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明細書 :脳由来神経栄養因子の発現誘導剤及び組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年10月4日(2018.10.4)
発明の名称または考案の名称 脳由来神経栄養因子の発現誘導剤及び組成物
国際特許分類 A61K  36/17        (2006.01)
A61K  36/484       (2006.01)
A61K  36/9068      (2006.01)
A61K  36/70        (2006.01)
A61K  36/488       (2006.01)
A61K  36/758       (2006.01)
A61K  36/65        (2006.01)
A61K  36/708       (2006.01)
A61K  36/74        (2006.01)
A61K  36/714       (2006.01)
A61K  36/59        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
FI A61K 36/17
A61K 36/484
A61K 36/9068
A61K 36/70
A61K 36/488
A61K 36/758
A61K 36/65
A61K 36/708
A61K 36/74
A61K 36/714
A61K 36/59
A61P 43/00 105
A61P 25/00
A61P 25/28
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 20
出願番号 特願2017-556098 (P2017-556098)
国際出願番号 PCT/JP2016/087237
国際公開番号 WO2017/104706
国際出願日 平成28年12月14日(2016.12.14)
国際公開日 平成29年6月22日(2017.6.22)
優先権出願番号 2015247942
優先日 平成27年12月18日(2015.12.18)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】津田 正明
【氏名】福地 守
【氏名】森 寿
出願人 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100114074、【弁理士】、【氏名又は名称】大谷 嘉一
審査請求 未請求
テーマコード 4C088
Fターム 4C088AB12
4C088AB13
4C088AB14
4C088AB32
4C088AB43
4C088AB58
4C088AB59
4C088AB60
4C088AB62
4C088AB81
4C088BA08
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA15
4C088ZA16
4C088ZC01
要約 【課題】BDNF遺伝子発現誘導能活性を有する生薬またはエキスを有効成分とする医薬又は組成物の提供を目的とする。
【解決手段】甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已、良姜およびそれらのエキスは、BDNF遺伝子発現誘導活性を有し、それらを単独、混合、他の生薬を配合した漢方方剤は、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患や神経変性疾患による脳機能低下の改善に有用である。
【選択図】 図2
特許請求の範囲 【請求項1】
甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已、良姜又はそれらのエキスから選ばれる一つ以上を有効成分として含有することを特徴とする脳由来神経栄養因子の発現誘導剤。
【請求項2】
何首烏、山椒、赤芍、釣藤鉤、良姜、大黄、麻黄又はそれらのエキスから選ばれる一つ以上を有効成分として含有することを特徴とする脳由来神経栄養因子の発現誘導剤。
【請求項3】
有効成分として人参又はそのエキスが追加された請求項1又は2記載の脳由来神経栄養因子の発現誘導剤。
【請求項4】
甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已、良姜又はそれらのエキスから選ばれる一つ以上を有効成分として含有することを特徴とする脳由来神経栄養因子の発現を誘導する組成物。
【請求項5】
何首烏、山椒、赤芍、釣藤鉤、良姜、大黄、麻黄又はそれらのエキスから選ばれる一つ以上を有効成分として含有することを特徴とする脳由来神経栄養因子の発現を誘導する組成物。
【請求項6】
有効成分として人参又はそのエキスが追加された請求項4又は5記載の脳由来神経栄養因子の発現を誘導する組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脳由来神経栄養因子の発現を誘導する活性を有する生薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国では、高齢化社会の影響により認知症などの神経系の疾患急増が問題視されている。
このような疾患による脳機能の低下は、患者本人の生活の質の重大な低下を招き、また介護に関わる家族の負担も増えるため、これら疾患の治療薬開発だけでなく、予防の観点からの研究開発は、精神衛生や社会福祉を考える上で非常に重要な取り組みである。
特に予防においては、日常的な服用が可能な薬剤の開発が求められる。
そこで注目されるのが、生薬に代表される伝統医薬品である。
これら伝統医薬品は、長年の使用実績から安全性の面で克服すべきハードルが低い一方、科学的根拠に乏しいものも少なくなく、特に中枢神経系への効果については未解明な部分が多い。
また、数多く存在する生薬の中から、脳機能低下の予防効果を有するものを検索することは、時間・労力・コストの面で非常に困難であるものの、例えば、生薬の人参、乾姜及び山椒の漢方方剤である大建中湯のマウスにおける記憶・学習増強効果(非特許文献1)、杏仁、麻黄、桂枝、人参、当帰、センキュウ、乾姜、甘草及び石膏からなる神経栄養因子合成促進剤(特許文献1)、薬用ニンジンのアルコール抽出物中の神経細胞賦活物質(特許文献2)などが報告されている。
【0003】

【特許文献1】日本国特開平7-25777号公報
【特許文献2】日本国特開平6-316527号公報
【非特許文献1】J Nat Med(2006) 60:64-67
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor、以下、BDNFと称する)は、119個のアミノ酸からなるポリベプチドの二量体として存在し、神経栄養因子ファミリーに属するタンパク質の1つであり、その生理作用は、脳・神経系において、神経細胞の生存や神経ネットワーク形成、さらには記憶の固定化などの高次脳機能発現といった多岐にわたる。
また、様々な神経変性疾患や精神疾患においてBDNF発現量の減少が認められており、BDNFの発現を誘導する薬物、あるいはそれを含む組成物は、神経変性疾患や精神疾患により低下した脳機能を改善することが期待されている。
一方、長年の使用実績から安全性が確保されており、日本薬局方にも収載されている生薬のエキスにBDNF遺伝子発現誘導活性を持つものがどの程度存在するかが未知数である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した状況下、発明者らは、BDNF遺伝子発現変化をホタルの発光酵素ルシフェラーゼによる発光の強弱により計測可能な遺伝子改変マウス由来の大脳皮質神経細胞初代培養系を用いる測定系を開発し、この測定系により、神経細胞に作用してBDNF遺伝子発現を誘導する生薬エキスを簡便・迅速にスクリーニングすることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明に使用される生薬は、甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已及び良姜であり、個々の生薬については以下のとおりである。
【0007】
甘草(カンゾウ):マメ科カンゾウ属ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis)又はスペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linne)の根及びストロン、ときには周皮を除いたもの(皮去りカンゾウ)である。
【0008】
縮砂(シュクシャ):ショウガ科アモムム属アモムム・キサンティオデス(Amomum xanthioides)の種子の塊である。
【0009】
何首烏(カシュウ):タデ科タデ属ツルドクダミ(Polygonum multiflorum)の塊根である。
【0010】
黄耆(オウギ):マメ科ゲンゲ属キバナオウギ(Astragalus membranaceus)又はナイモウオウギ(Astragalus mongholicus)の根である。
【0011】
葛根(カッコン):マメ科クズ属クズ(Pueraria lobata Ohwi)の周皮を除いた根である。
【0012】
山椒(サンショウ):ミカン科サンショウ属サンショウ(Zanthoxylum piperitum)の成熟果実の果皮で、 種子をできるだけ取り除いたものである。
【0013】
赤芍(セキシャク):ボタン科ボタン属シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根であって、外皮をつけたままのものである。
【0014】
大黄(ダイオウ):タデ科ダイオウ属ダイオウ(Rheum palmatum)、タングートダイオウ(Rheum tanguticum)、ヤクヨウダイオウ(Rheum officinale)、チョウセンダイオウ(Rheum coreanum)又はそれらの種間雑種の根茎である。
【0015】
釣藤鉤(チョウトウコウ):アカネ科カギカズラ属カギカズラ(Uncaria rhynchophylla)、トウカギカズラ(Uncaria sinensis Haviland)又はUncaria macrophylla Wallichの茎枝の一部をつけた棘である。
【0016】
苦参(クジン):マメ科クララ属クララ(Sophora flavescens)の根である。
【0017】
炮附子(ホウブシ):キンポウゲ科トリカブト属ハナトリカブト(Aconitum carmichaeli)又はオクトリカブト (Aconitum japonicum)の塊根をニガリ液に数日浸し、加熱処理したものである。
【0018】
麻黄(マオウ):マオウ科マオウ属シナマオウ(Ephedra sinica)、アイマオウ(Ephedra intermedia)又はキダチマオウ(Ephedra equisetina)の地上茎である。
【0019】
防已(ボウイ):ツヅラフジ科ツヅラフジ属オオツヅラフジ(Sinomenium acutum)のつる性の茎及び根茎である。
【0020】
良姜(リョウキョウ):ショウガ科ハナミョウガ属リョウキョウ(Alpinia officinarum)の根茎である。
【0021】
本発明には、上記した生薬の抽出物(以下、「エキス」称する)を用いることもできる。
エキスの製造方法としては、生薬を、例えば、水(温水、熱湯など)によって抽出するか、又は有機溶媒を用いて抽出する。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのグリコール類、アセトニトリルなどを用いることができ、これらの有機溶媒を単独、又は適宜組み合わせ、一定の比率で混合して用いることができる。
好ましくは、メタノール、エタノール、水、ブチレングリコール、含水アルコール又はアセトニトリル-水混合溶媒などが好ましい。
【0022】
水抽出又は有機溶媒抽出の方法としては、通常の生薬抽出に用いられる方法を用いることができ、例えば、生薬1重量部に対し、水及び/又は有機溶媒5~300重量部を用いて、攪拌しながら、その沸点以下の温度で加熱還流することが望ましい。
抽出工程は、通常は5分~7日間、好ましくは10分~24時間実施すればよい。
【0023】
抽出工程終了後、濾過又は遠心分離などの適当な方法により、水及び/又は有機溶媒抽出液から、不溶物を分離して粗エキスを得ることができる。
常法による熱水エキス又は有機溶媒エキスの他に、粗エキスを各種有機溶媒又は吸着剤などにより、更に処理した精製エキスも、本発明に用いることができる。
これらの粗エキス及び各種の精製処理を終えた精製エキスは、抽出したままの溶液、溶媒を濃縮したもの、溶媒を留去し乾燥したもの、凍結乾燥したもの、さらに乾燥した固形物を粉砕し粉末等にしたもののいずれであってもよい。
【0024】
本発明に使用される甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已、良姜及びそれらのエキスは、各々単独で使用してもよく、組み合わせて処方として使用してもよい。
単独での使用は、何首烏、山椒、赤芍、釣藤鉤または良姜が好ましく、特に山椒が好ましい。
処方には、人参など他の生薬を加えた処方としてもよい。
例えば、人参エキスを加えた処方として、後述する試験例4の山椒エキス+人参エキス、防已エキス+人参エキス、釣藤鈎エキス+人参エキスなどが挙げられ、また、大建中湯に用いられる、人参、山椒および乾姜の組み合わせなどが例として挙げられる。
【0025】
上記の単味エキス及びエキスを組み合わせた処方物は、錠剤,散剤、顆粒剤、カプセル剤などに製剤化して経口的に投与してもよい。
【0026】
経口剤は、必要に応じて結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味剤などを加え錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤を常法により製造することができる。
また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、安定化剤などを添加することができる。
【0027】
エキス等の投与量は、疾患、症状、年齢、併用される治療的措置などにより異なるが、経口剤としてヒトに投与する場合は、抽出物として0.1~100mg/kgを1日1回~数回に分けて投与すればよい。
【0028】
エキス等を、該エキス等含有した飲食品または飲食品用組成物にすることもできる。
ここで、「飲食品」とは、飲食品全般を意味するが、いわゆる健康食品を含む一般食品の他、厚生労働省の保健機能食品制度に規定された特定保健用食品や栄養機能食品などの保健機能食品をも含むものであり、更にサプリメント、飼料、食品添加物等も本発明の飲食品に包含される。
【0029】
エキス等を飲食品または飲食品用組成物に使用するには、そのまま、又は種々の栄養成分とともに加工肉、果汁、牛乳、豆乳などの飲食品の原料に混ぜて飲食品または飲食品用組成物を製造することができる。
また、エキス等を健康食品、栄養補助食品などとして使用する場合、例えば慣用の手段を用いて、錠剤、カプセル、散剤、顆粒、懸濁剤、シロップ剤などの形態に調製することができる。
【0030】
上記の飲食品または飲食品用組成物におけるエキス等の配合量は、添加形態及び投与形態によっても異なり広い範囲から選択できるが、通常、0.01~10重量%配合するのが望ましい。
【発明の効果】
【0031】
甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已、良姜及びそれらのエキスは、BDNF遺伝子発現誘導活性を有し、それらを単独、混合、他の生薬を配合した漢方方剤は、軽度認知障害(MCI)や認知症などの疾患による脳機能の低下の改善や予防、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患や神経変性疾患による脳機能の改善に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】スクリーニングの概要を示す図である。
【図2】内在性BDNF遺伝子発現誘導活性を示す図である。BDNF mRNA発現量をハウスキーピング遺伝子の1つであるグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNA発現量で補正し、生薬エキス添加前(0時間)のBDNF mRNA発現量に対する変化を誘導倍率として示した。
【図3】図2と同様に内在性BDNF遺伝子発現誘導活性を示す図である。
【図4】生薬の組み合わせでの内在性BDNF遺伝子発現誘導活性を示す図である。
【図5】大建中湯エキスでのBDNF遺伝子発現誘導活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を試験例で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例で使用した生薬エキスは、生薬を純水で50分間煎じ、ろ過後、凍結乾燥したエキス粉末をMilliQ水に溶解させたものである(10mg/mL)。

【0034】
試験例1
<BDNF遺伝子発現誘導能活性>
BDNF遺伝子発現誘導活性は、BDNF遺伝子発現変化を発光強度により計測可能な遺伝子改変マウス(BDNF-Lucマウス)を用いて検討した。
胎生16.5日齢のBDNF-Lucマウスの大脳皮質を単離後、酵素処理し、得られた細胞を96ウェル培養プレート上で13日間培養した。
培養後、生薬エキスを終濃度が0.5mg/mLとなるように培養液中に添加し、再び培養を行った。
実験対照群としては、溶媒であるMilliQ水のみを添加した。MilliQ水又は生薬エキスの添加後、6時間、24時間、48時間後にルシフェラーゼ活性測定キット(プロメガ社)を用いて各ウェルの発光を測定した。各時間におけるMilliQ水添加時のルシフェラーゼ活性を基準として、生薬エキスのルシフェラーゼ活性の誘導倍率を算出した。
生薬エキスのルシフェラーゼ活性の誘導倍率を表1に示す。

【0035】
【表1】
JP2017104706A1_000003t.gif

【0036】
表1の結果から、ルシフェラーゼ活性の誘導倍率が10倍以上となったものは、カシュウ(何首烏)、サンショウ(山椒)、セキシャク(赤芍)、チョウトウコウ(釣藤鉤)、ボウイ(防已)、及びリョウキョウ(良姜)であった。
そのうち、カシュウ、サンショウ、チョウトウコウは15倍を超えていた。
最大は、チョウトウコウの21.29培である。
また、5倍~10倍の値を示したものはダイオウ(大黄)、マオウ(麻黄)及びニンジン(人参)であった。

【0037】
試験例2
<内在性BDNF遺伝子発現誘導活性>
内在性BDNF遺伝子(大脳皮質神経細胞で実際に発現しているBDNF遺伝子)発現誘導活性は、RT-qPCR法によりBDNF mRNA発現量の変化を測定することで検討した。
胎生17日齢のラットの大脳皮質を単離後、酵素処理し、得られた細胞を6ウェル培養プレート上で13日間培養した。
培養後、各生薬エキスを終濃度が0.5mg/mLとなるように培養液中に添加し、再び培養を行った。
実験対照群としては、溶媒であるMilliQ水のみを添加した。
各生薬エキスの添加後、0時間、0.5時間、1時間、3時間、6時間、9時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間後にRNA抽出キット(キアゲン社)を用いて細胞からRNAを抽出し、Superscript II Reverse Transcriptase(インビトロジェン社)を用いて逆転写反応を行った。
逆転写反応後に得られたDNA産物及びSYBR Select Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、各生薬エキス添加後のBDNF mRNA発現量の変化を解析した。
結果を図2に示す。
図2に示したグラフから、コントロール(溶媒)に比較して人参エキス、サンショウエキス、釣藤鉤エキスのいずれも高い内在性BDNF遺伝子発現誘導活性を示した。
特に釣藤鉤エキスは、高い値を示した。

【0038】
試験例3
何首烏エキス、大黄エキス、麻黄エキス、良姜エキス、防已エキスを使用し、試験例2と同様な方法で、内在性BDNF遺伝子発現誘導活性を検討した。結果を図3に示した。
図3のグラフから、いずれも高い内在性BDNF遺伝子発現誘導活性を示し、特に大黄エキス、麻黄エキス及び良姜エキスが高い値を示した。

【0039】
試験例4
人参エキスに山椒エキス、防已エキス、または釣藤鉤エキスを混合した場合の内在性BDNF遺伝子発現誘導活性は、RT-qPCR法によりBDNF mRNA発現量の変化を測定することで検討した。
胎生17日齢のラットの大脳皮質を単離後、酵素処理し、得られた細胞を6ウェル培養プレート上で13日間培養した。
培養後、各生薬エキスを終濃度が0.5mg/mLとなるように培養液中に添加し、再び培養を行った。
人参エキスと山椒エキス、および人参エキスと防已エキスの組み合わせの場合は添加3時間後、人参エキスと釣藤鉤エキスの組み合わせの場合は添加24時間後にRNA抽出キット(キアゲン社)を用いて細胞からRNAを抽出し、Superscript II Reverse Transcriptase(インビトロジェン社)を用いて逆転写反応を行った。
逆転写反応後に得られたDNA産物およびSYBR Select Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)を用いて、各生薬エキス添加後のBDNF mRNA発現量の変化を解析した。
結果を図4に示した。
図4に示したグラフから、各生薬単独よりも人参エキスと組み合せた方が高い誘導活性を示すことが明らかになった。

【0040】
試験例5
<大建中湯エキスのBDNF遺伝子発現誘導能活性>
BDNF遺伝子発現誘導活性は、BDNF遺伝子発現変化を発光強度により計測可能な遺伝子改変マウス(BDNF-Lucマウス)を用いて検討した。
胎生16.5日齢のBDNF-Lucマウスの大脳皮質を単離後、酵素処理し、得られた細胞を96ウェル培養プレート上で13日間培養した。
培養後、大建中湯エキスを終濃度が0.5mg/mLとなるように培養液中に添加し、再び培養を行った。
大建中湯エキスの添加後、6時間、24時間後にルシフェラーゼ活性測定キット(プロメガ社)を用いて各ウェルの発光を測定した。
結果を図5に示した。
図5に示したグラフから、大建中湯即ち人参、山椒、及び乾姜の組み合せにおいても高い活性を示すことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已、良姜及びそれらのエキスは、BDNF遺伝子発現誘導活性を有し、それらを単独、混合、他の生薬を配合した漢方方剤は、認知症などの疾患による脳機能の低下の改善や予防、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患や神経変性疾患による脳機能の低下の改善に有用である。
また、甘草、縮砂、何首烏、黄耆、葛根、山椒、赤芍、大黄、釣藤鉤、苦参、炮附子、麻黄、防已及び/又は良姜のエキスは、単独、混合又は他の生薬を配合して、認知症などの疾患による脳機能の低下の改善や予防、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患や神経変性疾患による脳機能の低下を改善する食品又は飲料とすることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4