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明細書 :希土類金属硫酸塩の水和物、及びその製造方法、並びに化学蓄熱材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年9月27日(2018.9.27)
発明の名称または考案の名称 希土類金属硫酸塩の水和物、及びその製造方法、並びに化学蓄熱材料
国際特許分類 C01F  17/00        (2006.01)
C09K   5/16        (2006.01)
FI C01F 17/00 E
C09K 5/16
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 22
出願番号 特願2017-555145 (P2017-555145)
国際出願番号 PCT/JP2016/086634
国際公開番号 WO2017/099197
国際出願日 平成28年12月8日(2016.12.8)
国際公開日 平成29年6月15日(2017.6.15)
優先権出願番号 2015241182
優先日 平成27年12月10日(2015.12.10)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ
発明者または考案者 【氏名】畑田 直行
【氏名】宇田 哲也
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G076
Fターム 4G076AA14
4G076AA21
4G076CA02
4G076CA29
4G076CA33
4G076DA30
要約 本発明の課題は、安価であり、安全性が高く、繰り返し反応を行っても再現性が高く(繰り返し耐久性が高く)、さらに比較的低温領域においても蓄熱と放熱とを可逆的に進行させることができる、化学蓄熱材料として有用な化合物を提供することである。本発明は、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、特定の回折角(2θ)に特徴的なピークを有する希土類金属硫酸塩の水和物である。
特許請求の範囲 【請求項1】
モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、下記に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有する希土類金属硫酸塩の水和物。
回折角(2θ)
13.0~14.0°
16.5~17.5°
19.5~20.5°
24.5~25.5°
29.0~30.0°
【請求項2】
前記希土類金属が、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、及びイットリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の希土類金属硫酸塩の水和物。
【請求項3】
一般式(1):
(SO・nHO (1)
(式(1)中、Mは、La、Ce、Pr、Nd及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類金属であり、nは0より大きく、9以下の数である)
で表される、請求項1又は2に記載の希土類金属硫酸塩の水和物。
【請求項4】
希土類金属硫酸塩1水和物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類金属硫酸塩の水和物。
【請求項5】
一般式(2):
(SO・1HO (2)
(式(2)中、Mは、La、Ce、Pr、Nd及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類金属である)
によって表される希土類金属硫酸塩の水和物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類金属硫酸塩の水和物を含み、さらに、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、下記に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有する希土類金属硫酸塩を含む化学蓄熱材料。
回折角(2θ)
13.0~14.0°
16.5~17.5°
19.5~20.5°
24.5~25.5°
29.0~30.0°
【請求項7】
モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、下記に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有する希土類金属硫酸塩の水和物の製造方法であって、
(1)希土類金属硫酸塩、又は前記ピークを有しない希土類金属硫酸塩の水和物を200℃以上に加熱する工程、及び
(2)工程(1)で得られた希土類金属硫酸塩を水蒸気の存在下で、降温させる工程
を含む製造方法。
回折角(2θ)
13.0~14.0°
16.5~17.5°
19.5~20.5°
24.5~25.5°
29.0~30.0°
【請求項8】
(1)希土類金属硫酸塩、又は希土類金属硫酸塩の水和物であって、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、請求項7に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有しないものを200℃以上に加熱する工程、及び
(2)工程(1)で得られた希土類金属硫酸塩を水蒸気の存在下で、降温させる工程
を含む、希土類金属硫酸塩1水和物の製造方法。
【請求項9】
前記希土類金属が、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、及びイットリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項7又は8に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類金属硫酸塩の水和物、及びその製造方法、並びに化学蓄熱材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本の工場などでは100~250℃程度の排熱が多量に捨てられている。このような排熱を蓄熱し、有効に利用することでエネルギーの有効化が可能となり、その結果、化石燃料の使用量を低減することができると考えられる。
【0003】
上記の観点より、従来から、蓄熱技術の開発が進められている。例えば、有機系蓄熱材の融解潜熱を用いた潜熱蓄熱技術が開発されているが、蓄熱密度が小さいため高コストとなっている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
これに対し、蓄熱密度の点で利点のある、化学反応を利用した化学蓄熱技術の開発も進められている。例えば、100℃程度以上の温度域で蓄熱及び熱供給が可能な反応系として、以下の表1に示すような固体/気体反応系が検討されている。なお、表1には、安全性及び汎用性の点で利点のある、気体成分として水蒸気を使用する系を列挙している。
【0005】
【表1】
JP2017099197A1_000003t.gif

【0006】
表1の反応系1~3は、平衡温度が比較的低い点では有望ではあるが、逆反応である水和反応がほとんど進行せず、熱供給を行うことができない。そのため、工業的に有効な反応系とはいえない。それに加え、反応系3で使用されるCuOは高価であり、高コストの観点からも問題である。
【0007】
また、反応系4~6は、可逆的に反応が進行する。さらに、反応系4~6は、安価、安全性、及び非腐食性の観点から比較的有望ではある。しかしながら、表1から明らかな通り、反応系4~6は蓄熱操作(脱水反応)温度が250℃よりも高く、また反応系4は、繰り返し使用した場合の耐久性においても問題がある。
【0008】
このように、化学蓄熱に用いられる材料は未だ実用に至っていないことが実情である(反応系4のMgO/HOについては非特許文献2、反応系5のLaOOH/HOについては非特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】四方, 岩井, エネルギー・資源, 29 (2008) 88.
【非特許文献2】劉, J. Soc. Inorg. Mater. Jpn. 20 (2013) 55.
【非特許文献3】H. Ishitobi et al., Chem. Lett., 41 (2012) 583.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、安価であり、安全性が高く、繰り返し反応を行っても再現性が高く(繰り返し耐久性が高く)、さらに比較的低温領域においても蓄熱と放熱とを可逆的に進行させることができる、化学蓄熱材料として有用な化合物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、特定の希土類金属硫酸塩の水和物が、100~250℃程度の低い温度領域で脱水-水和反応が可逆的に進行することを見出し、さらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。すなわち、本発明は、下記項1~項10に示す希土類金属硫酸塩の水和物、及びその製造方法、並びに化学蓄熱材料に係る。
【0013】
項1.モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、下記に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有する希土類金属硫酸塩の水和物。
回折角(2θ)
13.0~14.0°
16.5~17.5°
19.5~20.5°
24.5~25.5°
29.0~30.0°
【0014】
項2.前記希土類金属が、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、及びイットリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の希土類金属硫酸塩の水和物。
【0015】
項3.一般式(1):
(SO・nHO (1)
(式(1)中、Mは、La、Ce、Pr、Nd及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類金属であり、nは0より大きく、9以下の数である)
で表される、項1又は2に記載の希土類金属硫酸塩の水和物。
【0016】
項4.希土類金属硫酸塩1水和物である、項1~3のいずれか一項に記載の希土類金属硫酸塩の水和物。
【0017】
項5.一般式(2):
(SO・1HO (2)
(式(2)中、Mは、La、Ce、Pr、Nd及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類金属である)
によって表される希土類金属硫酸塩の水和物。
【0018】
項6.項1~5のいずれか一項に記載の希土類金属硫酸塩の水和物を含み、さらに、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、下記に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有する希土類金属硫酸塩を含む化学蓄熱材料。
回折角(2θ)
13.0~14.0°
16.5~17.5°
19.5~20.5°
24.5~25.5°
29.0~30.0°
【0019】
項7.モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、下記に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有する希土類金属硫酸塩の水和物の製造方法であって、
(1)希土類金属硫酸塩、又は前記ピークを有しない希土類金属硫酸塩の水和物を200℃以上に加熱する工程、及び
(2)工程(1)で得られた希土類金属硫酸塩を水蒸気の存在下で、降温させる工程
を含む製造方法。
回折角(2θ)
13.0~14.0°
16.5~17.5°
19.5~20.5°
24.5~25.5°
29.0~30.0°
【0020】
項8.(1)希土類金属硫酸塩、又は希土類金属硫酸塩の水和物であって、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折パターンにおいて、項7に示す回折角(2θ)に特徴的なピークを有しないものを200℃以上に加熱する工程、及び
(2)工程(1)で得られた希土類金属硫酸塩を水蒸気の存在下で、降温させる工程
を含む、希土類金属硫酸塩1水和物の製造方法。
【0021】
項9.前記希土類金属が、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、及びイットリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項7又は8に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、脱水-水和反応が、100~250℃程度の低い温度領域において可逆的に進行する。また使用する希土類金属が比較的安価であることから、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は低コストである。さらに、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、可逆反応の再現性が極めて高い、すなわち繰り返し耐久性が高い。よって、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、工業的に実用可能な化学蓄熱材料として極めて有用であり、例えば、工場排熱の一部を蓄熱して有効利用することが可能であり、化石燃料の使用量低減への貢献が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】参考例1で測定した硫酸ランタンの熱重量(TG)測定における測定結果(TG/DTA曲線)である。
【図2】参考例2で調製した硫酸ランタンの各温度で測定したX線回折パターンである。
【図3】実施例1で測定した硫酸ランタン/硫酸ランタン水和物の熱重量(TG)測定における測定結果(TG/DTA曲線)である。
【図4】実施例1で測定した硫酸ランタン/硫酸ランタン水和物の熱重量(TG)測定において、昇温・降温過程を35回繰り返した際の測定結果(TG曲線)である。
【図5】実施例2で測定した硫酸ランタン/硫酸ランタン水和物の各温度で測定したX線回折パターンである。
【図6】実施例3で測定した硫酸ランタン/硫酸ランタン水和物の熱重量(TG)測定における測定結果(TG/DTA曲線)である。
【図7】実施例4で測定した硫酸ランタン/硫酸ランタン水和物の熱重量(TG)測定における測定結果(TG曲線)である。
【図8】図7のTG測定の結果から、水和数x毎に水蒸気分圧-脱水温度関係をプロットしたグラフである。
【図9】実施例5で測定した硫酸セリウム/硫酸セリウム水和物の熱重量(TG)測定における測定結果(TG/DTA曲線)である。
【図10】比較例1で測定したMgO/HO系の熱重量(TG)測定における測定結果(TG/DTA曲線)である。
【図11】実施例6で使用する装置を説明する模式図である。
【図12】加湿空気(水蒸気)を供給してからの試料温度の経時変化を示すグラフである。
【図13】実施例7で使用する装置を説明する模式図である。
【図14】水(液状の形態)を供給してからの試料温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の希土類金属硫酸塩の水和物を構成する希土類金属としては、ランタン、セリウム、プラセオジウム、ネオジム、及びイットリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。

【0025】
希土類金属硫酸塩の水和物は、一般式(1):
(SO・nHO (1)
(式(1)中、Mは、La、Ce、Pr、Nd及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類金属であり、nは0より大きく、9以下の数である)
で表される。

【0026】
より好ましくは、一般式(2):
(SO・1HO (2)
(式(2)中、Mは、La、Ce、Pr、Nd及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類金属である)
によって表される希土類金属硫酸塩の1水和物である。

【0027】
本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定されたX線回折(XRD)パターンによって同定される。前記X線回折パターンにより、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、図5で示されるピークを有し、下記に示す回折角(2θ)において特徴的なピークを有する(以下、下記のピークを有する希土類金属硫酸塩の水和物を「β相希土類金属硫酸塩の水和物」とも表記する)。これらのピークは、図2に示すような公知の希土類金属硫酸塩(以下、「α相希土類金属硫酸塩」とも表記する)の前記X線回折パターンで示されるピークと異なる特徴的なピークである。
回折角(2θ)
13.0~14.0°
16.5~17.5°
19.5~20.5°
24.5~25.5°
29.0~30.0°

【0028】
より具体的には、下記に示す回折角(2θ)において特徴的なピークを有する。
13.6°
17.0°
20.0°
25.0°
29.3°

【0029】
また、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、上記のピーク以外にも、図5に示すように、下記に示す回折角(2θ)においてピークを有する。
回折角(2θ)
25.7°,26.1°,29.9°,30.7°,31.2°,31.8°

【0030】
なお、前記の回折角(2θ)は、測定機器又は測定条件、希土類金属の種類等により、-0.5~+0.5°の誤差が生じる可能性があるが、本発明においては、当該誤差は、許容範囲として含まれる。

【0031】
本発明の希土類金属硫酸塩の水和物の製造方法としては、原料となる希土類金属硫酸塩、又は前記ピークを有しない希土類金属硫酸塩の水和物を加熱する工程(1)、及び水蒸気の存在下での冷却工程(2)を含む方法が挙げられる。原料となる希土類金属硫酸塩、又は前記ピークを有しない希土類金属硫酸塩の水和物としては、特に限定されるものではなく、上記のα相の希土類金属硫酸塩若しくはその水和物、希土類金属硫酸塩のアモルファス等、又は市販の希土類金属硫酸塩若しくはその水和物等を用いることができる。具体的には、一般式(1’):
(SO・mHO (1’)
(式(1’)中、Mは、前記と同じであり、mは0~9の数である)
で表される希土類金属硫酸塩、又はその水和物が挙げられる。

【0032】
例えば、希土類金属がランタンである場合には、市販されており、入手が容易である硫酸ランタン9水和物(La(SO・9HO)を用いることができる。

【0033】
その他に、Y(SO・8HO、Ce(SO・9HO、Ce(SO・8HO、Ce(SO・5HO、Ce(SO・4HO、Pr(SO・8HO、Nd(SO・8HO、Nd(SO・5HO、Nd(SO・4HO等が挙げられる。

【0034】
工程(1)における加熱温度としては、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。加熱温度を200℃以上に設定することにより、希土類金属硫酸塩を効率よくβ相に転移させることができる。

【0035】
また、工程(1)における加熱温度は、金属塩が分解されない温度である観点、無駄なエネルギーの消費を抑えるという観点、及びα相の副生を抑制するという観点から、1000℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましく、600℃以下がさらに好ましい。

【0036】
また、工程(1)における加熱させる際の昇温速度としては、特に制限されるものではない。例えば、0.1~50℃/min程度の範囲で昇温させることができる。

【0037】
工程(1)において、水蒸気の存在下においても脱水反応が進行するため、特に、反応系内を脱水処理等する必要はない。

【0038】
希土類金属硫酸塩(無水物)は、工程(1)の加熱を行った後、水蒸気が実質的に含まれない条件下で冷却することにより得ることができる。

【0039】
また、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物を得る場合には、工程(1)の加熱工程の後、希土類金属硫酸塩と水蒸気とを水和反応させる工程(2)を行う。

【0040】
希土類金属硫酸塩と水蒸気とを水和反応させる際の反応としては、工程(1)の加熱工程後、得られた希土類金属硫酸塩を水蒸気の存在下で、好ましくは20~300℃程度、より好ましくは20~200℃程度、さらに好ましくは20~100℃程度にまで降温させることが、水和反応が速やかに行われる点、水和数を増大させる点から好ましい。また降温速度としては、特に制限されるものではないが、例えば、0.1~50℃/min程度の範囲で降温させることができる。

【0041】
水蒸気の分圧は、特に制限されるものではなく、大気中に含まれる水蒸気圧程度で反応が進行する。具体的には、通常0.001~1atm程度、好ましくは0.005~1atm程度である。

【0042】
水和反応、及び脱水反応を行う際の系内の全体の圧力としては、常圧が挙げられる。圧力は、適宜調整することが可能である。

【0043】
前記の方法により得られた希土類金属硫酸塩水和物を、さらに脱水することにより、希土類金属硫酸塩の無水物を得ることができる。脱水反応は、希土類金属硫酸塩水和物を加熱することにより行われる。加熱温度は、好ましくは80~300℃程度、より好ましくは150~300℃程度、さらに好ましくは200~300℃程度にまで昇温させることが、脱水反応が速やかに進行し、効率よく希土類金属硫酸無水物を得ることができるという点で好ましい。また昇温速度としては、特に制限されるものではないが、例えば、0.1~50℃/min程度の範囲で昇温させることができる。

【0044】
本発明の希土類金属硫酸塩の水和物、及び希土類金属硫酸塩は、水蒸気の存在下で、工業的な用途で求められている温度領域(例えば、100~250℃程度)において、水和反応と脱水反応とを可逆的に進行させることができる。

【0045】
そのため、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、化学蓄熱材料として有用に用いることができる。

【0046】
また、一般式(A):
(SO (A)
(式(A)中、Mは、La、Ce、Pr、Nd及びYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の希土類金属である)
で表され、上記のβ相を有する希土類金属硫酸塩(無水物)についても、化学蓄熱材料として有用に用いることができる。

【0047】
β相を有する希土類金属硫酸塩(無水物)を化学蓄熱材料として使用する場合には、水蒸気だけでなく液状の水と反応させることによっても放熱させることが可能である(実施例6及び7参照)。
【実施例】
【0048】
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0049】
[参考例1](α相硫酸ランタンの熱重量(TG)測定)
硫酸ランタン9水和物(和光純薬工業株式会社製)を、ボールミルを用いて平均粒子径が2μm以下となるように粉砕した。平均粒子径2μm以下に粉砕した硫酸ランタン9水和物を、熱重量(TG)測定装置(株式会社リガク製のTG8120)を用いて、昇温速度20℃/minで、600℃まで加熱し、その後、降温速度2℃/minで50℃まで降温させた(ファーストスキャン)。なお、本明細書において、平均粒子径は、公知の測定方法(例えば、走査型電子顕微鏡写真による計測)によって測定された値である。
【実施例】
【0050】
次いで、昇温速度2℃/minで300℃まで昇温させ、降温速度2℃/minで30℃まで降温させた(セカンドスキャン)。
【実施例】
【0051】
なお、TG装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したアルゴン(Ar)ガスを装置内に流通させることで制御した(Ar(PH2O=0.0086atm)、流量:200sccm)。
【実施例】
【0052】
TG測定の結果を図1に示す。図1中の実線はTG曲線を示し、破線はDTA曲線を示す。またグラフの横軸は温度を示し、縦軸の左はTG曲線における重量変化から導き出される水和数、縦軸の右はDTA曲線における発熱又は吸熱量を示す。
【実施例】
【0053】
図1より、参考例1で得られた平均粒子径2μm以下の硫酸ランタン9水和物は、80℃付近から脱水が始まり、300℃付近でほぼ無水物になることがわかった。また、加湿Arガス雰囲気下であっても、一度脱水した硫酸ランタン(参考例2よりα相である)は、温度を降温させても水和しないことが図1より明らかとなった。
【実施例】
【0054】
[参考例2](α相硫酸ランタンの高温X線回折(XRD)測定)
参考例1と同様に、硫酸ランタン9水和物(和光純薬工業株式会社製)を、ボールミルを用いて平均粒子径が2μm以下となるように粉砕した。平均粒子径2μm以下に粉砕した硫酸ランタン9水和物を、昇温速度20℃/minで、500℃まで加熱し、その後、降温速度20℃/minで30℃まで降温させた。なお、装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したArガスを装置内に流通させることで制御した(Ar(PH2O=0.028atm)、流量:200sccm)。
【実施例】
【0055】
昇温過程及び降温過程において表2に示す各温度での硫酸ランタン硫酸塩、及びその水和物のX線回折パターンを高温X線回折(XRD)装置(PANalytical製のX’pertPRO)を用いて測定した。なお、高温XRDは、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定した。
【実施例】
【0056】
表2に各温度におけるX線回折パターンで得られた特徴的なピークについての回折角を示し、図2にX線回折パターンを示す。図2中、横軸は回折角(2θ)、縦軸の左は回折強度、縦軸の右は各測定グラフの測定温度を示す。表2及び図2より、昇温過程380℃付近から、公知の結晶構造の硫酸ランタン(本明細書において「α相硫酸ランタン」と呼ぶ)が生成し、降温過程でもα相の結晶構造が保たれることがわかった。
【実施例】
【0057】
【表2】
JP2017099197A1_000004t.gif
【実施例】
【0058】
[実施例1](β相硫酸ランタン及びβ相硫酸ランタン水和物の熱重量(TG)測定)
硫酸ランタン9水和物(和光純薬工業株式会社製)を粉砕せずにそのまま使用した。硫酸ランタン9水和物を、熱重量(TG)測定装置(前出)を用いて、昇温速度20℃/minで、600℃まで加熱し、その後、降温速度2℃/minで50℃まで降温させた(ファーストスキャン)。
【実施例】
【0059】
次いで、昇温速度0.2℃/minで300℃まで昇温させ、降温速度0.2℃/minで30℃まで降温させた(セカンドスキャン)。
【実施例】
【0060】
なお、TG装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したアルゴン(Ar)ガスを装置内に流通させることで制御した(Ar(PH2O=0.023atm)、流量:200sccm)。
【実施例】
【0061】
TG測定の結果を図3に示す。図3中の実線はファーストスキャンにおけるTG曲線を示し、幅の狭い破線は、セカンドスキャンにおけるTG曲線を示し、幅の広い破線はDTA曲線を示す。またグラフの横軸は温度、縦軸の左はTG曲線における重量変化から導き出される水和数、縦軸の右はDTA曲線における発熱-吸熱量を示す。
【実施例】
【0062】
図3のファーストスキャンの昇温過程のTG測定の結果より、実施例1の硫酸ランタン9水和物は、80~250℃で脱水が生じ、300℃付近でほぼ無水物となった。その後、ファーストスキャンの降温過程においても、昇温過程の同じ温度領域において重量が増加しており、図3より硫酸ランタン1水和物が形成していることが明らかとなった。これらの無水物及び1水和物はX線回折測定によりβ相であることが確認された(実施例2)。
【実施例】
【0063】
また、図3のセカンドスキャンの昇温-降温過程により、β相の硫酸ランタン1水和物は、脱水-水和反応を行い、その挙動は、ファーストスキャンの降温過程とほぼ同じであることが確認できた。また、脱水反応と水和反応の温度ヒステリシスは10℃以内であった。
【実施例】
【0064】
このことから、下記一般式:
【実施例】
【0065】
【化1】
JP2017099197A1_000005t.gif
【実施例】
【0066】
の反応式は、求められる温度域(100~250℃付近)で脱水-水和反応が可逆的に進行することが明らかとなった。
【実施例】
【0067】
図3のセカンドスキャンのTG曲線によると、脱水開始温度<水和開始温度となっている。仮に脱水・水和反応が無水物と1水和物の2相間の反応であれば水和開始温度≦平衡温度≦脱水開始温度となるはずである。したがってLa(SO・xHO単相の状態で水和数xが連続的に変化しながら反応が進行することが示唆される。
【実施例】
【0068】
そのため、La(SO/HO系は化学蓄熱材として有望である。
【実施例】
【0069】
図4はβ相の硫酸ランタン1水和物を50~300℃の範囲で昇降温速度20℃/minの昇温-降温過程を35回繰り返した場合のTG曲線である。図4(a)の横軸は時間、縦軸は水和数であり、図4(b)の横軸は温度、縦軸は水和数である。図4からわかるように、脱水-水和反応の挙動は、昇温-降温過程を35回繰り返しても、図3のセカンドスキャンにおける昇温-降温過程と同じ挙動をしていることを確認した。
【実施例】
【0070】
[実施例2](β相硫酸ランタン及びβ相硫酸ランタン水和物の高温X線回折(XRD)測定)
実施例1と同様に、硫酸ランタン9水和物(和光純薬工業株式会社製)を用い、昇温速度20℃/minで、500℃まで加熱した。その後、降温速度20℃/minで30℃まで降温させた。なお、装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したArガスを装置内に流通させることで制御した(Ar(PH2O=0.028atm)、流量:200sccm)。
【実施例】
【0071】
昇温過程及び降温過程において表3に示す各温度での硫酸ランタン硫酸塩、及びその水和物のX線回折パターンを、高温X線回折(XRD)装置(前出)を用いて測定した。なお、高温XRDは、モノクロメーターを通したλ=1.5418Åの銅放射線を用いて測定した。
【実施例】
【0072】
表3に各温度におけるX線回折パターンで得られたピークの回折角を示し、図5にX線回折パターンを示す。図5中、横軸は回折角(2θ)、縦軸の左は回折強度、縦軸の右は各測定グラフの測定温度を示す。
【実施例】
【0073】
【表3】
JP2017099197A1_000006t.gif
【実施例】
【0074】
表3の結果より、昇温過程300℃付近から、13.7°、17.1°、19.9°、25.1°、及び29.4°に特徴的なピークが観察された。これらのピークは、その後の昇温過程、及び降温過程においても共通して観察することができた。この結果から、結晶構造を保ったまま水和が進行することを示唆している。また、このような特徴的なピークは、原料である硫酸ランタン9水和物、並びに参考例2(表2)のα相の硫酸ランタン、及びその水和物では確認できない。
【実施例】
【0075】
上記の結果から、実施例2で得られた硫酸ランタン及び硫酸ランタン水和物がα相とは異なるβ相の結晶構造が得られていることが確認できた。
【実施例】
【0076】
[実施例3](平均粒子径の異なるβ相硫酸ランタン水和物の脱水-水和挙動)
硫酸ランタン9水和物(和光純薬工業株式会社製)を脱イオン水に溶解させ、飽和水溶液を調製した。得られた飽和水溶液を40℃に保持し、溶液から結晶を析出させた。得られた結晶は、平均粒子径約8mm程度の結晶であった。
【実施例】
【0077】
得られた硫酸ランタン9水和物結晶を、熱重量(TG)測定装置(前出)を用いて、昇温速度20℃/minで、600℃まで加熱し、その後、降温速度20℃/minで50℃まで降温させた(ファーストスキャン)。
【実施例】
【0078】
次いで、昇温速度1℃/minで300℃まで昇温させ、降温速度1℃/minで50℃まで降温させた(セカンドスキャン)。
【実施例】
【0079】
なお、TG装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したアルゴン(Ar)ガスを装置内に流通させることで制御した。
【実施例】
【0080】
また、硫酸ランタン9水和物(和光純薬工業株式会社製)を上記の溶解及び結晶析出を経ずに粉末(平均粒子径20μm程度)のまま上記と同様の昇温-降温過程を行った。
【実施例】
【0081】
TG測定の結果を図6に示す。図6中のグラフはセカンドスキャンにおけるTG曲線を示し、実線は、市販の粉末のままの硫酸ランタン9水和物を使用し得られた硫酸ランタン1水和物のTG曲線を示し、破線は、硫酸ランタン9水和物の結晶を使用して得られた硫酸ランタン1水和物のTG曲線を示す。またグラフの横軸は温度を示し、縦軸は重量変化から導き出される水和数を示す。
【実施例】
【0082】
図6の結果より、試料の平均粒子径が異なる、即ち、表面積に差があるにも関わらず、脱水-水和反応速度に大きな差が見られなかった。これは、硫酸ランタンに水和する水分子の表面反応速度及び拡散速度が速く、律速過程となっていないことに起因するものと考えられる。
【実施例】
【0083】
[実施例4](β相硫酸ランタン水和物のPH2O依存性)
硫酸ランタン1水和物を、熱重量(TG)測定装置(前出)を用いて、昇温速度0.2℃/minで、300℃まで加熱し、その後、降温速度0.2℃/minで30℃まで降温させた。
【実施例】
【0084】
なお、TG装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したアルゴン(Ar)ガスを装置内に流通させることで制御した(流量:200sccm)。水蒸気の分圧(PH2O)については、0.0024atm、0.0086atm、0.0168atm、及び0.0231atmで測定した。
【実施例】
【0085】
TG測定の結果を図7に示す。グラフの横軸は温度、縦軸はTG曲線における重量変化から導き出される水和数を示す。
【実施例】
【0086】
図7のTG測定の昇温時の結果から、水和数x毎に水蒸気分圧-脱水温度の関係をプロットした。図8にプロットしたグラフを示す。図8で示した直線の傾きの値から、以下に示すファンホッフの式に代入し、水和数x毎の脱水反応の微分標準エンタルピー変化ΔH°(x)(単位脱水量あたり)を求めた。
【実施例】
【0087】
【数1】
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【実施例】
【0088】
さらに、以下のようにΔH°(x)を無水物から1水和物の間の組成で積算し、硫酸ランタンの1水和物から無水物への脱水反能の標準エンタルピー変化(ΔH°total)を算出した。
【実施例】
【0089】
【数2】
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【実施例】
【0090】
上記式から、ΔH°total=77kJ/molと求められた。
【実施例】
【0091】
1水和物の緻密体を仮定して体積で規格化すると0.46GJ/mとなる。これは、MgO/HO系の実質的な体積蓄熱密度と同程度の体積蓄熱密度を与えるものとなる(J. Ryu et al., Chem. Lett., 37 (2008) 1140.)。
【実施例】
【0092】
[実施例5](β相硫酸セリウム及びβ相硫酸セリウム水和物の熱重量(TG)測定)
CeO(和光純薬工業株式会社、純度:99.9%)0.5g及びHSO(ナカライテスク株式会社、純度:97%)36gを混合し、ホットスターラーを200℃に設定して加熱しながら約5日間撹拌した。液量25mlでオレンジ色の沈殿物及び上澄み液ができたため、脱イオン水を加えて希釈したところ、全量150mlで沈殿は全て溶解した。再度ホットスターラーを100℃に設定して加熱し、水分を蒸発させると約50mlの液量となり、針状の透明な結晶が生成した。上澄み液を除去し、結晶をプロパノールで洗浄して50℃で乾燥させた。得られた結晶は、β相とは別の結晶構造を持つ硫酸セリウム5水和物Ce(SO・5HO(少量の4水和物を含む)であった。
【実施例】
【0093】
硫酸セリウム5水和物を、熱重量(TG)測定装置(前出)を用いて、昇温速度20℃/minで、600℃まで加熱し、その後、降温速度2℃/minで50℃まで降温させた(ファーストスキャン)。
【実施例】
【0094】
次いで、昇温速度2℃/minで600℃まで昇温させ、降温速度2℃/minで50℃まで降温させた(セカンドスキャン)。
【実施例】
【0095】
なお、TG装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したアルゴン(Ar)ガスを装置内に流通させることで制御した(Ar(PH2O=0.020atm)、流量:200sccm)。
【実施例】
【0096】
TG測定の結果を図9に示す。図9中の実線はファーストスキャン、セカンドスキャンにおけるTG曲線を示す。またグラフの横軸は温度、縦軸の左はTG曲線における重量変化から導き出される水和数を示す。
【実施例】
【0097】
図9のファーストスキャンの昇温過程のTG測定の結果より、硫酸セリウム5水和物は、30~250℃で脱水が生じ、600℃に到達したのち、降温過程の300℃付近でほぼ無水物となった。その後、300~50℃において重量が増加しており、硫酸セリウム1水和物が形成していることが明らかとなった。
【実施例】
【0098】
また、図9のセカンドスキャンの昇温-降温過程により、硫酸セリウム1水和物は、50~300℃付近で脱水-水和反応を行い、その挙動は、ファーストスキャンの降温過程とほぼ同じであることが確認できた。
【実施例】
【0099】
TG測定後の硫酸セリウム1水和物はβ相であることが、室温(25℃)におけるX線回折測定により確認された。
【実施例】
【0100】
[比較例1](水酸化マグネシウムの熱重量(TG)測定)
水酸化マグネシウムを、熱重量(TG)測定装置(前出)を用いて、昇温速度20℃/minで、420℃まで加熱し、その後、降温速度20℃/minで50℃まで降温させた。
【実施例】
【0101】
なお、TG装置内は、温度一定の水中にArガスをバブリングさせ、加湿したアルゴン(Ar)ガスを装置内に流通させることで制御した(Ar(PH2O=0.020atm)、流量:200sccm)。
【実施例】
【0102】
TG測定の結果を図10に示す。図10中の実線はTG曲線を示し、破線はDTA曲線を示す。またグラフの横軸は温度、縦軸の左はTG曲線における重量変化、縦軸の右はDTA曲線における発熱-吸熱量を示す。
【実施例】
【0103】
図10の昇温過程のTG測定の結果より、比較例1の水酸化マグネシウムは、330℃付近から脱水が始まることが確認できた。このことから、脱水反応の開始温度が極めて高いことが分かる。また、降温過程の結果から、120℃付近で水和反応が開始している挙動がみられるが、当該水和反応は完全には進行せず、水和率が極端に低いことが確認できた。
【実施例】
【0104】
[実施例6](β相硫酸ランタン無水物+水蒸気→β相硫酸ランタン水和物)
図11に示すように、β相硫酸ランタン(無水物)粉末約25gをステンレス製メッシュかご(目開き150μm,外径34mm,長さ70mm)に入れ、それを円筒状のステンレス製反応器(内径35mm,長さ130mm)に入れた。反応器を60℃の定温炉に入れ、同温度の加湿空気(水蒸気分圧PH2O=0.16atm)を1.5L/minで反応器内に供給した。加湿空気の供給してからの試料温度の経時変化を、試料部分に設置した熱電対で測定した。その結果を図12に示す。図12より、加湿空気を供給してからおよそ2分で、試料温度が90℃近くまで上昇し、β相硫酸ランタンと水蒸気との反応により発熱することが確認された。
【実施例】
【0105】
[実施例7](β相硫酸ランタン無水物+水(液状の形態)→硫酸ランタン9水和物)
図13に示すようにβ相硫酸ランタン(無水物)粉末約9gを円筒状のガラス製容器に入れ、室温の水を一定速度で滴下した。水の供給開始からの試料温度の経時変化を、試料部分に設置した熱電対で測定した。その結果を図14に示す。図14より、水(液体)を供給してからおよそ2分で、試料温度が70℃近くまで上昇し、β相硫酸ランタンと水の反応により発熱することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の希土類金属硫酸塩の水和物、及び希土類金属硫酸塩は、水蒸気の存在下で、工業的な用途で求められている温度領域(例えば、100~250℃程度)において、水和反応と脱水反応とを可逆的に進行させることができる。
【0107】
そのため、本発明の希土類金属硫酸塩の水和物は、化学蓄熱材料として有用に用いることができる。このような化学蓄熱材料は、定置型の蓄熱装置(例えばケミカルヒートポンプ)及び蓄熱搬送システムへの応用が期待できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13