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明細書 :地殻データ解析方法、地殻データ解析プログラム及び地殻データ解析装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6429398号 (P6429398)
登録日 平成30年11月9日(2018.11.9)
発行日 平成30年11月28日(2018.11.28)
発明の名称または考案の名称 地殻データ解析方法、地殻データ解析プログラム及び地殻データ解析装置
国際特許分類 G01V   9/00        (2006.01)
FI G01V 9/00 J
請求項の数または発明の数 6
全頁数 19
出願番号 特願2015-531736 (P2015-531736)
出願日 平成26年6月12日(2014.6.12)
国際出願番号 PCT/JP2014/065556
国際公開番号 WO2015/022806
国際公開日 平成27年2月19日(2015.2.19)
優先権出願番号 2013168564
優先日 平成25年8月14日(2013.8.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成29年4月20日(2017.4.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504117958
【氏名又は名称】独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
発明者または考案者 【氏名】両角 春寿
個別代理人の代理人 【識別番号】100166006、【弁理士】、【氏名又は名称】泉 通博
審査官 【審査官】田中 秀直
参考文献・文献 特開昭55-113975(JP,A)
大津秀夫、他,地化学データの頻度分布分割法,鉱山地質,1984年,第34巻 第1号,P.51-56
調査した分野 G01V 1/00-99/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
複数の位置における所定の元素又は化合物の地殻存在度を示す複数のデータを取得するステップと、
それぞれ異なる第1の閾値を用いて、前記複数のデータから、当該複数のデータの地殻存在度が前記第1の閾値以上のデータを削除するとともに、前記第1の閾値よりも低い第2の閾値を用いて、前記第2の閾値以下のデータを削除して、複数の削除済データを生成するステップと、
前記複数の削除済データのそれぞれについて、当該削除済データを構成する複数のデータが、前記複数の位置を含むエリアよりも広いエリアにおける前記所定の元素又は化合物の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定するステップと、
前記正規分布に従わないと判定された複数の前記削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値に基づいて地化学異常の閾値を決定するステップと、
を備える地殻データ解析方法。
【請求項2】
前記第2の閾値は、前記地殻存在度の検出限界値であり、
前記複数の削除済データを生成するステップにおいて、前記第2の閾値以下のデータを削除した後に、前記第1の閾値以上のデータを削除することにより前記削除済データを生成する、
請求項に記載の地殻データ解析方法。
【請求項3】
前記複数の削除データを生成するステップにおいて、前記第1の閾値を順番に小さくして、前記複数の削除済データを生成し、
前記判定するステップにおいて、一の前記削除済データが生成されたことに応じて、前記判定を行う、
請求項1又は2に記載の地殻データ解析方法。
【請求項4】
前記複数の削除データを生成するステップにおいて、二分探索法に基づいて前記第1の閾値を決定し、決定した第1の閾値に基づいて、前記削除済データを生成する、
請求項からのいずれか1項に記載の地殻データ解析方法。
【請求項5】
コンピュータを、
複数の位置における所定の元素又は化合物の地殻存在度を示す複数のデータを取得する取得部、
それぞれ異なる第1の閾値を用いて、前記複数のデータから、当該複数のデータの地殻存在度が前記第1の閾値以上のデータを削除するとともに、前記第1の閾値よりも低い第2の閾値を用いて、前記第2の閾値以下のデータを削除して、複数の削除済データを生成する生成部、
前記複数の削除済データのそれぞれについて、当該削除済データを構成する複数のデータが、前記複数の位置を含むエリアよりも広いエリアにおける前記所定の元素又は化合物の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定する判定部、及び
前記正規分布に従わないと判定された複数の前記削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値に基づいて地化学異常の閾値を決定する決定部、
として機能させる地殻データ解析プログラム。
【請求項6】
複数の位置における所定の元素又は化合物の地殻存在度を示す複数のデータを取得する取得部と、
それぞれ異なる第1の閾値を用いて、前記複数のデータから、当該複数のデータの地殻存在度が前記第1の閾値以上のデータを削除するとともに、前記第1の閾値よりも低い第2の閾値を用いて、前記第2の閾値以下のデータを削除して、複数の削除済データを生成する生成部と、
前記複数の削除済データのそれぞれについて、当該削除済データを構成する複数のデータが、前記複数の位置を含むエリアよりも広いエリアにおける前記所定の元素又は化合物の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定する判定部と、
前記正規分布に従わないと判定された複数の前記削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値に基づいて地化学異常の閾値を決定する決定部と、
を備える地殻データ解析装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、地化学探査に用いられる地殻データ解析方法、地殻データ解析プログラム及び地殻データ解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地化学探査のデータ解析において、地殻から採取した複数のサンプルの物質含有量が常用対数で正規分布に従うことが知られている。図9は、地殻から採取した複数のサンプルにおいて、各岩における含有元素の一般的な含有率に対応する後背値と、鉱徴の存在を示唆する異常値との頻度分布の例を示す図である。図9において、横軸は物質含有量の常用対数であり、縦軸はそれぞれの物質含有量に対応するサンプルの数である。図9には、後背値の頻度分布FD1と、異常値の頻度分布FD2とが示されている。これら後背値の頻度分布FD1及び異常値の頻度分布FD2は、独立して正規分布に従う傾向にある。
【0003】
従来、地殻から採取した複数のサンプルを、後背値の母集団と異常値の母集団とに分離するために、複数のサンプルの含有元素の頻度分布に対して、複数のサンプルの含有元素の閾値を設定することが行われている。
【0004】
例えば、複数のサンプルそれぞれの物質含有量を示すデータのうち、常用対数で正規分布に従う一の母集団に属する複数のデータが、累積頻度分布において直線を示すことに着目し、累積頻度分布における直線の屈曲点から、後背値の母集団と、異常値の母集団との閾値を読み取る手法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
図10は、複数のサンプルそれぞれにおける各元素の分析値の累積頻度分布図である。図10において、横軸は各元素の含有量を示し、縦軸は正規分布確率を示す。図10では、例えば、モリブデン(Mo)の累積分布を示す直線が、約2ppm及び約8ppmにおいて屈曲していることが確認できる。これにより、約2ppm以下の線分が後背値の母集団によって形成され、約2ppmから約8ppmまでの線分が、後背値の母集団及び異常値の母集団によって形成され、約8ppm以上の線分が異常値の母集団によって形成されていることが確認できる。そこで、Moにおける後背値に対応する母集団と、異常値に対応する母集団との閾値を約2ppmから約8ppmの間に設定することができる。
また、閾値を決定する他の手法として、常用対数での平均値に標準偏差を加算した値の倍数で閾値を決定する手法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Lepeltier, C. (1969), A simplified statistical treatment of geochemical data by graphical representation. Econ. Geol., 64, 538-550.
【非特許文献2】通商産業省(1986)昭和60年度広域地質構造調査,構造解析総合解析報告書,641p.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、複数のサンプルの物質含有量に基づいて後背値の母集団と異常値の母集団との閾値を決定しようとしても、図9に示されるように屈曲点が明確に示されないことが多い。従って、非特許文献1に開示されている手法を用いたとしても、閾値の設定が困難である場合がある。
【0008】
また、非特許文献2に開示されている手法を用いたとしても、地化学分析の検出限界未満のデータに対して検出限界値の半分の値を与えることで、本来の平均値や標準偏差が得られないことがある。さらに、明らかに正規分布に従っていない母集団に対しては、非特許文献2に開示されている手法を適用しても閾値を適切に設定できないという問題がある。
【0009】
そこで、正規分布に従わない母集団や、地化学分析の検出限界未満のデータを含む複数のデータについても、地化学異常の閾値を適切に設定できるようにすることが望まれている。
【0010】
本発明は、地化学異常の閾値を適切に設定することができる地殻データ解析方法、地殻データ解析プログラム及び地殻データ解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る地殻データ解析方法は、複数の位置における所定の元素又は化合物の地殻存在度を示す複数のデータを取得するステップと、前記複数のデータから一部のデータを削除して、複数の削除済データを生成するステップと、前記複数の削除済データのそれぞれについて、当該削除済データを構成する複数のデータが正規分布に従うか否かを判定するステップと、前記判定した結果に基づいて、地化学異常の閾値を決定するステップと、を備える。
【0012】
また、本発明に係る地殻データ解析方法では、前記複数の削除済データを生成するステップにおいて、それぞれ異なる第1の閾値を用いて、前記複数のデータから、当該複数のデータの地殻存在度が前記第1の閾値以上のデータを削除して、複数の削除済データを生成し、前記判定するステップにおいて、前記削除済データを構成する複数のデータが、前記複数の位置を含むエリアよりも広いエリアにおける前記所定の元素又は化合物の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定し、前記閾値を決定するステップにおいて、前記正規分布に従わないと判定された複数の前記削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の前記地殻存在度の値から所定範囲内の値を地化学異常の閾値に決定してもよい。
【0013】
また、本発明に係る地殻データ解析方法では、前記複数の削除済データを生成するステップにおいて、それぞれ異なる第1の閾値を用いて、前記複数のデータから、当該複数のデータの地殻存在度が第1の閾値以上のデータを削除するとともに、前記第1の閾値よりも低い第2の閾値を用いて、前記第2の閾値以下のデータを削除して、前記複数の削除済データを生成してもよい。
【0014】
また、本発明に係る地殻データ解析方法では、前記第2の閾値は、前記地殻存在度の検出限界値であり、前記複数の削除済データを生成するステップにおいて、前記第2の閾値以下のデータを削除した後に、前記第1の閾値以上のデータを削除することにより前記削除済データを生成してもよい。
【0015】
また、本発明に係る地殻データ解析方法では、前記複数の削除データを生成するステップにおいて、前記第1の閾値を順番に小さくして、前記複数の削除済データを生成し、前記判定するステップにおいて、一の前記削除済データが生成されたことに応じて、前記判定を行ってもよい。
【0016】
また、本発明に係る地殻データ解析方法では、前記複数の削除データを生成するステップにおいて、二分探索法に基づいて前記第1の閾値を決定し、決定した第1の閾値に基づいて、前記削除済データを生成してもよい。
【0017】
本発明に係る地殻データ解析プログラムは、コンピュータを、複数の位置における所定の元素又は化合物の地殻存在度を示す複数のデータを取得する取得部、前記複数のデータから一部のデータを削除して、複数の削除済データを生成する生成部、前記複数の削除済データのそれぞれについて、当該削除済データを構成する複数のデータが正規分布に従うか否かを判定する判定部、及び、前記判定した結果に基づいて地化学異常の閾値を決定する決定部、として機能させる。
【0018】
本発明に係る地殻データ解析装置は、複数の位置における所定の元素又は化合物の地殻存在度を示す複数のデータを取得する取得部と、前記複数のデータから一部のデータを削除して、複数の削除済データを生成する生成部と、前記複数の削除済データのそれぞれについて、当該削除済データを構成する複数のデータが正規分布に従うか否かを判定する判定部と、前記判定した結果に基づいて、地化学異常の閾値を決定する決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、地化学異常の閾値を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る地殻データ解析装置の機能構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る地殻データ解析装置において、地化学異常の閾値を決定するまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態に係る第1エリアに適用された実在するエリアにおけるサンプルの採取位置を示す図である。
【図4A】鉛の分析値の頻度分布図である。
【図4B】鉛の分析値の累積頻度分布図である。
【図4C】鉛の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。
【図5A】亜鉛の分析値の頻度分布図である。
【図5B】亜鉛の分析値の累積頻度分布図である。
【図5C】亜鉛の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。
【図6A】銀の分析値の頻度分布図である。
【図6B】銀の分析値の累積頻度分布図である。
【図6C】銀の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。
【図7A】硫黄の分析値の頻度分布図である。
【図7B】硫黄の分析値の累積頻度分布図である。
【図7C】硫黄の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る地殻データ解析装置において、地化学異常の閾値を決定するまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9】地殻から採取した複数のサンプルにおける後背値及び異常値の頻度分布の例を示す図である。
【図10】複数のサンプルそれぞれにおける各元素の分析値の累積頻度分布図である。
【図11A】北薩・南薩の代表的な鉱床地帯である串木野鉱床におけるAu(金)の分析値の頻度分布図である。
【図11B】Auの分析値の累積頻度分布図である。
【図11C】本手法により異常値と判定された採取位置(図中の黒丸)を示す図である。
【図11D】従来の方法により異常値と判定された採取位置(図中の黒丸)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1の実施形態>
[地殻データ解析装置1の構成例]
図1は、本実施形態に係る地殻データ解析装置1の機能構成図である。
地殻データ解析装置1は、第1エリアにおける複数の位置において採取されたサンプルを解析して得られた、複数の元素又は化合物(以下、元素等ともいう)それぞれの地殻存在度を示す複数のデータから構成される地殻存在度情報について、後背値の母集団と、異常値の母集団とに分類するための閾値(以下、地化学異常の閾値という)を決定する。以下、当該複数のデータを、対象データという。

【0022】
具体的には、地殻データ解析装置1は、対象データから、地殻存在度が第1の閾値以上のデータを削除して削除済データを作成する。そして、地殻データ解析装置1は、削除済データが第1エリアよりも広い第2エリアにおける平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うまで第1の閾値を変化させ、削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値を、地化学異常の閾値に決定する。第2エリアにおける平均地殻存在度として、例えば、Rudnick, R.L. and Gao, S. (2003) The Composition of the Continental Crust, p1-64. In The Crust (ed. R.L. Rudnick) Vol. 3, Treatise on Geochemistry (eds. H.D. Holland and K.K. Turekian), Elsevier-Pergamon, Oxfordに示されている上部大陸地殻の平均化学組成データを用いることができる。

【0023】
以下、地殻データ解析装置1の具体的な構成について説明する。
地殻データ解析装置1は、表示部10と、入力部20と、記憶部30と、制御部40と、を備える。
表示部10は、例えば、液晶ディスプレイにより構成される。表示部10は、制御部40の制御に応じて各種情報を表示する。
入力部20は、例えば、マウス又はキーボードにより構成される。入力部20は、ユーザから、各種情報の入力を受け付け、受け付けられた情報を制御部40に出力する。

【0024】
記憶部30は、例えば、ROM及びRAM、並びにハードディスク等により構成される。記憶部30は、地殻データ解析装置1を機能させるための各種プログラム(図示省略)を記憶する。具体的には、記憶部30は、制御部40を、後述の取得部41、生成部42、判定部43及び決定部44として機能させるための地殻データ解析プログラムを記憶する。なお、地殻データ解析プログラムを、CD-ROMやハードディスク等の記憶媒体に記憶させておき、記憶部30が、当該記憶媒体から取得した地殻データ解析プログラムを記憶してもよい。

【0025】
また、記憶部30は、例えば、対象データを記憶する。また、記憶部30は、第1エリアよりも広い第2エリアにおける複数の位置において測定された複数の元素等それぞれの平均地殻存在度を示す平均化学組成データを記憶する。なお、本実施形態では、第2エリアは、第1エリアを包含するものとする。

【0026】
制御部40は、例えば、CPUにより構成される。制御部40は、記憶部30により記憶されている、地殻データ解析装置1を機能させるための各種プログラムを実行することにより、地殻データ解析装置1に係る機能を統括的に制御する。具体的には、制御部40は、記憶部30に記憶されている、地殻データ解析プログラムを実行することにより、コンピュータを、取得部41と、生成部42と、判定部43と、決定部44として機能させる。以下、取得部41、生成部42、判定部43、及び決定部44について説明する。

【0027】
取得部41は、例えば記憶部30から対象データを取得する。すなわち、取得部41は、記憶部30に予め記憶されている、複数の位置における所定の元素又は化合物の地殻存在度を示す複数のデータを取得する。ここで、所定の元素又は化合物とは、後背値の母集団と異常値の母集団との閾値を見出す対象の元素又は化合物である。

【0028】
生成部42は、複数のデータから一部のデータを削除して、複数の削除済データを生成する。具体的には、生成部42は、それぞれ異なる第1の閾値を用いて、取得部41が取得した対象データから、地殻存在度が第1の閾値以上のデータを削除して、複数の削除済データを生成する。より具体的には、生成部42は、対象データが示す地殻存在度のうち最も高い地殻存在度を第1の閾値に設定し、対象データから第1の閾値以上のデータを削除して削除済データを生成する。その後、生成部42は、判定部43の判定の結果、第1の閾値を再設定する場合に、対象データが示す地殻存在度のうち次に高い地殻存在度を第1の閾値に設定し、対象データから第1の閾値以上のデータを削除して削除済データを生成する。

【0029】
また、それぞれ異なる複数の値を示す複数のデータを第1の閾値のデータセットとして記憶部30に予め記憶させておき、生成部42は、当該データセットから、値が高い順にデータを抽出し、抽出したデータの値を第1の閾値に設定してもよい。

【0030】
ここで、生成部42は、それぞれ異なる第1の閾値を用いて、対象データから、当該複数のデータの地殻存在度が第1の閾値以上のデータを削除するとともに、第1の閾値よりも低い第2の閾値を用いて、対象データから第2の閾値以下のデータを削除して、複数の削除済データを生成してもよい。なお、第2の閾値は、対象データにおける地殻存在度の検出限界値である。
また、生成部42は、対象データから第2の閾値以下のデータを削除した後に、第1の閾値以上のデータを削除することにより削除済データを生成してもよい。

【0031】
判定部43は、複数の削除済データのそれぞれについて、当該削除済データを構成する複数のデータが正規分布に従うか否かを判定する。判定部43は、以下に示すように、削除済データを構成する複数のデータが、第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定する。ここで、所定元素とは、後背値の母集団と異常値の母集団との閾値を見出す対象の元素又は化合物を示すものとする。

【0032】
まず、判定部43は、記憶部30に記憶されている平均化学組成データから、所定元素の平均地殻存在度μを取得する。そして、判定部43は、削除済データを構成する複数のデータの地殻存在度の平均値が、第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度μであるとの帰無仮説をたてる。続いて、判定部43は、以下の式(1)から(3)に基づいて、削除済データを構成する複数のデータの地殻存在度の平均値xbar、分散S、及び検定統計量tを算出する。ここで、削除済データを構成する複数のデータは、n個存在するものとし、複数のデータそれぞれの地殻存在度をx(ただし、iは1以上、n以下の整数である)とする。

【0033】
【数1】
JP0006429398B2_000002t.gif
【数2】
JP0006429398B2_000003t.gif
【数3】
JP0006429398B2_000004t.gif

【0034】
続いて、判定部43は、予め記憶部30に記憶されているt分布表から、自由度n-1のt分布の境界値t(n-1)(0.05)を特定し、検定統計量tの絶対値が、当該境界値より大きいか否かを判定する。判定部43は、検定統計量tの絶対値が境界値より大きいと判定した場合に、対立仮説を採択し、削除済データが、第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従わないと判定する。また、判定部43は、検定統計量tの絶対値が境界値以下と判定した場合に、対立仮説を棄却し、削除済データが、第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うと判定する。

【0035】
決定部44は、判定した結果に基づいて、地化学異常の閾値を決定する。具体的には、決定部44は、正規分布に従わないと判定された複数の削除済データのうち、最もデータが少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値を地化学異常の閾値に決定する。

【0036】
[処理フロー]
続いて、制御部40の処理の流れについて説明する。図2は、第1の実施形態に係る地殻データ解析装置1において、地化学異常の閾値を決定するまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。

【0037】
まず、取得部41は、記憶部30に記憶されている対象データを取得する(S1)。
続いて、生成部42は、S1において取得された対象データから、地殻存在度が第2の閾値以下のデータを削除する(S2)。

【0038】
続いて、生成部42は、第1の閾値を決定する(S3)。例えば、生成部42は、当該処理の実行回数が1回の場合、すなわち、当該処理を初めて実行する場合に、対象データにおいて最も高い地殻存在度を第1の閾値に決定する。また、生成部42は、当該処理の実行回数が2回以上である場合に、対象データにおいて、直前に決定された第1の閾値に対応する地殻存在度の次に高い地殻存在度を新たな第1の閾値に決定する。

【0039】
続いて、生成部42は、対象データから第1の閾値以上のデータを削除して削除済データを生成する(S4)。
続いて、判定部43は、削除済データが、第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定する(S5)。判定部43は、正規分布に従うと判定した場合(S5の判定がYesの場合)に、S6に処理を移す。また、判定部43は、正規分布に従わないと判定した場合(S5の判定がNoの場合)に、S1に処理を移す。

【0040】
続いて、決定部44は、S4で生成され、正規分布に従わないと判定された複数の削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データ、すなわち、直前に生成された削除済データを特定する。続いて、決定部44は、特定した削除済データにおける最大の地殻存在度の値を地化学異常の閾値に決定する(S6)。

【0041】
[実データへの適用例]
図3は、第1の実施形態に係る第1エリアに適用された実在するエリア(豊羽鉱脈鉱床)におけるサンプルの採取位置を示す図である。図3に示す採取位置は、非特許文献2に記載されている豊羽鉱脈鉱床の184地点である。非特許文献2に記載されている、それらの地点の地表で採取された岩石試料の分析値を、本実施形態に係る手法を適用する対象データとして用いた。図3に示される黒点は、サンプルの採取位置である。ここでは、上記の地点で採取された複数の岩石試料を分析して得られた鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)、硫黄(S)の含有量に基づいて、それぞれの元素における地化学異常の閾値の決定を行った。

【0042】
図4Aは、鉛(Pb)の分析値の頻度分布図である。図4Aにおける横軸は、Pbの地殻存在度の常用対数の値を示す。図4Bは、鉛の分析値の累積頻度分布図である。図4Bの横軸は、Pbの地殻存在度を示し、縦軸は正規分布確率の逆関数を示す。図4Cは、鉛の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。図4Cにおいて、図3に示した黒点と同じ大きさの黒点は、Pbの地殻存在度が1.5~16ppmであった採取位置を示し、白丸は、Pbの地殻存在度が17~24ppmであった採取位置を示し、黒点よりも大きな黒丸は、Pbの地殻存在度が25~70ppmであった採取位置を示している。

【0043】
第1エリアにおけるPbの地殻存在度は、最大値が70ppm、最小値が1.5ppmであり、これら複数のデータの平均値xbarは5.2ppmである。また、記憶部30に記憶されている平均化学組成データにおけるPbの地殻存在度の平均値は、17ppmである。これらの結果に基づいて、地殻データ解析装置1が地化学異常の閾値を算出した結果、当該閾値は、25ppmであった。第1エリアでは、25ppmを超える地化学異常の地点として、10点が得られた。なお、地化学異常の閾値と同値の地殻存在度のサンプルが採取された地点も地化学異常の地点としてもよい。このように、図4Bに示すように累積頻度分布図がほぼ直線を示している場合であっても、本実施形態に係る手法によれば、地化学異常を示す地点を抽出できることがわかる。

【0044】
図5Aは、亜鉛(Zn)の分析値の頻度分布図である。図5Bは、亜鉛の分析値の累積頻度分布図である。図5Cは、亜鉛の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。図5Cにおける黒点は、Znの地殻存在度が0.5~66ppmであった採取位置を示し、白丸は、Znの地殻存在度が67~96ppmであった採取位置を示し、黒丸は、Znの地殻存在度が97~370ppmであった採取位置を示している。

【0045】
第1エリアにおけるZnの地殻存在度は、最大値が370ppm、最小値が0.5ppmであり、これら複数のデータの平均値xbarは45.9ppmである。また、記憶部30に記憶されている平均化学組成データにおけるZnの地殻存在度の平均値は、67ppmである。これらの結果に基づいて、地殻データ解析装置1が地化学異常の閾値を算出した結果、当該閾値は、97ppmであった。第1エリアでは、97ppmを超える地化学異常の地点として、23点が得られた。

【0046】
図6Aは、銀(Ag)の分析値の頻度分布図である。図6Bは、銀の分析値の累積頻度分布図である。図6Cは、銀の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。図6Cにおける黒点は、Agの地殻存在度が0.1ppm以下であった採取位置を示し、黒丸は、Agの地殻存在度が0.2~6.2ppmであった採取位置を示している。

【0047】
第1エリアにおけるAgの地殻存在度は、最大値が6.2ppm、最小値が0.1ppmであり、これら複数のデータの平均値xbarは0.2ppmである。また、Agの検出限界値は、0.2ppmである。また、記憶部30に記憶されている平均化学組成データにおけるAgの地殻存在度の平均値は、53ppbである。これらの結果に基づいて、地殻データ解析装置1が地化学異常の閾値を算出した結果、0.2ppmのデータを削除しない場合の削除済データが地殻存在度の平均値53ppbの地殻存在度の正規分布に従わないことから、検出限界値である0.2ppmが地化学異常の閾値に決定された。その結果、第1エリアでは、検出限界値である0.2ppmを超える地化学異常の地点として、35点が得られた。

【0048】
図7Aは、硫黄(S)の分析値の頻度分布図である。図7Bは、硫黄の分析値の累積頻度分布図である。図7Cは、硫黄の地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置を示す図である。図7Cにおける黒点は、Sの地殻存在度が0.005~0.05ppmであった採取位置を示し、白丸は、Sの地殻存在度が0.06~0.09ppmであった採取位置を示し、黒丸は、Sの地殻存在度が0.1~4.41ppmであった採取位置を示している。

【0049】
第1エリアにおける硫黄の地殻存在度は、最大値が4.41%、最小値が0.005%であり、これら複数のデータの平均値xbarは0.2%である。また、記憶部30に記憶されている平均化学組成データにおけるSの地殻存在度の平均含有量は、0.06%である。これらの結果に基づいて、地殻データ解析装置1が地化学異常の閾値を算出した結果、0.1%が地化学異常の閾値に決定され、地化学異常の地点として、109点が得られた。

【0050】
[比較例]
続いて、上述の第1エリアに適用された実在するエリアの163地点において採取されたサンプルにおける各元素等の含有量について、他の手法を用いて地化学異常の閾値の決定を行った。
ここでは、通商産業省が1986年に提案した、常用対数での平均値に標準偏差を加算した値の倍数で閾値を決定する手法(以下、通商産業省の手法)により、Pb、Zn、Ag、Sの地化学異常の閾値を決定した例について説明する。

【0051】
Pbは、平均値が5.2ppm、平均値+標準偏差が13.2ppm、平均値+2×標準偏差が33.4ppmである。この場合、地化学異常の現れ方は、地殻データ解析装置1による手法と、常用対数での平均値に標準偏差を加算した値の倍数で閾値を決定する通商産業省の手法とで大差が無いものと考えられる。

【0052】
Znは、平均値は45.9ppm、平均値+標準偏差が146.6ppm、平均値+2×標準偏差が468.0ppmである。平均値+2×標準偏差以上の値は対象データには存在しない。また、平均値の45.9ppmは、上部大陸地殻の平均化学組成データで示されている地殻存在度の平均値である67ppmよりも小さい。したがって、通商産業省の手法では、地殻データ解析装置1を用いた手法によって検出できた異常値の母集団を検出することができない。

【0053】
Agは、平均値が0.2ppm、平均値+標準偏差が0.4ppm、平均値+2×標準偏差が0.9ppmである。ここで、0.4ppmより大きい地点は25点、0.9ppmより大きい地点は9点存在する。通商産業省の手法でも、地化学異常の鉱脈の潜在箇所は得られるが、検出限界値を考慮することなく地化学異常の閾値が決定されるため、適切に当該閾値が決定されない場合がある。したがって、通商産業省の手法に比べて、地殻データ解析装置1による地化学異常の閾値を決定方法の方が、地化学異常の存在を的確に示していると考えられる。

【0054】
Sは、平均値が0.2%、平均値+標準偏差が1.1%、平均値+2×標準偏差が6.1%である。この6.1%という値は、サンプル中に存在しない地殻存在度であり、さらに、平均化学組成データに示される地殻存在度の平均値を大きく上回っている。したがって、通商産業省の手法では、Sの地化学異常の閾値を適切に決定することができないといえる。これに対して、地殻データ解析装置1による地化学異常の閾値を決定方法では、上述したとおり、地化学異常の地点として、109点が得られている。よって、この結果からも、通商産業省の手法に比べて、地殻データ解析装置1による地化学異常の閾値の決定方法の方が、地化学異常が生じている地点を的確に検出できていると考えられる。

【0055】
[正規分布の検証]
続いて、地殻の主な火成岩の平均化学組成が、地殻存在度を平均値とする正規分布に従っているかの検定を行った結果について説明する。具体的には、主な火成岩の平均化学組成が第2エリアにおける平均地殻存在度μの正規分布に従っているとして、母分散の信頼係数95%の信頼区間を求め、その最大の標準偏差σによるμ+σの値を算出した。例えば、SiOは、地殻存在度を平均値とする正規母集団において、93.1%が最大値に近いという結果が示された。この値は、おおよそ強珪化岩の値に相当する。また、MgOは、地殻存在度を平均値とする正規母集団において、25.9%が最大値に近いという結果が示された。これについても、マントルの部分溶融のリキッドに含まれるMgOが20%以上に達することから、25.9という数値も妥当であると考えられる。したがって、地殻の主な火成岩の平均化学組成が、地殻存在度を平均値とする正規分布に従っていることが示された。

【0056】
[第1の実施形態における効果]
以上のとおり、本実施形態に係る地殻データ解析装置1は、複数のデータから、複数の削除済データのそれぞれについて、削除済データを構成する複数のデータが正規分布に従うか否かを判定し、当該判定結果に基づいて、地化学異常の閾値を決定する。したがって、地殻データ解析装置1は、複数の削除済データを、正規分布に従う削除済データと、正規分布に従わない削除済データとに分類して、後背値の母集団と、異常値の母集団とに分類し、これら母集団の境界値に基づいて地化学異常の閾値を適切に設定することができる。

【0057】
また、地殻データ解析装置1は、それぞれ異なる第1の閾値を用いて、複数のデータから、当該複数のデータの地殻存在度が第1の閾値以上のデータを削除して、複数の削除済データを生成し、削除済データを構成する複数のデータが、第1エリアよりも広い第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定し、正規分布に従わないと判定された複数の削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値を地化学異常の閾値に決定する。

【0058】
したがって、地殻データ解析装置1は、複数のデータを、第1エリアよりも広い第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従う母集団と、当該正規分布に従わない母集団とに分類するための地化学異常の閾値を適切に設定することができる。

【0059】
また、地殻データ解析装置1は、複数の削除済データを生成するステップにおいて、それぞれ異なる第1の閾値を用いて、複数のデータから、当該複数のデータの地殻存在度が第1の閾値以上のデータを削除するとともに、第1の閾値よりも低い第2の閾値を用いて、第2の閾値以下のデータを削除して、複数の削除済データを生成する。すなわち、地殻データ解析装置1は、削除済データから、地殻存在度の検出限界値を示す第2の閾値以下のデータを削除した後に、第1の閾値以上のデータを削除することにより削除済データを生成する。このようにすることで、地殻データ解析装置1は、検出限界値よりも低い地殻存在度を削除した削除済データを用いて正規分布に従うか否かを判定するので、精度よく地化学異常の閾値を判定することができる。

【0060】
<第2の実施形態>
[二分探索法を用いて第1の閾値を決定する]
続いて、第2の実施形態について説明する。
本実施形態の生成部42が、二分探索法に基づいて第1の閾値を決定し、決定した第1の閾値に基づいて、削除済データを生成する点で第1の実施形態と異なり、その他の点では同じである。

【0061】
具体的には、生成部42は、削除済データを、地殻存在度が低い順に並び替える。続いて、生成部42は、第1の閾値の探索範囲を、平均地殻存在度に最も近い地殻存在度に対応するデータから、地殻存在度が最も高いデータまでに設定する。続いて、生成部42は、当該探索範囲の中間値を第1の閾値の初期値に決定する。続いて、生成部42は、対象データから、決定した第1の閾値以上のデータを削除して削除済データを生成する。
続いて、判定部43は、削除済データが第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定する。

【0062】
生成部42は、判定部43の判定結果に基づいて、第1の閾値の新たな探索範囲を、直前の探索範囲の半分に縮小し、新たな第1の閾値を決定する。
具体的には、生成部42は、判定部43が正規分布に従うと判定した場合、現在の探索範囲において第1の閾値よりも大きい範囲を、新たな探索範囲に設定する。また、生成部42は、判定部43が正規分布に従わないと判定した場合、現在の探索範囲において第1の閾値よりも小さい範囲を、新たな探索範囲に設定する。続いて、生成部42は、新たに設定された探索範囲の中間値を新たな第1の閾値に決定する。続いて、生成部42は、決定した第1の閾値以上のデータを削除して削除済データを生成する。

【0063】
生成部42は、探索範囲を縮小できなくなるまで、第1の閾値を決定して削除済データを生成する処理を繰り返す。
決定部44は、生成部42が削除済データを生成する処理を終了した後、正規分布に従わないと判定された複数の削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値を地化学異常の閾値に決定する。

【0064】
[処理フロー]
続いて、制御部40の処理の流れについて説明する。図8は、第2の実施形態に係る地殻データ解析装置1において、地化学異常の閾値を決定するまでの処理の流れの一例を示すフローチャートである。

【0065】
まず、取得部41は、記憶部30に記憶されている対象データを取得する(S11)。
続いて、生成部42は、S11において取得された対象データから、地殻存在度が第2の閾値以下のデータを削除する(S12)。

【0066】
続いて、生成部42は、第1の閾値の探索範囲及び第1の閾値を決定する(S13)。例えば、生成部42は、当該処理の実行回数が1回、すなわち、当該処理を初めて実行する場合に、第1の閾値の探索範囲を、平均地殻存在度に最も近い地殻存在度に対応するデータから、地殻存在度が最も高いデータまでに設定する。また、生成部42は、当該処理の実行回数が2回以上である場合に、判定部43による直前の判定結果に基づいて、探索範囲を、直前の探索範囲の半分に設定する。また、生成部42は、設定された探索範囲の中央値を第1の閾値に決定する。

【0067】
続いて、判定部43は、削除済データが、第2エリアにおける所定元素の平均地殻存在度を平均値とする正規分布に従うか否かを判定する(S15)。
続いて、生成部42は、第1の閾値の探索範囲を縮小できるか否かを判定する(S16)。生成部42は、探索範囲を縮小できると判定した場合(S16の判定がYesの場合)、S11に処理を移し、探索範囲が縮小できないと判定した場合(S16の判定がNoの場合)、S17に処理を移す。

【0068】
続いて、決定部44は、S14で生成され、正規分布に従わないと判定された複数の削除済データのうち、最もデータが少ない削除済データ、すなわち、直前に生成された削除済データを特定する。続いて、決定部44は、特定した削除済データにおける最大の地殻存在度の値を地化学異常の閾値に決定する(S17)。

【0069】
[第2の実施形態における効果]
以上、地殻データ解析装置1によれば、生成部42は、二分探索法に基づいて第1の閾値を決定し、決定した第1の閾値に基づいて、削除済データを生成するので、効率的に第1の閾値を決定し、地化学異常の閾値の算出を高速に行うことができる。

【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。

【0071】
例えば、上記の実施形態においては、正規分布に従わないと判定された複数の削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値を地化学異常の閾値に決定していたが、最大の地殻存在度の値から所定の範囲内の他の値を閾値に決定してもよい。例えば、正規分布に従うと判定された複数の削除済データのうち、最もデータ数が多い削除済データにおける最大の地殻存在度の値を地化学異常の閾値に決定してもよい。また、正規分布に従わないと判定された複数の削除済データのうち、最もデータ数が少ない削除済データにおける最大の地殻存在度の値から、予め定められた値だけ大きい値を閾値に決定してもよい。

【0072】
<第3の実施形態>
第1の実施形態においては、部分検定として、正規分布に従うまで地殻存在度の値を中心として上位と下位のデータを削除して検定を繰り返し、正規分布に従わない最小件数の母集団の最高値を閾値として求める方法について説明した。本実施形態においては、データ件数が増加した場合にも適用できるように、以下の方法により閾値を決定する。

【0073】
判定部43は、データの件数がn件である場合、n件のデータが自由度nのχ2分布に従うとして、標準偏差σを以下のように算出する。
JP0006429398B2_000005t.gif

【0074】
続いて、判定部43は、χ2分布表から値を読み取ってσ2を計算する。ただし、判定部43は、n>100の場合においては、
JP0006429398B2_000006t.gifが近似的に規準正規分布N(0,1)に従うとしてσ2を計算する。

【0075】
判定部43は、このようにして求めた最小標準偏差を用いて、平均値と最小標準偏差とを加算した値を実数に戻した値までが、地殻存在度を平均値とする正規分布に従っていると判定し、これより直近上位の値を閾値とする。なお、最大標準偏差を用いない理由は、後背値母集団の上位と異常値母集団の下位は重複していると考えられるので、それらの重複をなるべく少なくするためである。

【0076】
[実データへの適用例]
本実施形態に係る手法で、図3に示した採取エリアで採取された岩石試料を分析して得られたPb、Zn、Sの含有量に基づいて、それぞれの元素における地化学異常の閾値の決定を行った。

【0077】
Pbに関しては、閾値が45ppmとなり、地化学異常の地点として2点が得られた。
Znに関しては、閾値が166ppmとなり、地化学異常の地点として5点が得られた。
Sに関しては、閾値が0.4%となり、地化学異常の地点として70点が得られた。

【0078】
本実施形態に係る手法は、データ数が1000件を超える場合に、特に有効である。
図11Aは、北薩・南薩の代表的な鉱床地帯である串木野鉱床におけるAu(金)の分析値の頻度分布図である。2331個のデータを用いた。図11Bは、Auの分析値の累積頻度分布図である。図11Cは、本手法により求めたAuの地殻存在度の地化学異常の閾値に基づき、異常値と判定された採取位置(図中の黒丸)を示す図である。図11Dは、通商産業省の方法により異常値と判定された採取位置(図中の黒丸)を示す図である。

【0079】
本手法によれば、地殻存在度の平均値は1.5ppb、閾値は14ppbであり、132点の地化学異常地点が得られた。これに対して、通商産業省の手法では、地殻存在度の平均値は2ppb、平均値+2×標準偏差は75ppbであり、65点の地化学異常地点が得られた。図11Cと図11Dとを比較すると明らかなように、本手法を用いることで、より多くの地化学異常地点を鉱脈鉱床の近傍にて把握することができた。

【0080】
秋田・青森の代表的な鉱床地帯である北鹿地域においても同様の比較分析を行った。
3666個のPbのデータを用いた場合、本手法によれば、地殻存在度の平均値は17ppm、閾値は57ppmであり、11点の地化学異常地点が得られた。これに対して、通商産業省の手法では、地殻存在度の平均値は12ppm、平均値+2×標準偏差は161ppmであり、8点の地化学異常地点が得られた。したがって、本手法を用いることで、より多くの地化学異常地点を鉱脈鉱床の近傍にて把握することができた。

【0081】
Znについても、3743個のデータを用いて同様の比較を行った。本手法によれば、地殻存在度の平均値は67ppm、閾値は176ppmであり、12点の地化学異常地点が得られた。これに対して、通商産業省の手法では、地殻存在度の平均値は65ppm、平均値+2×標準偏差は534ppmであり、2点の地化学異常地点が得られた。したがって、本手法を用いることで、より多くの地化学異常地点を鉱脈鉱床の近傍にて把握することができた。

【0082】
[第3の実施形態における効果]
以上のとおり、第3の実施形態に係る手法によれば、データ件数が多く、例えば、1000件以上である場合においても、高い精度で閾値を求められるので、より多くの地化学異常地点を鉱脈鉱床の近傍にて把握することができるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0083】
1・・・地殻データ解析装置、10・・・表示部、20・・・入力部、30・・・記憶部、40・・・制御部、41・・・取得部、42・・・生成部、43・・・判定部、44・・・決定部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図4C】
5
【図5A】
6
【図5B】
7
【図5C】
8
【図6A】
9
【図6B】
10
【図6C】
11
【図7A】
12
【図7B】
13
【図7C】
14
【図8】
15
【図9】
16
【図10】
17
【図11A】
18
【図11B】
19
【図11C】
20
【図11D】
21