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明細書 :(セミ)相互侵入網目構造ハイドロゲル及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4381297号 (P4381297)
登録日 平成21年10月2日(2009.10.2)
発行日 平成21年12月9日(2009.12.9)
発明の名称または考案の名称 (セミ)相互侵入網目構造ハイドロゲル及びその製造方法
国際特許分類 C08L  33/00        (2006.01)
C08F   2/44        (2006.01)
FI C08L 33/00
C08F 2/44
請求項の数または発明の数 10
全頁数 17
出願番号 特願2004-501476 (P2004-501476)
出願日 平成15年4月10日(2003.4.10)
国際出願番号 PCT/JP2003/004556
国際公開番号 WO2003/093337
国際公開日 平成15年11月13日(2003.11.13)
優先権出願番号 PCT/JP02/04358
優先日 平成14年5月1日(2002.5.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年3月31日(2006.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学
発明者または考案者 【氏名】長田 義仁
【氏名】グン チェンピン
個別代理人の代理人 【識別番号】100105315、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 温
審査官 【審査官】川上 智昭
参考文献・文献 特開2000-231127(JP,A)
西村隆史、山下啓司、南後守,感熱性ハイドロゲルを用いた重金属吸脱着能の熱によるコントロール,高分子学会予稿集,日本,Vol.49, No.12, P.3741-3742, (2000.09.08)
調査した分野 C08L33/00,C08L101/00,
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
第一のモノマー成分(ここで、該成分の10モル%以上が、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの塩である、電荷を有する不飽和モノマーである)を重合し架橋することにより第一の網目構造を形成させる工程;
第一の網目構造中に第二のモノマー成分(ここで、該成分の60モル%以上が、アクリルアミド、メチルメタクリレート又はトリフルオロエチルアクリレートである、電気的に中性である不飽和モノマーである)を導入した後、第二のモノマー成分を重合することにより、第一の網目構造中にポリマーを形成させ更に架橋することにより、第一の網目構造中に第二の網目構造を形成させる工程(ここで、第一のモノマー成分を重合し架橋する場合よりも架橋度を小さく設定する)を含む、
相互侵入網目構造ハイドロゲル(ここで、該ハイドロゲル中の第一のモノマー成分量:第二のモノマー成分量が、モル比で1:2~1:100である)の製造方法。
【請求項2】
第一のモノマー成分(ここで、該成分の10モル%以上が、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの塩である、電荷を有する不飽和モノマーである)を重合し架橋することにより第一の網目構造を形成させる工程;
第一の網目構造中に第二のモノマー成分(ここで、該成分の60モル%以上が、アクリルアミド、メチルメタクリレート又はトリフルオロエチルアクリレートである、電気的に中性である不飽和モノマーである)を導入した後、第二のモノマー成分を重合することにより、第一の網目構造中にポリマーを形成させる工程により、第一の網目構造中に第二の網目構造を形成させる工程を含む、
セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル(ここで、該ハイドロゲル中の第一のモノマー成分量:第二のモノマー成分量が、モル比で1:2~1:100である)の製造方法。
【請求項3】
該ハイドロゲルが金属イオンを更に含み、かつ、第一のモノマー成分及び第二のモノマー成分の少なくとも一部が、該金属イオンと錯体を形成しうる基を有するモノマーである、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
第一のモノマー成分に基づく網目構造の架橋度が0.1~50mol%であり、第二のモノマー成分に基づく網目構造の架橋度が0.001~20mol%である、請求項1又は3記載の製造方法。
【請求項5】
前記相互侵入網目構造ハイドロゲル又は前記セミ相互侵入網目構造ハイドロゲルの含水量が10%以上である、請求項1~4のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項6】
前記相互侵入網目構造ハイドロゲル又は前記セミ相互侵入網目構造ハイドロゲルの圧縮破断応力が1~100MPaである、請求項1~5のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項7】
前記相互侵入網目構造ハイドロゲル又は前記セミ相互侵入網目構造ハイドロゲルの引張破断応力が0.1~100MPaである、請求項1~6のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項8】
前記相互侵入網目構造ハイドロゲル又は前記セミ相互侵入網目構造ハイドロゲルが、応力分散性である、請求項1~7のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項9】
前記相互侵入網目構造ハイドロゲル又は前記セミ相互侵入網目構造ハイドロゲルが、収縮度が20~95%である、請求項1~8のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項記載の製造方法に従い得られたハイドロゲルを乾燥させる工程を含む、乾燥ゲルの製造方法。
発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、水を多く含み、かつ、機械強度に優れた、セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル又は相互侵入網目構造ハイドロゲル及びその製造方法に関する。

背景技術
高分子ゲルは、低摩擦特性や物質透過性、外的刺激に対する能動的な生物様運動特性など、固体や液体が単独では持ち得ない興味深い性質を数多く持つ。しかし、これらの特性を生かして日常生活や医療、工業の分野でゲルを用いようとする場合、ポリビニルアルコール(PVA)ゲルやポリ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)ゲルのような一部のゲルを除き、殆どが機械的強度に乏しく脆いというのが現状である。もし高い強度を持つゲル(特にハイドロゲル)ができれば、またその原理を理解し自由に機械的強度を調整できるようになれば、生活品や工業的な利用は勿論の事、ゲルの持つ物質透過性を生かした人工血管や低摩擦表面を有するゲルの人工関節軟骨への応用など、実用レベルの高機能性バイオマテリアルの開発が可能となり、高分子ゲルの利用価値が飛躍的に高まることが期待される。
そこで、本発明は、水を多く含み、形状を維持できるゲルの特徴を生かしつつ、機械的強度に優れたハイドロゲルを提供することを目的とする。

発明の開示
本発明(1)は、第一のモノマー成分を重合し架橋することにより形成された網目構造中に、第二のモノマー成分を導入し、第二のモノマー成分を重合し場合により架橋することにより得られる、セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル又は相互侵入網目構造ハイドロゲルにおいて、
第一のモノマー成分の10モル%以上が、電荷を有する不飽和モノマーであり、
第二のモノマー成分の60モル%以上が、電気的に中性である不飽和モノマーであり、
第一のモノマー成分量:第二のモノマー成分量が、モル比で1:2~1:100であり、かつ、
第二のモノマー成分を重合し架橋する場合には、第一のモノマー成分を重合し架橋する場合よりも架橋度を小さく設定する、
ことを特徴とする、セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル又は相互侵入網目構造ハイドロゲルである。
本発明(2)は、電荷を有する不飽和モノマーが、酸性基及び/又は塩基性基を有する不飽和モノマーである、前記発明(1)のハイドロゲルである。
本発明(3)は、酸性基が、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基からなる群より選択される、前記発明(2)のハイドロゲルである。
本発明(4)は、酸性基を有する不飽和モノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの塩である、前記発明(3)のハイドロゲルである。
本発明(5)は、電気的に中性である不飽和モノマーが、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、スチレン、メチルメタクリレート、フッ素含有不飽和モノマー(例えば、トリフルオロエチルアクリレート)、ヒドロキシエチルアクリレート又は酢酸ビニルである、前記発明(1)~(4)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(6)は、該ハイドロゲルが金属イオンを更に含み、かつ、第一のモノマー成分及び第二のモノマー成分の少なくとも一部が、該金属イオンと錯体を形成しうる基を有する、前記発明(1)~(5)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(7)は、第一のモノマー成分に基づく網目構造の架橋度が0.1~50mol%であり、第二のモノマー成分に基づく網目構造の架橋度が0.001~20mol%である、前記発明(1)~(6)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(8)は、含水量が10%以上である、前記発明(1)~(7)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(9)は、圧縮破断応力が1~100MPaである、前記発明(1)~(8)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(10)は、引張破断応力が0.1~100MPaである、前記発明(1)~(9)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(11)は、応力分散性である、前記発明(1)~(10)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(12)は、収縮度が20~95%である、前記発明(1)~(11)のいずれか一つのハイドロゲルである。
本発明(13)は、前記発明(1)~(12)のいずれか一つのハイドロゲルを用いた物品である。
本発明(14)は、オムツ、衛生用品、除放材、土木材料、建築材料、通信材料、土壌改質材、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ホローファイバー、人工軟骨、人工臓器、燃料電池用材料、バッテリー隔膜、対衝撃材料及びクッションから選択される、前記発明(13)の物品である。
本発明(15)は、 第一のモノマー成分(ここで、該成分の10モル%以上が、電荷を有する不飽和モノマーである)を重合し架橋することにより第一の網目構造を形成させる工程;
第一の網目構造中に第二のモノマー成分(ここで、該成分の60モル%以上が、電気的に中性である不飽和モノマーである)を導入した後、第二のモノマー成分を重合することにより、第一の網目構造中にポリマーを形成させる工程か、場合により更に架橋することにより、第一の網目構造中に第二の網目構造を形成させる工程(ここで、第二のモノマー成分を重合し架橋する場合には、第一のモノマー成分を重合し架橋する場合よりも架橋度を小さく設定する)を含む、
セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル又は相互侵入網目構造ハイドロゲル(ここで、該ハイドロゲル中の第一のモノマー成分量:第二のモノマー成分量が、モル比で1:2~1:100である)の製造方法である。
本発明(16)は、電荷を有する不飽和モノマーが、酸性基及び/又は塩基性基を有する不飽和モノマーである、前記発明(15)の製造方法である。
本発明(17)は、酸性基が、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基からなる群より選択される、前記発明(16)の製造方法である。
本発明(18)は、酸性基を有する不飽和モノマーが、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの塩である、前記発明(17)の製造方法である。
本発明(19)は、電気的に中性である不飽和モノマーが、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、スチレン、メチルメタクリレート、フッ素含有不飽和モノマー(例えば、トリフルオロエチルアクリレート)、ヒドロキシエチルアクリレート又は酢酸ビニルである、前記発明(15)~(18)のいずれか一つの製造方法である。
本発明(20)は、該ハイドロゲルが金属イオンを更に含み、かつ、第一のモノマー成分及び第二のモノマー成分の少なくとも一部が、該金属イオンと錯体を形成しうる基を有するモノマーである、前記発明(15)~(19)のいずれか一つの製造方法である。
本発明(21)は、第一のモノマー成分に基づく網目構造の架橋度が0.1~50mol%であり、第二のモノマー成分に基づく網目構造の架橋度が0.001~20mol%である、前記発明(15)~(20)のいずれか一つの製造方法である。
本発明(22)は、含水量が10%以上である、前記発明(15)~(21)のいずれか一つの製造方法である。
本発明(23)は、圧縮破断応力が1~100MPaである、前記発明(15)~(22)のいずれか一つの製造方法である。
本発明(24)は、引張破断応力が0.1~100MPaである、前記発明(15)~(23)のいずれか一つの製造方法である。
本発明(25)は、応力分散性である、前記発明(15)~(24)のいずれか一つの製造方法である。
本発明(26)は、収縮度が20~95%である、前記発明(15)~(25)のいずれか一つの製造方法である。

図面の簡単な説明
図1は、第一のモノマー成分を重合し架橋することにより形成された網目構造(第一の網目構造)と第二のモノマー成分を重合し架橋することにより形成された網目構造(第二の網目構造)が互いに網目を介して物理的に絡み合った相互侵入網目構造ハイドロゲル{ダブルネットワーク型ゲル(DNゲル)}である。尚、図中、Aは第一の網目構造、Bは第二の網目構造、1及び2は架橋点を示す。
図2は、第一の網目構造と第二のモノマー成分を重合して形成される直鎖状ポリマーが互いに網目を介して物理的に絡み合ったセミ相互侵入網目構造ハイドロゲル(DNゲル)である。尚、図中、Cは第一の網目構造、Dは直鎖状ポリマー、3は架橋点を示す。
図3は、1PAMPS4-XPAAm0.1 DNゲルにおける圧縮破断応力及び破断歪に関する、第二の網目構造を構成するモノマーの濃度依存性を示したものである。尚、横軸の第二のモノマー濃度は、重合時に使用する第二のモノマー濃度を意味し、「1PAMPS-XPAAm0.1」のXがこれに相当する。
図4は、1PAMPS4-1PAAmX DNゲルにおける圧縮破断応力に関する、第二の網目構造における架橋度依存性を示したものである。
図5は、ゲルを応力変形させた際の光弾性イメージ写真を撮るための実験系を示したものである。尚、図中、4は光源、5は偏光子、6及び8は1/4プレート、7は標本、9はアナライザー、10はCCDカメラ、11はコンピュータを示す。
図6は、応力変形させた際の、各種ゲルの応力拡散状態を示す光弾性イメージ図であり、(a)が1PAMPS4-1PAAm0.1DNゲル、(b)が1PAMPS4-1PAAm2DNゲルである。
図7は、1PAMPS4-1PAAmXDNゲル(X=0, 0.1,0.5, 1.0, 2.0mol%)を応力変形させた際の、Normalized Power(縦軸)と歪み(%)との関係を示したものである。尚、図中、「□」はX=0mol%、「×」はX=0.1mol%、「▽」はX=0.5mol%、「◇」はX=1.0mol%、「○」はX=2.0mol%の場合を示したものである。
図8は、1PAMPS4-1PAAmXDNゲル(X=0, 0.1, 0.5, 1,2mol%)を応力変形させた際の、Normalized Power(縦軸)と架橋度(mol%)との関係を示したものである。尚、図中、「□」は歪みが6.670%、「▽」は歪みが13.33%、「◇」は歪みが20.00%、「○」は歪みが26.67%の場合を示したものである。
図9は、AAm濃度の異なる各種1PAMPS4-XPAAm0.1DNゲルを応力変形させた際の、Intensity(縦軸)と歪み(%)との関係を示したものである。尚、図中、「☆」はX=0.5M、「×」はX=1M、「▽」はX=2M、「◇」はX=3M、「□」はX=5Mの場合を示したものである。

発明を実施するための最良の形態
まず、本明細書に記載された用語の定義につき説明する。
「相互侵入網目構造ハイドロゲル」とは、ベースとなる網目構造に、他の網目構造が、ゲル全体において均一に絡みついており、結果としてゲル内に複数の網目構造を形成しているようなゲルを指す。例えば、この種のゲルは、図1に示すように、複数の架橋点1を有する第一の網目構造Aと、複数の架橋点2を有する第二の網目構造Bとから構成され、これら第一の網目構造Aと第二の網目構造Bが、互いに網目を介して物理的に絡まり合っている。
「セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル」とは、ベースとなる網目構造に、直鎖状ポリマーが、ゲル全体において均一に絡みついており、結果としてゲル内に複数の網目構造を形成しているようなゲルを指す。例えば、この種のゲルは、図2に示すように、複数の架橋点3を有する第一の網目構造Cと、直鎖状ポリマーDとから構成され、これら第一の網目構造Cと直鎖状ポリマーDが、互いに網目を介して物理的に絡まり合っている。
なお、図1及び図2において、第一の網目構造A及びCを、第二の網目構造B及び直鎖状ポリマーDより太く描いたが、これは、便宜的に太さを変えて描いたものである。また、「相互侵入網目構造ハイドロゲル」及び「セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル」は、ダブルネットワーク型のみでなく、三重や四重以上の網目構造を有するゲルをも含む概念である。
「架橋度」とは、モノマーの仕込みモル濃度に対する架橋剤のモル濃度の比をパーセントで表した値をいう。なお、実際には、重合に関与しなかったモノマーや架橋に関与しなかった架橋剤も僅かにある場合があるが、この際も、本明細書におけるゲルの架橋度は、前記の通りとする。
「含水量」とは、以下の式で求められる値をいう:
含水量=水の重さ/(水の重さ+乾燥ゲルの重さ)×100(%)
尚、本明細書にいう「ハイドロゲル」とは、溶媒が水であるゲルをいうが、影響しない程度の量、水可溶性溶媒(例えばアルコール)等を含有していてもよい。
「圧縮破断応力」とは、(圧縮破断時の力/元の断面積)の式で算出され、また、「圧縮破断歪」とは、(元の長さ-圧縮破断時の長さ)/元の長さ×100%の式で算出される。これらは、以下の方法Aで測定可能である。
測定方法A:ゲルを直径9mm、厚さ5mmの円盤状に切り出し、前記ゲルを2枚の平
板プレート間に挟み、TENSILON(商標)引張試験機(ORIENTEC社製型式:
RTC-1310A)を用いて圧縮させる圧縮破断応力。圧縮速度は10%/分とする。
「引張破断応力」とは、(引張破断時の力/元の断面積)の式で算出され、また、「引張破断歪」とは、(引張破断時の長さ-元の長さ)/元の長さ×100%の式で算出される。これらは、以下の方法Bで測定可能である。
測定方法B:ゲルを長さ5cm、幅5mm、厚さ3mmの短冊状に切り出し、専用冶具(チ
ャック)を使用し、ゲルの両末端を挟み、TENSILON(商標)引張試験機(ORIENTEC
社製型式:1310A)で試験を行い、破断した時点での応力を引張破断応力σとす
る。
引張速度は10%/分とする。
「膨潤度」とは、以下の式で求められる値をいう:
膨潤度=膨潤させたゲルの重量(Ww)/乾燥ゲルの重量(WD
「収縮度」とは、純水中で平衡膨潤したゲルの重量に対する塩水中で平衡膨潤したゲ
ルの重量の比をパーセントで表した値を指し、以下の方法Cで測定された値をいう。
測定方法C:ゲルを大きさ2×2×2cmに切り出し、20℃下で、500mlの蒸留
水に入れ、1日間平衡膨潤させる。平衡膨潤後、水から取り出し、重さを天秤で
量る。そのゲルを、更に、20℃下で、0.1mol/lの塩化ナトリウム水溶液500m
lに入れ、1日浸漬し、平衡膨潤させてから取り出し、その重さを量る。
「水不溶性モノマー」とは、常温常圧下で、水100mlに1g投入したときの溶解量
が0.1g以下であるようなモノマーを指す。また、「水溶性モノマー」とは、常温
常圧下で、前記値を超えるようなモノマーを指す。
次に、本発明に係るハイドロゲルについて説明する。本発明の第一の特徴は、第一のモノマー成分の10モル%以上が、電荷を有する不飽和モノマーであり、第二のモノマー成分の60モル%以上が、電気的に中性である不飽和モノマーである点にある。即ち、このような構成を採ることにより、第一の網目構造{第一のモノマー成分を重合し架橋することにより形成された、電荷を有する基(例えば、カルボキシル基)が一定量以上存在している網目構造}中に、電気的に中性である不飽和モノマーを多量に導入することが可能となる。即ち、使用するモノマーの種類及び量並びに使用順序が非常に重要なのである。
ここで、電荷を有する不飽和モノマーとしては、好適には、酸性基(例えば、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基を)や塩基性基(例えば、アミノ基)有する不飽和モノマーを、例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの塩を挙げることができる。
また、電気的に中性である不飽和モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、スチレン、メチルメタクリレート、フッ素含有不飽和モノマー(例えば、トリフルオロエチルアクリレート)、ヒドロキシエチルアクリレート又は酢酸ビニルを挙げることができる。
第一のモノマー成分中の電荷を有する不飽和モノマーの量は、第一のモノマー成分に対し10モル%以上であり、好適には100モル%である。また、第二のモノマー成分中の電荷をしない不飽和モノマーの量は、第二のモノマー成分に対し10モル%以上であり、好適には100モル%である。
更に、本発明の第二の特徴は、ハイドロゲル中の第一のモノマー成分量:第二のモノマー成分量が、モル比で1:2~1:100(好適には1:3~1:50、より好適には1:3~1:30)である。このような構成を採ることにより、ゲルに、これまでにない機械強度等の特性を付与することができる。このような高い比での、電気的に中性である不飽和モノマーの導入は、第一のモノマー成分を重合し架橋することにより、電荷を有する基(例えば、カルボキシル基)が一定量以上存在している網目構造(第一の網目構造)を形成し、その後、電気的に中性である不飽和モノマーを導入することによりはじめて可能となる。尚、ゲル中におけるモノマー量は、各々の網目構造が1種類のモノマーより構成されている場合には、元素分析により決定する。また、2種以上の場合は、元素分析では複雑になり決定できない場合がある。このような場合は、例えば、製造の際に使用したモノマー量から、重合しなかったモノマー量を引くことにより求める。
また、本発明の第三の特徴は、第二のモノマー成分を重合し架橋する場合には、第一のモノマー成分を重合し架橋する場合よりも架橋度を小さく設定することである。即ち、第二の網目構造(第二のモノマー成分を重合し架橋することにより形成される網目構造)の架橋度を、第一の網目構造のそれよりも小さくするというものであり、その最も極端な例が、第二の網目構造の架橋度が0(即ち、第二のモノマー成分を重合するが架橋しない場合)である、セミ相互侵入網目構造ハイドロゲルの形態である。このような構成を採ることにより、ゲルに、これまでにない機械強度等の特性を付与することができる。従来は、第一の網目構造の架橋度が第二の網目構造の架橋度よりも小さいものは存在していたが、このようなゲルは機械強度に問題があった。本発明は、第一の網目構造の架橋度と第二の網目構造の架橋度の関係を逆にしただけで、機械強度を大幅に改善した点で画期的である。
具体的には、第一の網目構造を形成させるために使用する架橋剤の量と、第二の網目構造を形成させるために使用する架橋剤の量を、各々の網目構造の原料モノマーと関連づけて適宜調整する。好適には、第一の網目構造の架橋度が0.1~50mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.001~20mol%となるように、より好適には、第一の網目構造の架橋度が1~20mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.01~5mol%となるように、最も好適には、第一の網目構造の架橋度が2~10mol%であり、第二の網目構造の架橋度が0.05~1mol%となるようにする。特に、ゲルの含水量を小さくしたり(即ち、膨潤度を小さくする)、硬くする(即ち、弾性率を大きくする)には、両方の架橋度を上げるようにすればよい。
以上、本発明の特徴点を三点述べたので、以下では、その他の任意的構成要件について説明する。
まず、第一のモノマー成分に関しては、電荷を有する不飽和モノマーを10モル%以上含む限り特に限定されず、例えば、第二のモノマー成分として必須的に用いられる、電気的に中性である不飽和モノマーを用いてもよい。また、第二のモノマー成分に関しては、電気的に中性である不飽和モノマーを60モル%以上含む限り特に限定されず、例えば、第一のモノマー成分として必須的に用いられる、電荷を有する不飽和モノマーを用いてもよい。例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド(AAm)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、N-イソプロピルアクリルアミド、ビニルピリジン、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、ジメチルシロキサン、スチレン(St)、メチルメタクリレート(MMA)、トリフルオロエチルアクリレート(TFE)等を挙げることができる。更には、ジェラン、ヒアルロン酸、カラギーナン、キチン、アルギン酸などの多糖類やゼラチン、コラーゲンなどのタンパク質でもよい。尚、使用する有機モノマーは、第一の網目構造、第二の網目構造(相互侵入網目構造ハイドロゲル)及び直鎖状ポリマー(セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル)間で、同一であっても異なっていてもよい。但し、互いに異なる原料を使用すれば、より高い力学特性を持つハイドロゲルが得られる。
尚、原料である有機モノマーとして、水不溶性モノマーと水溶性モノマーの両方を用いることが好適である。水不溶性モノマーを一部に使用した際に優れた機械強度を奏する、という新規知見に基づくものである。この際、水不溶性モノマーを、第一の網目構造のためにのみ用いても、第二の網目構造(相互侵入網目構造ハイドロゲル)又は直鎖状ポリマー(セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル)のためにのみ用いても、両方のために用いてもよい。また、水不溶性モノマーと水溶性モノマーの比が、9.9:0.1~0.1:9.9とすることが好適である。特に、第一の網目構造において、水溶性モノマー:水不溶性モノマー=0:100~1:99、また、第二の網目構造又は直鎖状ポリマーにおいて、水溶性モノマー:水不溶性モノマー=0:100~10:90と設定することがより好適である。更に、第一の網目構造において、水溶性モノマー:水不溶性モノマー=0:100~1:99、また、第二の網目構造において、水溶性モノマー:水不溶性モノマー=0:100~5:95が更に好適である。尚、ゲルの含水量を減少させるためには、疎水性モノマーの含有量を増加させればよい。水不溶性モノマーとしては、例えば、フッ素含有モノマー、例えば、2,2,2-トリフルオロエチルメチルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、3-(ペルフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、フッ化ビニリデン等を挙げることができる。
更に、原料である有機モノマーとして、金属イオンと錯体を形成しうる基を有するモノマーを用い、かつ、その金属イオンをゲル中に導入することにより、ゲル中に錯体を形成させることも好適である。一般に、ゲル中の錯形成の割合、即ち金属導入率を高くすると、含水量を小さくし、かつ、機械強度を大きくすることができる。この際、金属イオンと錯体を形成しうる基を有するモノマーを、第一の網目構造のためにのみ用いても、第二の網目構造(相互侵入網目構造ハイドロゲル)又は直鎖状ポリマー(セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル)のためにのみ用いても、両方のために用いてもよい。好適な態様は、第一の網目構造において、金属イオンと錯体を形成させたものである。また、金属含有量は、0.03mol/l~1mol/lが好適であり、0.01mol/l~0.3mol/lがより好適である。また、好適には、錯体を形成しうる基を有するモノマーの含有量は、第一の網目構造を構成する全モノマー量に対して、10~100mol%、更に好適には30~100mol%である。更に、金属イオンと錯体を形成しうる基を有するモノマーの比は、好適には1:1~1:1000であり、更に好適には1:10~1:100である。金属イオンとしては、錯体を形成しうる金属イオンであれば特に限定されず、例えば、亜鉛イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、クロムイオン等を挙げることができる。また、金属イオンと錯体を形成しうる基とは、選択した金属イオンと錯体を形成しうる基を指し、例えば、金属イオンとして、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、クロム等の多価金属を選択した場合、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基を挙げることができる。また、金属イオンと錯体を形成しうる基を含有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、スチレンスルホン酸、ビニルリン酸を挙げることができる。
次に、本発明に係るハイドロゲルの物性につき説明する。
まず、このゲルの圧縮破断応力は、好適には1~100MPaであり、より好適には5~50MPaであり、最も好適には10~40MPaである。更に、このゲルの引張破断応力は、好適には0.1~100MPaであり、更に好適には0.1~50MPaであり、最も好適には0.5~5MPaである。
更に、本発明のゲルは、好適には、含水量が10%以上(より好適には50%以上、更に好適には85%以上)である。このように、ゲルに多量の水を存在させることにより、しなやか性、物質の透過性が向上するので、DDSや徐放性が要求される用途に有用である。なお、含水量の上限値は特に限定されないが、ゲルの機械強度維持等の理由から、通常は99.9%以下、好適には99%以下、より好適には95%以下である。
また、本発明のゲルは、好適には、収縮度が20~95%(更に好適には60~95%、最も好適には70~95%)である。従来のゲルは、塩水に漬けると収縮が激しいため、特に、生体材料としての用途が閉ざされていた。このような物性を有することにより、かかる用途の可能性を提供した点で、非常に有意義である。このように収縮度が小さいと、例えば、おむつに応用するときに、吸収能力が落ちないという利点がある。また、海水中でゲルを応用する際にも有効である。
次に、本発明に係るゲルの製造方法を説明する。まず、第二のモノマー成分(電気的に中性である不飽和モノマーを60モル%以上含む)及び重合開始剤(相互侵入網目構造ハイドロゲルの場合には架橋剤も)を含有する溶液を調製する。続いて、第一の網目構造を有するゲル{第一のモノマー成分(電荷を有する不飽和モノマーを10モル%以上含む)を重合・架橋することにより形成されたシングルネットワークゲル}をこの溶液に浸漬し、充分な時間をおいて、第二のモノマー成分及び重合開始剤(相互侵入網目構造ハイドロゲルの場合には架橋剤も)を前記ゲル内に拡散させる。次いで、前記溶液から前記ゲルを取り出し、このゲル中の第二のモノマー成分を重合(相互侵入網目構造ハイドロゲルの場合には架橋も)することにより、第一の網目構造の網目に絡まる第二の網目構造(相互侵入網目構造ハイドロゲルの場合)又は直鎖状ポリマー(セミ相互侵入網目構造ハイドロゲルの場合)が形成される結果、二重網目構造を有するゲルを製造することができる。更に、上記手順と同様の手法で、上記のシングルネットワーク型ゲルではなく、多重網目構造を有するゲルを用いることにより、三重以上の相互侵入網目構造ゲルも製造可能である。
尚、第一の網目構造、第二の網目構造(相互侵入網目構造ゲルの場合)及び直鎖状ポリマー(セミ相互侵入網目構造ゲルの場合)を形成させる際に使用する重合開始剤は特に限定されず、重合すべき有機モノマーに対応して種々のものが選択される。例えば、有機モノマーとしてAMPS、AAm、AAを熱重合する場合には、過硫酸カリウムなどの水溶性熱触媒、過硫酸カリウム-チオ硫酸ナトリウムなどのレドックス開始剤を用いることができ、光重合する場合には、光増感剤として2-オキソグルタル酸を用いることができる。また、有機モノマーとしてStを熱重合する場合には、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)などの有機溶媒に溶解性の熱触媒を用いることができ、光重合する場合には、光増感剤としてベンゾフェノンを使用することができる。
同じく、第一の網目構造や第二の網目構造(相互侵入網目構造ゲルの場合)を形成させる際に使用する架橋剤も特に限定されず、架橋重合すべき有機モノマーに対応して種々のものが選択される。例えば、有機モノマーとしてAMPS、AAm、AAを用いた場合には、N,N′-メチレンビスアクリルアミドを、有機モノマーとしてStを用いた場合には、エチレングリコールジメタクリレートを夫々使用することができる。
また、第一の網目構造を有するゲルを浸漬する溶液の溶媒に関しては、前記溶液に浸漬されるゲルヘの悪影響を防止し、かつ、二重網目構造(相互侵入網目構造ハイドロゲル)や直鎖状ポリマー(セミ相互侵入網目構造ハイドロゲル)を、第一の網目構造の網目に良好に絡みつける観点から、この溶液の溶媒が、第一の網目構造を有するゲル中の溶媒と同じであることが好適である。尚、最終的にゲル中に含まれる溶媒(水)に関しては、製造段階から溶媒として水を使っても、或いは、製造後に溶媒交換を行うことで水に置換してもよい。
尚、ゲル中に金属イオンを導入した態様に関しては、得られた(セミ)相互侵入網目構造ハイドロゲルを真空乾燥させた後にこの金属塩溶液に浸漬することにより行う。この操作によれば、ネットワーク間の距離を極力近づけることにより、効率よく金属イオンと錯体を形成することができる。
次に、重合・架橋条件等につき説明すると、まず、第一の網目構造を有するゲルに拡散した第一のモノマー成分の重合反応は、加熱するか、または紫外線のような光を照射するか、いずれかにより行うことができる。この重合反応は、前記ゲルの第一の網目構造を壊さない条件下でなされる。また、架橋反応は、所定濃度の架橋剤、反応開始剤を第二のモノマー成分と一緒に溶媒中に混合し、第一の網目構造を有するゲルに拡散させる。具体的には、第一の網目構造を有するゲルを、架橋剤を含有する第二のモノマー溶液に浸漬し、24時間低温下で拡散させる。なお、拡散途中で架橋してしまうことを避けるために、室温以下、4℃付近が好ましい。
最後に、本発明に係るゲルの用途につき説明する。このゲルは、強い圧縮・引張破断応力でかつ耐薬品性を示し、ゲルとしての柔軟性、物質透過性、耐衝撃性を備えているので、用途は、吸水材料、保水材料、工業材料、生体代替材料と多岐にわたる。具体的には、おむつ、衛生用品、除放剤、土木材料、建築材料、通信材料(例えば、軸受、ケーブル、その継手)、土壌改質剤、コンタクトレンズ、眼内レンズ、ホローファイバー、人工軟骨、人工関節、人工臓器(例えば、人工血管、人工皮膚)、燃料電池用材料、バッテリー隔膜、対衝撃材料及びクッションを挙げることができる。特に、吸収材料(例えば、おむつや土木材料)は、1MPa以上、コンタクトレンズや眼内レンズは、5MPa以上、人工腎臓(ホローファイバー)は、10MPa以上の強度が要求されるところ、これまで、溶媒含有量が10%以上でかかる強度を有するゲルが存在していなかったため、本発明に係るゲルの有用性は大きい。

実施例
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
実施例1
<シングルネットワーク型ゲルの作製>
面積100mm×100mm、厚さ2mmのシリコン板からカッターで外辺長80mm×80mm、幅5mmの枠を切りだし、枠の1箇所3mmの溝を空けた。このシリコン枠を2枚の100mm×100mm、厚さ3mmのガラス板に挟み、重合容器を組み立てた。
モノマーである2mol/Lの2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)水溶液25mlと、架橋剤である2mol/LのN,N′-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)水溶液1mlと、開始剤である0.1mol/Lの2-オキソグルタル酸水溶液1mlとを合わせ、水で調整して水溶液50mlを得た。この水溶液を窒素ガスを用いて脱酸素した。つづいて、この脱酸素水溶液を前記重合容器の一方のガラス板に置かれたシリコン板の開口部に流し込み、シリコン板上に他方のガラス板を重ねて前記開口部周辺をシールした後、波長365nmのUVランプ(22W,0.34A)を用いて紫外線を常温で6時間照射して重合させることにより、架橋度が4mol%のAMPSゲル(第一の網目構造)を作製した。尚、架橋度の計算は以下の通りである:
{(MBAA水溶液濃度×量)/(モノマー濃度×量)}×100=
{(2mol/L×1ml)/(2mol/L×25ml)}×100=4mol%
<ダブルネットワーク型ゲルの製造>
モノマーである5mol/Lのアクリルアミド(AAm)水溶液40mlと、架橋剤である0.2mol/LのN,N′-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)水溶液1mlと、開始剤である0.1mol/Lの2-オキソグルタル酸水溶液1mlとを合わせ、水で調整して水溶液(浸漬溶液)200mlを得た。この浸漬溶液を窒素ガスを用いて脱酸素した。
次いで、前記浸漬溶液と前記シングルネットワーク型ゲル4gをそのゲルより十分に大きな容量のシール容器に入れた。この容器を4℃の冷蔵庫に24時間設置し、前記浸漬溶液中のモノマー、架橋剤および開始剤を前記ゲルに拡散・浸透させた。この工程において、浸漬液の濃度を一様にする目的で時々容器を静かに振盪した。
次いで、前記浸漬液からゲルを取り出し、適当な大きさに裁断した後、このゲルを幅100mm×長さ100mm×厚さ3mmの2枚のガラス板の間に気泡が混入しないように挟持した。この2枚のガラス板の周囲4辺をシールした後、波長365nmのUVランプ(22W,0.34A)を用いて紫外線を常温で6時間照射した。このとき、前記ゲル中に拡散したAAmモノマーが重合してダブルネットワーク型ゲルを得た。このダブルネットワーク型ゲルの第二の網目構造の架橋度は、0.1mol%であった。尚、架橋度の計算は以下の通りである:
{(0.2mol/L×1ml)/(5mol/L×40ml)}×100=0.1mol%
得られた実施例1のAMPS-AAmのダブルネットワーク型ゲルを純水中で平衡膨潤させた。このゲルについて元素分析を行った。その結果を下記表1に示す。
JP0004381297B2_000002t.gif 前記表1から明らかなように、AMPSおよびAAmの両モノマーの総量に対して窒素が9.49%の値を示すことから、2回目の重合に用いたAAmモノマーは、平衡膨潤によってゲルの外部に出ることなくダブルネットワーク型ゲル中で架橋されていることが確認された。

実施例2
<シングルネットワーク型ゲルの作製>
モノマーである2mol/Lのアクリル酸(AA)水溶液40mlと、架橋剤である0.2mol/LのN,N′-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)水溶液4mlと、開始剤である0.1mol/Lの2-オキソグルタル酸水溶液1mlとを合わせ、水で調整して80mlの水溶液を得た。この水溶液を窒素ガスを用いて脱酸素した。つづいて、この脱酸素水溶液を、実施例1と同様な重合容器の一方のガラス板に置かれたシリコン板の開口部に流し込み、シリコン板上に他方のガラス板を重ねて前記開口部周辺をシールした後、波長365nmのUVランプ(22W,0.34A)を用いて紫外線を常温で6時間照射して重合させることにより、架橋度が1mol%のAAゲルを作製した。
<ダブルネットワーク型ゲルの製造>
モノマーである5mol/Lのアクリルアミド(AAm)水溶液20mlと、架橋剤である0.1mol/LのN,N′-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)水溶液1mlと、開始剤である0.1mol/Lの2-オキソグルタル酸水溶液1mlとを合わせ、水で調整して200mlの水溶液(浸漬溶液)を得た。この浸漬溶液を窒素ガスを用いて脱酸素した。
次いで、前記浸漬溶液と前記シングルネットワーク型ゲル4gを、そのゲルより十分に大きな容量のシール容器に入れた。この容器を4℃の冷蔵庫に24時間設置し、前記浸漬溶液中のモノマー、架橋剤および開始剤を前記ゲルに拡散・浸透させた。この工程において、浸漬液の濃度を一様にする目的で時々容器を静かに振盪した。
次いで、前記浸漬液からゲルを取り出し、適当の大きさに裁断した後、このゲルを幅100mm×長さ100mm×厚さ3mmの2枚のガラス板の間に気泡が混入しないように挟持した。この2枚のガラス板の周囲4辺をシールした後、波長365nmのUVランプ(22W,0.34A)を用いて紫外線を常温で6時間照射した。このとき、前記ゲル中に拡散したAAmモノマーが重合してダブルネットワーク型ゲルが得られた。このダブルネットワーク型ゲルの第二の網目構造の架橋度は、0.1モル%であった。

試験例1
得られた実施例1及び2のダブルネットワーク型ゲルについて、また、比較のために、実施例1及び2で作成したシングルネットワーク型ゲルについても、膨潤度、圧縮破断応力および圧縮破断歪を測定した。結果を、表2(シングルネットワーク型ゲル)及び表3(ダブルネットワーク型ゲル)に示す。
JP0004381297B2_000003t.gifJP0004381297B2_000004t.gif 前記表2および表3から明らかなように、実施例1のAMPS-AAmのダブルネットワーク型ゲルは、AMPSシングルネットワーク型ゲルに比べて圧縮破断応力が高いことがわかる。さらに、実施例2のAA-AAmダブルネットワーク型ゲルは、AAmシングルネットワーク型ゲルに比べて著しく高い圧縮破断応力を有することがわかる。

実施例3
実施例1と同様の方法により、但し、第一の網目構造を構成するモノマー及び第二の網目構造を構成するモノマーの比を変え、また、第一の網目構造と第二の網目構造の架橋度を変えたものにつき、機械強度を測定した。なお、以下では、各ダブルネットワーク型ゲルの名称につき、1st Monomer Conc.(M)・Monomer Name・Degree of Crosslinking (mol%)- 2nd Monomer Conc.(M)・Monomer Name・Degree of Crosslinking (mol%)の順で簡略化して表記する。例えば、第一の網目構造が、モノマー濃度1M、架橋度4mol%のPAMPSであり、第二の網目構造が、モノマー濃度1M、架橋度0.1mol%のPAAmであるダブルネットワーク型ゲルは、1PAMPS4-1PAAm0.1と表現する。尚、ここでのモノマー濃度は、製造時の濃度であり、最終的なゲル中でのモノマー量とは異なることに留意すべきである。即ち、例えば、第一のモノマー濃度及び第二のモノマー濃度が両方とも1Mである場合に、最終的に得られるハイドロゲル中でのこれらのモル比は1:1ではない。それは、第一の網目構造は電荷を持っているために、中性の第二のモノマー水溶液中で大きく膨潤するためと理解される(本実施例においては、最終的なゲル中でのモノマー量はAMPS:AAm=1:10である)。結果を表4、図3及び図4に示す。表4及び図3より、PAMPS-PAAm系のダブルネットワーク型ゲルに関し、第一の網目構造におけるモノマーと第二の網目構造のモノマーの組成比を変えると、第一の網目構造(PAMPS)におけるモノマー:第二の網目構造(PAAm)のモノマー=1:20のときが最も破断強度が高いことが分かる。また、図4より、第二の網目構造(PAAm)の架橋度によっても強度が大きく変わり、架橋度が0.1mol%の時に最も高い強度を示すことが分かる。
JP0004381297B2_000005t.gif実施例4
第一網目:AMPSとTFEA(トリフルオロエチルアクリレート)を1:5の割合でDMSO中3.0ml/lの濃度となるように混合し、架橋剤MBAAを1mol%、重合開始剤α-ケトグルタル酸を0.2mol%を加えて、UV重合にて合成した。
第二網目:上記ゲル10mlを、DMSO中のTFEA(トリフルオロエチルアクリレート)溶液(濃度3.0ml/l、MBAA0.1mol%、α-ケトグルタル酸0.2mol%)200mlに浸漬して、約2日間静置し、UV重合にて合成した。このようにして得られたゲルの物性を表9に示す。
JP0004381297B2_000006t.gif実施例5
実施例3で得られた1PAMPS4-1PAAm0.1のダブルネットワーク型ゲル中に各種金属イオンを導入し、機械強度を測定した。なお、金属イオンの導入に際しては、まず、純粋で平衡膨潤させたダブルネットワーク型ゲルを適当な大きさに切り出し、それを一度真空乾燥させた。そして、平衡膨潤時のゲル体積に対して20倍量の各種金属塩水溶液を調整し、ゲルを約1週間浸漬した。なお、水溶液の濃度は、ZnSOに関しては、0.01M、0.1M、1Mの三種、FeClに関しては、0.01M、0.1M、0.3Mの三種を準備した。結果を表6に示す。
JP0004381297B2_000007t.gif試験例2(応力分散性試験)
上記と同様の手法に従い、各種のPAMPS-PAAmのダブルネットワーク型ハイドロゲルを調製した。これらハイドロゲルを60×30×10mmに裁断した。
今回使用した試験系を図5に示す。光源4としてHe-Neレーザー(model 127, Spectra-Physics Laser, Inc.)を用いた。偏光子5の軸を垂直に配し、アナライザー9の軸を平行に配した。二枚の1/4プレート6,8の速い軸を、偏光子5及びアナライザー9の軸に対し、夫々、π/4及び-π/4ラジアンに設定した。パーソナルコンピュータ11と接続しているcooledCCDカメラ(C4742-95, Hamamatsu Co., Japan)で、光弾性イメージを記録した(全イメージエリアは、1280×1024ピクセル含む)。
このCCDカメラにより撮影された応力分散の程度を示すイメージ図を図6に示す。変色域(図面中白く見える部分)は、応力が集中していることを意味する。これから分かるように、PAMPS-PAAmハイドロゲル(PAAmの架橋度が0.1モル%)のイメージ(a)は、PAMPS-PAAmハイドロゲル(PAAmの架橋度が2モル%)のイメージ(b)と比較してその変色域が少ないことが見て取れる。このように、本発明に係る力学強度を最適化されているハイドロゲルは、応力分散性に優れていることが分かる。
また、PAAmの架橋度を変えて(0.0モル%,0.1モル%,0.5モル%,1.0モル%,2.0モル%)、Normalized Powerと歪みについて試験した。その結果を図7に示す。図7より、傾向として、第二の網目構造の架橋度が小さい程、同一歪みで応力がうまく分散し、Normalized Powerが少ないことが分かる。また、Normalized Powerと架橋度との関係を示したのが図8であるが、この図より、どの歪みについても、架橋度が0.1モル%付近でNormalized Powerが最小になることが分かる。
最後に、架橋度を固定しつつ(0.1モル%)、AAmの濃度を変えて(0.5M,1M,2M,3M,5M)、Intensityと歪みについて試験を行った。その結果を図9に示す。この図より、AAmの濃度が高い程、同一歪みにおけるIntensityが高い傾向を示すこと、並びに、AAmの濃度が1MのときIntensityが最も低いことが分かる。即ち、力学強度が最適化されたDNゲルは、最も応力を分散する能力を持つ。
【図面の簡単な説明】
図1は、第一のモノマー成分を重合し架橋することにより形成された網目構造(第一の網目構造)と第二のモノマー成分を重合し架橋することにより形成された網目構造(第二の網目構造)が互いに網目を介して物理的に絡み合った相互侵入網目構造ハイドロゲル{ダブルネットワーク型ゲル(DNゲル)}である。尚、図中、Aは第一の網目構造、Bは第二の網目構造、1及び2は架橋点を示す。
図2は、第一の網目構造と第二のモノマー成分を重合して形成される直鎖状ポリマーが互いに網目を介して物理的に絡み合ったセミ相互侵入網目構造ハイドロゲル(DNゲル)である。尚、図中、Cは第一の網目構造、Dは直鎖状ポリマー、3は架橋点を示す。
図3は、1PAMPS4-XPAAm0.1DNゲルにおける圧縮破断応力及び破断歪に関する、第二の網目構造を構成するモノマーの濃度依存性を示したものである。尚、横軸の第二のモノマー濃度は、重合時に使用する第二のモノマー濃度を意味し、「1PAMPS-XPAAm0.1」のXがこれに相当する。
図4は、1PAMPS4-1PAAmXDNゲルにおける圧縮破断応力に関する、第二の網目構造における架橋度依存性を示したものである。
図5は、ゲルを応力変形させた際の光弾性イメージ写真を撮るための実験系を示したものである。尚、図中、4は光源、5は偏光子、6及び8は1/4プレート、7は標本、9はアナライザー、10はCCDカメラ、11はコンピュータを示す。
図6は、応力変形させた際の、各種ゲルの応力拡散状態を示す光弾性イメージ図であり、(a)が1PAMPS4-1PAAm0.1DNゲル、(b)が1PAMPS4-1PAAm2DNゲルである。
図7は、1PAMPS4-1PAAmXDNゲル(X=0,0.1,0.5,1.0,2.0mol%)を応力変形させた際の、Normalized Power(縦軸)と歪み(%)との関係を示したものである。尚、図中、「□」はX=0mol%、「×」はX=0.1mol%、「▽」はX=0.5mol%、「◇」はX=1.0mol%、「○」はX=2.0mol%の場合を示したものである。
図8は、1PAMPS4-1PAAmXDNゲル(X=0,0.1,0.5,1,2mol%)を応力変形させた際の、Normalized Power(縦軸)と架橋度(mol%)との関係を示したものである。尚、図中、「□」は歪みが6.670%、「▽」は歪みが13.33%、「◇」は歪みが20.00%、「○」は歪みが26.67%の場合を示したものである。
図9は、AAm濃度の異なる各種1PAMPS4-XPAAm0.1DNゲルを応力変形させた際の、Intensity(縦軸)と歪み(%)との関係を示したものである。尚、図中、「☆」はX=0.5M、「×」はX=1M、「▽」はX=2M、「◇」はX=3M、「□」はX=5Mの場合を示したものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
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【図8】
6
【図9】
7
【図6】
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