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明細書 :乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物及び方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6026408号 (P6026408)
登録日 平成28年10月21日(2016.10.21)
発行日 平成28年11月16日(2016.11.16)
発明の名称または考案の名称 乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物及び方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
A61K  39/395       (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
C12N 15/00 F
A61K 39/395 T
請求項の数または発明の数 11
全頁数 40
出願番号 特願2013-512406 (P2013-512406)
出願日 平成24年4月25日(2012.4.25)
国際出願番号 PCT/JP2012/061100
国際公開番号 WO2012/147800
国際公開日 平成24年11月1日(2012.11.1)
優先権出願番号 2011097432
優先日 平成23年4月25日(2011.4.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年4月8日(2015.4.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】妙本 陽
【氏名】小園 聡子
【氏名】佐藤 史顕
【氏名】戸井 雅和
【氏名】上野 貴之
【氏名】王 智鵬
【氏名】辻本 豪三
【氏名】清水 一治
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】星 浩臣
参考文献・文献 特開2010-094075(JP,A)
特表2008-535482(JP,A)
国際公開第2009/148593(WO,A1)
国際公開第2009/080437(WO,A1)
国際公開第2006/118308(WO,A1)
国際公開第2007/026896(WO,A1)
特開2009-065969(JP,A)
国際公開第2009/142257(WO,A1)
特開2010-000041(JP,A)
特表2010-522554(JP,A)
VEGRAN F. et al.,Gene expression profile and response to trastuzumab-docetaxel-based treatment in breast carcinoma,Br. J. Cancer,2009年,Vol.101,p.1357-1364
稲澤穣治,アレイCGHの原理と実際(1),アレイCGH診断活用ガイドブック,株式会社医薬ジャーナル社,2008年 2月15日,初版,p.18-21
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
miR-1234、miR-513a-5p、miR-494、miR-26a、let-7a、let-7b、let-7g、miR-940、miR-1470、miR-200c、let-7e、miR-1228、let-7c、miR-1229、miR-145、miR-181a、miR-191、let-7d、及びmiR-23aからなる群から選択される3以上の標的核酸の発現を測定するための下記の(a)~(e)に示すポリヌクレオチドからなる群から選択される以上のポリヌクレオチドを含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物:
(a)配列番号1~9、1115、17~19、及び22~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基からなるその断片
(b)配列番号1~9、1115、17~19、及び22~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(c)配列番号1~9、1115、17~19、及び22~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基からなるその断片
(d)配列番号1~9、1115、17~19、及び22~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(e)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項2】
miR-125a-5p、miR-205、miR-125b、及びmiR-92aからなる群から選択される1以上の別の標的核酸の発現を測定するための下記の(f)~(j)に示すポリヌクレオチドからなる群から選択される1以上のポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物:
(f)配列番号10、16、20及び21で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基からなるその断片
(g)配列番号10、16、20及び21で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(h)配列番号10、16、20及び21で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基からなるその断片
(i)配列番号10、16、20及び21で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(j)前記(f)~(i)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項3】
miR-1234、miR-513a-5p、miR-494、miR-26a、let-7a、let-7b、let-7g、miR-940、miR-1470、miR-200c、let-7e、miR-1228、let-7c、miR-1229、miR-145、miR-181a、miR-191、let-7d、及びmiR-23aからなる群から選択される3以上の標的核酸の発現を測定するための請求項1に記載の(a)~(e)に示すポリヌクレオチドの3以上のポリヌクレオチドを含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用キット。
【請求項4】
miR-125a-5p、miR-205、miR-125b、及びmiR-92aからなる群から選択される1以上の別の標的核酸の発現を測定するための請求項2に記載の(f)~(j)に示すポリヌクレオチドの1以上のポリヌクレオチドをさらに含む、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号1~23のいずれかで表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、又はそれらの16以上の連続した塩基からなる断片、或いはそれらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドである、請求項3~4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、別個に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装されている、請求項3~5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
miR-1234、miR-513a-5p、miR-494、miR-26a、let-7a、let-7b、let-7g、miR-940、miR-1470、miR-200c、let-7e、miR-1228、let-7c、miR-1229、miR-145、miR-181a、miR-191、let-7d、及びmiR-23aからなる群から選択される3以上の標的核酸の発現を測定するための請求項1に記載の(a)~(e)に示すポリヌクレオチドの3以上のポリヌクレオチドを含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用DNAチップ。
【請求項8】
miR-125a-5p、miR-205、miR-125b、及びmiR-92aからなる群から選択される1以上の別の標的核酸の発現を測定するための請求項2に記載の(f)~(j)に示すポリヌクレオチドの1以上のポリヌクレオチドをさらに含む、請求項7に記載のDNAチップ。
【請求項9】
請求項1~2のいずれかに記載の組成物、請求項3~6のいずれかに記載のキット、請求項7~8のいずれかに記載のDNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、乳ガン患者由来の試料における3以上の標的核酸の発現量を測定し、乳ガン患者がトラスツズマブに対する治療感受性を発揮することの可能性をin vitroで予測支援することを含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測を支援するための方法。
【請求項10】
DNAチップを用いる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~2のいずれかに記載の組成物、請求項3~6のいずれかに記載のキット、請求項7~8のいずれかに記載のDNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、乳ガン患者がトラスツズマブに対する治療感受性を持つことが既知の複数の試料中の標的核酸の発現量、及び乳ガン患者がトラスツズマブに対する治療感受性を持たないことが既知の複数の試料中の標的核酸の発現量をin vitroで測定する第1の工程、前記第1の工程で得られた該標的核酸の発現量を教師としたサポートベクターマシンに基づく判別式を作成する第2の工程、乳ガン患者の手術時又は生検検査時に採取した試料中の該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にin vitroで測定する第3の工程、前記第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量を代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、乳ガン患者がトラスツズマブに対する治療感受性を持つことを予測支援する第4の工程を含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測を支援するための方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)に有用な組成物、該組成物を利用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)方法、及び該組成物を利用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
乳ガンとは、乳房組織内の細胞が悪性化して無秩序に増殖する疾患であり、女性の罹患率は日本で25人~30人に1人、欧米では8~10人に1人とされる。なお、罹患率は低いが男性も乳ガンに罹患することが知られている。最近の研究により、乳ガンは異なる生物学的特性を有する多様な集団からなっており、治療に対する反応性や予後がそれぞれの集団の患者で異なることがわかってきた。すなわち、DNAチップ解析による網羅的な発現遺伝子解析によって乳ガンは大きくわけて5つの分子サブタイプに分類できることが示唆されている。ただし、日常臨床においては、エスロトジェン受容体、プロジェステロン受容体、Her2タンパク質の発現を検出することによって4つのサブタイプに分類して治療方針が検討されることが多い。乳ガンの治療は原則的には外科療法であるが、進行度や転移、全身状態、乳ガンの分類によって薬物療法や放射線療法が併用される。特に薬物療法の実施においては、上述の乳ガンサブタイプに応じて、対象患者に投与すべき薬物を評価し、適切な治療方針を選択することが重要である(非特許文献1)。
【0003】
これらのサブタイプの中で、乳ガンの約25%を占めるHer2陽性乳ガンは悪性度、転移率が高く予後不良であり、Her2陽性乳ガンの治療成績の向上は今後も極めて重要な課題となっている。
【0004】
トラスツズマブ(商品名「ハーセプチン」(登録商標、中外製薬))は厚生労働省によって認可された抗体医薬であり、Her2陽性乳ガンの細胞表面に存在するHer2タンパク質に結合することで抗腫瘍効果を引き起こす。トラスツズマブはHer2陽性乳ガンに対して用いられる第一選択薬である。しかしその一方で、Her2陽性乳ガン患者の中には、トラスツズマブの効果がないトラスツズマブ非感受性乳ガン患者や、トラスツズマブの投薬によって心不全・呼吸困難・アレルギーといった重篤な副作用を生じる患者の存在も知られている。現在の臨床診断において乳ガンがHer2陽性であるか否かを区別するために用いられている手法は免疫組織化学的手法によるHer2タンパク質の過剰発現の検出、及び/又はHer2タンパク質に対応するゲノム上の遺伝子増幅の検出であるが、これの手法では上述のHer2陽性であるにもかかわらずトラスツズマブ非感受性を示す乳ガン患者、及び副作用を併発する乳ガン患者を判別することはできない。
【0005】
具体的には、免疫組織化学的手法によってHer2タンパク質の過剰発現が認められ、トラスツズマブ単剤による治療を受けた患者のうちトラスツズマブに感受性を示した患者の割合は35%以下であることが知られており(非特許文献2)、免疫組織化学的手法によるHer2タンパク質の過剰発現の検出又はHer2タンパク質に対応するゲノム上の遺伝子増幅の検出によってHer2陽性を区別する検査方法(非特許文献3の検査方法)において、トラスツズマブに他の抗ガン剤を組み合わせた治療を受けた患者のうちトラスツズマブに感受性を示した患者の割合は65.2%以下であることが知られている(非特許文献3)。すなわち、現在、臨床現場で利用されている非特許文献3の検査方法でのトラスツズマブ感受性予測の精度は65.2%にとどまる。
【0006】
一方、乳ガン治療のための薬物療法は特に近年目覚しい発展をとげており、ガンの性質に応じてさまざまな治療薬を選択することが可能になりつつある。このような状況において、現在、Her2陽性を区別するために用いられている方法以上に高い精度で、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測することが可能になれば、Her2陽性乳ガン患者の治療法の選択をより容易にし、薬物療法の効果の最大化及び副作用の最小化ができると考えられる。
【0007】
これまでのHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性に関する報告には、非特許文献4に記載のPTENタンパク質の活性化、非特許文献5に記載のCyclin Eの遺伝子増幅及び/又は過剰発現、非特許文献6に記載のmiR-125a及び/又はmiR-125bによるHer2タンパク質発現の制御についてのものが存在する。
【0008】
非特許文献4では、Her2陽性乳ガン患者のPTENの発現量を免疫組織学的手法で評価し、PTENの発現を抑制した細胞はトラスツズマブによる増殖抑制を受けにくいこと、PTENの発現量がHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブによる病勢進行の抑制と相関していることを示している。
【0009】
また非特許文献5では、Her2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性患者におけるCyclin Eタンパク質の発現量を免疫組織化学的手法で評価し、トラスツズマブと他の抗ガン剤による治療を受けた患者群においてCyclin Eタンパク質の発現量が多い群においては病勢が進行しなかった患者の割合が高かったことを示している。
【0010】
また、非特許文献6はmiR-125a及びmiR-125bの発現量増加がトラスツズマブの標的タンパク質であるHer2タンパク質の発現量を低下させることを示している。
【0011】
また、let-7a(特許文献1)、let-7b(特許文献1)、及びmiR-145(特許文献2)は乳ガン患者で発現量が低下すること、そしてmiR-200c(特許文献3)は乳ガン患者で発現量が上昇することが知られる。
【先行技術文献】
【0012】

【特許文献1】US2008/0076674 A1
【特許文献2】特表2010-510964
【特許文献3】特表2010-504350
【0013】

【非特許文献1】日本乳癌学会編 乳癌取扱い規約 第16版 2008年、日本乳癌学会編 乳癌診療ガイドライン1.薬物療法 2010年版 2010年
【非特許文献2】C.L.Vogelら、2002年、Journal of Clinical Oncology、第20巻、p.719-726
【非特許文献3】A.U.Buzdarら、2005年、Journal of Clinical Oncology、第23巻、p3676-3685
【非特許文献4】Yoichi,N.ら、2004年、Cancer Cell、第6巻、p.117-127
【非特許文献5】Maurizio,S.ら、2011年、Proc Natl Acad Sci USA.、Early Edition、pnas.1014835108
【非特許文献6】Scott,GK.ら、2007年、J Biol Chem.、第282巻、p.1479-1486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、先行技術においてトラスツズマブに対する治療感受性と結果的に相関する発現量を示す遺伝子、タンパク質は複数知られているが、いずれにおいてもHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するマーカーとしての価値は十分に見出されていない。
【0015】
非特許文献4のPTENはPTENの発現量によって個々の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を投与前に予測することは不可能である。そして、非特許文献5のCyclin EはCyclin Eタンパク質の発現量によって個々の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測することはできない。また、非特許文献6のmiR-125a及びmiR-125bはmiR-125a及びmiR-125bの発現量増加とHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性との関係は不明であり、いずれを用いることによっても個々の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測することはできない。従って、これらの発現量を指標に用いて一般に臨床上の利用は行われておらず、さらに予測精度が高い乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーが切望されている。
【0016】
本発明は、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)に有用な組成物、該組成物を利用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)方法、及び該組成物を利用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
乳ガン患者のトラスツズマブに対する感受性の予測用の遺伝子マーカー探索の方法としては、乳ガン患者に対するトラスツズマブよる治療又はトラスツズマブとその他の抗ガン剤の併用による治療によって検査時、治療前、治療中、もしくは治療後に採取する乳ガン患者由来組織、体液、もしくは分泌物に含まれる遺伝子、タンパク質、もしくは代謝産物などの量をトラスツズマブに対する治療感受性のある患者とトラスツズマブに対する治療感受性のない患者の間で何らかの手段を用いて比較する方法が挙げられる。
【0018】
DNAチップを用いた遺伝子発現量解析は、近年、このようなマーカー探索の手法として特に汎用されている。DNAチップには数百から数万種の遺伝子に対応した塩基配列を利用したプローブが固定されている。被検試料をDNAチップに添加することによって試料中の遺伝子がプローブと結合し、この結合量を何らかの手段によって測定することにより、被検試料中の遺伝子量を知ることができる。DNAチップ上に固定化するプローブに対応した遺伝子の選択は自由であり、また検査時、治療前、治療中、もしくは治療後に採取する乳ガン患者由来組織、FFPE標本、体液、もしくは分泌物などの試料を用いて、該試料中の遺伝子発現量を比較することによって乳ガンの診断に利用可能なマーカーとなりうる遺伝子群を推定することが可能である。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明者らは治療前の乳ガン患者から採取した乳ガン病変部の針生検組織から得た遺伝子発現量をDNAチップによって解析し、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測しうるマーカーとなる遺伝子を見出し、さらにそれらの遺伝子発現量がトラスツズマブに対する治療感受性の高い乳ガン患者において、乳ガン患者から得た乳ガン病変部の遺伝子発現量が減少、低減もしくは増加、増大していることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
1.発明の概要
本発明は、以下の特徴を有する。
【0021】
本発明は、第1の態様において、下記の(a)~(j)に示すポリヌクレオチド、その変異体又はその断片からなる群から選択される2以上のポリヌクレオチドを含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物を提供する。
【0022】
(a)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(b)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(c)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(d)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(e)前記(a)~(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。
【0023】
(f)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(g)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(h)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(i)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(j)前記(f)~(i)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。
【0024】
本発明は、第2の態様において、上記の(a)~(e)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片の2以上を含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用キットを提供する。
【0025】
その実施形態において、上記キットは、上記の(f)~(j)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片の1又2をさらに含む。
【0026】
また、上記ポリヌクレオチドが、配列番号1~23のいずれかで表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの16以上の連続した塩基の2以上を含む断片である、上記のキットを提供する。
【0027】
さらに別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドが、別個に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装されている、上記のキットを提供する。
【0028】
本発明は、第3の態様において、上記の(a)~(e)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片の2以上を含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用DNAチップを提供する。
【0029】
その実施形態において、上記DNAチップは、上記の(f)~(j)に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片の1又2をさらに含む。
【0030】
本発明は、第4の態様において、上記の組成物のポリヌクレオチドの乳ガン患者由来の試料における標的核酸の発現量の2以上を測定し、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性をin vitroで予測、判定若しくは評価することを含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測のための方法を提供する。
【0031】
その実施形態において、上記の方法は、本発明の第2の態様に記載のキットを使用する。
【0032】
別の実施形態において、上記の方法は、本発明の第3の態様に記載のDNAチップを使用する。
【0033】
本発明はさらに、第5の態様において、上記のいずれかに記載の組成物、上記のいずれかに記載のキット、上記のいずれかに記載のDNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、乳ガン患者がトラスツズマブに対して治療感受性を持つことが既知の複数の試料中の標的核酸の発現量をin vitroで測定する第1の工程、前記第1の工程で得られた該標的核酸の発現量を測定し、該標的核酸の発現量から算出される遺伝子発現量を教師とした判別式(サポートベクターマシン)を作成する第2の工程、乳ガン患者の手術時又は生検検査時に採取した試料中の該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にin vitroで測定する第3の工程、前記第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量から算出した乳ガン病変部における遺伝子発現量を代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、乳ガン患者がトラスツズマブに対して治療感受性を発揮することの可能性を予測、判定若しくは評価する第4の工程を含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測のための方法を提供する。
【0034】
本発明はさらに、第6の態様において、上記のいずれかの組成物、上記のいずれかのキット、又は上記のいずれかのDNAチップ、又はそれらの組合せの、乳ガン患者がトラスツズマブに対して治療感受性を持つことの可能性をin vitroで予測、判定若しくは評価するための乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物及び方法への使用を提供する。
【0035】
2.定義
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
【0036】
ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNAなどの略号による表示は、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)及び当技術分野における慣用に従うものとする。
【0037】
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA及びDNAのいずれも包含する核酸に対して用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、miRNA、siRNA、snoRNA、snRNA、non-coding RNA及び合成RNAのいずれもが含まれる。また、本明細書では、ポリヌクレオチドは核酸と互換的に使用される。
【0038】
本明細書において「遺伝子」とは、RNA、及び2本鎖DNAのみならず、それを構成する正鎖(又はセンス鎖)又は相補鎖(又はアンチセンス鎖)などの各1本鎖DNAを包含することを意図して用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。
【0039】
従って、本明細書において「遺伝子」は、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片、及びヒトゲノムのいずれも含む。また該「遺伝子」は特定の塩基配列(又は配列番号)で示される「遺伝子」だけではなく、これらによってコードされるRNAと生物学的機能が同等であるRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「核酸」が包含される。かかる同族体、変異体又は誘導体をコードする「核酸」としては、具体的には、後に記載したストリンジェントな条件下で、上記の配列番号1~23で示されるいずれかの塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「核酸」を挙げることができる。なお、「遺伝子」は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンを含むことができる。
【0040】
本明細書において「転写産物」とは、遺伝子のDNA配列を鋳型にして合成されたRNAのことをいう。RNAポリメラーゼが遺伝子の上流にあるプロモーターと呼ばれる部位に結合し、DNAの塩基配列に相補的になるように3'末端にリボヌクレオチドを結合させていく形でRNAが合成される。このRNAには遺伝子そのもののみならず、発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンをはじめとする転写開始点からポリA配列の末端にいたるまでの全配列が含まれる。
【0041】
また、本明細書において「マイクロRNA(miRNA)」は、特に言及しない限り、ヘアピン様構造のRNA前駆体として転写され、RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素により切断され、RISCと称するタンパク質複合体に取り込まれ、mRNAの翻訳抑制に関与する16~25塩基、好ましくは16~25塩基、より好ましくは20~25塩基の非コーディングRNAを意図して用いられる。また本明細書で使用する「miRNA」は特定の塩基配列(又は配列番号)で示される「miRNA」だけではなく、該「miRNA」の前駆体(pre-miRNA又はpri-miRNA)を含有し、これらによってコードされるmiRNAと生物学的機能が同等であるmiRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「miRNA」も包含する。かかる前駆体、同族体、変異体又は誘導体をコードする「miRNA」としては、具体的には、miRBase release16(http://www.mirbase.org/)により同定することができ、後に記載したストリンジェントな条件下で、上記の配列番号1~23で示されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「miRNA」を挙げることができる。
【0042】
本明細書において「プローブ」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するために使用されるポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
【0043】
本明細書において「プライマー」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し、増幅する、連続するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
【0044】
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、配列番号によって定義される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチドの全長配列、又はその部分配列、(ここでは便宜上、これを正鎖と呼ぶ)に対してA:T(U)、G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズできる程度の相補関係を有するものであってもよい。
【0045】
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、プローブが他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、ハイブリダイゼーションが行われる環境によって異なる。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブに対して100%相補的である標的配列が同定され得る。
【0046】
本明細書において「変異体」とは、核酸の場合、多型性、突然変異などに起因した天然の変異体、あるいは配列番号1~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1、2もしくは3又はそれ以上、好ましくは1もしくは2個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは配列番号1~23のmiRNAの前駆体RNAの塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1又は2以上、好ましくは1又は数個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは該塩基配列の各々又はその部分配列と約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体、あるいは該塩基配列又はその部分配列を含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドと上記定義のストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を意味する。
【0047】
本明細書において「数個」とは、約20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2個の整数を意味する。
【0048】
本明細書において、変異体は、部位特異的突然変異誘発法、PCR法を利用した突然変異導入法などの周知の技術を用いて作製可能である。
【0049】
本明細書において「%同一性」は、2つの配列を最大一致度となるように整列(アラインメント)したときに、総塩基数(ギャップのある場合には、ギャップ数も含む。)あたりの同一塩基の数の割合(%)を指し、上記のBLASTやFASTAによるタンパク質/遺伝子の検索システムを用いて、ギャップを導入して、又はギャップを導入しないで、決定することができる(Karlin,S.ら、1993年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第90巻、p.5873-5877;Altschul,S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p.403-410;Pearson,W.R.ら、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第85巻、p.2444-2448)。
【0050】
本明細書において「誘導体」とは、修飾核酸、非限定的に例えば、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体、PNA(peptide nucleic acid; Nielsen, P.E. et al., 1991, Science 254:1497)、LNA(locked nucleic acid; Obika, S. et al., 1998, Tetrahedron Lett. 39:5401)などを含むことを意味する。
【0051】
本明細書において「予測、判定、検出又は診断用組成物」とは、乳ガンの罹患の有無、罹患の程度、乳ガンの改善の有無や改善の程度、乳ガンの治療に対する感受性を診断するために、また乳ガンの予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものをいう。これには乳ガンの罹患に関連して生体内、特に乳房組織において発現が変動する遺伝子を特異的に認識し、また結合することのできるヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドを包含する。これらのヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、上記性質に基づいて生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子を検出するためのプローブとして、また生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
【0052】
本明細書でおいて「予測」とは、予測、判定、評価、検出又は診断を指す。
【0053】
本明細書において予測、判定、評価、検出又は診断の対象となる「試料」とは、乳ガンの発生、及び乳ガンに対する治療効果の発揮にともない本発明の遺伝子が発現変化する組織及び生体材料を指す。具体的には乳房組織及びその周辺の脈管、リンパ節及び臓器、また転移が疑われる臓器、皮膚、及び血液、尿、唾液、汗、組織浸出液などの体液、その他、便、毛髪などを指す。
【0054】
本明細書で使用される「FFPE標本」とは、生体組織をホルマリンで固定し、パラフィンで包埋したホルマリン固定パラフィン包埋標本を指す。
【0055】
本明細書で使用される「トラスツズマブに対する治療感受性」とは、トラスツズマブによる治療によって、乳ガンの病勢進行が抑制される性質のことを言う。病勢の進行を検出する方法は、病理学的検討によってもよいし、画像診断による腫瘍の大きさの評価や患者の状態などの臨床的検討によってもよい。乳ガン患者に対するトラスツズマブによる治療においては、トラスツズマブと共にトラスツズマブ以外の抗ガン剤の1つ又は複数が併用されてもよい。
【0056】
本明細書で使用される「抗ガン剤」とは、トラスツズマブと併用されて乳ガンの薬物療法で使用される薬剤を指す。抗ガン剤としては、例えば、シクロフォスファミド、チオテパなどのアルキル化剤、フルオロウラシル、テガフール、カルモフール、ドキシフルリジン、カペシタビンなどの5-FU系代謝拮抗剤、メトトレキサート、ゲムシタビンなどの代謝拮抗薬、アドリアマイシン、エピルビシン、ピラルビシンなどのアンスラサイクリン系薬、ミトザントロンなどのアンスラキノン系薬、マイトマイシンCなどの抗ガン抗生物質、ピノレルビンなどのビンアルカロイド、パクリタキセル、ドセタキセルなどのタキサン系薬、イリノテカンなどのトポイソメラーゼI阻害薬、タモキシフェン、トレミフェンなどの抗エストロゲン薬、ファドロゾール、アナストロゾール、エクセメスタン、レトロゾールなどのアロマターゼ阻害薬、メドロキシプロゲステロンなどの黄体ホルモン剤、ゴセレリン、リュープロレリンなどのLH-RHアゴニスト、シスプラチン、カルボプラチンなどのプラチナ製剤、エリブリンなどの非タキサン系微小管ダイナミクス阻害剤、ラパチニブ、ベバシズマブ、パーツズマブなどの分子標的薬などが挙げられる。
【0057】
本明細書で使用される「順位」とは、Rainer,B.ら、2004年、FEBS Letters、第573巻、p.83-92に示す偽陽性率を考慮した統計学的検定において算出される順位統計量を指す。
【0058】
本明細書で使用される「AUROC値」とは、受信者動作特性曲線(ROC曲線)下の面積を意味し、患者を陽性群と陰性群に分けるための予測、判定、評価、検出又は診断の方法の精度を測る指標となる。これらの曲線では、評価対象となる方法が示す結果に関して、陽性患者において陽性の結果がでる確率(感度)と、陰性患者において陰性の結果がでる確率(特異性)の逆数がプロットされる。
【0059】
本明細書において、「Leave-one-out crossvalidation法(以下、LOOCV法)」とは、データセットから1つの検体を除いて対象群と被対象群を検定、判別式を作成し、除いた1つの検体で判別式を評価する、これをデータセットすべての検体に対して繰り返した評価の平均を全体の精度とする方法を意味する。
【0060】
本明細書で使用される「miR-1234遺伝子」又は「miR-1234」という用語は、配列番号1に記載のhsa-miR-1234遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0005589)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-1234遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0061】
本明細書で使用される「miR-513a-5p遺伝子」又は「miR-513a-5p」という用語は、配列番号2に記載のhsa-miR-513a-5p遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0002877)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-513a-5p遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0062】
本明細書で使用される「miR-494遺伝子」又は「miR-494」という用語は、配列番号3に記載のhsa-miR-494遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0002816)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-494遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0063】
本明細書で使用される「miR-26a遺伝子」又は「miR-26a」という用語は、配列番号4に記載のhsa-miR-26a遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000082)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-26a遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0064】
本明細書で使用される「let-7a遺伝子」又は「let-7a」という用語は、配列番号5に記載のhsa-let-7a遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000062)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-let-7a遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0065】
本明細書で使用される「let-7b遺伝子」又は「let-7b」という用語は、配列番号6に記載のhsa-let-7b遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000063)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-let-7b遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0066】
本明細書で使用される「let-7g遺伝子」又は「let-7g」という用語は、配列番号7に記載のhsa-let-7g遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000414)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-let-7g遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0067】
本明細書で使用される「miR-940遺伝子」又は「miR-940」という用語は、配列番号8に記載のhsa-miR-940遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0004983)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-940遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0068】
本明細書で使用される「miR-1470遺伝子」又は「miR-1470」という用語は、配列番号9に記載のhsa-miR-1470遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0007348)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-1470遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0069】
本明細書で使用される「miR-125a-5p遺伝子」又は「miR-125a-5p」という用語は、配列番号10に記載のhsa-miR-125a-5p遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000443)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-125a-5p遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0070】
本明細書で使用される「miR-200c遺伝子」又は「miR-200c」という用語は、配列番号11に記載のhsa-miR-200c遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000617)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-200c遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0071】
本明細書で使用される「let-7e遺伝子」又は「let-7e」という用語は、配列番号12に記載のhsa-let-7e遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000066)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-let-7e遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0072】
本明細書で使用される「miR-1228遺伝子」又は「miR-1228」という用語は、配列番号13に記載のhsa-miR-1228遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0005583)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-1228遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0073】
本明細書で使用される「let-7c遺伝子」又は「let-7c」という用語は、配列番号14に記載のhsa-let-7c遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000064)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-let-7c遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0074】
本明細書で使用される「miR-1229遺伝子」又は「miR-1229」という用語は、配列番号15に記載のhsa-miR-1229遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0005584)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-1229遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0075】
本明細書で使用される「miR-205遺伝子」又は「miR-205」という用語は、配列番号16に記載のhsa-miR-205遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000266)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-205遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0076】
本明細書で使用される「miR-145遺伝子」又は「miR-145」という用語は、配列番号17に記載のhsa-miR-145遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000437)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-145遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0077】
本明細書で使用される「miR-181a遺伝子」又は「miR-181a」という用語は、配列番号18に記載のhsa-miR-181a遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000256)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-181a遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0078】
本明細書で使用される「miR-191遺伝子」又は「miR-191」という用語は、配列番号19に記載のhsa-miR-191遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000440)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-191遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0079】
本明細書で使用される「miR-125b遺伝子」又は「miR-125b」という用語は、配列番号20に記載のhsa-miR-125b遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000423)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-125b遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0080】
本明細書で使用される「miR-92a遺伝子」又は「miR-92a」という用語は、配列番号21に記載のhsa-miR-92a遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000092)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-92a遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0081】
本明細書で使用される「let-7d遺伝子」又は「let-7d」という用語は、配列番号22に記載のhsa-let-7d遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000065)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-let-7d遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0082】
本明細書で使用される「miR-23a遺伝子」又は「miR-23a」という用語は、配列番号23に記載のhsa-miR-23a遺伝子(miRbase Accession No.MIMAT0000078)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa-miR-23a遺伝子は、Lagos-Quintana,M.ら、2001年、Science、第294巻、p.853-858に記載される方法によって得ることができる。
【0083】
本発明は、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)に有用な組成物、該組成物を利用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)方法、及び該組成物を利用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測(或いは、判定、評価、検出又は診断)用キットを提供するものであり、これによって、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性に対して特異的かつ高予測率の、及び迅速でかつ簡便な、予測(或いは、判定評価、検出又は診断)方法を提供するという格別の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】表1に記載の遺伝子を決定するための解析の流れを示す。
【図2】表1に記載の遺伝子に対応する配列番号1~23のポリヌクレオチドを組み合わせて用いた場合の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測率を示す。縦軸は乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測に対するAUROC値、横軸は表1に記載の遺伝子に対応する配列番号1~23において、35症例の乳ガン患者に対してLOOCV法によるSVM法を用いた場合の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測に必要な遺伝子の合計数をそれぞれ示す。
【図3】図1に記載の手順で選び出されるSVM法を用いた乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測に用いられる20種の遺伝子の、LOOCV法による選択結果を示す。図3に示す表の行方向は、34症例の学習データセットと1つのテストデータの組み合わせからなる35種類の教師データセットを示す。列方向は、各教師データセットにおいて選ばれた予測用遺伝子の配列番号を示す。表中の数字は、各教師データセットにおいて予測用遺伝子を選択した際に、当該遺伝子が何番目に選択されたかの優先順位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下に本発明をさらに具体的に説明する
1.乳ガンの標的核酸
本発明の上記定義の、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物及びキットを使用して乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するためのマーカーとしての標的核酸には、例えば、配列番号1~23で表される塩基配列を含むヒト遺伝子(すなわち、それぞれ、miR-1234、miR-513a-5p、miR-494、miR-26a、let-7a、let-7b、let-7g、miR-940、miR-1470、miR-125a-5p、miR-200c、let-7e、miR-1228、let-7c、miR-1229、miR-205、miR-145、miR-181a、miR-191、miR-125b、miR-92a、let-7d、及びmiR-23a)、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体が含まれる。ここで、遺伝子、同族体、転写産物、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。好ましい標的核酸は、配列番号1~23で表される塩基配列を含むヒト遺伝子、それらの転写産物、より好ましくは該転写産物、すなわちmiRNA、その前駆体RNAであるpri-miRNA及びpre-miRNAである。

【0086】
本発明において乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するための標的となる上記遺伝子はいずれも、トラスツズマブに対する治療感受性がある乳ガン患者と比べてトラスツズマブに対する治療感受性がない乳ガン患者において、乳ガン病変部から得られた遺伝子発現量が減少、低減もしくは増加、増大しているものである(後述の実施例の表1参照)。

【0087】
第1の標的核酸は、miR-1234遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-1234遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0088】
第2の標的核酸は、miR-513a-5p遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-513a-5p遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0089】
第3の標的核酸は、miR-494遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-494遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0090】
第4の標的核酸は、miR-26a遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-26a遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0091】
第5の標的核酸は、let-7a遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにlet-7a遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者で発現量が低下することが知られているが(上記特許文献1)、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0092】
第6の標的核酸は、let-7b遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにlet-7b遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者で発現量が低下することが知られているが(上記特許文献1)、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0093】
第7の標的核酸は、let-7g遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにlet-7g遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0094】
第8の標的核酸は、miR-940遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-940遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0095】
第9の標的核酸は、miR-1470遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-1470遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0096】
第10の標的核酸は、miR-125a-5p遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-125a遺伝子又はその転写産物の発現量増加がトラスツズマブの標的タンパク質であるHer2タンパク質の発現量を低下させることが知られているが(上記非特許文献5)、miR-125aの発現量がHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するという報告は知られていない。

【0097】
第11の標的核酸は、miR-200c遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-200c遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者で発現量が低下することが知られているが(上記特許文献2)、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0098】
第12の標的核酸は、let-7e遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにlet-7e遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0099】
第13の標的核酸は、miR-1228遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-1228遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0100】
第14の標的核酸は、let-7c遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにlet-7c遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0101】
第15の標的核酸は、miR-1229遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-1229遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0102】
第16の標的核酸は、miR-205遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-205遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0103】
第17の標的核酸は、miR-145遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-145遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者で発現量が低下することが知られているが(上記特許文献3)、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0104】
第18の標的核酸は、miR-181a遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-181a遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0105】
第19の標的核酸は、miR-191遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-191遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0106】
第20の標的核酸は、miR-125b遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-125b遺伝子又はその転写産物の発現量増加がトラスツズマブの標的タンパク質であるHer2タンパク質の発現量を低下させることが知られているが(上記非特許文献5)、miR-125bの発現量がHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するという報告は知られていない。

【0107】
第21の標的核酸は、miR-92a遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-92a遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0108】
第22の標的核酸は、let-7d遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにlet-7d遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0109】
第23の標的核酸は、miR-23a遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでにmiR-23a遺伝子又はその転写産物の発現が乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測マーカーになりうるという報告は知られていない。

【0110】
2.乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物
本発明において、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するために使用可能な核酸組成物は、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性についての標的核酸としての、ヒト由来のmiR-1234、miR-513a-5p、miR-494、miR-26a、let-7a、let-7b、let-7g、miR-940、miR-1470、miR-125a-5p、miR-200c、let-7e、miR-1228、let-7c、miR-1229、miR-205、miR-145、miR-181a、miR-191、miR-125b、miR-92a、let-7d、及びmiR-23a、それらの同族体、あるいはそれらの変異体又は誘導体の存在、遺伝子発現量又は存在量を定性的及び/又は定量的に測定することを可能にする。

【0111】
上記の標的核酸は、いずれも、トラスツズマブに対する治療感受性が高い乳ガン患者と比べて、トラスツズマブに対する感受性が低い乳ガン患者において乳ガン組織から得られた遺伝子発現量が減少、低減もしくは増加、増大する。それゆえ、本発明の組成物は、トラスツズマブに対する治療感受性が高い乳ガン患者の乳ガン組織とトラスツズマブに対する治療感受性が低い乳ガン患者の乳ガン組織について、それぞれ標的核酸の発現量を測定し、それらを比較するために有効に使用することができる。

【0112】
本発明で使用可能な組成物は、乳ガンに罹患した患者の試料において配列番号1~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、該塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でそれぞれハイブリダイズするポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、ならびにそれらのポリヌクレオチド群の塩基配列において16以上、好ましくは21~24の連続した塩基を含むポリヌクレオチド群から選ばれた2以上のポリヌクレオチドの組み合わせを含む。これらのポリヌクレオチドは、標的核酸である上記予測用マーカーを検出するためのプローブ及びプライマーとして使用できる。

【0113】
具体的には、本発明の組成物は、以下に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又はその断片からなる群から選択される2以上のポリヌクレオチドを含むことができる。

【0114】
(1)配列番号1~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0115】
(2)配列番号1~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド。

【0116】
(3)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0117】
(4)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド。

【0118】
(5)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0119】
(6)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド。

【0120】
(7)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列においてuがtである塩基配列の各々と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドのいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0121】
(8)配列番号10、及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0122】
(9)配列番号10、及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド。

【0123】
(10)配列番号10、及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0124】
(11)配列番号10、及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド。

【0125】
(12)配列番号10、及び配列番号20で表される塩基配列においてuがtである塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドのいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0126】
上記(1)~(12)のポリヌクレオチドの断片は、各ポリヌクレオチドの塩基配列、或いは各変異体もしくは誘導体の塩基配列、において、例えば、連続する16~配列の全塩基数、16~24、18~24、21~24塩基などの範囲の塩基数を含むことができるが、これらに限定されないものとする。

【0127】
本発明で使用される上記ポリヌクレオチド類又はその断片類はいずれもDNAでもよいしRNAでもよい。

【0128】
本発明の組成物としてのポリヌクレオチドは、DNA組換え技術、PCR法、DNA/RNA自動合成機による方法などの一般的な技術を用いて作製することができる。

【0129】
DNA組換え技術、部位特異的突然変異導入法、PCR法などの技術は、例えばAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Willey & Sons, US (1993); Sambrookら, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, US (1989)などに記載される技術を使用することができる。

【0130】
ヒト由来の、miR-1234、miR-513a-5p、miR-494、miR-26a、let-7a、let-7b、let-7g、miR-940、miR-1470、miR-125a-5p、miR-200c、let-7e、miR-1228、let-7c、miR-1229、miR-205、miR-145、miR-181a、miR-191、miR-125b、miR-92a、let-7d、及びmiR-23a遺伝子は公知であり、前述のようにその取得方法も知られている。このため、これらの遺伝子をクローニングすることによって、本発明の組成物としてのポリヌクレオチドを作製することができる。

【0131】
本発明の組成物を構成するポリヌクレオチドは、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって全長のmicroRNAに相当する一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、Life Technologies社などから市販されている。

【0132】
あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAクローニング法によって作製することもできる。cDNAクローニング技術は、例えばmicroRNA Cloning Kit Wako(和光純薬工業)などを利用できる。

【0133】
3.乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用キット
本発明はまた、本発明の組成物に含まれるものと同じポリヌクレオチド、その変異体及び/又はその断片の2以上、を含む、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用キットを提供する。

【0134】
本発明のキットは、上記2に記載したポリヌクレオチド類から選択される、2以上のポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、及び/又はその断片を含む。ここで、変異体及び誘導体は上で定義されたものを含む。

【0135】
本発明のキットは、配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片、その変異体、もしくはその誘導体、の2以上を含むことができる。

【0136】
本発明のキットは、さらに配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチドの断片の1又は2をさらに含むことができる。

【0137】
本発明のキットに含むことができるポリヌクレオチド断片は、例えば下記の(1)~(2)からなる群より選択される、2以上のDNAである:
(1)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、16以上の連続した塩基を含むDNA。

【0138】
(2)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、16以上の連続した塩基を含むDNAに加えて、配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、それぞれ16以上の連続した塩基をさらに含むDNA。

【0139】
好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23のいずれかで表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの16以上、好ましくは21~24、の連続した塩基を含む断片である。

【0140】
別の好ましい実施形態では、本発明のキットは、上記のポリヌクレオチドに加えて、配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの16以上、好ましくは21~24、の連続した塩基を含む断片をさらに含むことができる。

【0141】
本発明はまた、本発明の組成物に含まれるものと同じポリヌクレオチド、その変異体及び/又はその断片の遺伝子発現量から算出される乳ガン患者の乳ガン組織における遺伝子発現量の2以上、を測定することを含む乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用キットを提供する。

【0142】
本発明において、上記ポリヌクレオチドの断片のサイズは、上記の各ポリヌクレオチドの塩基配列、或いは上記の各変異体若しくは誘導体の塩基配列、において、例えば、連続する16~配列の全塩基数、16~24、18~24、21~24塩基などの範囲の塩基数である。

【0143】
本発明のキットには、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片に加えて、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測を可能とする既知の又は将来見出されるポリヌクレオチドも包含させることができる。

【0144】
本発明のキットに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片は、個別に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装される。

【0145】
4.DNAチップ
本発明はさらに、本発明の組成物及び/又はキットに含まれるものと同じポリヌクレオチド(或いは、上記の2節の組成物及び/又は3節のキットに記載されたポリヌクレオチド)、変異体、断片及びそれらの組み合わせを含む乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用DNAチップを提供する。

【0146】
DNAチップの基板としては、DNAを固相化できるものであれば特に制限はなく、スライドガラス、シリコン製チップ、ポリマー製チップ及びナイロンメンブレンなどを例示することができる。またこれらの基板にはポリLリジンコートやアミノ基、カルボキシル基などの官能基導入などの表面処理がされていてもよい。

【0147】
また固相化法については一般に用いられる方法であれば特に制限はなく、スポッター又はアレイヤーと呼ばれる高密度分注機を用いてDNAをスポットする方法や、ノズルより微少な液滴を圧電素子などにより噴射する装置(インクジェット)を用いてDNAを基板に吹き付ける方法、又は基板上で順次ヌクレオチド合成を行う方法を例示することができる。高密度分注機を用いる場合には、例えば多数のウェルを持つプレートのおのおののウェルに異なった遺伝子溶液を入れておき、この溶液をピン(針)で取り上げて基板上に順番にスポットすることによる。インクジェット法では、ノズルより遺伝子を噴射し,基板上に高速度で遺伝子を整列配置することによる。基板上でのDNA合成は、基板上に結合した塩基を光又は熱によって脱離する官能基で保護し、マスクを用いることにより特定部位の塩基だけに光又は熱を当て、官能基を脱離させる。その後、塩基を反応液に加えて、基板上の塩基とカップリングさせる工程を繰り返すことによって行われる。

【0148】
固相化されるポリヌクレオチドは、上記で説明した本発明の全てのポリヌクレオチドである。

【0149】
例えば、そのようなポリヌクレオチドは、以下に示すポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又はその断片からなる群から選択される2以上のポリヌクレオチドを含むことができる。

【0150】
(1)配列番号1~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0151】
(2)配列番号1~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド。

【0152】
(3)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(4)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(5)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(6)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(7)前記(3)~(6)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0153】
(8)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(9)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド
(10)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は16以上の連続した塩基を含むその断片
(11)配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド
(12)前記(8)~(11)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又は16以上の連続した塩基を含むその断片。

【0154】
本発明において、上記ポリヌクレオチドの断片のサイズは、上記の各ポリヌクレオチドの塩基配列、或いは上記の各変異体若しくは誘導体の塩基配列、において、例えば、連続する16~配列の全塩基数、16~24、18~24、21~24塩基などの範囲の塩基数である。

【0155】
好ましい実施形態によれば、本発明のDNAチップは、配列番号1~23で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその相補的配列を含むポリヌクレオチドの2以上、から全部を含むことができる。

【0156】
本発明において、固相化されるポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA、RNA、合成DNA、合成RNAのいずれでもよいし、あるいは1本鎖でもよいし又は2本鎖でもよい。ここで、合成DNA及び合成RNAは、上記「誘導体」の定義で説明したような修飾核酸を含む。

【0157】
標的遺伝子、RNA又はcDNAの遺伝子発現量を検出、測定することができるDNAチップの例としては、東レ株式会社の3D-Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip、Agilent社のHuman miRNA Microarray Kit(V2)、EXIQON社のmiRCURY LNA(登録商標) microRNA ARRAYなどを挙げることができる。

【0158】
DNAチップの作製について、例えば予め調製したプローブを固相表面に固定化する方法を使用することができる。予め調製したポリヌクレオチドプローブを固相表面に固定化する方法では、官能基を導入したポリヌクレオチドを合成し、表面処理した固相担体表面にオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを点着し、共有結合させる(例えば、J.B.Lamtureら、Nucleic. Acids. Research、1994年、第22巻、p.2121-2125、Z.Guoら、Nucleic. Acids. Research、1994年、第22巻、p.5456-5465)。ポリヌクレオチドは、一般的には、表面処理した固相担体にスペーサ-やクロスリンカーを介して共有結合される。ガラス表面にポリアクリルアミドゲルの微小片を整列させ、そこに合成ポリヌクレオチドを共有結合させる方法も知られている(G.Yershovら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、1996年、第94巻、p.4913)。また、シリカマイクロアレイ上に微小電極のアレイを作製し、電極上にはストレプトアビジンを含むアガロースの浸透層を設けて反応部位とし、この部位をプラスに荷電させることでビオチン化ポリクレオチドを固定し、部位の荷電を制御することで、高速で厳密なハイブリダイゼーションを可能にする方法も知られている(R.G.Sosnowskiら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、1997年、第94巻、p.1119—1123)。

【0159】
DNAチップ解析を利用する場合は、本発明の上記診断用組成物をDNAプローブ(一本鎖又は二本鎖)として基板に貼り付けたDNAチップを用いる。遺伝子群を基板に固相化したものには、一般にDNAチップ及びDNAアレイという名称があり、DNAチップにはDNAマクロアレイとDNAマイクロアレイが包含されるが、本明細書ではDNAチップといった場合、該DNAアレイを含むものとする。

【0160】
5.乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測の検出法
本発明は、本発明の組成物、キット、DNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性をin vitroで予測する方法であって、手術時又は生検検査時に採取した試料である乳ガン患者の乳ガン組織を用いて、試料中の遺伝子発現量を該診断用組成物で構成されるDNAチップによって解析し、トラスツズマブに対する治療感受性を示す乳ガン患者の試料中の遺伝子発現量とトラスツズマブに対する治療感受性を示さない乳ガン患者の試料中の遺伝子発現量を比較して、該試料中の標的核酸の発現量から算出される、乳ガン組織から得られた遺伝子発現量が減少、低減もしくは増加、増大している場合、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測することを含み、ここで、該標的核酸が該組成物、キット又はDNAチップに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片によって検出可能なものである、方法を提供する。

【0161】
本発明はまた、本発明の組成物、組成物の遺伝子発現量を測定することによって構成されるキット又はDNAチップの、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を示す可能性をin vitroで予測するための使用を提供する。

【0162】
本発明の上記方法において、組成物、キット又はDNAチップは、上で説明したような、本発明のポリヌクレオチド、その変異体又はその断片を単一であるいはあらゆる可能な組み合わせで含むものが使用される。

【0163】
本発明の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測において、本発明の組成物、キット又はDNAチップに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片は、プライマーとして又はプローブとして用いることができる。プライマーとして用いる場合には、Life Technologies社のTaqMan(登録商標) MicroRNA Assaysなどを利用できるが、この方法に限定されない。

【0164】
本発明の組成物又はキットに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片は、ノーザンブロット法、サザンブロット法、RT-PCR法、in situ ハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、常法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて、乳ガン患者の手術時又は生検検査時に採取した試料である乳ガン組織の試料から回収する。乳ガン患者から採取された乳ガン組織の試料の状態は、採取されたままの生の状態でもよく、一旦凍結された状態でもよく、またホルマリンによって固定された状態でもよい。ホルマリン溶液は、市販のホルマリン(ホルムアルデヒド濃度37%)を水で希釈したものを使用してもよいし、水で希釈した溶液のpHを炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等で中性に調整したものや、リン酸緩衝液で希釈してpHを中性に調整したものを使用することも好ましい。また、悪臭、刺激臭を取り除き、濃度を調製したホルマリン溶液を使用してもよい。なお、ホルマリン溶液中のホルムアルデヒド含量は、1~30%が好ましく、2~20%がより好ましい。さらに、ホルマリン固定された組織がパラフィンに包埋された状態のFFPE標本を試料としてもよい。またさらにそれらの試料/標本から常法に従って調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される、cDNAを含む各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。

【0165】
検体採取の時期はトラスツズマブ単独又はトラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療の開始前であっても開始後であってもよいが、トラスツズマブ又はトラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療の開始前であることが望ましい。

【0166】
あるいは、採取した試料における本発明の遺伝子、RNA、cDNAなどの核酸の発現量は、DNAチップを用いて検出あるいは定量することができる。この場合、本発明の組成物又はキットはDNAチップのプローブとして使用することができる。かかるDNAチップを試料から採取したRNAをもとに調製される標識DNA又はRNAとハイブリダイズさせ、該ハイブリダイズによって形成された上記プローブと標識DNA又はRNAとの複合体を、該標識DNA又はRNAの標識を指標として検出することにより、試料中での本発明の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物の発現の有無又は発現した遺伝子の量(遺伝子発現量)を評価することができる。本発明の方法では、DNAチップを好ましく使用できるが、これは、ひとつの試料について同時に複数遺伝子の発現の有無又は遺伝子発現量の評価が可能である。

【0167】
本発明の組成物、キット又はDNAチップは、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測のために有用である。具体的には、該組成物、キット又はDNAチップを使用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測は、手術時又は生検検査時に採取した試料である乳ガン患者の乳ガン組織を用いて、試料中の該診断用組成物の遺伝子発現量を測定し、トラスツズマブに対する治療感受性を示す乳ガン患者の試料中の遺伝子発現量とトラスツズマブに対する治療感受性を示さない乳ガン患者の試料中の遺伝子発現量を比較して、該試料中の標的核酸の発現量から算出される、乳ガン組織から得られた遺伝子発現量が減少、低減もしくは増加、増大していることを比較することによって行うことができる。この場合、遺伝子発現量の違いには、該診断用組成物の遺伝子発現の有無も含む。

【0168】
本発明の組成物、キット又はDNAチップを利用した乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測方法は、乳ガン患者の試料の一部又は全部を生検検査時に採取するか、もしくは手術によって摘出した試料である乳ガン患者の乳ガン組織を用いて、試料中の遺伝子発現量を該診断用組成物のポリヌクレオチド群から選ばれた単数又は複数のポリヌクレオチド、その変異体又はその断片を用いて測定し、トラスツズマブに対する治療感受性を示す乳ガン患者の試料中の遺伝子発現量とトラスツズマブに対する治療感受性を示さない乳ガン患者の試料中の遺伝子発現量を比較して、該試料中の標的核酸の発現量から算出される、乳ガン組織から得られた遺伝子発現量が減少、低減もしくは増加、増大していることを比較することにより、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測することを含む。

【0169】
本発明の方法は、例えば以下の(a)、(b)及び(c)の工程:
(a)乳ガン患者由来の試料を、本発明の組成物、キット又はDNAチップのポリヌクレオチドと接触させる工程、
(b)試料中の標的核酸の発現量を、上記ポリヌクレオチドをプローブとして用いて測定する工程、
(c)(b)の結果をもとに、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測する工程、
を含むことができる。

【0170】
本発明方法で用いられる試料としては、乳ガン患者の試料、例えば乳房組織及びその周辺組織、乳ガンが疑われる組織など、から調製される試料を挙げることができる。具体的には該組織から調製されるRNA含有試料、或いはそれからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料は、乳ガン患者の試料の一部又は全部を生検検査時に採取するか、もしくは手術によって摘出した試料から回収して調製することができる。

【0171】
ここで患者とは、乳ガンを罹患した又は乳ガンの罹患が強く疑われる哺乳動物を指し、哺乳動物とは、例えば非限定的にヒト、サル、イヌ、マウス、ラットなどを指し、好ましくはヒトである。

【0172】
本発明の方法は、測定対象として用いる試料の種類に応じて工程を変更することができる。

【0173】
測定対象物としてRNAを利用する場合、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測は、例えば下記の工程(a)、(b)及び(c):
(a)乳ガン患者の試料から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチド(cDNA)を、本発明の組成物、キット又はDNAチップのポリヌクレオチドと結合させる工程、
(b) 該ポリヌクレオチドに結合した試料由来のRNA又は該RNAから転写された相補的ポリヌクレオチドを、上記ポリヌクレオチドをプローブとして用いて測定する工程、
(c) 上記(b)の測定結果に基づいて、乳ガン患者がトラスツズマブに対する治療感受性を示すこと又は示さないことを予測する工程、
を含むことができる。

【0174】
本発明によって乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するために、例えば種々のハイブリダイゼーション法を使用することができる。かようなハイブリダイゼーション法には、例えばノーザンブロット法、サザンブロット法、PCR法、RT-PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などを使用することができる。

【0175】
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明の診断用組成物をプローブとして用いることによって、RNA中の各遺伝子発現の有無やその遺伝子発現量を検出、測定することができる。具体的には、本発明の予後予測のための診断用組成物(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33P、35Sなど)や蛍光物質(シアン系、ローダミン系、フルオレサミン系など)などで標識し、それを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーした被検者の試料由来のRNAとハイブリダイズさせたのち、形成された診断用組成物(DNA)とRNAとの二重鎖を診断用組成物の標識物(放射性同位元素又は蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS-1800II、富士写真フィルム株式会社、などを例示できる)又は蛍光検出器(STORM860、GEヘルスケア社、などを例示できる)で検出、測定する方法を例示することができる。

【0176】
定量RT—PCR法を利用する場合には、本発明の上記診断用組成物中のポリヌクレオチドをプライマーとして用いることによって、RNA中の遺伝子発現の有無やその遺伝子発現量を検出、測定することができる。具体的には、被検者の試料由来のRNAから常法にしたがってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の各遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の組成物をもとに調製した1対のプライマー(上記cDNAに結合する正鎖と逆鎖からなる)をcDNAとハイブリダイズさせて常法によりPCR法を行い、得られた二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、二本鎖DNAの検出法としては、上記PCRをあらかじめ放射性同位元素や蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行う方法、PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドなどで二本鎖DNAを染色して検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーさせて標識した診断用組成物中のポリヌクレオチドをプローブとしてこれとハイブリダイズさせて検出する方法をとることができる。

【0177】
ハイブリダイゼーション条件は、限定されないが、例えば30℃~60℃で、SSCと界面活性剤を含む溶液中で1~24時間の条件とする。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.2)であり、界面活性剤はSDS、Triton、もしくはTweenなどを含む。ハイブリダイゼーション条件としては、より好ましくは3~4×SSC、0.1~0.5% SDSを含む。ハイブリダイゼーション後の洗浄条件としては、例えば、30℃の0.5×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.05×SSC溶液による連続した洗浄などの条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが望ましい。具体的にはこのような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。

【0178】
本発明の組成物又はキットのポリヌクレオチド断片をプライマーとしてPCRを実施する際のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては、例えば10mMTris-HCl(pH8.3)、50mM KCl、1~2mM MgClなどの組成のPCRバッファーを用い、当該プライマーの配列から計算されたTm+5~10℃において15秒から1分程度処理することなどが挙げられる。かかるTmの計算方法としてTm=2×(アデニン残基数+チミン残基数)+4×(グアニン残基数+シトシン残基数)などが挙げられる。

【0179】
これらのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」の他の例については、例えばSambrook, J. & Russel, D. 著、Molecular Cloning, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の 第1巻7.42~7.45、第2巻8.9~8.17などに記載されており、本発明において利用できる。

【0180】
また、定量RT-PCR法を用いる場合には、TaqMan商標 MicroRNA Assays、Life Technologies社:LNA商標-based MicroRNA PCR、Exiqon社:Ncode商標 miRNA qRT-PCT キット、Invitrogen社などの、miRNAを定量的に測定するために特別に工夫された市販の測定用キットを用いてもよい。

【0181】
本発明はまた、本発明の組成物、キット、DNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、乳ガン患者由来の試料中の標的核酸又は遺伝子の発現量を測定し、該遺伝子発現量を用いて教師データセットとしたSVM法を用いて、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測する方法を提供する。

【0182】
すなわち、本発明はさらに、本発明の組成物、キット、DNAチップ、又はそれらの組み合わせを用いて、乳ガン患者がトラスツズマブに対する治療感受性を示すこと/又は示さないことが既知の複数の試料中の標的核酸の発現量をin vitroで測定する第1の工程、前記第1の工程で得られた該標的核酸の発現量の測定値を用いてSVM法による乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測する判別式を作成する第2の工程、乳ガン患者の乳ガン組織から得られる該標的核酸の発現量を第1の工程と同様にin vitroで測定する第3の工程、前記第2の工程で得られた判別式に第3の工程で得られた該標的核酸の発現量を判別式に代入し、該判別式から得られた結果に基づいて、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測する第4の工程を含む、ここで、該標的核酸が該組成物、キット又はDNAチップに含まれるポリヌクレオチド、その変異体又はその断片によって検出可能なものである、前記方法を提供する。

【0183】
あるいは、本発明の方法は、例えば下記の工程(a)、(b)及び(c):
(a)乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性が既知の試料中の標的遺伝子の発現量を、本発明による予測(判定、検出又は診断)用組成物、キット又はDNAチップを用いて測定する工程、
(b)(a)で測定された遺伝子発現量の測定値を、下記の手順に従って数2~数5の式に代入し、SVM法を用いた判別式を作成する工程、
(c)乳ガン患者由来の試料中の該標的遺伝子の発現量を、本発明による予測(判定、検出又は診断)用組成物、キット又はDNAチップを用いて測定し、(b)で作成した判別式にそれらを代入して、得られた結果に基づいて乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測する工程、
を含むことができる。

【0184】
SVM法は、1995年にAT&TのV.Vapnikが1995年に考案した判別分析法(The Nature of Statistical Leaning Theory、Springer、1995年)である。分類すべき群分けが既知のデータセットの特定のデータ項目を説明変数、分類すべき群分けを目的変数として、該データセットを既知の群分けに正しく分類するための超平面と呼ばれる境界面を決定し、該境界面を用いてデータを分類する判別式を決定する。そして該判別式は、新たに与えられるデータセットの測定値を説明変数として該判別式に代入することにより、群分けを予測することができる。また、このときの予測結果は分類すべき群でも良く、分類すべき群に分類されうる確率でも良く、超平面からの距離でも良い(例えば、麻生英樹ら著、統計科学のフロンテイア6「パターン認識と学習の統計学 新しい概念と手法」、岩波書店(2004年))。

【0185】
本発明のSVM法による判別式の説明変数は、上記2節に記載したポリヌクレオチド類から選択されるポリヌクレオチド又はその断片を測定することによって得られる値を含み、具体的には本発明の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測するための説明変数は、例えば下記の(1)~(2)からなる群より選択される遺伝子発現量である:
(1)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、16以上の連続した塩基を含むDNAのいずれかによって測定される乳ガン患者の乳ガン組織における遺伝子発現量。

【0186】
(2)配列番号1~9、配列番号11~19、及び配列番号21~23で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、16以上の連続した塩基を含むDNAに加えて、配列番号10及び配列番号20で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、それぞれ16以上の連続した塩基をさらに含むDNAのいずれかによって測定される乳ガン患者の乳ガン組織における遺伝子発現量。

【0187】
本発明の方法で使用可能な判別式の算出例を以下に示す。

【0188】
まず乳ガン患者を、トラスツズマブに対する治療感受性を示す患者群とトラスツズマブに対する治療感受性を示さない患者群の2群に群分けする。乳ガン患者がトラスツズマブに対する治療感受性を示すと判断する基準としては、トラスツズマブによる治療後の乳ガンの病勢進行が抑制された状態を示すものとして、トラスツズマブ治療後に実施する病理検査結果が日本乳癌学会編「乳癌取扱い規約 第16版」に定める組織学的治療効果基準のGrade3に分類される病理学的完全奏効、すなわち全てのガン細胞が壊死に陥っているか、又は消失した場合、又は肉芽腫様組織又は繊維化巣で置き換えられている状態であることが病理学的に確認されることを基準として用いることができる。または、前記の組織学的治療効果基準がGrade3に分類される病理学的完全奏効が確認されることに加えて、臨床的にリンパ節転移巣が確認されないことの両者を満たすことを基準とすることができる。

【0189】
次に、分けられた2群の乳ガン患者の乳ガン組織由来の生体試料の網羅的遺伝子発現量からなるデータセット(以下、教師データセット)を用意し、該2群の間で遺伝子発現量に明確な差が見られる遺伝子を説明変数、該群分けを目的変数(たとえば-1と1)としたSVM法による判別式を決定する(数1)。このとき、該判別式は数2で定義される制約条件、及び数3~5で定義される重み係数(w)とバイアス定数(b)を持つ。

【0190】
このときの数1~数5は、以下の式からなる。
【数1】
JP0006026408B2_000002t.gif

【0191】
(ここで、xは乳ガン患者の乳ガン組織由来の生体試料から得られた網羅的遺伝子発現量からなるデータを示し、xiは該データから選択した特定の遺伝子の発現量を示す。)
【数2】
JP0006026408B2_000003t.gif

【0192】
(ここで、Tは内積、yはデータの分類、ζはスラック変数を示す。)
【数3】
JP0006026408B2_000004t.gif

【0193】
(数3は数2にLagurangeの未定定数法を用いることで帰着するLagurange定数αを用いた最適化問題を示す。)
【数4】
JP0006026408B2_000005t.gif

【0194】
(ここで、Cは実験により決定される制約条件パラメータを示す。)
【数5】
JP0006026408B2_000006t.gif

【0195】
そして、トラスツズマブに対する治療感受性を示すかどうか未知の乳ガン患者については、該乳ガン患者の乳ガン組織由来の生体試料における、該判別式で使用する遺伝子の発現量を測定し、それらを該判別式のxiに代入することによって、該2群のいずれに所属するかを予測することができる。

【0196】
以上に示すように、トラスツズマブに対する治療感受性を示すかどうか未知の乳ガン患者が、トラスツズマブに対する治療感受性を示す、又は示さない、のいずれの群に属するかを判定する判定式の作成には、教師データセットから作成した判別式が必要であり、該判別式の予測精度を上げるためには、教師データセット中の2群間に明確な差がある遺伝子を判別式に用いることが必要である。

【0197】
また、判別式の説明変数に用いる遺伝子の決定は、次のように行うことが好ましい。まず、教師データセットである、トラスツズマブに対する治療感受性を示す乳ガン患者群の乳ガン組織由来の生体試料の網羅的遺伝子発現量とトラスツズマブに対する治療感受性を示さない乳ガン患者群の乳ガン組織由来の生体試料の網羅的遺伝子発現量をデータセットとし、パラメトリック解析であるt-検定のp値、ノンパラメトリック解析であるMann-WhitneyのU検定のp値、又はRankProduct法の順位などを利用して、該2群間における各遺伝子の発現量の差の大きさを求める。

【0198】
次に、ここで求めた遺伝子発現量の差が大きい任意の数の遺伝子を用いた判別式を作成し、この判別式に対し、別の独立の乳ガン患者の乳ガン組織由来の生体試料由来の遺伝子発現量を説明変数に代入して、この独立の乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性についての判別結果を決定する。最大の予測精度を得る判別式を構築するためには、この判別式の作成と予測精度の決定を、遺伝子を遺伝子発現量の差の大きい順に一つずつ増やしながら繰り返して評価する。

【0199】
また、該判別式に用いる遺伝子の決定と予測精度の決定には、LOOCV法を用いることが好ましい(図1)。すなわち、まず教師データセットから1つのデータをテストデータとして抜き出し、残りを学習データセットとする。そして、学習データセットを用いて判別式を作成し、該判別式を用いてテストデータが所属する群を予測する。そして、教師データセットから重複せずにテストデータを分けることができる複数の組合せに対して、より好ましくは重複せずにテストデータを分けることができる全ての組合せに対して判別式の予測値を決定し、決定した予測値とテストデータが所属する真の群を用いてAUROC値を得て、これを予測精度とする。

【0200】
本発明の方法において、例えば、上に記載したような配列番号1~23に基づく1又は複数の上記ポリヌクレオチド、並びに/或いは、上に記載したような1~23に基づく1又は複数のポリヌクレオチド、からの任意の組み合わせを用いて、かつ上記の23種の標的遺伝子の発現量がすべてトラスツズマブに対する治療感受性を示す乳ガン患者とトラスツズマブに対する治療感受性を示さない乳ガン患者間で異なり、乳ガン患者由来の乳ガン病変部において発現が増加/減少していることを指標にして、これら23種の遺伝子について発現量を測定し、これらの遺伝子の任意の20種類の遺伝子発現量の組み合わせを用いることにより、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性をAUROC値として0.951の予測精度で見分けることができる(図2)。

【0201】
(実施例)
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、この実施例によって制限されないものとする。
【実施例1】
【0202】
1.試料の採取
Her2タンパク質の免疫組織化学的染色法のスコアが3+となること、又は前記スコアが2+であり、かつ蛍光in situハイブリダイゼーション法のHer2/CEP17比が2.2より大きいと判定されたことによってHer2陽性と判別された、インフォームドコンセントを得た35症例の手術前初発乳ガン患者から、トラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療を行う前に針生検を用いて乳ガン組織を採取し、採取した乳ガン組織からFFPE標本を得た。そして、FFPE標本から厚さ10μmに薄切した乳ガン組織の病理標本を得た。
【実施例1】
【0203】
具体的には、35症例のHer2陽性乳ガン患者にはトラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療を行う前に針生検による乳ガン組織採取を行った。そして、針生検実施後にトラスツズマブと、シクロフォスファミド及びドセタキセルを含む術前化学療法による治療を行った。トラスツズマブとこれら抗ガン剤による治療効果の判定基準は、手術時に採取された病理検査標本について行い、日本乳癌学会編「乳癌取扱い規約 第16版」に定める組織学的治療効果の基準による、Grade3に分類される病理学的完全奏効が確認されかつ臨床的にリンパ節転移巣がないことが確認された場合をトラスツズマブに対する治療感受性有りとした。
【実施例1】
【0204】
この治療効果の判定基準に従い、非特許文献3の検査方法を用いた場合、この35症例のHer2陽性乳ガン患者のうち、トラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療に対して感受性を示した患者数は19症例と分かっている。すなわち、非特許文献3の検査方法の予測精度は54.2%となる。
【実施例1】
【0205】
2.totalRNAの抽出
試料として上の「1」で得た、35症例のHer2陽性乳ガン患者の病理標本からレーザーマイクロダイセクションシステム(ライカ社)を用いて乳ガン病変部の組織を切り出した。この切出し組織から、Arcturus(登録商標) Paradise(登録商標) Plus 2 round aminoallylキット(Life Technologies社)を用いて、同社の定める手順に従ってtotal RNAを得た。
【実施例1】
【0206】
3.遺伝子発現量の測定
試料として上の「2」で得た35症例のHer2陽性乳ガン患者のtotal RNAを用い、オリゴDNAマイクロアレイとして、3D-Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)によって、遺伝子発現量を測定した。オリゴDNAマイクロアレイの測定は、東レ株式会社が定める手順に基づいて操作し、ハイブリダイゼーションを行ったDNAマイクロアレイを3D-Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)を用いてスキャンし、画像を取得して3D-Gene(登録商標)Extraction(東レ株式会社)にて蛍光強度を数値化した。数値化された蛍光強度を、底が2の対数値に変換して遺伝子発現量とし、35症例のHer2陽性乳ガン患者に対する、Human miRNA Oligo chipの各プローブがハイブリダイゼーションによって検出した核酸配列、すなわち網羅的なmiRNAの遺伝子発現量を得た。
【実施例1】
【0207】
4.予測スコアリングシステム
上の「1」~「3」で得た35症例のHer2陽性乳ガン患者の乳ガン組織由来のtotal RNAから検出されたmiRNAの遺伝子発現量を、上のセクション「3」で得た各患者のトラスツズマブに対する治療感受性の有無の臨床情報を基に患者間で比較して、トラスツズマブに対する治療感受性予測用遺伝子を決定し、その遺伝子を用いた場合のHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測精度をMatlab version 2011a(Mathworks社)を用いて算出した。すなわち、図1に示すLOOCV法に従い、まず上のセクション「3」で得た35症例のHer2陽性乳ガン患者群のうち、75%以上の症例で遺伝子発現量が5以上となるmiRNAを選び出した。次に、35症例のHer2陽性乳ガン患者から任意の1症例を分け、この症例のmiRNAの遺伝子発現データをテストデータとした。そして、残りの34症例のmiRNAの遺伝子発現データを学習データセットとした。次に、学習データセットをHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性有無の臨床情報を群分けの指標として2群に分け、この学習データセットに対して、RankProduct法による2群の差の検定を行い、学習データセット中の各遺伝子のトラスツズマブに対する治療感受性への関与の高さを示す順位を算出した。次に、RankProduct法から得た順位が最も高い1種類の遺伝子を用いてトラスツズマブに対する治療感受性を予測するための判別式を、SVM法(数1~数5)を用いて作成し、この判別式を用いてテストデータのトラスツズマブに対する治療感受性を予測した。
【実施例1】
【0208】
引き続き、前記の手順を残りの34通りの全ての組合せに対して行い、結果として35通りのトラスツズマブに対する治療感受性の予測値を算出した。この35通りの予測値と上の「1」で得たHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性有無の臨床情報を用いて算出した予測精度(AUROC値)は0.540となり、35通りの組合せで少なくとも1回以上選択された遺伝子は配列番号1の遺伝子であった。
【実施例1】
【0209】
次にトラスツズマブに対する治療感受性の予測精度を更に高めるために、トラスツズマブに対する治療感受性への関与が高い遺伝子を更に組み合わせた。すなわち上記の手順によって、RankProduct法による順位を算出し、2番目以降に順位が高い2以上の遺伝子を用いてSVM法による判別式を作成し、判別式を用いてテストセットのトラスツズマブに対する治療感受性を予測する手順を、LOOCV法によって35通りの全ての組合せに対して行い、それぞれの遺伝子数のときの予測精度(AUROC値)を求めた。
【実施例1】
【0210】
その結果、トラスツズマブに対する治療感受性の予測精度は、2遺伝子のときにAUROC値が0.516、3遺伝子のときにAUROC値が0.664、4遺伝子のときにAUROC値が0.714、5遺伝子のときにAUROC値が0.674、6遺伝子のときにAUROC値が0.701、7遺伝子のときにAUROC値が0.707、8遺伝子のときにAUROC値が0.747、9遺伝子のときにAUROC値が0.813、10遺伝子のときにAUROC値が0.816、11遺伝子のときにAUROC値が0.839、12遺伝子のときにAUROC値が0.842、13遺伝子のときにAUROC値が0.780、14遺伝子のときにAUROC値が0.776、15遺伝子のときにAUROC値が0.757、16遺伝子のときにAUROC値が0.707、17遺伝子のときにAUROC値が0.737、18遺伝子のときにAUROC値が0.849、19遺伝子のときにAUROC値が0.901、20遺伝子のときにAUROC値が0.951、21遺伝子のときにAUROC値が0.908、そして22遺伝子のときにAUROC値が0.885となり、トラスツズマブに対する治療感受性の予測精度は20遺伝子を用いたときに予測精度は最大化した(図2)。そして、この20遺伝子を用いた場合に35通りの組合せで少なくとも1回以上選択された遺伝子は配列番号1~23の遺伝子となり、23種類の各遺伝子が35通りの組合せで選択された回数は表1のとおりとなった。すなわち、この20遺伝子を用いた本発明による予測精度は、非特許文献3の検査方法による予測精度(54.2%)よりも遥かに高いことが示された。
【表1】
JP0006026408B2_000007t.gif
【実施例1】
【0211】
このAUROC値が最大化したときに、SVM法を用いた乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測に用いられる遺伝子20種の、LOOCV法による選抜結果を図3に示す。表中の数字は、各教師データセットにおいて、予測用遺伝子を選択した際に、当該遺伝子が何番目に選択されたかの優先順位を示す。例えば、35通りの各教師データセットにおいて、トラスツズマブに対する治療感受性への関与が高い1個の遺伝子の選ぶ場合(図2のグラフにおいて、遺伝子数が1の場合)に用いる予測用遺伝子の選び方は35通りあるが、選択された35通りの遺伝子の全ては配列番号1であり、配列番号1を用いた場合のトラスツズマブに対する治療感受性の予測精度はAUROC値で0.540しかないことを示す。また、例えば、予測精度(AUROC値)が最大の0.951となる35症例から34症例を選び出す35通りの各教師データセットにおいて、トラスツズマブに対する治療感受性への関与が高い20個の遺伝子の組み合わせは、配列番号1~20、配列番号1~19及び21、配列番号1~19及び22、配列番号1~19及び23、配列番号1~18、20及び21、配列番号1~18、20及び22、配列番号1~17及び19~21、配列番号1~17、19、20及び22、配列番号1~17、19、21及び22、配列番号1~16及び18~21、配列番号1~16、18、19、21及び22、配列番号1~15及び17~21、配列番号1~15、17~19、22及び23の13通りの組み合わせとなる。すなわち、各教師データセットにおいて20個の遺伝子を選択する場合(図2のグラフにおいて、遺伝子数が20の場合)に用いる予測用遺伝子は、配列番号1~23の23個の遺伝子となる。
【実施例1】
【0212】
各教師データセットにおいて選択する遺伝子数(図2のグラフにおける遺伝子数)が1個~20個の場合に、それぞれ用いる予測用遺伝子(配列番号)、またその遺伝子を用いるときの予測精度(AUROC値)は、表2に示すとおりとなる。
【表2】
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【実施例1】
【0213】
以上から、乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測において、最も高いAUROC値を示す遺伝子数は図2のグラフにおいて、遺伝子数が20の場合であり、このときに用いる予測用遺伝子は、表2に示す配列番号1~23の23個の遺伝子となる。
【実施例2】
【0214】
配列番号1~23を用いて乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測を行う場合に、従来法よりも高い精度でトラスツズマブ感受性を予測できる最も少ない遺伝子の組合せを確認するために、実施例1で対象とした35症例のHer2陽性乳ガン患者群、およびこの患者群とは異なる48症例の独立の患者群に対する予測精度を確認した。
【実施例2】
【0215】
1.48症例の患者群からの試料の採取
Her2タンパク質の免疫組織化学的染色法のスコアが3+となること、又は前記スコアが2+であり、かつ蛍光in situハイブリダイゼーション法のHer2/CEP17比が2.2より大きいと判定されたことによって、Her2陽性と判別された、インフォームドコンセントを得た実施例1で収集した症例とは異なる48症例の手術前初発乳ガン患者から、トラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療を行う前に針生検を用いて乳ガン組織を採取し、採取した乳ガン組織からFFPE標本を得た。そして、FFPE標本から厚さ10μmに薄切した乳ガン組織の病理標本を得た。
【実施例2】
【0216】
具体的には、48症例のHer2陽性乳ガン患者にはトラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療を行う前に針生検による乳ガン組織採取を行った。そして、針生検実施後にトラスツズマブと、フルオロウラシル、エピルビシン、シクロフォスファミド及びドセタキセルを含む術前化学療法による治療を行った。トラスツズマブとこれら抗ガン剤による治療効果の判定基準は、実施例1の判定基準と同じく、手術時に採取された病理検査標本について行い、日本乳癌学会編「乳癌取扱い規約 第16版」に定める組織学的治療効果の基準による、Grade3に分類される病理学的完全奏効が確認されかつ臨床的にリンパ節転移巣がないことが確認された場合をトラスツズマブに対する治療感受性有りとした。
【実施例2】
【0217】
この治療効果の判定基準に従い、現在、臨床現場で利用されている非特許文献3の検査方法を用いた検査法を用いた場合、この48症例のHer2陽性乳ガン患者のうち、トラスツズマブと抗ガン剤の併用による治療に対して感受性を示した患者数は20症例と分かっている。すなわち、非特許文献3の検査方法の予測精度は41.7%となる。
【実施例2】
【0218】
2.48症例の患者群由来試料からのtotalRNAの抽出
実施例1の「2」と同じく、試料として上の「1」で得た、48症例のHer2陽性乳ガン患者の病理標本からレーザーマイクロダイセクションシステム(ライカ社)を用いて乳ガン病変部の組織を切り出した。この切出し組織から、Arcturus(登録商標) Paradise(登録商標) Plus 2 round aminoallylキット(Life Technologies社)を用いて、同社の定める手順に従ってtotal RNAを得た。
【実施例2】
【0219】
3.48症例の患者群由来試料遺伝子発現量の測定
実施例1の「2」と同じく、試料として上の「2」で得た48症例のHer2陽性乳ガン患者のtotal RNAを用い、オリゴDNAマイクロアレイとして、3D-Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)によって、遺伝子発現量を測定した。オリゴDNAマイクロアレイの測定は、東レ株式会社が定める手順に基づいて操作し、ハイブリダイゼーションを行ったDNAマイクロアレイを3D-Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)を用いてスキャンし、画像を取得して3D-Gene(登録商標)Extraction(東レ株式会社)にて蛍光強度を数値化した。数値化された蛍光強度を、底が2の対数値に変換して遺伝子発現量とし、48症例のHer2陽性乳ガン患者に対する、Human miRNA Oligo chipの各プローブがハイブリダイゼーションによって検出した核酸配列、すなわち網羅的なmiRNAの遺伝子発現量を得た。
【実施例2】
【0220】
4.予測スコアリングシステム
実施例1の「1」~「3」で得た35症例のHer2陽性乳ガン患者の乳ガン組織由来のtotal RNAから検出された配列番号1~23のmiRNAの遺伝子発現量を、実施例1の「3」で得た各患者のトラスツズマブに対する治療感受性の有無の臨床情報をもとに患者間で比較して、配列番号1~23のmiRNAから選ばれる任意の2遺伝子を用いた場合の、Her2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性を予測する予測スコアリングシステムを、Matlab version 2011a(Mathworks社)を用いて作成した。
【実施例2】
【0221】
すなわち、35症例のHer2陽性乳ガン患者から任意の1症例を分け、この症例のmiRNAの遺伝子発現データをテストデータとした。そして、残りの34症例のmiRNAの遺伝子発現データを学習データセットとした。次に、学習データセットをHer2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性有無の臨床情報を群分けの指標として2群に分け、この学習データセットに対して、配列番号1~23のmiRNAから選ばれる任意の2遺伝子を用いてトラスツズマブに対する治療感受性を予測するための判別式を、SVM法(数1~数5)を用いて作成し、この判別式を用いてテストデータのトラスツズマブに対する治療感受性を予測した。引き続き、前記の手順を残りの34通りの全ての組合せに対して行い、結果として35通りのトラスツズマブに対する治療感受性の予測値を算出し、35症例の患者群に対する予測精度(AUROC値)を求めた。
【実施例2】
【0222】
最終的に、35症例の患者群に対して、配列番号1~23のmiRNAから選ばれる全ての2遺伝子の組合せについてAUROC値を求め、非特許文献3の検査方法の予測精度の65.2%を上回る2遺伝子の組合せ、及びその予測精度を求めた。
【実施例2】
【0223】
5.配列番号1~23から選ばれる2遺伝子を用いたトラスツズマブに対する治療感受性予測
実施例2の「1」~「3」で得た48症例のHer2陽性乳ガン患者の乳ガン組織由来のtotal RNAから検出されたmiRNAの遺伝子発現量に対して、上の「4」で作成した、配列番号1~23のmiRNAから選ばれる2遺伝子の組合せを用いて作成した予測スコアリングシステムを用いた場合の、Her2陽性乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性の予測精度をMatlab version 2011a(Mathworks社)を用いて、すべての2遺伝子の組み合わせについて決定した。
【実施例2】
【0224】
その結果、実施例1で対象とした35症例のHer2陽性乳ガン患者、及び実施例2で対象とした48症例のHer2陽性乳ガン患者の両方に対して、トラスツズマブに対する治療感受性の予測精度が、共に高くなる実施例1で得た配列番号1~23の遺伝子から選ばれる2遺伝子の組合せ、及びその予測精度は表3に示すとおりとなる。すなわち、表3の2遺伝子の組合せの本発明による予測精度は、実施例1の35症例のHer2陽性乳ガン患者に対する非特許文献3の検査方法の予測精度(54.2%)、及び実施例2の48症例のHer2陽性乳ガン患者に対する非特許文献3の検査方法の予測精度(41.7%)よりも遥かに高い値を示す。
【表3】
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【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明により、予測精度に優れた乳ガン患者のトラスツズマブに対する治療感受性予測用組成物を提供することができるため、乳ガン患者のトラスツズマブ又はトラスツズマブと抗ガン剤の併用によるトラスツズマブに対する治療感受性を予測するために非常に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2