TOP > 国内特許検索 > 排ガス浄化用金属複合酸化物触媒及びその製造方法 > 明細書

明細書 :排ガス浄化用金属複合酸化物触媒及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6785218号 (P6785218)
登録日 令和2年10月28日(2020.10.28)
発行日 令和2年11月18日(2020.11.18)
発明の名称または考案の名称 排ガス浄化用金属複合酸化物触媒及びその製造方法
国際特許分類 B01J  23/89        (2006.01)
B01J  37/10        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01D  53/94        (2006.01)
F01N   3/10        (2006.01)
FI B01J 23/89 ZABA
B01J 37/10
B01J 37/08
B01D 53/94 222
B01D 53/94 245
B01D 53/94 280
F01N 3/10 A
請求項の数または発明の数 11
全頁数 10
出願番号 特願2017-506525 (P2017-506525)
出願日 平成28年3月11日(2016.3.11)
国際出願番号 PCT/JP2016/057771
国際公開番号 WO2016/148062
国際公開日 平成28年9月22日(2016.9.22)
優先権出願番号 2015050348
優先日 平成27年3月13日(2015.3.13)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年3月7日(2019.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】田中 庸裕
【氏名】細川 三郎
【氏名】寺村 謙太郎
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】森坂 英昭
参考文献・文献 特開2010-284584(JP,A)
多田稜平 他,グリコサーマル合成したMn修飾六方晶YbFeO3の炭化水素燃焼特性,第114回触媒討論会討論会A予稿集,2014年 9月18日,Vol.114th,Page 463 ISSN1343-9936
細川三郎 他,六方晶YbFeO3担持Mn触媒の炭化水素燃焼特性,第112回触媒討論会討論会A予稿集,2013年 9月11日,Vol.112th,Page353 ISSN 1343-9936
細川三郎 他,Mnを固溶させた六方晶希土類-鉄複合酸化物のソルボサーマル合成とその燃焼特性,第108回触媒討論会討論会A予稿集,2011年 9月13日,Vol.108th,Page361 ISSN 1343-9936
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)
1/M2FexMn1-x3 (I)
(式中、M1はPd、Rh及びPtからなる群から選ばれる貴金属を示す。M2はGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。M2FexMn1-x3は金属複合酸化物担体を示し、M1は前記担体に担持されている。)
で表わされる、排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項2】
1がPdである、請求項1に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項3】
2がYbである、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項4】
xが0.4~0.8である、請求項1~3のいずれか1項に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項5】
xが0.6~0.8である、請求項4に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項6】
貴金属M1がM2FexMn1-x3 (M2はGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。)で表わされる担体に対し質量で0.01~2%含まれる、請求項1~5のいずれか1項に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項7】
貴金属M1がM2FexMn1-x3 (M2はGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。)で表わされる複合酸化物に対し質量で0.1~1.0%含まれる、請求項6に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項8】
前記金属複合酸化物担体の結晶構造が六方晶構造である、請求項1~7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項9】
1がPdであり、かつ、M2がYbである、請求項1に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
【請求項10】
溶媒中にGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素化合物、Fe化合物、Mn化合物を溶解もしくは懸濁し、加熱して下記式(II)
2FexMn1-x3 (II)
(式中、M2はGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。)
で表わされる担体を調製し、得られた担体をPd化合物、Rh化合物又はPt化合物溶液に接触し、焼成する工程を含む、下記式(I)
1/M2FexMn1-x3 (I)
(式中、M1はPd、Rh及びPtからなる群から選ばれる貴金属を示す。M2はGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。M2FexMn1-x3は金属複合酸化物担体を示し、M1は前記担体に担持されている。)
で表わされる、排ガス浄化用金属複合酸化物触媒の製造方法。
【請求項11】
溶媒が1,4-ブタンジオールである、請求項10に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,排ガス浄化用金属複合酸化物触媒及びその製造方法に関するものであり,詳しくは自動車排ガス浄化を指向した貴金属超低減化新規複合酸化物触媒の開発及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車排ガス浄化触媒として現在用いられているのは,主にPdやRhなどの貴金属種である。Pdはリッチ条件(酸素希薄条件)での酸化活性が高く,Rhは極めて高いNOx還元活性を示すことが知られている(非特許文献1)。貴金属種は自動車排ガス浄化触媒として高い活性を示し,自動車に欠かせない元素である。しかし,これらの貴金属種は希少元素であることから,価格変動が激しいという問題がある。近年では,貴金属を代替する研究が盛んに行われており,遷移金属の中ではCuがNO選択還元に対して高い活性を示すことが明らかになっている(非特許文献2)。特に,炭化水素(HC)を還元剤として用いたNOx選択還元反応において,Cu2+イオン交換ZSM-5ゼオライト触媒が有効であることが有名である(非特許文献3)。当研究室においても,種々の担体と様々な活性金属成分の組み合わせの最適化を行った結果,Cu/Al2O3が最も有効であることを報告している(非特許文献4)。しかし,Cu系触媒では低温でのNO浄化効率が極めて低く,冷間時の排ガス浄化には向かないという問題点がある。そのため,低温時の浄化効率の向上には貴金属種の添加は不可欠である。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】村木秀昭, 触媒, 1992, 34, 225.
【非特許文献2】V. Parvulescu, P. Grange, B. Delmon, Catal. Today 1998, 46, 233.
【非特許文献3】H. Yahiro, M. Iwamoto, Appl. Catal. A-Gen. 2001, 222, 163.
【非特許文献4】T. Yamamoto, T. Tanaka, R. Kuma, S. Suzuki, F. Amano, Y. Shimooka, Y. Kohno, T. Funabiki, S. Yoshida., Phys. Chem. Chem. Phys., 2002, 4, 2449.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、貴金属の使用量を低減化した新規触媒を開発することで,排ガス浄化用金属複合酸化物触媒の脱ないし省貴金属化を実現することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒及びその製造方法を提供するものである。
項1. 下記式(I)
/MFeMn1-x (I)
(式中、MはPd、Rh及びPtからなる群から選ばれる貴金属を示す。MはGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。MFeMn1-xは金属複合酸化物担体を示し、Mは前記担体に担持されている。)
で表わされる、排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項2. MがPdである、項1に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項3. MがYbである、項1又は2に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項4. xが0.4~0.8である、項1~3のいずれか1項に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項5. xが0.6~0.8である、項4に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項6. 貴金属MがMFeMn1-x (MはGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。)で表わされる担体に対し質量で0.01~2%含まれる、項1~5のいずれか1項に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項7. 貴金属MがMFeMn1-x (MはGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。)で表わされる複合酸化物に対し質量で0.1~1.0%含まれる、項6に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項8. 前記金属複合酸化物担体の結晶構造が六方晶構造である、項1~7のいずれか1項に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項9. MがPdであり、かつ、MがYbである、項1に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項10. 前記金属複合酸化物担体がソルボサーマル法で合成されたものである、項1~9のいずれか1項に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒。
項11. 溶媒中にGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素化合物、Fe化合物、Mn化合物を溶解もしくは懸濁し、加熱して下記式(II)
FeMn1-x (II)
(式中、MはGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。)
で表わされる担体を調製し、得られた担体をPd化合物、Rh化合物又はPt化合物溶液に接触し、焼成する工程を含む、下記式(I)
/MFeMn1-x (I)
(式中、MはPd、Rh及びPtからなる群から選ばれる貴金属を示す。MはGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。MFeMn1-xは金属複合酸化物担体を示し、Mは前記担体に担持されている。)
で表わされる、排ガス浄化用金属複合酸化物触媒の製造方法。
項12. 溶媒が1,4-ブタンジオールである、項11に記載の排ガス浄化用金属複合酸化物触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、Pd、Rh及びPtからなる群から選ばれる貴金属(M)の担体をMFeMn1-x(M,xは前記に定義される通りである)にすることで、Mの担持量を少なくしても排ガス浄化用金属複合酸化物触媒として優れた性能を発揮できる。また、実施例で示されるようにPdを0.5質量%担持した触媒は、RhもしくはPdを1.0質量%担持したAl担持貴金属触媒と比較してもCO及びプロピレン酸化、NOx還元の温度(T50)が低く、従来のRh含有触媒やPd含有触媒よりも優れた性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】六方晶YbFe0.6Mn0.4O3(ST)担持Pd触媒とγ-Al2O3担持貴金属触媒の触媒活性比較 。
【図2】六方晶YbFe0.6Mn0.4O3(ST)担持Pd触媒の担持量の影響。
【図3】調製法の影響およびMnの添加効果
【図4】各種触媒のXRDパターン及び比表面積の測定結果。XRDパターンにより本発明で使用する担体の結晶構造は、六方晶構造であることが確認された。また、図4に記載された比表面積は、BET比表面積である。
【図5】常圧固定床流通型反応装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の排気ガス浄化用金属複合酸化物触媒は、Pd、Rh及びPtからなる群から選ばれる貴金属を下記式(II)
FeMn1-x (II)
(式中、MはGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYからなる群から選ばれる希土類元素を示す。xは0.2~1.0である。MFeMn1-xは金属複合酸化物担体を示し、Pdは前記担体に担持されている。)
で表わされる金属複合酸化物担体に担持する。

【0009】
貴金属Mの担持量は、式(II)で表わされる担体の質量を基準にして、好ましくは0.01~2%程度、より好ましくは0.05~2%程度、さらに好ましくは0.1~1%程度、特に好ましくは0.1~0.5%程度である。貴金属の担持量は少ないほどコストが低減されて好ましいが、あまりに少なすぎるとNO還元活性の低下や長時間使用したときに排気ガス浄化が十分に行われないリスクがある。

【0010】
担体に担持される貴金属Mとしては、Pd、Rh及びPtからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、好ましくはPd、Rh又はPtであり、より好ましくはPd、Rh、最も好ましくはPdである。

【0011】
で表わされる希土類元素としては、Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb、Lu及びYが挙げられ、これらを1種又は2種以上使用することができる。好ましい希土類元素はEr,Tm,Yb、Lu又はYであり、より好ましくはYb、Lu、特に好ましくはYbである。

【0012】
本発明の担体の結晶構造は、六方晶構造が挙げられる。

【0013】
本発明の一般式(II)で表わされる担体は、ソルボサーマル法(ST法)、錯体重合法(PC法)などにより製造することができ、ST法が好ましい。

【0014】
ST法は、密閉容器内で希土類元素(M)化合物、Fe化合物、必要に応じてさらにMn化合物を溶媒に溶解もしくは懸濁して加熱する方法であり、式(II)で表わされる担体は、沈殿物として生成する。溶媒としては、1,4-ブタンジオールなどの多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテル、グリセリンなどの1種又は2種以上を使用できる。好ましい溶媒は1,4-ブタンジオールである。反応は、密閉系で行うのが好ましい。また、反応は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)で置換した雰囲気で行うのが好ましい。反応温度は、50~350℃程度、好ましくは100~350℃程度である。反応圧力は0.1~10 MPa程度、好ましくは1.0~5.0 MPa程度である。反応時間は、30分から24時間程度、好ましくは1~12時間程度である。反応は、希土類元素(M)化合物1モルに対し、Fe化合物とMn化合物の合計量を0.5~1.5モル程度、好ましくは0.8~1.2モル程度使用すればよい。さらに、得られた試料を200~800℃で0.2~24時間焼成することにより、本発明で使用する式(II)の担体を得ることができる。

【0015】
溶媒に溶解/懸濁する希土類元素(M)化合物としては、希土類元素にアセチルアセトン、アルコキシド(メトキシド、エトキシド、tert-ブトキシドなど)のような配位子が配位した錯体化合物、或いは希土類元素の硝酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)などが挙げられ、アセチルアセトン、アルコキシド(メトキシド、エトキシド、tert-ブトキシドなど)のような配位子が配位した錯体化合物、酢酸塩等の有機酸塩、炭酸塩が好ましく使用できる。希土類元素(M)化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

【0016】
Fe化合物としては、Feイオン(2価又は3価)にアセチルアセトン、アルコキシド(メトキシド、エトキシド、tert-ブトキシドなど)のような配位子が配位した錯体化合物、硝酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)などが挙げられ、アセチルアセトン、アルコキシド(メトキシド、エトキシド、tert-ブトキシドなど)のような配位子が配位した錯体化合物、酢酸塩等の有機酸塩が好ましく使用できる。Fe化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

【0017】
Mn化合物としては、Mnイオン(2価又は3価)にアセチルアセトン、アルコキシド(メトキシド、エトキシド、tert-ブトキシドなど)のような配位子が配位した錯体化合物、硝酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物)などが挙げられ、アセチルアセトン、アルコキシド(メトキシド、エトキシド、tert-ブトキシドなど)のような配位子が配位した錯体化合物、酢酸塩等の有機酸塩が好ましく使用できる。Mn化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

【0018】
PC法は、Fe化合物、必要に応じてさらにMn化合物をクエン酸を溶解させた水溶液に溶かし、さらに前記の希土類元素(M)化合物(例えば希土類元素の炭酸塩)を加えて60~90℃で1~5時間反応し、エチレングリコールを加えてさらに100~150℃で3~8時間反応し、加熱する。その後、200~500℃で2~6時間仮焼成することにより式(II)の担体の前駆体生成物を得ることができる。反応は、希土類元素(M)化合物1モルに対し、Fe化合物とMn化合物の合計量を0.5~1.5モル程度、好ましくは0.8~1.2モル程度使用すればよい。さらに、700~900℃で0.2~5時間焼成することにより、本発明で使用する式(II)の担体を得ることができる。PC法は、開放系で行うことができる。

【0019】
本発明の触媒は、貴金属化合物を含む溶液に式(II)で表わされる担体を含浸もしくは浸漬し、或いは前記担体に貴金属化合物を含む溶液をスプレー等で塗布することにより接触させ、その後、焼成することにより製造することができる。貴金属化合物としては、ヘキサクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸ナトリウム、塩化白金、ジニトロジアミン白金などの白金化合物;塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム,酢酸パラジウムなどのパラジウム化合物;塩化ロジウム、硫酸ロジウム、硝酸ロジウム、水酸化ロジウム,アセチルアセトナトロジウムなどのロジウム化合物が挙げられる。焼成温度としては、400℃~1000℃程度、好ましくは450~600℃程度である。焼成時間は、10分から8時間程度、好ましくは30分~2時間程度である。焼成は空気流通下で行うことができる。

【0020】
焼成した触媒をそのまま排ガス浄化用触媒として用いてもよいが、焼成後に水素還元処理をさらに行ってもよい。水素還元処理は、水素の存在下に加熱して行うことができる。水素還元処理の温度は、150~850℃程度、より好ましくは500~800℃程度であり、処理時間は30分から12時間程度、好ましくは1~6時間程度である。

【0021】
本発明の触媒は、NOxを低温で処理できるので、自動車排ガス浄化用の三元触媒として特に優れている。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
【実施例】
【0023】
製造例1:ソルボサーマル法(ST法)による担体の調製
酢酸イッテルビウム四水和物(Yb(OAc)3・4H2O, 15 mmol),トリスアセチルアセトナト鉄(III)(Fe(acac)3, 9 mmol)およびトリスアセチルアセトナトマンガン(III)(Mn(acac)3, 6 mmol)を乳鉢で磨砕したのち,プラスチック容器内で超音波を用いて1,4-ブタンジオール(1,4-BG)120 ml中に懸濁させた。なおFe(acac)3とMn(acac)3の仕込み量は合計で15 mmolとした(Fe 9 mmol, Mn 6 mmol)。この懸濁液をオートクレーブ反応管に移し,オートクレーブ(300 mL)に仕込み,間隙にも30 mlの1,4-BGを加えた。オートクレーブ内を窒素置換したのち,室温から2.3 ℃/minで 315 ℃まで昇温し,2時間反応させた。生成物をメタノールで洗浄し風乾することで六方晶YbFe0.6Mn0.4O3を得た。これを空気中,500 ℃で30 min焼成し触媒および触媒担体とした。
【実施例】
【0024】
また,Mnを含まない六方晶YbFeO3はFe(acac)3を15 mmol(Mn(acac)3を0 mmol)とし,上記と同様の方法で合成した。
【実施例】
【0025】
製造例2:錯体重合法(PC法)による担体の調製
炭酸イッテルビウムn水和物(Yb2(CO3)3・nH2O, 5 mmol),硝酸鉄九水和物(Fe(NO3)3・9H2O, 6 mmol)および硝酸マンガン六水和物(Mn(NO3)2・6H2O, 4 mmol)をクエン酸400 mmolを含むイオン交換水(180 ml)に溶解させた。この際,Fe(NO3)3・9H2O とMn(NO3)2・6H2Oの仕込み量は合計10 mmolとした。この溶液を80 ℃で2 h撹拌後,エチレングリコール(400 mmol)を加え130 ℃で5 h撹拌することでゲル状生成物を得た。このゲル状生成物を350 ℃で4-5 h焼成し粉末としたのちに,さらに800 ℃で30 min焼成することで六方晶YbFe0.6Mn0.4O3を得た。
【実施例】
【0026】
実施例1及び比較例1:含浸法による六方晶YbFe0.6Mn0.4O3担持Pd触媒およびγ-Al2O3担持貴金属触媒の調製
六方晶YbFe0.6Mn0.4O3担持Pd触媒は,製造例1又は2で調製した六方晶YbFe0.6Mn0.4O3(0.99 g) に対しPd(metal)が0.1-1.0wt%となるように酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2, 0.0021-0.0211 g)を室温にて含浸担持し,乾燥後,空気中500 ℃にて30 min焼成することで得た。なお,溶媒にはアセトン9 mlを用いた。
【実施例】
【0027】
γ-Al2O3担持貴金属触媒は,γ-Al2O3 (参照触媒ALO-7(180 m2/g),触媒学会提供、1.00 g) に対し貴金属(Pd、Rh、Pt)が金属として1.0wt%となるように酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc)2, 0.0211 g),ジニトロジアミン白金水溶液(4.64wt% Pt(NO2)2(NH3)2 aq., 0.2154 g)もしくはトリスアセチルアセトナトロジウム(III)(Rh(acac)3,0.0389 g)を各種溶媒に加え含浸担持し,乾燥後,空気中500 ℃にて3 時間焼成することで得た。なお,Pd担持の際の溶媒にはアセトン9 mlを用い,Pt担持の際の溶媒は水 9 mlを用いた。また,Rh担持の際は酢酸エチルを9 ml用いた。
【実施例】
【0028】
試験例1:触媒反応
図5に概略的に示す常圧固定床流通型反応装置を用いて反応を行った。触媒(200 mg)を石英反応管に充填し,前処理としてHeを30 mL min-1,500℃で1 h流通させた。反応ガスとしてNO: 1000ppm,CO: 1000ppm,C3H6: 250ppm,O2: 1125ppm,He: balanceの混合ガスを100 mL min-1で触媒層に流通させた。出口ガス分析は100℃から500℃まで行い,50℃毎に20 min保持した後に出口ガス分析を行った。反応ガスの分析は2台のTCD-GC8A(Shimadzu製 MS-5A及びPorapak Q)およびNOxメーター(Horiba製 PG-350)により行った。2台のTCD-GC8A(MS-5A及びPorapak Q)によりC3H6、CO、CO2、N2、N2Oを測定し、NOxメーターによりNO、NO2を測定した。
【実施例】
【0029】
結果と考察
図1に六方晶YbFe0.6Mn0.4O3担持Pd触媒とAl2O3担持貴金属(Rh,Pd,Pt)触媒のCO及びC3H6からのCO2生成量およびNOxからのN2生成量を示す。表1、表2にC3H6およびCOの酸化及びNO還元のT50(50%酸化/還元されるときの温度)を示す。
【実施例】
【0030】
【表1】
JP0006785218B2_000002t.gif
【実施例】
【0031】
【表2】
JP0006785218B2_000003t.gif
【実施例】
【0032】
同量のPd担持量にもかかわらず,Pd/YbFe0.6Mn0.4O3触媒によるC3H6およびCOの酸化はいずれの貴金属/Al2O3触媒のものより極めて低温(T50=135℃)から進行していることが認められた。また,NO還元活性に関して,貴金属/Al2O3触媒の中ではRh/Al2O3触媒が300℃以上の温度域で安定して高い活性を示した。しかし,Pd/YbFe0.6Mn0.4O3触媒のNO還元活性はRh/Al2O3触媒より低温で高い活性を示した。さらに,Pd/Al2O3触媒の場合,350℃から500℃の反応温度域においてN2Oの生成が確認される場合があるが,Pd/YbFe0.6Mn0.4O3触媒は250℃以上の温度域においてもN2Oのような副生成物は見られず,反応ガス中のNOはすべてN2に還元されていた。
【実施例】
【0033】
図2にPd担持量の異なるPd/YbFe0.6Mn0.4O3触媒の活性を示す。担持量の低減化により,NOの還元活性は低下するものの,0.5 wt% Pd/YbFe0.6Mn0.4O3触媒のNO還元活性は,図1に示したRh/Al2O3触媒やPd/Al2O3触媒のものより高かった。さらに,C3H6およびCOの酸化活性は0.1 wt% Pd/YbFe0.6Mn0.4O3触媒においても高い活性を維持した。
【実施例】
【0034】
以上の結果から,本研究により開発した触媒は従来型の触媒に比べ貴金属使用量の低減化および貴金属元素の中で最も高価で希少なRh触媒の代替もしくは低減に成功したものと考えられる。
【実施例】
【0035】
図3に調製法の異なるPd/YbFe0.6Mn0.4O3およびMn添加無しの触媒の活性を示す。ソルボサーマル合成したYbFe0.6Mn0.4O3を担体に用いた触媒は錯体重合法で合成したものより高い活性を示した。また,ソルボサーマル合成したYbFeO3を触媒担体に用いた触媒はYbFe0.6Mn0.4O3のものより低活性に留まった。我々は,ソルボサーマル合成したYbFe0.6Mn0.4O3は六角板状の形態を形成しており,錯体重合法で合成したものは不規則な形態を有していることを報告している(S. Hosokawa, Y. Masuda, T. Nishimura, K. Wada, R. Abe, M. Inoue, Chem. Lett., 2014, 43, 874.)。また,ソルボサーマル合成したものの比表面積(78 m2/g)は錯体重合法で合成したもの(25 m2/g)より極めて高いことを見出している(S. Hosokawa, Y. Masuda, T. Nishimura, K. Wada, R. Abe, M. Inoue, Chem. Lett., 2014, 43, 874)。さらに,Mnの添加によりYbFeO3の結晶子サイズの低下および比表面積の向上が認められた。これらの結果から,ソルボサーマル合成したYbFe0.6Mn0.4O3特有の物理的特性が高い活性をもたらした一つの要因であると考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4