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明細書 :精鉱製造方法及び精鉱製造システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第5754697号 (P5754697)
登録日 平成27年6月5日(2015.6.5)
発行日 平成27年7月29日(2015.7.29)
発明の名称または考案の名称 精鉱製造方法及び精鉱製造システム
国際特許分類 C22B   3/44        (2006.01)
C22B  34/36        (2006.01)
B03D   1/02        (2006.01)
FI C22B 3/00 S
C22B 34/36
B03D 1/02 108
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願2014-561200 (P2014-561200)
出願日 平成26年8月1日(2014.8.1)
国際出願番号 PCT/JP2014/070377
審査請求日 平成26年12月19日(2014.12.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504117958
【氏名又は名称】独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
発明者または考案者 【氏名】中村 威一
【氏名】▲高▼橋 達
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100166006、【弁理士】、【氏名又は名称】泉 通博
審査官 【審査官】越本 秀幸
参考文献・文献 国際公開第2012/137359(WO,A1)
特開2009-050796(JP,A)
特開2002-248459(JP,A)
調査した分野 C22B 3/44
B03D 1/02
C22B 34/36
要約 本精鉱製造方法は、第1の水と粉末状の原鉱とを混合した第1混合水を生成する第1混合水生成工程(S1)と、第1混合水を第1分離部に通して、第1混合水に含まれる第1浮遊鉱物と、第1沈降鉱物と、第1濾過水とに分離する第1分離工程(S2)と、第1の水と異なる第2の水と第1沈降鉱物とを混合した第2混合水を生成する第2混合水生成工程(S3)と、第2混合水を第2分離部に通して、第2混合水に含まれる第2浮遊鉱物と、第2沈降鉱物と、第2濾過水とに分離する第2分離工程(S4)と、を備え、第1混合水生成工程において、第1濾過水を第1の水の一部として使用するとともに、第2混合水生成工程において、第2濾過水を第2の水の一部として使用する。
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の水と粉末状の原鉱とを混合した第1混合水を生成する第1混合水生成工程と、
前記第1混合水を、前記第1混合水に含まれる第1浮遊鉱物と、第1沈降鉱物と、第1濾過水とに分離する第1分離工程と、
前記第1の水と異なる第2の水と前記第1沈降鉱物とを混合した第2混合水を生成する第2混合水生成工程と、
前記第2混合水を、前記第2混合水に含まれる第2浮遊鉱物と、第2沈降鉱物と、第2濾過水とに分離する第2分離工程と、
を備え、
前記第1混合水生成工程において、前記第1濾過水を前記第1の水の一部として使用するとともに、前記第2混合水生成工程において、前記第2濾過水を前記第2の水の一部として使用する、
精鉱製造方法。
【請求項2】
前記第1分離工程は、
前記第1混合水に含まれる第1浮遊鉱物が浮遊した状態にするとともに、第1沈降鉱物が沈降した状態にする第1浮選工程と、
前記第1浮選工程の後に行われる、前記第1混合水の一部を第1浮遊鉱物分離部に通して、前記第1混合水に含まれる前記第1浮遊鉱物と第1濾過水とに分離する第1浮遊鉱物分離工程と、
前記第1浮選工程の後に行われる、前記第1混合水の他の一部を第1沈降鉱物分離部に通して、前記第1混合水に含まれる前記第1沈降鉱物と第1濾過水とに分離する第1沈降鉱物分離工程と、
を含み、
前記第2分離工程は、
前記第2混合水に含まれる第2浮遊鉱物が浮遊した状態にするとともに、第2沈降鉱物が沈降した状態にする第2浮選工程と、
前記第2浮選工程の後に行われる、前記第2混合水の一部を第2浮遊鉱物分離部に通して、前記第2混合水に含まれる前記第2浮遊鉱物と第2濾過水とに分離する第2浮遊鉱物分離工程と、
前記第2浮選工程の後に行われる、前記第2混合水の他の一部を第2沈降鉱物分離部に通して、前記第2混合水に含まれる前記第2沈降鉱物と第2濾過水とに分離する第2沈降鉱物分離工程と、
を含む、
請求項1に記載の精鉱製造方法。
【請求項3】
前記第2浮遊鉱物分離工程は、
第1温度において、前記第2混合水から前記第2浮遊鉱物を含む鉱物を浮選する工程と、
前記第1温度よりも高い第2温度において、前記第2浮遊鉱物を含む鉱物と、前記第2濾過水とを混合した第3混合水を生成する工程と、
前記第3混合水の一部を前記第2浮遊鉱物分離部に通して、前記第3混合水に含まれる前記第2浮遊鉱物を分離する工程と、
を含む、
請求項に記載の精鉱製造方法。
【請求項4】
前記第1分離工程の前記第1浮選工程において、第1捕収剤を前記第1混合水に添加することにより、前記第1浮遊鉱物を生成し、
前記第2分離工程の前記第2浮選工程において、前記第1捕収剤と異なる第2捕収剤を前記第2混合水に添加することにより、前記第2浮遊鉱物を生成する、
請求項2又は3に記載の精鉱製造方法。
【請求項5】
前記第1分離工程の前記第1浮選工程において、第1の有機化合物を含む前記第1捕収剤と前記原鉱に含まれる硫化物とを反応させることにより、前記第1浮遊鉱物を生成し、
前記第2分離工程の前記第2浮選工程において、第2の有機化合物を含む前記第2捕収剤と前記第1沈降鉱物に含まれる酸化物とを反応させることにより、前記第2浮遊鉱物を生成する、
請求項に記載の精鉱製造方法。
【請求項6】
前記第1分離工程において、前記第1濾過水と外部から取得した水とを混合した水を前記第1の水として使用し、
前記第2分離工程において、前記第2濾過水と外部から取得した水とを混合した水を前記第2の水として使用する、
請求項1からのいずれか1項に記載の精鉱製造方法。
【請求項7】
前記第2沈降鉱物に含まれる水を除去してドライスタックする工程をさらに備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載の精鉱製造方法。
【請求項8】
前記第1浮遊鉱物をセメント又はフライアッシュと混合して固形物を生成する工程と、
前記固形物の上にドライスタックする工程と、
をさらに備える、請求項7に記載の精鉱製造方法。
【請求項9】
第1の水と粉末状の原鉱とを混合した第1混合水を、第1浮遊鉱物と、第1沈降鉱物と、第1濾過水とに分離する第1分離部と、
前記第1の水と異なる第2の水と前記第1沈降鉱物とを混合した第2混合水を、第2浮遊鉱物と、第2沈降鉱物と、第2濾過水とに分離する第2分離部と、
前記第1濾過水を貯水する第1貯水部と、
前記第2濾過水を貯水する第2貯水部と、
を備え、
前記第1分離部は、前記第1貯水部の水を前記第1の水として使用するとともに、前記第2分離部は、前記第2貯水部の水を前記第2の水として使用する、
精鉱製造システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、浮選により精鉱を製造するための精鉱製造方法及び精鉱製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錫鉱石やタングステン鉱石のような酸化物を浮選により選鉱する方法が知られている。特許文献1には、二酸化チタン鉱石から、浮選により二酸化チタン精鉱を製造する方法が開示されている。また、非特許文献1には、タングステン鉱石から、浮選によりタングステン精鉱を製造する方法が開示されている。
【0003】
図4は、非特許文献1に開示されている従来の精鉱製造方法の工程を示す図である。図4に示すように、酸化物を浮選により選鉱する場合、ボールミルにより鉱石を粉砕した後に、鉱石が含有する硫化物を除去するための第1浮選処理(脱硫浮選処理)を施す。続いて、脱硫浮選処理において得られる沈降鉱物に対して第2の浮選処理(タングステン浮選処理)を施すことにより、酸化物である錫鉱物やタングステン鉱物を回収する。第1の浮選処理においては、硫化物を浮遊させるための硫化物捕収剤が用いられ、第2の浮選処理においては、酸化物を浮遊させるための酸化物捕収剤が用いられる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2012/137359号
【0005】

【非特許文献1】沢木来、「藤ケ谷鉱山タングステン選鉱処理の現況」、日本鉱業会誌、1986年4月、第102巻、第1178号、pp.230-233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の浮選による選鉱方法において、除去した硫化物、及び最終的に残る尾鉱は、尾鉱ダムに送られて処理される。尾鉱ダムにおいて固形物を沈殿させた後に回収される上水は、浮選処理工程で再利用される。しかしながら、上水には、酸化物を浮遊させるための酸化物捕収剤が残留している。したがって、硫化物を浮選により除去する第1の浮選処理において、回収された上水を用いると、第1の浮選処理において酸化物の一部が浮遊して、除去されてしまう。その結果、酸化物の実収率が低下するという問題が生じる。例えば、第1の浮選処理工程において上水を再利用しない場合の実収率が59.8%であるにもかかわらず、第1の浮選処理工程で用いる水の75%を、尾鉱ダムで回収した上水にした場合の実収率は約44.0%であるという簡易試験の結果がある。
【0007】
上記の問題を防ぐために、回収した水を第1の浮選処理において再利用しないという方法が考えられる。しかしながら、回収した水を第1の浮選処理において再利用しないと、大量の新しい水を使用しなければならないという問題が生じる。乾燥した地域で選鉱する場合は、新しい水を使用するとコストが高くなるので、新しい水の使用量を低減することが求められる。
【0008】
また、回収した水を第1の浮選処理において再利用しないと、尾鉱ダムに残る水に含まれるフッ化物等の有害物質を除去する水処理が必要になり、多額の費用が生じてしまう。多雨地域では、尾鉱ダムに残る水の量が多くなるので、尾鉱ダムに残る水の量を低減することが求められる。
【0009】
そこで、本発明は、浮選処理において使用する水の量を抑制しつつ、実収率を向上させることができる精鉱製造方法及び精鉱製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る精鉱製造方法は、第1の水と粉末状の原鉱とを混合した第1混合水を生成する第1混合水生成工程と、前記第1混合水を、前記第1混合水に含まれる第1浮遊鉱物(例えば、硫化物浮選浮鉱)と、第1沈降鉱物(例えば、硫化物浮選尾鉱)と、第1濾過水とに分離する第1分離工程と、前記第1の水と異なる第2の水と前記第1沈降鉱物とを混合した第2混合水を生成する第2混合水生成工程と、前記第2混合水を、前記第2混合水に含まれる第2浮遊鉱物(例えば、灰重石精鉱)と、第2沈降鉱物(例えば、酸化物浮選尾鉱)と、第2濾過水とに分離する第2分離工程と、を備え、前記第1混合水生成工程において、前記第1濾過水を前記第1の水の一部として使用するとともに、前記第2混合水生成工程において、前記第2濾過水を前記第2の水の一部として使用する。
【0011】
前記第1分離工程は、前記第1混合水の一部を第1浮遊鉱物分離部(例えば、フィルタ142)に通して、前記第1混合水に含まれる第1浮遊鉱物と第1濾過水とに分離する第1浮遊鉱物分離工程と、前記第1混合水の他の一部を第1沈降鉱物分離部(例えば、フィルタ144)に通して、前記第1混合水に含まれる第1沈降鉱物と第1濾過水とに分離する第1沈降鉱物分離工程と、を含んでもよい。
【0012】
また、前記第2分離工程は、前記第2混合水の一部を第2浮遊鉱物分離部(例えば、フィルタ262)に通して、前記第2混合水に含まれる第2浮遊鉱物と第2濾過水とに分離する第2浮遊鉱物分離工程と、前記第2混合水の他の一部を第2沈降鉱物分離部(例えば、フィルタ234)に通して、前記第2混合水に含まれる第2沈降鉱物と第2濾過水とに分離する第2沈降鉱物分離工程と、を含んでもよい。
【0013】
前記第2浮遊鉱物分離工程は、第1温度において、前記第2混合水から前記第2浮遊鉱物を含む鉱物を浮選する工程と、前記第1温度よりも高い第2温度において、前記第2浮遊鉱物を含む鉱物と、前記第2濾過水とを混合した第3混合水を生成する工程と、前記第3混合水の一部を前記第2浮遊鉱物分離部に通して、前記第3混合水に含まれる前記第2浮遊鉱物を分離する工程と、を含んでもよい。
【0014】
前記第1分離工程において、前記第1濾過水と外部から取得した水とを混合した水を前記第1の水として使用し、前記第2分離工程において、前記第2濾過水と外部から取得した水とを混合した水を前記第2の水として使用してもよい。
【0015】
また、前記第1分離工程において、第1捕収剤を前記第1混合水に添加することにより、前記第1浮遊鉱物を生成し、前記第2分離工程において、前記第1捕収剤と異なる第2捕収剤を前記第2混合水に添加することにより、前記第2浮遊鉱物を生成してもよい。
【0016】
さらに、前記第1分離工程において、第1の有機化合物を含む前記第1捕収剤と前記原鉱に含まれる硫化物とを反応させることにより、前記第1浮遊鉱物を生成し、前記第2分離工程において、第2の有機化合物を含む前記第2捕収剤と前記第1沈降鉱物に含まれる酸化物とを反応させることにより、前記第2浮遊鉱物を生成してもよい。
【0017】
上記の精鉱製造方法は、前記第2沈降鉱物に含まれる水を除去してドライスタックする工程をさらに備えてもよい。この場合、前記第1浮遊鉱物をセメント又はフライアッシュと混合して固形物を生成する工程と、前記固形物の上に前記ドライスタックする工程と、をさらに備えてもよい。
【0018】
本発明の第2の態様に係る精鉱製造システムは、第1の水と粉末状の原鉱とを混合した第1混合水を、第1浮遊鉱物と、第1沈降鉱物と、第1濾過水とに分離する第1分離部と、前記第1の水と異なる第2の水と前記第1沈降鉱物とを混合した第2混合水を、第2浮遊鉱物と、第2沈降鉱物と、第2濾過水とに分離する第2分離部と、前記第1濾過水を貯水する第1貯水部と、前記第2濾過水を貯水する第2貯水部と、を備え、前記第1分離部は、前記第1貯水部の水を前記第1の水として使用するとともに、前記第2分離部は、前記第2貯水部の水を前記第2の水として使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、浮選処理において使用する水の量を抑制しつつ、実収率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る精鉱製造方法の流れを示す図である。
【図2】本実施形態に係る精鉱製造装置の第1処理部の構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る精鉱製造装置の第2処理部の構成を示す図である。
【図4】従来の精鉱製造方法の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[精鉱製造方法の概要]
図1は、本実施形態に係る精鉱製造方法の流れを示す図である。図1において、実線は、鉱物の流れを示し、破線は水の流れを示している。本実施形態においては、タングステン鉱石から、タングステン酸塩鉱物の一種である灰重石を選鉱する場合について説明するが、錫、チタン、及びレアアースを選鉱する場合についても本発明を適用することができる。

【0022】
まず、ボールミルなどの粉砕機を用いてタングステン鉱石を微細な粉末にした後に、コンディショニングタンクに、粉末状のタングステン鉱石、第1の水、及び第1の有機化合物を含む第1捕収剤を入れて撹拌することにより第1スラリーa1を生成する第1混合水生成処理を実行する(S1)。第1の水は、外部から取得した新水と、後述の第1濾過水とを含む水である。

【0023】
続いて、生成した第1スラリーa1を、第1浮遊鉱物(硫化物浮選浮鉱)と、第1沈降鉱物(硫化物浮選尾鉱)と、第1濾過水とに分離する第1分離処理を実行する(S2)。第1分離処理においては、まず、硫化物浮選処理を実行する(S21)。硫化物浮選処理においては、硫化物浮選処理を行う浮選処理部に第1スラリーa1を入れた後で空気を注入する。第1捕収剤として、例えばエチルザンセートを用いることができる。このようにすることで、第1スラリーa1に含まれていた硫化物が第1捕収剤と反応して浮遊する状態になる。そして、硫化物以外の成分が第1沈降鉱物として浮選処理部の下部に沈降する。

【0024】
続いて、浮選処理部の下部に沈鉱した第1沈降鉱物を含む第1スラリーa2をフィルタに通して、第1沈降鉱物と、第1沈降鉱物以外の第1濾過水とに分離するフィルタリング処理を実行する(S22)。

【0025】
また、S22と並行して、浮選処理部に浮遊している第1浮遊鉱物を含む第1スラリーa3をフィルタに通して、第1浮遊鉱物と、第1浮遊鉱物以外の第1濾過水とに分離するフィルタリング処理を実行する(S23)。第1浮遊鉱物は、タングステン鉱石に含まれている硫化物であり、回収する必要がないので廃棄する。第1浮遊鉱物の廃棄方法の詳細については後述する。S22及びS23で分離した第1濾過水は、S1において用いられる第1の水の一部として再利用される。

【0026】
続いて、S22のフィルタリング処理で分離した第1沈降鉱物には灰重石が含まれているので、第1沈降鉱物から灰重石を取り出す処理を実行する。ここでは、まず、コンディショニングタンク内に、第1沈降鉱物、第2の水、及び第2の有機化合物を含む第2捕収剤を入れて撹拌することにより第2スラリーb1を生成する第2混合水生成処理を実行する(S3)。第2の水は、後述の第2濾過水からなる水であり、第1の水と異なる水である。なお、第2の水が、外部から取得した新水を含んでもよい。

【0027】
続いて、生成した第2スラリーb1を、第2浮遊鉱物(灰重石精鉱)と、第2沈降鉱物(酸化物浮選尾鉱)と、第2濾過水とに分離する第2分離処理を実行する(S4)。第2分離処理においては、まず、酸化物浮選処理を実行する(S41)。酸化物浮選処理においては、浮選処理部に第2スラリーb1を入れた後で空気を注入する。第2捕収剤として、例えば酸化パラフィンを用いることができる。このようにすることで、第2スラリーb1に含まれていた酸化物が第2捕収剤と反応して浮遊する状態になる。そして、酸化物以外の成分が第2沈降鉱物として浮選処理部の下部に沈降する。

【0028】
続いて、浮選処理部の下部に沈鉱した第2沈降鉱物を含む第2スラリーb2をフィルタに通して、第2沈降鉱物と、第2沈降鉱物以外の第2濾過水とに分離するフィルタリング処理を実行する(S42)。第2沈降鉱物は回収する必要がない尾鉱なので、脱水した後にドライスタック処理を実行する(S43)。ドライスタック処理の詳細については後述する。

【0029】
また、S42と並行して、浮選処理部に浮遊している第2浮遊鉱物を含む第2スラリーb3をフィルタに通して、第2浮遊鉱物と、第2浮遊鉱物以外の第2濾過水とに分離するフィルタリング処理を実行する(S43)。第2浮遊鉱物は、回収する対象となる灰重石精鉱である。また、S42及びS43で分離された第2濾過水は、S3において用いられる第2の水の一部として再利用される。

【0030】
以上の方法により、高い実収率でタングステン鉱石から灰重石を得ることができる。ここで、本実施形態においては、第1濾過水が、第1混合水生成処理(S1)及び第1分離処理(S2)において用いられる第1の水の一部として再利用されるとともに、第2濾過水が、第2混合水生成処理(S3)及び第2分離処理(S4)において用いられる第2の水の一部として再利用される点が特徴の一つである。

【0031】
第1濾過水は、フィルタを用いて第1沈降鉱物及び第1浮遊鉱物と分離しているので、第1濾過水には第1沈降鉱物及び第1浮遊鉱物が含まれていない。したがって、外部から取得する新水とともに、再利用することができる。また、第2濾過水は、フィルタを用いて第2沈降鉱物及び第2浮遊鉱物と分離しているので、第2濾過水には第2沈降鉱物及び第2浮遊鉱物が含まれていない。したがって、第2濾過水も再利用することができる。

【0032】
ただし、第2濾過水には、酸化物浮選処理を実行する際に酸化物を浮遊させるための第2の有機化合物を含む第2捕収剤が含まれている。もしも、第2捕収剤を含む第2濾過水を第1濾過水と混合してしまうと、第1分離処理において、硫化物とともに、酸化物の一部が浮遊してしまい、回収すべき酸化物の一部が硫化物浮選尾鉱の一部として廃棄されてしまうことになる。そこで、本実施形態においては、第2濾過水を第1濾過水と混合することなく、第2混合水生成処理S3及び第2分離処理S4において用いられる第2の水としてのみ再利用することとしている。

【0033】
また、本実施形態においては、酸化物浮選尾鉱である第2沈降鉱物を脱水処理してドライスタック処理(S5)を実行することにより、尾鉱を遠方まで搬送する必要がなく、尾鉱の処理の効率化を実現することもできる。具体的には、以下の工程でドライスタック処理を実行する。

【0034】
まず、ドライスタック処理に先立ち、第1分離処理において生成された第1浮遊鉱物をセメント又はフライアッシュと混合して固形物を生成する。第1浮遊鉱物を強アルカリ下で固形化することにより、硫化物を含む第1浮遊鉱物が空気中の酸素と反応して、環境問題につながる硫酸水が発生することを防止できる。

【0035】
固形化した第1浮遊鉱物は、ドライスタック底面のライナーとして使用される。具体的には、生成した固形物を、ドライスタック処理を行うドライスタックエリアに載置する。その後、ドライスタックエリアに載置した固形物の上に、第2沈降鉱物を脱水処理したケークを積み重ねることで、ドライスタック処理を実行する。第1浮遊鉱物から生成された固形物の上に積み重ねたケークをローラー等で転圧することにより、雨水の浸透を防ぎ、堆積物の安定化を図る。

【0036】
[精鉱製造システムの構成]
図2及び図3は、上記の精鉱製造方法を実行するための精鉱製造システムの構成を示す図である。図2は、精鉱製造システムにおける硫化物浮選工程を実行するための硫化物浮選装置1の構成を示す図である。図3は、精鉱製造システムにおける酸化物浮選工程を実行するための酸化物浮選装置2の構成を示す図である。図2における破線は、第1濾過水の流れを示し、図3における破線は、第2濾過水の流れを示す。以下、図2及び図3を参照しながら、精鉱製造システムの詳細について説明する。

【0037】
硫化物浮選装置1は、第1配水塔11と、グラインディング部12と、コンディショニングタンク13と、第1分離部14と、第1貯水槽15とを備える。
第1配水塔11は、硫化物浮選装置1において用いられる新水を供給するタンク及び配水管から構成されている。第1配水塔11は、第1貯水槽15から供給される第1濾過水が不足した場合に、不足した量に相当する新水を供給する。

【0038】
グラインディング部12は、例えばボールミルである。グラインディング部12は、精鉱製造システムによって製造する精鉱の原石を粉砕して粉末状にする。

【0039】
コンディショニングタンク13は、第1貯水槽15から供給される第1濾過水と、グラインディング部12において粉末状にされた原鉱石と、第1の有機化合物を含む第1捕収剤とを混合することによりスラリーを生成するためのタンクである。第1貯水槽15から供給される水が不足している場合、第1配水塔11から供給される新水をコンディショニングタンク13に入れてもよい。

【0040】
第1分離部14は、硫化物浮選処理を行うことにより、硫化物と、硫化物以外の物と、第1濾過水とを分離する。第1分離部14は、浮選処理部141と、フィルタ142と、シックナ143と、フィルタ144とを有する。

【0041】
浮選処理部141は、硫化物浮選処理を行うための浮選機である。コンディショニングタンク13において生成されたスラリーを浮選処理部141に入れた後に空気を注入すると、第1捕収剤と反応したスラリー中の硫化物が浮遊する。

【0042】
フィルタ142は、浮選処理部141の上側のスラリーから、スラリーに浮遊する硫化物浮選浮鉱を分離する。フィルタ142は、例えば、硫化物浮選浮鉱の粒径よりも小さく水分子よりも大きな穴を有する濾布を備えるフィルタープレス(加圧濾過機)である。フィルタ142において分離された硫化物浮選浮鉱は固形化される。フィルタ142が硫化物浮選浮鉱を分離した後のスラリーは、シックナ143に送られる。

【0043】
シックナ143は、浮選処理部141の下側のスラリー、及びフィルタ142から送られた液体の沈降濃縮処理を行い、スラリーの固体濃度を高める。シックナ143は、例えば、スラリーの固体濃度を35%から65%に高める。シックナ143において濃度が高まったオーバーフロー(O/F)は第1貯水槽15に送られる。シックナ143のアンダーフロー(U/F)はフィルタ144に送られる。

【0044】
フィルタ144は、シックナ143のアンダーフローから、沈降した硫化物浮選尾鉱を分離する。フィルタ142は、例えば、硫化物浮遊尾鉱の粒径よりも小さく、水分子よりも大きな穴を有する濾布を備えるフィルタープレスである。フィルタ144は、フィルタ142と同じ濾布により構成されていてもよい。フィルタ144が分離した硫化物浮選尾鉱には酸化物が含まれているので、酸化物浮選装置2に送られる。また、フィルタ144が硫化物浮選尾鉱を分離した後の液体は、第1貯水槽15に送られる。

【0045】
第1貯水槽15は、シックナ143及びフィルタ144から送られてきた液体を、第1濾過水として貯水する。第1貯水槽15は、貯水した第1濾過水を、コンディショニングタンク13において必要な量だけ配水する。第1貯水槽15が第1濾過水を貯水し、第1濾過水を再利用するので、尾鉱ダム排出する余剰水の量を低減することができる。

【0046】
続いて、図3を参照して、酸化物浮選装置2の構成について説明する。酸化物浮選装置2は、第2配水塔21と、コンディショニングタンク22と、第2分離部23と、第2貯水槽24と、コンディショニングタンク25と、第3分離部26とを備える。

【0047】
第2配水塔21は、酸化物浮選装置2において用いられる新水を供給するタンク及び配水管から構成されている。第2配水塔21は、第2貯水槽24から供給される第2濾過水が不足した場合に、不足した量に相当する新水を供給する。

【0048】
コンディショニングタンク22は、第2貯水槽24から供給される第2濾過水と、硫化物浮選装置1から送られてくる硫化物浮選尾鉱と、第2の有機化合物を含む第2捕収剤とを混合することによりスラリーを生成するためのタンクである。第2貯水槽24から供給される水が不足している場合、第2配水塔21から供給される新水をコンディショニングタンク22に入れてもよい。

【0049】
第2分離部23は、常温で酸化物浮選処理を行うことにより、酸化物と、酸化物以外の成分と、第2濾過水とを分離する。第2分離部23は、浮選処理部231と、シックナ232と、シックナ233と、フィルタ234とを有する。

【0050】
浮選処理部231は、酸化物浮選処理を行うための浮選機である。コンディショニングタンク22において生成されたスラリーを浮選処理部231に入れた後に空気を注入すると、第2捕収剤と反応したスラリー中の酸化物が浮遊する。

【0051】
シックナ232は、浮選処理部231において得られる酸化物浮選浮鉱を含むスラリーの沈降濃縮処理を行い、スラリーの固体濃度を高める。シックナ232は、例えば、スラリーの固体濃度を40%から70%に高める。シックナ232において濃度が高まったアンダーフローには灰重石が含まれており、灰重石の品位を高めるために、第3分離部26に送られる。シックナ232におけるオーバーフローは、第2濾過水として第2貯水槽24に貯蔵される。

【0052】
シックナ233は、浮選処理部231における尾鉱を含むスラリー、及び後述の浮選処理部261における尾鉱を含むスラリーの沈降濃縮処理を行い、スラリーの固体濃度を高める。シックナ233のオーバーフローは、第2濾過水として第2貯水槽24に貯蔵される。また、シックナ233のアンダーフローであるスラリーは、フィルタ234に送られる。

【0053】
フィルタ234は、シックナ233のアンダーフローから、酸化物浮選尾鉱を分離する。フィルタ234は、例えば酸化物浮選尾鉱の粒径よりも小さく、水分子よりも大きな穴を有する濾布を備えるフィルタープレスである。フィルタ234が分離した酸化物浮選尾鉱は、脱水後にドライスタック処理される。フィルタ234が酸化物浮選尾鉱を分離した後に残る水は、第2濾過水として第2貯水槽24に貯蔵される。

【0054】
第2貯水槽24は、シックナ232、シックナ233、フィルタ234及びフィルタ262から送られてきた液体を、第2濾過水として貯水する。第2貯水槽24は、貯水した第2濾過水を、コンディショニングタンク22及びコンディショニングタンク25において必要な量だけ配水する。第2貯水槽24が第2濾過水を貯水し、第2濾過水を再利用するので、尾鉱ダム排出する余剰水の量を低減することができる。

【0055】
コンディショニングタンク25は、第2貯水槽24から供給される第2濾過水と、シックナ232から送られてくる灰重石浮選浮鉱と、第2の有機化合物を含む第2捕収剤とを混合することによりスラリーを生成するためのタンクである。第2貯水槽24から供給される水が不足している場合、第2配水塔21から供給される新水をコンディショニングタンク25に入れてもよい。

【0056】
第3分離部26は、第2分離部23よりも高い温度(例えば、65℃~90℃)で酸化物浮選処理を行うことで、灰重石精鉱と第2濾過水とを分離する。第3分離部26は、高温で酸化物浮選処理を行うことで、第2の有機化合物の灰重石への吸着の選択性を向上させることができるので、より品位が高い灰重石を取り出すことが可能になる。

【0057】
第3分離部26は、浮選処理部261と、フィルタ262とを有する。浮選処理部261は、酸化物浮選処理を行うための浮選機である。コンディショニングタンク25において生成されたスラリーを加熱した後に浮選処理部261に入れた後に空気を注入すると、第2捕収剤と反応したスラリー中の酸化物が浮遊する。

【0058】
フィルタ262は、浮選処理部261において浮遊している酸化物である灰重石精鉱を分離する。フィルタ262は、例えば灰重石精鉱の粒径よりも小さく、水分子よりも大きな穴を有する濾布を備えるフィルタープレスである。フィルタ262が灰重石精鉱を分離した後に残る水は、第2濾過水として第2貯水槽24に貯蔵される。

【0059】
このように、酸化物浮選装置2においては、第2分離部23において常温で酸化物浮選処理を行うことで大量の灰重石を回収した後に、第3分離部26において高温で酸化物浮選処理を行うことにより、回収した灰重石の品位を向上させることができる。

【0060】
[本実施形態における効果]
本実施形態に係る精鉱製造システムによれば、原鉱石から硫化物を回収する硫化物浮選装置1において、フィルタ144を通して硫化物浮選尾鉱と第1濾過水とを分離する。また、酸化物を回収する酸化物浮選装置2において、フィルタ234及びフィルタ263を通して、酸化物浮選尾鉱と、灰重石精鉱と、第2濾過水とを分離する。したがって、第1濾過水及び第2濾過水には不純物が含まれておらず、コンディショニングタンク13、コンディショニングタンク22及びコンディショニングタンク25におけるスラリーの生成に再利用することができるので、尾鉱ダムに大量の余剰水が排出されることを抑制できる。フッ素を含む第2濾過水が排出されないという点で、環境への影響を低減することもできる。

【0061】
また、第1濾過水及び第2濾過水を再利用することにより、外部から取得する新水の量を抑制することができる。したがって、水のコストが高い乾燥地域における精鉱製造コストを低減することができる。

【0062】
また、浮選に用いた水を再利用しながらも、酸化物の浮選処理に用いられる第2捕収剤を含む第2濾過水は硫化物浮選装置1で用いられないので、硫化物浮選装置1において、酸化物の一部が浮遊してしまい、尾鉱として処理されることがない。したがって、酸化物の実収率を向上させることもできる。

【0063】
また、酸化物浮選装置2においては、第2分離部23において常温で酸化物浮選処理を行った後に、第3分離部26において高温で酸化物浮選処理を行う。このようにすることで、高品位の灰重石精鉱を回収することが可能である。

【0064】
さらに、硫化物浮選装置1における硫化物浮選処理で発生する硫化物浮選浮鉱を固形化して、ドライスタック底面のライナーとして使用するとともに、酸化物浮選装置2における酸化物浮選処理で発生する酸化物浮選尾鉱をドライスタック処理する。このようにすることで、硫化物浮選浮鉱が空気中の酸素と反応して、環境問題につながる硫酸水が発生することを防止できる。

【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。

【0066】
例えば、上記の実施形態において、フィルタ142、144、234、262としてフィルタープレスを例示したが、これらのフィルタは、ディスクフィルタであってもよい。

【0067】
また、上記の実施形態において、酸化物浮選装置2が、第2分離部23と第3分離部26とを備え、第2分離部23における浮選処理と第3分離部26における浮選処理を異なる温度で実行する場合について説明したが、この限りではない。例えば、第2分離部23が、フィルタ262と同等の機能を有するフィルタを有しており、第2分離部23において灰重石精鉱を分離してもよい。

【0068】
また、上記の実施形態において、酸化物浮選装置2が第2配水塔21を備える構成について説明したが、酸化物浮選装置2が第2配水塔21を備えず、コンディショニングタンク22に、第1配水塔11から新水を供給してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1・・・硫化物浮選装置、2・・・酸化物浮選装置、11・・・第1配水塔、12・・・グラインディング部、13・・・コンディショニングタンク、14・・・第1分離部、15・・・第1貯水槽、21・・・第2配水塔、22・・・コンディショニングタンク、23・・・第2分離部、24・・・第2貯水槽、25・・・コンディショニングタンク、26・・・第3分離部、141・・・浮選処理部、142・・・フィルタ、143・・・シックナ、144・・・フィルタ、231・・・浮選処理部、232・・・シックナ、2324・・・シックナ、2326・・・フィルタ、261・・・浮選処理部、262・・・フィルタ、263・・・フィルタ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3