TOP > 国内特許検索 > 金属オキシハライドを原料とした金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法、並びに、それを利用した半導体部材の製造方法 > 明細書

明細書 :金属オキシハライドを原料とした金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法、並びに、それを利用した半導体部材の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年6月28日(2018.6.28)
発明の名称または考案の名称 金属オキシハライドを原料とした金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法、並びに、それを利用した半導体部材の製造方法
国際特許分類 C01G  29/00        (2006.01)
C01B  19/00        (2006.01)
FI C01G 29/00
C01B 19/00 M
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 20
出願番号 特願2017-538507 (P2017-538507)
国際出願番号 PCT/JP2016/076477
国際公開番号 WO2017/043586
国際出願日 平成28年9月8日(2016.9.8)
国際公開日 平成29年3月16日(2017.3.16)
優先権出願番号 2015177080
優先日 平成27年9月8日(2015.9.8)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】阿部 竜
【氏名】東 正信
【氏名】国奥 広伸
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G048
Fターム 4G048AA02
4G048AA06
4G048AA07
4G048AB02
4G048AB05
4G048AC06
4G048AC08
4G048AD03
4G048AD06
4G048AE06
4G048AE07
4G048AE08
要約 2種類以上のハロゲンを含む場合(例えば、BiSAA’及び/又はBiSeAA’;ここでA,A’はハロゲン元素を示す)でもハロゲン組成を容易に制御でき、しかも簡便且つ穏和な合成条件で合成可能な金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法として、金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることを特徴とする、金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることを特徴とする、金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法。
【請求項2】
100~600℃の温度条件で前記金属オキシハライドを前記硫化水素及び/又は前記セレン化水素と接触させる、請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記金属オキシハライドは、層状構造を有する、請求項1又は2に記載の合成方法。
【請求項4】
前記金属オキシハライドに含まれる金属は、Bi,Sb及びInからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~3のいずれかに記載の合成方法。
【請求項5】
前記金属オキシハライドに含まれるハロゲン元素は、Cl,Br及びIからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~4のいずれかに記載の合成方法。
【請求項6】
基材上に金属オキシハライドを含有する被膜を形成後、前記被膜を硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることにより金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することを特徴とする、半導体部材の製造方法。
【請求項7】
前記被膜の形成方法は、前記金属オキシハライドを含有するスラリーを前記基材上に塗布する工程を有する、請求項6に記載の半導体部材の製造方法。
【請求項8】
前記被膜の形成方法は、前記金属オキシハライドを電気泳動により前記基材上に被覆する工程を有する、請求項6に記載の半導体部材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属オキシハライドを原料とした金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法、並びに、それを利用した半導体部材の製造方法に関する。
【0002】
上記金属サルファハライド及び金属セレンハライドは、例えば、太陽光エネルギーを利用して水を光分解することにより水素を得る光触媒、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電極(光電変換材料、太陽電池)等の用途に有用である。
【背景技術】
【0003】
再生可能エネルギーである太陽光エネルギーと資源豊富な水とを利用して安価で且つ高性能な光エネルギー変換システムを構築することは、省エネルギー、環境保全等の観点から特に重要な課題となっている。例えば、太陽光エネルギーを用いて水を分解して水素を得る技術は、水素燃料電池の早期実用化のために是非必要な技術であり、これに適した半導体光触媒の開発が世界中で活発に進められている。
【0004】
また、太陽エネルギーを直接電気エネルギーに変換する太陽電池の開発では、従来のシリコン系太陽電池に加えて近年では色素増感型太陽電池、各種化合物系太陽電池等の開発が活発に進められている。最近ではペロブスカイト系太陽電池の研究開発が過熱化している。特に鉛系ペロブスカイト系太陽電池は、約800nmまでの太陽光を吸収し、太陽光エネルギー変換効率が10%を超えることが報告されており、しかも簡単な手法で得られるため次世代の太陽電池として期待されている。しかしながら、鉛を含むことや水分に簡単に溶解するなどの点で実用化への課題は未だ大きい。
【0005】
太陽電池及び光触媒では、各種の半導体材料を用いて光エネルギーを電気エネルギー又は化学エネルギーに変換しているが、その高効率化及び応用範囲拡大のためには、半導体のバンド構造を自在に制御し、利用可能な光の波長をできるだけ長波長化するとともに、内在する化学反応とのポテンシャルのマッチングを図ることが必須である。そして、特に高価な装置などを用いずに穏和な条件でこれを実現することが望まれている。
【0006】
上記に関連し、例えば、金属カチオンと酸素アニオンとハロゲンアニオンとからなる金属オキシハライド(MM’1-xA’1-z:ここで、M,M’は金属カチオンを示し、A,A’はハロゲンアニオンを示す。0≦x≦1、0<y≦1、0≦z≦1を示す。)ではそのハロゲン組成を連続的に変化させることにより、バンド構造及びポテンシャルを比較的自由に制御することが可能であり、これらは光触媒及び太陽電池への応用が注目されている材料群である。
【0007】
例えば、金属オキシハライドの一種であるビスマスオキシハライド(BiOAA’:ここで、A,A’はCl,Br又はIを示す。)は、室温でのソフトケミカル手法によって、2種類のハロゲンアニオンの比率を任意に変化させ、その光吸収領域及びバンドレベルを比較的自由に変化させられることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、ビスマスオキシハライドが吸収可能な波長領域は、長波長まで吸収するBiOIにおいて最大600nm程度までと限定的であり、太陽電池などへの応用は困難である。
【0008】
これに対して、上記式中の酸素アニオンを硫黄アニオンに置き換えた金属サルファハライド(BiSAA’)又は酸素アニオンをセレンアニオンに置き換えた金属セレンハライド(BiSeAA’)では、これらのアニオンの導入によって、その吸収波長が大幅に長波長化するため、太陽電池などへの応用が期待されている。
【0009】
しかしながら、金属サルファハライド系化合物及び金属セレンハライド系化合物の合成報告は少なく、例えば、ビスマスサルファハライド(BiSA)については、前駆体溶液を加熱した基板上に吹き付けて合成するスプレーパイロリシス法(非特許文献2,3)、混合した材料をガラス管に真空封入して加熱する気相成長法(非特許文献4)、水溶媒中又は有機溶媒中でのソルボサーマル法(非特許文献5,6)等に限られている。
【0010】
詳細には、非特許文献2には、0.02M相当の硝酸ビスマスと0.04M相当のヨウ化アンモニウムとチオ尿素とをエチレングリコール中に溶解した前駆体溶液を225~300℃に加熱した基板上に吹き付けてBiSIを得ることが記載されている。非特許文献3には、0.05M塩化ビスマス水溶液と0.04Mヨウ素とのエタノール溶液、及び0.1Mチオ尿素水溶液をそれぞれ別々に用意し、各ノズルから320℃に加熱した基板に塗布してBiSIを得ることが記載されている。非特許文献4には、ビスマス、硫黄及びヨウ素を量論比で混合し、ガラス管に真空封入後、540℃で2日間保持してBiSIを得ることが記載されている。非特許文献5には、純水に塩化ビスマスとチオ尿素とヨウ素とをモル比1:1:1で溶解し、160℃のオートクレーブ中、加圧条件下で30時間水熱合成することでBiSIを得ることが記載されている。また、非特許文献6には、エタノール溶媒中に塩化ビスマスとチオ尿素とヨウ化ナトリウムとをモル比1:1:2で溶解するか、又はヨウ化ビスマスと硫化ビスマスとをモル比1:1で溶解させ、180℃のオートクレーブ中、加圧条件下で一晩ソルボサーマル合成することでBiSIを得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【0011】

【非特許文献1】J. Phys. Chem. Solid 1985, 46, 325
【非特許文献2】J. Phys. Chem. C2012, 116, 24878
【非特許文献3】Mater. Res. Bull, 2005, 40, 1781
【非特許文献4】J. Mater. Sci. 1986, 21, 2835
【非特許文献5】Russ. J. Inorg. Chem. 2006, 51, 1864
【非特許文献6】Inorg. Chem. 2002, 41, 4560
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、スプレーパイロリシス法は最低でも250℃程度の温度が必要であり、導電性プラスチックフィルムなどの有機基材を用いる太陽電池への応用は困難であり、応用展開の妨げとなっている。気相成長法は大きな単結晶の生成は可能であるが、500℃以上の高温が必要であり、上記同様の問題がある。また、ソルボサーマル法は低温合成が可能であるが、オートクレーブ中での長時間反応が必要であり、導電性基板上での直接合成は困難である。更に、いずれの合成方法でも合成物はハロゲンを1種類含むもののみであり、2種類以上のハロゲン(A,A’)を含む金属サルファハライド(例えば、BiSAA’)又は金属セレンハライド(例えば、BiSeAA’)の合成は報告されていない。つまり、従来の合成方法では金属サルファハライド系化合物及び金属セレンハライド系化合物のバンド構造の自在制御が困難であり、半導体材料としての光触媒又は太陽電池への応用展開の妨げとなっている。
【0013】
よって、本発明は、従来技術の問題を改善すべく、金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法であって、2種類以上のハロゲンを含む場合(例えば、BiSAA’及び/又はBiSeAA’;ここでA,A’はハロゲン元素を示す)でもハロゲン組成を容易に制御でき、しかも簡便且つ穏和な合成条件で合成可能な金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ハロゲン組成を任意に調整した金属オキシハライドを、硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることにより、ハロゲン組成を保持して金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを簡便且つ穏和な合成条件で合成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記の金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法、並びに、それを利用した半導体部材の製造方法に関する。
1.金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることを特徴とする、金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法。
2.100~600℃の温度条件で前記金属オキシハライドを前記硫化水素及び/又は前記セレン化水素と接触させる、上記項1に記載の合成方法。
3.前記金属オキシハライドは、層状構造を有する、上記項1又は2に記載の合成方法。4.前記金属オキシハライドに含まれる金属は、Bi,Sb及びInからなる群から選択される少なくとも一種である、上記項1~3のいずれかに記載の合成方法。
5.前記金属オキシハライドに含まれるハロゲン元素は、Cl,Br及びIからなる群から選択される少なくとも一種である、上記項1~4のいずれかに記載の合成方法。
6.基材上に金属オキシハライドを含有する被膜を形成後、前記被膜を硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることにより金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することを特徴とする、半導体部材の製造方法。
7.前記被膜の形成方法は、前記金属オキシハライドを含有するスラリーを前記基材上に塗布する工程を有する、上記項6に記載の半導体部材の製造方法。
8.前記被膜の形成方法は、前記金属オキシハライドを電気泳動により前記基材上に被覆する工程を有する、上記項6に記載の半導体部材の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法は、原料の金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることにより、簡便且つ穏和な合成条件で金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することができる。原料の金属オキシハライドは、2種類以上のハロゲンを含む場合でも公知のソフトケミカル手法によって種々のハロゲン組成のものが合成可能であり、本発明の合成方法では、当該ハロゲン組成を保持したまま金属オキシハライドを金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することができる。また、好適な実施態様では150℃程度の低温条件で目的物を合成することができるため、導電性プラスチックフィルムなどの有機基材上で直接合成することも可能である。本発明で得られた金属サルファハライド及び金属セレンハライドは、光触媒、光電極(光電変換材料、太陽電池)等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】比較例1で合成したBiOBr1-x及び実施例1で合成したBiSBr1-x(但しX=0,0.4及び1.0)の各試料のX線回折パターンを示す図である。
【図2】比較例1で合成したBiOBr1-x及び実施例2で合成したBiSeBr1-x(但しX=0及び1.0)の各試料のX線回折パターンを示す図である。
【図3】比較例1で合成したBiOBr1-x及び実施例1で合成したBiSBr1-x(但しX=0,0.2,0.4,0.6,0.8及び1.0)の各試料の吸収波長を示す図である。
【図4】比較例1で合成したBiOBr1-x及び実施例1で合成したBiSBr1-x(但しX=0,0.2,0.4,0.6,0.8及び1.0)の各試料を用いて光電極を作製して光電流密度を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドの合成方法(以下、「本発明の合成方法」ともいう)は、金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることを特徴とする。

【0019】
上記特徴を有する本発明の合成方法は、原料の金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることにより、簡便且つ穏和な合成条件で金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することができる。原料の金属オキシハライドは、2種類以上のハロゲンを含む場合でも公知のソフトケミカル手法によって種々のハロゲン組成のものが合成可能であり、本発明の合成方法では、当該ハロゲン組成を保持したまま金属オキシハライドを金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することができる。また、好適な実施態様では150℃程度の低温条件で目的物を合成することができるため、導電性プラスチックフィルムなどの有機基材上で直接合成することも可能である。本発明で得られた金属サルファハライド及び金属セレンハライドは、光触媒、光電極(光電変換材料、太陽電池)等の用途に有用である。

【0020】
原料の金属オキシハライドは、目的物である金属サルファハライド及び金属セレンハライドの種類(金属の種類、ハロゲンの種類及びこれらの組成)に応じて種々の金属オキシハライドを使用することができる。

【0021】
金属オキシハライドは、例えば、金属カチオンの種類が1種又は2種、並びに、ハロゲンアニオンの種類が1種又は2種である場合を例示すると一般式(1):
M’1-xA’1-Z (1)
〔但し、式(1)中、M,M’は金属カチオンを示し、A,A’はハロゲンアニオンを示す。0≦x≦1、0<y≦1、0≦z≦1を示す。〕
の通りに示すことができる。なお、金属カチオンの種類及びハロゲンアニオンの種類について、ここでは1種又は2種の場合について例示的に説明するが、本発明で使用可能な金属オキシハライド、並びに、それを原料として得られる金属サルファハライド及び金属セレンハライドの金属カチオン及びハロゲンアニオンの種類は、1種又は2種に限定されず3種以上であってもよい。金属オキシハライドは、室温下でのソフトケミカル反応など公知の合成方法により合成されたもの又は市販品を使用することができる。

【0022】
金属カチオン(M,M’)の種類は限定的ではないが、例えば、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Te,La,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg,Tl,Pb,Bi,Ce等が挙げられる。これらの金属カチオンの中でも、特に良好な半導体性質の観点からはBi,Sb及びInからなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。

【0023】
ハロゲンアニオン(A,A’)の種類は限定的ではないが、例えば、Cl,Br及びIからなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。これらのハロゲンアニオンの中でも、特に吸収波長の長波長化の観点からはBr及びIが好ましい。

【0024】
本発明では、金属オキシハライドとしては、基材への塗布性(特にスラリー塗布性)の観点からは層状構造を有するものが好ましい。層状構造を有する金属オキシハライドの場合には、分散剤を添加せずともスラリーを基材に容易に塗布することができる。

【0025】
層状構造を有する金属オキシハライドとしては、例えば、LaOCl,CeOCl,PrOCl,NdOCl,PmOCl,SmOCl,EuOCl,GdOCl,TbOCl,DyOCl,HoOCl,ErOCl,LaOBr,CeOBr,PrOBr,NdOBr,PmOBr,SmOBr,EuOBr,GdOBr,TbOBr,DyOBr,HoOBr,ErOBr,TmOBr,YbOBr,LuOBr,LaOI,CeOI,PrOI,NdOI,PmOI,SmOI,EuOI,GdOI,TbOI,DyOI,HoOI,ErOI,TmOI,YbOI,LuOI,BaBiOCl,BaBiOBr,CaBiOI,SrBiOBr,NaBiCl,NaBiBr,NaBi,LiBiCl,LiBiBr,LiBi,PbBiOCl,PbBiOBr,PbBiOI,BiNbOCl,BiNbOBr,BiTaOCl,BiTaOBr,SbCl,SbBr,InOCl,InOCl,InOI等が挙げられる。これらの層状構造を有する金属オキシハライドの中でも、特に金属カチオンとしてBi,Sb及びInからなる群から選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。

【0026】
金属オキシハライドの平均粒子径は限定的ではないが、球状粒子の場合には平均粒子径は0.01~10μm程度が好ましい。また、層状構造を有する場合には平面部分の平均径は0.01~10μm程度が好ましく、厚さは0.01~1μm程度が好ましい。なお、金属オキシハライドの平均粒子径、平均径及び厚さは、走査電子顕微鏡を用いた直接観察により測定した値、又はX線回折における各回折ピークの半値幅をシェラー式に代入して推定した値である。

【0027】
本発明の合成方法は、原料の金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることにより、目的物である金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成する。

【0028】
金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させる方法としては、例えば、金属オキシハライドの粉末をアルミナボードなどの基板上に静置し、パイレックス(登録商標)製の反応管内に設置し、硫化水素及び/又はセレン化水素を反応管内に流通させることにより行える。セレン化水素を発生させる方法としては、例えば、セレン化亜鉛に強酸を加えることにより発生させることができる。

【0029】
硫化水素及びセレン化水素の濃度は限定的ではないが、適宜アルゴンガスなどの不活性ガスと混合することにより希釈して用いることができる。硫化水素及びセレン化水素をそれぞれ単独で使用する場合には、各濃度は、希釈後に0.1~50体積%程度が好ましく、1~5体積%程度がより好ましい。なお、硫化水素とセレン化水素は必要に応じて希釈した後に適宜混合して用いることもできる。

【0030】
金属オキシハライドを硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させる際の温度条件は限定的ではないが、100~600℃の範囲で設定することが好ましい。この中でも、100~200℃(更には100~150℃)の低温範囲を採用する場合には、基材として導電性プラスチックフィルムなどの有機基材が採用でき、基材上で直接目的物を合成することにより基材付きの半導体部材を直接製造することができる点で好ましい。圧力条件は限定されず、通常は大気圧下で実施することができる。

【0031】
金属オキシハライドと硫化水素及び/又はセレン化水素との接触時間は、温度条件や硫化水素及び/又はセレン化水素の流速に応じて適宜設定することができるが、一般に数十分から数時間の間で設定できる。本発明の合成方法では、このような接触により、金属オキシハライドのハロゲン組成を保持したまま、一般式(2):
M’1-xA’1-Z (2)
〔但し、式(1)中、M,M’は同一又は異なって金属カチオンを示し、A,A’は同一又は異なってハロゲンアニオンを示す。0≦x≦1、0<y≦1、0≦z≦1を示す。〕で示される金属サルファハライド、一般式(3):
M’1-xSeA’1-Z (3)
〔但し、式(1)中、M,M’は同一又は異なって金属カチオンを示し、A,A’は同一又は異なってハロゲンアニオンを示す。0≦x≦1、0<y≦1、0≦z≦1を示す。〕で示される金属セレンハライド、並びに、一般式(4):
M’1-xSe1-yA’1-Z (4)
〔但し、式(1)中、M,M’は同一又は異なって金属カチオンを示し、A,A’は同一又は異なってハロゲンアニオンを示す。0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1を示す。〕で示される金属サルファセレンハライドが合成される。

【0032】
本発明の合成方法によれば、金属オキシハライドと硫化水素及び/又はセレン化水素とを接触させることにより、目的物である金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライド(金属サルファセレンハライドの場合を含む)を簡便且つ穏和な合成条件で得ることができる。特に温度条件については100~200℃程度の低温条件でもアニオン交換(O→S及び/又はSe)を行うことが可能であり、また圧力条件についても限定されず大気圧下で実施することが可能である。しかも本発明の合成方法では、原料の金属オキシハライドのハロゲン組成を保持したまま上記アニオン交換を実施できるため金属種及びハロゲン組成に応じた所望のバンド構造及びポテンシャルを有する金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することができる。

【0033】
本発明の合成方法によれば、上記の通り、簡便且つ穏和な合成条件で実施することができるため、導電性プラスチックフィルムなどの有機基材を使用し、前記基材上で直接アニオン交換を行うことも可能である。例えば、原料の金属オキシハライドを含有する塗膜又は被膜を前記基材上に形成し、当該塗膜又は被膜に硫化水素及び/又はセレン化水素を接触させることにより前記基板上で半導体部材を直接作製することが可能である。

【0034】
即ち、本発明は、基材上に金属オキシハライドを含有する塗膜又は被膜を形成後、前記塗膜又は被膜を硫化水素及び/又はセレン化水素と接触させることにより金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライドを合成することを特徴とする半導体部材の製造方法の発明も包含する。

【0035】
ここで、前記塗膜を形成する方法としては、例えば、金属オキシハライドと水とを混合したスラリーを基材上に塗布する方法や、金属オキシハライドを電気泳動により基材上に被覆して被膜を形成する方法等が挙げられる。有機基材、及びその他の無機基材については半導体や太陽電池の分野で公知の種々の基材が幅広く使用できる。

【0036】
本発明の合成方法で得られる金属サルファハライド及び/又は金属セレンハライド、並びに本発明の合成方法を利用して得られる半導体部材はともに半導体であり、太陽光エネルギーを利用して水を光分解することにより水素を得る光触媒、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電極(光電変換材料、太陽電池)等の用途に有用である。特に好適な実施態様においては、光吸収可能な波長領域が最大960nm程度まで長波長化されており(実施例2参照)、従来品に比して多大な優位性を有する。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【実施例】
【0038】
なお、実施例及び比較例において合成した試料(金属オキシハライド、金属サルファハライド及び金属セレンハライド)の物性評価(結晶構造解析、光吸収特性、元素組成及び形状観察)並びに当該試料を用いた光電極の光電流密度の測定方法は下記の通りである。
【実施例】
【0039】
<結晶構造解析>
各試料の結晶構造解析は、X線回折装置(Rigaku, MiniFlexII)を用いて行い、30kV、15mAで発生したCuKα線を炭素モノクロメーターで単色化し、10deg/minの走査速度で2θ=3~70degの範囲を測定した。
【実施例】
【0040】
この際、角度補正を行うため、試料に10重量%の塩化カリウム(KCl)を混合し、KClの(200)面の回折ピークの位置を2θ=28.45degに合わせることにより、試料全体の回折ピークの2θ値を補正した。
【実施例】
【0041】
<光吸収特性>
各試料の光吸収特性は、紫外可視分光光度計(JASCO, V-670)を用いて評価した。
【実施例】
【0042】
標準反射板(BaSO)を参照として積分球を用いて測定を行い、走査範囲200~1000nm、走査速度1000nm/min、サンプリング間隔0.5nmの条件において試料粉末を測定した。
【実施例】
【0043】
<元素組成>
各試料の元素組成(特にI,Br)は、エネルギー分散型X線分光装置(Oxford, XMAX)を用いて評価した。加速電圧を20kVとして特性X線を検出した。
【実施例】
【0044】
<形状観察>
各試料の粉末形状は、走査電子顕微鏡(VE-9800, KEYENCE)を使用し、真鍮製の試料台に貼付したカーボンテープ上に試料粉末を散布し、観察を行った。
【実施例】
【0045】
<光電流密度の測定>
光電流密度の測定は、パイレックス(登録商標)硝子製のセル(内容積約100mL)用いた。
【実施例】
【0046】
作成した光電極を作用極として用い、対極には白金ワイヤー電極を、参照電極には塩橋を介した銀-塩化銀(Ag/AgCl)電極を用いた。脱水アセトニトリルに0.1mol/L相当のヨウ化ナトリウムを溶かして反応溶液とした。これをセル内に80mL入れて、アルゴンガスによるバブリングを30分行うことによって、セル内の溶液に溶存する空気をアルゴンに置換した。
【実施例】
【0047】
ポテンシオスタット(Princeton Applied Research社製, PARSTAT2263)を用いて作用極に印加する電位を負から正に走査しながら可視光照射を行い、この際に対極との間に流れた電流値を測定し、これを作用極の面積あたりの電流密度(mA/cm)とした。
【実施例】
【0048】
光源には紫外線カットオフフィルター(L-42, HOYA製)を装着したキセノンランプ(300W, Cermax社製)を用いて波長400nm以上の可視光のみを照射した。
【実施例】
【0049】
以下、各実施例及び比較例について説明する。
【実施例】
【0050】
比較例1:ビスマスオキシハライドの合成及びその物性評価
下記手順によりビスマスオキシハライド(BiOBr1-x)を合成した。
【実施例】
【0051】
酢酸ナトリウム(CHOONa,6.5mmol)を超純水に溶解した。臭化ナトリウム(NaBr)とヨウ化ナトリウム(NaI)とを所定の比率(1-x:x)で且つ総量が3.25mmolとなるように秤量し、先の酢酸ナトリウム水溶液に添加し、マグネチックスターラーを用いて撹拌、溶解した。なお、xの値は、0,0.2,0.4,0.6,0.8及び1とした。
【実施例】
【0052】
上記とは別に、3.25mmolの硝酸ビスマス(Bi(NO・5HO)を2.5mLの氷酢酸に添加、撹拌した溶液を用意し、先の水溶液と混合し、室温で20時間撹拌した。溶液中に生成した微粉末を遠心分離(4500rpm,10分)によって沈降回収し、超純水で3回洗浄した後、80℃で5時間乾燥させてビスマスオキシハライドの各粉末を得た。
【実施例】
【0053】
xの値と比較例番号との関係は、下記の通りである。
【実施例】
【0054】
【表1】
JP2017043586A1_000003t.gif
【実施例】
【0055】
<ビスマスオキシハライドの物性評価>
比較例1-1~1-6で得られたビスマスオキシハライド粉末のX線回折結果から、いずれも同じ結晶構造を有し、c軸の格子定数は、xの値が0,0.2,0.4,0.6,0.8,1と増加するに従って、それぞれ8.092Å,8.363Å,8.676Å,8.880Å,9.041Å,9.150Åと比例して増大し、イオン半径の大きなヨウ化物イオンが臭化物イオンと置換して固溶体を形成していることが示唆された。
【実施例】
【0056】
また、エネルギー分散型X線分光法による元素分析からも、調製時と同じ比率のハロゲン組成となっていることが確認された。これらの試料の吸収端は、xの値0,0.2,0.4,0.6,0.8,1に対して、それぞれ410nm、515nm、555nm、570nm、610nmとなり、xの値の増加とともに吸収が長波長化した。これらの物性評価の結果は、従来の既報における結果とよく一致した(図3参照)。
【実施例】
【0057】
<光電極の作製及び光電流密度の測定>
比較例1-1~1-6で得られた各ビスマスオキシハライド粉末を超純水と混合し、メノウ乳鉢を用いてよく分散した。市販の透明導電性ガラス電極(FTO,長さ50mm、幅15mm、厚さ1mm)上に各分散液を滴下し、ガラス棒で均一になるよう塗り広げた。この際、塗布面積は、長さ40mm、幅15mmとした。塗布後、室温にて乾燥させた。上記の手法により、平均で2~3mgの粉末が積層され、走査電子顕微鏡による観察から、その膜厚はおよそ2.5~3.5μmと確認された。
【実施例】
【0058】
上記一連の手法によって得られた各光電極を用いて光電流値測定を行った。銀-塩化銀参照極に対して+0.15Vにおける光電流密度は下記の通りとなった。
【実施例】
【0059】
【表2】
JP2017043586A1_000004t.gif
【実施例】
【0060】
実施例1:ビスマスサルファハライドの合成及びその物性評価
比較例1-1~1-6で得られた各ビスマスオキシハライド粉末をアルミナボード上に静置し、これをパイレックス(登録商標)製の反応管(長さ約40cm,内径釣4cm内)内に設置した。
【実施例】
【0061】
反応管内に、アルゴン(99.99%)で5vol%に希釈した硫化水素(HS)を約60mL/minの流速で流しながら、各粉末を150℃で1時間加熱し、次に反応管内をアルゴンで置換しながら自然冷却し、ビスマスサルファハライドの各粉末を得た。
【実施例】
【0062】
xの値と実施例番号との関係は、下記の通りである。
【実施例】
【0063】
【表3】
JP2017043586A1_000005t.gif
【実施例】
【0064】
<ビスマスサルファハライドの物性評価>
実施例1-1~1-6で得られたビスマスサルファハライド粉末のX線回折パターンは、原料のビスマスオキシハライド粉末とは大きく異なり、既報のBiSBrの結晶構造と一致し、また不純相に由来する回折ピークは見られなかったことから、硫化水素処理によって結晶構造が完全に変化したことが示された(図1参照)。
【実施例】
【0065】
ビスマスサルファハライド粉末のc軸の格子定数は、xの値が0,0.2,0.4,0.6,0.8,1と増加するに従って、それぞれ4.064Å,4.079Å,4.060Å,4.127Å,4.145Å,4.167Åと比例して増大し、イオン半径の大きなヨウ化物イオンが臭化物イオンと置換して固溶体を形成していることが示唆された。
【実施例】
【0066】
また、エネルギー分散型X線分光法による元素分析からも、比較例1におけるビスマスオキシハライド調製時と同じ比率のハロゲン組成となっていることが確認された。これらの試料の吸収端は、xの値0,0.2,0.4,0.6,0.8,1に対して、それぞれ650nm,715nm,735nm,750nm,765nm,780nmとなり、xの値の増加とともに吸収波長が長波長化し、特に原料のビスマスオキシハライドとの関係で同じx値で比較すると大幅に吸収波長が長波長化した(図3参照)。
【実施例】
【0067】
<光電極の作製及び光電流密度の測定>
実施例1-1~1-6で得られた各ビスマスサルファハライド粉末を超純水と混合し、メノウ乳鉢を用いてよく分散した。
【実施例】
【0068】
市販の透明導電性ガラス電極(FTO,長さ50mm、幅15mm、厚さ1mm)上に各分散液を滴下し、ガラス棒で均一になるよう塗り広げた。この際、塗布面積は、長さ40mm、幅15mmとした。塗布後、室温にて乾燥させた。上記の手法により、平均で2~3mgの粉末が積層され、走査電子顕微鏡による観察から、その膜厚はおよそ2.5~3.5μmと確認された。
【実施例】
【0069】
上記一連の手法によって得られた各光電極を用いて光電流値測定を行った。銀-塩化銀参照極に対して+0.15Vにおける光電流密度は下記の通りとなった。
【実施例】
【0070】
【表4】
JP2017043586A1_000006t.gif
【実施例】
【0071】
上記表2及び表4の結果を図4にまとめて示す。図4の結果から明らかな通り、比較例1のビスマスオキシハライドと実施例1のビスマスサルファハライドとを比較すると、ハロゲン組成が同じ場合を対比した場合に実施例1のビスマスサルファハライドの方が顕著に光電流密度が向上していることが分かる。
【実施例】
【0072】
実施例2:ビスマスセレンハライドの合成及びその物性評価
比較例1-1で得たBiOBr粉末及び比較例1-6で得たBiOI粉末をそれぞれバイアル瓶A(15mL)に静置した。バイアル瓶Aにテフロン(登録商標)チューブを取り付け、セレン化亜鉛0.6gが入った別のバイアル瓶B(15mL)をつなげた。
【実施例】
【0073】
セレン化亜鉛が入ったバイアル瓶Bをアルゴンガスにより10分間パージを行った後、4Mの塩酸3mLを加えてホットプレートスターラー上で140℃に加熱した。これによりバイアル瓶Bからセレン化水素を発生させてバイアル瓶Aに流通した。
【実施例】
【0074】
BiOBr粉末及びBiOI粉末が入ったバイアル瓶Aをそれぞれ180℃で1時間加熱した。Arガスによるパージを行った後、バイアル瓶をアルゴンガスで置換させながら自然冷却し、各ビスマスセレンハライド粉末を得た。これにより、実施例2-1ではBiSeBrが得られ、実施例2-2ではBiSeIが得られた。
【実施例】
【0075】
<ビスマスセレンハライドの物性評価>
各ビスマスセレンハライド粉末のX線回折ピークは、既報のBiSeBrおよびBiSeIと良く一致し、不純物に由来する回折ピークは認められなかった(図2参照)。
【実施例】
【0076】
また、それぞれの吸収端は、それぞれ820nm、960nmとなり、同じハロゲン組成のビスマスサルファハライドの場合(実施例1-1、1-6)よりも、更に吸収波長が長波長化した。
【実施例】
【0077】
<光電極の作製及び光電流密度の測定>
実施例2-1及び2-2で得られた各ビスマスセレンハライド粉末を用いて、実施例1と同様に光電極を作製して光電流密度を測定した。光電流密度は下記の通りとなった。
【実施例】
【0078】
【表5】
JP2017043586A1_000007t.gif
【実施例】
【0079】
実施例3:基板上でのビスマスサルファハライドの直接合成
比較例1-1で作製した光電極(BiOBr)と比較例1-6で作製した光電極(BiOI)とを、それぞれ硫化水素気流中で加熱することにより、基板上で直接ビスマスサルファハライドの合成を行った。
【実施例】
【0080】
具体的には、各光電極をパイレックス(登録商標)製の反応管(長さ約40cm,内径釣4cm内)内に設置した。この反応管内に、アルゴン(99.99%)で5vol%に希釈した硫化水素(HS)を約60mL/minの流速で流しながら、各光電極を150℃で1時間加熱し、その後反応管内をアルゴンで置換しながら自然冷却した。これにより、実施例3-1ではBiSBrが得られ、実施例3-2ではBiSIが得られた。
【実施例】
【0081】
X線回折パターン及び光吸収特性評価の結果から、実施例3-1ではBiOBrからBiSBrへの構造変化が進行していることが確認された。また、実施例3-2ではBiOIからBiSIへの構造変化が進行していることが確認された。
【実施例】
【0082】
実施例3-1及び3-2で作製した光電極を用いて、実施例1と同様にして光電流密度を測定した。光電流密度は下記の通りとなった。
【実施例】
【0083】
【表6】
JP2017043586A1_000008t.gif
【実施例】
【0084】
実施例4:電気泳動法を用いたビスマスサルファハライドの合成
比較例1-1で得たBiOBr粉末40mgをアセトン50mLに加えて、超音波洗浄機内において10分静置させることにより粉末を分散させた。ここに、市販の透明導電性ガラス電極(FTO,長さ50mm、幅15mm、厚さ1mm)を2枚、約8mmの間隔を持って垂直に浸し、両者の間にポテンシオスタット(Princeton Applied Research社製, PARSTAT2263)を用いて10Vの電圧を3分間印加させて、電気泳動により陽極側又は陰極側のFTO電極上に粉末を積層させた。このとき、粉末を積層させる面積は長さ40mm、幅15mmとした。
【実施例】
【0085】
次に粉末が積層したFTO電極を溶液から取り出してアセトンで洗浄した後、室温にて乾燥させた。上記の手法により、平均で2~3mgの粉末が積層され、走査電子顕微鏡による観察から、その膜厚はおよそ1.5~2.0μmと確認された。
【実施例】
【0086】
得られたBiOBr電極そのものを硫化水素気流中で加熱することにより、基板上で直接アニオン交換を行った。具体的には、基板をアルミナボード上に静置し、これをパイレックス(登録商標)製の反応管(長さ約40cm,内径釣4cm内)内に設置した。この反応管内にアルゴン(99.99%)で5vol%に希釈した硫化水素(HS)を約60mL/minの流速で流しながら150℃で1時間加熱し、次に反応管内をアルゴンで置換しながら自然冷却した。
【実施例】
【0087】
X線回折パターンおよび光吸収特性評価の結果から、BiOBrからBiSBrへの構造変化が進行していることが確認された。これにより、実施例4-1の光電極を得た。また、実施例4-1と同様に、比較例1-1で得たBiOI粉末を出発材料として実施例4-2の光電極を得た。更に、これらと同様に、比較例1-3で得たBiOBr0.60.4粉末を原料として実施例4-3の光電極を得た。
【実施例】
【0088】
実施例4-1~4-3で作製した光電極を用いて、実施例1と同様にして光電流密度を測定した。光電流密度は下記の通りとなった。
【実施例】
【0089】
【表7】
JP2017043586A1_000009t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3