ(グリオブラストーマ)を高感度且つ選択的に検出することができる。さらに、高悪性度のグリオーマ(グリオブラストーマ)を治療することができる。

【0023】
本明細書において、「グリオーマに特異的な集積性」とは、生体内正常組織及び他の系統の腫瘍細胞と比較して、グリオーマに高度に吸収され、集積する性質を意味する。

【0024】
配列番号1、2、3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、Xは、塩基性を有するアミノ酸残基であることが好ましく、アスパラギン酸残基(D)又はグルタミン酸残基(E)であることがより好ましく、アスパラギン酸残基(D)であることがさらに好ましい。

【0025】
上記(a)における配列番号1又は配列番号3で表されるアミノ酸配列のうち、より具体的には、下記配列番号4又は5で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
RQADDRLTV (配列番号4)
RRIHDFPLH (配列番号5)

【0026】
本実施形態のペプチドは、上記(a)のペプチドと機能的に同等なペプチドとして、下記(b)のペプチドを含む。
(b)配列番号1、2、3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された配列を含むアミノ酸配列からなり、且つ、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド。

【0027】
ここで、欠失、置換、若しくは付加されてもよいアミノ酸の数としては、1個以上15個以下が好ましく、1個以上10個以下がより好ましく、1個以上5個以下が特に好ましい。
さらに、前記(b)のペプチドは、グリオーマに特異的な集積性を有する。

【0028】
本実施形態のペプチドは、上記(a)のペプチドと機能的に同等なペプチドとして、下記(c)のペプチドを含む。
(c)配列番号1、2、3のいずれかで表されるアミノ酸配列と同一性が60%以上であるアミノ酸配列からなり、且つ、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチド。

【0029】
上記(a)のペプチドと機能的に同等であるためには60%以上の同一性を有する。係る同一性としては、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましく、95%以上が最も好ましい。
さらに、前記(c)のペプチドは、グリオーマに特異的な集積性を有する。

【0030】
ここで、基準アミノ酸配列に対する、対象アミノ酸配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列をアラインメントする。ここで、各アミノ酸配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列において、一致したアミノ酸の数を算出し、下記式(1)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
「配列同一性(%)」 = [一致したアミノ酸の数]/[対象アミノ酸配列のアミノ酸の総数]×100 (1)

【0031】
上記(a)~(c)のペプチドは、環状構造であってもよい。環状構造であることにより、グリオーマのみに吸収されやすくなる。また、上記(a)~(c)のペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、又はこれらの組み合わせからなるものであってもよく、L-アミノ酸からなるペプチドであることが好ましい。
L-アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸であり、D-アミノ酸は、L-アミノ酸残基のキラリティーが反転しているものである。また、グリオーマに特異的な集積性を高めるために、又は他の物性を最適化するために化学的修飾を受けていてもよい。

【0032】
上記(a)~(c)のペプチドは、さらに、N末端及びC末端にシステイン残基を備えていてもよい。具体的には、下記配列番号6、7又は8で表されるアミノ酸配列等が挙げられる。
CRQADDRLTVC (配列番号6)
CRCWYAVLYPC (配列番号7)
CRRIHDFPLHC (配列番号8)
本実施形態のペプチドは、N末端及びC末端にシステイン残基を備えることで、システイン残基が有するチオール基同士のジスルフィド結合を利用して環状化形態をとることができる。

【0033】
[ペプチドをコードする核酸]
一実施形態において、本発明は、上述したペプチドをコードする核酸を提供する。

【0034】
本実施形態の核酸によれば、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチドを得ることができる。

【0035】
上記のペプチドをコードする核酸としては、例えば、配列番号9、10、11のいずれかで表される塩基配列からなる核酸、又は、配列番号9、10、11のいずれかで表される塩基配列と80%以上、例えば85%以上、例えば90%以上、例えば95%以上の同一性を有し、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチドの構成成分となる各アミノ酸をコードする組み合わせの塩基配列のいかなるものも含めた核酸等が挙げられる。なお、配列番号9で表される塩基配列は、上記の配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする核酸の塩基配列であり、配列番号10で表される塩基配列は、上記の配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする核酸の塩基配列であり、配列番号11で表される塩基配列は、上記の配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドをコードする核酸の塩基配列である。

【0036】
ここで、基準塩基配列に対する、対照塩基配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、基準塩基配列及び対象塩基配列をアラインメントする。ここで、各塩基配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。続いて、基準塩基配列及び対象塩基配列において、一致した塩基の塩基数を算出し、下記式(2)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
「配列同一性(%)」 = [一致した塩基数]/[対象塩基配列の総塩基数]×100 (2)

【0037】
[ペプチドをコードする核酸を含むベクター]
一実施形態において、本発明は、上述した核酸を含むベクターを提供する。

【0038】
本実施形態のベクターによれば、グリオーマに特異的な集積性を有するペプチドを得ることができる。

【0039】
本実施形態のベクターは、発現ベクターであることが好ましい。発現ベクターとしては特に限定されず、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のプラスミド;pSH19、pSH15等の酵母由来プラスミド;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。

【0040】
上述の発現ベクターにおいて、上述のペプチド発現用プロモーターとしては特に限定されず、例えば、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-tkプロモーター等の動物細胞を宿主とした発現用のプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、REF(rubber elongation factor)プロモーター等の植物細胞を宿主とした発現用のプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、p10プロモーター等の昆虫細胞を宿主とした発現用のプロモーター等を使用することができる。これらプロモーターは、上述のペプチドを発現する宿主に応じて、適宜選択することができる。

【0041】
上述の発現ベクターは、さらに、マルチクローニングサイト、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点等を有していてもよい。

【0042】
[キャリア]
一実施形態において、本発明は、上述したペプチドを含むキャリアを提供する。

【0043】
本実施形態のキャリアによれば、目的物質をグリオーマまで簡便且つ効率よく運搬することができる。

【0044】
脳は2つの関門系、血液脳関門(Brain Blood Barrier:BBB)及び血液脳脊髄液関門(Blood-cerebrospinal fluid barrier:BCSFB)の存在によって、毒性である物質に対して保護されている。BBBの表面積は、BCSFBの表面積より約5000倍大きく、血清リガンドの取り込みに関する主な経路であると考えられている。また、BBBを構成する脳内皮は、中枢神経系の多くの疾患に有効であると考えられている薬剤の使用に関して、大きな障害となっている。また、原則として、約500ダルトンより小さい親油性分子のみがBBBを、すなわち血液から脳へ通過することができると考えられている。しかしながら、本実施形態のキャリアは、静脈注射で被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)に投与した場合において、BBBを通過することができ、脳内のグリオーマに到達し、選択的に吸収される。

【0045】
本実施形態のキャリアは、さらに、標識物質又は修飾物質を備えることが好ましい。また、本実施形態のキャリアは、標識物質及び修飾物質両方を備えていてもよい。標識物質又は修飾物質は、上述のペプチドと、直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていてよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。また、結合位置は、上述のペプチドのN末端又はC末端いずれでもよい。

【0046】
標識物質としては、例えば安定同位体、放射性同位体、蛍光物質、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)用核種、単一光子放射断層撮影(Single photon emission computed tomography:SPECT)用核種、核磁気共鳴画像法(Magnetic resonance imaging:MRI)造影剤、コンピューター断層撮影法(Computed Tomography:CT)造影剤、磁性体等が挙げられる。中でも、安定同位体、放射性同位体又は蛍光物質が好ましい。上記標識物質を備えることで、目的物質がグリオーマに運搬されたか否かを簡便且つ高感度に確かめることができる。

【0047】
安定同位体としては、例えば13C、15N、H、17O、18Oが挙げられる。放射性同位体としては、例えばH、14C、13N、32P、33P、35S、125I、111In、64Cu、18Fが挙げられる。標識物質が安定同位体又は放射性同位体である場合、安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸を用いて、上述のペプチドを作製してもよい。安定同位体又は放射性同位体で標識されるアミノ酸としては、20種類のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、バリン、トリプトファン、システイン、アスパラギン、グルタミン)であって、上述のペプチドに含まれるアミノ酸であれば特に限定されない。また、アミノ酸はL体であってもD体であってもよく、必要に応じて適宜選択することができる。

【0048】
安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の存在する系で発現させることにより調製することができる。安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の存在する系としては、例えば安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の存在する無細胞ペプチド合成系や生細胞ペプチド合成系等を挙げることができる。すなわち、無細胞ペプチド合成系において安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸に加えて安定同位体非標識アミノ酸又は放射性同位体非標識アミノ酸を材料としてペプチドを合成させることや、生細胞ペプチド合成系において、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターで形質転換した細胞を安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸存在下で培養することにより、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターから安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドを調製することができる。

【0049】
無細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの発現は、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターや上記の安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸の他に、安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの合成のために必要な安定同位体非標識アミノ酸又は放射性同位体非標識アミノ酸、無細胞ペプチド合成用細胞抽出液、エネルギー源(ATP、GTP、クレアチンホスフェート等の高エネルギーリン酸結合含有物)等を用いて行うことができる。温度、時間等の反応条件は、適宜最適な条件を選択して行うことができ、例えば温度は20~40℃、好ましくは23~37℃であり、また反応時間は1~24時間、好ましくは10~20時間である。

【0050】
本明細書において、「無細胞ペプチド合成用細胞抽出液」とは、リボソーム、tRNA等のタンパク質合成に関与する翻訳系、又は、転写系及び翻訳系に必要な成分を含む植物細胞、動物細胞、真菌細胞、細菌細胞からの抽出液を意味する。具体的には、大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網赤血球、マウスL-細胞、エールリッヒ腹水癌細胞、HeLa細胞、CHO細胞、出芽酵母等の細胞抽出液を挙げることができる。かかる細胞抽出液の調製は、例えばPratt,J.M.ら、Transcription and trasnlation-a practical approach(1984)、pp.179-209に記載の方法に従い、上記の細胞をフレンチプレス、グラスビーズ、超音波破砕装置等を用いて破砕処理し、タンパク質成分やリボソームを可溶化するための数種類の塩を含有する緩衝液を加えてホモジナイズし、遠心分離にて不溶成分を沈殿させることによって行うことができる。

【0051】
また、無細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの発現は、例えば、小麦胚芽抽出液を備えたPremium Expression Kit(セルフリーサイエンス社製)、大腸菌抽出液を備えたRTS 100,E.coli HY Kit(Roche Applied Science社製)、無細胞くんQuick(大陽日酸社製)等市販のキットを適宜使用して行ってもよい。発現させた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドが不溶性の場合、グアニジン塩酸塩、尿素等のタンパク質変性剤を用いて適宜可溶化させてもよい。安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、さらに分画遠心法、ショ糖密度勾配遠心法等による分画処理や、アフィニティーカラム、イオン交換クロマトグラフィー等を用いた精製処理により調製することもできる。

【0052】
生細胞ペプチド合成系を用いた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドの発現は、生細胞に上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを導入し、かかる生細胞を栄養分や抗生物質等の他、上記の安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸、安定同位体標識ペプチド又は放射性同位体標識ペプチドの合成のために必要な安定同位体非標識アミノ酸又は放射性同位体非標識アミノ酸等を含む培養液中で培養することにより行うことができる。ここで生細胞としては、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを発現させることができる生細胞であれば特に限定されず、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等の生細胞を挙げることができ、簡便性や費用対効果の面から考慮すると、大腸菌が好ましい。上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターの発現は、遺伝子組換え技術により、それぞれの生細胞で発現できるように設計された発現ベクターへ組み込み、かかる発現ベクターを生細胞へ導入することにより行うことができる。また上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターの生細胞への導入は、使用する生細胞に適した方法で行うことができ、例えば、エレクトロポレーション法、ヒートショック法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、パーティクル・ガン法、ウイルスを用いた方法や、FuGENE(登録商標) 6 Transfection Reagent(ロシュ社製)、Lipofectamine 2000 Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine LTX Reagent(インビトロジェン社製)、Lipofectamine 3000 Reagent(インビトロジェン社製)等の市販のトランスフェクション試薬を用いた方法等を挙げることができる。

【0053】
生細胞ペプチド合成系により発現させた安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドを含む生細胞を破砕処理や抽出処理することにより調製することができる。破砕処理としては、例えば凍結融解法、フレンチプレス、グラスビーズ、ホモジナイザー、超音波破砕装置等を用いた物理的破砕処理等を挙げることができる。また抽出処理としては、例えばグアニジン塩酸塩、尿素等のタンパク質変性剤を用いた抽出処理等を挙げることができる。安定同位体標識又は放射性同位体標識された上述のペプチドは、さらに分画遠心法、ショ糖密度勾配遠心法等による分画処理や、アフィニティーカラム、イオン交換クロマトグラフィー等を用いた精製処理等により調製することもできる。

【0054】
蛍光物質としては、例えば公知の量子ドット、インドシアニングリーン、5-アミノレブリン酸(5-ALA;代謝産物プロトポルフィリンIX(PP IX)、近赤外蛍光色素(例えば、Cy5.5、Cy7、AlexaFluoro等)、その他公知の蛍光色素(例えば、GFP、FITC(Fluorescein)、TAMRA等)等が挙げられる。蛍光物質標識された上述のペプチドは、蛍光物質及び上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを、安定同位体標識アミノ酸又は放射性同位体標識アミノ酸を使用せずに、上述の無細胞ペプチド合成系又は生細胞ペプチド合成系により調製すればよい。

【0055】
PET用核種、SPECT用核種として好ましくは、例えば11C、13N、15O、18F、66Ga、67Ga、68Ga、60Cu、61Cu、62Cu、67Cu、64Cu、48V、Tc-99m、241Am、55Co、57Co、153Gd、111In、133Ba、82Rb、139Ce、Te-123m、137Cs、86Y、90Y、185/187Re、186/188Re、125I、又はそれらの錯体、或いはそれらの組み合わせ等が挙げられる。PET用核種又はSPECT用核種で標識された上述のペプチドは、上述のペプチドをコードする核酸を含む上述のベクターを、上述の無細胞ペプチド合成系又は生細胞ペプチド合成系により調製すればよい。
MRI造影剤、CT造影剤及び磁性体としては、例えばガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体、若しくはそのキレート錯体等が挙げられる。MRI造影剤、CT造影剤又は磁性体で標識された上述のペプチドは、MRI造影剤、CT造影剤又は磁性体と上述のペプチドとを直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合させて調製すればよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。

【0056】
修飾物質としては、例えば糖鎖、ポリエチレングリコール(PEG)等を挙げることができる。上記の修飾物質を備えることで、目的物質がグリオーマ細胞内に簡便且つ効率よく吸収されやすくなる。修飾物質で修飾された上述のペプチドは、修飾物質と上述のペプチドとを直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合させて調製すればよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。

【0057】
本実施形態のキャリアにおいて、目的物質としては、用途に応じて適宜選択することができ、例えばグリオーマのイメージングのために使用する場合においては、後述するとおり、上述の標識物質を目的物質として備えることができ、また、グリオーマの治療又は診断用途で使用する場合においては、後述するとおり、生理活性物質を目的物質として備えることができる。目的物質は、上述のペプチドと、直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていてよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。また、結合位置は、上述のペプチドのN末端又はC末端いずれでもよい。

【0058】
また、本実施形態のキャリアにおいて、目的物質がタンパク質である場合、目的物質と上述のペプチドとを含む融合タンパク質は、例えば次のような方法により作製することができる。まず、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて、宿主を形質転換する。続いて、当該宿主を培養して融合タンパク質を発現させる。培地の組成、培養の温度、時間、誘導物質の添加等の条件は、形質転換体が生育し、融合タンパク質が効率よく産生されるよう、公知の方法に従って当業者が決定できる。また、例えば、選択マーカーとして抗生物質抵抗性遺伝子を発現ベクターに組み込んだ場合、培地に抗生物質を加えることにより、形質転換体を選択することができる。続いて、宿主が発現した融合タンパク質を適宜の方法により精製することにより、融合タンパク質が得られる。

【0059】
宿主としては、融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを発現させることができる生細胞であれば特に限定されず、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳類細胞株や、ウイルス(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス、肝炎ウイルス等のウイルス等)、細菌(例えば、大腸菌等)等の微生物、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞などの生細胞が挙げられる。
さらに、本実施形態のキャリアにおいて、上述の融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターをグリオーマに直接導入し、発現させてもよい。

【0060】
[医薬組成物]
一実施形態において、本発明は、上述のキャリアと生理活性物質とを備える医薬組成物を提供する。

【0061】
本実施形態の医薬組成物によれば、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍を選択的に治療することができる。

【0062】
本明細書において、「生理活性物質」としては、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍の治療に有効なものであれば、特別な限定はなく、例えば抗癌剤等の薬剤、核酸、グリオーマに特異的に結合する抗体、抗体断片、アプタマー等が挙げられる。
「生理活性物質」としては、グリオーマ選択的な細胞障害活性を有する分子標的薬が好ましいが、上述のキャリアにより、グリオーマ選択的に蓄積されるため、従来の抗癌剤として用いられているサイトトキシック薬でもよい。
また、生理活性物質は、上述のキャリアと、直接又はリンカーを介すことで、物理的又は化学的に結合されていてよい。具体的には配位結合、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、物理吸着であってよく、何れも公知の結合、リンカー及び結合方法を採用することができる。また、生理活性物質と上述のキャリアとの結合位置は、必要に応じて適宜選択できる。また、本実施形態の医薬組成物において、上述のキャリアは上述の標識物質又は修飾物質を含んでいてもよい。

【0063】
核酸は、例えば、siRNA、miRNA、antisense、又はそれらの機能を代償する人工核酸(例えば、BNA(Bridged Nucleic Acid)等)等が挙げられる。

【0064】
抗体は、例えば、マウス等のげっ歯類の動物にグリオーマ由来のペプチド等を抗原として免疫することによって作製することができる。また、例えば、ファージライブラリーのスクリーニングにより作製することができる。抗体断片としては、Fv、Fab、scFv等が挙げられる。

【0065】
アプタマーとは、グリオーマに対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。グリオーマに特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、グリオーマに特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法等により選別することができる。

【0066】
本明細書において、「グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍」とは、グリオーマが原因となり発生した脳腫瘍及び脊髄腫瘍を意味し、その種類及び悪性度は上述したとおりである。

【0067】
本実施形態の医薬組成物は、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍診断、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍治療効果診断、病態解析、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍治療、又はグリオーマに起因する脳脊髄腫瘍を伴う疾患の診断、病態解析、治療、治療効果診断のために用いることができる。本実施形態の医薬組成物を用いた診断方法としては、例えばPET、SPECT、CT、MRI、内視鏡による診断、蛍光検出器による診断等が挙げられる。

【0068】
<投与量>
本実施形態の医薬組成物は、被検動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)の年齢、性別、体重、症状、治療方法、投与方法、処理時間等を勘案して適宜調節される。
例えば、本実施形態の医薬組成物を注射剤により静脈内(Intravenous:i.v.)注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1kg体重当たり、5mg以上のペプチドの量を投与することが好ましく、5mg以上20mg以下のペプチドの量を投与することがより好ましく、5mg以上15mg以下のペプチドの量を投与することが特に好ましい。

【0069】
投与回数としては、1週間平均当たり、1回~数回投与することが好ましい。
投与形態としては、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、又は経口的に当業者に公知の方法が挙げられ、静脈内注射が好ましい。本実施形態の医薬組成物は、上述の通り、静脈内注射により被験動物(ヒト又は非ヒト動物を含む各種哺乳動物、好ましくはヒト)に投与した場合において、BBBを通過することができ、脳内のグリオーマに到達し、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍を選択的に治療することができる。

【0070】
<組成成分>
本実施形態の医薬組成物は、治療的に有効量の上述のキャリア及び生理活性物質、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む。薬学的に許容されうる担体又は希釈剤は、賦形剤、稀釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤、添加剤等が挙げられる。これら担体の1種以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、又はシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。
また、担体としてコロイド分散系を用いることもできる。コロイド分散系は、ペプチドの生体内安定性を高める効果や、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ペプチドの移行性を高める効果が期待される。コロイド分散系としては、ポリエチレングリコール、高分子複合体、高分子凝集体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル、リポソームを包含する脂質を挙げることができ、特定の臓器、組織、又は細胞へ、ペプチドを効率的に輸送する効果のある、リポソームや人工膜の小胞が好ましい。

【0071】
本実施形態の医薬組成物における製剤化の例としては、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に使用されるものが挙げられる。
又は、水若しくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用されるものが挙げられる。さらには、薬理学上許容される担体又は希釈剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化されたものが挙げられる。

【0072】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。

【0073】
注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。

【0074】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例えば、塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール等)、酸化防止剤等を配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。

【0075】
注射剤である場合、上記のような水性又は非水性の希釈剤、懸濁剤、又は乳濁剤として調製することもできる。このような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤等の配合により行うことができる。注射剤は、用事調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって、無菌の固体組成物とし、使用前に注射用蒸留水又は他の溶媒に溶解して使用することができる。

【0076】
<治療方法>
本発明の一側面は、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍の治療のための上述のキャリアと生理活性物質とを備える医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、治療的に有効量の上述のキャリア及び生理活性物質、並びに薬学的に許容されうる担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
また、本発明の一側面は、前記医薬組成物を含む、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍の治療剤を提供する。
また、本発明の一側面は、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍の治療剤を製造するための上述のキャリア及び生理活性物質の使用を提供する。
また、本発明の一側面は、上述のキャリア及び生理活性物質の有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、グリオーマに起因する脳脊髄腫瘍の治療方法を提供する。

【0077】
[グリオーマをイメージングするための方法]
一実施形態において、本発明は、グリオーマをイメージングするための方法であって、上述のキャリアを用いる方法を提供する。

【0078】
本実施形態の方法によれば、グリオーマを簡便、高感度且つ選択的に検出することができる。

【0079】
本実施形態の方法において、上述のキャリアは標識物質を備えることが好ましい。さらに、修飾物質を備えていてもよい。標識物質及び修飾物質としては、上述したものと同様のものが挙げられる。

【0080】
例えば、標識物質を備える上述のキャリアをグリオーマに添加する場合において、標識物質を備える上述のキャリアの添加量は培養液中1μM以上4μM以下が好ましい。また、添加後、30分以上3時間以下後にはグリオーマに集積されているか否かについて評価することができる。
また、例えば、標識物質として蛍光物質を備える上述のキャリアを注射剤により静脈内(Intravenous:i.v.)注射する場合、被検動物(好ましくはヒト)に対し、1回の投与において1kg体重当たり、5mg以上のペプチドの量を投与することが好ましく、5mg以上20mg以下のペプチドの量を投与することがより好ましく、5mg以上15mg以下のペプチドの量を投与することが特に好ましい。
また、例えば、標識物質として安定同位体、PET用核種又はSPECT用核種を備える上述のキャリアを注射剤により静脈内(Intravenous:i.v.)注射する場合、使用する安定同位体、PET用核種又はSPECT用核種の種類に応じた放射線量から投与量を決定すればよい。

【0081】
本実施形態の方法において、標識物質を備える上述のキャリアの検出方法としては、例えばPET、SPECT、CT、MRI、内視鏡による検出、蛍光検出器による検出等が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
[実施例1]ペプチドの合成
独自に作製した、ピューロマイシン(puromycin)を介在して表現型としての9アミノ酸残基ペプチドとそれに対応する遺伝子型としてのmRNAコード配列を有するprotein-RNAキメラ型ランダムペプチドライブラリー(in vitro virus library; IVVL)を用いて、公知のIVV(in vitro virus)法に準じて、下記表3に示す各ペプチド(Peptide1~3)を分離及び同定した。また、IVVL由来の同定された各ペプチドは、FITC(Fluoresceinisothiocyanate)ラベルで合成し、塩酸塩処理を施したものである。また、r9(9残基連続D-アルギニン)は、現在汎用されている非選択的膜透過性ペプチドである。
これらは、いずれもシグマアルドリッチジャパン(ジェノシス事業部)への委託合成により入手した。
【実施例】
【0084】
【表3】
JP0006789573B2_000004t.gif
【実施例】
【0085】
また、以下の試験例1~5に使用した各種細胞の細胞株と由来は下記表4示したとおりである。これらは、発明者が研究室において、継代培養して維持しているものである。
【実施例】
【0086】
【表4】
JP0006789573B2_000005t.gif
【実施例】
【0087】
上記表4に示した各種細胞は、10%FBS含有RPMI1640培地(RPMI1640 medium)を用いて培養した。
【実施例】
【0088】
[試験例1]ペプチドのグリオーマ細胞での集積性の確認試験
primary glioblastoma細胞、U87MG細胞、Gli36細胞、SF767細胞、T98細胞、SK-AO2細胞、SK-MG-1細胞、U251細胞及びA172細胞に、実施例1において作製したPeptide1、2及び3をそれぞれ、培地中に4μMとなるように添加した。それらの細胞を37℃で60分間培養した。続いて、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。検鏡の前にペプチドを添加した培養上清を除去し1×PBS(-)で3回洗浄後、トリプシン処理し接着細胞を剥離してただちに新しい96穴プレートに移入して新しい培養液に再懸濁後、検鏡を行った。結果を図1に示す。
【実施例】
【0089】
図1から、Peptide1、2及び3について、全ての細胞で蛍光が検出された。特にPeptide2を添加した細胞は、蛍光が強く検出された。以上のことから、Peptide2は、グリオーマ細胞内への高透過性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0090】
[試験例2] ペプチドの正常アストロサイト細胞での集積性の確認試験
primary astrocytes細胞及びprimary glioblastoma細胞に、実施例1において作製したPeptide1、2及び3、r9(4μM)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図2に示す。図2において、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において488nm波長緑色蛍光励起条件下で撮影した画像である。
【実施例】
【0091】
図2から、r9は、primary astrocytes細胞及びprimary glioblastoma細胞のいずれにおいても、蛍光が検出された。一方、Peptide1、2及び3は、primary glioblastoma細胞においてのみ、蛍光が検出された。
【実施例】
【0092】
[試験例3] ペプチドの正常神経細胞での集積性の確認試験
primary neurons細胞及びprimary glioblastoma細胞に、実施例1において作製したPeptide1、2及び3、r9(4μM)を添加し、37℃で120分間培養した。続いて、試験例1と同様の方法により、倒立型蛍光顕微鏡で生細胞における各ペプチドの取り込みを視覚的に評価した。結果を図3に示す。図3において、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において488nm波長緑色蛍光励起条件下で撮影した画像である。
【実施例】
【0093】
図3から、r9は、primary neurons細胞及びprimary glioblastoma細胞のいずれにおいても、蛍光が検出された。一方、Peptide1、2及び3は、primary glioblastoma細胞においてのみ、蛍光が検出された。
試験例1~3から、Peptide1、2及び3は、グリオーマ細胞に特異的な集積性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0094】
[試験例4]ヒトグリオーマ細胞移植マウスでの各種組織におけるペプチドの集積性の評価試験
ヒトグリオーマ細胞(primary glioblastoma細胞、白人女性由来)1×10個を皮下に移植したNOD-SCIDマウス(日本チャールズリバー社より購入した6週齢雌マウス)をヒトグリオーマ細胞移植モデルとして作製した。ヒトグリオーマ細胞の移植後30日目に、マウス体重20gに対して300μgの実施例1で作製したPeptide1、Peptide2又はコントロールとして、FITC標識されたPEP1ΔNSペプチドを静脈内(i.v.)注射した。PEP1ペプチドとは、本発明者らと琉球大学の比嘉氏、松下氏により発見されたヒトglioblastoma細胞に集積性を有するペプチドであり、PEP1ΔNSペプチドとは、このPEP1ペプチドからN末端のアスパラギン酸及びC末端のセリンを削った8アミノ酸残基からなるペプチドである(参考文献:Moritoshi H., et al., Identification of a novel cell-penetrating peptide targeting human glioblastoma cell lines as a cancer-homing transporter, Biochem. Biophys. Res. Commun., 457, 206-212, 2015.)。PEP1ΔNSペプチドのアミノ酸配列を、配列番号13に示す。投与後30分で皮下腫瘍切除および開腹して新鮮摘出状態で腫瘍病変と正常臓器群におけるペプチドの分布及び蛍光強度を蛍光実体顕微鏡下で観察した。結果を図4に示す。図4において、brainは脳、heartは心臓、kidneyは腎臓、liverは肝臓、lungは肺、s.muscleは骨格筋、spleenは脾臓、tumorは悪性腫瘍を意味する。また、図4において、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において488nm波長緑色蛍光励起条件下で撮影した画像である。
【実施例】
【0095】
図4のグラフは、試験例4において、各組織で検出された蛍光を定量化し、正常脳で検出された蛍光を1.0としたときの各種組織で検出された蛍光強度の割合を示すグラフである。
図4から、PEP1ΔNSペプチドは、正常脳への吸収を1.0とした時に標的であるグリオブラストーマへの吸収比はS/N比(Signal/noiseratio)にして約18倍であった。一方、正常の肝臓、腎臓、骨格筋組織にて一定強度の蛍光が検出された。これに対して、Peptide1はS/N比が8倍であったが、腎臓、骨格筋組織をはじめとする正常臓器系への吸収が、PEP1ΔNSと比較して1/2以下に抑えられていた。さらに、Peptide2は標的とする悪性腫瘍(グリオブラストーマ)においてS/N比が70倍以上と突出した強い蛍光シグナルが検出され、卓越した標的腫瘍集積性が確認された。
【実施例】
【0096】
以上のことから、Peptide2は、正常組織系への吸収性がよく抑制され、かつグリオーマ細胞への集積性がより高いことが確かめられた。
【実施例】
【0097】
[試験例5]ヒトグリオーマ細胞移植マウスでの脳におけるペプチドの集積性の評価試験
ヒトグリオーマ細胞(primary glioblastoma細胞、白人女性由来)5×10個を右大脳半球内移植したNOD-SCIDマウス(日本チャールズリバー社より購入した6週齢雌マウス)をヒトグリオーマ細胞移植モデルとして作製した。ヒトグリオーマ細胞の移植後3週間後に、マウス体重20gに対して200μgの実施例1で作製したPeptide2を尾静脈から投与した。投与後30分で直ちに外科的に開頭してマウス脳を取り出し、脳内におけるグリオーマ細胞の浸潤部を含む組織切片を作製して蛍光実体顕微鏡下で観察した。蛍光観察後、脳の組織切片の病理組織標本を作製して、ヘマトキシリン・エオジン(Hematoxylin-Eosin:HE)染色した。HE染色後の脳の組織切片について、光学顕微鏡下で確認することにより、新鮮摘出脳内で緑色蛍光シグナルを発した部分がグリオブラストーマ細胞浸潤部に相当していることを検証した。結果を図5A及び図5Bに示す。図5Aにおいて、lt.lobeは左大脳半球、rt.lobeは右大脳半球を意味する。また、図5Aにおいて、「Bright Field」とは明視野において撮影した画像であり、「FITC」は暗視野において488nm波長緑色蛍光励起条件下で撮影した画像である。
【実施例】
【0098】
図5Bから、右大脳半球内にグリオーマ細胞が浸潤していることが確かめられた。
また、図5Aから、同浸潤部において蛍光シグナルが良好に検出され、グリオブラストーマ細胞浸潤部と蛍光検出部が一致していることが確かめられた。
このことから、尾静脈から投与されたPeptide2は、血液脳関門(Brain Blood Barrier:BBB)を通過し、右大脳半球内のグリオーマ細胞に集積することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、グリオーマに特異的な集積性を有する新規ペプチドを提供することできる。また、グリオーマを簡便、高感度且つ選択的に検出することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5A】
4
【図5B】
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