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明細書 :ポータブルな液体クロマトグラフ及び液体クロマトグラフィー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5935696号 (P5935696)
登録日 平成28年5月20日(2016.5.20)
発行日 平成28年6月15日(2016.6.15)
発明の名称または考案の名称 ポータブルな液体クロマトグラフ及び液体クロマトグラフィー
国際特許分類 G01N  30/32        (2006.01)
G01N  30/64        (2006.01)
FI G01N 30/32 C
G01N 30/32 A
G01N 30/64 C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2012-545690 (P2012-545690)
出願日 平成23年11月15日(2011.11.15)
国際出願番号 PCT/JP2011/076297
国際公開番号 WO2012/070431
国際公開日 平成24年5月31日(2012.5.31)
優先権出願番号 2010260192
優先日 平成22年11月22日(2010.11.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年10月20日(2014.10.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】石田 晃彦
【氏名】柳澤 一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100113435、【弁理士】、【氏名又は名称】黒木 義樹
【識別番号】100161425、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 鉄平
審査官 【審査官】赤坂 祐樹
参考文献・文献 特開2006-311796(JP,A)
特開2010-085146(JP,A)
特開2010-242764(JP,A)
特表2003-517591(JP,A)
特開2010-94019(JP,A)
米国特許出願公開第2006/0147344(US,A1)
調査した分野 G01N 30/00-30/96
H02K 44/00-44/04
F04B 43/00-43/14
特許請求の範囲 【請求項1】
無機イオン又は溶解性有機化合物を目的物質として含む試料液を分析する液体クロマトグラフであって、
移動相溶媒を搬送するための電気浸透流ポンプと、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、内部に充填剤を保持した分離カラムと、
前記分離カラムの下流側に配置され、前記分離カラムから出力された目的物質を分析する検出器と、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、前記電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された前記移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された前記移動相溶媒の流体圧力を調整する圧力調整機構と、
を備え、
前記圧力調整機構は、前記電気浸透流ポンプの起動前又は定格流量に達するまでの前記電気浸透流ポンプ起動中に流体圧力を調整する液体クロマトグラフ。
【請求項2】
無機イオン又は溶解性有機化合物を目的物質として含む試料液を分析する液体クロマトグラフであって、
移動相溶媒を搬送するための電気浸透流ポンプと、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、内部に充填剤を保持した分離カラムと、
前記分離カラムの下流側に配置され、前記分離カラムから出力された目的物質を分析する検出器と、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、前記電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された前記移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された前記移動相溶媒の流体圧力を調整する圧力調整機構と、
を備え、
前記圧力調整機構は、前記リザーバの内部容積又は前記流路の内部容積を減少させることで加圧する液体クロマトグラフ。
【請求項3】
無機イオン又は溶解性有機化合物を目的物質として含む試料液を分析する液体クロマトグラフであって、
移動相溶媒を搬送するための電気浸透流ポンプと、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、内部に充填剤を保持した分離カラムと、
前記分離カラムの下流側に配置され、前記分離カラムから出力された目的物質を分析する検出器と、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、前記電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された前記移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された前記移動相溶媒の流体圧力を調整する圧力調整機構と、
を備え、
前記圧力調整機構は、
前記リザーバ又は前記流路に設けられ、内部まで貫通されたネジ穴と、
前記ネジ穴に挿入され、前記リザーバの内部又は流路内部へ突出するネジと、
を備える液体クロマトグラフ。
【請求項4】
無機イオン又は溶解性有機化合物を目的物質として含む試料液を分析する液体クロマトグラフであって、
移動相溶媒を搬送するための電気浸透流ポンプと、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、内部に充填剤を保持した分離カラムと、
前記分離カラムの下流側に配置され、前記分離カラムから出力された目的物質を分析する検出器と、
前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、前記電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された前記移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された前記移動相溶媒の流体圧力を調整する圧力調整機構と、
を備え、
前記電気浸透流ポンプ、前記リザーバ及び前記圧力調整機構が、ポンプモジュールとして一体化されている液体クロマトグラフ。
【請求項5】
前記圧力調整機構は、流体圧力を上昇させるように調整する請求項1~4の何れか一項に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項6】
前記電気浸透流ポンプの電源となるバッテリを備える請求項1~5の何れか一項に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項7】
前記分離カラムから出力された目的物質を流通させるフローセルを備え、
前記フローセル及び前記検出器が、前記分離カラムが内部に形成された基板に着脱可能に取り付けられている請求項1~6の何れか一項に記載の液体クロマトグラフ。
【請求項8】
無機イオン又は溶解性有機化合物を目的物質として含む試料液を電気浸透流ポンプにより分離カラムへ搬送して分析する液体クロマトグラフィーであって、
前記電気浸透流ポンプの起動前又は定格流量に達するまでの前記電気浸透流ポンプ起動中に、前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、前記電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された前記移動相溶媒の流体圧力を調整する圧力調整ステップを備える液体クロマトグラフィー。
【請求項9】
前記圧力調整ステップは、前記リザーバの内部容積又は前記流路の内部容積を減少させることで加圧する請求項8に記載の液体クロマトグラフィー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ及び液体クロマトグラフィーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体クロマトグラフ(LC装置)として、測定対象の目的物質を含む移動相溶媒を搬送するポンプを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のLC装置は、送液するポンプ、ポンプの出口側に接続され分析試料(試料液)を移動相溶媒へ混入させる注入部、注入部に接続され試料液中の目的物質を分離するための充填剤を含む分離カラム、及び目的物質を検出するための検出器を備えている。ポンプによって送り出された移動相溶媒は、注入部を経由し、目的物質を含んだ試料液として分離カラムへ供給され、検出器によって目的物質に関する特性が検出される。
【0003】
また、送液するポンプとして、電気浸透流ポンプ(EOポンプ)が知られている(例えば、特許文献2,3参照)。特許文献2,3記載のEOポンプは、搬送対象の液体を貯留するリザーバ、リザーバの出口側に取り付けられ液体を透過可能な電気浸透材及び電極を備えている。電気浸透材に対して電圧が印加されると、電気浸透材が負に帯電するとともに電気浸透材に浸透した液体が局所的に正に帯電するため、電界方向に電気浸透流が発生し、リザーバ内の液体がリザーバ外部へ搬出される。このEOポンプは、マイクロ流体チップ内へ液体を供給するために好適に採用される。また、特許文献2,3記載のEOポンプは、低電圧で駆動するものである。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-275640号公報
【特許文献2】特開2008-074677号公報
【特許文献3】特開2006-022807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生活の安全又は環境保全の観点から、得られた情報を迅速に現場にフィードバックできる現場分析への社会的ニーズは高まっている。すなわち、実験室又は研究室での使用を目的とした大型分析機器ではなく、現場で分析することを目的とした小型で軽量のモバイル型分析装置が望まれている。小型分析機器の用途は、環境モニター、食品管理、臨床検査、プラント管理と多岐にわたっており、モバイル型分析機器の理想形は多用途汎用型とされている。このような多用途汎用型の分析機器として、特許文献1記載のLC装置又は高速液体クロマトグラフ(HPLC装置)が挙げられる。
【0006】
ここで、特許文献1記載のLC装置にEOポンプを採用することで小型化を図ることが考えられる。しかしながら、従来のEOポンプにあっては、駆動電圧が高いため家庭用電源等から電力を得て駆動せざるを得ず、分析機器のモバイル化を実現するためには、バッテリで動作可能な程度までEOポンプの消費電力を抑える必要がある。仮に、特許文献2,3記載の低電圧で駆動するEOポンプを採用した場合であっても、バッテリを用いて好適に駆動させるためには、消費電力に関して改善の余地がある。
【0007】
当技術分野においては、EOポンプの消費電力を抑制することができる液体クロマトグラフ及び液体クロマトグラフィーが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、EOポンプの下流側に配置され移動相溶媒を貯留するリザーバ又はEOポンプの下流側の流路において、移動相溶媒を導入するときに除去しきれないエアバブル又は内部構造の緩みが存在していることが原因で、測定に必要な圧力まで移動相溶媒の圧力を高めるための余分なポンプ駆動を必要としていることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の一側面に係る液体クロマトグラフは、無機イオンまたは溶解性有機化合物を目的物質として含む試料液を分析する液体クロマトグラフである。この液体クロマトグラフは、移動相溶媒を搬送するための電気浸透流ポンプと、前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、内部に充填剤を保持した分離カラムと、前記分離カラムの下流側に配置され、前記分離カラムから出力された目的物質を分析する検出器と、前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、前記電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された前記移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された前記移動相溶媒の流体圧力を調整する圧力調整機構と、を備える。
【0010】
この液体クロマトグラフでは、電気浸透流ポンプの下流側に配置された圧力調整機構により、電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された移動相溶媒の流体圧力が調整される。このように、電気浸透流ポンプとは独立に圧力調整機構を備えることで、電気浸透流ポンプが液送以外の目的で駆動することを回避するために電気浸透流ポンプの下流側の移動相溶媒の流体圧力を調整することができる。このため、電気浸透流ポンプに余分な負荷を与えることを回避することが可能となるので、電気浸透流ポンプの消費電力を抑制することができる。
【0011】
一実施形態では、前記圧力調整機構は、流体圧力を上昇させるように調整してもよい。さらに、一実施形態では、前記圧力調整機構は、前記電気浸透流ポンプの起動前又は定格流量に達するまでの前記電気浸透流ポンプ起動中に流体圧力を調整してもよい。このように構成することで、リザーバ又は電気浸透流ポンプの下流側の流路において、除去困難なエアバブル又は内部構造の緩みが与える影響を小さくすることができる。
【0012】
一実施形態では、前記圧力調整機構は、前記リザーバの内部容積又は前記流路の内部容積を減少させることで加圧してもよい。このように構成することで、簡易な構成で加圧調整をすることができる。
【0013】
一実施形態では、前記圧力調整機構は、前記リザーバ又は前記流路に設けられ、内部まで貫通されたネジ穴と、前記ネジ穴に挿入され、前記リザーバの内部又は流路内部へ突出するネジと、を備えて構成されてもよい。このように構成することで、より一層簡易な構成で加圧調整をすることができる。
【0014】
一実施形態では、前記電気浸透流ポンプ、前記リザーバ及び前記圧力調整機構が、ポンプモジュールとして一体化されていてもよい。このように構成することで、ポンプモジュールのみ交換可能であるため、汎用性に優れている。
【0015】
一実施形態では、前記電気浸透流ポンプの電源となるバッテリを備えていてもよい。このように構成することで、電源の場所に関わらず分析することができる。
【0016】
さらに、一実施形態では、前記分離カラムから出力された目的物質を流通させるフローセルを備え、前記フローセル及び前記検出器が、前記分離カラムが内部に形成された基板に着脱可能に取り付けられていてもよい。このように構成することで、同一の分離カラムを用いて異なる検出器を採用することができるので、汎用性に優れているとともに選択的でかつ多角的な分析が可能となる。
【0017】
また、本発明の他の側面に係る液体クロマトグラフィーは、測定対象の目的物質を含む試料液を電気浸透流ポンプにより分離カラムへ搬送して分析する液体クロマトグラフィーである。この液体クロマトグラフィーは、前記電気浸透流ポンプの起動前又は定格流量に達するまでの前記電気浸透流ポンプ起動中に、前記電気浸透流ポンプの下流側に配置され、前記電気浸透流ポンプの下流側に設けられたリザーバに貯留された移動相溶媒の流体圧力又は流路に貯留された前記移動相溶媒の流体圧力を調整する圧力調整ステップを備える。
【0018】
この液体クロマトグラフィーでは、電気浸透流ポンプの起動前に圧力調整ステップが実行される。このため、電気浸透流ポンプが一定流量に速やかに達し,安定して送液するまでの消費電力を削減するために電気浸透流ポンプの下流側の移動相溶媒の流体圧力を調整することができる。
【0019】
一実施形態では、前記圧力調整ステップは、前記リザーバの内部容積又は前記流路の内部容積を減少させることで加圧してもよい。このように構成することで、簡易な構成で加圧調整をすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の種々の側面及び実施形態によれば、液体クロマトグラフに採用されたEOポンプの消費電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る液体クロマトグラフを示す構成概要図である。
【図2】図1に示す液体クロマトグラフの送液系系統構成を示す概要図である。
【図3】図1の分離カラムの平面図である。
【図4】図3に示す分離カラムのIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図1に示す液体クロマトグラフの一部断面図である。
【図6】図1のEOポンプモジュールの断面図である。(a)は、駆動液を駆動させる前の状態、(b)は、駆動液を駆動させた状態を示す。
【図7】従来のEOポンプモジュールの作用効果を説明する概要図である。(a)は、駆動液を駆動させる前の状態、(b)は、駆動液を駆動させた状態、(c)は、駆動液をさらに駆動させた状態を示す。
【図8】図1のEOポンプモジュールの作用効果を説明する概要図である。(a)は、駆動液を駆動させる前の状態、(b)は、駆動液を駆動させる前に挿入部材を挿入した状態、(c)は、挿入部材を挿入した状態で駆動液を駆動させた状態を示す。
【図9】図1及び従来のEOポンプモジュールの流量を時系列で示すグラフである。
【図10】第2実施形態に係る液体クロマトグラフの一部断面図である。
【図11】実施例に係るEOポンプモジュールの流速を時系列で示すグラフである。(a)は、ポンプ内蔵の流量センサによる検出量であり、(b)は、EOポンプモジュールとインジェクタとの間に配置した流量センサによる検出量である。
【図12】実施例に係る液体クロマトグラフの分析結果を示すグラフである。(a)はカテキン類の検出結果、(b)はフェノール類の検出結果、(c)は、カテコールアミンの検出結果、(d)はアミノ酸の検出結果である。
【図13】実施例及び比較例に係る液体クロマトグラフのポンプモジュールの流量を時系列で示すグラフである。(a)は、比較例1の流速の時間依存性を示し、(b)は、実施例3の流速の時間依存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

【0023】
(第1実施形態)
最初に、本実施形態の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る液体クロマトグラフ(LC装置)の構成図である。本実施形態に係るLC装置は、例えば、化学分析全般、工程管理、環境モニタリング、医療診断、創薬スクリーニング、又はマイクロリアクターとの連携等に好適に採用されるものであって、特にフィールドにおける分析において携帯型(可搬型)のLC装置として採用されるものである。

【0024】
図1に示すように、本実施形態のLC装置1は、液送可能な電気浸透流ポンプモジュール(EOポンプモジュール)2を備えている。EOポンプモジュール2は、制御部11に接続されており、制御部11からの信号で駆動可能に構成されている。制御部11は、バッテリ12に接続されており、バッテリ12を電源として駆動可能に構成されている。制御部11は、例えば入力インターフェースに接続されており、手動でEOポンプ21の駆動、停止や制御態様を操作可能に構成されている。

【0025】
EOポンプモジュール2は、第1のリザーバ20、電気浸透流ポンプ(EOポンプ)21、第2のリザーバ22及び圧力調整機構80を備えている。第1のリザーバ20は、EOポンプ21の入口側に接続されており、EOポンプ21により駆動される駆動液を貯留する機能を有している。EOポンプ21は、電界により液送するポンプであって、例えば、液体と接触した際に表面が帯電する誘電体の多孔質材料からなる電気浸透材と、液送方向に印加可能な電極とを備えている。また、第2のリザーバ22は、EOポンプ21の出口側に接続され、移動相溶媒を貯留する機能を備えている。移動相溶媒は、EOポンプ21の下流側の液体である。圧力調整機構80は、第2のリザーバ22に設けられており、第2のリザーバ22内に貯留された移動相溶媒の流体圧力を調整する機能を有している。なお、圧力調整機構80の詳細は後述する。

【0026】
また、EOポンプモジュール2は、インジェクタ3を介してLC用のチップ4に接続されている。インジェクタ3は、EOポンプモジュール2により供給された移動相溶媒をチップ4へ供給する機能を有している。なお、インジェクタ3からチップ4へ供給される目的物質を含む液体を、以降では「試料液」と称する。すなわち、試料液は、チップ4へ供給される直前の目的物質を含む液体のことを意味する。また、目的物質とは、ここでは無機イオン又は溶解性有機化合物である。

【0027】
チップ4は、微小流体チップデバイスであって、試料液中の目的物質を分離するための充填剤を含む分離カラム5、目的物質の分析のためのフローセル6及び検出器7を備えている。分離カラム5は、インジェクタ3に接続されており、インジェクタ3により試料液が注入可能に構成されている。また、分離カラム5は、その内部に目的物質を含む移動相溶媒を流通させる際に、充填剤によって目的物質を分離させて流通させる機能を有している。フローセル6は、分離カラム5の出口側に接続されている。また、フローセル6は、分離カラム5により処理された目的物質を流通させる流路を画成する。検出器7は、フローセル6により画成された流路を流通する目的物質に対して、電圧を印加することで得られる特性に基づいて、試料液内に含まれる物質を検出する機能を有している。なお、分析後の目的物質を含む移動相溶媒は廃液として放出される。

【0028】
次に、LC装置1の各構成要素について詳細を説明する。図2は、LC装置1の送液系系統構成を示す概要図である。図2は、EOポンプモジュール2とインジェクタ3との間の送液系系統構成を示す概要図である。なお、本実施形態に係るLC装置1は、EOポンプモジュール2を複数備えてもよいため、ここでは図1に示すEOポンプモジュール2を2つ備える場合を説明する。

【0029】
図2に示すように、LC装置1の送液系系統は、EOポンプモジュール2a,2b、2方弁9a,9b及び4方弁10を備えている。EOポンプモジュール2aは、2方弁9a、4方弁10を介してインジェクタ3へ接続される。同様に、EOポンプモジュール2bは、2方弁9b、4方弁10を介してインジェクタ3へ接続される。すなわち、EOポンプモジュール2a,2bは、並列にインジェクタ3へ接続されている。

【0030】
EOポンプモジュール2a,2bと2方弁9a,9bとの間には、流量センサ8a,8bが配置されている。制御部11は、流量センサ8a,8bに接続されており、流量センサ8a,8bにより検出された流量を取得可能に構成されている。また、制御部11は、バッテリ12、EOポンプモジュール2a,2bと接続されており、バッテリ12を電源としてEOポンプモジュール2a,2bに電圧を印加する機能を有している。すなわち、制御部11は、流量センサ8a,8bにより検出された流量に基づいて、PID制御やフィードバック制御可能に構成されている。なお、制御部11は、2方弁9a,9b及び4方弁10の開閉を制御可能に構成されていてもよい。以上の構成により、ポンプモジュール2a,2bの何れか一方から選択的に移動相溶媒がインジェクタ3へ供給され、あるいは、ポンプモジュール2a,2bの双方から移動相溶媒がインジェクタ3へ供給される。

【0031】
次に、図3、図4を用いて分離カラム5の詳細を説明する。図3,図4は、分離カラム5を説明する平面図及び断面図である。図3,4に示すように、矩形板状の基板40の内部には、基板40の一端部から厚さ方向と直交する方向へ延びる円形中空の分離カラム5が形成されている。分離カラム5の先端側(すなわち、基板40の一端部側)には、インジェクタ3と接続する入口5aが形成されている。一方、分離カラム5の末端側には、厚さ方向に延び基板40の一方の主面側の出口41に連通するフリットが設けられている。フリットの径は、分離カラム5の径よりも小さくされている。インジェクタ3により入口5aから供給された移動相溶媒は、分離カラム5を通過し、フリットを通って出口41から出力される。なお、基板40は、例えば、主面が60mm×50mmの矩形であり、その厚さが1.7mmである。分離カラム5は、例えば、断面が直径0.8mmの円形であって、その長さが30mmである。出口41は、例えば、断面が0.1~0.2mmとされる。

【0032】
図5は、インジェクタ3より下流側の構成を詳細に説明する概要図である。EOポンプモジュール2は、チューブ50によりインジェクタ3に接続されている。また、インジェクタ3は、チューブ51により基板40の分離カラム5に接続されている。チューブ51の材料として、例えばPEEK(Poly Ether Ether Ketone)が用いられる。

【0033】
分離カラム5には、充填剤70が保持されている。充填剤70は、種類に限定されず、逆相クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーに用いられる充填剤であれば、単体あるいは組み合わせて採用可能である。また、充填剤70を分離カラム内に保持するために、分離カラム5の末端側であって、フリットと連通された部分に、グラスウール52が配置されている。なお、フリット部分を多孔フィルターとしてもよい。

【0034】
フローセル6は、基板40に着脱可能に取り付けられており、基板40の主面との間に目的物質を含む移動相溶媒を流通可能な流路を画成している。流路を画成する基板40の主面には、図1の検出器7に接続される電極53が配置されている。目的物質は、分離カラム5の出口41から流路に供給され、電極53を介して電気化学検出され、分析後は廃液としてチューブ54から廃棄される。

【0035】
次に、EOポンプモジュール2の詳細を説明する。図6は、EOポンプモジュール2を説明するための概要図であり、図6(a)は駆動前のEOポンプモジュール2、図6(b)は駆動中のEOポンプモジュール2を示している。

【0036】
図6(a)に示すように、EOポンプモジュール2は、その内部が固定板23により2つの空間であるリザーバ20,22に分離された筐体を備えており、いわゆる間接駆動型のEOポンプモジュールとされている。第1のリザーバ20には、駆動液が貯留されており、第2のリザーバ22には、移動相溶媒が貯留されている。また、固定板23には、EOポンプ21が設けられており、第1のリザーバ20内の駆動液を、第2のリザーバ22側へ搬送可能に構成されている。また、固定板23の第2のリザーバ22側には、駆動液による圧力を移動相溶媒に伝達するとともに、駆動液が移動相溶媒に混入しないように機能する柔軟性のある可変膜24が設けられている。また、第2のリザーバ22の側壁には、内部へ連通する貫通孔22aが形成されており、移動相溶媒の流体圧力を調整するための挿入部材26が取り付けられている。すなわち、貫通孔22a及び挿入部材26が圧力調整機構80として機能する。例えば、貫通孔22aとしてネジ穴が採用され、挿入部材26として当該ネジ穴に螺号するネジが採用される。挿入部材26は、第2のリザーバ22に移動相溶媒を貯留させた後、EOポンプ21の駆動前に、第2のリザーバ22内部へ挿入される。これにより、第2のリザーバ22の内部容積が減少され、移動相溶媒が加圧された状態となる。このように、圧力調整機構80は、流体圧力を上昇させるように調整する機能を有している。圧力調整機構80により加圧された状態で、図6(b)に示すように、EOポンプ21を駆動すると、駆動液が第1のリザーバ20から第2のリザーバ22内部へ供給されて、可変膜24が加圧されて変形する。そして、加圧された移動相溶媒は、出力ノズル25から放出される。

【0037】
次に、本実施形態に係るLC装置1の動作について簡単に説明する。EOポンプモジュール2の第1のリザーバ20及び第2のリザーバ22に駆動液、移動相溶媒がそれぞれ注入されているものとする。EOポンプ21の起動前に、圧力調整機構80がEOポンプ21の下流側に設けられた第2のリザーバ22に貯留された移動相溶媒の流体圧力を調整する(圧力調整ステップ)。例えば、挿入部材26が第2のリザーバ22内部へ突出することにより、第2のリザーバ22の内部容積を減少させることで加圧する。その後、EOポンプ21が起動して送液を行う。なお、この一連の動作は、手動で行ってもよいし、EOポンプ21の起動をトリガーとして自動で行ってもよい。

【0038】
次に、本実施形態に係るLC装置1の作用効果について説明する。まず、本実施形態に係るLC装置1の作用効果と対比するために、従来のEOポンプモジュールについて概説する。従来のEOポンプモジュールは、本実施形態に示す圧力調整機構を有していないため、EOポンプ21の消費電力が大きい傾向となる。図7は、従来のEOポンプモジュールの作用効果を説明する概要図である。図7(a)に示すように、第2のリザーバ22に移動相溶媒を注入した場合、完全に第2のリザーバ22内部を移動相溶媒で満たすことは困難であり、除去困難なエアバブルAが残存することがある。このようなエアバブルAは、図7(b)に示すように、EOポンプ21を駆動させると第2のリザーバ22の内圧上昇に伴って徐々に小さく潰されていく。そして、図7(c)に示すように、ある程度までエアバブルAが小さくなると、移動相溶媒が出力ノズル25から放出される。このように、EOポンプ21の下流側にエアバブルAが存在するために、EOポンプ21は、エアバブルAを潰すための駆動をする必要があるので、結果として消費電力が大きくなる。

【0039】
これに対して、本実施形態に係るLC装置1のEOポンプモジュール2は、図8に示すように、EOポンプ21の下流側に圧力調整機構を備えている。このため、図8(a)に示すように、第2のリザーバ22内部にエアバブルAが残存している場合であっても、図8(b)に示すように、挿入部材26を第2のリザーバ22内部へ挿入し移動相溶媒を加圧することで、エアバブルAを潰すことができる。そして、図8(c)に示すように、この状態でEOポンプ21を駆動すると、移動相溶媒が出力ノズル25から放出される。このように、EOポンプ21はエアバブルAを潰すための余分な駆動をせずに液送することができるので、結果として消費電力を抑えることができる。

【0040】
図9は、本実施形態に係るLC装置1のEOポンプモジュール2及び従来のEOポンプモジュールの流量を時系列で示すグラフである。図9のG2で示すように、従来のEOポンプモジュールであれば、起動から目標流量(定格流量)を安定供給することができるまでに時間t2を要する。これは、上述したエアバブルAや内部構造のゆるみ等により、EOポンプ21が駆動して圧力を加える必要があるためである。例えば、所定の流量を得るために、第2のリザーバ22を10気圧に加圧する必要があるとする。このとき、1mLのエアバブルAが残存しているとすると、EOポンプ21で駆動液を流し込み、10気圧まで加圧するには、少なくともバブルを1/10に収縮させるまで駆動液を流し込む必要がある。このため900μLの駆動液を流す必要がある。EOポンプ21の流量を最大50μL/minとすると、圧力を上昇させるだけで最低18分必要である。このような初期駆動によりEOポンプ21は多くの電力を消費するため、バッテリ駆動は困難であり家庭用電源等を用いている。このため、従来のEOポンプモジュールをLC装置に採用すると、可搬性を実現させることが困難である。

【0041】
一方、本実施形態に係るLC装置1のEOポンプモジュール2によれば、図9のG1で示すように、時間t2よりも短い時間t1で起動から目標流量を安定供給することができる。例えば、起動時間を約5分とすることができる。すなわち、起動前に圧力調整機構80により加圧することで、エアバブルAや機器の緩み等を打ち消すための加圧を行うことなく、P1,P2に示すように最初から高い流量で駆動させ始めることができる。このように、除去困難なエアバブルA又は内部構造の緩みが与える影響を小さくすることが可能となる。なお、P2で示す傾きはG2の傾きと同じである。

【0042】
以上、第1実施形態に係るLC装置1及びLCでは、EOポンプ21の下流側に配置された圧力調整機構80により、EOポンプ21の下流側に設けられた第2のリザーバ22に貯留された移動相溶媒の流体圧力が調整される。このように、EOポンプ21とは独立に圧力調整機構80を備えることで、EOポンプ21が液送以外の目的で駆動することを回避するためにEOポンプ21の下流側の移動相溶媒の流体圧力を調整することができる。このため、EOポンプ21に余分な負荷を与えることを回避することが可能となるので、EOポンプ21の消費電力を抑制することができる。また、EOポンプ21の消費電力を抑制することにより、LC装置1をバッテリ駆動させることが可能となるため、結果として可搬性を備えることができる。

【0043】
また、第1実施形態に係るLC装置1及びLCでは、EOポンプ21、第2のリザーバ22及び圧力調整機構80が、EOポンプモジュール2として一体化されることで、ポンプモジュールのみ交換可能であるため、汎用性に優れている。

【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るLC装置1は、第1実施形態に係るLC装置1とほぼ同様に構成されており、チップ4の構成のみが装置する。このため、第2実施形態では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、重複する説明は省略する。

【0045】
本実施形態のチップ4は、第1実施形態で説明したフローセル6及び検出器7に替えて、紫外光検出用または可視光検出用のフローセル6及び検出器7を備える点が相違する。紫外線検出の場合にはフローセル6は石英からなり、可視光線のみの検出する場合にはパイレックス(登録商標)などのホウケイ酸ガラスまたはポリジメチルシロキサンなどシリコーンエラストマーからなる。図10は、チップ4の構成を説明する断面図である。図10に示すように、基板40の分離カラム5の出口側には、その内部に光路61が形成されたフローセル6が着脱可能に取り付けられている。フローセル6は、分離カラム5の出口41から出力された移動相溶媒に含まれる目的物質が光路61を通過するように位置合わせされた状態で、接着層58により基板40の主面に取り付けられている。また、基板40の他方の主面には、板状部材59が配置されている。さらに、一組の押さえ板55が、フローセル6、基板40及び板状部材59を挟んで対向配置され、ボルト56及びナット57によって部材の重なり方向に押圧した状態でネジ止めされている。そして、一組の光ファイバー62が、光路61を挟んで対向配置され、光軸Oと光路61とが一致するようにフィッティングにより取り付けられている。その他の構成は、第1実施形態に係るLC装置1と同様である。

【0046】
インジェクタ3から供給された目的物質は、分離カラム5で分離され、フローセル6内部の光路61に供給される。このとき、一方の光ファイバー62から紫外線が出射され、光路61内の目的物質に照射される。そして、他方の光ファイバー62によって透過光が取得される。紫外線吸収量を測定することで、試料内に含まれる物質を検出することができる。

【0047】
以上、第2実施形態に係るLC装置1及びLCでは、第1実施形態に係るLC装置1及びLCと同様の効果を奏する。また、第1実施形態と同様に、フローセル6が基板40から着脱可能に構成されているため、同一の分離カラム5を用いて異なる検出器7を採用できるので、汎用性に優れているとともに選択的でかつ多角的な分析が可能となる。

【0048】
なお、上述した各実施形態は本発明に係るLC装置及びLCの一例を示すものである。本発明に係るLC装置及びLCは、各実施形態に係るLC装置1及びLCに限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、各実施形態に係るLC装置及びLCを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。

【0049】
例えば、上記実施形態に係るLC装置1においては、圧力調整機構80を第2のリザーバ22に設ける例を説明したが、圧力調整機構80を他の場所に設けても良い。例えば、圧力調整機構80は、EOポンプ21の下流側の流路に設けてもよい。この流路はEOポンプ21の下流側であれば特に限定されないが、EOポンプ21の起動時にEOポンプ21から直接圧力の加わる箇所であることが好適であり、例えば、EOポンプ21と分離カラム5との間の流路に弁等が配置されている場合には、当該弁よりも上流側が好適である。

【0050】
また、上記実施形態に係るLC装置1においては、間接駆動型のEOポンプ21を採用する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、EOポンプ21の下流側に液体を充填させた状態から駆動するタイプのLC装置であれば採用することができる。

【0051】
また、上記実施形態に係るLC装置1においては、圧力調整機構80の圧力調整タイミングをEOポンプ21の起動前として説明したが、EOポンプ21の起動後であっても図9に示す所定時間である時間t2前であれば、本発明の効果を奏することができる。すなわち、定格流量に達するまでの前記電気浸透流ポンプ起動中に流体圧力を調整する場合であってもよい。

【0052】
また、上記実施形態ではLC装置1又はLCとして説明したが、本発明は高速液体クロマトグラフ(HPLC装置)又は高速液体クロマトグラフィーであってもよい。

【0053】
また、上記実施形態では、インジェクタ3をチップ4の外側の部品として説明したが、チップ4の内部に含まれていても良い。

【0054】
また、上記実施形態では、挿入部材26としてネジが採用される例を説明したが、シリンジ状の部材又は膜状の部材等を用いて加圧してもよい。また、挿入部材26を変形又は挿入する際に、動力伝達として気体や液体等の媒体を介してもよい。また、挿入部材26の一連の動作は、手動で行ってもよいし、EOポンプ2の起動をトリガーとして自動で行ってもよい。

【0055】
シリンジを用いた場合を説明する。例えば、シリンジとバルブを備える調整用ラインを第2のリザーバ22に取り付けておき、液体を充填した第2のリザーバ22をセットする。その後、EOポンプ2を起動するとともに流量をモニターしながらシリンジで圧力を上げていく。所定の流量に近づいたら、バルブによりシリンジを隔離し、自動制御に切り替える。なお、この操作をマニュアルではなく、ポンプを用いて自動で行ってもよい。例えばシリンジポンプを備える調整用ラインを採用し、シリンジポンプの動作により圧力を上げてゆく方式も可能である。上記実施形態で説明したねじ方式に比べ、圧力調整の余力が大きく、かつ、ねじ方式と比較して操作性が良くなることが期待できる。なお、この手法を第1のリザーバ20にも適用してもよい。

【0056】
膜状の部材を用いた場合を説明する。空気圧による方式では、装置が別途小型の圧縮空気容器と圧力調整器とを備える。第2のリザーバ22内部の溶媒を加圧する場合には、第2のリザーバ22に加圧により変形する膜状物を設け、これを変形させることにより溶媒を加圧する。第1のリザーバ20内部の駆動液体を加圧する場合には、液体空気によりリザーバ(駆動液体)圧力を高める。なおこの場合では、この加圧によりベースの流量を稼ぎ、微調整をEOポンプ2で行うことも可能である。さらに、駆動液体及び溶媒の両方を同時に加圧する方式も可能である。この場合、EOポンプ2の性能を落とすことなく、起動時間を短縮することができる。
【実施例】
【0057】
以下、上記効果を説明すべく本発明者が実施した実施例について述べる。
(実施例1)
本発明に係るLC装置がバッテリ駆動により長時間使用可能か否か検証した。装置構成は、図1~図5に示す第1実施形態に係るLC装置1と同様の構成とした。また、図2に示すように、EOポンプモジュール2a,2bの二つを採用する構成とし、そのうち一方側のEOポンプモジュールのみ使用した。バッテリ12は、単2アルカリ乾電池を8個直列にしたものを採用した。測定条件は、PID制御で流速を5.00μL/minとした。駆動液は2回精製水(脱イオン水)、送液溶媒(移動相溶媒)はメタノール(100%)を用いた。上記条件で、ポンプ内蔵の流量センサによる検出量、及び、EOポンプモジュール2とインジェクタ3との間に配置した流量センサによる検出量とを測定した。結果を図11に示す。
【実施例】
【0058】
図11(a)は、ポンプ内蔵の流量センサによる検出量であり、図11(b)は、EOポンプモジュール2とインジェクタ3との間に配置した流量センサによる検出量である。図11に示すように、26時間後に電源が落ちた。乾電池の開始前の電圧は12.98Vであり、終了後の電圧は9.84Vであった。13h~20hの間に見られる急激なピークはノイズであり本質的には関係ないものである。このため、バッテリ12として乾電池を採用した場合であっても、少なくとも約24hまで使用可能であることが実証された。なお、24時間あれば、分離カラム5の洗浄、前調製等を行ったとしても分析に十分な時間を残すことができる。
【実施例】
【0059】
(実施例2)
EOポンプを用いてクロマトグラフィーが可能か否か検証した。フェノール類、カテキン類、カテコールアミン及びアミノ酸の4種類について、検出可能か否かを検証した。アミノ酸についてはインジェクタ3から導入する前にSuccinimidyl (2R)-6-(Tetrahydro-2H-pyran-2-yloxy)-2,5,7,8-tetramethylchroman-2-carboxylateと反応させ,電気活性な物質に誘導体化した。装置構成は、実施例1と同様とした。測定条件は、PID制御で流速を5.00μL/minとした。駆動液は2回精製水(脱イオン水)とし、送液溶媒(移動相溶媒)は検出対象の成分に応じて変更した。カテキン類の場合には、水、メタノール及び0.5Mのリン酸を7:2:1の割合としたものとした。フェノール類の場合には、0.05MのNaClO水溶液及びメタノールを5:5の割合としたものとした。カテコールアミンの場合には、Aを50mMのリン酸、50mMのクエン酸、100mg/Lのオクタンスルホン酸及び40mg/LのEDTA-2Na水溶液(pH3.0)とし、Bをメタノールとすると、A:B=95:5の割合としたものとした。アミノ酸の場合には、水、メタノール及び0.5Mの過塩素酸ナトリウムを5:4:1の割合としたものとした。なお、カテキン類、フェノール類及びカテコールアミンについては、検出電位を0.6Vとし、アミノ酸については、検出電位を0.4Vとした。実験結果を図12に示す。
【実施例】
【0060】
図12(a)はカテキン類の検出結果、図12(b)はフェノール類の検出結果、図12(c)は、カテコールアミンの検出結果、図12(d)はアミノ酸の検出結果である。図12(a)に示すように、CAで示すカテキン、EGCgで示すエピガロカテキンガレート、ECで示すエピカテキン、ECgで示すエピカテキンガレートのピークを良好に検出した。また、図12(b)に示すように、Pで示すフェノール、2-MPで示す2-メチルフェノール、2-EPで示す2-エチルフェノール、及び2-PPで示す2-プロピルフェノールのピークを良好に検出した。また、図12(c)に示すように、NAで示すノルアドレナリン、ADで示すアドレナリン、DAで示すドーパミンのピークを良好に検出した。さらに、図12(d)に示すように、Glyで示すグリシン、Tyrで示すチロシン、Valで示すバリンのピークを良好に検出した。以上、EOポンプを用いてクロマトグラフィーが可能であることが実証された。
【実施例】
【0061】
次に、圧力調整機構80の効果を検証した。
(実施例3)
装置構成は、図1~図5に示す第1実施形態に係るLC装置1と同様の構成とした。LC装置1に接続するEOポンプモジュール2として、100mL程度の容量を持つポンプモジュールを採用した。また、EOポンプ21起動前に、圧力調整機構80で第2のリザーバ22を加圧調整した。電気浸透材に対する電圧(印加電圧)は、昇圧回路により48Vとした。
(比較例1)
圧力調整機構80を備えない点以外は、実施例3と同様の構成とした。印加電圧は、60Vとした。
【実施例】
【0062】
上記の比較例1及び実施例3について、PID制御で流速を2.00μL/minに設定し、時系列で流速を測定した。結果を図13に示す。図13(a)は、比較例1の流速の時間依存性を示し、図13(b)は、実施例3の流速の時間依存性を示す。図13(a)に示すように、圧力調整機構80を備えない比較例1では、設定された流速2.00μL/minとなるまでに要する時間は、約2時間であった。一方、図13(b)に示すように、圧力調整機構80を備える実施例3では、設定された流速2.00μL/minとなるまでに要する時間は、約0.4時間であった。以上より、圧力調整機構80を備えることで、圧力調整していない場合よりも低い印加電圧とした場合であっても、設定された流速に到達するまでに要する時間が約1/5に短縮され、本発明の効果が実証された。
【符号の説明】
【0063】
1…LC装置(液体クロマトグラフ)、2…EOポンプモジュール(電気浸透流ポンプモジュール)、5…分離カラム、7…検出器、12…バッテリ、21…EOポンプ(電気浸透流ポンプ)、22…第2のリザーバ、圧力調整機構80。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
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