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明細書 :X線回折測定装置及びX線回折測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成30年1月11日(2018.1.11)
発明の名称または考案の名称 X線回折測定装置及びX線回折測定方法
国際特許分類 G01N  23/207       (2018.01)
FI G01N 23/207
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 15
出願番号 特願2017-508258 (P2017-508258)
国際出願番号 PCT/JP2016/058151
国際公開番号 WO2016/152654
国際出願日 平成28年3月15日(2016.3.15)
国際公開日 平成28年9月29日(2016.9.29)
優先権出願番号 2015061574
優先日 平成27年3月24日(2015.3.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JP , KE , KG , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US
発明者または考案者 【氏名】河口 智也
【氏名】松原 英一郎
【氏名】福田 勝利
出願人 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G001
Fターム 2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001KA08
2G001MA08
2G001QA01
要約 試料を所望の形状でX線回折測定を行うことができ、且つその測定精度を向上させることができるX線回折測定装置及びX線回折測定方法を提供する。X線回折測定装置1は、所定の第1回転軸C1回りに回転することで試料10を所定平面内で回転させる試料回転部22と、回転中の試料10に対してX線を照射するX線源3と、X線の光軸C0に対して直交した第2回転軸C2を中心とする円弧軌跡f上を移動することで試料10を透過して回折した回折X線12を検出する回折X線検出部4と、光軸C0と第2回転軸C2とを含む仮想平面において、試料10を中心として、第1回転軸C1を光軸C0に対して所定の鋭角度θで相対的に傾斜させる軸傾斜機構5とを備える。
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の第1回転軸回りに回転することで、試料を所定平面内で回転させる試料回転部と、
前記試料回転部により回転する前記試料に対してX線を照射するX線源と、
X線の光軸に対して直交した第2回転軸を中心とする円弧軌跡上を移動することで、前記試料を透過して回折した回折X線を検出する回折X線検出部と、
前記光軸と前記第2回転軸とを含む仮想平面において、前記試料回転部により回転する前記試料を中心として、前記第1回転軸を前記光軸に対して所定の鋭角度で相対的に傾斜させる軸傾斜機構と、
を備えることを特徴とするX線回折測定装置。
【請求項2】
前記軸傾斜機構は、前記鋭角度を調整可能である請求項1に記載のX線回折測定装置。
【請求項3】
前記鋭角度は、15~20°の角度範囲に設定されている請求項1又は2に記載のX線回折測定装置。
【請求項4】
前記試料は錠剤形状とされている請求項1~3のいずれか一項に記載のX線回折測定装置。
【請求項5】
試料回転部が、所定の第1回転軸回りに回転することで、試料を所定平面内で回転させる回転工程と、
X線源が、前記試料回転部により回転する前記試料に対してX線を照射する照射工程と、
回折X線検出部が、X線の光軸に対して直交した第2回転軸を中心とする円弧軌跡上を移動することで、前記試料を透過して回折した回折X線を検出する検出工程と、
軸傾斜機構が、前記光軸と前記第2回転軸とを含む仮想平面において、前記試料回転部により回転する前記試料を中心として、前記第1回転軸を前記光軸に対して所定の鋭角度で相対的に傾斜させる軸傾斜工程と、
を含むことを特徴とするX線回折測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、X線回折測定装置及びX線回折測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の結晶構造、異物及び欠陥などの分析を行う分析手法として、多結晶体の試料にX線を照射し、その試料からの散乱(回折)X線を観測するX線回折測定が知られている。このようなX線回折測定には、試料を封入した状態で回転するガラスキャピラリーに対してその回転軸と直交する方向からX線を照射し、試料を透過して回折したX線を回折X線検出部により観測する測定方法や、回転台上に載置された状態で回転する試料にX線を照射し、試料から反射して回折したX線を回折X線検出部により観測する測定方法などがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2003-279506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のガラスキャピラリーを回転させる測定方法は、ガラスキャピラリーの回転軸に対して直交する方向からX線を照射するので、回折X線検出部による試料の観測領域が大きい。その結果、試料において入射X線を回折する粒子(回折条件を満たす粒子)の数が多くなるので、X線回折測定を高精度に行うことができる。
しかし、この測定方法では、直径が約1.0mm以下のガラスキャピラリーを用いるので、このガラスキャピラリーに試料を封入するために、試料を細かくすり潰す必要がある。このため、例えば板状の試料等を、細かくすり潰すことなくその形状のまま測定したい場合には、この測定方法によって測定することができない。
【0005】
一方、上記の回転台上で試料を回転させる測定方法は、試料を細かくすり潰す必要がないので、板状の試料等であってもその形状のままX線回折測定を行うことができる。しかし、この測定方法では、X線は回転台により所定平面で回転する試料に照射されるため、回折X線検出部による試料の観測領域が小さく、回折条件を満たす粒子の数は、ガラスキャピラリーを回転させる測定方法に比べて少なくなる。このため、回転台上で回転させる測定方法では、X線回折測定の測定精度が低下するという問題がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、試料を所望の形状でX線回折測定を行うことができ、且つその測定精度を向上させることができるX線回折測定装置及びX線回折測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のX線回折測定装置は、所定の第1回転軸回りに回転することで、試料を所定平面内で回転させる試料回転部と、前記試料回転部により回転する前記試料に対してX線を照射するX線源と、X線の光軸に対して直交した第2回転軸を中心とする円弧軌跡上を移動することで、前記試料を透過して回折した回折X線を検出する回折X線検出部と、前記光軸と前記第2回転軸とを含む仮想平面において、前記試料回転部により回転する前記試料を中心として、前記第1回転軸を前記光軸に対して所定の鋭角度で相対的に傾斜させる軸傾斜機構と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のX線回折測定方法は、試料回転部が、所定の第1回転軸回りに回転することで、試料を所定平面内で回転させる回転工程と、X線源が、前記試料回転部により回転する前記試料に対してX線を照射する照射工程と、回折X線検出部が、X線の光軸に対して直交した第2回転軸を中心とする円弧軌跡上を移動することで、前記試料を透過して回折した回折X線を検出する検出工程と、軸傾斜機構が、前記光軸と前記第2回転軸とを含む仮想平面において、前記試料回転部により回転する前記試料を中心として、前記第1回転軸を前記光軸に対して所定の鋭角度で相対的に傾斜させる軸傾斜工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のX線回折測定装置及びX線回折測定方法によれば、試料にX線を照射する際に、試料回転部により試料を所定平面内で回転させるので、従来の回転台を回転させる測定方法と同様の方法により試料を回転させることができる。このため、従来のガラスキャピラリーを回転させる測定方法のように、試料を細かくすり潰す必要がないので、試料を所望の形状でX線回折測定を行うことができる。
【0009】
また、軸傾斜機構により、X線の光軸と回折X線検出部の第2回転軸とを含む仮想平面において、試料回転部により回転する試料を中心として、試料回転部の第1回転軸を上記光軸に対して所定の鋭角度で相対的に傾斜させることができる。これにより、第1回転軸が光軸に対して傾斜していない場合に比べて、回折X線検出部による試料の観測領域を拡大することができる。その結果、回折条件を満たす粒子の数を増加させることができるため、X線回折測定の測定精度を向上させることができる。
【0010】
前記軸傾斜機構は、前記鋭角度を調整可能であるのが好ましい。
この場合、試料に応じて光軸に対する第1回転軸の傾斜角度(鋭角度)を適切に調整することができる。
【0011】
前記鋭角度は、15~20°の角度範囲に設定されているのが好ましい。
この場合、試料によるX線の吸収量を抑えつつ、回折X線検出部による試料の観測領域を可及的に拡大することができる。
【0012】
前記試料は錠剤形状とされているのが好ましい。
この場合、X線の吸収量が大きい試料を測定する場合には、その試料を、希釈剤を混合して成型した錠剤形状とすることで、X線の吸収量を調整することが可能となる。その結果、X線の吸収量の補正を行った正確なX線回折測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、試料を所望の形状でX線回折測定を行うことができ、且つその測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を示す概略構成図である。
【図2】試料回転装置を示す正面図である。
【図3】図2のA-A矢視断面図である。
【図4】X線回折測定方法を示すフローチャートである。
【図5】回折X線検出部による試料の観測領域を示す説明図である。
【図6】検証実験の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<X線回折測定装置>
図1は、本発明の一実施形態に係るX線回折測定装置を示す概略構成図である。図1において、X線回折測定装置1は、試料10を回転可能に保持する試料回転装置2と、この試料回転装置2に保持された試料10に対してX線を照射するX線源3と、試料10を透過して回折した回折X線を検出する回折X線検出部4と、試料回転装置2の第1回転軸C1をX線の光軸C0に対して相対的に傾斜させる軸傾斜機構5とを備えている。

【0016】
図2は、試料回転装置2を示す正面図である。また、図3は、図2のA-A矢視断面図である。
図2及び図3において、試料回転装置2は、本体部21と、この本体部21に対して回転可能な試料回転部22と、この試料回転部22を回転駆動する回転駆動部23とを有している。

【0017】
本実施形態の本体部21は、その外形が直方体状に形成されたものであり、その前面21aから後面21bに向かって貫通する取付孔21cを有している。この取付孔21cには、その中心軸上に配置された第1回転軸C1回りに試料回転部22が回転可能に支持されている。本体部21の側面21dには、回転駆動部23の電源ケーブル等が接続されるコネクタ24が設けられている。

【0018】
回転駆動部23は、例えば電動モータからなり、試料回転部22を本体部21に対して、第1回転軸C1を中心として図2の矢印方向に高速で回転駆動させる。試料回転部22の回転速度は、例えば180rpmに設定されている。
試料回転部22は、本体部21の取付孔21cに転がり軸受25を介して回転可能に支持された円筒部22aと、この円筒部22aに対して着脱自在に取り付けられた環状板部22bとを有している。

【0019】
円筒部22aの内側には、その軸方向一方側(図3の上側)から軸方向他方側(図3の下側)に向けてX線を通過させるための中空部22cが形成されている。円筒部22aの軸方向一端部(図3の下端部)にはフランジ部22dが形成されている。このフランジ部22dには、環状板部22bの外周部が複数(ここでは4個)のボルト26により着脱自在に取り付けられている。

【0020】
環状板部22bは、X線を透過可能な透明の合成樹脂製の部材である。環状板部22bの中心は、当該環状板部22bがフランジ部22dに取り付けられた状態で、第1回転軸C1上に配置される。環状板部22bの外面の中心部には、試料10が固定されている。

【0021】
本実施形態の試料10は、例えば、所定量の微粉末を圧粉して円板状に形成された圧粉体からなり、その中心が環状板部22bの中心と一致するように、つまり第1回転軸C1上に配置されるように環状板部22bに固定されている。これにより、試料10は、円筒部22aの中空部22cの軸方向外側(図3の下側)に配置された状態で、試料回転部22と共に回転可能に保持されている。

【0022】
図1に示すように、X線源3は、試料回転装置2の本体部21の後面21b側において、当該後面21bからy軸方向に所定距離をおいて配置されている。また、X線源3は、X線の光軸C0が、本体部21の後面21b側から、y軸方向に沿って試料回転部22の中空部22c、環状板部22bの中心部、及び試料回転部22に保持された試料10の中心部をそれぞれ通過する位置に配置されている。

【0023】
以上の構成により、試料回転装置2の本体部21に対して試料回転部22を第1回転軸C1回りに回転させることで、試料10を所定平面(環状板部22bの外面)内で回転させることができる。そして、X線源3から放射されたX線を、本体部21の後面21b側から試料回転部22の中空部22c及び環状板部22bを通過させて、回転中の試料10の中心部に照射することができる。

【0024】
図1において、回折X線検出部4は、光軸C0に対して鉛直方向(z軸方向)に直交する第2回転軸C2回りに水平移動可能に配置されている。具体的には、回折X線検出部4は、第2回転軸C2を中心とする円弧軌跡f上を移動するように配置されている。これにより、回折X線検出部4は、試料10を透過して回折した回折X線12を検出する。

【0025】
図1において、軸傾斜機構5は、例えばゴニオメータステージからなる。このゴニオメータステージ5は、固定ステージ51と、この固定ステージ51に対してy軸方向に移動可能な可動ステージ52とを有する。可動ステージ52の上面には、試料回転装置2が載置して固定されるようになっている。

【0026】
可動ステージ52は、図示しないアクチュエータによって駆動され、試料回転装置2が保持している試料10を中心としてy軸方向に円弧移動する。これにより、試料回転装置2の第1回転軸C1は、光軸C0と第2回転軸C2とを含む仮想平面(yz平面)において、試料回転装置2に保持された試料10を中心として、光軸C0に対して所定の鋭角度θで傾斜させることができる。

【0027】
ゴニオメータステージ5は、前記鋭角度θを例えば0~25°の角度範囲で調整するために、可動ステージ52の移動量を調整できるようになっている。但し、試料10によるX線の吸収量を抑えるという観点では、前記鋭角度θは15~20°の角度範囲に設定されるのが好ましい。

【0028】
<X線回折測定方法>
図4は、上記X線回折測定装置1を用いたX線回折測定方法を示すフローチャートである。以下、図4を参照しつつ、本実施形態のX線回折測定方法について説明する。
まず、試料回転装置2の試料回転部22に試料10を取り付ける(ステップS1)。具体的には、試料回転部22の環状板部22bの中心部に試料10を取り付け、その環状板部22bを円筒部22aのフランジ部22dにボルト26により固定する(図2及び図3参照)。これにより、試料10は、第1回転軸回りC1回りに回転可能となる。

【0029】
次に、図1に示すように、ゴニオメータステージ5の可動ステージ52上に試料回転装置2を載置して固定する(ステップS2)。その際、試料回転装置2は、その第1回転軸C1が光軸C0上に配置されるように固定される。

【0030】
次に、ゴニオメータステージ5を駆動して、試料回転装置2の第1回転軸C1を、上述の仮想平面において光軸C0に対して所定の鋭角度θだけ傾斜させる(ステップS3、軸傾斜工程)。具体的には、ゴニオメータステージ5のアクチュエータを駆動させ、可動ステージ52を固定ステージ51に対してy軸方向(図1ではy軸の正方向)に所定量だけ円弧移動させる。

【0031】
次に、試料回転装置2の回転駆動部23を駆動し、本体部21に対して試料回転部22を試料10と共に第1回転軸C1回りに回転させる(ステップS4、回転工程)。そして、X線源3からX線を放射し、回転中の試料10に対してX線を照射する(ステップS5、照射工程)。そして、試料10を透過して試料回転装置2の前方へ回折した回折X線12を回折X線検出部4により検出する(ステップS6、検出工程)。

【0032】
<試料の観測領域>
図5(a)~(d)は、回折X線検出部4による試料10の観測領域を示す説明図である。
図5(a)において、X線回折測定では、無数の逆格子点の集合は、面間隔dの逆数1/dの半径で定義される球殻61(以下、逆格子球殻という)となる。この逆格子球殻のうち、入射X線の波長λの逆数1/λの半径で定義されるエバルト球62との交線部分(デバイリング)63のみが回折条件を満たす。このため、入射X線(光軸C0)に対して、エバルト球62の中心を頂点とする円錐の母線64方向にX線回折が観測される。

【0033】
図5(b)は、静止している試料10に対して、逆格子球殻61及びデバイリング63を光軸C0方向から見た図である。一般的に回折X線検出部を円弧軌跡上で移動させる測定方法では、デバイリング63の一部しか観測されないため、観測できる逆格子点は、逆格子球殻61上におけるデバイリング63の線分65に含まれるもののみとなる。

【0034】
したがって、試料10を静止させている場合は、回折条件を満たす粒子の数が少なく、X線回折測定を高精度に行うことができない。
これに対して、試料10を回転させた場合には、逆格子球殻61上で観測できる逆格子点は、上記線分65が掃く曲面上に存在するので、回折条件を満たす粒子の数が増加し、測定精度を向上させることができる。

【0035】
図5(c)は、試料回転装置2の第1回転軸C1が回折X線検出部4の第2回転軸C2と一致している場合、つまり、第1回転軸C1が光軸C0に対して直交している場合における、回折X線検出部4による観測領域を示す図である。
図5(c)に示す観測領域は、従来のガラスキャピラリーを回転させるX線回折測定の場合に対応している。この場合には、観測できる逆格子点は、逆格子球殻61上の赤道部分を1周した帯状の観測領域67(図中のハッチングで示す領域)となり、図5(b)に示す線分65に比べて観測領域を大幅に拡大することができる。

【0036】
しかし、本実施形態のように板状の試料10を測定する場合には、ガラスキャピラリーを回転させるX線回折測定のように、第1回転軸C1を回折X線検出部4の第2回転軸C2と一致させることはできない。そこで、本実施形態では、回折X線検出部4による観測領域を拡大するために、第1回転軸C1を光軸C0に対して傾斜させている。

【0037】
図5(d)は、本実施形態の回折X線検出部4による試料10の観測領域を示す図である。図5(d)に示すように、本実施形態の第1回転軸C1は光軸C0に対して傾斜しているので、観測できる逆格子点は、逆格子球殻61上の赤道部分よりも緯度が少しずれた位置を含むように1周した帯状の観測領域68(図中のハッチングで示す領域)となる。この観測領域68は、図5(c)に示す観測領域67に比べて小さいが、図5(b)に示す線分65よりも大幅に拡大しているのが分かる。

【0038】
<検証実験>
次に、本実施形態のX線回折測定装置1により得られる効果を検証するために、本発明者らが行った検証実験について説明する。
この検証実験の実験方法としては、粉末X線回折に用いられる微粉末Siを試料として、その111回折線を繰り返し測定し、その回折強度を求めた。

【0039】
試料の測定は、下記3種類の条件でそれぞれ行った。
条件A:試料の回転軸が光軸に対して20°傾斜している場合(本実施形態に相当)
条件B:試料の回転軸が光軸に対して傾斜していない場合
条件C:試料を回転させない場合

【0040】
また、上記の繰り返し測定では、入射光エネルギーを変更し、試料中で回折条件を満たす粒子が測定毎に変わるようにした。このため、各測定での回折強度の揺らぎ(変動)は、この回折に起因する粒子数の揺らぎ、つまり測定精度に起因することになる。したがって、各測定の回折強度が一定であれば、測定精度が高い状態であることを意味する。

【0041】
図6は、本検証実験の実験結果を示すグラフである。このグラフは、上記各条件A~CのX線回折測定の測定回数と回折強度との関係を示している。
図6に示すように、条件Aの回折強度の揺るぎは、他の条件B,Cの回折強度に比べて最も小さいのが分かる。特に、条件Aと条件Cとを比べると、条件Aの方が回折強度の揺らぎが顕著に小さくなっており、試料を回転させることで、静止試料の測定に比べて大幅に測定精度が向上していることが分かる。また、条件Aと条件Bとを比べても、条件Aの方が回折強度の揺らぎが小さくなっていることがグラフから読み取れる。

【0042】
図6のグラフ中には、回折強度の揺らぎを定量的に評価するために、各条件A~Cにおける回折強度の揺らぎの標準偏差σを示している。この標準偏差σは、その値が小さいほど測定精度が高いことを示している。
図6に示すように、条件Bの標準偏差σは0.62%であり、条件Cの標準偏差σは2.2%であるのに対して、条件Aの標準偏差σは0.41%と最小の値を示している。すなわち、条件Aの場合に測定精度が最も高くなることが、定量的にも示されていることが分かる。しかも、条件Aの場合は、条件Bの場合に比べて1.5倍以上の精度、条件Cの場合に比べて5倍以上の精度でそれぞれ測定することができ、本実施形態の効果を如実に表している。

【0043】
さらに、図6に示すように、測定した光子の数の揺らぎ、すなわち光子統計という別の要因による誤差(標準偏差)σ’は0.31%となっており、今回の検証実験における条件A~Cの回折強度の揺らぎの標準偏差σの値は、必ず光子統計による標準偏差σ’の値以上なっている。その中でも、条件Aの標準偏差σ(0.41%)は、光子統計による標準偏差σ’(0.31%)に非常に近い値を示しており、条件Aの場合は今回の検証実験で到達しうる最大精度に肉薄する精度で測定できていることが分かる。

【0044】
<効果について>
以上、本実施形態のX線回折測定装置1及びX線回折測定方法によれば、試料10にX線を照射する際に、試料回転装置2により試料10を所定平面内で回転させるので、従来の回転台を回転させる測定方法と同様の方法により試料を回転させることができる。このため、従来のガラスキャピラリーを回転させる測定方法のように、試料を細かくすり潰す必要がないので、試料を所望の形状でX線回折測定を行うことができる。

【0045】
また、軸傾斜機構5により、X線の光軸C0と回折X線検出部4の第2回転軸C2とを含む仮想平面において、試料回転装置2により回転する試料10を中心として、試料回転装置2の第1回転軸C1を光軸C0に対して所定の鋭角度θで傾斜させることができる。これにより、第1回転軸C1が光軸C0に対して傾斜していない場合に比べて、回折X線検出部4による試料10の観測領域を拡大することができる。その結果、回折条件を満たす粒子の数を増加させることができるため、X線回折測定の測定精度を向上させることができる。

【0046】
また、本実施形態のX線回折測定装置1は、試料10を透過して回折した回折X線12を検出する透過法を用いているので、X線回折測定とX線吸収分光測定との組み合わせであるDAFS(Diffraction Anomalous Fine Structure)法や、種々のX線共鳴散乱測定を簡便に行うことができる。さらに、X線回折測定装置1にスリップリング等による電極の回転機構を組み合わせれば、測定試料に電圧を印加しながらその場で測定を行うことも可能となる。

【0047】
また、軸傾斜機構5は、鋭角度θを調整可能であるため、試料10に応じて光軸C0に対する第1回転軸C1の傾斜角度(鋭角度)を適切に調整することができる。
また、鋭角度θを15~20°の角度範囲に設定することで、試料10によるX線の吸収量を抑えつつ、回折X線検出部4による試料10の観測領域を可及的に拡大することができる。

【0048】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態の試料10は、板状に形成されているが、他の任意の形状に形成されていても良い。また、測定対象の試料10として、錠剤試料や、薄型ラミネートセルなどのデバイス試料を用いることも可能である。特に、錠剤試料を用いる場合には、X線の吸収量が大きい試料であっても、その試料を、希釈剤を混合して成型した錠剤形状とすることで、X線の吸収量を調整することが可能となる。その結果、X線の吸収量の補正を行った正確なX線回折測定を行うことが可能となる。

【0049】
また、上記実施形態の軸傾斜機構5は、第1回転軸C1を光軸C0に対して傾斜させているが、光軸C0を第1回転軸C1に対して傾斜させるようにしても良い。さらに、上記実施形態のX線回折測定装置1は、回折X線検出部4の第2回転軸C2を鉛直方向(z軸方向)に配置しているが、水平方向(x軸方向)に配置しても良い。この場合、第1回転軸C1は水平面(xy平面)上において光軸C0に対して傾斜させることになるので、第1回転軸C1を傾斜させる軸傾斜機構5は、ゴニオメータステージに替えて、z軸方向を中心軸として水平面上で回転するターンテーブル等により構成すればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 X線回折測定装置
3 X線源
4 回折X線検出部
5 軸傾斜機構
10 試料
12 回折X線
22 試料回転部
C0 光軸
C1 第1回転軸
C2 第2回転軸
f 円弧軌跡
θ 鋭角度
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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