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明細書 :ナノクラスター分散液、ナノクラスター膜、ナノクラスター分散体、ナノクラスター分散液の製造方法およびナノクラスター分散液の製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 ナノクラスター分散液、ナノクラスター膜、ナノクラスター分散体、ナノクラスター分散液の製造方法およびナノクラスター分散液の製造装置
国際特許分類 B01J  13/00        (2006.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
C23C  14/00        (2006.01)
B22F   9/00        (2006.01)
B22F   9/12        (2006.01)
FI B01J 13/00 B
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C23C 14/00
B22F 9/00 B
B22F 9/12 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 33
出願番号 特願2017-535517 (P2017-535517)
国際出願番号 PCT/JP2016/073737
国際公開番号 WO2017/030087
国際出願日 平成28年8月12日(2016.8.12)
国際公開日 平成29年2月23日(2017.2.23)
優先権出願番号 2015160680
優先日 平成27年8月17日(2015.8.17)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】中嶋 敦
【氏名】角山 寛規
【氏名】赤塚 紘己
【氏名】塚本 恵三
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
【識別番号】305018856
【氏名又は名称】株式会社アヤボ
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 4G065
4K017
4K029
Fターム 4G065AA02
4G065AA04
4G065AA08
4G065AB01X
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4G065AB29X
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4G065AB38Y
4G065BA15
4G065BB01
4G065BB03
4G065CA11
4G065DA02
4G065DA09
4G065EA05
4G065EA10
4G065FA01
4G065GA01
4K017AA08
4K017BA02
4K017BA07
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4K017BB16
4K017CA08
4K017DA01
4K017DA07
4K017EG04
4K029BA52
4K029BB01
4K029CA05
4K029DC05
4K029DC39
要約 このナノクラスター分散液は、所定の原子数のナノクラスターが分散されてなる。
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の原子数のナノクラスターを分散せしめてなるナノクラスター分散液。
【請求項2】
前記所定の原子数のナノクラスターが均一分散されてなる請求項1に記載のナノクラスター分散液。
【請求項3】
ナノクラスターが分散する分散媒が難揮発性溶媒である請求項1又は2のいずれかに記載のナノクラスター分散液。
【請求項4】
前記分散媒が、エーテル結合またはシロキサン結合を有する請求項3に記載のナノクラスター分散液。
【請求項5】
前記エーテル結合または前記シロキサン結合の末端が不活性な置換基によって終端されている請求項4に記載のナノクラスター分散液。
【請求項6】
ナノクラスターが分散する分散媒が揮発性溶媒である請求項1又は2のいずれかに記載のナノクラスター分散液。
【請求項7】
前記分散媒が、鎖状エーテル、環状エーテル、鎖状シロキサン、ニトリル類、ハロアルカン類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、及びベンゼン誘導体からなる群のいずれかである請求項6に記載のナノクラスター分散液。
【請求項8】
ナノクラスターの構成単位が、イオン化傾向がAgよりも高い金属元素若しくは典型元素、またはこれらの複合体である請求項1~7のいずれか一項に記載のナノクラスター分散液。
【請求項9】
ナノクラスターが、M@Siで表記される金属イオン内包クラスターである請求項1~8のいずれか一項に記載のナノクラスター分散液。
【請求項10】
ナノクラスターが、TaとSiとの複合クラスター,TiとSiとの複合クラスター,LuとSiとの複合クラスター,MoとSiとの複合クラスター,WとSiとの複合クラスター及びRuとSiとの複合クラスターからなる群のいずれかである請求項1~9のいずれか一項に記載のナノクラスター分散液。
【請求項11】
前記所定の原子数のナノクラスターが、ナノクラスター分散液に含まれるナノクラスターの内の5%以上である請求項1~10のいずれか一項に記載のナノクラスター分散液。
【請求項12】
所定の原子数のナノクラスターを含むナノクラスター分散体。
【請求項13】
所定の原子数のナノクラスターを含むナノクラスター分散膜。
【請求項14】
ナノクラスターを生成するナノクラスター生成工程と、
生成した前記ナノクラスターが入射する分散媒を流動させながら、前記ナノクラスターを分散媒中で捕集するナノクラスター捕集工程と、を有するナノクラスター分散液の製造方法。
【請求項15】
前記ナノクラスター捕集工程において、前記分散媒表面におけるナノクラスター密度が凝集限界以上とならないように前記分散媒を流動させる請求項14に記載のナノクラスター分散液の製造方法。
【請求項16】
前記分散媒が、沸点160℃以上、かつ室温での蒸気圧が100Pa以下の難揮発性溶媒である請求項14又は15のいずれかに記載のナノクラスター分散液の製造方法。
【請求項17】
前記ナノクラスター捕集工程の後に、前記分散媒よりも沸点の低い揮発性分散媒に、前記分散媒を置換する置換工程をさらに備える請求項14~16のいずれか一項に記載のナノクラスター分散液の製造方法。
【請求項18】
前記ナノクラスター生成工程と、前記ナノクラスター捕集工程の間に、前記ナノクラスター生成工程で所定のナノクラスターが生成されているかを検出するナノクラスター検出工程をさらに有する請求項14~17のいずれか一項に記載のナノクラスター分散液の製造方法。
【請求項19】
ナノクラスター生成手段と、前記ナノクラスター生成手段で生成されるナノクラスターの進行方向に配設されるナノクラスター捕集手段とを備えるナノクラスター分散液の製造装置。
【請求項20】
前記ナノクラスター生成手段が、真空容器と、カソードとしてのターゲットを有し、放電によるマグネトロンスパッタリングを行い、プラズマを発生させるスパッタ源と、前記スパッタ源に対し電力を供給する電源と、前記スパッタ源に対し第1の不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給手段と、前記真空容器内に収容されるナノクラスター成長セルと、を有する請求項19に記載のナノクラスター分散液の製造装置。
【請求項21】
前記ナノクラスター捕集手段が、分散媒を貯留可能な貯留容器と、前記ナノクラスターの入射面における前記分散媒を流動できる流動手段を有する、請求項19または20のいずれかに記載のナノクラスター分散液の製造装置。
【請求項22】
前記流動手段が、前記貯留容器内に設けられた撹拌子である請求項21に記載のナノクラスター分散液の製造装置。
【請求項23】
前記流動手段が、前記ナノクラスターの進行方向に対して垂直な方向に回転軸を有する回転体であって、
前記回転体は、前記貯留容器に貯留される分散媒に一部が浸漬するように配設されている請求項21に記載のナノクラスター分散液の製造装置。
【請求項24】
前記ナノクラスター捕集手段は、前記ナノクラスターの進行方向に対して交差する基板と、前記基板を冷却する冷却機構と、前記基板に対して分散媒を噴霧する分散媒供給手段と、前記基板の下方に設けられた捕集容器と、を有する、請求項19または20のいずれかに記載のナノクラスター分散液の製造装置。
【請求項25】
前記ナノクラスター生成手段と、前記ナノクラスター捕集手段との間に、前記ナノクラスターを検出する検出手段をさらに備える請求項19~24のいずれか一項に記載のナノクラスター分散液の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノクラスター分散液、ナノクラスター膜、ナノクラスター分散体、ナノクラスター分散液の製造方法およびナノクラスター分散液の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノクラスターは、数個~数千個の原子又は分子が集合した超微粒子である。ナノクラスターは、原子より大きく、バルクの固体よりも小さく、微粒子直径で表せば0.2~8nm程度である。ナノクラスターは特異な性質や機能を示し、触媒、光電子デバイス、磁気デバイス、バイオセンサー、プローブ、診断薬(インジケーター)等の種々の用途への応用が期待されている。
【0003】
ナノクラスターは種々の方法で生成されている。
例えば、特許文献1及び2、非特許文献1~3には、マグネトロンスパッタリング法で生成した中性原子もしくは原子イオンを、液相中に打ち込み、原子同士が液相の表面または内部で凝集することでナノクラスターを生成することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、マグネトロンスパッタリング法で生成した中性原子および原子イオンを、気相中で凝集する方法が開示されている。気相中で凝集させることで、ナノクラスターを構成する原子数(以下、クラスターサイズという。)の分布が制御されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-231306号公報
【特許文献2】特開2012-158785号公報
【特許文献3】特許第5493139号公報
【0006】

【非特許文献1】畠山義清、加藤淳一、大西慧、西川恵子;ナノ学会会報、Vol,10,No.1.
【非特許文献2】M.Wagener et al.,Progr Colloid Polym Sci,1998,111,78-81.
【非特許文献3】Yujin Hwang et al.,Powder Technology,186(2008)145-153.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ナノクラスターは、原子1個の増減による性質の変化が大きい。そのため、効率的にクラスターサイズの揃ったナノクラスターを得ることが求められている。
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2、非特許文献1~3に記載の方法は、液相の表面又は中で中性原子もしくは原子イオンを凝集させている。そのため、凝集する中性原子又は原子イオン自体が、イオン化傾向が小さく(還元されやすく)凝集しやすい元素であることが求められる。凝集する中性原子又は原子イオン自体が凝集しやすい元素でないと、ナノクラスターを生成することができない。
また特許文献1及び2、非特許文献1~3に記載の方法は、温度、撹拌条件、添加物量等が異なると、ナノクラスターサイズの分布が広くなる。つまり、効率的にクラスターサイズの揃ったナノクラスターを得ることができない。
【0009】
特許文献3に記載の方法は、気相中で微粒子を凝集させている。そのため、特許文献1及び2、非特許文献1~3と異なり、ナノクラスターを生成する原子 (元素)の種類は問わない。また特許文献3に記載の方法で得られるナノクラスターは、クラスターサイズも均一である。しかしながら、気相のナノクラスターを捕集する際には、固体基板上へ蒸着を行う。固体基板上へナノクラスターを蒸着すると、ナノクラスター同士が、基板上で凝集や合体することがある。また固体基板からナノクラスターを剥離し、回収することが極めて困難である。すなわち、クラスターサイズの制御されたナノクラスターを生成することはできるが、効率的に回収することが難しい。
【0010】
本発明は、所定の原子数のナノクラスター(クラスターサイズの制御されたクラスター)が分散したナノクラスター分散液、ナノクラスター分散体およびナノクラスター分散膜を提供することを目的とする。またナノクラスターを効率的に収集できるナノクラスター分散液の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、液相を利用して三次元的にナノクラスターを捕集することで、ナノクラスターの収率を高めることができるのではないかと考えた。そして、本発明者らは、所定のクラスターサイズのナノクラスターを生成し、生成したナノクラスターを分散媒中で捕集することで、クラスターサイズの制御されたナノクラスターを効率的に収集することができることを見出した。
すなわち、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
【0012】
(1)第1の態様に係るナノクラスター分散液は、所定の原子数のナノクラスターが分散せしめてなる。
【0013】
(2)上記態様にかかるナノクラスター分散液は、所定の原子数のナノクラスターが均一分散されてなる構成でもよい。
【0014】
(3)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、前記ナノクラスターが分散する分散媒が、難揮発性溶媒である。
【0015】
(4)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、前記分散媒が、エーテル結合またはシロキサン結合を有してもよい。
【0016】
(5)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、前記エーテル結合または前記シロキサン結合の末端が不活性な置換基によって終端されていてもよい。
【0017】
(6)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、ナノクラスターが分散する分散媒が、揮発性溶媒である。
【0018】
(7)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、前記分散媒が、鎖状エーテル、環状エーテル、鎖状シロキサン、ニトリル類、ハロアルカン類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、及びベンゼン誘導体からなる群のいずれかであってもよい。
【0019】
(8)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、ナノクラスターの構成単位が、イオン化傾向がAgよりも高い金属元素若しくは典型元素、またはこれらの複合体であってもよい。
【0020】
(9)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、ナノクラスターが、M@Siで表記される金属イオン内包クラスターであってもよい。
【0021】
(10)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、ナノクラスターが、TaとSiとの複合クラスター,TiとSiとの複合クラスター,LuとSiとの複合クラスター,MoとSiとの複合クラスター,WとSiとの複合クラスター及びRuとSiとの複合クラスターからなる群のいずれかであってもよい。
【0022】
(11)上記態様にかかるナノクラスター分散液において、前記所定の原子数のナノクラスターが、ナノクラスター分散液に含まれるナノクラスターの内の5%以上であってもよい。
【0023】
(12)本発明の一態様に係るナノクラスター分散体は、所定の原子数のナノクラスターを含む。
【0024】
(13)本発明の一態様に係るナノクラスター膜は、所定の原子数のナノクラスターを含む。
【0025】
(14)第2の態様に係るナノクラスター分散液の製造方法は、ナノクラスターを生成するナノクラスター生成工程と、生成した前記ナノクラスターが入射する分散媒を流動させながら、前記ナノクラスターを分散媒中で捕集するナノクラスター捕集工程と、を有する。
【0026】
(15)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造方法において、前記ナノクラスター捕集工程において、前記分散媒表面におけるナノクラスター密度が凝集限界以上とならないように前記分散媒を流動させてもよい。
【0027】
(16)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造方法において、前記分散媒が、沸点160℃以上、かつ室温での蒸気圧が100Pa以下の難揮発性溶媒であってもよい。
【0028】
(17)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造方法において、前記ナノクラスター捕集工程の後に、前記分散媒よりも沸点の低い揮発性分散媒に、前記分散媒を置換する置換工程をさらに備えてもよい。
【0029】
(18)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造方法において、前記ナノクラスター生成工程と、前記ナノクラスター捕集工程の間に、前記ナノクラスター生成工程で所定のナノクラスターが生成されているかを検出する前記ナノクラスター検出工程をさらに有してもよい。
【0030】
(19)第3の態様にかかるナノクラスター分散液の製造装置は、ナノクラスター生成手段と、前記ナノクラスター生成手段で生成されるナノクラスターの進行方向に配設されるナノクラスター捕集手段とを備える。
【0031】
(20)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造装置において、前記ナノクラスター生成手段が、真空容器と、カソードとしてのターゲットを有し、マグネトロンスパッタリングを行い、プラズマを発生させるスパッタ源と、前記スパッタ源に対し電力を供給するパルス電源と、前記スパッタ源に対し第1の不活性ガスを供給する第1不活性ガス供給手段と、前記真空容器内に収容されるナノクラスター成長セルと、を有してもよい。
【0032】
(21)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造装置において、前記ナノクラスター捕集手段が、分散媒を貯留可能な貯留容器と、前記ナノクラスターの入射面における前記分散媒を流動できる流動手段を有してもよい。
【0033】
(22)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造装置において、前記流動手段が、前記貯留容器内に設けられた撹拌子であってもよい。
【0034】
(23)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造装置において、前記流動手段が、前記ナノクラスターの進行方向に対して垂直な方向に回転軸を有する回転体であって、前記回転体は、前記貯留容器に貯留される分散媒に一部が浸漬するように配設されていてもよい。
【0035】
(24)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造装置において、前記ナノクラスター捕集手段は、前記ナノクラスターの進行方向に対して交差する基板と、前記基板を冷却する冷却機構と、前記基板に対して分散媒を噴霧する分散媒供給手段と、前記基板の下方に設けられた捕集容器と、を有してもよい。
【0036】
(25)上記態様にかかるナノクラスター分散液の製造装置において、前記ナノクラスター生成手段と、前記ナノクラスター捕集手段との間に、前記ナノクラスターを検出する検出手段をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液は、クラスターサイズ(原子数)の制御されたナノクラスターが分散されている。そのため、塗布等の既存の手法でナノクラスター膜を作製することができる。
本発明の一態様に係るナノクラスター膜は、クラスターサイズが制御されており、ナノクラスター特有の機能を発現できる。そのため例えば、触媒、電子デバイス、磁気デバイス、バイオセンサー、プローブ、診断薬(インジケーター)等の種々の用途に好適に利用できる。
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液の製造方法によれば、ナノクラスターを分散液中で凝集させずに、効率的に捕集できる。
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液の製造装置は、ナノクラスターを効率的に捕集できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置の断面模式図である。
【図2】第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置における貯留容器の断面模式図である。
【図3】第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置における貯留容器の別の態様の断面模式図である。
【図4】第2実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置の断面模式図である。
【図5】第2実施形態に係るナノクラスター捕集手段を拡大した断面模式図である。
【図6】第3実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置の断面模式図である。
【図7】ナノクラスター生成手段で、構成元素がTa及びSiからなるナノクラスターを生成し、得られた気相中のナノクラスターの質量スペクトルである。
【図8】構成元素がTa及びSiからなるナノクラスターが分散したナノクラスター分散液の高速液体クロマトグラフである。
【図9】本発明の一態様に係るナノクラスター分散液の製造方法を用いて作製したナノクラスター分散液をカラム精製した試料の質量スペクトルであり、(a)は質量スペクトルの全体像であり、(b)はピーク部分を拡大した拡大図である。
【図10】単成分のポリスチレンの高速液体クロマトグラフである。
【図11】構成元素がTi及びSiからなるナノクラスターが分散したナノクラスター分散液の高速液体クロマトグラフである。
【図12】構成元素がRu及びSiからなるナノクラスターが分散したナノクラスター分散液の高速液体クロマトグラフである。
【図13】ナノクラスター分散液の分散媒を除去して得たナノクラスター分散体の写真である。
【図14】ナノクラスター分散液の分散媒を除去して得たナノクラスター分散膜の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明について、必要に応じて図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。

【0040】
(ナノクラスター分散液)
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液は、ナノクラスターと、分散媒を有する。ナノクラスターは、所定の原子数(クラスターサイズ)のナノクラスターを主として有する。ここで、「主として」とは、ナノクラスターの原子数を横軸とし、個数(信号強度)を縦軸とした際に、ピークがみられることを言う。ピークが生じる原子数が、所定の原子数である。生じるピークの数は一つに限られない。

【0041】
ナノクラスターは分散媒中で凝集せずに、分散されており、均一分散されていることが好ましい。

【0042】
ここで、「分散」とは、マクロな視点から見るとナノクラスター同士が凝集し、目視で沈殿が生じないことをいう。また、「均一分散」とは、マクロな視点から見るとナノクラスター同士が凝集し、目視で沈殿が生じないことをいい、かつ、ミクロな視点から見るとナノクラスター同士が会合しないことを意味する。

【0043】
ここで「会合しない」とは、分散媒中に分散直後のナノクラスターの内、60%以上のナノクラスターが1日経過後に互いに会合していないこと意味する。また分散媒中に分散直後のナノクラスターの内、80%以上のナノクラスターが1日経過後に互いに会合していないことが好ましく、90%以上のナノクラスターが1日経過後に互いに会合していないことがさらに好ましい。また1週間経過後にもナノクラスター同士が会合していないことが好ましい。

【0044】
分散媒中に分散した直後のナノクラスターの内、会合したナノクラスターの割合は以下の手順で測定することができる。
まず、分散媒中にナノクラスターを分散させる。そして、分散直後(1時間以内)にその一部を取り出し、クロマトグラフィー等で粒子サイズ分布を計測する。そして、同様の作業を1日経過後にも行う。得られた分散直後の粒子サイズ分布と、1日経過後の粒子サイズの分布を比較する。この際、1日経過後の粒子サイズ分布において、分散直後の粒子サイズの分布の主ピークの整数倍の部分にピークが生じている場合、会合したといえる。会合はナノクラスター同士が結合することを意味するため、会合後のナノクラスターの見かけ上のサイズは、会合前のナノクラスターの整数倍となる。

【0045】
会合が生じていることが確認された場合は、会合したナノクラスターの割合を算出する。まず分散直後の分散液中に最も多く存在する所定のクラスターサイズのナノクラスターを同定する。そして同定した所定のクラスターサイズのナノクラスターが、分散直後の粒子サイズ分布の分散曲線中において占める面積(第1面積)を算出する。次いで、同定した所定のクラスターサイズのナノクラスターが、1日経過後の粒子サイズ分布の分散曲線中において占める面積(第2面積)を算出する。所定のナノクラスター同士が会合した場合、第1面積に対して第2面積は小さくなる。この面積変化は、会合により所定のクラスターサイズのナノクラスターの個数が減少したことにより生じる。すなわち、第1面積に対する第2面積の比率を求めることで、会合したナノクラスターの割合は算出される。

【0046】
なお、詳細を後述するが、本発明の一態様におけるナノクラスター分散液中では、原則的に原子がナノクラスターに結合するM+M→Mn+1・・・(1)という反応は生じにくく、M+M→M2n・・・(2)という反応が生じやすい。上記の化学式おける下付きの添え字は、構成原子数を意味し、式(1)はn個の構成原子からなるクラスターに1つの原子が結合することを意味し、式(2)はn個の構成原子からなるクラスターとn個の構成原子からなるクラスターとが結合し、2n個の構成原子からなるクラスターとなることを意味している。

【0047】
式(1)の反応が支配的になっている場合は、分散直後の粒子サイズ分布に対して1日経過後の粒子サイズ分布の主ピークの位置が大幅にずれる。この場合は、会合が生じているわけではないが、均一分散しているとは言えない。なお、「大幅にずれる」とは、分散直後の粒子サイズ分布の主ピークが示す粒子サイズに対して、1日経過後の粒子サイズ分布の主ピークが示す粒子サイズが20%以上大きくなっていることを意味する。

【0048】
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液中に分散するナノクラスターの内、5%以上が所定のクラスターサイズであることが好ましい。すなわち、全てのナノクラスターの内、所定の原子数のナノクラスターの占める割合が5%以上であることが好ましい。

【0049】
ナノクラスター分散液中に分散するナノクラスターの内、所定のナノクラスターの比率は、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、X線小角散乱、動的光散乱、電子顕微鏡、質量分析法等を用いて算出することができる。

【0050】
高速液体クロマトグラフィーの場合を例にして説明すると、ナノクラスター分散液の高速液体クロマトグラフ(HPLC)に現れるピークから選択した代表ピークを示すクラスターサイズのナノクラスターが、ナノクラスター全体の内5%以上を占めることが好ましい。代表ピークを示すクラスターサイズのナノクラスターの割合は高いほどさらに好ましい。例えば、所定の原子数のナノクラスターは、ナノクラスター全体の内10%以上を占めることが好ましく、15%以上を占めることがより好ましい。

【0051】
ナノクラスターの分野では、1つの原子が増えると、ナノクラスターが有する性質や機能が変化する。そのため、原子数を単位としたナノクラスターサイズの制御は極めて重要である。一方で、ナノクラスターの生成過程においては、多くの場合、様々なクラスターサイズのナノクラスターが生成する。ナノクラスターが成長することによるエネルギー利得は常に正であり、ナノクラスターが成長するためである。つまり、クラスターサイズの制御は極めて難しい。ここで、ナノクラスターが成長するとは、原子がナノクラスターに結合し、 M+M→Mn+1・・・(1)という反応を生じることを意味する。クラスターサイズを高い精度で制御したナノクラスター分散液は、今までに得ることができなかったものである。

【0052】
また所定のクラスターサイズのナノクラスターが全体の内5%以上ということは、生成されるナノクラスターの個数を考慮すると、所定のクラスターサイズのナノクラスターの個数が極めて多いことを意味する。例えば、濃度1重量%のナノクラスター分散液が100gあるとすると、分散液に含まれるナノクラスターの重量は1gであり、そのうちの5% (50mg)が所定のクラスターサイズのナノクラスターである。1molの物質中に含まれる原子は6.02×1023個(アボガドロ数)であるから、所定のクラスターサイズのナノクラスターの数は、6.02×1018~6.02×1019個程度である。すなわち、本発明の一態様に係るナノクラスター分散液からは、所定のサイズのナノクラスターを極めて多く得ることができる。

【0053】
これに対し、従来のナノクラスター分散液においては、分散液中で中性原子同士もしくは原子イオンと中性原子を凝集させてナノクラスターを作製する。従来のナノクラスター分散液とは、マグネトロンスパッタリング法で生成した中性原子もしくは原子イオンを、液相中に打ち込む方法で作製された分散液を示す。中性原子同士もしくは原子イオンと中性原子は、液中では原則的に凝集しようするため、原子1個単位の制御は極めて難しい。この方法でも、種々の条件を検討することによりある程度のナノクラスターサイズの制御は可能であるが、本発明の一態様に係るナノクラスター分散液ほどの制御はできない。

【0054】
ナノクラスターの代表ピークは、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を用いて測定することができる。以下、高速液体クロマトグラフィーの例を基に、代表ピークの設定手順を説明する。
まずHPLCの測定結果に基づいて、最も強度の強いピークを第1代表ピークとする。第1代表ピークの強度に対して0.9倍した強度を閾値とし、この閾値を超えた場合は代表ピークとする。すなわち、代表ピークは複数存在する場合がある。
後述するが、本発明の一態様に係るナノクラスター分散液の製造装置を用いると、代表ピークが1つに単離されたナノクラスター分散液も、意図的に代表ピークが複数あるナノクラスター分散液も作製できる。

【0055】
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液を構成するナノクラスターは、種々のものを用いることができる。例えば、単一の金属元素からなる金属ナノクラスター、構成元素が複数の金属元素からなる合金ナノクラスター、構成元素にシリコンを含む半導体ナノクラスター等のナノクラスターが挙げられる。構成元素にシリコンを含む半導体ナノクラスターの一例としてM@Si(Mは金属イオン)で表記される金属イオン内包クラスターがある。
ナノクラスターの構成単位は、イオン化傾向がAgよりも高い遷移金属元素若しくは典型元素、またはこれらの複合体であることが好ましい。イオン化傾向がAgよりも高い遷移金属元素としてはCr、Fe、Cu、Ti、典型元素としてはB、Al、Si、それらの複合体としては、例えばTaSi、TiSi、RuSi、AlB等を挙げることができる。

【0056】
従来のマグネトロンスパッタリング法で生成した中性原子もしくは原子イオンを、液相中に打ち込む方法では、中性原子もしくは原子イオンが液相中で凝集することが前提となる。しかしながら、イオン化傾向がAgよりも高い遷移金属元素若しくは典型元素、またはこれらの複合体は、液相中で凝集しにくい。そのため、ナノクラスターの構成単位が、イオン化傾向がAgよりも高い遷移金属元素若しくは典型元素、またはこれらの複合体であるナノクラスター分散液は、従来の方法では得ることができなかったものである。

【0057】
ナノクラスター分散液を構成する分散媒は、難揮発性溶媒でも揮発性溶媒でもよい。難揮発性溶媒とは、沸点160℃以上、かつ室温での蒸気圧が100Pa以下の溶媒を意味する。これに対し、揮発性溶媒とは難揮発性溶媒より沸点が低いものを意味する。ナノクラスターが難揮発性溶媒中に均一分散した分散液は、ラジエータ等の溶媒が揮発しては困る用途において特に好適に用いることができる。また後述する製造工程を考慮すると、難揮発性溶媒であることが好ましい。これに対し、揮発性溶媒は、溶媒を除去しナノクラスター膜等を形成する用途において特に好適に用いることができる。

【0058】
ナノクラスター分散液を構成する難揮発性分散媒は、エーテル結合またはシロキサン結合を有することが好ましい。分子内に酸素原子を有する溶媒は、ナノクラスターが凝集しにくいことが実験的に確認されている。分子鎖中の酸素が有する非共有電子対(孤立電子対ともいう)がナノクラスターと配位結合し、ナノクラスター表面に吸着し、ナノクラスター同士の凝集を阻害しているのではないと考えられる。例えばTaSi、TiSi及びRuSi等の液中で分極するナノクラスターの場合において、その効果は顕著である。

【0059】
エーテル結合及びシロキサン結合の末端は不活性な置換基によって終端されていることがさらに好ましい。末端を不活性な置換基で終端するとは、例えば、メチル基等のアルキル基で終端することを意味する。エーテル結合及びシロキサン結合の末端が不活性な置換基によって終端されていると、分散媒に用いられる分子種が、ナノクラスターと反応することを抑制できる。すなわち、ナノクラスターが変性及び凝集することをより抑制できる。

【0060】
一方で、使用態様を考慮すると、より沸点の低い揮発性分散媒を用いることが好ましい。揮発性溶媒を用いると、ナノクラスター膜を生成した際に、溶媒が残存することを避けることができる。

【0061】
ナノクラスター分散液を構成する沸点の低い揮発性分散媒としては、鎖状エーテル、環状エーテル、鎖状シロキサン、環状シロキサン、ニトリル類、ハロアルカン類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類及びベンゼン誘導体からなる群のいずれかであることが好ましい。これらの分散媒は、ナノクラスターを分散させた後の分散液を長時間放置しても、ナノクラスターが再凝集しないことが、実験的に確認されている。すなわち、安定的にナノクラスター分散液の状態で保持することができる。

【0062】
分散媒の具体例としては、例えば鎖状エーテルとしてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、鎖状シロキサンとしてポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、環状エーテルとしてはテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、ニトリル類としてはアセトニトリルやベンゾニトリル、ハロアルカン類としてはクロロホルム、ジクロロメタン、アルコール類としてはメタノール、エタノール、ベンゼン誘導体としてはトルエン、ジクロロベンゼンが挙げられる。

【0063】
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液によれば、所定のクラスターサイズのナノクラスターを凝集させることなく簡便に輸送することができ、使用時の取り扱いも容易になる。またクラスターサイズを制御することで、ナノクラスター分散液を用いて作製するナノクラスター膜等の性能を均一にすることができる。

【0064】
本発明の一態様に係るナノクラスター分散液は、高速液体クロマトグラフィーや再結晶等の方法を用いて、所定のクラスターサイズのナノクラスターを高い収率で分離できる。またナノクラスターが液相中に分散しているため、塗布等の方法により簡便にナノクラスターにより構成されるナノクラスター膜を生成することができる。すなわち、ナノクラスターの触媒、電子デバイス、磁気デバイス、バイオセンサー、プローブ、診断薬(インジケーター)等の種々の用途への応用可能性を高めることができる。

【0065】
(ナノクラスター分散体)
本発明の一態様に係るナノクラスター分散体は、主として所定の原子数(ナノクラスターサイズ)のナノクラスターを含む。ナノクラスター分散体は、上述のナノクラスター分散液を乾燥させて得られる。またカラムクロマトグラフィや再結晶法等により分散液から分散媒を除去してもよい。図13は、ナノクラスター分散液を乾燥させて得たナノクラスター分散体の写真である。図13は一例として、TaSi16で表記されるナノクラスター分散体の写真である。

【0066】
ここで、所定の原子数のナノクラスターは、ナノクラスター分散体に含まれるナノクラスター全体の内5%以上を占めることが好ましく、さらには10%以上であることが好ましく、全体の15%以上であることがより好ましい。

【0067】
ナノクラスター分散体は、分散媒に投入することで、ナノクラスター分散液となる。すなわち、ナノクラスター分散体を構成するナノクラスター同士は、互いに凝集していない。

【0068】
ナノクラスター分散体を構成する各ナノクラスターの表面には、有機物が被覆されている。有機物は、分散媒を構成する分子や分散液の製造工程において意図的に加えられた保護剤であってもよい。ナノクラスター表面が有機物で被覆されていることで、乾燥状態でもナノクラスター同士が凝集することを防げる。

【0069】
(ナノクラスター分散膜)
本発明の一態様に係るナノクラスター分散膜は、ナノクラスター分散液を基体上に塗付してなる。ナノクラスター分散膜は、主として所定の原子数(ナノクラスターサイズ)のナノクラスターを含む。用途に応じて、分散液中における分散媒は除去してもよい。図14は、ナノクラスター分散液をスピンコートして得たナノクラスター分散膜の写真である。図14に示すナノクラスター分散膜は、Si基板Sub上に厚み60nmのナノクラスター分散膜CLが形成されている。

【0070】
上述のように、ナノクラスター分散液中に分散しているナノクラスターは、生成されるナノクラスター全体の内5%以上が所定のナノクラスターサイズである。そのため、ナノクラスター分散膜を構成する所定のナノクラスターサイズのナノクラスターも、全体の5%以上である。また高速液体クロマトグラフィーや再結晶等の方法により、所定のクラスターサイズのナノクラスターの含有量を高めた分散液を用いることで、分散膜を構成する所定のナノクラスターサイズのナノクラスターの割合を高めることが可能である。ナノクラスター分散膜を構成する所定のナノクラスターサイズのナノクラスターは、全体の10%以上であることが好ましく、全体の15%以上であることがより好ましい。

【0071】
(ナノクラスター分散液の製造装置)
ナノクラスター分散液の製造装置は、ナノクラスター生成手段と、ナノクラスター生成手段で生成されるナノクラスターの進行方向に配設されるナノクラスター捕集手段とを備える。

【0072】
ナノクラスター生成手段は、ナノクラスターを気相で生成する。生成する方法は特に問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、直流放電法、レーザー蒸発法、イオンスパッタリング法、クヌーセンセル等を用いた真空蒸発法などを用いることができる。

【0073】
ナノクラスター生成手段には、特許文献3に記載のナノクラスター生成装置等を用いることが好ましい。具体的には、ナノクラスター生成手段は、真空容器と、スパッタ源と、電源と、第1不活性ガス供給手段と、ナノクラスター成長セルと、を有することが好ましい。スパッタ源は、マグネトロンスパッタリングを行い、プラズマを発生させる。スパッタ源のカソードにはターゲットが設けられる。電源は、スパッタ源に対し電力を供給する。第1不活性ガス供給手段は、スパッタ源に対し第1の不活性ガスを供給する。ナノクラスター成長セルは、真空容器内に収容される。また必要に応じて、ナノクラスター成長セル内に第2の不活性ガスを導入する第2不活性ガス導入手段を有してもよい。マグネトロンスパッタは、生成されるナノクラスターの均一性を高めるためにパルス放電を行うことが好ましい。

【0074】
ナノクラスター製造装置において、ナノクラスター生成手段で生成されたナノクラスターは、ナノクラスター捕集手段でそのまま捕集される。ナノクラスター生成手段において生成したナノクラスターのクラスターサイズを揃えておくことで、得られるナノクラスター分散液中におけるクラスターサイズが制御される。

【0075】
以下、ナノクラスター生成手段の一態様である特許文献3に記載のナノクラスター生成装置を用いた場合を例に、具体的に図を用いて説明する。

【0076】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置の断面模式図である。第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置100は、ナノクラスター生成手段10と、ナノクラスター捕集手段20とを備える。

【0077】
ナノクラスター生成手段10は、真空容器11と、ナノクラスター成長セル12と、スパッタ源13と、液体窒素ジャケット14と、制御装置15と、パルス電源16と、第1不活性ガス導入手段17と、第2不活性ガス導入手段18とを備える。

【0078】
真空容器11は、公知の真空チャンバーを用いることができる。真空容器11には、排気手段19が接続される。排気手段19は、真空容器11内の真空度を高める。排気手段19には、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。排気手段19により真空容器11内の真空度を、例えば10-1~10-4Paまで排気できる。

【0079】
ナノクラスター成長セル12は、真空容器11内に設置される。ナノクラスター成長セル12の外周は、液体窒素ジャケット14で囲まれている。ナノクラスター成長セル12の外周と、液体窒素ジャケット14の内周に囲まれた領域内には、液体窒素(N)が流通するように構成されている。この領域内に液体窒素を流通させることで、ナノクラスター成長セル12内の温度が高まるのを抑制すると共に、後述する第2不活性ガス導入手段18から供給されるヘリウムを冷却できる。

【0080】
スパッタ源13は、ターゲット131と、アノード132と、磁石ユニット133から構成される。スパッタ源13は、真空容器11内に配設されたナノクラスター成長セル12内部に配設される。スパッタ源13は、ナノクラスター成長セル12内の管軸方向に移動自在である。これにより、ナノクラスター成長領域の管軸方向の延伸距離を自由に規定できる。換言すると、ターゲット131面からナノクラスター成長セル12のナノクラスター取り出し口121までの距離である成長領域長を自由に規定できる。

【0081】
ターゲット131は、カソードとして機能し、パルス電源16に接続されている。パルス電源16は制御装置15によって制御される。パルス電源16からスパッタ源13にパルス状の電力が供給されることで、ターゲット131とアノード132の間に電圧が印加される。磁石ユニット133は、ターゲット131の表面付近に磁場を印加する。

【0082】
ターゲット131に用いる材料は、作製したいナノクラスターに応じて種々変更することができる。例えばプラチナのナノクラスターを作製したい場合は、ターゲット131はプラチナとし、TaSiのナノクラスターを作製したい場合は、ターゲット131をTaSiとする。

【0083】
制御装置15は、パルス電源16を制御する。パルス電源16は、制御装置15からオン信号とオフ信号に合せて、オン時間tonに電圧印加を行い、オフ時間toffに電圧印加を止め、スパッタ源13にパルス状の電圧を印加する。例えば、パルス電源16には、デューティー比(ton/ton+toff)及び直流電圧DCVによりパワー制御可能な変調パルス電源等を用いることができる。

【0084】
パルス電源16のパルス信号のデューティー比(ton/ton+toff)等を変化させると、代表ピークが1つのナノクラスター分散液と、代表ピークが2つ以上のナノクラスター分散液とを作り分けることができる。

【0085】
第1不活性ガス導入手段17は、端部がターゲット131とアノード132の間に配設されたガス流路である。ガス流路は、公知のパイプ等により構成することができる。図1では、第1不活性ガス導入手段17の導入口は、ターゲット131とアノード132の間に1箇所のみとしている。第1不活性ガス導入手段17は当該構成に限られず、第1不活性ガス導入手段17を途中で分岐させて複数箇所の導入口を設けてもよい。ターゲット131の表面に第1不活性ガスを導入できる構成であればよい。

【0086】
第1不活性ガスは、一般のスパッタに用いることができるガスであればよく、アルゴンガスを一般的に用いることができる。

【0087】
第1不活性ガス供給手段17から第1不活性ガスがターゲット131表面に供給されると、ターゲット131の表面付近に強いグロー放電が生成される。グロー放電により第1不活性ガスがイオン化し、ターゲット131に衝突することで、ターゲットからスパッタ粒子が放出される。スパッタ粒子は、ターゲット131由来の中性原子、イオン等からなる。

【0088】
第2不活性ガス導入手段18は、液体窒素ジャケット14内部を螺旋状に周回し、端部がナノクラスター成長セル12内に突出したガス流路である。ガス流路は、公知のパイプ等により構成することができる。第2不活性ガスとしては、発生したスパッタ粒子と反応しないガス種であれば特に問わない。例えば、ヘリウムガス等を好適に用いることができる。

【0089】
第2不活性ガス導入手段18は、ナノクラスター成長セル12内に液体窒素により冷却された第2不活性ガスを供給する。第2不活性ガス導入手段18は、圧力計、マスフローコントローラ等により制御されていることが好ましい。圧力計等によりクラスター成長セル12内の圧力を約10~40Paに維持できる。

【0090】
第2不活性ガス導入手段18から導入された第2不活性ガスは、一定の流れ方向を有し、その流れ方向に沿ってターゲット131で発生したスパッタ粒子は移動する。この際、第2不活性ガス雰囲気中において、スパッタ粒子は互いに結合し、種々のナノクラスターが生成される。

【0091】
ナノクラスターサイズは、特許文献3にも記載のように、スパッタ源13における放電電力、パルス電源16におけるデューティー比、ナノクラスター成長セル12内の成長領域長、第1不活性ガス導入手段17から供給される第1不活性ガスの流量、第2不活性ガス導入手段18から供給される第2不活性ガスの流量等を制御することにより自由に選択することができる。

【0092】
図1に示すナノクラスター捕集手段20は、分散媒23を貯留可能な貯留容器21と、ナノクラスターの分散媒23を流動させる撹拌子22とを備える。撹拌子22は、特許請求の範囲における流動手段の一態様である。

【0093】
ナノクラスター捕集手段20は、ナノクラスター生成手段10で発生したナノクラスターの進行方向に配設される。図1では、ナノクラスター生成手段10を構成する真空容器11内にナノクラスター捕集手段20を配設したが、真空容器11のナノクラスターの進行方向側に接続された別チャンバー内に配設してもよい。
ナノクラスター捕集手段20は、分散媒23中で、ナノクラスターを凝集させることなく捕集する。そのため、ナノクラスター生成手段10でナノクラスターサイズを制御することにより、所望のナノクラスターを単離できる。

【0094】
貯留容器21は、分散媒23を貯留するための容器である。貯留容器21は、真空容器11内でガスの発生源とならない物質で形成されていることが好ましい。例えば、貯留容器21には、ステンレス、ガラス等の材質を用いることができる。

【0095】
貯留容器21の分散媒23を貯留できる容量は、適宜設定できる。容量が少なすぎると、分散媒23中でナノクラスターが凝集するおそれが高まる。つまり、所望のナノクラスターサイズを有するナノクラスターの収率が低下する。これに対し、容量が大きすぎると、ナノクラスターが高い濃度で分散した分散液を得るために、スパッタリングを数日から数週間程度し続ける必要がある。例えば、パルス電源16の時間平均放電電力が300W、第1不活性ガスの流量70sccm、第2不活性ガスの流量0sccmの場合において、分散媒23の量は40ml以上であることが好ましい。

【0096】
図2は、本発明の第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置における貯留容器の断面模式図である。
貯留容器21をナノクラスターの進行方向から平面視した形状は、円形でも四角形でもよい。貯留容器21をナノクラスターの進行方向から平面視した際に、貯留容器21に内接する円の直径rは60mm以上であることが好ましい。ターゲット131で発生したスパッタ粒子は、ナノクラスター成長セル12内でナノクラスターを生成する。生成されたナノクラスターは、ナノクラスター取り出し口121から真空度の高い真空容器11へ放出され、貯留容器21へ向かって移動する。ナノクラスター取り出し口121の直径が12mm、ナノクラスター取り出し口12と貯留容器21の距離が90mmの場合、分散媒23表面上でのナノクラスターの空間的な広がりは、スパッタ粒子が発生した点を中心に直径40mmの円の範囲内に収まる。そのため、貯留容器21に内接する円の直径rが60mm以上であれば、発生したナノクラスターを漏れなく捕集できる。

【0097】
第1および第2不活性ガスの流量が大きい場合やナノクラスター成長セル12内の成長領域長が長い場合等では、ナノクラスターが入射する位置は、直径40mmの円の範囲内に収まらない場合も考えられる。この場合、貯留容器21の管軸方向の位置を、ナノクラスターを漏れなく捕集できるようにナノクラスター取り出し口121に近づけるか、貯留容器21に内接する円の直径を大きくすることが好ましい。

【0098】
貯留容器21の深さdは、2cm以上であることが好ましい。発生したナノクラスターは、貯留容器21内に貯留された分散媒23内で捕集される。発生したナノクラスターの分散媒23への入射速度および撹拌子22の回転速度にもよるが、分散媒23の液面から貯留容器21の底まで深さは2cm以上あることが好ましい。入射したナノクラスターが貯留容器21の底まで到達することなく、ナノクラスターを分散媒23中で好適に分散させるためである。ナノクラスターの分散媒23への入射速度を遅くすることもできるが、ナノクラスターの時間あたりの収量が低下する。

【0099】
貯留容器21の分散媒23を貯留する内壁21Aは、図2に示すように、湾曲面により形成されていることが好ましい。内壁21Aの形状を湾曲面とすることで、ナノクラスターの進行方向から見た際の平面視の面積を確保しつつ、分散媒23の容量が多くなりすぎることを抑制することができる。

【0100】
貯留容器21は、分散媒23が貯留容器21外部にこぼれることを防止する液こぼれ防止構造を備えることが好ましい。分散媒23が貯留容器21の外部にこぼれると、貯留容器21内の分散媒23量が少なくなり、凝集するおそれが高まるためである。
液こぼれ防止構造としては、例えば、図3に示すように、開口部を有する蓋24を貯留容器21に設けてもよい。蓋24の内壁に付着した分散媒を貯留容器21内に戻すためには、蓋24の内壁が貯留容器21の内壁より内側に配設されることが好ましい。
ナノクラスターは、開口部を通って分散媒23に入射するため、開口部の直径は40mm以上であることが好ましい。
液こぼれ防止構造は、この態様に限られず、例えば貯留容器21の最上部から拡径する傾斜面を設けてもよい。この構造では、貯留容器21から溢れた分散媒23は、傾斜面に沿って貯留容器21内に再度供給される。

【0101】
貯留容器21は、貯留容器21の中心位置とナノクラスター取り出し口121とが平面視で重ならないように配設することが好ましく、貯留容器21の中心位置とナノクラスター取り出し口121とが平面視で20mm以上離れていることが好ましい。

【0102】
ナノクラスター生成装置10で生成されたナノクラスターは、ナノクラスター取り出し口121からビーム状に射出される。これに対し、貯留容器21内に貯留された分散媒23は、撹拌子22によって回転している。撹拌子22による回転に伴い、分散媒23の液量は、貯留容器21の中央部で少なく周縁部で多くなる。また分散媒23の流速は、中央より周辺部が速くなる。貯留容器21の中心位置とナノクラスター取り出し口121とが平面視で重ならないように貯留容器21を配設すると、ナノクラスターが入射する部分の液量を十分確保できる。またその部分(周縁部)は、流速が速いため、ナノクラスターの分散媒23中への分散性がより高まる。

【0103】
撹拌子22は、貯留容器21内に貯留された分散媒23を回転させる。撹拌子22が分散媒23を回転させる方向は、ナノクラスターの進行方向に対して垂直な面内方向である。すなわち、ナノクラスターの分散媒23は、ナノクラスターの進行方向に対して常に流動している。分散媒23が流動していると、ナノクラスターの入射面においてナノクラスターの濃度が極端に高くなることが抑制される。その結果、分散媒23の入射面及び分散媒23の内部でナノクラスターが凝集することが避けられる。

【0104】
撹拌子22の回転数は、分散媒23中においてナノクラスターが凝集しない回転数とする。ナノクラスターが凝集しない回転数は、貯留容器21の容積、分散媒23の溶液種、入射するナノクラスターの速度等により異なるが、事前検討により適切な回転数は確認できる。ナノクラスターが凝集しないとは、ナノクラスター生成手段10で作製した気相の状態のナノクラスターの代表ピークのクラスターサイズに対して、分散媒23中で捕集されたナノクラスターの代表ピークのクラスターサイズが10%以上大きくならないことを意味する。ナノクラスター同士が凝集したか否かは、分散媒23中で沈殿が生じたかどうかで確認することもできる。

【0105】
例えば、貯留容器21が直径90mmの円柱状で、撹拌子22のサイズが直径8mmの長さ40mmで、分散媒23がポリエチレングリコールの場合、撹拌子22の回転数は400rpm以上1000rpm以下であることが好ましい。この場合、撹拌子22の回転数が400rpm未満であると、ナノクラスターの凝集が進み、分散媒23中に沈殿が確認される。これに対し、1000rpm超であると、回転が速く、液がこぼれる恐れが高まる。

【0106】
貯留容器21内に貯留される分散媒23は、上述のナノクラスター分散液を構成する分散媒を用いることができる。中でも、沸点160℃以上、室温での蒸気圧が100Pa以下の難揮発性溶媒であることが好ましい。分散媒23は、真空容器11内に設けられた貯留容器21内に貯留される。分散媒23の沸点が低いと、時間の経過とともに分散媒23の量が少なくなってしまい、ナノクラスターが分散媒23中で凝集する恐れが高まる。

【0107】
ナノクラスター生成手段10と、ナノクラスター捕集手段20との間には、ナノクラスターを検出する検出手段30を有していてもよい。検出手段30は、ナノクラスターの進行方向に対して、鉛直方向に出し入れ自在なプローブ板である。

【0108】
検出手段30を、ナノクラスター生成手段10のナノクラスター取り出し口121と、ナノクラスター捕集手段20の貯留容器11の間にプローブ板を挿入すると、ナノクラスター取り出し口121から射出されたナノクラスターはプローブ板に衝突する。例えば、ナノクラスターを構成する元素として、Ta及びSiを用いた場合、ナノクラスターが好適に生成されている場合は、プローブ板は着色する、一方で、ナノクラスターが好適に生成されていない場合は、透明な膜がプローブ板表面に形成される。

【0109】
検出手段30は、ナノクラスターが所望の通り発生しているかを確認する。検出手段30を用いてナノクラスター生成手段10で所望のナノクラスターが生成されていることを確認することで、得られたナノクラスター分散液中の所望のクラスターサイズのナノクラスターの濃度を高めることができる。

【0110】
第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置100によれば、ナノクラスター生成手段10によりナノクラスターサイズを制御し、ナノクラスター捕集手段20によりナノクラスターを凝集させることなく、分散させることができる。すなわち、所望のクラスターサイズのナノクラスターを単離することができる。

【0111】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置の断面模式図である。第2実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置200は、第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置100と、ナノクラスター捕集手段40が異なる。以下、第1実施形態と構成が同一である部分については、説明を省く。

【0112】
ナノクラスター生成手段10の構成は第1実施形態と同一である。第1実施形態では縦型としていたのに対し、第2実施形態では横型としている点のみが異なる。第2実施形態でも縦型としてもよい。

【0113】
第2実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置200におけるナノクラスター捕集手段40は、貯留容器41と、回転体42と、を備える。図4では、貯留容器41内に分散媒43が貯留されている。ナノクラスター生成手段10を構成する真空容器11と、ナノクラスター捕集手段40を構成する真空容器44は、図4では別部材として図示しているが、一つの大きなチャンバーとしてもよい。真空容器44には、内部の真空度を高めるために排気装置47が接続されている。排気手段47としては、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。排気手段47により真空容器44内の真空度を、例えば10-2~10-6Paまで排気する。

【0114】
貯留容器41のサイズ、形状等は、第1実施形態の貯留容器11と同様のものを用いることができる。図4に示すように、貯留容器41の下方に流路を設け、コック45を開くことで容易に貯留容器41に貯留された分散媒43を排出できる構成としてもよい。貯留される分散媒も、第1実施形態と同様の物を用いることができる。

【0115】
回転体42は、ナノクラスターの進行方向に対して垂直な方向に回転軸を有する回転体である。回転体42は、特許請求の範囲における流動手段の一態様である。回転体42は、支持体46に支持されることにより、一部が貯留容器41内に貯留される分散媒に浸漬するように配置されている。図4では、支持体46は上部から回転体を支持しているが、この態様に限られない。支持体46は、下方、側方から回転体42を支持してもよい。メンテナンスの観点からは、支持体46は回転体42を下方から支持していることが好ましい。回転体42と支持体46は、取り付け自在となっていることが好ましい。使用する分散媒種、ナノクラスター種毎で、回転体42を取り換えることが好ましいためである。

【0116】
図5は、第2実施形態に係るナノクラスター捕集手段40の一部を拡大した断面模式図である。図5に示すように、回転体42は、が回転することにより貯留容器41内に貯留された分散液43を引き上げる。引き上げられた分散液43は、回転体42の回転に合わせて回転体42の表面を追従する。

【0117】
ナノクラスター生成手段10のナノクラスター取り出し口121から射出されたナノクラスターは、回転体42の側面に入射する。一つのナノクラスターが回転体42に入射した入射面におけるナノクラスター濃度の高い分散液は、回転方向に運ばれる。そのため、次のナノクラスターが入射する際には入射面のナノクラスター濃度を低くすることができる。すなわち、ナノクラスターの入射面においてナノクラスターの濃度が極端に高くなることが抑制される。ナノクラスターの濃度が一部で極端に高くなることが抑制されると、分散媒43の入射面及び分散媒43の内部でナノクラスターが凝集することが避けられる。

【0118】
回転体42の回転速度は、分散媒43中においてナノクラスターが凝集しない回転速度とする。回転体42の回転速度は、速い方が好ましい。
ナノクラスターが凝集しない回転数は、貯留容器41の容積、回転体42の表面に引き上げられる分散媒43の量、分散媒43の溶液種、入射するナノクラスターの速度等により異なる。適切な回転速度数は、事前検討により確認できる。回転速度が早ければ、回転体42の表面に引き上げられる分散媒43の量を多くすることができる。分散液を回転方向に効率的に運ぶことで、局所的にナノクラスター濃度が高い部分が発生することを抑制できる。

【0119】
回転体42の表面には、ダイヤモンドライクカーボンをコーティングすることが好ましい。ダイヤモンドライクカーボンをコーティングすると、分散媒43の濡れ性を高めることができ、回転体42の表面に引き上げられる分散媒43の量を増やすことができる。

【0120】
回転体42の内部は中空構造とすることが好ましい。回転体42の内部を中空構造とすることで、回転体42の重量を低減し、回転速度を速めることができる。

【0121】
回転体42の配置位置は、ナノクラスター取り出し口121から350mm以内であることが好ましい。ナノクラスター取り出し口121から離れすぎると、ナノクラスターが拡散し、好適に回転体42の表面に衝突しなくなる。

【0122】
回転体42の回転方向後方には、スキージ48が設けられていることが好ましい。スキージ48は、支持体46によって支持されていてもよいし、その他の部分に接続されて支持されていてもよい。スキージ48は、回転体42とほぼ密着し、回転体42との距離を0.1mm以下の精度で制御することが好ましい。
スキージ48は、回転体42表面に被覆された分散媒43の一部を除去する。この分散媒43は、ナノクラスターが分散した後の分散液である。スキージ48を設けることで、回転体42に引き上げられる分散媒43と、ナノクラスターが分散した後の分散液とを分離することができる。ガイド板等を設けて分離した分散液が、貯留容器41内に混在することを抑制してもよい。

【0123】
貯留容器41内には、貯留容器41内に貯留された分散媒43を撹拌する撹拌手段49を設けることが好ましい。撹拌手段49は、図5に示すように回転体42の下方に設けられた撹拌翼であってもよいし、撹拌子等であってもよい。撹拌手段49によって、貯留された分散媒43を撹拌することで、分散媒43に分散するナノクラスターの濃度を均一にすることができる。

【0124】
第2実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置200においても、検出手段を設けてもよい。

【0125】
第2実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置200によれば、ナノクラスター生成手段10によりナノクラスターサイズを制御することができる。また、ナノクラスター捕集手段40の回転体42によってナノクラスターの入射面における分散媒43を、ナノクラスターが分散媒43表面上で凝集しない程度の速度で流動させることができる。したがって、分散媒43に入射したナノクラスターが凝集することなく、均一に分散されたナノクラスター分散液を作製できる。すなわち、所望のクラスターサイズのナノクラスターを単離することができる。

【0126】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置の断面模式図である。第3実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置300は、第1実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置100と、ナノクラスター捕集手段50が異なる。以下、第1実施形態と構成が同一である部分については、説明を省く。

【0127】
第3実施形態におけるナノクラスター生成手段10は、第2実施形態と同様に横型である。

【0128】
ナノクラスター捕集手段50は、基板51と、冷却機構52と、分散媒供給手段53と、捕集容器54と、を備える。図6では、ナノクラスター生成手段10を構成する真空容器11と、ナノクラスター捕集手段50を構成する真空容器56は、別部材として図示しているが、一つの大きなチャンバーとしてもよい。真空容器56には、内部の真空度を高めるために排気装置57が接続されている。排気手段57としては、ターボ分子ポンプ等を用いることができる。排気手段57により真空容器56内の真空度を、例えば10-2~10-6Paまで排気することができる。

【0129】
基板51は、ナノクラスターの進行方向に対して交差するように配設されている。基板51の材質は熱伝導性のよいものが好ましく、無酸素銅等を用いることができる。
基板51には、分散媒が分散媒供給手段53から噴霧される。分散媒は、第1実施形態と同一のものに加えて、揮発性の高い溶媒も用いることができる。例えば、テトラヒドロフラン等を用いることができる。第3実施形態では、分散媒を貯留せずに、噴霧しているため、第1実施形態及び第2実施形態の分散媒よりも揮発性の高い溶媒を用いることができる。

【0130】
分散媒供給手段53は、一端が外部の分散媒が貯留されたタンクに接続され、もう一端が基板51の付近に設けられている。分散媒供給手段53から供給された分散媒は、基板51に噴霧された際に、冷却機構52によって冷やされ、固体となる。その際に、ナノクラスターと分散媒とは共蒸着され、ナノクラスターが溶媒マトリックス中に分散する。そして、この溶媒マトリックスを溶解することで分散液が得られる。冷却機構52は、公知のコールドトラップ等を用いることができる。

【0131】
基板51表面に共蒸着されたナノクラスターと分散媒53は、基板51を加熱することによってナノクラスター分散液となる。ナノクラスター分散液は、基板51の表面を伝い、液滴として捕集容器54に滴下する。捕集容器54の下方に流路を設け、コック55を開くことで容易に捕集容器54に捕集された分散液を排出できる構成としてもよい。

【0132】
第3実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置300によれば、分散媒供給手段53によってナノクラスターが入射する基板51表面に分散媒を噴霧することにより、ナノクラスター分散液を作製する。そのため、ナノクラスターが基板51に入射する度に、分散媒は噴霧により新しいものが供給される。そのため、分散液中におけるクラスター濃度が高まることを抑制できる。したがって、ナノクラスターが凝集することなく、均一に分散されたナノクラスター分散液を作製できる。
第3実施形態に係るナノクラスター分散液の製造装置300では、ナノクラスター生成手段10で生成されるナノクラスターサイズを制御することで、所望のクラスターサイズのナノクラスターの単離を行うことができる。

【0133】
(ナノクラスター分散液の製造方法)
本実施形態に係るナノクラスター分散液の製造方法は、ナノクラスターを生成するナノクラスター生成工程と、生成したナノクラスターが入射する分散媒の入射面を流動させながら、ナノクラスターを分散媒中で捕集するナノクラスター捕集工程と、を有する。

【0134】
ナノクラスター生成工程は特に問わない。ナノクラスター生成工程は、ナノクラスター分散液中に分散させたいナノクラスター種及びクラスターサイズに応じて適宜設定できる。

【0135】
一方で、ナノクラスター生成工程では、クラスターサイズを制御することが好ましい。ナノクラスター生成工程で生成されたナノクラスターが、ナノクラスター捕集工程で捕集されるためである。クラスターサイズの制御したナノクラスター生成工程とは、気相中で生成したナノクラスターの質量スペクトルのピークから選択した代表ピークを示すクラスターサイズのナノクラスターを生成する工程を意味する。所定(代表ピークを示す)クラスターサイズのナノクラスターは、生成されるナノクラスター全体の内5%以上を占めることが好ましい。

【0136】
具体的にはナノクラスター生成工程では、特許文献3に記載のナノクラスター生成装置及び上述のナノクラスター分散液の製造装置におけるナノクラスター生成手段を用いることができる。ナノクラスター生成工程で生成されるナノクラスターは、気相の状態でクラスターサイズが極めて高い精度で制御されている。ナノクラスター生成工程で、事前に所望のクラスターサイズのナノクラスターを生成すれは、後述する分散液の捕集工程で捕集されるクラスターサイズを一定にできる。

【0137】
ナノクラスター生成工程で生成するナノクラスター種は特に問わない。ナノクラスターを構成する各元素は、気相で凝集するものであればよい。生成されるナノクラスターは、例えば構成元素が単一の金属元素からなる金属ナノクラスター、構成元素が複数の金属元素からなる合金ナノクラスター、構成元素にシリコンを含む半導体ナノクラスター等が挙げられる。金属ナノクラスターとしてはPt、Au、Ag、Cu、Cr、Ti、Fe等のナノクラスター、合金ナノクラスターとしてはCoPt、FePt等のナノクラスター、半導体クラスターとしてはSi、TaSi,TiSi、LuSi、RuSi、WSi、MoSi等を生成することができる。

【0138】
ナノクラスター生成工程とナノクラスター捕集工程の間には、ナノクラスター検出工程を有することが好ましい。ナノクラスター検出工程で、所定のナノクラスターが形成されていることを確認する。その結果、所定のクラスターサイズのナノクラスターが分散液中に含まれることが確認でき、作製するナノクラスター分散液中の所定のナノクラスターの濃度を高めることができる。

【0139】
ナノクラスター捕集工程では、ナノクラスターが入射する分散媒を流動させる。ナノクラスター生成工程で生成されたナノクラスターを凝集させずに捕集するためである。

【0140】
例えば上述の検査手段30のように、ナノクラスターの進行方向にプローブ板を設置すると、数秒程度でプローブ板に色が着く。すなわち、分散媒には高い頻度でナノクラスターが入射する。そのため、分散媒を流動させないと、分散媒に入射したナノクラスターは液面または液中で互いに凝集する。ナノクラスターが入射する分散媒を流動させることで、分散媒表面および分散媒中でナノクラスター濃度が局所的に高くなることを抑制し、ナノクラスターの分散性を高めることができる。

【0141】
ナノクラスター捕集工程において、最もナノクラスター同士が凝集しやすいのは分散液の表面である。これは、液面にナノクラスターが入射する際に抵抗を受け、一度分散液表面でナノクラスターの速度が低下するためである。

【0142】
そこでナノクラスター捕集工程において、分散媒表面におけるナノクラスター密度が凝集限界以下となるように分散媒を流動させることが好ましい。
凝集限界とは、ナノクラスター同士が分散媒表面で接触しない密度を意味する。例えば、ナノクラスターのサイズを直径1nmとすると、ナノクラスターが1cm中に1014個以上存在するとナノクラスター同士が接触してしまう。ナノクラスター同士が接触すると、即座に凝集する訳ではないが、ナノクラスターサイズが直径1nmの場合は、分散媒表面におけるナノクラスター密度が1014個/cm以下であることが好ましい。

【0143】
分散媒表面におけるナノクラスター密度は、ナノクラスターの入射流束にも大きな影響を受ける。入射流束とは、1秒間に1cmに入射するナノクラスターの粒子数を意味する。入射流束が早ければ、流動速度を早くすることが好ましく、入射流束が遅い場合は撹拌速度をそれほど早める必要はない。いずれの場合でも、分散媒表面におけるナノクラスター密度が凝集限界以下となるように、分散媒を流動させることによりナノクラスター同士の凝集をより抑制できる。

【0144】
より具体的には、例えば1時間に10mgのナノクラスターを取集しようとすると、12cmの面積(入射面でのナノクラスターの広がりを直径40mmとして計算)に6nmol(=3.3×1015個)/secで分散液にナノクラスターが入射する。分散媒が静止していた場合の入射量は、2.8×1014個/sec・cmであり、この場合10cm/sec以上の流動速度であれば、分散媒表面におけるナノクラスター密度を1014個以下にすることができる。ナノクラスターの入射流束の現状での限界値を考慮すると、ナノクラスター分散液の表面速度を20cm/sec以上とすることが好ましく、100cm/sec以上とすることがより好ましい。

【0145】
ナノクラスターが入射する分散媒を流動させる方法は、特に問わない。例えば、ナノクラスター分散液の製造装置において説明した、撹拌子、回転体等を用いることができる。

【0146】
ナノクラスター分散液の製造装置において説明した様に、原則的にはナノクラスター分散液は真空容器中で作製されるため沸点の高い難揮発性溶媒を用いることが好ましい。これに対し、使用態様を考慮すると、難揮発性溶媒を用いると、溶媒の残存が考えられる。そのため、ナノクラスター分散液の分散媒は揮発性溶媒であることが好ましい。

【0147】
そこで、ナノクラスター捕集工程の後に、捕集時に用いた分散媒よりも沸点の低い揮発性溶媒に、分散媒を置換する置換工程をさらに備えてもよい。分散媒の置換は、例えば、カラムクロマトグラフィや再結晶法等により、まず分散液からナノクラスターのみを抽出する。そして抽出したナノクラスターを再度揮発性の溶媒中に撹拌しながら加えることで、揮発性溶媒にナノクラスターが分散した分散液が得られる。酸素や水の存在下において置換工程を行うと、ナノクラスターが凝集する恐れがある。この置換工程は、グローブボックス等を用いて、無酸素、無水条件で行うことが好ましい。置換に使用する溶媒も、脱気・脱水処理を施すことが望ましい。

【0148】
このような分散液を用いると、簡単に基体上にナノクラスター分散液を塗布することができる。塗布には、スプレーコーティング法、ディスペンサコーティング法、スピンコーティング法、ナイフコーティング法、インクジェットコーティング法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、ダイコーティング法等を用いることができる。塗布した分散液から、溶媒を除去すると、容易にナノクラスター分散膜が得られる。得られたナノクラスター分散膜を構成する所定のナノクラスターサイズのナノクラスターは、全体の5%以上である。

【0149】
なお、ここで基体は、特に限定されるものではなく、用途に応じ導電性のもの、非導電性のもの等が適宜選択される。例えば、導電性のものとしては、金、銀、アルミニウム等の金属や、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、サファイア、等の金属酸化物、グラファイトやカーボンナノチューブ等の有機導電体を挙げることができる。また、非導電性のものとしては、ガラス、セラミックス、樹脂等を挙げることができる。さらに半導体のものとして、SiやGaAsの半導体等を挙げることができる。

【0150】
本実施形態に係るナノクラスター分散液の製造方法を用いると、ナノクラスターが均一に分散したナノクラスター分散液が得られる。またナノクラスター生成工程で、事前にナノクラスターサイズを制御することで、所望のクラスターサイズのナノクラスターを単離できる。
【実施例】
【0151】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【実施例】
【0152】
(実施例1)
まず第1実施形態に記載のナノクラスター生成手段を用いて、構成元素がTaとSiからなるナノクラスターを気相で生成した。
図7は、気相中で生成したナノクラスターの質量スペクトルである。質量スペクトルから気相中で生成されたナノクラスターは、TaSi16であることが確認された。
【実施例】
【0153】
次いで、気相で生成したナノクラスターを、貯留容器に貯留された分散媒に入射させ、ナノクラスター分散液を得た。分散媒は、不活性な置換基としてメチル基で終端したポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEG,分子量250程度、沸点250℃以上)を用いた。分散媒は、撹拌子で撹拌した。
【実施例】
【0154】
図8は、TaSiのナノクラスター分散液の高速液体クロマトグラム (HPLC)である。横軸はカラムに供給した溶液量であり、縦軸は吸光度である。分散媒としては末端を不活性なメチル基で置換し終端化したポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEG、分子量250程度、沸点250℃以上)を用い、ナノクラスターとしてTaSi、TaSi、及びTaSi(0)を生成した。
【実施例】
【0155】
HPLCでは、分析カラムの一方から溶液を供給しながら、カラムの他方に設置した分光光度計にて吸光度を測定する。分析には、サイズ排除カラムを用いた。分析カラム内は、多孔質な構造になっており、ナノクラスターサイズにより分析カラム内を進む速度が異なる。サイズの小さなナノクラスターは、サイズの大きなナノクラスターに比べて多孔質な構造内部を迂回しながら進行方向に進むため、進行速度が遅い。そのため、分析カラム内に供給する供給量が少ない段階では、比較的サイズの大きい(質量が大きい)ナノクラスターが確認される。以降、溶液の供給量が増えるに従い、ナノクラスターサイズが小さく(質量が小さく)なる。
【実施例】
【0156】
すなわち、図8に示すHPLCスペクトルは、分散液中に含まれるナノクラスター全体の存在比率を表している。横軸は溶出体積すなわちクラスターサイズであり、縦軸は吸光度すなわちクラスターの存在量を示している。グラフから、横軸8.5mL(溶媒の供給速度0.5mL/分において、溶媒の供給から17分後)に最大ピークが確認できる。
【実施例】
【0157】
次いで、ナノクラスター分散液の代表ピークに対する分画成分の質量スペクトルも確認した。図9は、本発明の一態様に係るナノクラスター分散液の製造方法を用いて作製したナノクラスター分散液をカラム精製した試料の質量スペクトルであり、(a)は質量スペクトルの全体像であり、(b)はピーク部分を拡大した拡大図である。図9(a)及び(b)の質量スペクトルは、図8における8.5mLの部分の試料を用いて計測した。横軸は、質量数を電荷で割ったm/z値であり、縦軸は検出強度である。
【実施例】
【0158】
図9(a)及び(b)に示すように、質量分析の結果から、TaSi13(m/z≒545a.m.u.),TaSi14(m/z≒574a.m.u.),TaSi15(m/z≒602a.m.u.),TaSi16(m/z≒630a.m.u.)が生成されていることが分かる。これらはTaSi16の解離生成物と考えられる。すなわち、代表ピークを示すナノクラスターがTaSi16であり、分散液中にTaSi16が主成分として含まれていることを示している。一方で、サイズや組成の異なるSiなどは観測されていない。すなわち、図7及び図9(a)及び(b)から気相のナノクラスターが凝集させることなく分散媒中に分散していることが確認できる。
【実施例】
【0159】
次いで、確認された所定のクラスターサイズのナノクラスター(TaSi16)が、ナノクラスター全体において占める割合を算出する。算出は以下の手順で行った。
【実施例】
【0160】
まず単成分の物質(分子量が一つに決まる)物質を、測定した際のHPLCの結果を確認した。
図10は、単成分のポリスチレンのHPLCである。このとき得られたピークの半値幅が0.63mLであり、ピーク値は8.28mLであった。ポリスチレンは、標準物質として分子量が同一のものを用いたが、クロマトグラムにおいてはある程度の幅を有するピーク曲線として検出される。
【実施例】
【0161】
すなわち、図8で示すTaSiのナノクラスター分散液のHPLCにおける、単一のTaSi16もある程度の幅を有するピーク曲線として検出されるはずである。そこで、図8で示すHPLCを、ピークの頂点を中心に半値幅0.63mLのピーク曲線でフィッティングした。図8における点線がフィッティング結果である。換言すると、TaSiのナノクラスター分散液のHPLCの内、点線部はTaSi16に起因して生じたピークである。したがって、実線部の面積に対する点線部の面積率が、確認された所定のクラスターサイズのナノクラスター(TaSi16)が、ナノクラスター全体において占める割合と換算することができる。
【実施例】
【0162】
上記の手順で換算した結果、確認された所定のクラスターサイズのナノクラスター(TaSi16)が、ナノクラスター全体において占める割合は、57.2%であった。
上述のように、ナノクラスターを構成する元素がTaSiからなるナノクラスターが分散したナノクラスター分散液を得ることができた。また得られたナノクラスター分散液は、安定的であり、分散液を6ヶ月程度静置した後でもナノクラスターの沈降は確認されなかった。すなわち、このナノクラスター分散液は、所定のサイズのナノクラスターが均一分散されていることが分かる。
【実施例】
【0163】
(実施例2)
実施例1で作製したTaSiナノクラスターのPEG分散液をヘキサン/アセトニトリル混合溶媒を用いて再結晶を行い、TaSiナノクラスターを分散媒から分離した。分離したTaSiナノクラスターを、テトラヒドロフラン、トルエンのそれぞれに再分散した。いずれの場合でも再分散後もTaSiナノクラスターは沈降することなく安定に分散した。揮発性の低いPEGから揮発性の高い揮発性有機溶剤に分散媒を置換できることが確認できた。また置換後の分散液も安定的であり、ナノクラスターの沈降は確認されなかった。
【実施例】
【0164】
(実施例3)
実施例3は、ナノクラスター生成手段において気相で生成したナノクラスターを構成する元素がTi、Siである点以外は、実施例1と同様とした。得られたナノクラスターはTiSiであった。
図11は、本発明の一態様に係るナノクラスター分散液の製造方法を用いて作製したTiSiのナノクラスター分散液のHPLCである。実線は、ナノクラスター全体のHPLCの結果であり、点線はフィッティングによって確認された処理のクラスターサイズのナノクラスターの分布である。
実施例1と同様の手順で、所定のクラスターサイズのナノクラスターが、ナノクラスター全体において占める割合を算出したところ、40.2%であった。また得られたナノクラスター分散液は、安定的であり、分散液を6ヶ月程度静置した後でもナノクラスターの沈降は確認されなかった。
【実施例】
【0165】
(実施例4)
実施例3で作製したTiSiナノクラスターのPEG分散液をヘキサン/アセトニトリル混合溶媒を用いて再結晶を行った。そして、TiSiナノクラスターを分散媒から分離した。分散媒から分離したTiSiナノクラスターサンプルには、15重量%以上のSi、1重量%以上のTiが含まれ、残りの成分はナノクラスターと結合したポリエチレングリコールジメチルエーテルであった。分散媒から分離したTiSiナノクラスターをテトラヒドロフランに再分散した。再分散後もTiSiナノクラスターは沈降することなく安定に分散した。揮発性の低いPEGから揮発性の高い揮発性有機溶剤に分散媒を置換できることが確認できた。また置換後の分散液も安定的であり、ナノクラスターの沈降は確認されなかった。
【実施例】
【0166】
(実施例5)
実施例5は、ナノクラスター生成手段において気相で生成したナノクラスターを構成する元素がRu、Siである点以外は、実施例1と同様とした。得られたナノクラスターはRuSiであった。
図12は、本発明の一態様に係るナノクラスター分散液の製造方法を用いて作製したRuSiのナノクラスター分散液のHPLCである。実線は、ナノクラスター全体のHPLCの結果であり、点線はフィッティングによって確認された処理のクラスターサイズのナノクラスターの分布である。
実施例1と同様の手順で、所定のクラスターサイズのナノクラスターが、ナノクラスター全体において占める割合を算出したところ、42.1%であった。また得られたナノクラスター分散液は、安定的であり、分散液を3ヶ月程度静置した後でもナノクラスターの沈降は確認されなかった。
【実施例】
【0167】
(実施例6及び7)
実施例2及び実施例4で得られたテトラヒドロフランに再分散したTaSiおよびTiSiナノクラスター分散液をガラス基板やSi基板上に塗布した。より具体的には、酸化膜付Si(111)基板上に、スピンコーター(装置:Aiden社製、型番SC2005)を使って、10mg/mLの溶液を回転数3000rpmで塗布した。塗布後の試料を風乾することでTaSiナノクラスター分散膜を作製した。図14は当該ナノクラスター分散膜の断面図である。
【実施例】
【0168】
(実施例8~10)
ナノクラスター分散液を作製する際の難揮発性分散媒として、ポリエチレングリコールジメチルエーテルに代えて、ジメチルシリコーンオイル(実施例7、粘度200mm/s)、ジメチルシリコーンオイル(実施例8、粘度1000mm/s)もしくはメチルフェニルシリコーンオイル(実施例9、粘度160mm/s)を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法でTiSiナノクラスター分散液を作製した。得られたナノクラスター分散液は、安定的であり、分散液を6ヶ月程度静置した後でもナノクラスターの沈降は確認されなかった。ナノクラスターの沈降は目視で評価した。
【実施例】
【0169】
(実施例11、12)
ナノクラスター分散液を作製する際の難揮発性分散媒として、イオン液体を用いた。イオン液体としては、実施例11では、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、実施例12では、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドとした。これらのイオン液体を用いて、TiSiナノクラスター分散液を作製し、1週間静置したところ僅かにナノクラスター同士の会合が確認され、実施例1~5及び8~10で作製したナノクラスター分散液より分散性が良くなかった。
【実施例】
【0170】
(実施例13)
ナノクラスター分散液を作製する際の難揮発性分散媒として、流動パラフィンを用いて、TiSiナノクラスター分散液を作製した。作製したナノクラスター分散液を、1週間静置したところ僅かにナノクラスター同士の会合が確認され、実施例1~5及び8~10で作製したナノクラスター分散液より分散性が良くなかった。
【符号の説明】
【0171】
100…ナノクラスター分散液の製造装置、10…ナノクラスター生成手段、11,44,56…真空容器、12…ナノクラスター成長セル、13…スパッタ源、14…液体窒素ジャケット、15…制御装置、16…パルス電源、17…第1不活性ガス導入手段、18…第2不活性ガス導入手段、19,47,57…排気装置、20,40,50…ナノクラスター捕集手段、21,41…貯留容器、22…撹拌子、23,43…分散媒、30…検査手段、42…回転体、45,55…コック、46…支持体、48…スキージ、49…撹拌手段、51…基板、52…冷却手段、53…分散媒供給手段、54…捕集容器
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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