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明細書 :元素分析用前処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4967141号 (P4967141)
公開番号 特開2008-070134 (P2008-070134A)
登録日 平成24年4月13日(2012.4.13)
発行日 平成24年7月4日(2012.7.4)
公開日 平成20年3月27日(2008.3.27)
発明の名称または考案の名称 元素分析用前処理装置
国際特許分類 G01N   1/22        (2006.01)
G01N   1/00        (2006.01)
G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/12        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
G01N  30/06        (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
FI G01N 1/22 R
G01N 1/00 101R
G01N 31/00 Y
G01N 31/00 D
G01N 31/00 F
G01N 31/12 A
G01N 30/88 G
G01N 30/06 G
G01N 27/62 V
G01N 27/62 D
請求項の数または発明の数 5
全頁数 16
出願番号 特願2006-246547 (P2006-246547)
出願日 平成18年9月12日(2006.9.12)
審査請求日 平成21年8月28日(2009.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504194878
【氏名又は名称】独立行政法人海洋研究開発機構
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】小川 奈々子
【氏名】大河内 直彦
【氏名】永田 俊
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
【識別番号】100111545、【弁理士】、【氏名又は名称】多田 悦夫
審査官 【審査官】土岐 和雅
参考文献・文献 特公平03-015984(JP,B2)
特開昭57-108749(JP,A)
特開2006-162515(JP,A)
実開昭55-044291(JP,U)
特開昭61-104256(JP,A)
特開昭58-208662(JP,A)
特開昭59-015856(JP,A)
特開昭62-076459(JP,A)
実開昭63-120158(JP,U)
実開平02-120060(JP,U)
調査した分野 G01N1/00~1/44、27/60~27/92、30/00~30/98、31/00~31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
試料供給手段から供給された固形の試料を、反応ガス供給手段から供給された反応ガスにより燃焼炉内において燃焼させてガス化することで試料ガスを生成し、不活性ガスをキャリアガスとして供給して使用する元素分析用前処理装置であって、
供給された前記固形の試料を燃焼させ試料ガスを生成し、この試料ガスを管内の酸化剤で酸化させるための酸化管と、
この酸化管に接続され当該酸化管内で酸化した前記試料ガスのうち二酸化窒素を前記燃焼炉内において窒素ガスに還元させる還元剤を入れた還元管と、
この還元された試料ガスを分析用成分の測定ガスに分離して所定の時間間隔で分析手段に供給するガスクロマトグラフと、
を備えて、前記測定ガス中の元素を分析する前記分析手段に、前記ガスクロマトグラフで生成した前記測定ガスをオープンスプリットを介して供給する元素分析用前処理装置において、
前記酸化管は、充填された前記酸化剤の上流側に形成され前記固形の試料が前記反応ガスによって燃焼される燃焼部と、
この燃焼部より下流側に形成され前記酸化剤が充填された酸化カラム部とを有すると共に、
前記燃焼部から前記酸化カラム部にわたって、前記酸化カラム部における下流側部位よりも大きく形成された上流側の流路断面積でなる大径部と、
この大径部よりも下流側で、かつ、前記酸化カラム部における下流側部位に形成され前記上流側の流路断面積より小さい流路断面積でなる小径部と、を有し、
前記酸化剤は、前記大径部内の下流側部位から前記小径部内まで充填されていることを特徴とする元素分析用前処理装置。
【請求項2】
前記還元管は、前記還元剤が充填され前記試料ガスが導入される還元カラム部と、
この還元カラム部よりも下流側に形成され当該還元カラム部で還元された前記試料ガスを導出する排気部と、を有し、
前記還元カラム部および排気部の流路断面積は、前記燃焼部の前記大径部の流路断面積より小さく形成したことを特徴とする請求項1に記載の元素分析用前処理装置。
【請求項3】
前記還元管は、前記排気部の前記燃焼炉外における流路断面積を前記還元カラム部の流路断面積より小さく形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の元素分析用前処理装置。
【請求項4】
前記環元カラム部の内径は、前記大径部の内径よりも小さく、前記小径部の内径よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の元素分析用前処理装置。
【請求項5】
試料供給手段から供給された試料を、反応ガス供給手段から供給された反応ガスにより燃焼炉内において燃焼させてガス化することで試料ガスを生成し、さらに、この試料ガスを管内の酸化剤で酸化させるための酸化管と、
この酸化管に接続され当該酸化管内で酸化した前記試料ガスのうち二酸化窒素を前記燃焼炉内において窒素ガスに還元させる還元剤を入れた還元管と、
この還元された試料ガスを分析用成分の測定ガスに分離して所定の時間間隔で分析手段に供給するガスクロマトグラフと、
を備えて、前記測定ガス中の元素を分析する前記分析手段に、前記ガスクロマトグラフで生成した前記測定ガスをオープンスプリットを介して供給する元素分析用前処理装置において、
前記酸化管は、前記試料が前記反応ガスによって燃焼される燃焼部と、この燃焼部の下流側に形成され前記酸化剤が充填された酸化カラム部とを有すると共に、
下流側よりも大きく形成された上流側の流路断面積でなる大径部と、
この大径部より下流側に形成され前記上流側の流路断面積より小さい流路断面積でなる小径部と、を有し、
前記還元管は、前記還元剤が充填され前記試料ガスが導入される還元カラム部と、
この還元カラム部の下流側に形成され当該還元カラム部で還元された前記試料ガスを導出する排気部と、を有すると共に、
この排気部の前記燃焼炉外における流路断面積を前記還元カラム部の流路断面積より小さく形成し
前記酸化カラム部は、前記大径部の下流部位から前記小径部にわたって設けられ
前記酸化剤は、前記大径部内の下流側部位から前記小径部内まで充填されていることを特徴とする元素分析用前処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、超微量な試料における炭素と窒素の安定同位体比を測定する安定同位体比測定装置や、各元素成分の質量を分析する質量分析装置等の元素分析装置で使用する分析用成分の測定ガスを生成するための前処理を行う元素分析用前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海底に堆積している堆積物や、プランクトン等の動植物は、それらの物質に含有されている有機炭素・窒素の安定同位体比を測定することによって、過去の地球環境変動の推定および未来の予測や、物質循環の解明や、動植物の生成経路や、生物の栄養状態等を知ることができる。また、そのための炭素・窒素安定同位体比測定装置等の元素分析装置の開発も行われている。炭素・窒素安定同位体比測定装置は、試料である物質の炭素・窒素安定同位体比等を測定する質量分析装置と、その試料の前処理装置として、酸化管と還元管とを有する元素分析計と、を備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来の元素分析用前処理装置の設置状態を示す元素分析装置の概略図である。
図6に示す元素分析装置100は、試料の炭素・窒素の安定同位体比の測定、および、各元素成分の質量分析を行う装置である。この元素分析装置100は、試料を試料ガスにガス化するための燃焼酸化・還元・ガス分離システム(以下「元素分析用前処理装置」という)200と、その試料ガスを各分析用成分のガスに分離した測定ガスと各分析成分の標準ガスとキャリアガスとを供給するオープンスプリット300と、炭素と窒素の安定同位体比の測定または各元素成分の質量分析を行う分析装置400と、から主に構成されている。
【0004】
元素分析用前処理装置200は、試料を高温で燃焼させて試料ガスにし、この試料ガスをキャリアガスで搬送させて酸化、還元、水分の除去を行った後に、炭酸ガスと窒素ガスとに分離する装置であり、元素分析計とも言われている。この元素分析用前処理装置200は、錫箔製のカプセルに入れた試料を順次に供給するオートサンプラ210と、このオートサンプラ210から投入された試料を包んだ錫(カプセル)と酸素とを反応させて燃焼して試料ガスを生成(ガス化)し、かつこの試料ガスを酸化剤230で酸化させる酸化カラム部を有する酸化管220と、この酸化管220から供給された試料ガスを還元剤250で還元させる還元カラム部を有する還元管240と、この還元管240から出た試料ガス中の水分を除去する水分トラップ260と、水分トラップ260を通過した試料ガスを窒素ガス(測定ガス)と炭酸ガス(測定ガス)との成分に順次に分離するガスクロマトグラフ270と、を主に構成されている。前記酸化管220および還元管240は、図6に示すように、寸胴な円筒状の石英管からなり、両者とも略同じものを使用している。
【0005】
オープンスプリット(インタフェイス)300は、ガスクロマトグラフ270で試料ガス(混合ガス)を窒素ガスと炭酸ガスとの成分に分離した測定ガスと、キャリアガスとしてのヘリウムガスと、安定同位体比が既知で検査基準となる標準窒素ガスおよび標準炭酸ガスとを交互に分析装置400に供給する装置である。
【0006】
分析装置400は、炭酸ガスと窒素ガスとに分離された測定ガスを、標準窒素ガスおよび標準炭酸ガスとに対比させて交互に所定回数繰り返して炭素と窒素の安定同位体比を測定する炭素・窒素安定同位体比測定装置、あるいは測定ガスの各成分の質量分析を行う質量分析装置である。

【特許文献1】特公平3-15984号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたような元素分析用前処理装置200は、超微量な試料を直径2~3mm程度の錫箔製のカプセルに入れてオートサンプラから酸化管に投入しているが、試料の重さが約50mg以上のものでなければ、元素分析装置100で炭素・窒素安定同位体比を測定できないという問題点があった。
【0008】
このような元素分析装置100では、試料が少量の場合、分析装置400で検出される炭素成分および窒素成分の検出強度(ガス量)が弱く、応答曲線(クロマトグラム)も小さく表れるため、炭素・窒素安定同位体比の精密な測定が不可能であるという問題点があった。
【0009】
一般に有機物では、窒素:炭素比が1:10程度であり、窒素の割合が少なくなっている。このように有機物の試料の成分を測定する場合、試料が少量のときには、特に窒素が少ないため、元素分析装置100で炭素・窒素安定同位体比を測定したくても測定することができないケースが多かった。
一方、窒素の量を補うために試料の量を多くした場合には、試料が酸化管内で燃焼せず、ガス化できないという問題点があり、元素分析装置100で測定できる範囲に限界があった。
【0010】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み創案されたものであり、元素分析装置における元素成分の分析能力を向上させることができる元素分析用前処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の元素分析用前処理装置は、試料供給手段から供給された固形の試料を、反応ガス供給手段から供給された反応ガスにより燃焼炉内において燃焼させてガス化することで試料ガスを生成し、不活性ガスをキャリアガスとして供給して使用する元素分析用前処理装置であって、供給された前記固形の試料を燃焼させ試料ガスを生成し、この試料ガスを管内の酸化剤で酸化させるための酸化管と、この酸化管に接続され当該酸化管内で酸化した前記試料ガスのうち二酸化窒素を前記燃焼炉内において窒素ガスに還元させる還元剤を入れた還元管と、この還元された試料ガスを分析用成分の測定ガスに分離して所定の時間間隔で分析手段に供給するガスクロマトグラフと、を備えて、前記測定ガス中の元素を分析する前記分析手段に、前記ガスクロマトグラフで生成した前記測定ガスをオープンスプリットを介して供給する元素分析用前処理装置において、前記酸化管は、充填された前記酸化剤の上流側に形成され前記固形の試料が前記反応ガスによって燃焼される燃焼部と、この燃焼部より下流側に形成され前記酸化剤が充填された酸化カラム部とを有すると共に、前記燃焼部から前記酸化カラム部にわたって、前記酸化カラム部における下流側部位よりも大きく形成された上流側の流路断面積でなる大径部と、この大径部よりも下流側で、かつ、前記酸化カラム部における下流側部位に形成され前記上流側の流路断面積より小さい流路断面積でなる小径部と、を有し、前記酸化剤は、前記大径部内の下流側部位から前記小径部内まで充填されていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、酸化管は、燃焼部から酸化カラム部にわたって、酸化カラム部における下流側部位よりも大きく形成された上流側の流路断面積でなる大径部と、この大径部よりも下流側で、かつ、酸化カラム部における下流側部位に形成され前記上流側の流路断面積より小さい流路断面積でなる小径部と、を有している。これにより、元素分析用前処理装置は、試料ガスの流れが燃焼部から酸化カラム部を通って下流側に流れる流れが良好になるため、固形の試料の分析残渣の累積による1カラム当たりの分析可能な分析試料総数の減少を防ぐと共に、試料等の酸化反応による温度上昇のカラム流路(酸化カラム部)に及ぼす影響を極力小さくすることが可能となる。
その結果、微量試料の炭素・窒素の安定同位体比の測定や、各元素成分の質量分析等を行う場合であっても、従来の前処理装置を使用した場合と比較して元素(炭素および窒素)成分の検出強度と時間との応答曲線(クロマトグラム)が大きく現れて元素成分を正確に分析できるようになる(図3および図4参照)。
【0013】
請求項2に記載の元素分析用前処理装置は、請求項1に記載の元素分析用前処理装置であって、前記還元管は、前記還元剤が充填され前記試料ガスが導入される還元カラム部と、この還元カラム部よりも下流側に形成され当該還元カラム部で還元された前記試料ガスを導出する排気部と、を有し、前記還元カラム部および排気部の流路断面積は、前記燃焼部の前記大径部の流路断面積より小さく形成したことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、還元管の還元カラム部および排気部の流路断面積は、燃焼部の大径部の流路断面積より小さく形成されたことにより、還元管内における拡散ロスを減少することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の元素分析用前処理装置は、請求項1または請求項2に記載の元素分析用前処理装置であって、前記還元管は、前記排気部の前記燃焼炉外における流路断面積を前記還元カラム部の流路断面積より小さく形成したことを特徴とする。
【0016】
かかる構成によれば、還元管は、排気部の流路断面積を上流側の還元カラム部の流路断面積より小さく形成したことによって、還元管内におけるエネルギーロスとしての拡散ロスをさらに小さくするが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の元素分析用前処理装置は、請求項2または請求項3記載の元素分析用前処理装置であって、前記環元カラム部の内径は、前記大径部の内径よりも小さく、前記小径部の内径よりも大きく形成されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、環元カラム部は、内径が酸化管の大径部の内径よりも小さく、小径部の内径よりも大きく形成されていることによって、少量の試料であっても炭素・窒素安定同位体比の測定ができる。
【0018】
請求項5に記載の元素分析用前処理装置は、試料供給手段から供給された試料を、反応ガス供給手段から供給された反応ガスにより燃焼炉内において燃焼させてガス化することで試料ガスを生成し、さらに、この試料ガスを管内の酸化剤で酸化させるための酸化管と、この酸化管に接続され当該酸化管内で酸化した前記試料ガスのうち二酸化窒素を前記燃焼炉内において窒素ガスに還元させる還元剤を入れた還元管と、この還元された試料ガスを分析用成分の測定ガスに分離して所定の時間間隔で分析手段に供給するガスクロマトグラフと、を備えて、前記測定ガス中の元素を分析する前記分析手段に、前記ガスクロマトグラフで生成した前記測定ガスをオープンスプリットを介して供給する元素分析用前処理装置において、前記酸化管は、前記試料が前記反応ガスによって燃焼される燃焼部と、この燃焼部の下流側に形成され前記酸化剤が充填された酸化カラム部とを有すると共に、下流側よりも大きく形成された上流側の流路断面積でなる大径部と、この大径部より下流側に形成され前記上流側の流路断面積より小さい流路断面積でなる小径部と、を有し、前記還元管は、前記還元剤が充填され前記試料ガスが導入される還元カラム部と、この還元カラム部の下流側に形成され当該還元カラム部で還元された前記試料ガスを導出する排気部と、を有すると共に、この排気部の前記燃焼炉外における流路断面積を前記還元カラム部の流路断面積より小さく形成し、前記酸化カラム部は、前記大径部の下流部位から前記小径部にわたって設けられ、前記酸化剤は、前記大径部内の下流側部位から前記小径部内まで充填されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、前記した請求項1,3の発明と同様な構成および作用を有すると共に、元素分析装置における元素成分の分析能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1,5に係る元素分析用前処理装置によれば、酸化管おける燃焼部の流路断面積を下流部の酸化カラム部の流路断面積より大きく形成したことによって、炭素および窒素等の元素の検出能力が向上されて、微量の試料であっても炭素・窒素の安定同位体比の測定や、各元素成分の質量分析等を正確に行うことができる。
【0020】
本発明の請求項2に係る元素分析用前処理装置によれば、還元管の流路断面積を燃焼部の流路断面積より小さくすることにより、還元管内における拡散ロスを減少させて、元素の検出強度が強く現れるようにすることができる。その結果、今まで分析装置で元素分析が不可能だった微量な試料の元素分析が可能となる。
【0021】
本発明の請求項3,5に係る元素分析用前処理装置によれば、還元管内における拡散ロスを小さくして、元素の分析能力を向上させた炭素・窒素安定同位体比測定装置等に使用される元素分析用前処理装置を提供することができる。
【0022】
本発明の請求項4に係る元素分析用前処理装置によれば、燃焼反応による温度上昇のカラム流路に及ぼす影響を小さくすることが可能となるため、微量の試料であっても、元素の分析を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る元素分析用前処理装置を図1~図4を参照して説明する。
図1は、本発明の元素分析用前処理装置および元素分析装置を示す斜視図である。図2は、本発明の元素分析用前処理装置における配管の接続関係を示すブロック図である。
【0024】
≪試料およびカプセルの説明≫
元素分析装置1を説明する前に、まず、試料7について説明する。
試料7(図2参照)は、例えば、海底に堆積している堆積物や、プランクトン等の動植物からなる超微量な自然界の物質(有機化合物)であり、炭素(12C,13C)と窒素(14N,15N)とを含んでいる。その試料7は、重さが50mg程度の小さなものからなり、カプセル(サンプルコンテナともいう)8内に封入される。
そのカプセル8(図2参照)は、試料7を入れて包み込むようにして封入するための容器であり、例えば、外径が5mm、高さが9mmの底付円筒形状の容器からなる。このカプセル8は、酸素と反応して高温下で試料7を燃焼させるため、錫箔で形成されている。
【0025】
≪元素分析装置の構成≫
図1に示す元素分析装置1は、微量の試料7中に含まれている元素を分析する装置であり、例えば、質量分析装置や炭素・窒素安定同位体比測定装置等である。以下、元素分析装置1として、炭素・窒素安定同位体比測定装置の場合を例に挙げて説明する。
【0026】
元素分析装置1は、例えば、微量の試料7から生成される炭素(12C,13C)および窒素(14N,15N)について、炭素・窒素安定同位体比を測定するための測定装置である。この元素分析装置1は、試料7を各分析用成分の測定ガス(基体試料)にガス化するための元素分析用前処理装置2と、ガス化された試料7を元素分析するための成分の測定ガスに分離するオープンスプリット4と、その測定ガスの元素成分を分析する分析装置(分析手段)3と、から主に構成されている。
【0027】
≪元素分析用前処理装置の構成≫
図1に示す元素分析用前処理装置2は、超微量な試料7(図2参照)における炭素・窒素安定同位体比を分析装置3で分析する前の試料7の前処理を行う装置である。言い換えると、元素分析用前処理装置2において、試料中に含まれる元素(C,N)の安定同位体比を分析装置3で測定するためには、予めそれぞれの元素が気体(CO,N)になっている必要があり、そのために、試料7をガス化させる装置である。さらに、詳述すると、元素分析用前処理装置2は、試料7を燃焼させてガス化し、このガス化した試料ガス(CO,NO)を酸化させ、一部還元し、水分(HO)を除去した後、その試料ガス(CO,NO)を二酸化炭素ガス(CO)と窒素ガス(N)との成分に分離してガスクロマトグラフ27とオープンスプリット4を介して分析装置3に送る装置であって、いわゆるフラッシュ式元素分析計である。
【0028】
この元素分析用前処理装置2は、試料7を供給するオートサンプラ(試料供給手段)21と、試料7を燃焼させるための酸素(反応ガス)を供給するための酸素ガスボンベ(反応ガス供給手段)5と、オートサンプラ21から供給されて錫(Sn)製のカプセル8に包まれた試料7を酸素と反応させることにより、燃焼炉9内において、燃焼させて試料ガス(CO,NO)にガス化させる燃焼部22aと、この燃焼部22aの下流側に形成され試料ガスを酸化させる酸化剤23を充填された酸化カラム部22bとを有する酸化管22と、この酸化管22内で酸化した試料ガスを、燃焼炉9内において、一部還元(CO,N)させる還元管24と、この還元管24を通過した試料ガス中の水分(HO)を除去する水分トラップ26と、この水分トラップ26を通過した試料ガスを測定用の測定ガス(CO),(N)の成分に分離するガスクロマトグラフ27と、を備えている。
【0029】
<オートサンプラ(試料供給手段)の構成>
オートサンプラ21は、カプセル8(図2参照)で包んだ試料7を、酸化触媒によって約1050℃に保持された燃焼炉9内の酸化管22の燃焼部22aの上端開口部内に間欠的に連続して落下させて供給する自動供給装置である。このオートサンプラ21には、百数十個の試料7をセットして1個ずつ順番に酸化管22に供給させることができるようになっている。
オートサンプラ21によって酸化管22に供給される試料7は、小さな錫箔製の缶形状からなるカプセル8内に封入された状態で酸化管22の上流部22c内に落下されるようになっている。なお、このオートサンプラ21では、酸化管22での燃焼状態を確認できるための覗き窓(図示せず)が設けられている。また、オートサンプラ21は、手動式のものであっても構わない。
【0030】
オートサンプラ21と、酸化管22との間には、オートサンプラ21と酸化管22と接続するためのステンレス製の酸化管上流継手J1が設置されている。この酸化管上流継手J1には、カプセル8の錫と反応させるための酸素が充填された酸素ガスボンベ5に連通して酸素を供給する酸素供給管51と、キャリアガスボンベ6に連通して一定流量のキャリアガスを供給するキャリアガス供給管61と、が接続されている。
【0031】
≪酸素ガスボンベ(反応ガス供給手段)の構成≫
酸素ガスボンベ(反応ガス供給手段)5は、試料7を燃焼させるための純酸素(反応ガス)を充填して、試料7の燃焼に必要な最適量の酸素を酸素供給管51を介して酸化管22の上流部22cに供給するためのボンベである。
【0032】
キャリアガスボンベ6は、キャリアガスとしてのヘリウム(He)が充填されたボンベであり、キャリアガス流量を一定にして送ることにより、試料7を連続して測定しても高いデータが得られるようにしている。なお、キャリアガスは、ヘリウム(He)以外のアルゴン(Ar)等の不活性ガスでも構わない。
【0033】
≪燃焼炉の構成≫
燃焼炉9は、酸化管22と還元管24とを加熱して高温の状態に保持するための炉である。この燃焼炉9内には、酸化管22と還元管24とが略U字状に配置されている。
【0034】
<酸化管の構成>
前記酸化管22は、投入されたカプセル8の錫を酸素供給管51からの酸素に反応させて試料7を完全燃焼させ、この燃焼で得られた試料ガスを、充填した酸化剤23を通過させることで酸化させる管である。この酸化管22は、下流部22d側が小径な段差を有する石英の透明な円筒管からなる。酸化管22では、燃焼時(酸化反応時)に約1800℃まで高温になるため、試料7が有機物でも無機物でも完全に燃焼するようになっている。この酸化管22は、上流部22c側に配設されカプセル8の錫と酸素とを反応させて燃焼させる燃焼部22aと、この燃焼部22aの下流部22d側に配設され燃焼部22aで発生した燃焼ガスを酸化させる酸化剤23が入っている酸化カラム部22bと、を有している。なお、酸化管22の燃焼部22aで燃焼した試料7は、燃焼ガスとなって酸化カラム部22b側に送られ、酸化剤23上に残った燃えカスが所定期間毎に酸化管22から取り除かれる。
【0035】
酸化管22は、下流側よりも大きく形成された上流側の流路断面積S1でなる大径部22eと、この大径部22eより下流側に形成され上流側の流路断面積S1より小さい流路断面積S2でなる小径部22fと、を有している。酸化カラム部22bは、大径部22eの下流部位から小径部22fにわたって設けられて、酸化剤23が充填されている。酸化管22において、上流部22c側に形成され燃焼部22aと酸化カラム部22bの上流側は、流路断面積S1の大きい大径部22eからなり、この大径部22eより下流側に形成され酸化カラム部22bの下流部22dは、流路断面積S2の小さい小径部22fからなる。
酸化管22内において、大径部22eと小径部22fとは、内径が一定な円筒状に形成されている。そして、大径部22eと小径部22fとの間には、下流側に向かって徐々に径が細くなっているテーパ部22gが形成されている。
【0036】
酸化管22の上流側の端部には、酸化管上流継手J1が設置され、酸化管22の下流側の端部には、ステンレス製の酸化管下流継手J2が設置されている。その酸化管下流継手J2には、還元管24の上流側の端部に設置されたステンレス製の還元管上流継手J3に、先端部を接続した配管P1が設置されている。
【0037】
次に、図2を参照して酸化管22の各部の寸法の一例を説明する。
酸化管22は、例えば、長さL1が450mmで、燃焼部22aの長さL2が260mmで、酸化カラム部22bの長さL3が190mmで、厚さが2mmのものから形成されている。燃焼部22aは、例えば、外径D1が18mmで、内径d1が14mmに形成されている。酸化カラム部22bは、例えば、外径D2が10mmで、内径d2が6mmに形成されている。そして、燃焼部22a内で燃焼する燃焼中心Oからテーパ部22gまでの長さL4が約20mmになるように、酸化剤23が酸化管22内に設けられている。
【0038】
<酸化剤の構成>
図2に示す酸化剤23は、燃焼ガスを酸化させるための酸化触媒であり、酸化管22の下流部22d側の酸化カラム部22bに配置されている。この酸化剤23は、例えば、酸化カラム部22bの上側に配置され粒径が1~2mmの粒状の酸化クロム(Cr)23aと、酸化カラム部22bの下側に配置され粒径が1~2mmの粒状の酸化銀コバルト(Co/Ag)23bと、の2種類の試薬からなる。
【0039】
<還元管の構成>
還元管24は、酸化管22内で燃焼し、酸化された試料ガスのうち二酸化窒素(NO)を還元剤25によって還元させて窒素ガス(N)にするための管であり、例えば、石英の透明な管からなる。この還元管24は、還元剤25が充填されて上流側に形成された還元カラム部24aと、この還元カラム部24aの下流側に形成されてこの還元カラム部24aを通過した試料ガスを水分トラップ26に供給する排気部24bと、を有する。この還元管24の排気部24bから出る試料ガスは、二酸化炭素(CO)と、窒素ガス(N)と、水蒸気(HO)および酸素(O)とが含まれた混合ガスとなっている。
この還元管24の流路断面積S3,S4は、酸化管22の燃焼部22aの流路断面積S1より小さく形成されている。そして、この還元管24は、燃焼炉9外における下流側の排気部24bの流路断面積S4を、上流側の還元カラム部24aの流路断面積S3より小さく形成している。
【0040】
還元管24は、例えば、全長L5が475mmで酸化管22の全長L1より長く形成されている。還元カラム部24aは、例えば、外径D3が10mmで、内径d3が8mmで、厚さが1mmに形成されている。排気部24bは、例えば、外径D4が6mmで、内径d4が3mmで厚さが1.5mmに形成されている。このように、還元管24は、酸化管22と比較して細長く形成されている。
還元管24の下流側の端部には、ステンレス製の還元管下流継手J4が設置されている。その還元管下流継手J4には、水分トラップ26の継手J5に接続された配管P2が設置されている。
還元剤25は、例えば、直径が0.5mm、長さが2~4mmのワイヤー状の還元銅からなる。
【0041】
<水分トラップの構成>
水分トラップ26は、還元管24を通過した試料ガス(CO,N)中の蒸気状態になっている水分(HO)を除去する装置である。この水分トラップ26の上流側および下流側の各端部には、配管P2,P3を接続するためのステンレス製の継手J5,J6が設置されている。水分トラップ26の下流側は、継手J6および配管P3を介在してガスクロマトグラフ27に接続されている。この水分トラップ26の長さは、特に限定せず、試料の性質に応じて適宜に調整する。例えば、水分トラップ26の長さは、試料ガスに水分成分が多く含まれているときには長くして、これとは逆に水分成分が少ない試料では短いものを使用する。
【0042】
<ガスクロマトグラフの構成>
ガスクロマトグラフ27は、水分トラップ26を通過して導入された試料ガス(混合ガス)を分析用成分の測定ガスの成分(CO),(N)ごとに完全に分離する装置である。このガスクロマトグラフ27には、水分トラップ26から送られて来た混合ガスの試料ガス(CO,N)を、吸着剤により窒素ガス(N)、炭酸ガス(CO)の順でその窒素ガス(N)と炭酸ガス(CO)との成分に間欠的に分離して測定ガスを生成し、順次にその測定ガス(N),(CO)をオープンスプリット4に送るように配管P4が設けられている。
【0043】
≪オープンスプリットの構成≫
オープンスプリット(「インタフェイス」ともいう。)4は、ガスクロマトグラフ27から送られて来た測定ガスと、キャリアガスとしてのヘリウムガス(He)と、検査基準となる標準窒素ガス(N)および標準炭酸ガス(CO)とを交互に分析装置3に供給する装置である。オープンスプリット4には、配管P4,P5,P6,P7,P8,P9がそれぞれ設置されている。
【0044】
配管P5は、配管P4によってガスクロマトグラフ27から送られて来た測定ガス(CO),(N)を配管P6のヘリウムガス(He)によって交互に送られるものである。この配管P5は、例えば、内径が0.12mmで長さが1200mmに形成したもの使用され、従来のものと比較して太くて短いもの(一般には、例えば、内径0.05mm、長さ1500mmの配管が使用されている)を使用して測定ガスがより多く流れるようになっている。
配管P6は、キャリアガスとしてのヘリウムガス(He)をオープンスプリット4に導入するためのものである。配管P7は、窒素(N)の同位体比が既知の標準窒素ガス(N)をオープンスプリット4に導入するためのものである。配管P8は、標準炭酸ガス(CO)をオープンスプリット4に導入するためのものである。
配管P9は、配管P7からの標準窒素ガス(N)と、配管P8からの標準炭酸ガス(CO)が交互に分析装置3に流れるようになっている。
【0045】
<分析装置(分析手段)の構成>
分析装置3は、ガスクロマトグラフ27で得られた測定ガスの元素成分の安定同位体比や質量を測定して、試料7中の元素成分の分析結果を電気信号に変換してモニタ(図示せず)で表示する装置である。この分析装置3での炭素(12C,13C)と窒素(14N,15N)の安定同位体比の測定にあたっては、測定ガス(CO),(N)と、キャリアガス(He)によって送られて来た安定同位体比が既知の各標準ガス(CO),(N)との炭素・窒素安定同位体比測定を交互に所望回数行って比較し、その偏差の平均値を算出している。
【0046】
≪作用≫
次に、図1~図4を参照して、本発明の実施形態に係る元素分析用前処理装置の作用を測定手順と共に説明する。
まず、初めに、分析する複数の試料7(図2参照)をカプセル8に封入して、図1に示すオートサンプラ21にセットする。試料7は、オートサンプラ21によって燃焼部22aの上端開口部内に間欠的に連続して落下して、1個ずつ酸化管22に自動供給される。
【0047】
酸化管22の燃焼部22a内では、酸化触媒によって約1050℃に保持された状態にある。その酸化管22の燃焼部22aに供給された試料7は、錫箔製のカプセル8内に封入されているため、その錫が酸素ガスボンベ5から供給された酸素(O)と反応して燃焼し、約1800℃に上昇される。試料7は、高温で燃焼されることにより、有機物および無機物が完全燃焼されて、炭素(C)が炭酸ガス(CO)となり、窒素(N)が二酸化窒素ガス(NO)となって、ガス化される。
【0048】
燃焼部22a内でガス化された試料7は、試料ガスとなり、キャリアガスボンベ6から供給されたキャリアガス(He)によって酸化カラム部22b内の粒子状の酸化剤23内に入り込む。なお、試料7の燃えカスは、燃焼部22a内の酸化剤23上に堆積して残り、測定が125回程度実施された後、酸化管22から除去する。試料ガスは、まず、酸化カラム部22bの上側に入っている酸化クロム23aによって酸化された後、さらに、その下側に入っている酸化銀コバルト23bによって酸化される。その試料ガスは、キャリアガス(He)によって酸化管下流継手J2、配管P1、および還元管上流継手J3を介して還元管24に送られる。
【0049】
還元管24に送られた試料ガスは、還元カラム部24a内に入っている還元剤25によって還元される。還元カラム部24a内において、試料ガス中の二酸化窒素(NO)は、酸素(O)が除去されて、窒素ガス(N)となる。
【0050】
還元された試料ガスは、キャリアガス(He)によって還元管24から還元管下流継手J4、配管P2、継手J5を介して、水分トラップ26に送られる。なお、還元管24から出たときの試料ガスは、蒸気状の水分(HO)と、炭酸ガス(CO)と、窒素ガス(N)との混合ガスになっている。
【0051】
水分トラップ26に送られた蒸気状の試料ガスは、その水分トラップ26内の吸着剤によって水分(HO)が除去される。水分トラップ26を通過した試料ガスは、窒素ガス(N)と炭酸ガス(CO)との混合ガスとなっており、継手J6および配管P3を介してガスクロマトグラフ27にキャリアガス(He)によって送られる。
【0052】
ガスクロマトグラフ27に送られた試料ガスは、バルブ作動によって時間差で間欠的に、窒素ガス(N)、炭酸ガス(CO)の順に分離されて配管P4を介してオープンスプリット4に送られる。このオープンスプリット4では、ガスクロマトグラフ27から間欠的に交互に送られて来た窒素ガス(N)と炭酸ガス(CO)との測定ガスと、さらに、キャリアガスのヘリウムガス(He)と、標準窒素ガス(N)と、標準炭酸ガス(CO)とを交互に分析装置3に供給する。
【0053】
分析装置3では、試料ガスである窒素ガス(N)と炭酸ガス(CO)とにおける炭素・窒素安定同位体比の測定と、標準ガス(CO),(N)における炭素・窒素安定同位体比測定を交互に所望回数行って、その偏差の平均値を算出することによって、試料7の炭素・窒素安定同位体比を測定する。このように、分析装置3は、測定ガスを安定同位体比が既知の標準ガスと比較しながら交互に測定を行うことにより、測定ガスを単独測定した場合と比較して、測定装置のドリフトを解消して、短時間で正確に測定できるようになっている。
【0054】
さらに、分析装置3では、元素分析用前処理装置2において、酸化管22が、燃焼部22aの流路断面積S1を酸化カラム部22bの下流部22dの流路断面積S2より大きく形成し、還元管24が、流路断面積S3を燃焼部22aの流路断面積S1より小さく形成したことによって、少量の試料7であっても炭素・窒素安定同位体比の測定ができるようになった。
これを図3(a)、(b)、図4(a)、および(b)に示すグラフを利用して、従来の場合と比較して分析装置3での測定結果を説明する。
【0055】
図3は、元素分析装置で検出した窒素の検出強度を示すグラフであり、(a)は従来の元素分析用前処理装置200を使用したときの元素分析装置100の窒素の検出強度を示す線グラフであり、(b)は本発明の元素分析用前処理装置2を使用したときの元素分析装置1の窒素の検出強度を示す線グラフである。図4は、元素分析装置で検出した炭素の検出強度を示すグラフであり、(a)は従来の元素分析用前処理装置200を使用したときの元素分析装置100の炭素の検出強度を示す線グラフであり、(b)は本発明の元素分析用前処理装置2を使用したときの元素分析装置1の炭素の検出強度を示す線グラフである。
【0056】
図6に示す寸胴形状の酸化管220を有する元素分析用前処理装置200を使用した元素分析装置100で窒素(14N,15N)を測定した場合、図3(a)に示すように、試料ガスの窒素(14N,15N)の検出強度NAは、標準窒素の検出強度NB(約2200[mV])より弱く、約500[mV]であった。このため、試料7の量が少ないときには、検出強度が弱いため、窒素(14N,15N)を十分な精度で測定することができなかった。なお、検出強度NAは、窒素原子(N)の量が12.2[μgN]であった。
【0057】
これに対して、図1および図2に示す本実施形態の元素分析用前処理装置2では、酸化管22が燃焼部22aの流路断面積S1より酸化カラム部22bの流路断面積S2を小さくしたことによって、ガス化された試料ガスが下流側全体にスムーズに流れるようになったため、下流側の影響が小さくなった。
そして、オープンスプリット4から分析装置3に測定ガスを供給する配管P5は、従来のものと比較して太く、短く形成されたものが配設されていることによって、計測ガスがより多く流れるようになった。
【0058】
これによって、元素分析用前処理装置2を使用した元素分析装置1で窒素(14N,15N)を測定した場合、図3(b)に示すように、試料ガスの窒素(14N,15N)の検出強度NCは、標準窒素の検出強度ND(約2500[mV])と比較して強く現れ、約4000[mV]であった。
その結果、試料7の量が微量であっても、検出強度が強く現れ、分析精度が向上されたため、窒素(14N,15N)を検出することができるようになり、今まで検出することができなかった物質の炭素・窒素安定同位体比の測定ができるようになった。なお、検出強度NCは、窒素原子(N)の量が12.9[μgN]であった。
【0059】
一方、図6に示す寸胴形状の酸化管220を有する元素分析用前処理装置200を使用した元素分析装置100で炭素(12C,13C)を測定した場合、図4(a)に示すように、試料ガスの炭素(12C,13C)の検出強度CAが約6000[mV]であり、標準窒素の検出強度CBが約2000[mV]であった。このため、試料7の量が少ないときには、検出強度が弱いため、炭素(12C,13C)を検出することができなかった。なお、検出強度CAは、炭素原子(C)の量が52.2[μgC]であった。
【0060】
図1および図2に示す本実施形態の元素分析用前処理装置2は、前記したように、酸化管22が燃焼部22aの流路断面積S1より酸化カラム部22bの流路断面積S2を小さくし、また、配管P5が太く、短く形成されていることにより、下流側の影響が小さくなったため、炭素の分析でも窒素の分析のときのように正確に分析できるようになった。
【0061】
すわわち、元素分析用前処理装置2を使用した元素分析装置100で炭素(12C,13C)を測定した場合、図4(b)に示すように、試料ガスの炭素(12C,13C)の検出強度CCは、標準窒素の検出強度CD(約2500[mV])と比較して非常に強く現れ、約19000[mV]であった。
その結果、試料7の量が超微量であっても、検出強度が強く現れ、分析精度が向上されたため、炭素(12C,13C)を検出することができるようになり、今まで検出することができなかった物質の炭素・窒素安定同位体比の測定ができるようになった。なお、検出強度CCは、炭素原子(C)の量が55.3[μgC]であった。
【0062】
≪変形例≫
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0063】
図5は、本発明の実施形態に係る元素分析用前処理装置の変形例を示す図であり、元素分析用前処理装置における配管の接続関係を示すブロック図である。
本発明の実施形態に係る元素分析用前処理装置は、図1に示すように、還元管24の下流側の排気部24bの流路断面積S4を上流側の還元カラム部24aに流路断面積S3より小さくしたことに限定されるものではなく、酸化管22の上流側の燃焼部22aの流路断面積S1を下流側の酸化カラム部22bの流路断面積S2より大きく形成されていればよい。
【0064】
したがって、元素分析用前処理装置2Aは、図5に示すように、酸化管22Aの上流側の燃焼部22Aaの流路断面積SA1を下流側の酸化カラム部22Abの流路断面積SA2より大きく形成されていればよい。このため、還元管24Aは、図5に示すように、寸胴形状のストレート管であってもよい。
【0065】
この場合、酸化管22Aは、例えば、長さLA1が450mmで、燃焼部22Aaの長さLA2が260mmで、酸化カラム部22Abの長さLA3が190mmで、厚さが2mmのものから形成されている。燃焼部22Aaは、例えば、外径DA1が18mmで、内径dA1が14mmに形成されている。酸化カラム部22Abは、例えば、外径DA2が12mmで、内径dA2が8mmに形成されている。
【0066】
還元管24Aは、例えば、全長LA5が475mmで、外径D5が12mmで、内径d5が8mmで、厚さが2mmのものから形成されている。還元管24Aの流路断面積S5は、酸化管22Aの燃焼部22Aaの流路断面積SA1より小さく形成されている。
このように還元管24Aをストレート管で形成した場合であっても、前記実施形態のときと同じような効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の元素分析用前処理装置および元素分析装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の元素分析用前処理装置における配管の接続関係を示すブロック図である。
【図3】元素分析装置で検出した窒素の検出強度を示すグラフであり、(a)は従来の元素分析用前処理装置を使用したときの元素分析装置の窒素の検出強度を示す線グラフであり、(b)は本発明の元素分析用前処理装置を使用したときの元素分析装置の窒素の検出強度を示す線グラフである。
【図4】元素分析装置で検出した炭素の検出強度を示すグラフであり、(a)は従来の元素分析用前処理装置を使用したときの元素分析装置の炭素の検出強度を示す線グラフであり、(b)は本発明の元素分析用前処理装置を使用したときの元素分析装置の炭素の検出強度を示す線グラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る元素分析用前処理装置の変形例を示す図であり、元素分析用前処理装置における配管の接続関係を示すブロック図である。
【図6】従来の元素分析用前処理装置の設置状態を示す元素分析装置の概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1 元素分析装置
2,2A 元素分析用前処理装置
3 分析装置(分析手段)
5 酸素ガスボンベ(反応ガス供給手段)
7 試料
9 燃焼炉
21 オートサンプラ(試料供給手段)
22,22A 酸化管
22a,22Aa 燃焼部
22b,22Ab 酸化カラム部
22c 上流部
22d 下流部
22e 大径部
22f 小径部
23 酸化剤
24,24A 還元管
24a 還元カラム部
24b 排気部
25 還元剤
26 水分トラップ
27 ガスクロマトグラフ
S1,SA1 燃焼部の流路断面積
S2,SA2 下流部の流路断面積
S3 還元カラム部の流路断面積
S4 排気部の流路断面積
S5 還元管の流路断面積
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5