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明細書 :多孔フィルム、多孔フィルム製造方法、マイクロレンズアレイ、マイクロリアクターおよびバイオデバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 多孔フィルム、多孔フィルム製造方法、マイクロレンズアレイ、マイクロリアクターおよびバイオデバイス
国際特許分類 C08J   9/28        (2006.01)
G02B   3/00        (2006.01)
FI C08J 9/28 102
G02B 3/00 A
G02B 3/00 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 24
出願番号 特願2017-556041 (P2017-556041)
国際出願番号 PCT/JP2016/086905
国際公開番号 WO2017/104610
国際出願日 平成28年12月12日(2016.12.12)
国際公開日 平成29年6月22日(2017.6.22)
優先権出願番号 2015243016
2016142659
優先日 平成27年12月14日(2015.12.14)
平成28年7月20日(2016.7.20)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】岩井 陽典
【氏名】内田 幸明
【氏名】藪 浩
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求
テーマコード 4F074
Fターム 4F074AA50
4F074AH01
4F074CB34
4F074CB44
4F074CC50X
4F074DA03
4F074DA59
要約 この多孔フィルム製造方法は、第1の液体により10μm以上、2000μm以下の所定直径で球状に形成された液滴Dと、エネルギーの付与により硬化する硬化剤、またはpHの変化により硬化する硬化剤を含み液滴が分散される第2の液体L2とを準備する第1ステップと、一対の基板31、32間の隙間に液滴および第2の液体を注入する第2ステップと、第2の液体を硬化させて外相を形成する第3ステップと、外相の間の液滴を除去して空孔部を形成する第4ステップと、を含む。
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の液体により10μm以上、2000μm以下の所定直径で球状に形成された液滴と、エネルギーの付与により硬化する硬化剤またはpHの変化により硬化する硬化剤を含み前記液滴が分散される第2の液体とを準備する第1ステップと、
一対の基板間の隙間に前記液滴および前記第2の液体を注入する第2ステップと、
前記第2の液体を硬化させて基体を形成する第3ステップと、
前記基体の間の前記液滴を除去して空孔部を形成する第4ステップと、
を含むことを特徴とする多孔フィルム製造方法。
【請求項2】
前記第2の液体は、界面活性剤および安定剤を含むことを特徴とする請求項1記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項3】
前記エネルギーは、光または熱であることを特徴とする請求項1または2記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項4】
前記第1の液体の比重は、前記第2の液体の比重よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項5】
前記一対の基板間の距離を調整して、前記隙間に前記液滴を一層で配列させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項6】
前記一対の基板間の距離を調整して、前記隙間に前記液滴を複数層で配列させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項7】
前記液滴を体心立方構造で配列させることを特徴とする請求項6記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項8】
前記液滴を六方最密構造で配列させることを特徴とする請求項6記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項9】
前記液滴を面心立方構造で配列させることを特徴とする請求項6記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項10】
前記第1ステップでは、直径の異なる複数種の液滴を準備することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項11】
前記第1ステップは、第1管体の流路に前記第1の液体を流動させ前記第1管体のノズルから前記第1の液体の液滴を、第2管体の流路を流動する前記第2の液体に流入させるステップを含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項12】
準備する前記液滴の直径に応じて、前記第2管体を流動する前記第2の液体の速度に対する前記第1管体を流動する前記第1の液体の相対速度と、前記ノズル径との少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項11記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項13】
前記第1の液体と前記第2の液体とのいずれか一方は油相であり他方は水相であることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項14】
前記液滴を除去するステップは、前記液滴を洗浄するステップを含むことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項15】
前記液滴は、250μm以上、2000μm以下の所定直径で形成されることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の多孔フィルム製造方法。
【請求項16】
10μm以上、2000μm以下の所定直径で球状に形成された複数の空孔部を有するとともに、エネルギーの付与で硬化した硬化剤、またはpHの変化により硬化した硬化剤を含む基体を備え、
前記複数の空孔部は、所定の大きさで配列され、且つ、直径の相対誤差が6%以下であることを特徴とする多孔フィルム。
【請求項17】
前記基体は、界面活性剤および安定剤を含むことを特徴とする請求項16記載の多孔フィルム。
【請求項18】
隣り合って配列された前記空孔部同士は、連通孔を介して互いに連通していることを特徴とする請求項16または17記載の多孔フィルム。
【請求項19】
前記複数の空孔部は、体心立方構造で配列されていることを特徴とする請求項16から18のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
【請求項20】
前記複数の空孔部は、六方最密構造で配列されていることを特徴とする請求項16から18のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
【請求項21】
前記複数の空孔部は、面心立方構造で配列されていることを特徴とする請求項16から18のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
【請求項22】
前記複数の空孔部は、第1の直径で形成された複数の第1空孔部と、前記第1の直径とは異なる第2の直径で形成された複数の第2空孔部とを備え、
前記第1空孔部および前記第2空孔部は、それぞれが所定の規則性をもって配列され、且つ、直径の相対誤差が6%以下であることを特徴とする請求項16から21のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
【請求項23】
前記空孔部は、250μm以上、2000μm以下の所定直径で形成されていることを特徴とする請求項16から22のいずれか一項に記載の多孔フィルム。
【請求項24】
請求項16から23のいずれか一項に記載の多孔フィルムと、
前記空孔部に配置されたレンズ体とを備えることを特徴とするマイクロレンズアレイ。
【請求項25】
請求項16から23のいずれか一項に記載の多孔フィルムを備えることを特徴とするマイクロリアクター。
【請求項26】
請求項16から23のいずれか一項に記載の多孔フィルムを備えることを特徴とするバイオデバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔フィルム、多孔フィルム製造方法、マイクロレンズアレイ、マイクロリアクターおよびバイオデバイスに関するものである。本願は、2015年12月14日に日本に出願された特願2015-243016号、2016年7月20日に日本に出願された特願2016-142659号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
多孔フィルムは、種々の高分子原料及び多孔化技術を組み合わせて製造され、マイクロレンズアレイや細胞培養基材、癒着防止膜への応用が期待される。特に、100~1000μm程度の孔径を持ち、孔径が均一な多孔フィルムは、空孔中に異なる屈折率の物質を導入することでマイクロレンズへの応用や、このサイズ領域の物質を選択的に分離あるいは担持することが可能であることから注目されている。
【0003】
この種の多孔フィルムを製造する方法としては、光学デバイスを使用したレーザー加工やフォトリソグラフ(例えば、非特許文献1参照)、あるいはドリルを用いた切削加工(例えば、非特許文献2参照)などのトップダウン手法、溶媒キャスト法等の自己組織化を用いたボトムアップ手法(例えば、非特許文献3参照)が挙げられる。レーザー加工やフォトリソグラフを用いる製造方法は、基本的に二次元的なパターニングしかできず、さらにこのサイズ領域の空孔を大面積で加工するには高コストプロセスである。また、ドリルを用いた細孔加工では出口側に生じるバリの後処理が難しいという問題がある。
【0004】
一方、自己組織化を利用した方法は、光学デバイスを使用したレーザー加工やフォトリソグラフなどに比べると低コストで大量生産が可能である。また、特許文献1には、流延膜上に結露させて水滴を形成した後に、流延膜から溶剤と水滴とを蒸発させることにより多孔フィルムを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2014-156526号公報
【0006】

【非特許文献1】H. J. Lee et al., Acta Biomaterialia 2011, 7, 1281-1289.
【非特許文献2】P. Yilgor et al., J. Tissue Eng. Regen. Med. 2013, 7, 687-696.
【非特許文献3】H. Yabu et al., Macromolecules 2011, 44, 5868-5873.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した溶媒キャスト法等の自己組織化を用いた手法や、特許文献1に記載された手法では、100nm~20μm程度の細孔を形成できるものの100~1000μm程度の孔径の孔部を形成することができない。また、二次元のみならず三次元的な多孔構造を有する100~1000μm程度の孔径のフィルムは、数~数十μmの細胞が孔内で接着・増殖することが可能な足場材料としての応用も期待できる。従って、様々な材料系から10~2000μm程度の孔径を有する多孔フィルムを低コストで製造することが求められている。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、10μm以上、2000μm以下の直径の空孔部を有する多孔フィルムを低コストで製造可能な多孔フィルム、多孔フィルム製造方法、マイクロレンズアレイ、マイクロリアクターおよびバイオデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、第1の液体により10μm以上、2000μm以下の所定直径で球状に形成された液滴と、光硬化剤を含み液滴が分散される第2の液体とを準備する第1ステップと、光透過性を有する一対の基板間の隙間に液滴および前記第2の液体を注入する第2ステップと、基板を介して光を照射して第2の液体を硬化させて外相を形成する第3ステップと、外相の間の液滴を除去して空孔部を形成する第4ステップと、を含むことにより、10μm以上、2000μm以下の直径の空孔部を有する、低コストで高品質の多孔フィルムおよび多孔フィルム製造方法を提供できるという優れた効果を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用した。
【0010】
(1)第1の液体により10μm以上、2000μm以下の所定直径で球状に形成された液滴と、エネルギーの付与により硬化する硬化剤、またはpHの変化により硬化する硬化剤を含み前記液滴が分散される第2の液体とを準備する第1ステップと、一対の基板間の隙間に前記液滴および前記第2の液体を注入する第2ステップと、前記第2の液体を硬化させて基体を形成する第3ステップと、前記基体の間の前記液滴を除去して空孔部を形成する第4ステップと、を含む。
【0011】
(2)上記(1)に記載の多孔フィルム製造方法において、前記第2の液体は、界面活性剤および安定剤を含むことが好ましい。
【0012】
(3)上記(1)または(2)に記載の多孔フィルム製造方法において、前記エネルギーは、光または熱であってもよい。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法において、前記第1の液体の比重は、前記第2の液体の比重よりも大きいことが好ましい。
【0014】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法は、前記一対の基板間の距離を調整して、前記隙間に前記液滴を一層で配列させてもよい。
【0015】
(6)上記(1)から(4)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法は、前記隙間に前記液滴を複数層で配列させてもよい。
【0016】
(7)上記(6)に記載の多孔フィルム製造方法は、前記液滴を体心立方構造で配列させてもよい。
【0017】
(8)上記(6)に記載の多孔フィルム製造方法は、前記液滴を六方最密構造で配列させてもよい。
【0018】
(9)上記(6)に記載の多孔フィルム製造方法は、前記液滴を面心立方構造で配列させてもよい。
【0019】
(10)上記(1)から(9)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法は、前記第1ステップにおいて、直径の異なる複数種の液滴を準備してもよい。
【0020】
(11)上記(1)から(10)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法において、前記第1ステップは、第1管体の流路に前記第1の液体を流動させ前記第1管体のノズルから前記第1の液体の液滴を、第2管体の流路を流動する前記第2の液体に流入させるステップを含んでもよい。
【0021】
(12)上記(11)に記載の多孔フィルム製造方法において、準備する前記液滴の直径に応じて、前記第2管体を流動する前記第2の液体の速度に対する前記第1管体を流動する前記第1の液体の相対速度と、前記ノズル径との少なくとも一方を調整してもよい。
【0022】
(13)上記(1)から(12)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法において、前記第1の液体と前記第2の液体とのいずれか一方は油相であり他方は水相であってもよい。
【0023】
(14)上記(1)から(13)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法において、前記液滴を除去するステップは、前記液滴を洗浄するステップを含んでもよい。
【0024】
(15)上記(1)から(14)のいずれか一つに記載の多孔フィルム製造方法において、前記液滴は、250μm以上、2000μm以下の所定直径で形成されることが好ましい。
【0025】
(16)本発明の一態様にかかる多孔フィルムは、10μm以上、2000μm以下の所定直径で球状に形成された複数の空孔部を有するとともに、エネルギーの付与で硬化した硬化剤、またはpHの変化により硬化した硬化剤を含む基体を備え、前記複数の空孔部は、所定の大きさで配列され、且つ、直径の相対誤差が6%以下である。
【0026】
(17)上記(16)に記載の多孔フィルムにおいて、前記基体は、界面活性剤および安定剤を含むことが好ましい。
【0027】
(18)上記(16)または(17)に記載の多孔フィルムにおいて、隣り合って配列された前記空孔部同士は、連通孔を介して互いに連通していてもよい。
【0028】
(19)上記(16)から(18)のいずれか一つに記載の多孔フィルムにおいて、前記複数の空孔部は、体心立方構造で配列されていてもよい。
【0029】
(20)上記(16)から(18)のいずれか一つに記載の多孔フィルムにおいて、前記複数の空孔部は、六方最密構造で配列されていてもよい。
【0030】
(21)上記(16)から(18)のいずれか一つに記載の多孔フィルムにおいて、前記複数の空孔部は、面心立方構造で配列されていてもよい。
【0031】
(22)上記(16)から(21)のいずれか一つに記載の多孔フィルムにおいて、前記複数の空孔部は、第1の直径で形成された複数の第1空孔部と、前記第1の直径とは異なる第2の直径で形成された複数の第2空孔部とを備え、前記第1空孔部および前記第2空孔部は、それぞれが所定の規則性をもって配列され、且つ、直径の相対誤差が6%以下であってもよい。
【0032】
(23)上記(16)から(22)のいずれか一つに記載の多孔フィルムにおいて、前記空孔部は、250μm以上、2000μm以下の所定直径で形成されていてもよい。
【0033】
(24)本発明の一態様にかかるマイクロレンズアレイは、上記(16)から(23)のいずれか一つに記載の多孔フィルムと、前記空孔部に配置されたレンズ体とを備える。
【0034】
(25)本発明の一態様にかかるマイクロリアクターは、上記(16)から(23)のいずれか一つに記載の多孔フィルムを備える。
【0035】
(26)本発明の一態様にかかるバイオデバイスは、上記(16)から(23)のいずれか一つに記載の多孔フィルムを備える。
【発明の効果】
【0036】
本発明の一態様にかかる多孔フィルム製造方法によれば、10μm以上、2000μm以下の直径の空孔部を有する多孔フィルムを低コストおよび高品質に製造することができる。
本発明の一態様にかかる多孔フィルムによれば、10μm以上、2000μm以下の直径の空孔部を有する高品質の多孔フィルムを低コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態を示す図であって、ガラス基板31、32間に多孔フィルム1が形成された断面図である。
【図2】図1におけるA-A線視断面図である。
【図3】第1ステップで用いる第1キャピラリー装置40の構成を示す図である。
【図4】第1ステップで用いる第2キャピラリー装置50の構成を示す図である。
【図5】第1の液体L1の流速と、液滴Dの平均粒径と、粒径の相対誤差との関係を示す図である。
【図6】第2ステップで用いるデバイスDVの一例を示す外観斜視図である。
【図7】デバイスDVが分断された状態を示す図である。
【図8】多孔フィルムの製造過程を示す図である。
【図9】厚さ方向に二層で配置される油滴Dのモデルを示す平面図である。
【図10】厚さ方向に二層で配置される油滴Dのモデルを示す平面図である。
【図11】油滴Dが体心立方構造で配列された状態を示す図である。
【図12】油滴Dが六方最密構造で配列された状態を示す図である。
【図13】空孔部10が体心立方構造で配列された多孔フィルム1を拡大した図である。
【図14】空孔部10が六方最密構造で配列された多孔フィルム1を拡大した図である。
【図15】三層で配置される油滴Dが体心立方構造で配置されたモデルの正面図である。
【図16】三層で配置される油滴Dが体心立方構造で配置されたモデルの平面図である。
【図17】三層で配置される油滴Dが面心立方構造で配置されたモデルの正面図である。
【図18】三層で配置される油滴Dが面心立方構造で配置されたモデルの平面図である。
【図19】直径比が2:3程度の2種の油滴Dが配列された様子を示す図である。
【図20】直径比が1:2程度の2種の油滴Dが配列された様子を示す図である。
【図21】空孔部に液晶マイクロカプセルが捕捉された様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本実施形態にかかる多孔フィルム、多孔フィルム製造方法、マイクロレンズアレイ、マイクロリアクターおよびバイオデバイスの実施の形態を、図1ないし図17を参照して説明する。

【0039】
(多孔フィルムの第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して第1実施形態の多孔フィルム1について説明する。
図1は、隙間30をあけて平行に配置されたガラス基板(基板)31、32間に多孔フィルム1が形成された断面図である。図2は、図1におけるA-A線視断面図である。

【0040】
図1および図2に示すように、多孔フィルム1は、複数の空孔部10が配列された基体20を有している。基体20は、一例として、光の照射(エネルギーの付与)により硬化する光硬化性を有するモノマーで形成されている。基体20は、一例として、光重合開始剤を含むアクリルアミド等のモノマーで形成されている。

【0041】
空孔部10は、所定の直径で球状に形成されており、多孔フィルム1の厚さ方向に一層で配列されている。空孔部10は、多孔フィルム1の面方向については中心位置が直線上に並んだ列が規則性をもって複数配置されている。空孔部10は、隣り合った列同士が空孔部10の半径の距離(半ピッチ)ずれた、千鳥状に配置されている。空孔部10の直径は、10μm以上、2000μm以下、好ましくは250μm以上、2000μm以下に設定されている。

【0042】
隣り合って配列された空孔部10同士は、連通孔11を介して互いに連通している。空孔部10は、ガラス基板31との接合部に孔部12を有している。空孔部10は、ガラス基板32との接合部に孔部13を有している。

【0043】
(多孔フィルム1の製造方法)
次に、上記構成の多孔フィルム1の製造方法について、図3乃至図7を参照して説明する。上記構成の多孔フィルム1の製造方法は、空孔部10の形成に用いられる第1の液体で形成された球状の液滴と、基体20の形成に用いられる第2の液体とを準備する第1ステップと、ガラス基板31、32間の隙間に球状の液滴と第2の液体とを注入する第2ステップと、ガラス基板31、32を介して光を照射して第2の液体を硬化させて外相となる基体20を形成する第3ステップと、基体20の間の液滴を除去して空孔部10を形成する第4ステップとを含む。

【0044】
(第1ステップ)
図3は、第1ステップで用いる第1キャピラリー装置40の構成を示す図である。図4は、第1ステップで用いる第2キャピラリー装置50の構成を示す図である。第1キャピラリー装置40と第2キャピラリー装置50とは、第1の液体で形成する液滴の直径の大きさに応じて適宜選択する。なお、本実施形態で説明する直径とは、顕微鏡で観察される液滴の外径で定義されるものである。

【0045】
図3に示すように、第1キャピラリー装置40は、内部の流路41aに第1の液体L1を流動させる注入管(第1管体)41と、内部の流路46aに第2の液体L2が流動するとともに第1管体41が挿入された回収管(第2管体)46とを備えている。注入管41と回収管46とは、例えば、ガラスで形成されており、同軸に配置されている。注入管41の先端には、第1の液体L1を吐出するノズル42が設けられている。流路41aと流路46aとは同一方向に延びており、第1の液体L1および第2の液体L2は、同一方向(図3中、左側から右側)に流動する。

【0046】
図4に示すように、第2キャピラリー装置50は、上記の注入管41と、内部の流路47aに第2の液体L2が流動するとともに注入管41のノズル42が挿入された回収管47と、流路48aに注入管41および回収管47が同軸で配置された外管48とを備えている。回収管47および外管48は、例えば、ガラスで形成されている。回収管47の注入管41と対向する側の端部は、注入管41のノズル42の外径よりも大きな直径の開口部49を有している。外管48の流路48aのうち、注入管41と外管48との間の流路48a1には、第1の液体L1の流動方向と同一方向(図3中、左側から右側)に第2の液体L2が注入される。外管48の流路48aのうち、回収管47と外管48との間の流路48a2には、第1の液体L1の流動方向と逆方向(図3中、右側から左側)に第2の液体L2が注入される。流路48a1および流路48a2から注入された第2の液体L2は、合流して開口部49を介して回収管47の流路47aに流入する。

【0047】
本実施形態では、第1の液体L1として油相の液体が用いられる。第1の液体L1は、一例として、ポリジメチルシロキサンに油滴の安定化剤としてブロモベンゼンブロモベンゼンが添加されたものが用いられる(体積比79/21)。

【0048】
第2の液体L2は、水相の液体が用いられる。第2の液体L2は、一例として、水(8.26×10質量%)、モノマーとしてのアクリルアミド(8.26質量%)、架橋剤としてのN、N'-メチレンビスアクリルアミド(8.26×10-1質量%)、光重合開始剤としてアルキルフェノン系光重合開始剤(IRGACURE(登録商標)2959)(8.26×10-2質量%)、界面活性剤としてのポリビニルアルコール(8.26質量%)を含む液体が用いられる。本実施形態では、エネルギー付与として光エネルギーの付与より硬化する開始剤を用いる。水は、15分間脱気した後に、15分間窒素置換したものを用いた。

【0049】
本実施形態では、第1の液体L1の比重が第2の液体L2の比重よりも大きい。本実施形態における第2の液体L2は水相であり、質量の大部分が水で占められているため、比重はほぼ1である。そのため、第1の液体L1は、比重が1よりも大きい材料が選択されている。

【0050】
図5は、第1キャピラリー装置40の流路46aにおける第2の液体L2の流速、第2キャピラリー装置50の流路48a1および流路48a2における第2の液体L2の流速をいずれも11ml/hで固定したときの、第1の液体L1の流速(ml/h)と、第1の液体L1を流路46aまたは流路47aの第2の液体L2に流入させたときに形成される液滴D(以下、油滴Dと称する)の平均粒径(直径;μm)と、粒径の相対誤差(%)との関係を示す図である。

【0051】
図5(a)には、第2キャピラリー装置50の注入管41におけるノズル42の直径(開口径)が220μmであり、回収管47における開口部49の直径(開口径)が440μmである場合の関係が示されている。図5(b)には、第2キャピラリー装置50の注入管41におけるノズル42の直径が340μmであり、回収管47における開口部49の直径が710μmである場合の関係が示されている。図5(c)には、第1キャピラリー装置40の注入管41におけるノズル42の直径が170μmである場合の関係が示されている。図5(d)には、第1キャピラリー装置40の注入管41におけるノズル42の直径が770μmである場合の関係が示されている。図5(e)には、第2キャピラリー装置50の注入管41におけるノズル42の直径(開口径)が50μmであり、回収管47における開口部49の直径(開口径)が120μmである場合の関係が示されている。

【0052】
図5(a)~図5(e)に示されるように、第1キャピラリー装置40または第2キャピラリー装置50の選択、ノズル42の直径、開口部49の直径および第1の液体L1の流速(第2の液体L2の流速に対する相対速度)を適宜選択することにより、粒径が63~1272μmの油滴Dを作製することができた。また、油滴Dは、各粒径のほとんどにおいて相対誤差が1%程度~6%以下で作製することができた。

【0053】
また、本実施形態では、第1の液体L1の比重が第2の液体L2の比重よりも大きいため、第1の液体L1を第2の液体L2に流入させたときに、第1の液体L1が第2の液体L2に対して浮き上がってしまい球状の油滴Dが安定して形成できない等の不具合を生じさせることなく、粒径の相対誤差が小さい油滴Dを作製できる。

【0054】
(第2ステップ)
次に、第2ステップについて説明する。図6は、第2ステップで用いるデバイスDVの一例を示す外観斜視図である。デバイスDVは、隙間30を挟んで平行に配置されたガラス基板31、32と、ガラス基板31、32間の距離を規定するためのスペーサー33とを有している。スペーサー33は、ガラス基板31、32の両端縁に配置された積層可能な複数のシート材34によって構成されている。

【0055】
第2ステップでは、まず、第1ステップで作製された油滴Dの粒径に応じた距離に、ガラス基板31、32間の距離を調整するためにシート材34の積層枚数を調整する。具体的には、例えば、防滴性(液密性)を有する厚さ130μmのフッ素樹脂テープをシート材34として複数枚用意し、ガラス基板31、32に貼り付ける際には気泡の影響で10μm程度厚さが増すことを考慮すると、n枚のフッ素樹脂テープを積層することにより、ガラス基板31、32間の隙間30の厚さを140×n(μm)に調整することができる。また、130μm以外の厚さのフッ素樹脂テープを用いることにより、隙間30の厚さを任意の厚さに調整することも可能である。図6に示される例では、4枚のシート材34を用いているため、隙間30の厚さは約560μmに調整されている。

【0056】
隙間30の厚さが調整されると、第1ステップで作製された油滴Dを含む第2の液体L2をシリンジ等の保持具35で吸い込み、上方に露出している下側のガラス基板32から隙間30に注入する。隙間30への油滴Dを含む第2の液体L2の注入は、毛細管現象によって円滑に行われる。

【0057】
この第2ステップにおいても、油滴D(第1の液体L1)の比重が第2の液体L2の比重よりも大きいため、隙間30に注入した油滴Dが第2の液体L2に対して浮き上がってしまい、デバイスDVの厚さ方向で油滴Dが上方に偏ってしまうことを回避できる。

【0058】
(第3ステップ)
第3ステップでは、ガラス基板31、32の外側からガラス基板31、32のそれぞれを介して硬化光として紫外光を、一例として、30分間照射する。これにより、紫外光UVの照射によって第2の液体L2が硬化し、界面活性剤および安定剤を含んだ硬化物として、外相となるポリアクリルアミドの基体20が形成される。

【0059】
(第4ステップ)
続いて、第4ステップについて説明する。第4ステップでは、基体20の間に残留する油滴Dを除去して空孔部10を形成する。第3ステップで第2の液体L2が硬化して基体20が形成されたデバイスDVを数時間90℃で乾燥した後、アセトンに浸漬して洗浄する。これにより、図1に示されるように、油滴Dが除去され、図2に示したように、規則性をもって千鳥状に配列された空孔部10が形成される。空孔部10の直径は、上述したように、第1キャピラリー装置40または第2キャピラリー装置50の選択、ノズル42の直径、開口部49の直径および第1の液体L1の流速を適宜選択した結果に応じた大きさとなる。

【0060】
ここで、第2ステップにおいて、ガラス基板31、32の隙間30に注入された油滴D同士が接触する箇所、または隣り合う油滴D間の距離が最も短い箇所には、第2の液体L2が存在しない、または微少量であるため、これらの箇所は、第3ステップで第2の液体L2が硬化して形成された基体20が存在しない、または微少な厚さである。そのため、第4ステップでの洗浄により、これらの箇所には基体20が形成されず、隣り合う空孔部10同士は、連通孔11を介して連通する。

【0061】
上記の洗浄を、例えば、超音波洗浄(1時間程度)とすることにより、図7に示されるように、連通孔11が形成されて強度が低い厚さ方向の中央部にてデバイスDVが分断される。この場合、半球状の空孔部10が開口部を露出した状態で配列された二つの多孔フィルム1A、1Bが作製される。従って、超音波洗浄の有無によって、全球状の空孔部10が形成された多孔フィルム1と、半球状の空孔部10が形成された多孔フィルム1A、1Bを選択的に製造することができる。この多孔フィルム1A、1Bは、上述したように、油滴D(第1の液体L1)の比重が第2の液体L2の比重よりも小さい場合に生じる、油滴Dが第2の液体L2に対して浮き上がって上方に偏ってしまう等の不都合が回避されているため、空孔部10が上方に偏ることなく等分布に配置される。

【0062】
図8(a)に、紫外光UVの照射前で油滴Dが千鳥状に配列された状態を示し、図8(b)に、紫外光UVの照射によって第2の液体L2が硬化した状態を示す。また、図8(c)には、例えば、分断されて空孔部10が開口部を露出した多孔フィルム1Aが示されている。

【0063】
なお、多孔フィルム1、1A、1Bをガラス基板31、32から剥離する場合には、デバイスDVを冷水と温水とに交互に浸漬させればよい。

【0064】
以上のように、本実施形態では、所望の直径を有する油滴Dと、光硬化性を有する第2の液体L2とを用いることにより、10μm以上、2000μm以下程度でばらつきの少ない孔径を有する多孔フィルムを低コストで製造することが可能になる。また、本実施形態では、第1ステップにおいて、第1キャピラリー装置40または第2キャピラリー装置50の選択、ノズル42の直径、開口部49の直径および第1の液体L1の流速を適宜選択することにより、10μm以上、2000μm以下の任意の孔径を容易に選択して形成することができる。

【0065】
また、本実施形態では、第1の液体L1の比重が第2の液体L2の比重よりも大きいため、第1の液体L1の比重が第2の液体L2の比重よりも小さい場合のように、油滴D(第1の液体L1)が第2の液体L2に対して浮き上がってしまい球状の油滴Dが安定して形成できないことや、空孔部10が上方に偏る等の不具合を生じさせることなく、粒径の相対誤差が小さく、空孔部10が等分布で配置された多孔フィルム1、1A、1Bを作製できる。

【0066】
また、空孔部10を形成するにあたり、液相ではなく、例えば、気泡等の気相を用いることも考えられるが、この場合には、上述したように、気体の比重が第2液体L2の比重よりも小さいため、空孔部10を安定して形成できない不都合や、空孔部10が偏った分布で配置されてしまう不都合等が懸念される。これに対して、本実施形態では、液相である油滴Dを用いて空孔部10を形成しているため、気相の場合と比較して比重の調整が容易であり、粒径の相対誤差が小さく、空孔部10が等分布で配置された多孔フィルム1、1A、1Bを容易に作製することが可能である。

【0067】
また、空孔部10を形成するにあたり、液相ではなく、例えば固相を用いることも考えられる。しかしながら配列する球状体が固相の場合、球状体が剛直であり、球状体が任意の位置で凝集した場合に、再配列し直す柔軟性がない。そのため、空孔部10を均一に配置できないという不具合が懸念される。

【0068】
なお、空孔部10の孔径を図5に示した平均粒径とは異なる値に設定する場合には、上述したように、注入管41のノズル42から連続的に第1の液体L1を吐出する方法の他に、例えば、ピエゾ素子等の圧電素子を用いたインクジェット方式で第1の液体L1を吐出して油滴Dを形成する構成としてもよい。インクジェット方式で油滴Dを形成する場合には、より微小の油滴Dも形成することが可能になる。

【0069】
(多孔フィルムの第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る多孔フィルムについて、図9乃至図14を参照して説明する。上記の多孔フィルム1は、多孔フィルム1の厚さ方向に空孔部10を一層配置する構成を例示したが、第2実施形態では空孔部10が複数層(ここでは二層)に配置された例について説明する。これらの図において、図1乃至図8に示す第1実施形態の多孔フィルム1の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。

【0070】
図9および図10は、上記の第2ステップにおいて、厚さ方向に二層で配置される油滴D(すなわち空孔部10)のモデルを示す平面図である。図9は、二層目の油滴D2が一層目の4つの油滴D1で形成される間隙に配置された体心立方構造を示す図である。図10は、二層目の油滴D2が一層目の3つの油滴D1で形成される間隙に配置された最密構造(六方最密構造)を示す図である。

【0071】
油滴Dが体心立方構造で配置される場合は、二層の高さ(隙間30の厚さ)は、油滴Dの半径をrとすると、下式(1)で表される。

【0072】
【数1】
JP2017104610A1_000003t.gif

【0073】
また、油滴Dが最密構造で配置される場合は、二層の高さ(隙間30の厚さ)は、油滴Dの半径をrとすると、下式(2)で表される。

【0074】
【数2】
JP2017104610A1_000004t.gif

【0075】
従って、油滴Dを二層構造とする場合には、上述した第2ステップにおいて、空孔部10の直径およびガラス基板31、32間の隙間30の厚さを、構造に応じた式(1)または式(2)で算出される厚さに調整する。例えば、空孔部10(液滴D)の半径を200μm(直径400μm)とすると、体心立方構造の場合は隙間30の厚さを682μmに調整し、最密構造の場合は隙間30の厚さを726μmに調整する。第2ステップにおいて、厚さが調整された隙間30に油滴Dおよび第2の液体L1を注入することにより、油滴Dは、隙間30の厚さに応じて体心立方構造または最密構造に3次元的に配列される。
図11は、油滴Dが体心立方構造で配列された状態を示す図である。図12は、油滴Dが最密構造で配列された状態を示す図である。

【0076】
その後、上記の第3ステップおよび第4ステップの処理を順次実施することにより、孔径のばらつきが少ない空孔部10が体心立方構造または最密構造で配置された多孔フィルムを製造することができる。図13は、空孔部10が体心立方構造で配列された多孔フィルム1を拡大した図である。図14は、空孔部10が最密構造で配列された多孔フィルム1を拡大した図である。

【0077】
このように、空孔部10が多層に配置された構造の多孔フィルムを製造する際にも、上述したように、気相で空孔部10を形成する場合には、体心立方構造あるいは最密構造を切り換えて製造することは極めて困難であるが、本実施形態のように、液相で空孔部10を形成すれば隙間30の厚さに応じて体心立方構造または最密構造に容易に切り換えて製造することが可能である。

【0078】
なお、第2実施形態では、空孔部10が二層配列された構成を例示したが、隙間30の厚さを体心立方構造または六方最密構造に応じた値に設定することにより、三層以上に亘って空孔部10が体心立方構造または六方最密構造で形成された多孔フィルムを製造することが可能である。

【0079】
(多孔フィルムの第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る多孔フィルムについて、図15乃至図18を参照して説明する。上記第2実施形態では、多孔フィルム1の厚さ方向に空孔部10が二層に配置された構成を例示したが、第3実施形態では、三層に配置された構成について説明する。これらの図において、図9乃至図14に示す第2実施形態の多孔フィルム1の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。

【0080】
図15は、上記の第2ステップにおいて、厚さ方向に三層で配置される油滴D(すなわち空孔部10)が体心立方構造で配置されたモデルの正面図であり、図16は、三層目側から視た同平面図である。図15および図16に示されるように、一層目の油滴D1および三層目の油滴D3は、それぞれ3×3の格子状に9つ配列され、二層目の油滴D2は、一層目および三層目の各層で互いに隣り合う4つの油滴で形成される隙間に位置するように、2×2の格子状に4つ配置されている。

【0081】
油滴D(D1~D3)が体心立方構造で配置される場合は、三層の高さ(隙間30の厚さ)は、油滴D(D1~D3)の半径をrとすると、下式(3)で表される。

【0082】
【数3】
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【0083】
図17は、上記の第2ステップにおいて、厚さ方向に三層で配置される油滴D(すなわち空孔部10)が面心立方構造で配置されたモデルの正面図であり、図18は、三層目側から視た同平面図である。図17および図18に示されるように、一層目は、3つの油滴D1が互いに隣り合って接触して7つ配置されている。二層目は、一層目で互いに隣り合う3つの油滴で形成される隙間に位置するように、3つの油滴D2が配置されている。三層目は、二層目で互いに隣り合う3つの油滴で形成される隙間に位置するように、3つの油滴D3が配置されている。

【0084】
油滴D(D1~D3)が面心立方構造で配置される場合は、三層の高さ(隙間30の厚さ)は、油滴D(D1~D3)の半径をrとすると、下式(4)で表される。

【0085】
【数4】
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【0086】
従って、油滴Dを三層構造とする場合には、上述した第2ステップにおいて、空孔部10の直径および、構造に応じた式(3)または式(4)で算出される厚さにガラス基板31、32間の隙間30の厚さを調整することにより、体心立方構造または面心立方構造で空孔部10が三層に配置された多孔フィルムを低コストで容易に製造することが可能になる。

【0087】
(多孔フィルムの他形態)
上記実施形態では、油滴Dおよび空孔部10の直径は同一径である場合について説明したが、第1ステップにおいて、直径の異なる複数種の油滴Dを準備することにより、直径の異なる複数種の空孔部10を有する多孔フィルム1(または多孔フィルム1A、1B)を製造することも可能である。直径の異なる複数種の油滴Dとしては、例えば、上述した第1キャピラリー装置40または第2キャピラリー装置50の選択、ノズル42の直径、開口部49の直径および第1の液体L1の流速の少なくとも一つを変更することにより準備可能である。特に、第1の液体L1の流速を変更する方法を選択すれば、直径の異なる複数種の油滴Dを連続的に形成することが可能となる。

【0088】
図19は、直径比が2:3程度の2種の油滴Dが配列された紫外線UV照射前の様子を示す図である。図20は、直径比が1:2程度の2種の油滴Dが配列された紫外線UV照射前の様子を示す図である。図19に示されるように、直径比が比較的小さい油滴Dの場合には、油滴Dが形成された順序に応じた位置に配列された。図20に示されるように、直径比が比較的大きい油滴Dの場合には、直径が大きい油滴Dの配列によって、直径が小さい油滴Dが誘起された配列となった。このように、直径が異なる複数種の油滴Dを準備することにより、直径が異なる複数種の空孔部10を、各孔径毎にばらつきが少ない状態で容易に形成することができた。

【0089】
(多孔フィルムの適用例)
次に、上記の多孔フィルムの適用例について説明する。

【0090】
[マイクロレンズアレイ]
本実施形態の多孔フィルム1は、マイクロレンズアレイに適用可能である。
マイクロレンズアレイは、微小レンズが規則的に配列されたマイクロレンズアレイは、多数のレンズ体からの光が干渉することで、光束、偏光、波長などの光物性の制御や三次元立体映像の作製への応用が期待される。本実施形態の多孔フィルム1では、空孔部10にレンズ体を配置することにより、マイクロレンズアレイとして機能する。レンズ体としては、例えば、全方位レーザー発振器であるコレステリック液晶マイクロカプセルを選択できる。

【0091】
コレステリック液晶(Cholesteric liquid crystal)とは、液晶材料の一つであり、電力を加えずに、光を透過する状態(フォーカルコニック状態)と反射する状態(プレーナ状態)で安定できる「双安定性」という特徴を有している。コレステリック液晶は、ネマチック液晶にカイラル剤と呼ばれる添加剤を加え、旋光性を持たせて作成される。また、コレステリック液晶は、カイラルネマチック液晶(CN液晶)と呼ばれることもある。コレステリック液晶は、メモリ性のある特性により、電源を落としても表示が消えず、低消費電力が可能になり、電子ペーパーの表示技術にも適用可能である。

【0092】
コレステリック液晶マイクロカプセルの直径よりも大きな直径の空孔部10を有する多孔フィルム1を用い、図21に示されるように、空孔部10にコレステリック液晶マイクロカプセルを捕捉した。捕捉した液晶マイクロカプセルがそれぞれ液晶レンズとして働くため、外場によって屈折率を制御できるマイクロレンズアレイとなる。本実施形態では、上述した多孔フィルム1を備えているため、10μm以上、2000μm以下程度のレンズ体を有するマイクロレンズアレイを低コストで製造することが可能になる。

【0093】
[マイクロリアクター]
本実施形態の多孔フィルム1は、マイクロリアクターに適用可能である。
マイクロリアクターは、微小空間を反応場として利用するものであり、本実施形態の多孔フィルム1は、空孔部10が反応場として機能する。マイクロリアクターは、体積あたりの比表面積が大きいことによって、不均一触媒反応への応用が考えられる。そのため、多孔フィルム1に触媒を担持させることによって、マイクロリアクターとして機能する。
さらに、多孔フィルム1の格子構造や細孔径を制御することにより、反応場における反応を制御することが可能になる。本実施形態では、上述した多孔フィルム1を備えているため、10μm以上、2000μm以下程度の反応場を有するマイクロリアクターを低コストで製造することが可能になる。

【0094】
[バイオデバイス]
本実施形態の多孔フィルム1は、バイオデバイスに適用可能である。
バイオデバイスとしては、セルパターニングの足場となるデバイスおよび細胞等の成長の足場となるデバイスが挙げられる。セルパターニングを、例えば、バイオセンサーとして用いるには、細胞培養を行う位置の制御が必要となる。本実施形態の多孔フィルム1を細胞と接着性のない物質で作製するか、あるいは細胞と接着性のない物質で表面処理し、多孔フィルム1を細胞培養する基板に貼り付け、その基板に細胞を接着し、多孔フィルム1を剥離することによりセルパターングが実現できる。このセルパターニングは、本実施形態の多孔フィルム1を用いているため、トップダウン的な基板へのパターニング工程を減らすことができ、大幅なコストダウンが図れる。

【0095】
従来の多孔フィルムは二次元のものが多く、細胞成長や血管成長も二次元での成長が研究対象となっていたが、空孔部10が三次元的に形成された本実施形態の多孔フィルム1を用い、多孔フィルム1の表面に神経球を付着し、成長過程を観察することにより、実際の脳や人間の体への適用を考える際に必要不可欠であった三次元での成長を低コストで研究することが可能となる。さらに、格子構造の異なる多孔フィルム1における異なる成長過程も観察できるため、基礎研究にも寄与できる。

【0096】
[テンプレート]
本実施形態の多孔フィルム1は、テンプレートに適用可能である。
多孔フィルム1は、基体20が鋳型となり、空孔部10に配置された材料をテンプレートとして成型することが可能となる。この場合、第2ステップでガラス基板31、32間の隙間30に注入する油滴Dを密ではなく粗となる数としてもよい。この構成により、隣り合う空孔部10が連通せずに独立し、ガラス基板31、32と接触する箇所のみが開口した空孔部10を形成することができる。

【0097】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。

【0098】
例えば、上記実施形態では、第1の液体L1が油相であり、第2の液体L2が水相である構成を例示したが、これに限定されるものではなく、第1の液体L1が水相であり、第2の液体L2が油相である構成であってもよい。この場合、水相である第1の液体L1としては、例えば、イオン交換水を用いることができ、油相である第2の液体L2としては、例えば、スチレンモノマー(84.2 質量%)、ジビニルベンゼン(9.8 質量%、架橋剤)、プルロニックP123(登録商標)(1.1 質量%、界面活性剤)、IRGACURE(登録商標) TPO(4.9 質量%、光重合開始剤)を用いることができる。

【0099】
第1の液体L1が水相で、第2の液体L2が油相である場合に熱重合により多孔フィルムを製造する方法の一例を示す。
1)上記の第1ステップで溶液を1時間脱気後、1時間バブリングして窒素置換し、W/O型エマルションを作製した。その際、油相の組成は、界面活性剤P123 0.92質量%、スチレンモノマー(重合禁止剤除去済) 84.57質量%、ジビニルベンゼン(重合禁止剤除去済)8.66質量%、熱重合開始剤AIBN 5.84質量%であり、水相はイオン交換水であった。
2)上記のW/O型エマルションを利用し、常温における硬化によってポーラスフィルムを作製した。
3)スチレンモノマーの揮発を抑えるため、スチレンモノマーで満たされた中にW/O型エマルションを封入したガラスセルを置き、室温で静置した。
このような方法を採ることにより、熱重合で多孔フィルムを製造することができた。

【0100】
次に、第1の液体L1が水相で、第2の液体L2が油相である場合に光重合により多孔フィルムを製造する方法の一例を示す。
1)上記と同様に、第1ステップでW/O型エマルションを作製した。その際、油相の組成は、界面活性剤P123 1.40質量%、トルエン 77.74質量%、アクリル系硬化樹脂(ユニソーラー(登録商標)、ユニテック社製)20.85質量%であり、水相はイオン交換水であった。
2)上記のW/O型エマルションを利用し、紫外光UVの照射による硬化によってポーラスフィルムを作製した。
このような方法を採ることにより、光重合で多孔フィルムを製造することができた。

【0101】
また、上記実施形態では、第2の液体Lに光エネルギーを付与して硬化させる構成を例示したが、これに限定されるものではなく、熱エネルギーを付与されたときに硬化する開始剤を第2の液体Lに含ませ、第3ステップで熱エネルギーを付与して第2の液体Lを硬化させて基体20を形成する構成としてもよい。

【0102】
さらに、基体20を形成する方法としては、光エネルギーあるいは熱エネルギーの付与により硬化する硬化剤を用いる他に、pHの変化により硬化する硬化剤を用い、第2の液体LのpHを変化させることにより、第2の液体Lを硬化させて基体20を形成する構成としてもよい。
具体的には、pHの変化により硬化する硬化剤として、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、ジイソプロピルペルジカーボネートなどのレドックス開始剤を用い、第2の液体LのpHを変化させる材料として、テトラエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどを用いることにより第2の液体Lを硬化させることが可能である。

【0103】
また、上記実施形態では、空孔部10の孔径が10μm以上、2000μm以下の所定直径である例を用いて説明したが、より安定して空孔部10を形成するためには、空孔部10の孔径は、250μm以上、2000μm以下であることが好適である。

【0104】
また、上記実施形態では、複数の空孔部10が体心立方構造または六方最密構造で配列される構成を例示したが、これらの他に空孔部10が面心立方構造で配列された多孔フィルムについても本発明により製造することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…多孔フィルム、 10…空孔部、 11…連通孔、 20…基体、 30…隙間、 31、32…ガラス基板(基板)、 41…注入管(第1管体)、 41a…流路、 42…ノズル、 46、47…回収管(第2管体)、 D…油滴(液滴)、 L1…第1の液体、 L2…第2の液体、 UV…紫外光(光)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
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【図19】
18
【図20】
19
【図21】
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