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明細書 :太陽電池および光電変換素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5392795号 (P5392795)
登録日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 太陽電池および光電変換素子
国際特許分類 H01L  31/06        (2012.01)
H01L  51/42        (2006.01)
FI H01L 31/04 W
H01L 31/04 D
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2011-511480 (P2011-511480)
出願日 平成22年4月27日(2010.4.27)
国際出願番号 PCT/JP2010/057846
国際公開番号 WO2010/126162
国際公開日 平成22年11月4日(2010.11.4)
優先権出願番号 2009108593
優先日 平成21年4月28日(2009.4.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年4月9日(2013.4.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】石橋 晃
個別代理人の代理人 【識別番号】100120640、【弁理士】、【氏名又は名称】森 幸一
審査官 【審査官】眞壁 隆一
参考文献・文献 特開昭63-021880(JP,A)
特許第4022631(JP,B2)
特開昭53-066390(JP,A)
特開2007-273491(JP,A)
調査した分野 H01L 31/04 - 31/078
H01L 51/42
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体層と、
上記半導体層を挟むように設けられたアノード電極およびカソード電極と、
上記カソード電極の外側に絶縁層を介して設けられた、上記半導体層の面に垂直な方向に電場を印加するための電場印加用電極とを有し、
上記アノード電極および上記カソード電極間を最短で結ぶ直線に交差する方向から上記半導体層に光を入射させ、
上記半導体層のバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが上記光の進行方向に沿ってN段階(N≧2)に段階的に減少しており、
上記アノード電極および上記カソード電極間を最短で結ぶ直線の方向にx軸を取り、このx軸の原点を上記半導体層と上記アノード電極との界面とし、このx軸に垂直にy軸を取り、このy軸の原点を上記半導体層に対する光の入射面としたとき、動作時に、上記電場印加用電極と上記アノード電極との間に、上記電場印加用電極側が高電位となるように電圧Vを印加し、それによって、上記半導体層のうちのバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgi(1≦i≦N)の各領域において、伝導帯でx軸方向に印加される電場を∂ECB/∂x(ECBは伝導帯の下端の電位)、価電子帯でx軸方向に印加される電場を∂EVB/∂x(EVBは価電子帯の上端の電位)とし、伝導帯でy軸方向に印加される電場を∂ECB/∂y、価電子帯でy軸方向に印加される電場を∂EVB/∂yとし、上記バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgiの領域の吸収係数をα、上記バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgiの領域の上記アノード電極と上記カソード電極との間のキャリアの移動時間をτ、y軸方向のキャリアの拡散係数をD、y軸方向の上記バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgiの領域の長さをWとしたとき、〈∂ECB/∂x〉>〈∂ECB/∂y〉かつ〈∂EVB/∂x〉>〈∂EVB/∂y〉(〈〉は平均電場を意味する。)が満たされ、かつ、W>max(1/α,(Dτ1/2)が満たされるように、上記半導体層の厚さd、電圧Vおよび長さWが選ばれていることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
上記半導体層と上記第1の電極および上記第2の電極とがオーミック接触していることを特徴とする請求の範囲1記載の太陽電池。
【請求項3】
上記半導体層のうちの上記第1の電極および上記第2の電極が接触する部分以外の部分は真性半導体、ノンドープ半導体または低不純物濃度の半導体からなることを特徴とする請求の範囲2記載の太陽電池。
【請求項7】
上記第1の電極、上記半導体層、上記第2の電極および上記第3の電極が所定の中心の周りに渦巻き状または同心形状に形成されていることを特徴とする請求の範囲1記載の太陽電池。
【請求項8】
上記第1の電極、上記半導体層、上記第2の電極および上記第3の電極が繊維状に形成されていることを特徴とする請求の範囲1記載の太陽電池。
【請求項9】
上記太陽電池は全体として板状または布状であることを特徴とする請求の範囲1記載の太陽電池。
【請求項10】
光電変換層と、
上記光電変換層を挟むように設けられたアノード電極およびカソード電極と、
上記カソード電極の外側に絶縁層を介して設けられた、上記光電変換層の面に垂直な方向に電場を印加するための電場印加用電極とを有し、
上記アノード電極および上記カソード電極間を最短で結ぶ直線に交差する方向から上記光電変換層に光を入射させ、
上記光電変換層のバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが上記光の進行方向に沿ってN段階(N≧2)に段階的に減少しており、
上記アノード電極および上記カソード電極間を最短で結ぶ直線の方向にx軸を取り、このx軸の原点を上記光電変換層と上記アノード電極との界面とし、このx軸に垂直にy軸を取り、このy軸の原点を上記光電変換層に対する光の入射面としたとき、動作時に、上記電場印加用電極と上記アノード電極との間に、上記電場印加用電極側が高電位となるように電圧Vを印加し、それによって、上記光電変換層のうちのバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgi(1≦i≦N)の各領域において、伝導帯でx軸方向に印加される電場を∂ECB/∂x(ECBは伝導帯の下端の電位)、価電子帯でx軸方向に印加される電場を∂EVB/∂x(EVBは価電子帯の上端の電位)とし、伝導帯でy軸方向に印加される電場を∂ECB/∂y、価電子帯でy軸方向に印加される電場を∂EVB/∂yとし、上記バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgiの領域の吸収係数をα、上記バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgiの領域の上記アノード電極と上記カソード電極との間のキャリアの移動時間をτ、y軸方向のキャリアの拡散係数をD、y軸方向の上記バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップがEgiの領域の長さをWとしたとき、〈∂ECB/∂x〉>〈∂ECB/∂y〉かつ〈∂EVB/∂x〉>〈∂EVB/∂y〉(〈〉は平均電場を意味する。)が満たされ、かつ、W>max(1/α,(Dτ1/2)が満たされるように、上記光電変換層の厚さd、電圧Vおよび長さWが選ばれていることを特徴とする光電変換素子。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池および光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
未来の循環型社会のキーテクノロジーとして、また単に地球温暖化を防止するのみならず、自然環境の調和した緑の地球を次代の人類に手渡すためには、太陽光のより一層の有効利用が望まれる。この観点から世界的に太陽電池が注目され、光電変換効率の向上や製造コストの低減を図るべく盛んに研究開発が行われている。
従来の太陽電池としては、アモルファスまたは結晶シリコンを用いた太陽電池、GaAs結晶を用いた太陽電池、有機半導体を用いた太陽電池などが知られている。これらの太陽電池は、p型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合をアノード電極とカソード電極との間に挟んだ構造を有し、pn接合の接合面に太陽光が垂直入射するタイプのものが一般的である(例えば、D.J.Friedman,J.F.Geisz,S.R.Kurtz,and J.M.Olson,July 1998・NREL/CP-520-23874参照)。他方、光電変換効率の大幅な向上を図ることを目的として、最近、pn接合の接合面に平行に太陽光が入射するタイプの太陽電池が提案されている(例えば、日本国特許第4022631号明細書参照)。
これまで、無機半導体を用いた太陽電池の光電変換効率としては、結晶シリコンを用いたもので24.7%、GaAs薄膜を用いたもので24.5%、アモルファスシリコン(a-Si)/Cu(In,Ga)Se(CIGS)接合を用いたもので14.6%、マルチ接合を用いたものとしてはGaInP/GaAs/Geを用いたもので32%、GaInP/GaAs/GaInAsを用いたもので37.9%が報告されている(例えば、Green,Prog.PV Res.Appl.,13(2005)387参照)。また、有機半導体を用いた太陽電池の光電変換効率としては、ペンタセン/C60を用いたもので2.7%(例えば、Yoo,APL 85(2004)5237参照)、共役系高分子P3HTとフラーレン誘導体PCBMとを用いたもので約5%が報告されているが、無機半導体を用いた太陽電池の光電変換効率と比べると極めて低い。
一方、近年、太陽電池の製造コストの低減を図るために、太陽電池の半導体層を塗布技術を用いて作製する方法が注目されている。この方法で用いられる塗布可能な半導体としては、シリコンなどからなる半導体微粒子や有機半導体などがある。
しかしながら、塗布可能な半導体を用いて塗布技術により半導体層を作製した従来の太陽電池では、半導体層が無機半導体からなる場合であると有機半導体からなる場合であるとを問わず、低い光電変換効率しか得られていない。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、塗布可能な半導体を用いて塗布技術により半導体層を作製した場合であっても、極めて高い光電変換効率を得ることができ、しかも大面積化も極めて容易な太陽電池および光電変換素子を提供することである。
上記課題および他の課題は、添付図面を参照した本明細書の記述によって明らかとなるであろう。
【発明の開示】
【0003】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、光電変換層である半導体層の面に垂直な方向に外部から電場を印加した状態で光電変換を行うことにより、塗布可能な半導体を用いて塗布技術により半導体層を作製した場合であっても、光電変換効率の大幅な向上を図ることができることを見出し、この発明を案出するに至った。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
半導体層と、
上記半導体層を挟むように設けられた第1の電極および第2の電極と、
上記半導体層の面に垂直な方向に電場を印加するための第3の電極とを有し、
上記第3の電極は上記第1の電極および上記第2の電極のうちの一方の外側に絶縁層を介して設けられていることを特徴とする太陽電池である。
この発明において、太陽電池の動作時には、第1の電極および第2の電極のうちの他方と第3の電極との間に電圧を印加することにより、半導体層の面に垂直な方向に電場を印加することができる。この電圧は、第1の電極および第2の電極のうちのカソード電極として用いるものが、第1の電極および第2の電極のうちのアノード電極として用いるものに対して高電位となる電圧とする。太陽電池は、第1の電極および第2の電極に関して第3の電極と反対側に第4の電極をさらに有することもある。この場合、第3の電極と第4の電極との間に電圧を印加することにより、半導体層の面に垂直な方向に電場を印加することができる。
好適には、第1の電極および第2の電極は半導体層とオーミック接触しており、このためにこの半導体層のうちの第1の電極および第2の電極が接触する部分は高不純物濃度にドープ(heavily doped)される。この半導体層のうちの第1の電極および第2の電極が接触する部分以外の部分は、例えば、真性半導体、ノンドープ半導体または低不純物濃度にドープされた(lightly doped)半導体からなる。特に、以下に述べるように、半導体層として有機半導体を用いる場合は、第1の電極および第2の電極は半導体層とオーミック接触していなくてもよい。
半導体層を構成する半導体としては無機半導体、有機半導体のいずれを用いてもよく、単結晶、多結晶、アモルファス(非晶質)のいずれの形態のものであってもよい。半導体層は、太陽電池の製造コストの低減を図る観点からは、好適には、無機半導体からなる微粒子や有機半導体などの塗布可能な半導体を用いて塗布技術により作製されるが、これに限定されるものではなく、他の方法によって作製してもよい。
無機半導体としては、CdSe、PbS、PbSeなどのII-VI族化合物半導体、InP、GaN、GaAsN、GaPNなどのIII-V族化合物半導体、SiやSiGeなどのIV族半導体、SiGeSn1-x-yOなどを用いることができる。半導体層は、これらの無機半導体からなる微粒子により構成することもできる。
有機半導体としては、有機太陽電池の材料として一般的に報告されているものは全て用いることができる。具体的には、有機半導体としては、ペンタセンなどのポリアセン、ポリアセチレン(好ましくは二置換型ポリアセチレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)、ポリピロール、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-ビチオフェン)(F8T2)、ポリ(1-ヘキシル-2-フェニルアセチレン)(PHPA)(発光材料としては青色の発光を示す)、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体(PDPA-Bu)(発光材料としては緑色の発光を示す)、ポリ(ピリジン)(PPy)、ポリ(ピリジルビニレン)(PPyV)、シアノ置換型ポリ(p-フェニレンビニレン)(CNPPV)、ポリ(3,9-ジ-tert-ブチルインデノ[1,2-b]フルオレン(PIF)などを用いることができる。これらの有機半導体のドーパントについては、ドナーとしてはアルカリ金属(Li、Na、K、Cs)を用いることができ、アクセプタとしてはハロゲン類(Br、I、CI)、ルイス酸(BF、PF、AsF、SbF、SO)、遷移金属ハロゲン化物(FeCl、MoCl、WCl、SnCl)、有機アクセプタ分子としてはTCNE、TCNQを用いることができる。また、電気化学ドーピングに用いられるドーパントイオンは、陽イオンとしてはテトラエチルアンモニウムイオン(TEA)、テトラブチルアンモニウムイオン(TBA)、Li、Na、K、陰イオンとしてはClO、BF、PF、AsF、SbFなどを用いることができる。有機半導体としてはさらに、高分子電解質を用いることもできる。この高分子電解質の具体例を挙げると、ポリアニオンとしては、サルフォネートポリアニリン、ポリ(チオフェン-3-酢酸)、サルフォネートポリスチレン、ポリ(3-チオフェンアルカンサルフォネート)など、ポリカチオンとしては、ポリアリルアミン、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)前駆体高分子、ポリ(p-メチルピリジニウムビニレン)、プロトン化ポリ(p-ピリジルビニレン)、ポロトン(2-N-メチルピリジニウムアセチレン)などを用いることができる。半導体層として低不純物濃度にドープされた有機半導体層を用いる場合、この有機半導体層はヘテロジャンクション型あるいはバルクヘテロジャンクション型の構造とすることができる。ヘテロジャンクション型構造の有機半導体層においては、p型有機半導体膜およびn型有機半導体膜とを第1の電極および第2の電極と接触するように接合する。バルクヘテロジャンクション型構造の有機半導体層は、p型有機半導体分子とn型有機半導体分子との混合物からなり、p型有機半導体とn型有機半導体とが互いに入り組んで互いに接触した微細構造を有する。
第1~第4の電極としては、Au、Ni、Alなどの金属のほか、ITOなどの各種の透明導電性酸化物などを用いることができる。第1~第4の電極のうちの少なくとも一つを、光の入射方向から見たときに点状に見えるように、光の入射方向に延びる細いワイヤー状に形成したり、Auなどからなる金属微粒子を互いに導通するように直線状に多数配列することにより形成したりしてもよい。こうすることで、太陽電池に入射する光が第1~第4の電極により吸収される確率を減少させることができ、入射光を有効に利用することができる。また、第1~第4の電極のうちの少なくとも一つを、金属微粒子を互いに導通するように直線状に多数配列することにより形成した場合には、金属微粒子に発生するプラズモンによるエンハンスメント(増強)効果を利用することもでき、ひいては太陽電池の光電変換効率の向上を図ることができる。
太陽電池を構成する第1の電極、半導体層、第2の電極、絶縁膜、第3の電極、第4の電極などは、例えば、所定の中心の周りに渦巻き状または同心形状に形成してもよいし、繊維状の形状に形成してもよい。太陽電池は、例えば平板状や布状であってもよい。太陽電池の全体形状は円形、三角形、四角形、六角形などの各種の形状の板状であってよい。この板状の太陽電池は、典型的には、その主面に沿った方向に上記の半導体層を複数、好適には少なくとも10以上、より好適には100以上含む。
この太陽電池においては、典型的には、第1の電極および第2の電極間を最短で結ぶ直線に交差する方向から半導体層に光を入射させ、好適には、第1の電極および第2の電極間を最短で結ぶ直線にほぼ垂直な方向から半導体層に光を入射させる。好適には、半導体層のバンドギャップ、あるいは半導体層が有機半導体からなる場合にはHOMO(最高被占分子軌道)-LUMO(最低非占分子軌道)ギャップが光の進行方向に順に段階的および/または連続的に減少するようにする。こうすることで、太陽電池に太陽光が入射した場合、この太陽光はバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップが一番大きい半導体にまず入射し、最終的にバンドギャップが一番小さい半導体に入射することになり、この過程で太陽光スペクトルのうちの短い波長の光から長い波長の光に亘って順次吸収され、しかもこの吸収量は最大化される。このため、半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップの変化のさせ方および使用する半導体の種類によって、太陽光スペクトルの主要部あるいは実質的に全部の光を光電変換することができ、究極的には光電変換効率を理論最大効率に近づけることができる。
半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップが光の入射方向に段階的に減少するようにする場合、太陽電池の動作時には、好適には、この半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップが互いに異なる領域のそれぞれにおいて、第1の電極および第2の電極間を最短で結ぶ直線の方向の電場の大きさが、光の入射方向の半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップの減少により与えられる平均電場(大局的電場)(一例を、第1図の右図のバンドギャップ分布における細い実線で示す)の大きさより大きく設定される。
半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップが光の入射方向に段階的に減少するようにする場合、この半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップが互いに異なる領域は、典型的には、ストリップ状またはリボン状に形成される。
半導体層の厚さは、この半導体層内のキャリアの拡散長の関数として適宜選ばれるが、典型的には10nm以上100μm以下である。また、第1の電極および第2の電極の厚さは、これらの第1の電極および第2の電極による光の吸収が少なくなるように適宜選ばれるが、一般的には0.2nm以上1μm以下である。
また、この発明は、
光電変換層と、
上記光電変換層を挟むように設けられた第1の電極および第2の電極と、
上記光電変換層の面に垂直な方向に電場を印加するための第3の電極とを有することを特徴とする光電変換素子である。
光電変換層は半導体層のほか、従来公知の色素増感太陽電池などの色素増感光電変換素子における、色素を担持した半導体光電極などであってもよい。この色素増感光電変換素子においては、半導体光電極に加えて電解質層も使用される。半導体光電極としては、典型的には、酸化チタン(例えば、アナターゼ型構造のもの)などの金属酸化物からなるものが用いられる。好適には、この半導体光電極の光入射面から光の入射方向に、半導体光電極に担持させる色素の種類を変えることでこの色素が吸収する光の波長を段階的に増加させる。光電変換素子には、太陽電池のほか、光センサーなども含まれる。
この光電変換素子においては、上記以外のことは、その性質に反しない限り、上記の太陽電池に関連して説明したことが成立する。
必要に応じて、上記の太陽電池または光電変換素子を複数組み合わせてモジュール化あるいはシステム化してもよい。
この発明によれば、半導体層あるいは光電変換層に対する光の進行方向に対して、この光の入射により半導体層あるいは光電変換層中に生成されるキャリアの正味の移動方向が垂直であるので、光の入射方向の半導体層あるいは光電変換層の厚さの選択による光の吸収量の最大化と電極間距離の最小化とを両立させることができ、半導体層の材料が無機半導体であると有機半導体であるとを問わず、塗布可能な半導体を用いて塗布技術により半導体層を作製した場合であっても光電変換効率の大幅な向上を図ることができる。また、この場合、半導体層を挟むように設けられた第1の電極および第2の電極に加えて第3の電極、あるいはさらに第4の電極を有することにより、半導体層に対して第1の電極および第2の電極によるフォトキャリアの収集に有利な方向に電場を印加することができるので、光電変換効率のより一層の向上を図ることができる。また、半導体層の材料としてキャリア移動度が高いものを用いることができるため、キャリアの収集効率の向上を図ることができ、光電変換効率のさらなる向上を図ることができる。また、半導体層のバンドギャップあるいは半導体層が有機半導体からなる場合にはHOMO-LUMOギャップが光の入射方向に段階的および/または連続的に減少するようにすることにより、太陽光スペクトルの主要部あるいは全部の波長の光を吸収して光電変換することができ、究極的には理論最大効率に迫る光電変換効率を得ることができる。また、この太陽電池あるいは光電変換素子は、半導体材料や導電材料などを用いて例えばロールツーロールプロセスで容易に作製することができるため、大面積化も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
第1図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池を示す断面図およびこの太陽電池の半導体層のバンドギャップの分布を示す略線図である。
第2図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の動作時の半導体層のエネルギーバンドを示す略線図である。
第3図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の動作時の半導体層のエネルギーバンドを示す略線図である。
第4図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の動作時の半導体層のエネルギーバンドを示す略線図である。
第5図Aおよび第5図Bは、この発明の第1の実施の形態による太陽電池を示す平面図および断面図である。
第6図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池を示す斜視図である。
第7図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の製造方法を説明するための略線図である。
第8図A、第8図B、第8図Cおよび第8図Dは、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の製造方法に用いられる塗布装置のノズルを示す上面図、下面図および断面図である。
第9図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の光電変換効率とこの太陽電池の半導体層の各領域の幅との関係を示す略線図である。
第10図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池との比較のための従来の太陽電池を示す断面図である。
第11図は、太陽電池の電極間距離と光電変換効率との関係を示す略線図である。
第12図は、光子エネルギーと太陽光の光子密度との関係を示す略線図である。
第13図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の基礎的評価を行うために作製した太陽電池を構成する積層体の端面にこの端面に垂直な方向からレーザ光を照射する様子を示す断面図である。
第14図Aおよび第14図Bは、第13図に示す太陽電池を構成する積層体の端面にこの端面に垂直な方向からレーザ光を照射したときの電流-電圧特性の測定結果を示す略線図である。
第15図Aおよび第15図Bは、第13図に示す太陽電池を構成する積層体の端面に対するレーザ光の照射部位およびレーザ光のスポット形状を示す光学顕微鏡写真である。
第16図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の基礎的評価を行うために作製した太陽電池を構成する積層体のポリエチレンナフタレート基板の裏面にこの裏面に垂直な方向からレーザ光を照射する様子を示す断面図である。
第17図Aおよび第17図Bは、第16図に示す太陽電池を構成する積層体のポリエチレンナフタレート基板の裏面にこの裏面に垂直な方向からレーザ光を照射したときの電流-電圧特性の測定結果を示す略線図である。
第18図は、この発明の第1の実施の形態による太陽電池の基礎的評価を行うために作製した太陽電池のP3HT:PCBM薄膜の厚さdと太陽電池のIsc×Vocとの関係を示す略線図である。
第19図は、この発明の第2の実施の形態による太陽電池を示す平面図である。
第20図Aおよび第20図Bは、この発明の第3の実施の形態による太陽電池を示す側面図および斜視図である。
第21図は、この発明の第3の実施の形態による太陽電池からなる繊維状構造体を用いて作られた衣服を示す略線図である。
【符号の説明】
【0005】
11 半導体層
11-i Egi領域
12 アノード電極
13 カソード電極
14 絶縁膜
15 電場印加用電極
16 電源
17 負荷
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
第1図はこの発明の第1の実施の形態による太陽電池を示す。
第1図に示すように、この太陽電池においては、光電変換用の半導体層11を挟むようにアノード電極12およびカソード電極13が設けられている。カソード電極13には絶縁膜14を介して電場印加用電極15が設けられている。これらのアノード電極12、カソード電極13および電場印加用電極15は全面電極であるが、これに限定されるものではない。
半導体層11のうちのアノード電極12およびカソード電極13が接触する部分は高不純物濃度にドープされており、これらのアノード電極12およびカソード電極13が半導体層11とオーミック接触している。半導体層11のうちのアノード電極12およびカソード電極13が接触する部分以外の部分は、真性半導体、ノンドープ半導体、低不純物濃度(lightly doped)の半導体などからなる。
いま、第1図に示すように、半導体層11の厚さ方向、言い換えると、アノード電極12とカソード電極13との間を最短で結ぶ方向にx軸を取る。x軸の原点は半導体層11とアノード電極12との界面である。このx軸に垂直にy軸を取る。このy軸の原点は半導体層11に対する光の入射面である。
第1図に示すように、半導体層11のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップEは、y軸方向にN段階(N≧2)に段階的に減少しており、光入射面側から順にEg1、Eg2、…、EgN(Eg1>Eg2>…>EgN)となっている。第1図においては、一例としてN=4の場合が示されているが、これに限定されるものではない。半導体層11のうちのバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップEがEgi(1≦k≦N)のストライプ状の領域をEgi領域11-iと呼ぶ。これらのEgi領域11-iは、隙間なく配列して一体になっていても、間隔を取って互いに分離されていてもよいが、第1図においては一体になっている場合が示されている。
giは次のように設定することができる。例えば、AM1.5太陽光スペクトルの全波長範囲またはその主要な波長範囲(入射エネルギーが高い部分を含む範囲)において、波長をN個の区間に分ける。そして、これらの区間に短波長側(高エネルギー側)から順に1、2、…、Nというように番号を付け、i番目の区間の最小光子エネルギーに等しくEgiを選ぶ。こうすることで、k番目の区間の光子エネルギーを有する光子がEgi領域11-iに入射すると電子-正孔対が発生し、光電変換が行われる。また、この場合、このk番目の区間の光子エネルギーを有する光子が各Egi領域11-iに到達して十分に吸収されるように、光入射面からこのEgi領域11-iまでの深さを選ぶ。これによって、この太陽電池の光入射面に入射する太陽光は、まず、Eg1領域11-1に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg1以上のものが吸収されて光電変換され、続いてEg2領域11-2に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg2以上でEg1より小さいものが吸収されて光電変換され、最終的にEgN領域11-Nに入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEgN以上でEgN-1より小さいものが吸収されて光電変換される。この結果、太陽光スペクトルのほぼ全範囲あるいは主要な波長範囲の光を光電変換に使用することができる。
giの理想的な設定例について説明する。第12図にAM1.5太陽光スペクトルの光子エネルギーhνと光子数n(hν)との関係を示す。ここでは、AM1.5太陽光スペクトルの光子エネルギーをエネルギー幅Δの10個の区間に等分するものとする。この場合の理論最大光電変換効率は約70%にもなり、これは例えばE=1.35eVの従来の太陽電池の理論最高光電変換効率31%の倍以上である。
ただし、光子数n(hν)は
JP0005392795B2_000002t.gifで表される。また、光電変換効率ηは
JP0005392795B2_000003t.gifで表される。
各Egiの設定は、各Egi領域11-iを構成する半導体の組成を変えることにより行うことができる。具体的には、各Egi領域11-iを別種の半導体により構成する。無機半導体を用いる場合について具体例をいくつか挙げると次のとおりである。N=2の最も簡単な場合には、例えば、Eg1領域11-1をGaAs(E=1.43eV)、Eg2領域11-2をSi(E=1.11eV)により構成する。N=3の場合には、例えば、Eg1領域11-1をGaP(E=2.25eV)、Eg2領域11-2をGaAs(E=1.43eV)、Eg3領域11-3をSi(E=1.11eV)により構成する。N=4の場合には、例えば、Eg1領域11-1をGaP(E=2.25eV)、Eg2領域11-2をGaAs(E=1.43eV)、Eg3領域11-3をSi(E=1.11eV)、Eg4領域11-4をGe(E=0.76eV)により構成する。また、N=5の場合には、例えば、Eg1領域11-1を直径1.9nm程度のCdSe微粒子(吸収ピーク波長445nm)、Eg2領域11-2を直径4.0nm程度のCdSe微粒子(吸収ピーク波長585nm)、Eg3領域11-3を直径2nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長800nm)、Eg4領域11-4を直径4.5nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長1100nm)、Eg5領域11-5を直径90nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長2300nm)により構成する。さらに、GaInNAs1-xやGaInN1-xを用いてxの制御だけでN~10の場合のEgi領域11-iを構成することも可能である。加えて、Teを含ませると大きなボウイング(bowing)を示すことが知られているII-VI族化合物半導体を用いてEgi領域11-iを構成してもよい。
この太陽電池の全体形状(第1図のx軸方向から見た形状)は必要に応じて選ばれ、例えば、円形、四角形、六角形などである。また、第1図に示す構造を、間に絶縁膜を挟んでx軸方向に複数、積層して太陽電池を構成してもよい。
この太陽電池の動作について説明する。ここでは、半導体層11のEgi領域11-iが互いに一体になっている場合を考える。
第1図に示すように、この太陽電池の動作時には、電場印加用電極15とアノード電極12との間に、電場印加用電極15側が高電位となるように電源16により電圧Vを印加する。第2図に示すように、この電圧Vの印加により、半導体層11の厚さ方向、すなわちx軸方向にエネルギーバンドが傾斜し、それによって各Egi領域11-iにおいて、伝導帯ではx軸方向に電場∂ECB/∂xが印加され、価電子帯ではx軸方向に電場∂EVB/∂xが印加される。ただし、ECBおよびEVBはそれぞれ伝導帯の下端および価電子帯の上端の電位である。一方、半導体層11のバンドギャップはy軸方向にN段階(N≧2)に段階的に減少しており、光入射面側から順にEg1、Eg2、…、EgN(Eg1>Eg2>…>EgN)となっていることにより、半導体層11には伝導帯ではy軸方向に電場∂ECB/∂yが印加され、価電子帯ではy軸方向に電場∂EVB/∂yが印加される。
電場印加用電極15とアノード電極12との間に、電場印加用電極15側が高電位となるように電圧Vを印加したときの半導体層11のエネルギーバンドを第3図に立体的に示す。また、第4図に光の入射方向と反対側から半導体層11を見たときの各Egi領域のエネルギーバンドを示す。このとき、〈∂ECB/∂x〉>〈∂ECB/∂y〉かつ〈∂EVB/∂x〉>〈∂EVB/∂y〉、好適には〈∂ECB/∂x〉≫〈∂ECB/∂y〉かつ〈∂EVB/∂x〉≫〈∂EVB/∂y〉が満たされるように、半導体層11の厚さd、電圧VおよびEgi領域11-iの幅W(光入射方向のEgi領域11-iの長さ)が選ばれる。〈〉は平均電場(大局的電場)を意味する。また、Egi領域11-iの吸収係数をα、Egi領域11-iの電極間移動時間をτ、y軸方向のキャリア(電子または正孔)の拡散係数をDとしたとき、W>max(1/α,(Dτ1/2)が満たされるようにする。これによって、各Egi領域11-iで生成されたフォトキャリアはx軸方向のドリフトまたは拡散が主となり、y軸方向の移動は相対的に小さく、各Egi領域11-i外への移動が生じないようにすることができる。すなわち、第3図に示すように、Egi領域11-i内のA地点で発生した電子(e)は電場∂ECB/∂xによりx軸方向に加速されて同じEgi領域11-i内のB地点へたどり着き、他のEgj領域11-j内のB地点(j≠i)には到達しない。この結果、熱として散逸するエネルギーを最小に抑えることができる。
以上のようにして、半導体層11の各Egi領域11-i内で光電変換が行われ、アノード電極12とカソード電極13とから外部に電流(光電流)が取り出される。第1図に示すように、アノード電極12とカソード電極13との間に負荷17を接続することにより、この負荷17に電流を流すことができる。
第5図Aおよび第5図Bはこの太陽電池を円板状に構成した例を示す。ここで、第5図Aは上面図(平面図)、第5図Bはこの太陽電池の直径方向の断面図である。第6図はこの太陽電池の詳細な構造を示す斜視図である。第5図Aおよび第5図Bならびに第6図に示すように、この太陽電池は、アノード電極12、半導体層11、カソード電極13、絶縁膜14および電場印加用電極15が渦巻き状に形成されたもので、全体として円板状の形状(薄い円板形状)を有する。渦巻き状に巻かれた状態でアノード電極12と電場印加用電極15とが互いに背中合わせになる部位では、それらが互いに電気的に絶縁されるようにそれらの間に図示省略した絶縁膜が形成される。第6図において、符号18は芯材を示す。
この太陽電池の各部の寸法の例を挙げる。半導体層11の厚さは、この半導体層11が有機半導体からなる場合は典型的には10nm~1μm、この半導体層11が無機半導体微粒子からなる場合は典型的には100nm~10μm、この半導体層11が非晶質Si、非晶質Ge、マイクロクリスタルSi(μcSi)、マイクロクリスタルSiGe(μcSiGe)からなる場合には典型的には1~100μmである。また、アノード電極12およびカソード電極13の厚さはそれぞれ100nm~1μmである。
次に、この太陽電池の製造方法の一例について説明する。第7図はこの太陽電池をロールツーロールプロセスで製造するのに用いる製造装置を示す。ここでは、半導体層11を塗布法により形成する場合について説明するが、半導体層11の形成方法はこれに限定されるものではない。例えば、非晶質Si層を線状レーザ光の照射により粒径選択的微結晶化することにより半導体層11を形成してもよい。
第7図に示すように、例えば所定幅の薄い平坦なテープ状の樹脂製ベースフィルム19の一方の面に絶縁膜20を介して電場印加用電極15、絶縁膜14およびカソード電極13を形成したものと、これと同じ幅の薄い平坦なテープ状の樹脂製ベースフィルム21の一方の面にあらかじめアノード電極12を形成したものとを用意する。これらの樹脂製ベースフィルム19、21は一般的には図示省略したローラに巻き付けられた状態で用意されるが、これに限定されるものではない。
樹脂製ベースフィルム19上に絶縁膜20を介して電場印加用電極15、絶縁膜14およびカソード電極13を形成したものをローラー22の回転により送る。また、樹脂製ベースフィルム21上にアノード電極12を形成したものをローラー23の回転により送りながら、ローラー24の表面にあらかじめ塗布された半導体材料を含む溶液を塗布することで、このアノード電極12上に半導体層11を形成する。この塗布時には、互いに異なる所定の半導体材料を含む溶液を用いてノズルなどにより互いに隣接するストライプ状に塗り分ける。こうすることで、半導体層11の各Egi領域11-i(半導体ストライプ)を形成することができる。樹脂製ベースフィルム19上に形成されたカソード電極13と樹脂製ベースフィルム21上に形成された半導体層11とはローラー22とローラー23との間で互いに接触して接合される。樹脂製ベースフィルム19はローラー22を離れた後、ローラー22の中心とローラー23との中心とを結ぶ直線に対して垂直な方向より鋭角な方向に引っ張られるようになっている。このため、樹脂製ベースフィルム19がローラー22を離れた直後に絶縁膜20からこの樹脂製ベースフィルム19が剥離する。この際、この樹脂製ベースフィルム19の裏面に高温に加熱されたローラを押し付けたり、この裏面に紫外光を照射したりすることにより、この樹脂製ベースフィルム19の剥離をアシストすることが有効である。樹脂製ベースフィルム21はローラー23によりさらに送られる。この樹脂製ベースフィルム21はローラー25を離れた後、ローラー23、25による送り方向からそれる方向に引っ張られるようになっている。このため、樹脂製ベースフィルム21がローラー25を離れ、ローラー26に接着した直後にアノード電極12からこの樹脂製ベースフィルム21が剥離する。この際も、この樹脂製ベースフィルム21の裏面に高温に加熱されたローラを押し付けたり、この裏面に紫外光を照射したりすることにより、この樹脂製ベースフィルム21の剥離をアシストすることが有効である。こうして、電場印加用電極15/絶縁膜14/カソード電極13/半導体層11/アノード電極12/絶縁膜20からなる積層構造を有するテープが形成される。こうして形成されたテープはローラー26で巻き取られる。
以上のようにして、第5図Aおよび第5図Bに示す目的とする太陽電池が製造される。
次に、半導体層11の各Egi領域11-i、すなわち半導体ストライプの塗布形成に用いて好適な方法について説明する。この方法によれば、幅が狭い、例えば幅数μm程度の半導体ストライプを容易に塗布形成することができる。
第8図A~第8図Dはこの半導体ストライプの塗布形成に用いる塗布装置、特にノズル部を模式的に示し、第8図Aは上面図、第8図Bは下面図、第8図Cは第8図AのC-C線に沿っての断面図、第8図Dは第8図AのD-D線に沿っての断面図である。ここでは、5種類の半導体ストライプを塗布形成する場合について説明するが、これに限定されるものではない。
第8図A~第8図Dに示すように、この塗布装置のノズル43は、上面43aから下面43bに貫通した5個の開口部44~48を有する。これらの開口部44~48は矩形の断面形状を有し、先端部(下面43b側の部分)に向かって先すぼまりの形状を有する。これらの開口部44~48の内部には図示省略した塗布液供給機構により塗布液が供給され、この開口部44~48の先端から外部に塗布液が吐出されるようになっている。開口部44~48の先端の矩形の辺の長さa、bは形成しようとする半導体ストライプの幅に応じて決められるが、例えば1~10μm程度であり、開口部44~48の間隔cも例えばこれと同程度とすることができる。
一例として、このノズル43を用いてアノード電極12上に半導体ストライプを形成する方法について説明する。
開口部44~48の内部に例えばそれぞれバンドギャップがEg1、Eg2、Eg3、Eg4、Eg5(Eg1>Eg2>Eg3>Eg4>Eg5)の半導体材料を溶媒に溶かした塗布液を入れる。そして、ノズル43の下面43aを樹脂製ベースフィルム21に近接させ、樹脂製ベースフィルム21を送りながら、塗布液に上から圧力を加えることで開口部44~48の先端から外部に塗布液を吐出する。こうすることで、樹脂製ベースフィルム21のアノード電極12上に、バンドギャップがそれぞれEg1、Eg2、Eg3、Eg4、Eg5の半導体層11-1、11-2、11-3、11-4、11-5を形成する。例えば、バンドギャップがEg1の材料として直径90nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長2300nm)、バンドギャップがEg2の材料として直径4.0nm程度のCdSe微粒子(吸収ピーク波長585nm)、バンドギャップがEg3の材料として直径2nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長800nm)、バンドギャップがEg4の材料として直径4.5nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長1100nm)、バンドギャップがEg5の材料として直径90nm程度のPbSe微粒子(吸収ピーク波長2300nm)を用いる。
この太陽電池によれば、次のような種々の利点を得ることができる。
理解を容易にするために、pn接合の接合面に太陽光が垂直入射するタイプの従来の太陽電池の問題点について説明する。第10図はこの従来の太陽電池の基本構成を示す。第10図に示すように、この従来の太陽電池は、p型半導体層101とn型半導体層102とによりpn接合を構成し、p型半導体層101上にアノード電極103を形成し、n型半導体層102上にカソード電極104を形成したものであり、全体として板状の形状を有する。この太陽電池においては、一方の主面105に垂直に入射する光106の進行方向と、この光106の入射によりpn接合中に生成される電子および正孔がドリフトまたは拡散によりそれぞれカソード電極104およびアノード電極103に向かう方向、言い換えるとキャリアの正味の移動方向とが平行になっている。このため、光106の吸収を十分に行うためにp型半導体層101およびn型半導体層102を厚くしようとすると、アノード電極103とカソード電極104との間の距離が大きくなってしまうため、光吸収の増大とキャリアの収集効率の向上とを両立させることは極めて困難であり、ひいてはこれが光電変換効率の向上を妨げていた。すなわち、従来の太陽電池においては、吸収光子数およびフォトキャリア収集効率は、共に電極間隔、言い換えればp型半導体層101およびn型半導体層102の合計の厚さdに依存し、トレードオフの関係にあるため、光電変換効率ηはdに対し、第11図の太い実線で示すように振舞う。また、従来の太陽電池は、量産性に富むものはその多くが単一のバンドギャップを用いているため、光電変換効率としては、第12図の破線で示すように、理論的に最大でも30%程度しか得られない問題があった。これを補うために、太陽電池をスタック構造としたり、マルチ接合構造や互いにバンドギャップが異なる複数種の半導体を用いて太陽電池を構成したりする試みもあるが、これらの太陽電池はいずれも大面積化が容易ではないという問題がある。理論的には、第12図に示すように、N=10、すなわち10段階のバンドギャップを用いることで約60%の高効率が得られることが期待されているものの、未だに実現されていないという問題があった。
これに対し、この第1の実施の形態による太陽電池においては、アノード電極12とカソード電極13との間に半導体層11が挟まれており、この半導体層11の光入射面にy軸方向から、すなわちアノード電極12とカソード電極13とを最短に結ぶ直線に垂直な方向から太陽光を入射させることができる。また、この半導体層11のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップEは、光の入射方向に段階的に減少している。この場合、吸収光子数は、第3図に示す光の入射方向の各Egi領域11-i、すなわち半導体ストライプの幅W(i=1~N)で支配され、光電変換効率ηは光吸収律速領域ではdに支配されない(第11図の太い破線)。すなわち、この太陽電池の極めて有利な点は、電極数をEgi領域11-iの数Nに依存することなく極力小さく抑えつつ、太陽光の入射方向とキャリアの移動方向とを互いに直交させることにより、光吸収の最適化とキャリア収集効率の最適化とを完全に両立することができることである。さらに、αの小ささは、光の入射方向の各Egi領域11-iの幅Wを大きくすることにより補うことができるので(第9図参照)、半導体層11の材料として、αの大小にとらわれることなく、唯一の支配パラメータであるμの大きい材料を用いることができる。こうすることで、第11図の太い一点鎖線で示すような高い光電変換効率ηを得ることが可能となる。これにより、塗布可能な半導体を用いて塗布技術により半導体層11を作製した場合であっても、従来に比べて極めて高い光電変換効率を容易に得ることができ、半導体ストライプの数を増やすことで熱力学的限界に迫る光電変換効率を得ることが可能である。例えば、現行の約2倍の10%台の高い光電変換効率を持つ有機半導体を用いた太陽電池を容易に得ることができる。
さらに、半導体層11のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップEを光の入射方向に段階的に減少させることにより、入射した太陽光は、順次高エネルギー成分から低エネルギー成分へと隈なく光電変換される。第3図に示すエネルギー分割を用いた場合、熱として散逸するエネルギーを極小化することができ、N=4~8に対して理想的には約40~60%という高い光電変換効率を達成することができる。すなわち、この太陽電池では、電極数を半導体ストライプの数あるいはエネルギー分割数Nに依存することなく極力小さく抑えつつ、太陽光スペクトルの最も高いエネルギー成分から最も低いエネルギー成分まで、そのスペクトルの全幅に亘って光電変換することができる。
また、従来のマルチ接合セルは直列接続配置性により、N個のタンデム構造ではN個のpn接合の作製が必要であるのに対し、この第1の実施の形態による太陽電池は、半導体ストライプの数Nに依存することなく、一回の塗布工程で作製することができる。すなわち、マルチストライプの並列接続配置性により、例えばN~10でも、N個の塗布ノズルを用いた塗布により一括形成が可能である。
また、特に第5図Aおよび第5図Bに示す円板状の太陽電池では、単位面積当たりの接合の面積が極めて大きいため、この太陽電池の主面に垂直方向に光を入射させたとき、半導体層11の光吸収領域を増大させることができる。このため、光電変換効率が高く、しかもフレキシブルな太陽電池を実現することができる。
この第1の実施の形態による太陽電池の基礎的評価を行った例について説明する。
第13図に示すような構造を有する太陽電池を作製した。
第13図に示すように、厚さ200μmのポリエチレンナフタレート(PEN;polyethylene naphtalate)基板51上にアノード電極12として厚さ200nmのインジウム-亜鉛複合酸化物(IZO)薄膜52を形成する。このIZO薄膜52上に、厚さ50nmのPEDOT:PSS薄膜53を介して、半導体層11として厚さ50nmのP3HT:PCBM薄膜(共役系高分子P3HTとフラーレン誘導体PCBMとの混合薄膜)54を形成する。このP3HT:PCBM薄膜54上にカソード電極13としてAl電極55を形成した。励起光源として発光波長が532nmの半導体レーザを用いた。この半導体レーザを用いて、第13図に示すように、PEN基板51、IZO薄膜52、PEDOT:PSS薄膜53、P3HT:PCBM薄膜54およびAl電極55からなる積層体の積層方向と平行な端面にこの端面に垂直な方向からレーザ光を照射してP3HT:PCBM薄膜54を光励起し、そのときにIZO薄膜52とAl電極55との間に流れる電流を測定することにより、太陽電池の電流-電圧特性を測定した。この電流-電圧特性の測定結果により、太陽電池の光電変換特性を評価することができる。その結果を第14図Aおよび第14図Bに示す。第14図Bは第14図Aの一部の拡大図である。第15図Aに示すように、PEDOT:PSS薄膜54の端面にスポット形状のレーザ光が照射されている様子が分かる。第15図Bに、第15図Aにおけるレーザ光が照射されている部位の拡大図を示す。第15図Bに示すように、レーザ光のスポット径は約30μmであった。一方、比較のために、第16図に示すように、PEN基板51、IZO薄膜52、PEDOT:PSS薄膜53、P3HT:PCBM薄膜54およびAl電極55からなる積層体のPEN基板51の裏面にレーザ光を照射してP3HT:PCBM薄膜54を光励起し、そのときにIZO薄膜52とAl電極55との間に流れる電流を測定することにより、太陽電池の電流-電圧特性を測定した。その結果を第17図Aおよび第17図Bに示す。第17図Bは第17図Aの一部の拡大図である。
第14図Aおよび第14図Bと第17図Aおよび第17図Bとを比較すると分かるように、太陽電池のPEN基板51の裏面にこの裏面に垂直な方向からレーザ光を照射する場合に比べて、太陽電池の積層体の積層方向に平行な端面にレーザ光を照射する場合の方が、得られる電流量は3倍以上多い。
第18図は、P3HT:PCBM薄膜54の厚さd(nm)を変えて、レーザ光を第13図または第16図に示すように照射したときの短絡電流Iscと開放端電圧Vocとの積Isc×Vocを測定した結果を示す。Isc×Vocは光電変換効率ηと比例関係にあり、また、P3HT:PCBM薄膜54の厚さdはPEDOT:PSS薄膜53の厚さを無視すると電極間隔(IZO薄膜52とAl電極55との間隔)に相当するから、第18図は第11図と対応すると考えることができる。第18図において、●はレーザ光を第16図に示すように照射したとき(従来)、○はレーザ光を第13図に示すように照射したとき(端面入射)、▲は紫外レーザ光を第13図に示すように照射したとき(端面入射)のデータを示す。第18図には、P3HT:PCBM薄膜54の厚さdと比例関係にある曲線、および、exp(-d/30nm)と比例関係にある曲線も示してある。
第18図より、○のデータは概ね、exp(-d/30nm)の曲線に乗っていることが分かる。このことから、第11図に示す予測が正しいことが裏付けられる。
次に、この発明の第2の実施の形態による太陽電池について説明する。
この太陽電池においては、第1の実施の形態による太陽電池における薄膜状のアノード電極12およびカソード電極13の代わりに、金属などの導電材料からなるワイヤーを用いる。第19図にこの太陽電池の一部の平面図を示す。第19図に示すように、この場合、太陽電池の主面に垂直な方向に互いに平行に延び、かつ互いに電気的に接続されている多数のワイヤー61によりアノード電極12が形成されており、同じく太陽電池の主面に垂直な方向に互いに平行に延び、かつ互いに電気的に接続されている多数のワイヤー62によりカソード電極13が形成されている。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、それぞれワイヤー61、62によりアノード電極12およびカソード電極13が形成されていることにより、太陽電池に入射する光がこれらのアノード電極12およびカソード電極13により吸収される確率が大幅に低減し、入射光を極めて有効に利用することができるという利点を得ることができる。
次に、この発明の第3の実施の形態による太陽電池について説明する。
この太陽電池においては、第2の実施の形態による太陽電池におけるワイヤー61、62の代わりに、Auなどの金属微粒子を互いに導通するように直線状に多数配列したものを用いる。その他のことは第2の実施の形態と同様である。
この第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様な利点に加えて、Auなどの金属微粒子に発生するプラズモンによるエンハンスメント効果を利用することができるため、太陽電池の光電変換効率のより一層の向上を図ることができるという利点を得ることができる。
次に、この発明の第4の実施の形態による太陽電池について説明する。
第20図Aおよび第20図Bはこの太陽電池を示す。第20図Aおよび第20図Bに示すように、この太陽電池71は、矩形の断面形状を有する繊維状の形状を有する。この太陽電池71の断面の一辺の長さは例えば0.1mm~1mm程度であり、長さは必要に応じて選ばれる。この太陽電池71は、例えば、第1の実施の形態による製造方法により、第1図に示す第1の実施の形態による太陽電池と同様な構造72(詳細構造は省略するが、第20図Bに示す断面73は、例えば、第6図に示されたテープ状構造のエッジのような構造を有する)を例えば10~100周期繰り返し積層したものを形成し、これを長手方向に例えばストライプ状に切断することにより製造することができるが、これに限定されるものではなく、他の方法により製造してもよい。
この繊維状の形状を有する太陽電池71、すなわち光電変換機能を有する繊維状構造体を用いて織物や布地を作ることができ、これを用いて衣服を作ることができる。一例を第21図に示す。第21図に示すように、この光電変換機能を有する繊維状構造体78を横糸および縦糸に用いて衣服を作ることができる。符号79はこの繊維状構造体78の断面を示す。人がこの衣服を着た場合、体から外部に輻射される赤外線がこの繊維状構造体78に入射して光電変換が行われることにより、発電を行うことが可能である。人の体温は概ね36℃程度であるから、人の体の表面からは波長約5~10μmの赤外線が輻射され、そのパワーは50W程度であり、最大で約1.5Wの発電が可能である。また、この繊維状構造体78を構成する半導体ストライプのバンドギャップのラインナップを異なる光エネルギー帯に対して複数用意することにより、単一の衣服ながら、例えば、ブロードなスペクトルを有する太陽光と、同じくブロードなスペクトルを有する人体からの黒体輻射との両方を電気エネルギーに変換することができる。
また、この繊維状構造体78よりなる織物あるいは壁紙材料を屋根裏部屋やボイラー横など高温の黒体輻射源の近傍に、この黒体輻射源とできるだけ温度差が大きいように、かつこの黒体輻射源と温度平衡に至らないように、張ることにより、効率よく黒体輻射を電気エネルギーに変換することができる。
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、材料、形状、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、形状、配置などを用いてもよい。必要に応じて、上述の実施の形態の二以上を組み合わせてもよい。
また、第1~第3の実施の形態による太陽電池を複数敷き詰めて太陽電池システムを構成してもよい。これらの太陽電池は直列または並列に接続することができる。太陽電池を六角形の面状に形成することにより、この六角形の形状を有する太陽電池を隙間なく一面に敷き詰めて太陽電池システムを構成することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5A】
4
【図5B】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8A】
8
【図8B】
9
【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
14
【図12】
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【図13】
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【図14A】
17
【図14B】
18
【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20A-B】
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【図21】
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【図15A】
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【図15B】
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