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明細書 :疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2018-198615 (P2018-198615A)
公開日 平成30年12月20日(2018.12.20)
発明の名称または考案の名称 疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法
国際特許分類 C12N  15/11        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/6897      (2018.01)
C07D 473/40        (2006.01)
A61K  31/52        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  31/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  25/02        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
C12N  15/63        (2006.01)
FI C12N 15/11 Z
C12Q 1/02
C12Q 1/6897 Z
C07D 473/40 CSP
A61K 31/52
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 31/00
A61P 43/00 111
A61P 43/00 123
A61P 25/02 103
A61P 43/00 105
A61P 25/00
C12N 15/63 Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2018-153411 (P2018-153411)
分割の表示 特願2015-526450 (P2015-526450)の分割、【原出願日】平成26年7月14日(2014.7.14)
出願日 平成30年8月17日(2018.8.17)
優先権出願番号 2013146891
優先日 平成25年7月12日(2013.7.12)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】萩原 正敏
【氏名】吉田 優
【氏名】細谷 孝充
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査請求
テーマコード 4B063
4C084
4C086
Fターム 4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ61
4B063QR32
4B063QR59
4B063QR77
4B063QR80
4B063QS28
4B063QS38
4C084AA17
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZA011
4C084ZA241
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB351
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA01
4C086ZA24
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC41
要約 【課題】異常スプライスバリアントが関わる疾病に関する化合物及び医薬組成物、それらの使用、及びそれらの探索方法の提供。
【解決手段】下記式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩、及び野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトを利用したスクリーニング方法。
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【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法であって、
(A)野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトを真核細胞又は真核生物に導入し、必要に応じて導入された該細胞又は生物を該異常スプライシングが起る条件とすること、
(B)テスト物質を前記真核細胞又は真核生物に接触若しくは発現させること、
(C)野生型スプライシング及び異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、該テスト物質を接触若しくは発現させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、
を含む方法。
【請求項2】
テスト物質の発現が、テスト物質を発現可能なベクターを前記真核細胞又は真核生物に導入することにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病の医薬組成物の有効成分となる候補化合物のスクリーニング方法である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記疾病が、遺伝病、がん、又は感染症である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病の医薬組成物であって、該異常スプライシングを抑制できる有効成分を含む、医薬組成物。
【請求項6】
前記疾病が、遺伝病、がん、又は感染症である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトと、
該異常スプライシングを起こし得る細胞とを含むキット。
【請求項8】
さらに、テスト物質を発現可能なベクターを含む、請求項7記載のキット。
【請求項9】
下記式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩。
【化1】
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[式(I)及び(I')において、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である;
3は、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロアリール基、又はCH2OC(O)R4-である;
4は、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である;
Xは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、R1及びR2が置換したアミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基、メルカプト基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。]
【請求項10】
請求項9に記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項11】
ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させるための、
ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させるための、又は、
ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させるための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記細胞が、神経細胞、がん細胞、又は感染細胞である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
遺伝病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための、請求項10から12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させる方法、
哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させる方法、又は、
ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させる方法であって、
前記細胞に請求項9に記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩又は請求項10から13のいずれかに記載の医薬組成物を哺乳類細胞、ヒト細胞、哺乳類個体又はヒト個体に接触させることを含む、方法。
【請求項15】
哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング又はヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させる方法、
哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング又はヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させる方法、又は、
ヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させる方法であって、
前記個体に請求項10から13のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
遺伝病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療方法であって、
請求項10から13のいずれかに記載の医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む、方法。
【請求項17】
請求項14から16のいずれかに記載の方法における、請求項9に記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩又は請求項10から13のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項18】
請求項10から13のいずれかに記載の医薬組成物を製造するための請求項9に記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩の使用。
【請求項19】
IKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異に起因する異常スプライシングを抑制する物質か否かをテストする方法であって、
(A)3n+1又は3n+2塩基長のエクソンaとIKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異を有するイントロンとを含む遺伝子と2つの異なるレポーター遺伝子とが、エクソンaを含む野生型スプライスバリアントとエクソンaがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトを、真核細胞又は真核生物に導入すること、
(B)テストする物質を前記真核細胞又は真核生物に接触若しくは発現させること、
(C)野生型スプライシング及び異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、テストする物質を接触させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、
を含む方法。
【請求項20】
3n+1又は3n+2塩基長のエクソンaとIKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異を有するイントロンとを含む遺伝子と2つの異なるレポーター遺伝子とが、エクソンaを含む野生型スプライスバリアントとエクソンaがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクト。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本開示は、疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法、医薬組成物、キットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、選択的スプライシングを検出できるレポーターシステム及びそれを用いて選択的スプライシングに影響を及ぼす化合物を同定する方法を開示する。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】国際公開第2011/152043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家族性自律神経失調症(FD: Familial Dysautonomia)は、神経の発達異常、変性、衰退により、感覚神経と自律神経に障害を持つ先天性・致死性の常染色体劣性遺伝病である。FD患者のほとんどは、IKBKAP遺伝子の第20イントロン内に一塩基置換(IVS20+6TC変異)を持つ(図1A)。この変異のために、主に神経系の組織において第20エクソンがmRNAに組み込まれない異常スプライシング(エクソンスキッピング)が起き、正常なIKBKAPタンパク質が産生されなくなることが、病気の原因であると考えられている(図1A)。
【0005】
米国特許第7737110号は、サイトカイニンの1つであるKinetinが、IVS20+6TC変異IKBKAP遺伝子における異常スプライシングを抑制できることを開示する。
【0006】
PKM(ピルビン酸キナーゼM)遺伝子は、エクソン9、10が相互排他的スプライシングを受ける。エクソン9が残るときの産物はPKM1mRNAであり、アイソフォームPKM1が産生される。エクソン10が残るときの産物はPKM2mRNAであり、アイソフォームPKM2が産生される。これらのアイソフォームの発現は組織特異性があり、PKM1はエネルギー要求性の高い細胞、例えば、神経細胞や筋細胞で発現する。一方、PKM2は、ほとんどの癌、細胞増殖が活発な臓器、未分化細胞で発現する(図5)。
【0007】
低酸素状態など、vivoにおけるがん組織に近い環境下では、PKM2アイソフォームを発現する細胞のほうがPKM1を発現する細胞よりも増殖能が高い。また、各アイソフォームを発現させた腫瘍細胞の移植実験では、PKM2アイソフォームを発現する腫瘍の方がPKM1を発現する腫瘍よりも腫瘍の増大が顕著である(Chrisofk et al., Nature (Letters) 2008)。
【0008】
2型単純ヘルペスウイルス(HSV-2)は、ウイルス感染した細胞において、選択的スプライシングの改変によってPML(promyelocytic leukemia)アイソフォームの発現をスイッチングさせることが知られている(Nojima et al., Nucleic Acid Research, 2009)。
【0009】
本開示は、一又は複数の実施形態において、遺伝病、がん、又は感染症等に関する化合物及び医薬組成物、それらの使用、又は、それらの探索方法を提供する。
本開示は、その他の一又は複数の実施形態において、家族性自律神経失調症に関する化合物及び医薬組成物、それらの使用、又は、それらの探索方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、一又は複数の実施形態において、下記式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩に関する。
【化1】
JP2018198615A_000002t.gif
[式(I)及び(I')において、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である;
3は、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロアリール基、又はCH2OC(O)R4-である;
4は、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である;
Xは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、R1及びR2が置換したアミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基、メルカプト基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。]
【0011】
本開示は、一又は複数の実施形態において、本開示に係る式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物に関する。
【0012】
本開示は、一又は複数の実施形態において、異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病の医薬組成物であって、該異常スプライシングを抑制できる有効成分を含む、医薬組成物に関する。
【0013】
本開示は、一又は複数の実施形態において、哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させる方法、哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させる方法、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させる方法であって、
前記細胞に式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩又は本開示に係る医薬組成物をヒト細胞又はヒト個体に接触させることを含む方法に関する。
【0014】
本開示は、一又は複数の実施形態において、遺伝病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療方法であって、本開示に係る医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む方法に関する。
【0015】
本開示は、一又は複数の実施形態において、疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法であって、
(A)野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトを真核細胞又は真核生物に導入し、必要に応じて導入された該細胞又は生物を該異常スプライシングが起る条件とすること、
(B)テスト物質を前記真核細胞又は真核生物に接触若しくは発現させること、
(C)野生型スプライシング及び異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、該テスト物質を接触若しくは発現させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法に関する。
【0016】
本開示は、一又は複数の実施形態において、IKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異に起因する異常スプライシングを抑制する物質か否かをテストする方法であって、
(A)3n+1又は3n+2塩基長のエクソンaとIKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異を有するイントロンとを含む遺伝子と2つの異なるレポーター遺伝子とが、エクソンaを含む野生型スプライスバリアントとエクソンaがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトを、真核細胞又は真核生物に導入すること、
(B)テストする物質を前記真核細胞又は真核生物に接触若しくは発現させること、
(C)野生型スプライシング又は異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、テストする物質を接触させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法に関する。
【0017】
本開示は、一又は複数の実施形態において、野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトと、該異常スプライシングを起こし得る細胞とを含むキットに関する。
【0018】
本開示は、一又は複数の実施形態において、3n+1又は3n+2塩基長のエクソンaとIKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異を有するイントロンとを含む遺伝子と2つの異なるレポーター遺伝子とが、エクソンaを含む野生型スプライスバリアントとエクソンaがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、家族性自律神経失調症(FD)患者のほとんどが有する、IKBKAP遺伝子の第20イントロン内の一塩基置換変異(IVS20+6TC変異)を説明する図である。IVS20+6TC変異があると主に神経組織において異常スプライシング(エクソンスキッピング)が起き、正常なIKBKAPタンパク質が産生されなくなる。このことがFDの原因と考えられている。
【図1B】図1Bは、スプライシングレポーターDNAコンストラクトの一又は複数の実施形態を説明する図である。このコンストラクトは、正常ヒトIKBKAP遺伝子の一部のゲノム領域に対してIVS20+6TC変異を導入し、その配列を用いて作製された。このコンストラクトにおいて、野生型スプライシングの場合、RFP遺伝子及びそのストップコドン(UAA)はアウトフレームなり、GFP遺伝子がインフレームで翻訳される。一方、異常スプライシングの場合には、RFP遺伝子及びそのストップコドン(UAA)がインフレームで翻訳される。
【図2】図2は、野生型レポーターコンストラクト及びFD型レポーターコンストラクトをそれぞれHeLa細胞にトランスフェクトし、RT-PCRによりスプライシング産物を確認した結果の一例を示す。野生型レポーターコンストラクトをトランスフェクトした細胞では正常スプライシング産物が確認され、FD型レポーターコンストラクトをトランスフェクトした細胞では異常スプライシング産物が確認された。
【図3】図3は、FD型レポーターコンストラクトをトランスフェクトしたHeLa細胞を化合物1とともに培養した後(24時間及び48時間後)のGFP(正常スプライシング)/RFP(異常スプライシング)の蛍光シグナル比を示す図である。化合物1は、濃度依存的にGFP/RFP比を高め、その効果はKinetinよりも優れていた。
【図4】図4は、FD患者細胞を化合物1とともに培養した後(60時間後)、FD患者細胞の内在性IKBKAP遺伝子のスプライシング産物mRNAをRT-PCRにより確認した図である。化合物1を添加することにより、異常スプライシング産物が抑制され、正常スプライシング産物が増加され、その効果はKinetinよりも優れていた。
【図5】図5は、PKM(ピルビン酸キナーゼM)遺伝子の、エクソン9、10における相互排他的スプライシングを説明する概略図である。エクソン10が残るアイソフォームPKM2は、ほとんどの癌で発現する。
【図6】図6は、スプライシングレポーターDNAコンストラクトの一又は複数の実施形態を説明する図である。PKM遺伝子のエクソン8から11のゲノム領域を、フレームの異なるよう連結させたRFP、GFP、cDNAに連結させた。9を選択した場合には、RFPにフレームが合い、10を選択した場合にはRFPにフレームが合うように設計し、9、10どちらも選択されず、スキップしてしまった場合、また、どちらとも選択された場合にはRFP及びGFPのどちらにもフレームが合わないように設計されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[一般式(I)若しくは(I')で表される化合物]
本開示は、一態様において、下記式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩に関する。
【化2】
JP2018198615A_000003t.gif

【0021】
式(I)及び(I')において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。

【0022】
1及びR2における炭素数1—6の直鎖又は分枝のアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、2-メチル-1-プロピル基、2-メチル-2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、3-メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1-へキシル基、2-へキシル基、3-へキシル基、2-メチル-1-ペンチル基、3-メチル-1-ペンチル基、4-メチル-1-ペンチル基、2-メチル-2-ペンチル基、3-メチル-2-ペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-メチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ペンチル基、2,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、2,2-ジメチル-1-ブチル基、2-エチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基等が挙げられる。また、R1及びR2における炭素数1—6の環状アルキル基としては、一又は複数の実施形態において、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。

【0023】
1及びR2におけるヘテロアリール(ヘテロアリールメチル基におけるヘテロアリールを含む)としては、一又は複数の実施形態において、窒素原子を1~2個含む5~6員単環式の基、窒素原子を1~2個と酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個とを含む5~6員単環式の基、酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、窒素原子1~4個を含み、6員環と5又は6員環が縮合した二環式の基などが挙げられる。また、その他の一又は複数の実施形態において、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、3-オキサジアゾリル、2-イミダゾリル、2-チアゾリル、3-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、2-フリル、3-フリル、3-ピロリル、2-キノリル、8-キノリル、2-キナゾリニル、8-プリニルが挙げられる。R1及びR2におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数10個以下のアリール基が挙げられる。

【0024】
1及びR2におけるアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、一個又は同一若しくは異なって複数個あってもよく、一又は複数の実施形態において、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、メチレンジオキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、低級アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ジ低級アルキルアミノカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アルカノイルアミノ基、又は低級アルキルスルホンアミド基が挙げられる。ハロゲン原子は、一又は複数の実施形態において、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子が挙げられる。

【0025】
式(I)及び(I')において、R3は、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロアリール基、又はCH2OC(O)R4-である。

【0026】
4は、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。

【0027】
3及びR4における炭素数1—6の直鎖又は分枝のアルキル基としては、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、2-メチル-1-プロピル基、2-メチル-2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、3-メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1-へキシル基、2-へキシル基、3-へキシル基、2-メチル-1-ペンチル基、3-メチル-1-ペンチル基、4-メチル-1-ペンチル基、2-メチル-2-ペンチル基、3-メチル-2-ペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-メチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ペンチル基、2,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、2,2-ジメチル-1-ブチル基、2-エチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基等が挙げられる。また、R3及びR4における炭素数1—6の環状アルキル基としては、一又は複数の実施形態において、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。

【0028】
3及びR4におけるヘテロアリール(ヘテロアリールメチル基におけるヘテロアリールを含む)としては、一又は複数の実施形態において、窒素原子を1~2個含む5~6員単環式の基、窒素原子を1~2個と酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個とを含む5~6員単環式の基、酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、窒素原子1~4個を含み、6員環と5又は6員環が縮合した二環式の基などが挙げられる。また、その他の一又は複数の実施形態において、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、3-オキサジアゾリル、2-イミダゾリル、2-チアゾリル、3-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、2-フリル、3-フリル、3-ピロリル、2-キノリル、8-キノリル、2-キナゾリニル、8-プリニルが挙げられる。R1及びR2におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数10個以下のアリール基が挙げられる。

【0029】
3及びR4におけるアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、一個又は同一若しくは異なって複数個あってもよく、一又は複数の実施形態において、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、メチレンジオキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、低級アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ジ低級アルキルアミノカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アルカノイルアミノ基、又は低級アルキルスルホンアミド基が挙げられる。ハロゲン原子は、一又は複数の実施形態において、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子が挙げられる。

【0030】
式(I)及び(I')において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、前述のR1及びR2が置換したアミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基、メルカプト基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。

【0031】
Xにおける炭素数1—6の直鎖又は分枝のアルキル基(アルキルオキシ基及びアルキルチオ基におけるアルキル基を含む)としては、一又は複数の実施形態において、一又は複数の実施形態において、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、2-メチル-1-プロピル基、2-メチル-2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、3-メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、2,2-ジメチル-1-プロピル基、1-へキシル基、2-へキシル基、3-へキシル基、2-メチル-1-ペンチル基、3-メチル-1-ペンチル基、4-メチル-1-ペンチル基、2-メチル-2-ペンチル基、3-メチル-2-ペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、2-メチル-3-ペンチル基、3-メチル-3-ペンチル基、2,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、2,2-ジメチル-1-ブチル基、2-エチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基等が挙げられる。また、Xにおける炭素数1—6の環状アルキル基(アルキルオキシ基及びアルキルチオ基におけるアルキル基を含む)としては、一又は複数の実施形態において、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。

【0032】
Xにおけるヘテロアリール(ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基及びヘテロアリールメチル基におけるヘテロアリールを含む)としては、一又は複数の実施形態において、窒素原子を1~2個含む5~6員単環式の基、窒素原子を1~2個と酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個とを含む5~6員単環式の基、酸素原子を1個若しくは硫黄原子を1個含む5員単環式の基、窒素原子1~4個を含み、6員環と5又は6員環が縮合した二環式の基などが挙げられる。また、その他の一又は複数の実施形態において、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、3-チエニル、3-オキサジアゾリル、2-イミダゾリル、2-チアゾリル、3-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、2-フリル、3-フリル、3-ピロリル、2-キノリル、8-キノリル、2-キナゾリニル、8-プリニルが挙げられる。Xにおけるアリール基(アリールオキシ基及びアリールチオ基におけるヘテロアリールを含む)としては、フェニル基、ナフチル基等の炭素原子数10個以下のアリール基が挙げられる。

【0033】
Xにおけるアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、一個又は同一若しくは異なって複数個あってもよく、一又は複数の実施形態において、ハロゲン原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、メチレンジオキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ベンジルオキシ基、低級アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ジ低級アルキルアミノカルボニル基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アルカノイルアミノ基、又は低級アルキルスルホンアミド基が挙げられる。

【0034】
Xにおけるハロゲン原子は、一又は複数の実施形態において、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子が挙げられる。

【0035】
また、式(I)若しくは(I')で表される化合物は、一又は複数の実施形態において、Kinetinを含まず、また、一又は複数の実施形態において、式(I)及び(I')におけるR1、R2、R3、R4及びXはKinetinとなる組み合わせ(R1及びR2が2-フリルメチル及び水素原子、R3が水素原子、かつ、Xが水素原子の組み合わせ)ではない。

【0036】
また、式(I)若しくは(I')で表される化合物は、不斉炭素原子が存在する場合、及び/又は、立体異性体が存在する場合、一又は複数の実施形態において、各異性体の混合物、又は、単離されたものである。

【0037】
本開示において「プロドラッグ」は、一又は複数の実施形態において、生体内で容易に加水分解され、式(I)又は(I')で表される化合物を再生するものが挙げられ、例えばカルボキシル基を有する化合物であればそのカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物、アルキルチオカルボニル基となった化合物、又はアルキルアミノカルボニル基となった化合物が挙げられる。また、例えばアミノ基を有する化合物であれば、そのアミノ基がアルカノイル基で置換されアルカノイルアミノ基となった化合物、アルコキシカルボニル基により置換されアルコキシカルボニルアミノ基となった化合物、アシロキシメチルアミノ基となった化合物、又はヒドロキシルアミンとなった化合物が挙げられる。また例えば水酸基を有する化合物であれば、その水酸基が前記アシル基により置換されてアシロキシ基となった化合物、リン酸エステルとなった化合物、又はアシロキシメチルオキシ基となった化合物が挙げられる。これらのプロドラッグ化に用いる基のアルキル部分としては前記アルキル基が挙げられ、そのアルキル基は置換(例えば炭素原子数1~6のアルコキシ基等により)されていてもよい。一又は複数の実施形態において、例えばカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物を例にとれば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどの低級(例えば炭素数1~6)アルコキシカルボニル、メトキシメトキシカルボニル、エトキシメトキシカルボニル、2-メトキシエトキシカルボニル、2-メトキシエトキシメトキシカルボニル、ピバロイロキシメトキシカルボニルなどのアルコキシ基により置換された低級(例えば炭素数1~6)アルコキシカルボニルが挙げられる。

【0038】
本開示において「製薬上許容される塩」とは、薬学的、薬理的、及び/又は医薬的に許容される塩を含有し、例えば、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、酸性又は塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。

【0039】
前記無機酸塩の好ましい例としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられ、有機酸塩の好ましい例としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などが挙げられる。

【0040】
前記無機塩基塩の好ましい例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。前記有機塩基塩の好ましい例としては、例えばジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン塩などが挙げられる。

【0041】
前記酸性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。前記塩基性アミノ酸塩の好ましい例としては、例えばアルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などが挙げられる。

【0042】
本開示において「化合物の塩」には、化合物が大気中に放置されることにより、水分を吸収して形成されうる水和物が包含され得る。また、本開示において「化合物の塩」には、化合物が他のある種の溶媒を吸収して形成されうる溶媒和物も包含され得る。

【0043】
式(I)又は(I')で表される化合物は、一又は複数の実施形態において、下記式(II)の化合物である。
【化3】
JP2018198615A_000004t.gif
式(II)において、Yはハロゲン原子である。Yにおけるハロゲン原子は、一又は複数の実施形態において、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素の原子が挙げられる。

【0044】
[医薬組成物]
本開示は、一態様において、式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物に関する。

【0045】
式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、遺伝病の一因となる異常スプライシングを抑制するための用途に使用されうる。本開示において「遺伝病の一因となる異常スプライシング」は、一又は複数の実施形態において、スプライスされる遺伝子における遺伝子変異に起因する、遺伝病の一因となる異常スプライシングである。

【0046】
遺伝病の一因となる異常スプラシングとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、家族性自律神経失調症(FD)の原因であるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングが挙げられる(上述及び図1A)。FD以外にも、異常スプライシングが原因である遺伝病は多く知られている。

【0047】
よって、式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、哺乳類細胞若しくは哺乳類個体において遺伝病の一因となる異常スプラシングを変化させるための用途に使用されうる。該遺伝病の一因となる異常スプラシングは、一又は複数の実施形態において、スプライスされる遺伝子における遺伝子変異に起因する異常スプライシングであり、さらなる一又は複数の実施形態において、IVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングである。

【0048】
式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、哺乳類細胞若しくは哺乳類個体において遺伝病の一因となる異常スプラシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させるための用途に使用されうる。該遺伝病の一因となる異常スプラシングは、一又は複数の実施形態において、スプライスされる遺伝子における遺伝子変異に起因する異常スプライシングであり、さらなる一又は複数の実施形態において、IVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングである。

【0049】
よって、式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させるための用途に使用されうる。

【0050】
また、式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させるための用途に使用されうる。

【0051】
さらにまた、式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させるための用途に使用されうる。

【0052】
上記実施形態において、哺乳類細胞若しくはヒト細胞は、一又は複数の実施形態において、in vivo、in vitro、又は、ex vivoの細胞を含む。また、哺乳類細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト細胞又はヒト以外の哺乳類の細胞である。ヒト細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒトの神経細胞である。上記実施形態において、ヒト細胞及びヒト個体は、一又は複数の実施形態において、内在性のIKBKAP遺伝子にIVS20+6TC変異を有する。本開示において、IVS20+6TC変異とは、図1Aで示すとおり、IKBKAP遺伝子の第20イントロン内における一塩基置換(T→C)である。ヒト細胞及びヒト個体がIVS20+6TC変異を有するか否かは、限定されない一又は複数の実施形態において、一塩基置換を検出できる方法が挙げられ、或いは、塩基配列シーケンス、アレイ、各種遺伝子増幅方法が挙げられる。

【0053】
式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、異常スプライシングが発症又は進行の一因となる遺伝病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療の用途に使用されうる。また、式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、スプライスされる遺伝子における遺伝子変異に起因する異常スプライシングが発症又は進行の一因となる遺伝病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療の用途に使用されうる。

【0054】
式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、IVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングが関与する疾病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療の用途に使用されうる。

【0055】
式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、家族性自律神経失調症(FD)の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療の用途に使用されうる。

【0056】
本開示において「医薬組成物」は、一又は複数の実施形態において、周知の製剤技術を適用し、投与形態に適した剤形とすることができる。その投与形態としては、これらに限定されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤等の剤形による経口投与が挙げられる。或いは、注射剤、液剤、エアゾール剤、座剤、貼布剤、パップ剤、ローション剤、リニメント剤、軟膏剤、点眼剤等の剤形による非経口投与を挙げることができる。これらの製剤は、これらに限定されないが、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味矯臭剤、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造されうる。

【0057】
本開示に係る医薬組成物は、一又は複数の実施形態において、治療効果を有する他の有効成分を含まず、或いは、さらに一又は複数の有効成分を含有する。

【0058】
前記賦形剤としては、これらに限定されないがデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、乳糖、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム等を挙げることができる。前記コーティング剤としては、これらに限定されないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セラック、タルク、カルナウバロウ、パラフィン等を挙げることができる。前記結合剤としては、これらに限定されないが、ポリビニルピロリドン、マクロゴール及び前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。前記崩壊剤としては、これらに限定されないが、前記賦形剤と同様の化合物及びクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。前記安定化剤としては、これらに限定されないが、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェエノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及びソルビン酸を挙げることができる。前記矯味矯臭剤としては、これらに限定されないが、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。

【0059】
また、液剤の製造には、溶媒として、これらに限定されないが、エタノール、フェノール、クロロクレゾール、精製水、蒸留水等を使用することができ、必要に応じて界面活性剤又は乳化剤等も使用できる。前記界面活性剤又は乳化剤としては、これらに限定されないが、ポリソルベート80、ステアリン酸ポリオキシル40、ラウロマクロゴール等を挙げることができる。

【0060】
本開示に係る医薬組成物の使用方法は、症状、年齢、投与方法等により異なりうる。使用方法は、これらに限定されないが、有効成分である式(I)若しくは(I')で表される化合物の体内濃度が100nM~1mMの間のいずれかになるように、間欠的若しくは持続的に、経口、経皮、粘膜下、皮下、筋肉内、血管内、脳内、又は腹腔内に投与することができる。限定されない実施形態として、経口投与の場合、対象(ヒトであれば成人)に対して1日あたり、式(I)若しくは(I')で表される化合物に換算して、下限として0.01mg(好ましくは0.1mg)、上限として、2000mg(好ましくは500mg、より好ましくは100mg)を1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。限定されない実施形態として、静脈内投与の場合には、対象(ヒトであれば成人)に対して1日当たり、下限として0.001mg(好ましくは0.01mg)、上限として、500mg(好ましくは50mg)を1回又は数回に分けて、症状に応じて投与することが挙げられる。

【0061】
[方法及び使用]
本開示は、その他の一態様において、以下の方法に関しうる。
(a)哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の発症若しくは進行の一因となる異常スプラシング又はヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させる方法。
(b)哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の発症若しくは進行の一因となる異常スプラシング又はヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させる方法。
(c)ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させる方法。
これら(a)~(c)の方法は、式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物を前記ヒト細胞又は前記ヒト個体に接触させることにより達成されうる。

【0062】
上記(a)~(c)の方法における哺乳類細胞又はヒト細胞は、一又は複数の実施形態において、in vivo、in vitro、又は、ex vivoの細胞を含む。また、哺乳類細胞は一又は複数の実施形態においてヒト細胞であり、ヒト細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒトの神経細胞である。上記(a)~(c)の方法におけるヒト細胞及びヒト個体は、一又は複数の実施形態において、内在性のIKBKAP遺伝子にIVS20+6TC変異を有する。

【0063】
in vitro又はex vivoの哺乳類細胞若しくはヒト細胞に式(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物を接触させる方法は、限定されない一又は複数の実施形態において、細胞培養液に式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはその塩又は本開示に係る医薬組成物を添加することが挙げられる。添加濃度としては、限定されない一又は複数の実施形態において式(I)若しくは(I')で表される化合物の濃度が100nM~1mMの間のいずれかになるように添加することが挙げられる。in vivoのヒト細胞及びヒト個体に(I)若しくは(I')で表される化合物又は本開示に係る医薬組成物を接触させる方法は、一又は複数の実施形態において、前述の医薬組成物の使用方法に準じることができる。

【0064】
本開示は、さらにその他の一態様において、本開示に係る医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む、異常スプライシングが発症若しくは進行の一因となる疾病又は家族性自律神経失調症(FD)の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療方法に関する。前記対象は、一又は複数の実施形態において、該疾病の罹患者、異常スプライシングが発症若しくは進行の一因となる遺伝病の変異遺伝子保有者、FD患者、又は、IVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子保有者が挙げられる。本開示に係る医薬組成物の投与方法については、一又は複数の実施形態において、前述の医薬組成物の使用方法に準じることができる。

【0065】
したがって、本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
[A1] 下記式(I)若しくは(I')で表される化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩。
【化4】
JP2018198615A_000005t.gif
[式(I)及び(I')において、
1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である;
3は、水素原子、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のヘテロアリール基、又はCH2OC(O)R4-である;
4は、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である;
Xは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、R1及びR2が置換したアミノ基、アジド基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールオキシ基、メルカプト基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキルチオ基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、炭素数1—6の直鎖若しくは分枝若しくは環状のアルキル基、ベンジル若しくはヘテロアリールメチル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基である。]
[A2] [A1]記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
[A3] 哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させるための、
哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させるための、又は、
ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させるための、[A2]記載の医薬組成物。
[A4] 前記細胞が、神経細胞である、[A3]記載の医薬組成物。
[A5] 異常スプライシングが発症又は進行の一因となる遺伝病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための、[A2]から[A4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[A6] 前記異常スプライシングが、スプライスされる遺伝子における遺伝子変異に起因する異常スプライシングである、[A5]に記載の医薬組成物。
[A7] 遺伝病が、家族性自律神経失調症(FD)である、[A6]に記載の医薬組成物。
[A8] 哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング又はヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させる方法、哺乳類細胞若しくは哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング又はヒト細胞若しくはヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させる方法、又は、ヒト細胞若しくはヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させる方法であって、[A1]記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩又は[A2]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を哺乳類細胞、ヒト細胞、哺乳類個体又はヒト個体に接触させることを含む、方法。
[A9] 哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング又はヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングを変化させる方法、哺乳類個体における遺伝病の一因となる異常スプラシング又はヒト個体におけるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きる異常スプライシングに対する野生型スプライシングの比率を増加させる方法、又は、ヒト個体においてIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子から転写されたmRNAにおけるエクソン20の存在割合を増加させる方法であって、前記個体に[A2]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[A10] 前記異常スプライシングが、スプライスされる遺伝子における遺伝子変異に起因する異常スプライシングである、[A7]又は[A8]に記載の方法。
[A11] 異常スプライシングが発症若しくは進行の一因となる遺伝病又は家族性自律神経失調症の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療方法であって、[A2]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を必要とされる対象に投与することを含む方法。
[A12] [A8]から[A11]のいずれかに記載の方法における、[A1]記載の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩又は[A2]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
[A13] [A2]から[A7]のいずれかに記載の医薬組成物を製造するための[A1]の化合物若しくはそのプロドラッグ又はそれらの製薬上許容される塩の使用。

【0066】
[スプライシングレポーターDNAコンストラクト]
本開示は、その他の態様において、野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたスプライシングレポーターDNAコンストラクトに関する。

【0067】
本開示において「疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシング」は、一又は複数の実施形態において、疾病における選択的スプライシング、疾病に特異的な選択的スプライシング、疾病において正常時よりも多く起る選択的スプライシング、又は、疾病の発症若しくは進行の一因となる選択的スプライシングをいう。疾病としては、遺伝病、がん、又は感染症が挙げられる。

【0068】
遺伝病の発症又は進行の一因となる異常スプラシングとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、スプライスされる遺伝子における遺伝子変異に起因する異常スプライシングであって、さらなる一又は複数の実施形態において、家族性自律神経失調症(FD)の原因であるIVS20+6TC変異を有する変異IKBKAP遺伝子のpre-mRNAで起きるスプライシングが挙げられる(上述及び図1A)。FD以外にも、異常スプライシングが原因である遺伝病は多く知られている。

【0069】
がんの発症又は進行の一因となる異常スプラシングとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、PKM(ピルビン酸キナーゼM)遺伝子のエクソン9、10の相互排他的スプライシングで、PKM2アイソフォーム(エクソン10)選択されるスプライシングが挙げられる(上述及び図5)。PKM2は、ほとんどのがんで発現し、腫瘍の増大に寄与するものと考えられている。PKM遺伝子以外にも、がんの発症又は進行の一因となる選択的スプライシングは存在すると考えられる。

【0070】
感染症の発症又は進行の一因となる異常スプラシングとしては、限定されない一又は複数の実施形態において、2型単純ヘルペスウイルス(HSV-2)が感染した細胞における、PML(promyelocytic leukemia)アイソフォームの発現スイッチングをもたらす選択的スプライシングが知られている(Nojima et al., Nucleic Acid Research, 2009)。感染症としては、限定されない一又は複数の実施形態において、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫による感染症が挙げられる。

【0071】
上記実施形態において、哺乳類細胞若しくはヒト細胞は、一又は複数の実施形態において、in vivo、in vitro、又は、ex vivoの細胞を含む。また、哺乳類細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト細胞又はヒト以外の哺乳類の細胞である。細胞は、一又は複数の実施形態において、神経細胞、がん細胞、又は感染細胞である。

【0072】
本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトは、一又は複数の実施形態において、IVS20+6TC変異を含む遺伝子領域の異常スプライシングを検出できるスプライシングレポーターとして機能しうるDNAコンストラクトである。本実施形態に係るDNAコンストラクトは、一又は複数の実施形態において、3n+1又は3n+2塩基長のエクソンaとIKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異を有するイントロンとを含む遺伝子と2つの異なるレポーター遺伝子を含み、エクソンaを含む野生型スプライスバリアントとエクソンaがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成される。

【0073】
本実施形態に係るレポーターコンストラクトは、その他の一又は複数の実施形態において、IVS20+6TC変異を有するヒトIKBKAP遺伝子の第19エクソンから第21エクソンの領域と2つの異なるレポーター遺伝子を含み、第20エクソンを含む野生型スプライスバリアントと第20エクソンがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成される。一又は複数の実施形態において、第19エクソンから第21エクソンの領域部分は、第20エクソンがエクソンスキップされる異常スプライシングが起る範囲であれば、第19エクソン及び/又は第21エクソンが部分的に欠失してもよい。

【0074】
本実施形態に係るDNAコンストラクトにおけるレポーター遺伝子は、限定されない一又は複数の実施形態において、各種蛍光蛋白質の遺伝子である。

【0075】
本実施形態に係るDNAコンストラクトは、限定されない一又は複数の実施形態において、図1Bに示すレポーターコンストラクトで説明されうる。図1BのDNAコンストラクトは、CAGプロモーターの下流にGSTタンパク質の遺伝子、変異型ヒトIKBKAP遺伝子の19~21エクソン部分、RFP(赤色蛍光蛋白質)、及びGFP(緑色蛍光蛋白質)をこの順に連結されている。このコンストラクトにおいて、野生型スプライシングを受けた場合には、GSTタンパク質の遺伝子及び変異型ヒトIKBKAP遺伝子の19~21エクソン部分が、3n+1塩基長のmRNAとなり、RFP遺伝子のストップコドン(UAA)はアウトフレームとなり、GFP遺伝子がインフレームで翻訳され緑色蛍光タンパク質が発現する。一方、異常スプライシングを受けた場合には、GSTタンパク質の遺伝子及び変異型ヒトIKBKAP遺伝子の19~21エクソン部分が、3n塩基長のmRNAとなり、RFP遺伝子及びそのストップコドン(UAA)がインフレームで翻訳され赤色蛍光タンパク質が発現する。

【0076】
本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトは、一又は複数の実施形態において、PKM遺伝子のエクソン9、10の相互排他的スプライシングで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたスプライシングレポーターDNAコンストラクトに関する。本実施形態に係るDNAコンストラクトは、限定されない一又は複数の実施形態において、図6に示すレポーターコンストラクトで説明されうる。PKM遺伝子のエクソン8から11のゲノム領域を、フレームの異なるよう連結させたRFP、GFP、cDNAに連結させた。9を選択した場合には、RFPにフレームが合い、10を選択した場合にはRFPにフレームが合うように設計し、9、10どちらも選択されず、スキップしてしまった場合、また、どちらとも選択された場合にはRFP及びGFPのどちらにもフレームが合わないように設計されている。

【0077】
本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトの製造方法は、国際公開第2011/152043号を参照でき、本文献を参照により本開示に組み込む。

【0078】
[異常スプライシングを抑制するか否かをテストする方法]
本開示に係るレポーターDNAコンストラクトを導入した細胞を用いれば、該細胞に接触させた物質が異常スプライシングを抑制できるか否かをテストできる。したがって、本開示はその他の態様において、疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法であって、
(A)本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトを真核細胞又は真核生物に導入し、必要に応じて導入された該細胞又は生物を該異常スプライシングが起る条件とすること、
(B)テスト物質を前記真核細胞又は真核生物に接触若しくは発現させること、
(C)野生型スプライシング及び異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、該テスト物質を接触若しくは発現させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法に関する。

【0079】
真核細胞又は真核生物としては、一又は複数の実施形態において、哺乳類又はヒトの細胞又は個体が挙げられる。本開示に係るスクリーニング方法としては、一又は複数の実施形態において、in vivo、in vitro、又は、ex vivoの細胞を使用しうる。また、哺乳類細胞は、一又は複数の実施形態において、ヒト細胞であり、細胞は、一又は複数の実施形態において、神経細胞、がん細胞、感染細胞である。

【0080】
「導入された該細胞又は生物を該異常スプライシングが起る条件とすること」とは、限定されない一又は複数の実施形態において、腫瘍細胞の条件と同じになるように、酸素濃度を0.5%とし、ATP合成阻害剤であるオリゴマイシンを存在させることが挙げられる。

【0081】
テスト物質が、一又は複数の実施形態において、タンパク質であれば、該タンパク質をコードしたcDNAの発現ベクターを、本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトを導入した真核細胞又は真核生物にさらに導入することで発現させてもよい。テスト物質の発現は、一又は複数の実施形態において、テスト物質を発現可能なベクターを前記真核細胞又は真核生物に導入することにより行われる。前記ベクターとしては、一又は複数の実施形態において、適宜、遺伝子発現ライブラリー、又は、cDNAを組み込んだ発現ベクターを使用できる。一方、テスト物質が、一又は複数の実施形態において、低分子化合物であれば、該低分子化合物の存在下で、本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトを導入した真核細胞又は真核生物を培養することで接触させてもよい。

【0082】
本開示に係るスクリーニング方法は、一又は複数の実施形態において、異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病の医薬組成物の有効成分となる候補化合物のスクリーニング方法である。異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病は、上述のとおり、一又は複数の実施形態において、遺伝病、がん、又は感染症である。前記遺伝病としては、限定されない一又は複数の実施形態において、家族性自律神経失調症(FD)が挙げられる。

【0083】
したがって、本開示に係るスクリーニング方法は、その他の一又は複数の実施形態において、IKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異に起因する異常スプライシングを抑制する物質か否かをテストする方法であって、
(A)本開示に係るレポーターDNAコンストラクトを真核細胞又は真核生物に導入すること、
(B)テストする物質を前記真核細胞又は真核生物に接触若しくは発現させること、
(C)野生型スプライシング又は異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、テストする物質を接触させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法に関する。

【0084】
本開示に係るスクリーニング方法の前記工程(C)における、野生型スプライシング又は異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現による検出は、一又は複数の実施形態において、蛍光シグナルの検出、RT-PCRなどが挙げられ、特に制限されず、レポーター遺伝子に応じて適宜選択できる。

【0085】
本開示に係るスクリーニング方法の前記工程(D)の一又は複数の実施形態において、テスト物質を接触させた細胞における野生型スプライシングの割合が高くなった場合、異常スプライシングを抑制できる候補物質として選択できる。

【0086】
テスト物質としては、その他の一又は複数の実施形態において、低分子化合物が挙げられる。したがって、本開示は、その他の態様において、疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる低分子化合物のスクリーニング方法であって、(A)本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトを真核細胞又は真核生物に導入し、必要に応じて導入された該細胞又は生物を該異常スプライシングが起る条件とすること、(B)テストする低分子化合物を前記真核細胞又は真核生物に接触させること、(C)野生型スプライシング及び異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、該低分子化合物を接触させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法に関する。また、IKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異に起因する異常スプライシングを抑制する低分子化合物のスクリーニング方法であって、(A)本開示に係るレポーターDNAコンストラクトを真核細胞又は真核生物に導入すること、(B)テストする低分子化合物を前記真核細胞又は真核生物に接触させること、(C)野生型スプライシング又は異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、低分子化合物を接触させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法に関する。

【0087】
本開示に係るスクリーニング方法の前記工程(D)の一又は複数の実施形態において、テスト低分子化合物を接触させた細胞における野生型スプライシングの割合が高くなった場合、異常スプライシングを抑制できる候補低分子化合物として選択できる。よって、本開示は、その他の態様において、異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病の医薬組成物であって、該異常スプライシングを抑制できる有効成分を含む、医薬組成物に関する。

【0088】
[キット]
本開示は、その他の態様において、本開示に係るスプライシングレポーターDNAコンストラクトと、該異常スプライシングを起こし得る細胞とを含むキットに関する。該キットは、本開示に係るスクリーニング方法に使用できる。また、該キットは、さらに、テスト物質を発現可能なベクターを含んでもよい。

【0089】
したがって、本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関しうる。
[B1] 疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライシングを抑制できる物質のスクリーニング方法であって、
(A)野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトを真核細胞又は真核生物に導入し、必要に応じて導入された該細胞又は生物を該異常スプライシングが起る条件とすること、
(B)テスト物質を前記真核細胞又は真核生物に接触若しくは発現させること、
(C)野生型スプライシング及び異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、該テスト物質を接触若しくは発現させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法。
[B2] テスト物質の発現が、テスト物質を発現可能なベクターを前記真核細胞又は真核生物に導入することにより行われる、[B1]記載の方法。
[B3] 異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病の医薬組成物の有効成分となる候補化合物のスクリーニング方法である、[B1]又は[B2]に記載の方法。
[B4] 前記疾病が、遺伝病、がん、又は感染症である、[B1]から[B3]のいずれかに記載の方法。
[B5] IKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異に起因する異常スプライシングを抑制する物質か否かをテストする方法であって、
(A)3n+1又は3n+2塩基長のエクソンaとIKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異を有するイントロンとを含む遺伝子と2つの異なるレポーター遺伝子とが、エクソンaを含む野生型スプライスバリアントとエクソンaがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトを、真核細胞又は真核生物に導入すること、
(B)テストする物質を前記真核細胞又は真核生物に接触又は発現させること、
(C)野生型スプライシング又は異常スプライシングの少なくとも一方を前記レポーター遺伝子の発現により検出すること、及び、
(D)異常スプライシングのレポーター遺伝子発現に対する野生型スプライシングのレポーター遺伝子発現の割合が、テストする物質を接触させないコントロールと比べて変化したか否かを決定すること、を含む方法。
[B6] 異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病の予防、改善、進行抑制、及び/又は、治療のための、該異常スプライシングを抑制できる有効成分を含む、医薬組成物。
[B7] 異常スプライシングが発症又は進行の一因となる疾病が、遺伝病、がん、又は感染症である、[B6]に記載の医薬組成物。
[B8] 3n+1又は3n+2塩基長のエクソンaとIKBKAP遺伝子のIVS20+6TC変異を有するイントロンとを含む遺伝子と2つの異なるレポーター遺伝子とが、エクソンaを含む野生型スプライスバリアントとエクソンaがスキップされた異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクト。
[B9] 野生型スプライスバリアントと疾病の発症又は進行の一因となる異常スプライスバリアントとで異なるレポーター遺伝子が発現するように融合され配置又は構成されたDNAコンストラクトと、該異常スプライシングを起こし得る細胞とを含むキット。
[B10] さらに、テスト物質を発現可能なベクターを含む、[B9]記載のキット。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本開示中に引用された文献は、すべて本開示の一部として組み入れられる。
【実施例】
【0091】
製造例1:化合物1の製造
【化5】
JP2018198615A_000006t.gif
化合物1は、WO2010/118367に開示される方法を参考に、以下のように合成した。
2,6-ジクロロ-1H-プリン(2,6-dichloro-1H-purine)(189mg,1.00mmol、商用品)とフルフリルアミン(furfurylamine)(97.0mg,1.00mmol、商用品)のアセトニトリル(acetonitrile)(20mL)溶液にトリエチルアミン(triethylamine)(0.15mL,1.08mmol)を室温で添加した。混合物を室温にて6時間撹拌した後、60℃にて3時間撹拌した。この混合溶液を減圧下で濃縮した後、水を加え、生じた白色沈殿をろ取した。得られた固体は、水、ジエチルエーテルで順次洗浄し、2-クロロ-N-(2-フラニルメチル)-7H-プリン-6-アミン(2-chloro-N-(2-furanylmethyl)-7H-purin-6-amine)(化合物1)(19.8mg,0.0795mmol,8.0%)を白色固体として得た。
TLC Rf 0.22 (酢酸エチル); 1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 4.56-4.67 (br, 2H), 6.24-6.28 (br, 1H), 6.35-6.40 (br, 1H), 7.54-7.57 (br, 1H), 8.11-8.15 (br, 1H), 8.54-8.64 (br, 1H), 13.05-13.17 (br, 1H).
【実施例】
【0092】
参考化合物1
【化6】
JP2018198615A_000007t.gif
上記参考化合物1は、Kinetinであり、ナカライラスク社製のものを用いた。
【実施例】
【0093】
[2色蛍光タイプのスプライシングレポーターコンストラクトの作製]
図1Aに示されるIVS20+6TC変異を有する変異型ヒトIKBKAP遺伝子の19~21エクソン部分を利用して、図1Bに示すようなレポーターコンストラクト(FD型)を作製した。すなわち、CAGプロモーターの下流にGSTタンパク質の遺伝子、変異型ヒトIKBKAP遺伝子の19~21エクソン部分、RFP(赤色蛍光蛋白質)、及びGFP(緑色蛍光蛋白質)をこの順に連結したコンストラクトを作製した。なお、前記コンストラクトにおいて、野生型スプライシングを受けた場合には、GSTタンパク質の遺伝子及び変異型ヒトIKBKAP遺伝子の19~21エクソン部分が、3n+1塩基長のmRNAとなり、RFP遺伝子のストップコドン(UAA)はアウトフレームなり、GFP遺伝子がインフレームで翻訳され緑色蛍光タンパク質が発現する。一方、異常スプライシングを受けた場合には、GSTタンパク質の遺伝子及び変異型ヒトIKBKAP遺伝子の19~21エクソン部分が、3n塩基長のmRNAとなり、RFP遺伝子及びそのストップコドン(UAA)がインフレームで翻訳され赤色蛍光タンパク質が発現する。
【実施例】
【0094】
図1Bに開示されるレポーターコンストラクトを用いることで、IVS20+6TC変異を有する変異型ヒトIKBKAP遺伝子のpre-mRNAのスプライシングが野生型スプライスか、異常スプライスかの判断が容易となる。
【実施例】
【0095】
前記レポーターコンストラクト(FD型)において変異型ヒトIKBKAP遺伝子が野生型ヒトIKBKAP遺伝子である他は同様であるレポーターコンストラクト(野生型)もさらに作製した。
【実施例】
【0096】
作製したFD型レポーターコンストラクト及び野生型レポーターコンストラクトをHeLa細胞にトランスフェクションし、FD患者における異常スプライシングが再現できるか確認した。
【実施例】
【0097】
まず、蛍光顕微鏡観察を行ったところ、野生型レポーターコンストラクトをトランスフェクションした細胞ではGFPが発現することが確認され、正常スプライシングが起きていることが確認された(データ示さず)。また、FD型レポーターコンストラクトをトランスフェクションした細胞ではRFPが発現することが確認され、異常スプライシングが起きていることが確認された(データ示さず)。
【実施例】
【0098】
さらに、RT-PCRを使用して確認したところ、図2に示すとおり、野生型レポーターコンストラクトをトランスフェクションした細胞では正常スプライシング産物が確認され、FD型レポーターコンストラクトをトランスフェクションした細胞では異常スプライシング産物が確認された。なお、内部コントロールとして、内因性IKBKAP遺伝子のmRNA及びGAPDH遺伝子のmRNAを使用した。
【実施例】
【0099】
[異常スプライシングを抑制する化合物のスクリーニング]
FD型レポーターコンストラクトを用いて、該コンストラクトから転写されるpre-mRNAで起きる異常スプライシングを抑制できる化合物をスクリーニングした。具体的には、FD型レポーターコンストラクトをトランスフェクションしたHeLa細胞に、テスト化合物を接触させて培養し、所定の時間後に蛍光観察を行い、GFP(正常スプライシング産物)とRFP(異常スプライシング産物)の蛍光強度比(GFP/RFP)がコントロール(例えば、溶媒のみ、又はKinetin(参考化合物1))と比べて強いものを選択した。その結果、異常スプライシングを抑制する化合物の候補化合物として、前記化合物1が選択された。
【実施例】
【0100】
[化合物1の異常スプライシング抑制効果の確認]
FD型レポーターコンストラクトをトランスフェクションしたHeLa細胞に、化合物1を接触させて培養した(化合物濃度0.4、2.0、10.0、及び50.0μM)。24時間及び48時間後に蛍光観察を行い、蛍光強度比(GFP/RFP)を求めた。その結果を図3に示す。
【実施例】
【0101】
図3のグラフは、コントロール(溶媒のみ)、Kinetin、及び化合物1について、投与濃度と蛍光強度比(GFP/RFP)との関係を示す。同図に示す通り、化合物1は、濃度依存的に蛍光強度比(GFP/RFP)が増加しており、その増加度は、Kinetinより著しく優れていた。よって、化合物1は、Kinetinよりも効果的にIVS20+6TC変異に起因する異常スプライシングを抑制できることが示された。
【実施例】
【0102】
[FD患者の細胞における化合物1の異常スプライシング抑制効果の確認]
FD患者細胞は、Coriell Instituteより得たものを使用した。なお、該FD患者細胞の内在性IKBKAP遺伝子は、IVS20+6TC変異を有していた。
【実施例】
【0103】
該患者細胞の培養液に化合物1及びKinetinを2μM又は50μMの濃度で添加し、60時間培養後、細胞を回収してRT-PCRを行った。コントロールとしては、未処理細胞、及び、DMSO(溶媒)処理細胞を使用した。その結果を図4に示す。
【実施例】
【0104】
図4に示すとおり、化合物1は、2μMという低い濃度で異常スプライシングを抑制できることが示された。また、その異常スプライシング抑制活性は、50μMの濃度のKinetinと同程度であることが示された。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6